世田谷区国土強靱化地域計画 1.国土強靱化の背景と基本理念 (1)国土強靱化の背景 ○ 日本は、豊かな自然に恵まれ、地域の住民や来訪者等に多くの恵みをもたらし、地域の活力の源となっている一方、豊かな自然は、台風、大雨、大雪等の気象災害や地震、火山、津波等の地象災害の原因ともなり、地域、個人から培ってきたものを一瞬にしてうばってしまうこともある。 〇 東日本大震災をはじめ、度重なる大規模自然災害により様々な被害がもたされたてきた教訓から、大地震等の発生のたびに甚大な被害を受け、その都度、長期間かけて復旧復興を図るといった「事後対策」を避け、平時から大規模自然災害への備えについて、予断を持たず最悪の事態を念頭に置き、従来の防災の範囲を超えて、まちづくりや産業政策も含めた総合的な対応を行っていくことが必要であり、平成25年「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法(以下「基本法という」)」が制定された。 (2)基本法における地方公共団体の責務 〇 基本法第4条において、地方公共団体は法の基本理念にのっとり、国土強靱化に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、地域の状況に応じた施策を総合的かつ計画的に策定し実施する責務を有すると規定されている。 〇 基本法第13条では、国土強靭化に係る区市町村の計画等の指針となるべきものとして「国土強靱化地域計画」を定めることができると規定されている。 2.計画の位置づけと策定の考え方 (1)計画の位置づけ 〇 世田谷区の強靭化を一層推進するため、基本法第13条に基づく国土強靱化地域計画として策定する。 〇 世田谷区国土強靭化地域計画は、世田谷区基本計画を区の最上位としつつ、基本法の趣旨を踏まえ、地域防災計画をはじめとする各行政分野の個別計画の強靭化に関する部分についての指針性を持つ計画として位置づける。 (2)策定の考え方 〇 国内では、毎年のように自然災害により多くの人命や財産が失われてきた。東日本大震災以降も、平成28年の2度にわたる震度7の熊本地震や北海道胆振東部地震、平成30年7月の西日本豪雨や令和元年台風第15号・第19号により大きな被害が発生した。 〇 区内では、幸いにも多数の死傷者を伴う災害には見舞われていないが、毎年のように局所的な短時間豪雨による被害は発生しており、令和元年10月には台風第19号により大きな被害が発生した。 〇 区では、地域防災計画をはじめ、各種分野別計画等において、国土強靭化の趣旨に沿った、事前防災・減災の対策となる取組みが推進されていますが、さらなる防災・減災の取組みを進めるため、国土強靭化に関わる施策等との整合を図り国土強靱化地域計画を作成する。 3.基本的な進め方 大規模自然災害に備える強靭化の趣旨を踏まえ「地震、地震火災、洪水・浸水、土砂崩れ、火山噴火」などの自然災害を想定した。 STEP1 目標の設定(目標の明確化) 国や東京都の目標を参考に世田谷区の地域特性を踏まえて4つの基本目標と8つの事前に備えるべき目標を設定した。 STEP2 リスクシナリオの設定 国や東京都のリスクシナリオ(起きてはならない最悪の事態)を参考に世田谷区の地域特性を踏まえて23のリスクシナリオを設定した。 STEP3 脆弱性の評価(分析、課題の抽出) リスクシナリオ(起きてはならない最悪の事態)を回避するため最悪の事態に対する脆弱性を分析し課題を抽出した。 STEP4 推進方針の設定 脆弱性の評価結果をもとに強靭化のための対応方策について取組み方針を作成した。 3.計画の構成@(案) (1)基本目標 1 人命の保護が最大限図られること 2 区及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること 3 区民の財産及び公共施設の被害が最小限に抑えられること 4 迅速な復旧復興を達成すること (2)事前に備えるべき目標とリスクシナリオ(起きてはならない最悪の事態) 目標1  大規模自然災害が発生したときでも・大規模自然災害と大規模感染症が同時に発生したときでも人命の保護が最大限図られる 1−1 住宅・建物等の大規模倒壊により多数の死傷者が発生する事態 推進方針【建築物の耐震化の促進】、【落下物及び倒壊等の防止】、【基盤施設の安全性の確保】【地域の防災力の向上】、【防災意識の醸成】 1−2 密集市街地や不特定多数が集まる施設で大規模火災により多数の死傷者が発生する事態 推進方針【木造住宅密集地域等の解消】、【延焼拡大の防止と避難空間の確保】、【緊急輸送道路等の機能確保】【消防団活動の強化・充実】、【防災意識の醸成】 1−3 風水害により市街地が広範囲に浸水する事態 推進方針【多摩川の治水対策の強化】、【河川・下水道の整備】、【流域対策の強化、グリーンインフラの推進】、【水害に強い家づくり・まちづくりの対策の推進】、【情報の充実と避難対策】、【地域の防災力の向上】 1−4 大規模な火山噴火、土砂災害等により多数の死傷者が発生する事態 推進方針【火山灰対策】、【土砂災害の対策】、【情報の充実と避難対策】、【地域の防災力の向上】 1−5 情報伝達の不備による避難行動の遅れ等で多数の死傷者が発生する事態 推進方針【情報伝達手段の充実】、【情報伝達体制の整備】、【防災意識の醸成】、【地域の防災力の向上】 1−6 大規模自然災害と大規模感染症が同時に発生し多数の死傷者が発生する事態 推進方針【健康危機管理体制の整備】、【地域住民との連携】、【防災意識の醸成】 目標2  大規模自然災害発生直後から救助・救急、医療活動等が迅速に行われる 2−1 食料・飲料水等、生命に関わる物資の供給が長期に停止する事態 推進方針【備蓄品等の確保】、【物資供給体制の確保】、【道路ネットワークの確保】、【緊急輸送道路等の機能確保】、【無電柱化の推進】、【各家庭での備蓄】 2−2 消火・救助・救急、医療活動が絶対的に不足する事態(エネルギー供給の長期断絶を含む) 推進方針【医療体制等の確保】、【災害への備え】、【道路ネットワークの確保】、【地域の防災力の向上】 2−3 想定を超える大量の帰宅困難者が発生し被害が拡大する事態 推進方針【帰宅困難者の発生抑制】、【滞在施設の確保】、【帰宅困難者対策に資する公園緑地の活用】、【帰宅困難者対策の充実】 2−4 疾病・感染症等が大規模に発生する事態 推進方針【保健衛生体制等の整備】、【避難所等での衛生環境の確保】、【防災意識の醸成】 2−5 劣悪な避難生活や不十分な健康管理により多数の被災者の健康が悪化する事態 推進方針【避難所等での衛生環境等の確保】、【住宅復興への取組み】、【地域の防災力の向上】、【防災意識の醸成】 目標3  大規模自然災害発生直後から必要不可欠な行政機能は確保する 3−1 区役所及び施設等の被災により行政機能が大幅に低下する事態 推進方針【防災機能の整備】、【災害時の対応強化】、【他自治体との連携】 3−2 区職員の被災や業務量増加等による心身の不調により行政機能が大幅に低下する事態 推進方針【職員の健康確保等】、【他自治体との連携】、【備蓄品の充実】 目標4  大規模自然災害発生直後から必要不可欠な情報通信機能は確保する 4−1 災害により必要な情報が必要な人に伝達できない事態(電力供給、郵便、テレビ、ラジオの中断等) 推進方針【情報伝達手段の充実】 目標5  大規模自然災害発生後であっても経済活動(サプライチェーンを含む)を機能不全に陥らせない 5−1 企業が被災により事業継続不能になる事態(サプライチェーンの寸断等による企業の生産力が低下する事態を含む) 推進方針【事業者の事業継続力の強化】、【道路の災害対応力の強化】、【緊急輸送道路沿道建築物の耐震化】 目標6  大規模自然災害発生後であっても生活・経済活動に必要最低限の電気、ガス、上下水道、燃料、道路ネットワーク等を確保する 6−1 電気・ガス・上下水道などのライフラインの停止が長期化する事態 推進方針【燃料等の確保】、【無電柱化の推進】 6−2 道路被害により道路ネットワークの機能が分断する事態 推進方針【道路ネットワークの確保】、【道路の災害対応力の強化】、【緊急輸送道路沿道建築物の耐震化】、【無電柱化の推進】 目標7  制御不能な二次災害を発生させない 7−1 市街地での火災の拡大により大規模火災が発生する事態 推進方針【木造住宅密集地域の解消】、【延焼拡大の防止と避難空間の確保】、【住宅内での火災予防対策】、【消防団活動の強化・充実】、【地域の防災力の向上】 7−2 建物倒壊による被害で交通麻痺が発生する事態(余震による落下物の被害等を含む) 推進方針【道路ネットワークの確保】、【落下物等の防止対策】、【建物や敷地の被害状況の把握】、【災害情報の迅速な提供】 7−3 風評被害により世田谷のイメージが低下する事態 推進方針【情報の把握と正確な情報伝達】、【区の復興の取組みのPR】 目標8 大規模自然災害発生後であっても、地域社会・経済が迅速に再建・回復できる条件を整備する 8−1 復旧復興体制の遅れや人材不足により復旧復興が大幅に遅れる事態 推進方針【復旧・復興体制の整備】、【人材・資機材の確保】、【ボランティア受入体制の整備】、【家屋等の被害状況の把握】 8−2 地域コミュニティの崩壊・治安の悪化により復旧復興が大幅に遅れる事態 推進方針【地域の防災力・防犯力の向上】 8−3 大量に発生する災害廃棄物の処理の停滞が長期化し復旧復興が大幅に遅れる事態 推進方針【災害時の廃棄物処理体制の整備】、【生活環境の保全と公衆衛生の確保】、【区民・事業者への周知・啓発】、【災害廃棄物の発生抑制】 4.施策分野別の推進方針  推進方針を、世田谷区基本計画の分野別計画の4分野に行政機能を加えた5分野で施策分野を設定し、推進方針を整理した。 1 健康・福祉     2 子ども若者・教育   3 暮らし・コミュニティ   4 都市づくり   5行政機能