表紙 世田谷区本庁舎等整備に係る区民利用施設総合運営計画策定検討委員会 報告書 令和5年3月 次ページ はじめに  世田谷区では、新しい本庁舎等において、平成28年12月策定の本庁舎等整備基本構想の基本的方針に位置付けられた「区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎」を実現するために、区内の様々な地域から訪れる区民がふれあい、交流できる場所として、区民会館、区民交流スペース、広場、屋上庭園等、様々な区民利用・交流拠点施設の整備を進めています。  特に、区民が利用しやすいオープンな設えである区民交流スペースについては、平成30年度に「区民交流機能に係るワークショップ」、令和元年度に「区民交流スペースの運用に関する検討会」を実施し、淡水と海水が交じり合い、多様な生物が共生し合う「汽水域」のように、人々の共生の場になり、ここで生まれる新しい関係が社会課題の解決に取り組む体制となることを将来像とすることが提案されました。  これらの検討結果及び提案内容を踏まえつつ、世田谷区本庁舎等整備に係る区民利用施設総合運営計画策定検討委員会(以下、「検討委員会」という。)は、区民利用・交流拠点施設を総合的、効果的かつ効率的に運営するための「世田谷区本庁舎等に係る区民利用施設総合運営計画」(以下、「総合運営計画」という。)を世田谷区が策定にするにあたり、令和4年5月に設置されました。検討委員会は学識経験者、区内活動団体代表者、区民委員、学生委員等から構成され、5回にわたって議論を重ねてまいりました。区民会館、区民交流スペース、広場、屋上庭園等、それぞれ機能の異なる区民利用・交流拠点施設について、多様な人々の交流の場として、また、誰もが使える、憩える空間となるよう、施設の根幹をなす基本理念や基本方針を中心に検討し、本報告書をとりまとめております。  検討委員会での議論が、幅広い区民がふれあい、交流することのできる区民利用・交流拠点施設の実現に向けて活かされることを期待します。 令和5年3月 世田谷区本庁舎等整備に係る区民利用施設総合運営計画策定検討委員会 次ページ 目次 1 区民利用・交流拠点施設について 1ページ (1)新しい本庁舎等配置図 1ページ (2)各施設の竣工スケジュール 1ページ (3)各階平面図等 2ページ 2 世田谷区本庁舎等整備に係る区民利用施設総合運営計画策定検討委員会について 4ページ (1)目的 4ページ (2)検討事項 4ページ (3)委員名簿 4ページ (4)検討委員会の経緯 5ページ (5)検討内容 6ページ 3 新しい本庁舎等における区民利用施設の運営を考える区民ワークショップについて 10ページ (1)目的 10ページ (2)開催日時・場所 10ページ (3)主な内容 10ページ (4)開催結果 11ページ 4 基本理念と基本方針、実現に向けた取組みについて 13ページ (1)基本理念 14ページ (2)基本方針 15ページ (3)実現に向けた取組み 20ページ 5 事業・活動計画、組織運営計画について 22ページ (1)事業・活動計画 22ページ (2)組織運営計画 22ページ (3)総合運営計画策定方法の変更 23ページ 6 検討委員会からの提言 24ページ (1)今後の課題 24ページ (2)今後の展望 24ページ 1ページ 1 区民利用・交流拠点施設について  区民利用・交流拠点施設は、新しい本庁舎等に整備される区民会館、区民交流スペース、区民交流室、屋上庭園、広場、ピロティのことを指す。これらの施設は、区民利用が行えるように運営管理を行う。なお、各施設は本庁舎等の工期に合わせて、3回にわけて順次開館していく。 (1)新しい本庁舎等配置図 (2)各施設の竣工スケジュール 令和5年度(2023年度)開館 ・区民会館ホール            933席(前舞台使用時:900席) ・区民会館集会室(2室)         170㎡/105㎡ ・区民会館練習室(2室)        75㎡/40㎡ ・東1期棟エントランスホール      280㎡/80㎡ ・東1期棟ラウンジ          150㎡ 令和7年度(2025年度)開館 ・東2期棟区民交流スペース       580㎡ ・東2期棟区民交流室(2室)       各25㎡ ・東2期棟ピロティ           670㎡ ・東2期棟屋上庭園           1,200㎡ ・西2期棟区民交流室(2室)       30㎡/35㎡ ・外構広場               1,600㎡ 令和9年度(2027年度)開館 ・西3期棟 区民交流室(キッチンつき) 60㎡ 5㎡単位で記載 工事調整によって変更になる可能性があります。 2ページ (3)各階平面図等 1階平面図及び地下1階平面図 2階平面図 3ページ 6階屋上庭園(東棟)平面図 4ページ 2 世田谷区本庁舎等整備に係る区民利用施設総合運営計画策定検討委員会について (1)目的  世田谷区は新しい本庁舎等において、新たに整備する区民会館、区民交流スペース、広場等、様々な区民利用・交流拠点施設について、幅広い区民がふれあい、交流することのできる場所として、総合的、効果的かつ効率的に運営するための総合運営計画を策定することとした。  検討委員会は、これらの区の決定に基づき、専門的な知見や区民の視点に立った検討を行うため設置されたものである。 (2)検討事項  検討委員会では、区民利用・交流拠点施設の根幹となる基本理念や基本方針等を定めることを目的として議論を行うと共に、今後の区民利用・交流拠点施設の開館に向けた活動・組織イメージや区民参加の方法等についても検討を行った。 (3)委員名簿 学識経験者 【委員長】 曽田 修司  跡見学園女子大学マネジメント学部マネジメント学科教授 【副委員長】齋藤 啓子  武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科教授 福岡 孝則  東京農業大学地域環境科学部造園科学科准教授 団体    大坪 義明  世田谷みどり33協働会議事務局長 柴田 真希  NPO法人まちこらぼ代表理事 藤原 由佳  世田谷区子ども•青少年協議会委員 世田谷区男女共同参画•多文化共生推進審議会委員 松田 妙子  NPO法人せたがや子育てネット代表理事 区民・学生       片切 未季  公募委員 古森 万結  公募委員 細川 日向  公募委員 松本 実和子 学生委員 吉澤 卓   公募委員 和地 えり子 公募委員 区職員       片桐 誠   世田谷区生活文化政策部長       佐藤 絵里  世田谷区庁舎整備担当部長       清水 昭夫  世田谷区世田谷総合支所長 5ページ (4)検討委員会の経緯 第1回 令和4年7月4日(月)18:30~20:30      世田谷区民会館別館「三茶しゃれなあどホール」スワン 議題 ・委員長、副委員長の選出 ・総合運営計画策定について ・施設の設計内容について ・区民交流スペースに関する検討経緯について ・基本方針・目標についての意見交換 ・今後のスケジュール 第2回 令和4年8月1日(月)18:30~21:00 世田谷区役所第一庁舎5階庁議室 議題 ・第1回検討委員会での意見交換について ・区民交流スペースの設計への反映状況 ・事業・活動検討に基づき区民利用施設の基本方針・目標を考えるワールドカフェ ・第1回ワークショップ検討内容 ・今後のスケジュール 第3回 令和4年10月24日(月)18:30~20:30 北沢区民会館別館「梅丘パークホール」集会室 議題 ・第1回ワークショップ結果報告 ・第2回検討委員会での意見交換について ・基本方針・目標(案)についての意見交換 ・利用規則の基本的な考え方について ・第2回ワークショップの検討内容 ・今後のスケジュール 第4回 令和4年12月5日(月)18:00~20:30 世田谷区役所第一庁舎5階庁議室 議題 ・今後の進め方 ・基本理念・基本方針・実現に向けた取組みについて ・運営組織について ・第2回ワークショップ結果報告 ・第3回ワークショップ検討内容 ・第5回検討委員会ご案内 第5回 令和5年2月27日(月)18:00~20:30 保健医療福祉総合プラザ区民活動支援会議室1 議題 ・区長との意見交換会結果報告 ・第3回ワークショップ結果報告 ・運営計画の策定方法の変更について ・今後のスケジュールについて ・運営基本計画について ・事業・活動計画について(検討内容の総括) ・組織運営計画について 6ページ (5)検討内容 第1回 主な議題 ・総合運営計画策定 ・区民利用施設の設計内容 ・区民交流スペースに関する検討経緯 ・基本方針・目標についての意見交換 主な意見 ・近隣地域との一体利活用の想定についても検討範囲に含めていただけないか。 ・広場の使われ方として、日常の中でみんなが使うような使い方を今後検討していきたい。 ・平成30年度及び令和元年度のワークショップの結果がどの程度反映されているか、フィードバックがほしい。 ・区民利用を促していくためのインフラとして、Wi-Fiと充電設備が必要。 ・これまでの検討会での意見が、設計においてどの部分に反映されているのかということが分からないと、その先の議論ができないのではないか。 第2回 主な議題 ・区民交流スペースの設計への反映状況 ・事業・活動検討に基づき区民利用施設の基本方針・目標を考えるワールドカフェ 主な意見 A(区民交流スペース・区民交流室)、B(区民会館・ラウンジ・エントランス・集会室・練習室)、C(広場・ピロティ・東棟屋上庭園)のグループに分かれ、ワールドカフェ形式で意見交換を行った。 ・参加と協働のシンボルになるものを考えていくなかで運営の話に主眼が置かれた。新しい人が常に参加でき、多様な人が関わって、コラボレーションする組織となり、トライ&エラーを繰り返しながら「汽水域」の実現を目指していくことが大事である。 ・区民利用施設全体の一体運用という目線で交流をデザインし促進すること、区民92万人が利用者、または受益者であるような質の高い活動を目指し、「自ら提案し、交流をデザインする」という文化や慣習を培うことが大切である。 ・作る、育つ過程を楽しむこと、「コモン」という考え方で色々な人が一緒に時間をかけて作り上げていくことが大切であるとした。 ・区民や区職員がふらっと訪れて自由に過ごせる空間となること、この施設に収まらずに司令塔的に活動を拡げることも重要である。 ・全体を通じ、多様な区民、区職員が交わり、区民利用施設内のさまざまな施設の運営に横断的に関わること、理想像を固めずに自分たちに沿ったあり方を探りながら育てていくことで世田谷らしい施設づくりを目指していく。 7ページ 第3回 主な議題 ・基本理念・方針・目標(案)についての意見交換 ・利用規則の基本的な考え方について ・第2回ワークショップの検討内容 主な意見 ・書き出しの部分で、これまでの検討が踏まえられているということが分かると良い。 ・広場やランドスケープをいかに豊かにし、自然と誰でも足が向かうような場を大前提として作っていく必要がある。 ・原則や本則がわからない中でルールを決めるのは難しい。 ・大きな枠でのルールを決めたほうが良いのではないか。 ・「お試し実行委員会」という用語や、「試行」というご意見が多く、計画的に決めずに、見直しをしていくという方向性が共通している部分ではないか。 ・区民ワークショップのメンバーに社会実験に参加していただくという方向性もありえるだろう。参加者はとても熱心に参加している。検討委員会ともっと同期できる内容にしていけるのではないか。 第4回 主な議題 ・基本理念・基本方針・実現に向けた取組みについて ・運営組織について 主な意見 ・現在の図は理念があって、方針があって、取組みがあるというように落ちていくように見えるが、円を使って、相互に影響し合うような見せ方を検討してほしい。 ・「みどりを増やす活動が」という量的な部分への記載があるが、質的な「みどりを活かした住みやすい」等の書き方のほうが良い。 ・「実現に向けた取組み」に「誰もが使える、憩える空間をつくる」とあるが、利用の大前提として市民活動であるということ、みんなで支え合い、交流し住みやすい暮らし を実現するための場所だということがわかる記述としていただきたい。 ・「汽水域」を基本理念の一部としていく上で、もっと「汽水域とはこういったものだ」という説明に変えていただきたい。 ・「誰もが憩える場」に「汽水域」のような流れを感じられるためには、現時点では誰もがオープンに参加できる余地を残しておいたほうが良いのではないか。 ・従来にはない区民参加の形を提案していただいていると思う。運営委員会は非常に重要なので、対等に意見交換ができるチームビルディングが必要である。 ・運営委員会が意見を言うだけではなく、区民のやりたいことを叶え、どのように支援していくのかを運営委員会が考え、提案やフォローしていく立場を貫くことが重要である。 8ページから9ページ 第5回 主な議題 ・運営基本計画策定に向けた報告書について ・事業・活動計画について ・組織運営計画について グループワークでの意見交換 主な意見 ・総合運営計画が運営基本計画と運営実施計画に分かれるということだが、変更があった旨を報告書に明示する必要がある。計画に関する解像度が上がったということで成果として記入する形がよい。 ・令和5年度に予定しているワークショップや試行イベントは、実施して終了ではなく、アウトプットが計画に織り込まれるべきである。 ・庁内での課同士の協力体制を構築していくことが、運営体制に移行していく際には重要。 グループワークでの意見交換 ・若い世代が活躍でき、みどり等の活動の入口として敷居が下がる場になると良い。 ・日常的な利用と、雰囲気を作るためのブランディング、やりたいと思った人が参加しやすくなる仕組みづくり、この3点が必要となる。 ・運営事業者が区民利用施設の使い方を試しながら、育てていき、運営委員会が長期的な視点で軌道修正する役割として存在するのが良いのではないか。 ・つなぎ役についてワーキンググループの中で検討するのが良いのではないか。行政ともつながる重要な役割であるため、養成講座を行うと良い。 ・情報発信の質と頻度が重要である。キックオフイベントや、分かりやすいキャッチコピー、キッチンカーや商店街を巻き込んでの周知が効果的ではないか。 10ページ 3 新しい本庁舎等における区民利用施設の運営を考える区民ワークショップについて (1)目的  世田谷区では、総合運営計画を策定するにあたり、検討委員会と並行しながら、区内在住・在勤・在学の方を対象に、公募により選出した25名の方による、ワークショップを実施した。ワークショップでは区民利用・交流拠点施設における事業や活動を話し合い、結果を検討委員会に報告してフィードバックする一方で、検討委員会での検討結果にワークショップでも触れ、より活発な意見交換を行うように促すなど、各会議体の利点を活かし相互に影響を与え合うことを目的として実施した。 (2)開催日時・場所 開催日時 ・第1回区民ワークショップ 令和4年 9月11日(日)午後2時~午後4時 ・第2回区民ワークショップ 令和4年11月 5日(土)午後2時~午後4時 ・第3回区民ワークショップ 令和5年 1月22日(日)午後2時~午後4時 場所 世田谷区役所 第三庁舎 ブライトホール (3)主な内容 第1回区民ワークショップ ・新しい本庁舎等における区民利用施設の概要や、検討委員会との関係性の説明 ・グループワーク「新施設でやりたい事業・活動を考えよう」 第2回区民ワークショップ ・グループワーク「『いつでも使いやすい』を考えよう」 第3回区民ワークショップ ・『区民参加について』(世田谷みどり33協働会議 事務局長 大坪義明氏) ・グループワーク「新施設開館後の関わり方を考えよう」 11ページ (4)開催結果 1 参加者 定員25人 第1回区民ワークショップ 参加者21人 傍聴者7人(委員6人、一般1人) 第2回区民ワークショップ 参加者20人 傍聴者4人(委員2人、一般2人) 第3回区民ワークショップ 参加者15人 傍聴者3人(委員3人) 2 ワークショップで出された主な意見・感想 第1回区民ワークショップ 主な意見  お祭りやフェスティバル、大会、様々な体験、ワークショップ、マルシェなど、集まること、交流することを求めるアイデアが多く挙がった。 第2回区民ワークショップ 主な意見 ラウンド1:どのあたりで、誰が、いつ、どんな時間を過ごしていますか? 広場の日常 ・小さな子どもが危なくなく集える場 ・保育園(赤ちゃん)のお散歩遊び 広場の非日常 ・大道芸などの区民+αでの発表 ・秋ごろに広場全体を使って文化祭的なもの 区民交流スペースの日常 ・長い間利用できる勉強スペース ・区で開催される会議の後に参加者が交流できる 区民交流スペースの非日常 ・月1でライブ舞台を用意する(軽音楽、吹奏楽など) ・秋にアートの展示 ラウンド2:ラウンド1の過ごし方を実現するために何が必要ですか? 広場の日常 ・遊具や施設はあるが、ごちゃごちゃしていないゆったりしたスペース 広場の非日常 ・地域住民とのコミュニケーション ・出店スペースの整備(テントなど) 区民交流スペースの日常 ・強いWi-Fiをつける ・水道・排水設備をつくる 区民交流スペースの非日常 ・区民会館から譜面台を借りられるようにする ・個人や団体が開催する際、集客しやすいサポート 12ページ 第3回区民ワークショップ 主な意見 あなたは区民利用施設にどのように関わっていきたいですか? ・NPO法人を立ち上げて関わっていく(施設利用の取りまとめや運営) ・利用者と区の間の調整を支援するハブとして活動したい ・市民と協働できるシステムを構築する時に、障害のある方の参加の仕組みを一緒に考えたい ・区内学校の学生バンドによる音楽祭を企画したい 区民参加を促進するには、どのような仕組みがあったら良いでしょうか? ・コーディネーター役(区とも調整できる人)がいると良い ・誰にでもわかるように伝える仕組みをつくる ・花に詳しい人が、花を植えるときにサポートしてくれる ・なるべく若い人(小・中学生、高校生、大学生)を参加者に入れる 令和7年度のグランドオープン前に取り組んでおくことはありますか? ・実行委員を募り、目的や内容を検討する ・利用者が見られるように、グランドオープンまでに試行した企画・事例をまとめて公開する ・近隣の中学、高校で、この施設で何ができるのか、具体的に説明する ・区内の中学、高校、大学、NPOにプレオープン企画をコンペで行い、それを学生自ら発信 (参考)区民ワークショップの様子の写真 13ページ 4 基本理念と基本方針、実現に向けた取組みについて  検討委員会は区民利用・交流拠点施設について、本庁舎等整備基本構想の基本的方針の一つに位置付けられた「区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎」を実現するために、平成30年度および令和元年度の区民交流スペースに関する検討経緯を踏まえたうえで、施設運営の根幹となる基本理念等を中心に検討を重ねた。  並行して、区民ワークショップにおいては、どのように区民利用・交流拠点施設を利用したいか、備品や仕組みとしては何が必要かを議論した。幅広い年代の参加者から挙げられた具体的な利用イメージは、基本理念等を策定する際における方向性等の参考とした。  これらの議論を踏まえ、まず本庁舎等整備に伴い、新たに整備される区民利用・交流拠点施設の全体の意義や使命などを表した「基本理念」を定めた。次いで、基本理念の実現に向けた方向性を分かりやすく表現したものとして3つの基本方針を設定した。さらに基本理念を具体化するための施策として「実現に向けた取り組み」を5つ定め、これらは相互に影響しあう関係としている。  詳細については、以下のとおり報告する。 体系図 14ページ (1)基本理念 区民、市民活動団体及び区が協働して、多様な人々がともに支えあい、交流し、 心豊かな住みやすい暮らしを実現する  平成28年(2016年)12月策定の世田谷区本庁舎等整備基本構想に基本的方針の一つとして掲げた「区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎」。この方針に基づいて設計された新しい本庁舎等は、特にエントランス部分に位置する大規模な区民交流スペースについて、設計段階の検討会では、淡水と海水が交じり合い、多様な生物が共生し合う「汽水域」のように、人々の共生の場になり、ここで生まれる新しい関係が社会課題の解決に取り組む体制となることを将来像としました。  この提案を受けて、区民交流スペースや、世田谷区民会館、広場、屋上庭園等も含めた区民利用・交流拠点施設を舞台とし、さまざまな区民、市民活動団体及び区が協働して相互に影響を与え合いながら、多様な人々、一人ひとりが新たな縁を生み出し、交流して、心豊かな住みやすい暮らしを実現することをめざします。 15ページ (2)基本方針 1 多様な人々の交流を生み出す場をつくる ・誰でも日常的に訪れることができる空間や事業を提供する。 ・区民や市民活動団体が運営に関わり、区民利用・交流拠点施設を積極的に利用して活動することで、区民自治に向けた共生・共助を生み出す。 ・区が市民活動団体、地域活動団体、教育機関、事業者等と協働・連携した取組みを実施する。 基本方針1イメージ化 これまでの検討結果からの利用イメージ ・区民利用・交流拠点施設全体が交流の舞台になる。 ・本庁舎等に訪れた人が、色々な場所で思い思いの時間を過ごすことができ、エリアの性質ごとに様々な使われ方が想定される。 16ページ 2 文化・芸術によって暮らしを豊かにする ・全区的な文化・芸術の拠点として位置づける世田谷区民会館において、区民の誰もが暮らしの中で、多様な文化・芸術にふれ、体験・参加できる機会を提供する。 ・区民、市民活動団体及び区等の文化・芸術の取組みを推進し、心豊かな活力あるコミュニティの形成につなげる。 ・世田谷の歴史や文化・芸術の特色を活用し、地域の魅力向上に寄与する。 基本方針2イメージ化 これまでの検討結果からの利用イメージ ・直接、文化・芸術に触れる場は、文化・芸術の拠点である区民会館ホールがメインとなる。 ・練習室での活動や、ラウンジでのミニコンサートなど、様々な活動の規模が想定される。 ・屋内だけではなく、区民参加の文化事業やワークショップの場として、屋外を使った活動も考えられる。広場全体や、ピロティに面する扉を開放して区民会館のエントランスホールから区民交流スペースまでを一体として、様々な人が自由に参加できる、広く賑やかな場として使うことも可能。 17ページ 3 みどりを通して多様な主体をつなぎ、心潤う環境をつくる ・「世田谷みどり33」をめざした「区役所一帯のみどりの拠点」として、魅力ある緑化空間づくりと拡大に取り組み、みどり豊かで住みやすい「世田谷らしさ」のある風景の創出によって、みどりの量と質を高めることに貢献する。 ・多様な人々がみどりを通して環境と調和する場をともに創り上げ、その多面的機能や価値を共有し、すべての持続可能性の基層である「環境」にかかる負荷を低減させるための意識を醸成する。 基本方針3イメージ化 これまでの検討結果からの利用イメージ ・まず植栽に触れる場所で活動が発生し、そこを拠点として活動が広がっていく。広場には保存・移植されたケヤキが植えられている。 ・みどりに触れる活動として、プランターなどでみどりを増やしつつ、空間を分けることも可能。 ・屋上庭園全体はみどりをコモンのように共同管理をし、みどりに触れるだけではない、みどりを育み活かす活動なども想定される。 18ページ 基本方針3参考資料  本庁舎等周辺は、「世田谷区みどりの基本計画」において、「区役所一帯のみどりの拠点」と位置付けられている。 新しい本庁舎等周辺図 世田谷区役所周辺の土地利用方針図 世田谷区都市整備方針第二部地域整備方針 (平成27年4月)より抜粋 ※世田谷区本庁舎等整備基本構想(平成28年12月)にも掲載 19ページ 基本方針1・3より動線イメージ(配置図及び断面図)  人の流れが想定される四方向からの動線を示す。外構におけるみどりの風景が通行する人の目を引き付け、庁舎内の通路が気軽に通過できる「道」の一部となり、ガラス張りの区民交流スペースや広場での交流を生み出す。 配置図 断面図兼立体図 20ページ (3)実現に向けた取組み  基本理念を達成するためには、「多様な人々が訪れ、交流する場をつくる」取組みが求められます。この取組みを実現するためには、子どもから若者・高齢者や、障害者、外国人等、区民の誰もが関わりやすい仕組みの中で、一緒に時間を共有して、試行を重ねながら、組織や人を育み、進めていくことが必要です。 1 区民、市民活動団体及び区等が協働し、地域と連携する一体的な運営組織をつくる ・区民、市民活動団体及び区等が運営に参画し、地域と連携する組織を構築し、区民利用・交流拠点施設で実施する事業や活動に横断的に関わる。 ・区民利用・交流拠点施設全体への区民参画のあり方と併せて、緑化空間をコモンのように共同管理することについて検討し、試行する。 2 交流・共生を生み出す「つなぎ役」を設置する ・地域の課題やニーズに応じ、区民、市民活動団体及び区とのマッチング・交流など様々な案内や相談対応などを行う機能を試行する。 ・区民交流スペース等で、利用者同士が顔見知りになり、つながるためのつなぎ手としての役割を担うこともめざす。 3 区民が主体的に関わる事業を実施する ・市民活動の持続的発展のため、新たに活動に参加する区民を増やすための普及事業を実施する。 ・誰もが参画・協働できる文化・芸術環境を整備していくために、区民参加の文化事業やワークショップ等を開催する。 ・みどりを楽しむことが区民にとって習慣づけられ、地域におけるみどりの役割を大切にする活動が区民に浸透するよう、「見て、楽しむ」だけでなく、「育み、活かす」事業の推進と定着を図る。 4 誰もが使える、憩える空間をつくる ・区民が気軽に立ち寄れ、思い思いの時間を過ごせる居場所となるような空間づくりを実施する。 ・区民同士や区民と区などのミーティング、学習や研修、ワークショップなど、多様な体験や新しい経験ができる場を提供する。 ・イベントや展示などを通して、市民活動団体等との協働や文化・芸術の創造性などから生み出される様々な価値により、活力ある賑わいづくりの場としてのイメージを創出する。 21ページ 5 地域と連携した事業を実施する ・商店街、教育機関、図書館、公園緑地など、区民利用・交流拠点施設周辺における地域の人的・文化資源と連携した地域の価値を高める事業を実施する。 計画における構成図 22ページ 5 事業・活動計画、組織運営計画について (1)事業・活動計画  検討委員会や区民ワークショップにおいて、具体的なイベントから、施設における活動の方向性まで、運営実施計画に記載する予定の事業・活動計画につながる様々な意見が以下のとおり提言された。 検討委員会で提言された主な意見 ・「サードプレイス」のように、目的が無くても来る、普段から使える場にするための方策が必要である ・区民利用施設全体の一体運用という目線で、交流をデザインし、促進することが大切である ・お互いの顔が見えるような、横のつながりをつくる「交流の仕組みづくり」が重要である ・貸館だけではない、区民92万人が利用者、または受益者であるような質の高い活動ができると良い ・共同管理(コモン)という考え方のもと、区民が一緒に作り上げる場所にできたら良い ・区民利用施設に収まらずに、司令塔的に活動を拡げることも重要である 区民ワークショップで提言された主な意見 ・コンサート、映画上映会等の鑑賞事業 ・季節ごとのお祭りやマルシェ等の交流イベント ・舞台芸術の大会・フェス ・学生の放課後の居場所 ・国際交流、多世代交流、障害者との交流の場 ・季節の花や草木を楽しむ、ガーデニング体験 ・工作や体験のワークショップや教室 ・キッチンカーを広場やピロティへ ・フレキシブル(やさしい・あたたかい・ひとりもとりこぼさない) ・来る人をやさしく案内する人、人と人をつなげることができる人 ・世田谷らしさとして、多種多様な人材を活かし、新しいムーブメントを作る (2)組織運営計画  検討委員会において、事務局から「区民が参加する組織である運営委員会、区民会館や区民交流スペースなどを運営する運営事業者、区の三者が一体となる組織」が提案され、検討委員からは「区民が参加できるような従来にはない形を模索していることがわかり、非常に肯定的に受け止めている。」という意見が多く出された。  一方で、「区内の中間支援組織であるNPO等の活用、または連携を検討する必要性」や、「多岐にわたる区民利用・交流拠点施設を運営する事業者を1事業者、また 23ページ は、複数の事業者で運営した場合におけるメリットやデメリットを考慮した上で決める必要がある。」という意見も提言された。 (3)総合運営計画策定方法の変更  検討委員会及び庁内での検討を踏まえ、総合運営計画を「運営基本計画」と「運営実施計画」の2つに分割し、2年かけて順次策定することとする。  「運営基本計画」については、検討委員会において議論を重ねた、「基本理念・基本方針・実現に向けた取組み」を中心とした大きな方針を記載し、区が策定する。  「運営実施計画」については、検討委員会での議論を前提とした上で、事業・活動計画、組織運営計画について記載していく。「運営基本計画」において明確となった方針を踏まえ、令和5年度はワークショップや、試行イベント等を通して、より具体的・実際的な区民利用・交流拠点施設の運営に関しての検討を積み重ね、「運営実施計画」に反映させ、区が策定する。 【計画における構成図:「運営基本計画」+「運営実施計画」】 24ページ 6 検討委員会からの提言 (1)今後の課題  「基本理念・基本方針・実現に向けた取組み」をはじめとし、検討委員会にて議論した内容は、庁内における調整を進めながら、運営基本計画・運営実施計画へ適切に反映させるとともに、開館準備のため早期に策定されたい。  また、区民ワークショップにおいて、参加者同士で議論された意見は、運営基本計画の策定に活用するとともに、区民ワークショップが終了した後も、参加者との関係が継続的に続くような取組みを検討していくべきである。  今後、「運営実施計画」の策定にあたっては、類似施設における区民参加型事業の試行状況や、シンポジウム、ワークショップ等で取り入れた区民意見及び、他の市区町村の先行事例や類似事例等も踏まえる必要がある。「今まで本庁舎等に来なかった区民が多数集まり、交流する」ことも想像しながら、「区民自治と協働・交流の拠点としての庁舎」となるような事業や組織、運営を引き続き検討されたい。 (2)今後の展望  今後は、区が工期に合わせる形で予定しているスケジュールに沿って、区民参加の場となる運営委員会の組成準備や、運営事業者の選定準備に取り組み、区民利用・交流拠点施設の開館に向けて運営体制等に向けた検討・準備を進めることが望ましい。 今後のスケジュール(予定) 令和5年度 ・「運営基本計画」策定 ・試行イベント、シンポジウム、ワークショップ、ワーキンググループ等の実施 ・「運営実施計画」策定 令和6年度 ・運営委員会の組成準備、運営事業者の選定準備  令和7年度 ・区民利用・交流拠点施設竣工・開館  ※一部は令和9年度竣工・開館 25ページ 今後のスケジュール(予定)イメージ 以上