世田谷区個人情報保護条例の全部改正(案)概要版 1 条例改正の主旨 令和3年5月に公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」により、個人情報保護法が改正されました。 この法改正により、地方自治体がそれぞれ整備していた個人情報保護制度は、個人情報保護法による全国的な共通ルールに統合されることになります (地方自治体には令和5年4月1日から適用)。区では、世田谷区個人情報保護条例を制定し、個人情報の適正な取扱いや、 区民の自己に関する個人情報の開示・訂正等を求める権利の保障に取り組んできましたが、法改正により、条例の大幅な見直しを行う必要が生じました。 そこで、法改正の趣旨を踏まえつつ、区民の皆さんの個人情報保護のためにこれまで積み重ねてきた取組みについて、 可能な限り制度として継承していきたいと考え、情報公開・個人情報保護審議会の答申も踏まえ、令和4年9月に条例の全部改正(素案)を公表し、 9月15日から10月6日まで区民意見提出手続(パブリックコメント)を実施しました。 今般、パブリックコメント及び審議会の意見を踏まえ、条例の全部改正(案)として取りまとめました。 2 条例改正の基本方針 @区がこれまで実施してきた、区民の個人情報保護に係る先進的かつ丁寧な保護施策を維持・発展させる制度設計に努めます。 A区が扱う個人情報は、原則、区民が情報主体であることを十分に意識し、今後は一層、その実効性を担保しうる運用上の工夫に努めます。 B行政への区民参加・区民監視の制度として審議会制度は有効であり、審議会を個人情報保護制度の運用に引き続き十分に活用します。 3 条例の全部改正(案)のスタイル 現在は、区独自の制度として様々な事項を網羅する全56条から成る条例を定めていますが、法改正により、 区の個人情報保護制度の大半は法が定めるところとなります。これにより、改正後の条例は、以下の事項を定める全14条の構成としています。 @法において条例で定めるとされている事項 A法に矛盾・抵触しない範囲において条例で定めることが可能な区独自の取組み 第1条 目的(条例の目的) 第2条 定義(条例で用いる用語の定義) 第3条 実施機関等の責務 第4条 情報公開・個人情報保護審議会への意見聴取等 第5条 総括個人情報保護管理者の設置等 第6条 条例要配慮個人情報 第7条 条例個人情報ファイル簿 第8条 開示決定等の期限 第9条 開示請求に係る手数料及び費用負担 第10条 訂正決定等の期限 第11条 利用停止決定等の期限 第12条 実施状況の公表 第13条 国等への要請 第14条 委任(条例施行の必要事項を規則に委任) 4 条例の全部改正(素案)からの主な変更点 (1)個人情報保護担当者に関する規定の新設(第5条第4項) 国の個人情報保護委員会より条例での規定について助言を受け、個人情報の保護体制の全体像を示すため、 個人情報保護管理者(課長)の下に個人情報保護担当者(係長)を設置することを規定します。 (2)条例要配慮個人情報に関する規定の新設(第6条) 法第60条第5項により、条例で規定することができるとされている「条例要配慮個人情報」について、 パブリックコメントの意見等を踏まえ、改めて審議会に意見を聴いた結果、以下の項目を独自に条例で定めることとします(P.4参照)。 @国籍 A性的マイノリティ Bドメスティック・バイオレンス (いずれも、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例の規定) (3)個人情報ファイル簿に係る条文の追加(第7条) 素案では、法において作成・公表義務がない対象人数が1,000人未満の個人情報ファイルについても、 個人情報ファイル簿と同等の内容の帳簿を作成・公表するとの考え方を示していました。 このことについて条文を追加します(P.5参照)。 (4)開示請求書、訂正請求書、利用停止請求書に関する規定の削除 素案では、各請求書に区独自の記載事項を設けることを想定していましたが、国から示された標準様式を精査した結果、 区独自の記載事項を設ける必要はないと判断したため、条文を削除しています。 (5)経過措置に関する附則の追加 現行条例から新条例への切替えに際しての開示等請求などの取扱いを経過措置として定めることとします。 5 条例改正の主なポイント (1)審議会への意見聴取等 改正個人情報保護法 国は、法及び国が設置する個人情報保護委員会が策定するガイドライン等の適正な運用をもって、個人情報の適切な管理が担保されることから、 自治体が設置する審議会等に対し、外部委託、外部提供、目的外利用等に該当する個別事案の審議を諮問することは許容されないとの見解を示しています。 改正条例(案)(区としての対応) 審議会には、審議会条例に基づく区長の附属機関として、今後も以下のように制度運用に関与していただき、 区民の皆さんの個人情報保護をより確実なものとしていきます。 条例や個人情報保護のための安全管理措置基準などの整備・改廃時の意見聴取。 外部委託、外部提供、目的外利用等の案件のうち、要配慮個人情報及び条例要配慮個人情報を含むものは審議会に報告。 個人情報漏えい事案発生時に報告。 これまで行っていた個別事案の諮問に代わり、以下のような対応を講じます。 @法第66条の安全管理措置を行うため審議会から意見を聴取し、運用ルールに基づく細則(審査基準)を策定し、 各所管課は事業実施の際に事前チェックを行います。 A外部委託、外部提供、目的外利用等を行った案件のうち、要配慮個人情報(病歴、犯罪経歴、身体障害・知的障害・精神障害等) 及び条例要配慮個人情報を含むものは、審議会に事後報告を行います。 そのうち、審議会が必要と認めた場合には、所管課に説明を求めることができることとします。 B運用ルールに基づく細則(審査基準)に基づく事前チェックが適切に行われているかなどを確認するため、新たに監査体制を構築します。 法では「法令に定める場合」や「本人同意がある場合」は、外部提供や目的外利用が認められており、 審議会への事後報告も「法令に定める場合」や「本人同意がある場合」は対象外とします。 (2)その他の事項(一覧) 条例要配慮個人情報 現行条例 「条例要配慮個人情報」の定義規定はありません。 改正個人情報保護法 「要配慮個人情報」以外に「条例要配慮個人情報」を条例で定めることができます。 条例の全部改正(案) @国籍、A性的マイノリティ、Bドメスティック・バイオレンスの3項目を「条例要配慮個人情報」として定めることとします (いずれも、世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例の規定)。 個人情報ファイル簿 現行条例 区では、「個人情報業務登録票」、「個人情報ファイル票」など、5種類の帳簿を作成・公表しています。 改正個人情報保護法 取扱人数の基準を「1,000人以上」とした「個人情報ファイル簿」の作成・公表義務が定められています。 条例の全部改正(案) 現行条例における「個人情報ファイル票」を発展させる形で、「個人情報ファイル簿」を作成・公表することとし、 それ以外の帳簿は作成しないこととします。 また、改正法において作成・公表義務の対象ではない取扱人数「1,000人未満」の個人情報ファイル簿も対象とし、作成・公表することとします。 個人情報等の開示・訂正・利用停止請求 手数料 現行条例 手数料は無料と定めています。ただし、写しの交付の場合は実費(コピー代等)の負担があります。 改正個人情報保護法 条例で定める額の手数料を納めることとされています。 条例の全部改正(案) 現行条例と同様に、手数料は無料とし、写しの交付の場合は実費(コピー代等)の負担を求めることとします。 決定期限 現行条例 開示請求 請求日から15日以内(請求日から30日までの延長可)と定めています。 訂正・利用中止請求 請求日から20日以内(請求日から60日までの延長可)と定めています。 改正個人情報保護法 請求日から30日以内(追加で30日までの延長可)と定められています。 条例の全部改正(案) 開示・訂正・利用停止請求のいずれについても、請求日から15日以内(請求日から30日までの延長可)とします。 (訂正・利用停止請求については、決定までの期限を現行条例より短縮することとします。) 行政機関等匿名加工情報の提供 現行条例 規定はありません。 改正個人情報保護法 都道府県・政令指定都市については提案募集が義務付けられますが、それ以外の地方自治体では、当分の間、導入は任意となっています。 条例の全部改正(案) 令和5年4月1日時点の導入は見送り、導入が義務付けられた都道府県・政令指定都市の状況を踏まえて、今後の導入を検討することとします。 区議会の取扱い 現行条例 区議会は、実施機関の1つとして条例が適用されています。 改正個人情報保護法 改正法は、区議会には適用されません。 条例の全部改正(案) 区議会は、条例の全部改正(案)の適用外とします。 条例要配慮個人情報 改正法では、人種、信条、社会的身分等が含まれる個人情報を「要配慮個人情報」と定めており、それ以外に地域の特性その他の事情に応じて、 取扱いに特に配慮を要するものとして、条例で「条例要配慮個人情報」を定めることができるとされています。 個人情報ファイル簿 事業・業務等を単位とした「個人情報ファイル」(個人情報を含む情報の集合体)について、その個人情報の利用状況等を記載した帳簿のことです。 改正法では、対象外となる一定のもの(取扱人数1,000人未満)を除き、個人情報ファイル簿の作成・公表義務が定められています。 行政機関等匿名加工情報 個人情報を特定の個人を識別することができないように加工し、かつ復元できないようにしたもの。 改正法では、民間事業者において利活用するための提案募集の仕組みが設けられています。