世田谷区地域行政推進条例(案) 目次 前文 第1章 総則(第1条-第3条) 第2章 地域行政制度の改革 第1節 基本方針(第4条) 第2節 まちづくりセンター等の機能の充実強化(第5条-第10条) 第3節 総合支所の機能の充実強化(第11条-第15条) 第4節 本庁の計画策定等に係る必要な措置(第16条)  第5節 区の体制の強化(第17条・第18条) 第3章 地域行政推進計画等(第19条・第20条) 第4章 雑則(第21条) 附則 世田谷区では、昭和53年の世田谷区基本構想を起点とし、「打てば響くまちづくり」を目指して、区の制度・組織の変革について検討を開始した。 約13年間にわたる検討と準備期間を経て、平成3年に、都市としての一体性を保ちながら、住民自治の実を挙げるため、区は、区内を適正な区域に分けて地区及び地域の行政拠点を設け、これを中核として総合的な行政サービスやまちづくりを実施する仕組みとして、地域行政制度を導入し、地区に出張所を、地域に総合支所を設置し、本庁との三層制のもとに区政運営を開始した。 地域行政制度の導入後は、保健福祉や街づくりに関する事業の地域展開を行うとともに、平成17年には、行政経営改革の取組のもとで、窓口サービスの効率化と地区まちづくり支援の強化を目指し、27箇所の出張所の窓口事務を7箇所の出張所に集約し、その他の20箇所を主に地区まちづくりの支援を行うまちづくり出張所とする出張所改革を行った。その後、名称をまちづくりセンターとし、身近なまちづくり活動の支援や地区防災力の向上、車座集会等での区民との対話等に取り組み、地区及び地域の実態に応じた行政サービスの提供とまちづくりの支援を進めてきた。また、地域包括ケアの地区展開により、身近な地区における相談支援体制を整備し、住民同士が支え合う地域社会づくりに向けた取組を進めるとともに、子どもに係る身近な相談や見守り等の中核的な役割を果たす児童館の整備を全地区において進めることとした。 しかし、高齢化の進展、単身世帯の増加等の世帯構成の変化、気候変動等による災害の多発等に伴い、地域社会での支え合いの重要性が再認識される一方で、働き方の変化や新型コロナウイルス感染症の拡大、情報通信技術の急速な発展等を背景に、人と人との関わり方も変化しており、防災や防犯、介護、子育て、社会的孤立、貧困等多岐にわたる地域社会の課題の解決に向けて、身近なところでの区民生活の支援の必要性が高まっている。 区は、地区及び地域の実態に即した取組を促進する体制を整備することにより、区民に身近なところで多様な相談や手続きに対応する窓口の実現をはじめとした行政サービスの改革を行うとともに、区民が区政について意見を述べ、まちづくりに取り組む住民自治を進め、安全・安心で暮らしやすい地域社会の実現を目指さなければならない。 このような状況を踏まえ、区政運営の基盤である地域行政制度について、地区がその要となるよう改革するために、この条例を制定する。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、区政運営の基盤である地域行政制度の改革について必要な事項を定めることにより、区が、区政の課題の解決を図る体制を強化し、地区及び地域の実態に即した総合的な行政サービス及びまちづくりを推進し、もって安全・安心で暮らしやすい地域社会を実現することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 ⑴ 区民 区内に住所を有する者、区内に存する事務所又は事業所に勤務する者及び区内に存する学校に在学する者並びに町会・自治会、商店街、学校、事業者その他の区内でまちづくりに取り組む団体をいう。 ⑵ まちづくり 防災、防犯、福祉及び環境に係る課題その他の地域社会における課題の解決を図り、より暮らしやすいまちをつくるための取組をいう。 ⑶ まちづくりセンター 世田谷区出張所設置条例(昭和40年3月世田谷区条例第2号)第1条のまちづくりセンターをいう。 ⑷ まちづくりセンター等 まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター(介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の46第1項の地域包括支援センターであって、区の委託を受けた法人が区内に設置するものをいう。)及び社会福祉法人世田谷区社会福祉協議会をいう。 ⑸ 地区 世田谷区出張所設置条例別表第2に規定するまちづくりセンターごとの所管区域をいう。 ⑹ 地域 世田谷区支所の設置及び組織に関する条例(平成2年11月世田谷区条例第46号)別表に規定する総合支所ごとの所管区域をいう。 ⑺ 地域包括ケアの地区展開 地区において、まちづくりセンター等及び児童館が連携して、地域包括ケアシステム(高齢者、障害者、子育て家庭、生きづらさを抱えた若者、生活困窮者等に対する医療、介護、住まい、生活等の支援が包括的に確保される体制をいう。)による支援を推進することをいう。 ⑻ 総合支所 世田谷区支所の設置及び組織に関する条例第1条の支所及び世田谷区出張所設置条例第1条の出張所をいう。 ⑼ 児童館 世田谷区立児童館条例(昭和38年11月世田谷区条例第26号)第1条の児童館をいう。 ⑽ 本庁 区長部局に属する機関(総合支所、まちづくりセンター及び世田谷区組織規則(平成3年3月世田谷区規則第7号)第27条第1項の事業所を除く。)並びに世田谷区教育委員会、世田谷区選挙管理委員会及び世田谷区農業委員会をいう。 (区の責務) 第3条 区は、まちづくりセンターを区民生活を包括的に支援する地区の行政拠点として、総合支所を次条第2号に規定する地域経営を担う地域の行政拠点として位置付け、地区及び地域において区民が必要な行政サービスを利用することができる環境及び区政に関する意見を述べることができる環境の整備並びに区民がまちづくりに取り組むための必要な支援を行わなければならない。 第2章 地域行政制度の改革 第1節 基本方針 第4条 区は、次に掲げる基本方針に基づき、地域行政制度の改革を推進しなければならない。 ⑴ まちづくりセンターは、区民生活を包括的に支援する地区の行政拠点として、多様な相談及び手続きに対応する窓口を担うとともに、地区の実態に即した取組の実施及びまちづくりの支援を行うこと。 ⑵ 総合支所は、地域の行政拠点として、地域経営(総合支所の所管する業務の専門性を生かして、地域の実態を把握し、及び地域における社会資源を活用することにより、計画的に地域の課題の解決に当たることをいう。以下同じ。)を担うとともに、まちづくりセンターの取組の支援を行うこと。 ⑶ 本庁は、社会状況の変化及び地域経営の内容を踏まえた施策の立案等を行い、並びにまちづくりセンター及び総合支所と情報を共有し、一体となって施策を実施するとともに、適切な政策手法の活用及び資源の配分を行うことにより、効率的かつ効果的な区政運営を行うこと。 ⑷ まちづくりセンター及び総合支所が区民の意見を聴き、これを区政に反映する仕組みを強化すること。 ⑸ デジタル技術の活用による業務の変革を推進し、区民の利便性の向上及び区政への区民参加の促進を図るとともに、デジタル化への対応が困難な区民その他の行政からの情報を受け取ることが困難な区民への必要な支援を行うこと。 第2節 まちづくりセンター等の機能の充実強化 (行政サービスの機能の充実強化) 第5条 まちづくりセンターは、区民生活を包括的に支援する地区の行政拠点として、関係所管との必要な調整を行い、区民からの多様な相談及び手続きへの対応の強化を図るものとする。 2 まちづくりセンターは、総合支所、本庁等との連携のもと、情報通信技術を活用し、相談、手続等の行政サービスの充実を図るものとする。 (広報広聴機能の充実) 第6条 まちづくりセンターは、情報通信技術等の多様な手段を用いて、地区におけるまちづくりに係る情報の区民への発信及び区民との情報の共有を図るとともに、区民との対話により地区における多様な意見を把握し、これを生かしてまちづくりの促進及び行政サービスの充実を図るものとする。 (まちづくりの支援機能の強化) 第7条 まちづくりセンターは、町会・自治会による住民相互の支え合いその他の区民による活動を支えるため、まちづくりに係る学習の機会の提供、活動の場の確保、情報の発信等に関する支援の強化を図るものとする。 2 まちづくりセンターは、まちづくりの支援及び交流の機会づくりを通して、区民、区の公共施設並びに国及び東京都の機関の相互連携の促進を図るものとする。 (防災に係る機能の強化) 第8条 まちづくりセンターは、地区における災害への対応力を高めるため、地区における防災情報の発信、防災に関する学習の機会の提供及び地区防災計画の作成の支援により、区民の防災意識及びコミュニティを基礎とした助け合いの意識の向上並びに防災活動への参加の促進を図るものとする。 2 まちづくりセンターは、前条第2項の規定による相互連携を区民が防災活動に生かすことができるよう支援するとともに、避難所運営訓練、防災訓練その他の区民の防災活動に対する支援の強化を図るものとする。 (地域包括ケアの地区展開に係る機能の充実) 第9条 まちづくりセンター等は、地域包括ケアの地区展開のため、総合支所、本庁等との連携のもと、情報通信技術を活用し、相談、手続等の福祉の相談窓口における機能の充実を図るものとする。 2 まちづくりセンター等及び児童館は、地域包括ケアの地区展開のため、地区における福祉に係る課題の解決のために必要な人材、場所、情報、技術等の社会資源の開発及び区民との協働による福祉に係るまちづくりの促進を図るものとする。 (課題解決に係る総合調整機能の強化) 第10条 まちづくりセンターは、地区の状況及び課題を明らかにし、これを区民と共有するとともに、課題への取組を立案し、区民、総合支所等との調整を行う総合調整機能を強化することにより、課題の解決を図るものとする。 第3節 総合支所の機能の充実強化 (業務の専門性の強化等) 第11条 総合支所は、行政サービスを区民に総合的に提供する拠点として、その所管する業務の専門性の強化等を図るものとする。 (行政サービスの機能の充実) 第12条 総合支所は、まちづくりセンター、本庁等との連携のもと、情報通信技術を活用し、相談、手続等の行政サービスの充実を図るものとする。 (まちづくりセンター等の支援機能の強化) 第13条 総合支所は、第5条から第8条まで及び第10条に規定するまちづくりセンターの機能の充実強化並びに第9条に規定する地域包括ケアの地区展開に係る機能の充実を図るため、その所管する業務の専門性を生かした支援の強化を図るものとする。 2 総合支所は、その地域内においてその職員が担当する地区を定めることにより、当該地区におけるまちづくりの状況を把握するとともに、まちづくりセンター等の職員と連携し、まちづくりの支援、相談等への対応の強化を図るものとする。 (まちづくりの支援機能の強化) 第14条 総合支所は、地域における区民のまちづくりに係る活動を支えるため、その活動の活性化等に係る学習の機会の提供、活動の場の確保等に係る公の施設の運営その他の必要な支援の強化を図るものとする。 2 総合支所は、前項に規定する活動について、必要な情報を提供し、及び区民間の情報共有を支援することにより、区民のまちづくりへの理解を深めるとともに、まちづくりに係る活動の相互連携の促進を図るものとする。 (課題解決に係る措置) 第15条 総合支所は、多様な区民参加の機会を設け、区民の意見並びに地区及び地域の課題を把握し、施策の立案等に係る本庁との協議その他の必要な措置を講じ、課題の解決を図るものとする。 第4節 本庁の計画策定等に係る必要な措置 第16条 本庁は、区政運営に係る計画を策定し、又は施策を立案する際には、地域行政制度の意義及び目的を踏まえ、地域の実態に即した計画又は施策となるよう、総合支所との協議その他の必要な措置を講じるものとする。 第5節 区の体制の強化 (組織の整備) 第17条 区長は、第2節に規定するまちづくりセンターの機能の充実強化及び第3節に規定する総合支所の機能の充実強化のために、まちづくりセンター及び総合支所にその権限に属する事務を適切に配分するとともに、その事務を効率的に行うことができるよう、区の組織の整備を図るものとする。 (人員体制の強化) 第18条 区長は、第2節に規定するまちづくりセンターの機能の充実強化のために、職員の育成を図るとともに、人員の配置上の配慮、応援体制の整備、専門的な知識経験を有する者の活用その他のまちづくりセンターの体制の強化を図るものとする。 第3章 地域行政推進計画等 (地域行政推進計画) 第19条 区長は、地域行政の推進に関する施策についての基本的な計画(以下「地域行政推進計画」という。)を策定しなければならない。 2 区長は、地域行政推進計画の策定に当たっては、地区及び地域の実態に即した参加と協働によるまちづくりの促進に資する計画となるよう、区民の意見を聴く機会を設けなければならない。 3 区長は、地域行政推進計画に基づく地域行政の推進に関する施策の実施状況を取りまとめ、毎年、公表しなければならない。 (区民の意見聴取) 第20条 区長は、地域行政の推進に関する状況について、定期的に、区民の意見を聴く機会を設けなければならない。 第4章 雑則 (委任) 第21条 この条例の施行に関し必要な事項は、区長が定める。 附 則 この条例は、令和4年10月1日から施行する。 問い合わせ先は地域行政課、電話5432-2037、ファックス5432-3069へお願いいたします。