世田谷区基本計画(素案) 令和6 (2024)年度 ▶ 令和13 (2031) 年度 令和5年9月 世田谷区 【世田谷区基本構想(平成25年9月議決)に定める「九つのビジョン」】 ・個人を尊重し、人と人とのつながりを大切にする ・子ども・若者が住みやすいまちをつくり、教育を充実する ・健康で安心して暮らしていける基盤を確かなものにする ・災害に強く、復元力を持つまちをつくる ・環境に配慮したまちをつくる ・地域を支える産業を育み、職住近接が可能なまちにする ・文化・芸術・スポーツの活動をサポート、発信する ・より住みやすく歩いて楽しいまちにする ・ひとりでも多くの区民が区政や公の活動に参加できるようにする 第1章 計画の策定について 1. 計画策定にあたって 世田谷区基本計画は、区政運営の基本的な指針であり、中長期的な展望を踏まえ、向こう8ヵ年の政策、施策を総合的かつ体系的に明らかにする最上位の行政計画です。 基本計画は、計画の意義を示す「計画策定の背景」、区政が目指すべき方向性や計画の理念を定めた「基本方針」、基本計画の具体化に不可欠で特に重点的に取り組むべき政策である「重点政策」、各分野の政策、施策の全体像を明らかにする「分野別政策」、計画に掲げる政策、施策の推進にあたり必ず考慮すべき指針である「計画実行の指針」、目指すべき未来の世田谷の姿の実現に向けた「持続可能な自治体経営」の各章で構成します。 世田谷区は、平成25年(2013年)9月に区議会で議決された世田谷区基本構想のもと、マッチングによる横断的連携や区民・事業者等との参加と協働により取組みを進めてきました。区制100周年を見据え、新たな基本計画において、基本構想に込められた目標や理念の実現に向けたさらなる取組みを進めていきます。 2. 計画の位置づけ・期間 (1)計画の位置づけ 基本計画は、区民生活のニーズと世田谷区の抱える課題に対して、区民とともに実現を目指す将来目標を設定し、向こう8年間に区が重点的に取り組む政策、施策の方向性を明らかにした区政運営の基本的な指針であり、区の最上位の行政計画です。また、区の各行政分野の個別の計画を総合的に調整する指針の役割を果たします。 (2)計画期間 計画期間は、令和6年(2024年)度から令和13年(2031年)度までの8年間とします。中間年での見直しを図ることで、機動的・実践的な計画とし、社会状況の変化などを一層反映できる計画とします。 3. 計画の進行管理 (1)PDCAサイクルによる計画の進行管理 行政評価を通じて検証・評価を実施することで、PDCAサイクルによる計画の進行管理を行います。1年ごとにそれぞれの事業がどの程度進んでいるのか進捗管理を行い、必要に応じて計画の修正等を行う予定です。また、行政評価を通じてコスト面での分析、成果達成度の評価を実施するなど、着実に計画の進行管理を進めていきます。 第2章 計画策定の背景 1. 区の歴史 世田谷区は、武蔵野台地に広がる環境に恵まれた住宅地、豊かに流れる多摩川、多摩川から野川沿いに続く緑の国分寺崖線、世田谷の原風景とも言える農の風景、歴史が織り込まれたまち、にぎわいのあるまちなど、人々の生活や文化に根ざした個性豊かな多様な都市風景によって形作られています。 昭和7年(1932年)に世田谷、駒沢、玉川、松沢の2町2村が合併して世田谷区が生まれました。その後、昭和11年(1936年)に千歳、砧の2村が合併して、現在の姿となりました。区内への鉄道の開通や関東大震災後の復興、第二次世界大戦後の復興から近年までの急激な人口流入、快適な居住環境と都心部への交通条件の良さによりベットタウンとして拓け、今では、23区最大の人口規模である92万人という県に匹敵する人口を抱える住宅都市へと発展し、今日の世田谷へと続いています。 そうしたなかでも、個性や独自の歴史、特色を持ち、多様性のあるコミュニティの活性化が図られてきました。暮らしの豊かさが増し、うるおいやゆとりが求められるなかで、文化・福祉・スポーツなどの区民の活動へ広がりました。まつりやボランティアなど地域活動への参加の高まり、福祉や防災まちづくりなどの住民参加の取組みを積極的に進め、個性豊かなまちづくり活動を支えています。 国分寺崖線に代表される樹林地や湧水など、みどりとみずに恵まれた自然環境を背景とし、多くの文化人が輩出されるとともに、その環境を愛する区民の熱意ある活動によって豊かな住宅環境が保全されています。また、区民の生活に結びついた魅力ある商業地や大学、文教施設が点在し、にぎわいや文化の香りのある都市の魅力を高めています。 2. 社会動向 世田谷区の総人口は、地価高騰が顕著であった時期と並行するように昭和62年(1987年)から減少し、バブル経済の崩壊後の平成7年(1995年)以降は一貫して増加してきましたが、令和4年(2022年)に減少に転じ、その後やや回復の兆しがあるものの、今後もこれまでのような右肩上がりの人口増加は見込めない状況に直面していきます。 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、区民の生命や健康のみならず、地域コミュニティや社会経済活動にも重大な影響を及ぼしました。さらに、大規模台風やゲリラ豪雨の頻発など災害が常態化しており、区民の日常生活を脅かしています。これまでに前例のない地球規模のパンデミックや気候危機が、区政の根幹を揺るがしかねない事態となっています。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻などの世界情勢に起因した物価高騰などにより、区民生活や区内産業は大変厳しい状況下にあるとともに、所得格差や地域社会の分断の広がりへの懸念、社会インフラの老朽化などの課題もあり、区を取り巻く状況は厳しさを増しています。こうした急激な社会状況の変化を踏まえ、区政には大きな転換が求められています。 3. 人口 (1)人口動向 平成7年(1995年)以降、総人口は長期的には増加傾向にあり、26年間で約14万人増えて、令和3年(2020年)に92万人を超えました。この人口増加の主な要因として、転入者数が転出者数を上回る「社会増」が続いたことがあげられます。一方、世田谷区の出生数は平成28年(2016年)以降、減少傾向が続いており、令和元年(2019年)には死亡数が出生数を上回る「自然減」に転じ、その差は徐々に広がっています。 令和4年(2022年)には新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、「社会減」となったことから令和4年(2022年)には人口減少となりました。その後転入者が増加、転出者が減少し「社会増」となりましたが、「自然減」が上回ったため再び人口減少となり、令和5年(2023年)の世田谷区の人口は915,439人となっています。 年齢3区分別人口の推移をみると、年少人口(0-14歳)は増加傾向から減少傾向に変化しており、令和5年(2023年)の年少人口は106,440人で、10年前の平成25年(2013年)に比べて増加していますが、5年前の平成30年(2018年)と比べると減少しています。令和5年(2023年)の生産年齢人口(15-64歳)は622,265人で、10年前に比べて増加していますが、構成割合は減少しています。また、高齢者人口(65歳以上)は186,734人で、長期的に増加傾向にあり、10年前に比べて2万人以上増加し構成割合もやや増加しています。 (2)将来人口推計 令和5年(2023年)1月1日の人口をもとにした区の将来人口推計では、総人口については、今後20年間緩やかな増加が続き、令和24年(2042年)に937,270人に到達した後、緩やかな減少に向かう、という見通しとなっています。 年齢3区分別人口については、高齢者人口は長期的に増加傾向、年少人口は緩やかな減少傾向を見込んでいます。生産年齢人口は緩やかに増加した後、減少に転じる見込みとなっています。総人口に対する構成比では、令和5年(2023年)に比べ令和25年(2043年)には、年少人口が2.4%減少して9.2%、生産年齢人口は4.3%減少して63.7%、高齢者人口は6.7%増加して27.1%となる見通しです。 4. 財政状況 世田谷区の財政状況は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく健全化判断比率に照らし合わせると、「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債費比率」、「将来負担比率」の4つの指標すべてにおいて、健全な状態を維持しています。 これまでの区財政の状況を概括すると、当初予算規模は拡大を続けており、この10年間で約1.5倍となりました。歳出では、待機児童問題解消に向けた保育施設整備費や保育園運営費といった子ども関連経費が大きく伸び、また、障害者自立支援給付費や介護保険、後期高齢者医療保険などの社会福祉関連経費も増加しています。歳入では、特別区税や特別区交付金が堅調に推移してきたほか、消費税率引上げに伴い地方消費税交付金が増となりました。しかし一方で、この間、増加の一途を辿るふるさと納税の影響により、平成25年度(2013年度)から令和5年度(2023年度)までの累計で460億円もの税源が流出しており、看過できない状況となっています。 区ではこれまでの基本計画の実現に向けた取組みとして、「世田谷区新実施計画(平成26年度~平成29年度(2014年度~2017年度))」や「世田谷区新実施計画(後期)(平成30年度~令和3年度(2018年度~2021年度))」を策定し、着実に施策を推進してきました。 令和2年初頭からは新型コロナウイルス感染症の影響により、複数年にわたり厳しい財政状況が見込まれる中、切迫する区民ニーズに応え、持続可能な行財政運営を確保するとともに、政策課題の優先順位を全庁横断的に整理し、あらゆる施策について本質的に見直しを進めるため、「世田谷区政策方針(令和2年9月~令和3年度(2020年9月~2021年度))」を策定しました。また、令和4年度(2022年度)以降は物価高騰等による影響も重なり、国や都の財源も活用しながら、区民生活の安全と安心を守り抜くための施策を最優先に取り組んできました。さらには、コロナ禍により大きく変化する社会状況を踏まえ、新実施計画(後期)から本計画につなげる計画として「世田谷区未来つながるプラン(令和4年度~令和5年度(2022年度~2023年度))」を策定し、コロナ後を見据えた持続可能な社会の実現に向けて、行財政運営を行ってきました。 今後の世田谷区の財政見通しとしては、歳入の根幹である特別区税については、将来人口推計における生産年齢人口の推移を踏まえて、一定の増減を見込んでいます。また、基金繰入金や特別区債については、投資的経費の増減にあわせて、計画的な活用を見込んでいます。 一方、歳出では、生活保護費や障害者自立支援給付費等の社会保障関連経費について、一定の増を見込むとともに、特別会計への繰出金について、高齢者人口の推移等を踏まえた増を見込みました。また、本庁舎や学校施設をはじめとする公共施設の改築・改修の状況により、令和7年度(2025年度)以降の投資的経費は増加傾向となる見込みです。 こうした中、近年の急激な物価高に伴う行政運営費全般の増加、将来の財政需要や景気の変動に対応していくためには、不断の行財政改善の取組みが不可欠であり、新たな行政経営への移行に向けて、経営資源配分の最適化を進めていくことが重要です。 5. 目指すべき未来の世田谷の姿 世田谷の恵まれた住環境や文化・地域性などを守り育て、子どもや若者の世代へと引き継いでいくためには、まずは区民の人権が尊重され、生命と健康を守ることに最優先に取り組むことが必要です。そして区政の安定した運営を通して、生活基盤の構築に努め、区民の安心感を確保することが何よりも大切です。また、安心感の確保に留まることなく、社会の閉塞感を打破し、今後世田谷区が自治体としてさらなる発展を遂げていくためには、わくわく感の創出により人や社会に幸福感や肯定感を生み出し、レジリエンス1を高めながら、地域課題・社会問題に対する区民の参加意欲や行動意欲の醸成を生み出す努力が重要です。さらに、多様性を尊重し活かしていく視点から幅広い参加機会を創り出し、参加と協働の基盤を強化しながら、持続可能な未来を確保していく必要があります。 1 困難な状況をしなやかに乗り越え適応する力。 持続可能な未来とは、地球環境や生態系が適切に維持保全され、将来世代が必要とするものを損なうことなく選択肢や可能性が広がる未来のことです。区民生活、地域経済、都市基盤、自然環境、自治体経営における現状と課題を踏まえたうえで、目指すべき持続可能な未来の姿をしっかりと見据え、その実現に向けて確実に寄与する政策を明確にして推進していく必要があります。 (1)区民生活について 区民生活については、人と人とのつながりの希薄化や町会・自治会への加入率低下が進むなか、長期化するコロナ禍が地域コミュニティの分断に追い打ちをかけてきたことで、社会的な孤立や孤独が大きな問題となっています。区民の生命と健康を守るため、日常生活における必要な支援をはじめ、すでに確保されたベーシックサービスについてはこれを堅持することを最優先とします。住民同士が多様性を尊重しながらつながりを深め、相互に助け合える関係性を築けるよう、誰もが様々な活動に参加し、多様な出会いにつながる機会・場の創出を図るなど、住民の参加意欲や行動意欲の醸成につながるポジティブな場づくり、まちづくりを進めることが重要です。また、地域課題の多様化・複雑化などにより、行政だけでの課題解決には限界があるなか、住民が主体的に地域課題に向き合うとともに、区民、事業者、行政のそれぞれが持つアイデアや技術、ノウハウなどを組み合わせることで、新たな価値を創造しながら地域や公共のあり方を再構築するような住民自治の実現を目指す必要があります。 人口減少の兆候や少子高齢化の進行を踏まえ、次代の社会を担う子ども・若者が住み続けたくなるまちの実現が不可欠です。子ども・若者を権利の主体として位置づけ、自分たち自身が社会の真ん中にいると実感できるよう子ども・若者の「今」に焦点をあてた施策展開を図るとともに、子どもを生み育てやすい環境と若者が活躍できる環境の整備を進める必要があります。 学校教育も大きな転換期を迎えています。個に応じた多様な学びを一層重視して学びの質的転換を進め、一人ひとりの多様な個性・能力を伸ばし、子どもたちが生き生きと学べる新たな学校教育を目指していく必要があります。また、子どもの将来性や可能性を保障するため、多様な学びの場を確保することが重要です。 今般の急変する社会状況に対応していくためには、状況に応じて必要な知識や情報を随時習得していくことが不可欠であり、学校教育に加え、あらゆる世代を対象とした教育の重要性が増しています。地域の多様な社会資源と連携、協働し、生涯学習の基盤を整え、誰もが生涯を通じて何度でも学び直すことができる環境を整備する必要があります。 (2)地域経済について 地域経済については、コロナ禍以降、リモートワークが進み職住一体も見られるようになり、地域の中で「働く」ということがますます重要視されてきています。また、区内の地域課題に着目した区民生活をベースとする起業や創業も活発に見受けられるようになってきました。事業所や企業による既存産業の振興に加え、区民も産業振興の主体に含め、起業家の輩出や育成を支える基盤づくり、地域社会の課題を解決するコミュニティビジネスやソーシャルビジネスの振興などを進める必要があります。 (3)都市基盤について 都市基盤については、区民が安全で快適に暮らし続けられるまちの実現に向け、社会インフラの計画的な整備・維持・更新に取り組むとともに、防災・減災の視点を加味した災害に強い街づくりを進める必要があります。また、区民の利便性向上に向け、公共交通環境の維持・確保、整備を図るとともに、地域や文化に根差した歴史ある風景、街並みを守りつつ、区内外の人々を惹きつけ、居住地として選ばれる新たな魅力と活力が感じられる都市の創出を図ることも重要です。 (4)自然環境について 自然環境について、人と自然が支え合い地球環境の健全性を維持していくことは、世田谷の取組みだけでは困難であり、限界があります。世田谷のことだけを考えるのではなく、他自治体や国際社会への影響などを常に意識して協力連携を図りながら、自然・生態系の損失を食い止め回復させていくための行動を進め、自然が本来持つ多様な力を見出しながら、自然との共生を目指す必要があります。また、人類の生存を脅かしている今般の気候変動を抑えるため、人々の行動やライフスタイル、社会のあり方を変えていく必要があり、地球規模で取組みを進めて脱炭素社会を実現し、環境負荷の軽減を図らなければなりません。 (5)自治体経営について 自治体経営については、資源や資産に限りがあることを十分認識し、経営効果の最適化を図らなければなりません。縦割りではなく横つなぎやマッチングを進め、同時にシナジー効果2の発揮も視野に入れ、取組みを横断的に展開する必要があります。また、職員の意識改革や業務改善を進め、区民主体のサービスデザインを徹底することで、行政サービスのデジタル化の取組みを一層推進し、区民の利便性向上を図ることも重要です。区民や事業者と協働してイノベーションによる新たな価値の創出も図りながら、最新の技術や知見に基づき、常に変革し続け柔軟に対応可能な自治体経営を実現する必要があります。 2 相乗作用によるプラスの効果。 第3章 基本方針 世田谷区基本構想の実現に向け、今般の社会情勢などを踏まえ、今後の世田谷区政の基本方針として、区政が目指すべき方向性及び区政運営の基本的な指針である基本計画の理念について、次のとおり定めます。 1. 区政が目指すべき方向性 持続可能な未来を確保し、あらゆる世代が安心して住み続けられる世田谷をともにつくる 世田谷区基本構想を実現し、世田谷の恵まれた住環境や文化・地域性を子どもや若者の世代に確実に引き継いでさらなる充実と発展を遂げていくためには、持続可能性の視点を中心に据えた区政運営が不可欠であり、区民生活をはじめ、地域経済、都市基盤、自然環境、自治体経営などにおいて、持続可能な未来に向けた環境整備を図っていくことが重要です。 引き続き、参加と協働を区政の基盤とし、公共的役割を担い地域を支えている町会・自治会や商店街、世田谷が誇る豊富な地域人材や地域資源などとの連携強化により参加と協働のさらなる促進を図りながら、乳幼児から高齢者までのあらゆる世代が安心して住み続けられるまちづくりを進めるとともに、地球環境や生態系が適切に維持保全され、将来世代が必要とするものを損なうことなく選択肢や可能性が広がる未来の確保を目指していきます。 2. 計画の理念 計画全体を貫き計画の土台となる根本的な考え方として、次の6つを計画の理念として位置づけます。 (1)参加と協働を基盤とする ⚫ 地域課題の多様化・複雑化などにより、行政だけでの課題解決には限界があるなか、持続可能な社会の構築に向け、参加と協働による政策、施策の展開を区政運営の基盤とします。今般の危機的社会状況のなかで、現状を打破して持続可能な未来を確保していくため、わくわく感を創出して人や社会に幸福感や肯定感を生み出しながら、レジリエンスを高め、参加意欲を醸成し、さらなる参加と協働の促進に結びつけます。 ⚫ 区民を施策の対象として捉えるのではなく、自ら地域をつくり支える存在として位置づけ、主体的な参加への意欲を引き出すコミュニティづくりにつなげます。 ⚫ 多様な出会いの機会・場を創出し、住民自治を充実させることを通して、区民、事業者、行政のそれぞれが持つアイデアや技術、ノウハウなどを組み合わせることで、新たな価値創造を可能とする地域社会の実現を目指します。 ⚫ 区内には事業所が多数存在し、民間企業や職能団体なども地域社会を構成する一員として大きな役割を担っていることから、事業者などへの働きかけを進め、区民・事業者との連携強化に努めます。 (2)区民の生命と健康を守る ⚫ 区民の生命と健康を守ることは、自治体として最優先の課題であり、引き続き積極的に取り組んでいきます。子どもや若者から高齢者まで誰もが生命や健康を守られ、地域や他者との関わり合いの中で元気に自分らしく生きていける社会の実現に向け、医療、保育、教育などにおけるすでに確保されたベーシックサービスについてはこれを堅持するとともに、身体的な健康のみならず、心の健康につながる心の豊かさなどの視点に配慮します。 (3)子ども・若者を中心に据える ⚫ 子ども・若者は、一人ひとりが権利の主体であり、大人と同様に地域社会を構成する一員です。地域を一緒に創っていく主体として明確に位置づけ、子ども・若者が参加しやすく、自分たち自身が社会の真ん中にいると実感できるよう子ども・若者の「今」に焦点をあてて政策、施策の組み立てを考えます。 ⚫ 将来の人口減少局面を見据え、次代の社会を担う子ども・若者が住み続けたい、住みたくなる地域づくり、子育てしやすい環境づくりの視点を取り入れます。 (4)多様性を尊重し活かす ⚫ 高齢者や障害者、外国人3など異なる立場や様々な価値観を持つ人々がともに社会を構築できるよう、性別、LGBTQ4などの性的指向及びジェンダーアイデンティティ、年齢、国籍、文化の違いや障害の有無から、価値観や単独世帯、夫婦のみ世帯、ひとり親世帯などの家族のあり方、ライフスタイルの多様性まで、広く多様性を尊重し活かしていきます。 ⚫ 特別なニーズを持つ人々のための的確かつ柔軟な支援と、誰でも参加、活動できる場の確保の実現に向けて、両面の視点に配慮します。 3 日本においては、日本国籍を有しない者を意味する。ただし、世田谷区基本計画大綱においては、 外国人に関する「多様性の尊重」について、国籍だけではなく、多様な文化(言語・生活習慣・ 宗教等)を持つ人々を含むものとし、この人々を含めて「外国人」と表記する。 4 レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランス ジェンダー(性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、クエスチョニング(性のあり 方をあえて決めないまたは決められない人)またはクイア(多様な性を包括する言葉)の頭文字を とった言葉。 (5)地域・地区の特性を踏まえる ⚫ 地域に密着したサービスや地域の実態に即した参加と協働のまちづくりを展開するため、世田谷全体を均質化して考えるのではなく、各地域や地区の人口構成や世帯構成、地域資源、課題などを十分考慮し、それぞれの区民ニーズを的確に捉えて政策、施策を組み立てます。 ⚫ 「地域行政推進条例」及び「地域行政推進計画」の視点を十分踏まえます。 (6)日常生活と災害対策・環境対策を結びつける ⚫ 災害対策は日常生活と切り離して考えるものではなく、平常時から防災・減災の視点を意識し、平常時の取組みを災害時にも役立てるといった考え方が大切です。また、気候危機への対応は地球規模の大きな転換が必要な課題です。自然環境と共生した社会の実現に向けては、日本のみならず地球全体の健全な環境の維持に対して適切な役割を果たすべく日常生活におけるあらゆる取組みをいかに環境負荷低減につなげていけるかといった視点が重要となります。そのため、日常生活と災害対策・環境対策を常に結びつけて考え、政策、施策を組み立てます。 3. 地域行政の基本となる考え方 自治の担い手として地域の課題解決に取り組む区民や団体が、多くの区政に参加する機会において、互いに協力して自治を進めることで一層の地域行政の深化・発展が図られることから、参加と協働の推進が引き続き重要です。 令和4年に区は、区政運営の基盤である地域行政制度の改革について必要な事項を定め、区が区政の課題の解決を図る体制を強化し、地区及び地域の実態に即した総合的な行政サービス及びまちづくりを推進し、もって安全・安心で暮らしやすい地域社会を実現するため「地域行政推進条例」を制定しました。 世田谷区独自の地域行政制度である本庁・総合支所・まちづくりセンターの三層制のもと、まちづくりセンターは区民生活を包括的に支援する地区の行政拠点として、総合支所は地域経営を担う行政拠点として区民生活を支え、区民主体のまちづくりを支援し、本庁は地域行政制度の意義や目的を踏まえた区政運営に取り組みます。 <基盤となる取組み> (1)地区・地域課題の解決 人口構成や世帯構成、地域資源、地勢、課題などの特徴は各地区や地域により異なることから、その実情に応じた取組みが必要となります。地区においては地区アセスメントを、地域においては「(仮称)地域経営方針」を区民参加により意見を伺いながら作成し、課題と対応の方向性を明らかにします。併せて課題の共有化を図り、自治の担い手である幅広い世代の区民の参加と協働による課題の解決を促進します。 (2)多様なコミュニティづくりと区民参加の推進 地域をつくり支える存在である区民や団体が自ら意見を述べ、情報を発信・共有するための新たなしくみづくりに向け、幅広い世代や多くの団体が地域の課題に主体的に向き合い、互いに協力して自治を進められるように支援します。 併せて、地域住民が継続して交流できる機会や場所を確保し、すべての人に「居場所と役割」があるまちづくりをめざし、住民同士の関係性を深めることで、お互いに支え合い、助け合える関係性の構築と地域コミュニティの醸成を図ります。 このため、コミュニティづくりや地域の課題へ対応に必要な、まちの特性や課題、まちづくり等に関する地区・地域情報の発信を強化します。 (3)地域福祉の展開(地域包括ケアの地区展開(包括的支援体制)の充実) 高齢者や障害者、子育て家庭、生きづらさを抱えた若者、生活困窮者等に対する医療、介護、住まい、生活等の支援を包括的に確保する地域包括ケアシステムの充実を図り、地域共生社会の実現をめざします。地区における四者連携(まちづくりセンター・あんしんすこやかセンター・地区社会福祉協議会事務局・児童館)を基盤に、共助による見守りネットワークづくりや身近なところで福祉の相談や手続きのできる環境の充実を図ります。併せて福祉に関する社会資源の開発と福祉のまちづくりにおける区民との協働を推進します。 (4)地域防災力の向上 今後想定される首都直下型地震等の災害に対し、被害の拡大を防ぐために各地区において区民参加による防災塾等を開催し、地区防災計画に基づく防災訓練等の取組みを支援します。地区における住民同士の新たなつながりや関係性を深めることを通じて避難行動要支援者への支援の強化を図るとともに、地域住民による各学校の避難所運営の支援を強化します。 また、気候変動に起因する水害等の災害対策は、日常生活と切り離して考えるものではないことから、平常時から防災・減災の視点を意識し、日常生活と災害対策・環境対策を常に結び付け、地区・地域においても環境負荷低減につなげるという視点で取組みを進めます。 (5)安全で魅力的な街づくり 「世田谷区都市整備方針(地域整備方針)」に基づき、道路や公園等の都市基盤の整備・更新、建築物の耐震化・不燃化の促進などに取り組み、地区・地域における特性や課題を踏まえ安全・安心の街づくりを推進します。そして、「世田谷区街づくり条例」のもと、多様な主体が共に理解しあい、協力しながら、区民一人ひとりが街づくりの担い手となる協働の街づくりを基本に、区民参加の手法を駆使しながら、区民主体の街づくりを進めます。 (6)行政サービスの向上 くみん窓口や出張所窓口における繁忙期の混雑の解消にデジタル技術の活用等のDXにかかる取組みを進めるとともに、国が推進する自治体情報システムの標準化・共通化を機会に窓口サービスの改善を図ります。 まちづくり、防災、地域包括ケアの地区展開等に地区・地域の実態に即したデジタル技術の浸透を図り、取組みの効果を高めます。 (7)地域行政の運営体制の充実 各地区のまちづくりセンターにおいて各種相談やICTを利用した手続きの適切な支援ができる体制を整備します。 地区アセスメントや「(仮称)地域経営方針」に示す、多様化する地区・地域の課題に対応できる体制を整備します。 地区・地域の公共施設の建物の状況に応じて必要な対応を図ります。 第4章 政策 1. 重点政策 基本方針の目標実現に直結し、基本計画の具体化に不可欠で特に重点的に取り組むべき政策であり、分野横断的な体制を整えて取り組む必要がある政策について、次の6つを重点政策として位置づけます。 (1)区を取り巻く課題 世田谷区の総人口は、これまでのような右肩上がりの人口増加は見込めない状況に直面しており、人口減少の兆候や少子高齢化の進行を踏まえ、次代の社会を担う子ども・若者が住みたくなるまちの実現が不可欠です。子ども・若者を権利の主体として位置づけ、子ども・若者の「今」に焦点をあてた施策展開を図る必要があります。 学校教育は学びの質的転換を進め、一人ひとりの多様な個性・能力を伸ばし、子どもたちが生き生きと学べる新たな学校教育を目指すとともに、増加する不登校の子どもへの支援やインクルーシブ教育の実現に向け、子どもの将来性や可能性を保障するための取組みを一層進めていくことが重要です。 人と人とのつながりの希薄化や町会・自治会への加入率低下が進むなか、長期化するコロナ禍が地域コミュニティの分断に追い打ちをかけてきたことで、社会的な孤立や孤独が大きな問題となっています。 また、国連のグテーレス事務総長の「地球沸騰の時代に突入した」との警告通り、世界中で高温熱波等の気候異変が顕著となり、大規模台風やゲリラ豪雨の頻発など、気象災害が激甚化しており、自然の脅威の増大が区民の日常生活を脅かしています。また、地球規模で生態系が破壊されつつあり、人類を含む全ての生き物の生存基盤を揺るがす事態となっています。自然の豊かさと脅威を今一度認識し、世界的に対策を急がなくてはいけない状況に直面しています。 さらに、区民生活や区内産業は大変厳しい状況下にあるとともに、社会インフラの老朽化などの課題もあり、区を取り巻く状況は厳しさを増しています。 こうした状況下において、世田谷の恵まれた住環境や文化・地域性を子どもや若者の世代に確実に引き継いでさらなる発展を遂げていくため、持続可能な未来に向けた環境整備を図っていくことが重要です。 (2)重点政策が描くビジョン 6つの重点政策を実現することで、「子ども・若者と地域の多様な人々とのつながり」、「地域・産業と学びのつながり」、「多様な人が出会うことによる支援の輪のつながり」、「地球環境の危機と自然の持つ復元力の理解による行動変容へのつながり」、「地域資源と街づくりのつながり」、「区民、事業者のアイデアと区政課題とのつながり」の6つの「つながり」を創出し、持続可能な未来の確保を目指します。 重点政策が描くビジョン 重点政策1 子ども・若者が笑顔で過ごせる環境の整備 目指す姿 ⚫ 子ども・若者が過ごすあらゆる場面において、意見を表明し、自己を表現できる機会や、一人ひとりが自分の心と体を大切にしながら、安心して過ごせる場や機会があり、自ら選択できる環境がある。 ⚫ 子ども・若者が多様な人々と関わりをもちながら、成長していく中で、自己肯定感や自己有用感、社会の真ん中にいるという主体性を実感できる。 ⚫ 「子ども・子育て応援都市」として、子どもや若者、子育て家庭が、地域の中で、周囲の人々にあたたかく見守られ、支えられ、応援されていると実感できる。 成果指標 自分のことが大事だと思う子ども・若者の割合 % 視点 【子ども・若者が地域の中で多様な人々と出会い、見守られながら育つ】 子どもや若者が過ごすあらゆる場面において、安心して意見や気持ちを言える環境を整えるには、子ども自身への権利を学ぶ機会の確保はもちろんのこと、家庭や学校、地域で子どもに関わる大人が、子どもの権利を理解し、子どもの声を受け止め、思いを尊重し、ともに考えることの意義を広く共有するための取組みを横断的に進めます。 また、子どもや若者が大人を含めた多様な人々とつながり、自分の事を理解してくれる、応援してくれていると実感できる地域社会の中で、様々なことにチャレンジし、失敗したり、成し遂げたりする経験を繰り返しながら、自らの力を育くむことができる環境を、区民の参加と協働のもと、ともに創り上げ、支えていくことが重要であり、子どもの最善の利益の保障が地域の中で具体化できるよう、大人への意識変容の視点を持って取組みを進めます。 一人ひとりの子どもや若者が、虐待やいじめ、家庭の状況などによって、守られるべき権利が侵害されることなく、地域の人々や支援につながり、見守られながら、健やかに育つことができるよう、予防的な取組みを推進します。 取組みの方向性 ⚫ 子ども・若者は一人ひとりが権利の主体であり、地域社会を構成する一員です。地域を一緒に創っていく主体として、子ども・若者の声をしっかりと聴き、政策に取り入れるため、日常的かつ継続的に意見を表明しやすい環境づくりや意見を反映させるための仕組みづくりを進めます。 ⚫ 大人になってからの生活に大きな影響を与えるといわれる非認知能力5などを、遊びや生活を通して育むことができるよう乳幼児期の教育・保育の質の向上を図ります。また、子どもたちが適切な生活習慣を身につけるとともに、自分の将来を選択する力を育めるよう、自己の価値観が形成される子ども期において、すべての子どもが地域で豊かな体験を重ね、力を発揮できる場や居心地よく安心して過ごせる場が身近にある環境づくりを進めます。 ⚫ 子ども・若者が積極的に参加できる場や地域で力を発揮できる機会の充実を図るほか、若者のチャレンジを応援するため、起業を支援するなど、自分たち自身が社会の真ん中にいると実感できるよう、子ども・若者の「今」に焦点をあてた施策展開を図ります。 ⚫ 妊娠期から孤立することなく、日々の暮らしの身近なところで地域の人々や子育て支援につながりながら安心して暮らせるよう、区、医療、地域等の連携による「世田谷版ネウボラ」をさらに深化させ、子どもと子育て家庭への支援を充実します。また、支援が必要な子どもや子育て家庭の課題は、様々な要因が絡み合い、困難かつ複雑化しています。支援に切れ目が生じないよう、保健、医療、福祉、教育のさらなる連携強化に取り組みます。 ⚫ 子どもを望む人が安心して妊娠・出産し、育て、暮らし続けられる居住環境の整備や地域づくりを様々な主体と力を合わせて進めます。さらに、子育て家庭や子育てを支える多様な世代が地域の中でつながりながら、ともに学び、活動し、交流できる場や機会を充実します。 ⚫ 子どもの減少に応じて単に支援や施設を減らすのではなく、子ども・子育て支援施策を拡充することをベースに、多世代交流を含めた地域や人とのつながりに資する機能付加の視点を取り入れ、支援や施設ごとに分かれていた施策を総合的に組みかえ、一体化する方向を目指します。 5 主に意欲・意志・情動・社会性に関わる「自分なりの目標に粘り強く取り組む力」「人と関わる 力」「自分の感情や行動をコントロールする力」などの要素からなる。 主な施策 ⚫ 子どもの権利とその最善の利益を保障する環境づくり(p.36) ⚫ 子どもの成長を支える環境の充実(p.36) ⚫ 質の高い乳幼児教育・保育の充実(p.36) ⚫ 子育て家庭の支援の推進(p.38) ⚫ 支援が必要な子ども・子育て家庭のサポート(p.38) ⚫ 若者が力を発揮できる環境の充実(p.41) ⚫ 生きづらさを抱える若者への支援(p.41) ⚫ 安心して暮らせる居住環境の整備(p.58) ⚫ 起業の促進と多様な働き方の実現(p.75) ⚫ 地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進(p.76) 関連施策 多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくり、知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造、主体的に取り組める健康づくりの推進、地域生活課題の解決に向けた取組み、犯罪抑止の取組み、日常の安全・安心な街づくり、たばこルールの推進、世田谷らしいみどりの保全・創出、協働によるみどり豊かなまちづくりの推進、誰もが文化・芸術を身近に感じ楽しめる環境の整備、交流の促進による文化・芸術活動の活性化、スポーツを通じた生きがい・健康づくり、スポーツを通じた共生社会の実現、地区特性に応じた街づくりの推進、震災に強い街づくり、地域公共交通の活性化、自転車利用環境の整備、道路ネットワークの計画的な整備、公園・緑地の計画的な整備、人権への理解促進、男女共同参画の推進、DV防止の取組み、多文化共生の推進、地域への参加促進と地域活動の活性化、区民や活動団体の連携・協働促進 重点政策2 新たな学校教育と生涯を通じた学びの充実 目指す姿 ⚫ 個に応じた多様な学びの場を確保し、個別最適な学びにより一人ひとりの子どもの将来性や可能性が保障される。 ⚫ 誰もがいつでも何度でも学ぶことができ、やりがいや生きがいを持ちながら、様々なことにチャレンジし、生き生きと暮らせる。 成果指標 学びが楽しいと感じる児童・生徒の割合 % 生活の中で学びが身近に感じられるようになった区民の割合 % 視点 【子どもを主体とした教育への転換】 子ども自身が意見を率直に言える環境を整え、子どもが様々なことに参画し、子ども自身が表明した意見や考えが反映できる仕組みを整えていく必要があります。子どもの意見が反映される子どもを主体とした教育について、子どもの学びや成長に関わる全ての関係者と共通理解を深め、多様な学びを求める声に応えていきます。 【子どもも大人も一人ひとりが学びの主体】 将来の予測が困難な時代においても、それぞれが思い描く未来を自分らしく生きるために、自らが課題に向き合い、判断して行動できるよう、子どもも大人も一人ひとりが学びの主体となり、自分の人生をデザインしながら自分らしく学ぶことを全ての学びの基盤とする視点を持って取組みを進めていきます。 【地域・産業と学びを結びつける】 地域や学校、教育機関や社会資源が連携・協働し、地域と学びを結びつける視点から、人材や場所、ニーズ等をマッチングし、多様な学びの場の拡充を目指すとともに、教育機関や社会資源への働きかけを強化し、個々の取組みが面的につながるよう取組みを進めます。また、産業と学びを結びつける視点から、新たな価値を創出する人材を育成・輩出するチャレンジの場を提供し、区内産業のイノベーションと社会課題解決、それに関わる人材が創出される好循環を生み出していきます。 取組みの方向性 ⚫ 子どもたちが自ら地域課題の解決策や興味、関心が高いテーマなどについて考える探究的な学びへと学びの質的転換を進め、「参加・協働」の視点も一つのキーワードとして捉えながら、一人ひとりの多様な個性・能力を伸ばす学校教育を目指します。 ⚫ 増加する不登校の子どもへの支援やインクルーシブ教育の実現に向けた取組みが求められるなか、一人ひとりの子どもの将来性や可能性を保障するため、誰一人取り残さない教育を推進するとともに、多様な学びの場の確保を進めていきます。 ⚫ 誰もがやりがいや生きがいを持って生き生きと暮らせるよう、地域の教育機関や多様な社会資源と連携、協力し、生涯にわたって学べる場の整備や情報のネットワーク化を進めていきます。 ⚫ 誰もがいつでも何度でも学ぶことができ、様々なことにチャレンジできるよう、リカレント教育やリスキリングの環境整備を進めるとともに、学んだことを生かせる機会や場の充実を図ります。 主な施策 ⚫ キャリア・未来デザイン教育の推進(p.44) ⚫ 教育DXの更なる推進(p.45) ⚫ 多様な個性が生かされる教育の推進(p.45) ⚫ 多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくり(p.45) ⚫ 相談・支援体制の充実と連携体制の強化(p.47) ⚫ 多様な学びの場や居場所の充実(p.47) ⚫ 知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造(p.49) ⚫ 常に学ぶ区民意識の涵養と社会参加の促進(p.49) ⚫ 文化財の保護・普及活動の推進(p.49) ⚫ 起業の促進と多様な働き方の実現(p.75) ⚫ 地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進(p.76) 関連施策 子どもの権利とその最善の利益を保障する環境づくり、子どもの成長を支える環境の充実、質の高い乳幼児教育・保育の充実、支援が必要な子ども・子育て家庭のサポート、若者が力を発揮できる環境の充実、主体的に取り組める健康づくりの推進、地域生活課題の解決に向けた取組み、生物多様性の保全、協働によるみどり豊かなまちづくりの推進、多様な地域産業の持続性確保に向けた基盤強化、誰もが文化・芸術を身近に感じ楽しめる環境の整備、交流の促進による文化・芸術活動の活性化、スポーツを通じた生きがい・健康づくり、スポーツを通じた共生社会の実現、人権への理解促進、多文化共生の推進、地域への参加促進と地域活動の活性化、区民や活動団体の連携・協働促進 重点政策3 多様な人が出会い、支え合い、活動できるコミュニティの醸成 目指す姿 ⚫ 地域住民同士の新たなつながりが芽生え、住民の地域活動などへの参加意欲が向上し、地域や地区への区民参加が促進される。 成果指標 地域で人とのつながりを感じられると思える区民の割合% 視点 【緩やかなつながりを広げる】 社会的な孤立や孤独が深刻な社会問題となるなか、地域の中で継続的な交流ができる「居場所」に多くの人がつながることができ、そうした場において「役割」があることが重要です。そのためには、行政の取組みだけでは限界があり、例えば居場所については、地域のカフェが居場所になっている例もあります。また、役割については、組織上の役職だけではなく、日課のランニングが地域の安全確保につながるなど、本人が意図せずに役割を果たしていることもあります。 人と人がつながる機会となったり、誰かの居場所となる地域資源も把握しながら、文化活動やスポーツ活動なども通じ、まち全体のどこかで人がつながり活動できるような、緩くつながる場所や機会の確保に努めていきます。 取組みの方向性 ⚫ 町会・自治会を中心とするコミュニティを基本に、地域住民同士が継続的に交流できる機会を確保し、すべての人に「居場所と役割」があるまちづくりを心がけ、住民相互の関係性を深め、災害時にもお互いが支え合い、助け合える関係性の構築や地域コミュニティの醸成を図ります。 ⚫ 地域とつながり続けられる環境の整備を図るため、地域のネットワークを広げながら、相談支援や見守り体制の強化に取り組みます。 ⚫ 地域には高齢者や障害者、外国人など多様な人々が暮らしており、多様性を認め合い、新たな出会いが生まれることで、つながりが芽生え、地域活動などへの参加意欲の向上にもつながります。地域住民の自主的な活動が重層的に展開できる環境の整備や文化・芸術・スポーツの振興などに取り組み、多様な出会いの機会の創出や誰もが様々な活動に参加できる機会を確保します。 ⚫ まちづくりセンター、総合支所、本庁の三層制のもと、デジタル技術の活用なども進めながら、気軽に参加できる機会を拡充します。 主な施策 ⚫ 主体的に取り組める健康づくりの推進(p.53) ⚫ 地区でつながり続ける支援体制の構築(p.55) ⚫ 介護予防の総合的な推進(p.53) ⚫ 地域防災力の向上(p.61) ⚫ 誰もが文化・芸術を身近に感じ楽しめる環境の整備(p.79) ⚫ 交流の促進による文化・芸術活動の活性化(p.79) ⚫ スポーツを通じた生きがい・健康づくり(p.81) ⚫ スポーツを通じた共生社会の実現(p.81) ⚫ 地域への参加促進と地域活動の活性化(p.93) ⚫ 区民や活動団体の連携・協働促進(p.93) 関連施策 子どもの成長を支える環境の充実、子育て家庭の支援の推進、若者が力を発揮できる環境の充実、生きづらさを抱える若者への支援、キャリア・未来デザイン教育の推進、多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくり、知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造、常に学ぶ区民意識の涵養と社会参加の促進、文化財の保護・普及活動の推進、地域生活課題の解決に向けた取組み、犯罪抑止の取組み、都市の事前復興、日常の安全・安心の街づくり、地域環境美化活動の推進、世田谷らしいみどりの保全・創出、協働によるみどり豊かなまちづくりの推進、地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進、地区特性に応じた街づくりの推進、魅力あるにぎわいの拠点づくり、地域公共交通の活性化、道路ネットワークの計画的な整備、公園・緑地の計画的な整備、人権への理解促進、男女共同参画の推進、DV防止の取組み、多文化共生の推進 重点政策4 誰もが取り残されることなく生き生きと暮らせるための支援の強化 目指す姿 ⚫ すべての区民の人権が尊重され、年齢、性別、国籍、障害の有無などに関わらず自らの意思に基づき個性と能力を十分発揮することができ、生き生きと尊厳をもって地域で暮らすことができる。 ⚫ 支援が必要だと思われる人が自らの意思を尊重され、相談や支援、参加につながることができ、災害時にも必要な支援を受けられ安心して生活を送ることができる。 成果指標 地域住民の居場所や支えとなりうる地域資源数 か所 視点 【選択肢をふやす】 区では世田谷版地域包括ケアシステムの取組みを先駆的に実施してきており、今後は、地域資源の活用も含めて、関係機関が連携して情報を共有し、本人の意向を尊重することにより、どこかにつながれる、支援を受けられる選択肢を増やしていくといった考え方が大切となります。地域住民とつながり、居場所や支えとなりうる地域資源の把握やネットワークの強化を図り、情報を区民や関係機関としっかりと共有できる仕組みづくりを進めていきます。 取組みの方向性 ⚫ 住民同士の支え合い活動を広げながら、区を含めた関係機関のネットワークを強化し、連携して重層的な施策展開を発展させることで、誰もが元気で生き生きと尊厳をもって地域で暮らすことのできる基盤を強化し、困難や生きづらさを抱えている人に支援が届く取組みや仕組みの構築を目指します。 ⚫ 日常生活における必要な支援に加え、生活拠点となる住まいの確保への支援も重要な課題であり、特に単身高齢者や障害者、ひとり親家庭への支援を強化します。 ⚫ 深刻化する貧困問題は、実態が見えにくく、対応が難しい課題であり、ひきこもりや8050問題、ヤングケアラー、いわゆるごみ屋敷問題など、制度や分野の狭間に陥りやすく、複合的な課題に対してもしっかりと対応を図るため、関係機関との連携、情報共有を強化して重層的な施策展開を発展させます。 ⚫ すべての区民の人権尊重の取組みを進めつつ、特に相談体制などが手薄な若年女性への支援の強化を図ります。 ⚫ 災害時に備え、要配慮者に対する施策に優先的に取り組む必要があり、災害時に安心して生活を送れるよう支援策の充実を図ります。 主な施策 ⚫ 子育て家庭の支援の推進(p.38) ⚫ 若者が力を発揮できる環境の充実(p.41) ⚫ 介護予防の総合的な推進(p.53) ⚫ 身近な福祉相談の充実と地域づくり(p.55) ⚫ 地区でつながり続ける支援体制の構築(p.55) ⚫ 安心して暮らせる居住環境の整備(p.58) ⚫ 地域生活課題の解決に向けた取組み(p.58) ⚫ 在宅医療・介護連携の推進(p.58) ⚫ 福祉人材の確保及び育成・定着支援(p.58) ⚫ 地域防災力の向上(p.61) ⚫ 健康危機管理体制の強化(p.62) ⚫ スポーツを通じた共生社会の実現(p.81) ⚫ 人権への理解促進(p.91) ⚫ 男女共同参画の推進(p.91) ⚫ DV防止の取組み(p.91) ⚫ 多文化共生の推進(p.91) ⚫ 地域への参加促進と地域活動の活性化(p.93) 関連施策 子どもの権利とその最善の利益を保障する環境づくり、子どもの成長を支える環境の充実、質の高い乳幼児教育・保育の充実、支援が必要な子ども・子育て家庭のサポート、生きづらさを抱える若者への支援、教育DXの更なる推進、相談・支援体制の充実と連携体制の強化、多様な学びの場や居場所の充実、知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造、主体的に取り組める健康づくりの推進、こころの健康づくり、都市の事前復興、日常の安全・安心な街づくり、多様な地域産業の持続性確保に向けた連携強化、地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進、スポーツを通じた生きがい・健康づくり、地域公共交通の活性化、自転車利用環境の整備、道路ネットワークの計画的な整備、区民や活動団体の連携・協働促進 重点政策5 自然との共生と脱炭素社会の構築 目指す姿 ⚫ 区民の生活を脅かす気候変動に向き合い、多様な生物に支えられた生態系の健全性を守り、自然の豊かな恵みを実感しながら日々の生活を送ることができる。 ⚫ 区民や事業者は身近な自然である国分寺崖線や大規模公園などを核としたみどりと生きもののネットワークを守り育て、自然との共生に向けた取組みを進め、継承している。また、気候危機に与える影響、効果が広く認識され、脱炭素型のライフスタイルやビジネススタイルへの変容により、脱炭素地域社会が実現している。 成果指標 身近なみどり、自然を大切に思い、みずから守り育てている区民の割合 % 区内の二酸化炭素排出量 千t- CO2 視点 【意識の醸成から行動につなげ取組みの輪を大きく広げる】 「世田谷区気候非常事態宣言」を区内外で共有し、地球環境の危機や自然の持つ機能に対する区民や事業者の理解を深めて行動変容を促し、他自治体や海外も見据え、区から発信を行い、取組みの輪をいかに大きく広げていけるかが重要となります。地球温暖化対策や生物多様性に配慮したみどりの保全・創出に向けて、区が率先して取組みを進めるとともに、次世代と考え方を共有していきます。そのためにも、庁内複数部署の協力連携による取組み、自治体間連携の取組み、事業者との協働の取組みなど、複数の協力による効果の高い取組みを進め、その取組みをさらに波及させていくなど、シナジー効果を意識した施策展開を目指していきます。 取組みの方向性 ⚫ 国分寺崖線をはじめとした区内の豊かな自然環境の確保に取り組むとともに、区民が身近な自然に触れる場や機会を拡充し、区民が暮らしの中で自然の豊かな恵みを実感、享受でき、心の豊かさや幸福感を感じられ、居心地がよく住みやすいまちづくりにつなげていくとともに、みどりに恵まれた世田谷の良好な住環境を、子どもや若者の世代へ確実に引き継いでいきます。 ⚫ 省エネルギーの徹底や再生可能エネルギーの活用、脱炭素化やグリーンインフラをはじめとした取組みは国際社会共通の現状認識や対策の方向に即したものであり、今後は環境分野のみならず、経済、教育、福祉、建築やまちづくりといったあらゆる分野において脱炭素を展開し、脱炭素を行うことで別の政策目的も同時に達成することで(トレード・オンの実現)、新たな成長と持続可能な都市づくりを進めます。 ⚫ 区民や事業者と協力し、みどりづくりや地下水涵養、雨水利用、ヒートアイランド対策などの取組みを民有地も含めて一層推進することで、災害にも強くしなやかなまちづくりを進めます。 ⚫ 子ども・若者をはじめ多様な世代、様々な職業、立場の参加者による「気候会議」など、住民自治、まちづくりの取組みを通して区民の理解や共感を拡大し、主体的な行動につなげていくとともに、インセンティブと規制やルールによる環境行動の誘導を図り、地域のまちづくりとも連動させながら行動変容を加速していきます ⚫ 自然環境が持つ多様な機能を様々な分野で積極的に活かすグリーンインフラの取組みを進めます。 主な施策 ⚫ 多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくり(p.45) ⚫ 水害を抑制する街づくり(p.65) ⚫ 区民・事業者の脱炭素行動の支援(p.68) ⚫ 公共施設や区事業活動における脱炭素の実施(p.68) ⚫ 地域環境美化活動の推進(p.70) ⚫ ごみ減量と資源循環型社会の形成(p.70) ⚫ 世田谷らしいみどりの保全・創出(p.72) ⚫ 生物多様性の保全(p.72) ⚫ 協働によるみどり豊かなまちづくりの推進(p.72) ⚫ 地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進(p.76) ⚫ 地域経済の持続可能性を考慮した事業活動及びエシカル消費の推進(p.76) 関連施策 子どもの成長を支える環境の充実、知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造、起業の促進と多様な働き方の実現、地区特性に応じた街づくりの推進、魅力あるにぎわいの拠点づくり、道路ネットワークの計画的な整備、公園・緑地の計画的な整備、地域への参加促進と地域活動の活性化、区民や活動団体の連携・協働促進 重点政策6 安全で魅力的な街づくりと産業連関による新たな価値の創出 目指す姿 ⚫ 道路交通網など都市基盤が整備され、地震や台風などの災害に対するレジリエンスの高い街づくりが進み、区民が安全安心に暮らすことができる。 ⚫ 歴史ある風景の保全や街並みの形成、公園の整備などにより良好な住環境が創出され、活動と交流の場に誰もが快適に移動できる魅力的な街づくりが進む。 ⚫ 「暮らしを支える生活関連産業(卸売業・小売業、飲食サービス業、建設業、福祉産業等)」と「既存産業の課題や社会課題を解決する産業(IT・環境等)」、起業家などの連携強化により新たな価値が創出され、地域経済の発展につながる。 成果指標 良好な住環境が確保されていると思う区民の割合 % 街が魅力的でにぎわいがあると感じている区民の割合 % 事業活動及び経済活動等の充実度 % 視点 【地域・地区の特性を踏まえ、地域資源を有効に活用する】 道路や公園等都市基盤の整備は、災害に強いまちをつくると同時に区民の日常生活を支え、その他の重点政策に掲げる取組みを実現するうえでも、視点として掲げたつながりを強固なものとするうえでも欠かすことはできず、分野別政策、個別計画に基づき着実に進めていく必要があります。 広域的な役割を果たす都市基盤を整備する際も、地域・地区の特性を活かした街づくりにつなげることが区の重要な役割となります。また、地域資源(ヒト・モノ・コト)を最大限に有効活用する視点をもって取り組むことが重要であり、道路・公園等の公共施設や民間施設の公共的な空間を含めた官民一体での新たな空間的価値の創造、空き家等の利活用の促進等により、まちの安全性向上かつ地域コミュニティの活性化を図るなど、魅力的なまちづくりにつなげることが可能となります。 また、防災・減災対策や流域対策などを進めていくためには、地域や地区のひとり一人の参画が重要であり、地域・地区の課題を共有し、取組みを広げていく行政支援が大切となります。行政によるマンパワーの限界や地価が高く広大な用地の取得が難しいという区の現状などを踏まえ、地域や事業者等の理解や協力を得ながら、行政需要とのマッチングにきめ細かく取り組んでいきます。 【課題解決により多くの区民や事業者のアイデアを結びつける】 今後の地域経済を発展させていくためには、起業家も含めた事業者同士の連携を深め、新たな価値の創出を図り、新たなビジネスチャンスにつなげていく必要があります。多様化・複雑化した地域課題を、区民や事業者がビジネスの視点でアイデアを出し合い、相互が結び付きながら、既存産業のさらなる振興や地域課題の解決につなげていきます。 取組みの方向性 ⚫ 豪雨や地震などの災害に対するレジリエンスの向上を図り、区民と共に安全安心に生活できる街づくりを進めます。 ⚫ 地域や地区の特性、資源を活かした街づくりを進めるとともに、ユニバーサルデザインの視点で誰もが移動しやすく住みやすい住環境の維持向上に取り組みます。 ⚫ 三軒茶屋、下北沢、二子玉川駅周辺の広域生活・文化拠点をはじめとする生活拠点の整備において、地域特性を踏まえた街づくりを進め、目指す都市像を区民や事業者等と共有していきます。あわせて、鉄道の連続立体交差事業や、道路、公園等都市基盤の整備、大規模敷地の土地利用転換などを街づくりの契機として活かし、魅力とにぎわいのある都市の創出を図ります。 ⚫ 参加と協働によるワークショップや官民連携などによる柔軟な発想で道路・公園・民間施設の公共的な空間など都市空間の有効活用を図り、歩いて楽しい街づくりを進め、人中心の豊かな生活と多様な人々の交流を通じたイノベーションの創出を実現してまちの魅力を高めていきます。 ⚫ 既存産業の振興に加え、区民も地域経済の主体として、地域や社会の課題を解決するコミュニティビジネスやソーシャルビジネスの振興にも取り組みます。 ⚫ 社会課題や地域課題は多様化・複雑化しており、その解決の担い手となる地域人材や起業家の輩出・育成は非常に重要です。商店街などを拠点に、デジタルプラットフォームも活用しながら、起業家の輩出や育成を支える基盤づくりを進めます。 ⚫ 新たなビジネス創出につながる取組みや既存事業者が安心して事業を営んでいくことができるよう、ビジネスの場として魅力的な環境の整備を図ります。 主な施策 ⚫ 地域防災力の向上(p.61) ⚫ 震災に強い街づくり(p.64) ⚫ 都市の事前復興(p.65) ⚫ 水害を抑制する街づくり(p.65) ⚫ 日常の安全・安心な街づくり(p.65) ⚫ 多様な地域産業の持続性確保に向けた基盤強化(p.75) ⚫ 起業の促進と多様な働き方の実現(p.75) ⚫ 地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進(p.76) ⚫ 地区特性に応じた街づくりの推進(p.84) ⚫ 魅力あるにぎわいの拠点づくり(p.84) ⚫ 歩いて楽しめる魅力づくり(p.84) ⚫ 地域公共交通の活性化(p.86) 関連施策 若者が力を発揮できる環境の充実、キャリア・未来デザイン教育の推進、主体的に取り組める健康づくりの推進、地域生活課題の解決に向けた取組み、犯罪抑止の取組み、区民・事業者の脱炭素行動の支援、公共施設や区事業活動における脱炭素の実施、地域環境美化活動の推進、たばこルールの推進、ごみ減量と資源循環型社会の形成、世田谷らしいみどりの保全・創出、協働によるみどり豊かなまちづくりの推進、地域経済の持続可能性を考慮した事業活動及びエシカル消費の推進、誰もが文化・芸術を身近に感じ楽しめる環境の整備、交流の促進による文化・芸術活動の活性化、自転車利用環境の整備、道路ネットワークの計画的な整備、公園・緑地の計画的な整備、多文化共生の推進、地域への参加促進と地域活動の活性化、区民や活動団体の連携・協働促進 2. 分野別政策 「分野別政策」では、基本構想に定める「九つのビジョン」を具体化するための政策を各分野において体系的に整理するとともに、各分野における課題や施策の方向性などを明らかにします。また、分野別政策の策定にあたり、基本方針が示す総合的な視点を十分考慮するとともに、重点政策との関連性を明確にします。 政策とSDGSとの関係 持続可能な開発目標(SDGs)とは、平成27年(2015年)9月の国連サミットで採択された、持続可能な世界の実現のために2030年までに世界中で取り組む国際目標です。持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための17のゴールから構成され、未来を見据えたバックキャスティングの発想を活用し「誰一人取り残さない」ために、先進国を含めたすべての国で取り組みが進められています。 基本計画(素案)では、各分野別政策とSDGsとの関連を明らかにすることで、関連性を意識しながら分野横断的な施策展開を図り、持続可能な社会の実現を目指します。 なお、17番目のゴール「パートナーシップで目標を達成しよう」の中には「マルチステークホルダー・パートナーシップ」という概念が含まれており、行政・民間・区民の協働によって持続可能な社会の実現を目指すことが掲げられています。これは、計画の理念に「参加と協働を基盤とする」を掲げる世田谷区において、計画全体を貫き計画の土台となる根本的な考え方であるため、政策や施策を推進する手段として捉えれば全ての政策と関係があります。そのため、本計画ではパートナーシップの充実自体を目的としている政策にのみ関係性を示しています。 子ども・若者 政策1 子ども一人ひとりがのびやかに育つ環境づくり 目指す姿 地域全体が子どもを権利の主体としてその最善の利益を保障する視点を持ち、子どもが地域の中で自己肯定感を持ちながら自ら生きる力を育むことができるまちになっています。 成果指標 自分のことが好きだと思う子どもの割合 % 現状と課題 ⚫ 子どもが過ごすあらゆる場面において、子どもが意見を表明し、参加できる機会を継続的に設け、大人が受け止めた意見を子どもにフィードバックできる仕組みを構築していくことが求められています。 ⚫ 子どもの意見の尊重を実現していくため、保育園や児童館等子どもに関わる専門職をはじめ、学校の教員、地域の中で子どもに接する区民等に対して、子どもの権利に関する理解促進を図っていく必要があります。 ⚫ 子どもが自らの意志で選択して行くことができる居場所を充実していくため、居場所づくりに関わる団体等が有機的に連携し、質の向上を図っていくことが重要となっています。 ⚫ 子どもの生きる力や自己肯定感を育むことのできる環境づくりをより一層強化していく必要があります。 ⚫ 保育園や幼稚園、認可外保育施設などにおいて、多様な個性を尊重した教育・保育を進めていくため、子どもの最善の利益を保証する視点を持ち、子どもを真ん中に据え、保育の質の向上に取り組んでいく必要があります。 ⚫ 就学前施設は、保育園や幼稚園、認可外保育施設など教育・保育を受ける期間も様々ですが、施設を終えるとやがて子どもは小学校へと就学します。就学前施設から円滑に就学先へつながるためには、施設間の連携が不可欠です。 施策の概要 (1)子どもの権利とその最善の利益を保障する環境づくり 子ども一人ひとりが生まれながらに持っている子どもの権利について知り、子どもの権利が守られた地域社会を実現していくため、子どもと大人を対象に子どもの権利について学習する機会を確保します。また、子どもが地域の中で自ら生きる力を育むことを支えるため、子どもや若者が意見を表明しやすい環境づくりと地域社会への参加・参画を推進します。 (2)子どもの成長を支える環境の充実 子どもが自らの意志で選択して行くことができ、ありのままの自分を受け入れてくれる安心な居場所づくりや、子どもの生きる力と自己肯定感を育むための外遊びの機会と場づくりを地域の子どもを支える社会資源と連携しながら推進します。 (3)質の高い乳幼児教育・保育の充実 就学前から質の高い幼児教育・保育を提供することで、子どもの健やかな成長につなげます。また、就学前施設と就学先との円滑な連携により、就学前から就学後の一貫した支援を行います。 政策2 安心して子育てできる環境の整備 目指す姿 すべての子育て家庭が、妊娠期から孤立することなく、日々の暮らしの身近なところで、地域の人々や子育て支援につながりながら、安心して暮らしています。また、子育て世帯や子育てを支える多様な世代が、交流できる場や機会が充実し、子どもが健やかに育つことができるまちになっています。 成果指標 子育てしやすい環境だと感じる保護者の割合 % 現状と課題 ⚫ 長引くコロナ禍において、妊娠や出産、子育てが、配偶者やパートナーだけで行われている現状が区の調査によって明らかになりました。この現状を解決するためにも、区・医療・地域が連携し、妊娠期から就学前までの子育て家庭を切れ目なく支える「世田谷版ネウボラ」をさらに深化させ、身近なところに、地域の人々や子育て支援につながるための場や機会を充実させることが急務になっています。 ⚫ 「子育てをとても楽しい」と感じる世帯が減少しており、子どもを一時的に預けられることで負担を軽減できる環境が必要となっています。また、「子育てが辛い」と感じる保護者ほど、子育ての相談先の数が少ない傾向があり、日々の暮らしの身近なところでの寄り添い支援が必要となっています。 ⚫ 1割を超える子どもが経済的な理由による生活困難を抱えており、生活困難層の子どもほど夜間までの居場所の利用意向が高いにも拘らず、夜間を一人で過ごしている傾向があります。そのため、夜間・休日を含め日常的に利用できる固定の場所で、様々な事情を抱えた子ども一人ひとりに丁寧に寄り添いながら、学習・生活支援を後押ししていく必要があります。 ⚫ ひとり親家庭の親は、仕事や家事・育児に忙しいため、来所することが難しかったり、相談窓口の情報を集める余裕がなかったりするため、相談支援に結びつきにくい現状があり、ひとり親家庭に届く形で、相談の機会を拡充する必要があります。 ⚫ 子どもの発達が気になる保護者にとって、療育などの専門機関は敷居が高く感じるなど心理的障壁が高く、おでかけひろばなどのより身近な親子が過ごす場で気軽に相談ができる機会を提供する必要があります。 ⚫ ヤングケアラーが抱える問題は、本人や家族に自覚がないといった理由などから、家庭の外に表面化しにくいという課題があるため、周囲の大人が気づきの感度を高めて早期に発見し、多機関が連携して支援につなげる必要があります。 ⚫ 代替養育が必要な児童が、家庭と同様の環境である里親家庭で養育される割合は26%程度で、国が示す目標値に届いていません。里親家庭で暮らす児童が安定した環境で継続的に養育されるため、地域に向けた里親制度の普及啓発や里親子支援を強化する必要があります。 施策の概要 (1)子育て家庭の支援の推進 子どもと子育て家庭が孤立することなく、日常的に身近な地域で、見守りや相談・支援につながり、また交流できる場や事業の充実に取り組みます。また、子育てをしている保護者が身近な場所で子育て等に関する相談ができるように子どもやベビーカーで歩いて15分で行ける距離におでかけひろばを整備するとともに、支援が必要な母子に対し、心身の状態に応じた保健指導、育児に関する指導等の産後ケア事業に確実につなげていけるよう、事業の拡充を進め、適切な支援を提供します。 (2)支援が必要な子ども・子育て家庭のサポート 生活困難を抱える子どもや保護者の生活の安定のために、生活困難を抱える子どもに対する学習・生活支援の充実を図り、子どもの貧困対策を推進します。仕事や家事・育児に忙しいひとり親家庭が必要な相談支援に結びつくように、ひとり親家庭を対象に休日相談支援を行います。 子どもの発達が気になる保護者に対し、子どもとの関わり方や子育てに関するヒントなど気づきが得られるよう身近なおでかけひろばなどの親子が過ごす場でわくわくタイム(発達支援親子グループの簡易版)を実施します。 代替養育を必要とする子どもが家庭と同様の環境で健やかに成長できるように、里親制度の普及啓発及び必要な社会的養育の体制整備に取り組みます。 身近な地区において、児童館が多様な地域資源と連携し、相談支援や見守りのネットワークの中核的役割を果たすことにより、切れ目ない支援や見守りを強化し、子どもや子育て家庭が安心して生活できる環境づくりに取り組みます。 政策3 若者が力を発揮できる環境づくり 目指す姿 若者の主体的な活動を促し、世代を超えた出会いや交流の機会を創出していくことで、地域での活動に積極的に参加・参画し、次代の担い手として若者が地域の主役になることができるまちになっています。また、ひきこもり等困難を抱えた若者が自ら選択した居場所や相談機関に支えられ、自分らしくいきいきと生活でき、安心して暮らしていけることができるまちになっています。 成果指標 社会や誰かの役に立ちたいと回答した若者の割合 % 現状と課題 ⚫ 区では、「子ども計画(第2期)後期計画」に内包される「若者計画」を策定し、これにもとづく施策を推進しています。若者の交流と活動の推進に取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症の影響等もあり、人との出会い、交流等の機会が減少したことにより、若者が主体的に活動する機会が減少することで、自己肯定感や自己有用感を得ることができなくなっていることが懸念されています。若者の主体的な活動を促し、企画から関わることや交流の場づくりの中で活躍することによる達成感から自己有用感を高めていくことが必要です。 ⚫ 区では、様々な困難を抱えた若者への支援を実施していますが、担当所管が多岐にわたり、適切な支援先を案内できなかったり、そもそも困難を抱えているのか見極めることができず見過ごしてしまうケースも考えられます。これまでに構築した多機関協働の仕組みを広げるとともに、地域資源も含め多種多様な支援者・支援機関の連携・情報共有の仕組みと重層的な支援を強化することが求められています。 施策の概要 (1)若者が力を発揮できる環境の充実 若者が多様な人々と関わりを持ちながら、主体的な活動を通して、自己肯定感や自己有用感、社会の真ん中にいるという主体性を高めていけるよう、地域や様々な活動を通じて、力を発揮できる環境の充実に取り組みます。 (2)生きづらさを抱える若者への支援 様々な困難を抱える若者への気づきの感度を高め、適切な支援の機会を提供できるようにするとともに、様々な関係機関とのネットワークの中で支えられながら、自分らしくいきいきと生活できる環境整備に取り組みます。 教 育 政策4 新たな学校教育の推進 目指す姿 子どもたちが自ら地域課題の解決策や興味、関心が高いテーマなどについて考える探究的な学びへと学びの質的転換が進み、一人ひとりの多様な個性・能力を伸ばす学校教育が行われるとともに、変化の激しい時代を担う子どもたちが、これからの社会を生きるために必要な基礎をはぐくむ質の高い学校教育が実現しています。 成果指標 学びが楽しいと感じる児童・生徒の割合 % 現状と課題 ⚫ 幼児教育と義務教育を一体的に捉え、子どもたちが「未来」に向けて、自らの将来像を描きながら、主体となって人生の指針を創る、「キャリア・未来デザイン教育」を展開しています。急激に変化する社会の中で、子ども一人ひとりが社会の担い手として、自らが課題に向き合い判断して行動し、それぞれが思い描く未来を実現するための資質・能力を育成するため、区独自のキャリア・未来デザイン教育を推進する必要があります。 ⚫ 近年のOECDによる国際学力調査(PISA調査)によると、日本の学習面でのデジタル機器使用率が先進国中、最低レベルとされています。今後、様々な分野でDXによる社会変革が見込まれる中、区でも教育DX推進を通して子どもたちの学びのアップデートを図るとともに、教員が子どもと向き合う時間の創出に向け、働き方改革を推進する必要があります。 ⚫ 支援・配慮が必要な子どもへの総合的な支援に向け、いじめや不登校の訴えやサインを敏感に察知するとともに、インクルーシブ教育の実現及び特別支援教育などの様々な相談に対応していく必要があります。そのため、学校や専門チームをはじめ、状況に応じて福祉部門とも連携を図りながら課題を解決する総合的な相談体制の設置準備を進めています。効果的な児童相談行政の推進に向けては、子どもの最善の利益のために、複雑化・多様化する子どもや家庭の問題に対応できる能力や資質を備えた人材の育成が必要です。 ⚫ 「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)によると、区内小学校で512人(令和2年度(2020年度)392人)、区内中学校で716人(令和2年度(2020年度)576人)の不登校児童・生徒がおり、年々増加しています。また、不登校出現率は、区内小学校1.33%、区内中学校で6.21%であり、都や国の平均より高く(全国:小学校1.3%、中学校5.0%)、不登校児童・生徒の中には、強い好奇心や感受性、豊かな想像力、高い身体的活動性、過敏な五感などや機能間の発達水準に偏りがあり、環境になじめない困難から不登校になる事例があり、多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくりを進める必要があります。 施策の概要 (1)キャリア・未来デザイン教育の推進 キャリア教育として、児童・生徒が学ぶことや協働することの意義を実感できるように、学校や地域等の実態に応じた特色ある教育活動の充実に取り組みます。また、せたがや探究的な学びとして、学びの中で、子どもが自ら課題を発見し、その課題を解決するための「探究のプロセス」を繰り返し、発展させていくことを通して、将来、自己実現を図るために必要な資質・能力を身に付ける教育活動の充実に取り組みます。 (2)教育DXの更なる推進 児童・生徒1人1台のタブレット端末で学習したデータの利活用による個別最適化された学びの推進や、ICTを活用した教職員の働き方改革など、統合型校務支援システムを基軸とした教育におけるデジタル化による変革(教育DX)の実現に向けた取組みを進めます。また、児童・生徒1人1台のタブレット端末などのICT機器を活用し、自ら学びを考え、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する能力を身につけられるよう、探究的な学びを推進します。 (3)多様な個性が生かされる教育の推進 全ての子どもたちが共に学び共に育つことができるよう、総合的な相談体制の充実を図るとともに、インクルーシブ教育を推進するために、インクルーシブ教育に関するガイドライン、好事例データベースを策定し、教員の理解促進を図ります。また、児童・生徒一人ひとりの教育的ニーズに対応した特別支援教育及び特別な支援を要する児童・生徒に応じた合理的配慮の充実を図ります。 (4)多様性や個性を認め伸ばす学びの場づくり 才能や認知・発達の特性等により、特定分野に特異な才能がある児童の学習上・学校生活上のニーズを把握し、全ての子どもたちの可能性を引き出す教育の推進を図ることを目的に、区内小学校で研究校を指定し、調査研究課題の整理及び実態把握の実施、カリキュラム・マネジメントを実施し、研究成果を区内幼稚園、区内小・中学校へ周知します。また、教育総合センターを拠点としたアウトソーシングの活用による多様な学びの形の提供を目的として、区内小・中学校を対象に、教育総合センターで開催する各種講座や高校・大学・企業等との連携取組みへの参加または派遣を実施します。 政策5 不登校支援の強化 目指す姿 いじめ等の早期発見や未然防止及び深刻化防止への適切な対応が図られ、学校内外の教育相談や不登校対策が充実し、児童・生徒とその保護者の問題解決を支援する仕組みが構築されています。また、児童・生徒、保護者の状況を的確に把握し、多様性や個性に応じた支援方針が定められ、ICTの活用も視野に入れた多様なプログラムを実施するとともに、学校外の居場所や学びの場を選ぶことも可能になるなど、一人ひとりの状況に即した適切な支援につなげ、どこにも支援につながっていない児童・生徒数が減少しています。 成果指標 何らかの支援を受けている不登校児童・生徒数 人 現状と課題 ⚫ 世田谷区の不登校児童・生徒数は、令和3年度(2021年度)で小学校512人、中学校716人、合計1,228人となっており、令和元年度(2019年度)以降、急激な増加傾向にあります。 ⚫ 教育相談の件数は年々増加し、児童・生徒やその保護者が抱える課題が多様化、複雑化する中、課題解決を速やかに図る必要があります。 ⚫ 不登校児童・生徒数が増加傾向にある中、学校と連携し、不登校の背景にある環境の改善を図り、初期対応から事後対応まで一貫した支援を行う体制を整備し、不登校の抑制を図るとともに、不登校児童・生徒の社会的自立を支援する必要があります。 施策の概要 (1)相談・支援体制の充実と連携体制の強化 児童・生徒とその保護者が抱える問題の解決の支援をするため、家庭の福祉的課題等への対応を含めた学校内外の教育相談機能の充実を図るとともに、医療、福祉など関係諸機関との連携を図ります。また、令和3年(2021年)12月の教育相談センターの開設に合わせて、不登校対策の中核的機能や研究機能を含めた総合的な相談体制を構築するとともに、相談機関や不登校支援グループと学校が連携して支援する体制の構築を図ります。 (2)多様な学びの場や居場所の充実 不登校の予防から事後対応まで一貫した支援を行う体制の整備や、不登校特例校、ほっとスクール、オンライン事業等による支援拡充等の方法により、個々のニーズに応える学習や居場所の提供など不登校対策の充実を図ります。 政策6 生涯を通じた学習の充実 目指す姿 区民が年齢を問わず学び続け、いつでも学び直しができるよう、学びの機会と場が充実しているとともに、多様な人材が社会的な資源となってつながりあい、連携・協働を通じて地域コミュニティづくりが広がっています。 図書館が、知と学びと文化の情報拠点として、地区の文化や歴史の「知」の拠点として、コミュニティの醸成につながる交流の場所、地域に開かれた知的な居場所となっています。 区民が世田谷区に愛着を持ち、世田谷の歴史・文化を大切にしながら、多くの文化財を保存・活用し、貴重な文化財を次の世代に確実に継承しています。 成果指標 生活の中で学びが身近に感じられるようになった区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 地域の多様な社会資源と連携協働して、持続可能な地域社会の担い手を育成するとともに、区民の「つながり」や「かかわり」を創出し、地域コミュニティに結び付けていく環境の整備が求められています。学校や地域で、区内大学等とのネットワークの構築や、文化・芸術などを子どもから大人まで誰もが身近に親しむ機会の充実が必要です。 ⚫ 生活や社会の在り方が今後さらに大きく変化することが予測されるため、区民が変化に対応する力を身につけ、多様で複雑化する課題に挑み、豊かな人生を送ることのできるよう、多元的な学びの場や機会の提供が必要です。 ⚫ 乳幼児から小中学生、高校生、大人へと読書の習慣が続くよう、成長段階に応じた切れ目のない読書支援に取り組んできましたが、特に読書量が減少する中高生世代に対し、読書への興味を引く取組みを進める必要があります。 ⚫ 中央図書館や地域図書館では、館の地域特性を活かしたテーマ展示を行っていますが、社会状況や周辺状況の変化を受け、地区の文化や歴史の「知」の拠点としての図書館を目指す必要があります。また、図書館サービスの根幹をなす図書資料等の充実に継続して取り組むとともに、電子書籍などの新たな情報メディアを積極的に取り入れる必要があります。 ⚫ かつて農村であった時代や、住宅都市へと変わり始める明治から大正、昭和初期の風景の多くが失われ、まちの成り立ちや歩みを伝えていくことが難しくなっています。次世代に世田谷の歴史・文化を継承していくため、郷土の歴史・文化について、あらゆる世代の区民が学習し、文化財に親しむ機会を提供していくことが必要です。 施策の概要 (1)知と学びと文化の情報拠点としての新たな図書館の創造 図書資料の充実や区民と情報をつなぐサービスの推進を図り、仕事や暮らしの中で生じた問題・課題の解決のために必要な知識・情報を提供するとともに、区民の文化的活動や、教養、レクリエーションの機会など多様な学習の機会を作ります。また、区民の利便性を向上させるため、身近で手軽な図書の貸し出しに取り組みます。さらに、子どもや若者が本と出会い、本を読む楽しさや大切を感じる機会を増やし、それらを通じて子どもたちが成長し、生涯にわたる読書習慣を身につけることができるよう支援します。 (2)常に学ぶ区民意識の涵養と社会参加の促進 区民が地域の生涯学習事業への主体的な参加と活動することで、地域の大人自身が相互に学びあい育ちあう活動を活発にしていくため、学習活動の発表交流や、ネットワークづくりなどを支援します。また、区内大学等との連携を強めて、区民の多様なニーズに応えるとともに、生涯学習で取得した知識や経験の活用による地域コミュニティへの参加や豊かな人生の創出のため、区民が主体的に学びに参加し、継続的に学び交流できる場や機会の充実を図ります。 (3)文化財の保護・普及活動の推進 世田谷の歴史・文化を次世代に継承していくため、多くの区民が地域の文化財に親しむことができるよう、多世代が世田谷の歴史・文化を学ぶ機会を設けるとともに、文化財に関する多様な情報発信を積極的に行います。 健康・福祉 政策7 健康づくりの推進 目指す姿 全世代を通して、区民一人ひとりが自身の健康に関心を持ち、主体的に健康づくりの取組みを推進するとともに、感染症や心の不安など心身ともに安心できる支援の仕組みが確立され、いつまでも健康で安らかに暮らしています。また、高齢者が、住民同士の支え合いと事業者との連携による多様な介護予防に取り組むことで、住み慣れた地域で、生きがいをもって、いきいきと自分らしく暮らせるまちになっています。 成果指標 生涯にわたり健やかでこころ豊かに暮らすことができていると思う区民の割合 % 65歳健康寿命(要介護2)6 歳 6 65歳健康寿命(要介護2)とは、65歳の人が要支援・要介護認定を受けるまでの状態を健康と 考え、要介護2以上の認定を受ける年齢を平均的に表した指標です。 現状と課題 ⚫ 区民の平均寿命と65歳健康寿命は延びていますが、平均寿命の延びに対して65歳健康寿命の延びは鈍い状況にあります。世田谷区民の健康状況は比較的良好なものと推測され、「健康」に対する意識も高く、健康づくりに取り組んでいる区民も多くいる一方で、健康に関する意識はあっても実践につながらない人や健康無関心層(若い世代など関心が薄い人)がいることがわかっています。関係者・関係団体などと連携し、健康無関心層も巻き込みながら、自主的かつ合理的に、または自然に、健康につながる選択ができるような仕掛けや工夫を取り入れ、区民の望ましい健康づくりを推進していくことが必要です。 ⚫ 病気の早期発見や自身の健康管理のために、特定健診等の一般的な健康診断のほかがん検診など、「健康増進法」に基づく目的別の検診の受診率の向上が求められています。受診勧奨の強化や職域関係機関等との連携など、区民に対して多様なアプローチが必要です。 ⚫ 「精神疾患」は国の5大疾病の中で最も患者数が多く、生涯のうち4人に1人は何らかの精神疾患に罹患しているにも関わらず、3人に2人は受診の機会を失しているといわれています。区民一人ひとりがおかれた状況やライフステージに応じた相談・支援・啓発の取組みが必要です。 ⚫ コロナ禍を通じて外出を控えるようになった高齢者のフレイル状態の進行が懸念されるため、医療機関や関係団体等と連携した介護予防事業等を通じて、「通いの場」を活用した介護予防の取組みや世田谷いきいき体操の普及を継続するとともに、高齢者が自宅でも取り組むことができる介護予防への支援にも取り組む必要があります。 ⚫ 住民参加型・住民主体型の支えあいサービスや地域デイサービスの充実のため、サービス提供者となるボランティアや運営団体の確保を関係機関と連携して継続する必要があります。また、高齢者が身近な場所で介護予防の取組みに参加できるよう、地域デイサービスや委託事業者が実施する介護予防筋力アップ教室については、実施場所の地域的偏在を解消していく必要があります。 施策の概要 (1)主体的に取り組める健康づくりの推進 健康無関心層を含め、幅広い世代の区民が、正しい知識を持ち、健康の保持・増進につながる行動を自ら実践し、継続して取り組むための支援を推進していきます。また、多様な主体と連携し、区民が無理なく、楽しみながら健康づくりに取り組めるような仕掛けや工夫を取り入れていきます。 (2)こころの健康づくり こころの不調や精神疾患に関して、社会的な偏見を無くすとともに、区民の理解を促進することが重要であり、そのために様々な機会を通じた啓発やアクセスしやすい情報発信に取り組みます。また、こころの健康にかかる相談窓口の充実や地域のネットワークの構築を図っていきます。 (3)介護予防の総合的な推進 加齢に伴う体力低下、低栄養、口腔機能低下などの介護予防に関する基礎的な知識を区民に持ってもらい、高齢者自身によるセルフマネジメント力を向上させることを目的に、介護予防普及啓発事業を実施します。また、高齢者が身近な地域で自立支援・重度化防止に取り組める環境を実現することを目的に、支えあいサービスや地域デイサービスなどの住民参加型・住民主体型サービスや介護予防筋力アップ教室の充実に取り組みます。 政策8 福祉につながるネットワークの強化 目指す姿 健康や身体の悩み、困りごとを抱えた区民が早期に身近な福祉の相談窓口に相談することができ、状況に応じた適切な支援や、関係機関につながることができます。課題が複雑化・複合化した場合など対応が難しいケースについても、様々な機関による支援体制を構築し、隙間ができないよう支援を届けるとともに、地区で寄り添いながらつながり続け、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしています。 成果指標 地域住民の居場所や支えとなりうる地域資源の数 か所 現状と課題 ⚫ 各地区の「福祉の相談窓口」に寄せられた区民の困りごと等から地区の課題を抽出し、四者連携会議(まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会、児童館)で共有しています。複雑化・複合化した課題を抱えた方や制度の狭間のニーズを抱えた方を社会へつなぎ、伴走支援を実践するためには、多様な場・居場所づくりや、人と人、人と資源をつなぎ、顔の見える関係性や気にかけ合う関係性を地区で生み出すことが必要です。 ⚫ 「福祉の相談窓口」において対応が難しいケースについては、各地域の保健福祉センターによるバックアップ体制を整え、各地区を支えてきました。一方で、近年は課題が複雑化・複合化した方や制度の狭間のニーズを抱えた方が増加しており、福祉の分野だけでは解決に至らないケース等も出てきています。区民の立場に立って、福祉だけでなくあらゆる分野の社会資源にも着目し、横つなぎと重層的な支援に取り組む必要があります。 施策の概要 (1)身近な福祉相談の充実と地域づくり 地区における四者連携を基盤に、共助による見守りネットワークづくりや身近なところで福祉の相談や手続きのできる環境の充実を図ります。あわせて福祉に関する社会資源の開発と福祉のまちづくりにおける区民との協働を推進します。 (2)地区でつながり続ける支援体制の構築 複雑化・複合化した課題等に対応するため、様々な分野の関係者とチームを組織し、支援する体制を整えます。地区におけるアウトリーチを強化し、課題を抱えた方を早期に発見し、必要な支援につなげる体制を整えます。本人や世帯のニーズ、抱える課題などを把握し、地域の社会資源等を活用し、社会参加を支援します。 政策9 地域福祉の推進と基盤整備 目指す姿 障害の有無にかかわらず、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられているとともに、介護や医療等が必要となっても、必要な人材が確保・育成されており、保健・医療・福祉等のサービスの連携が相互に図られ、総合的に提供されていることで、誰もが安心して住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるまちになっています。 成果指標 介護、医療必要時の世田谷区への居住意向 % 現状と課題 ⚫ 住まいは、区民が安心して生活していくための基盤であるため、様々な事情により現在の住まいで暮らせなくなった高齢者や障害者、ひとり親家庭や子育て世帯等の住まいの確保が難しい方(住宅確保要配慮者)への支援が必要です。在宅での自立した生活を送ることが困難になった方や入院中・入所中の方が地域で安心して暮らしていくためには、グループホーム等をはじめ、多様な住まいが整備されている必要があります。 ⚫ 障害者(児)実態調査では、「あなたが希望する暮らしを実現するためには、どのようなことが必要だと思いますか。」という問に対し「周囲の人の障害への理解」選択肢の回答が24.3%で最も多い。「世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例」に基づき、障害理解を促進する施策を具体化する必要があります。 ⚫ 国連勧告及び国の基本方針で示す「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」の考え方に基づき、長期入院している区民に対する動機付け支援など地域移行を継続して進める必要があります。医療的ケア児(者)は他区に比べて多く(人口比)、かつ医療的ケア支援に携わる人材も定着しにくい状況にあります。 ⚫ 令和7年(2025年)には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると見込まれています。「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」に基づき、一人ひとりが認知症を自分事として捉え、認知症になる前から備えるとともに、認知症になってからも自分らしく安心して暮らせるための認知症施策を総合的に推進する必要があります。 ⚫ 令和4年度(2022年度)の世田谷区高齢者ニーズ調査・介護保険実態調査(区民編)によると、「介護が必要になった場合に希望する居住の場」について、自宅での生活を希望する人が半数を超え、最も多くなっています。安心して在宅生活を送るには、保健、医療、福祉等のサービスを地域で継続的・総合的に提供できる体制が必要です。 ⚫ 介護保険実態調査や障害福祉サービス提供事業所向けの実態調査では、人材確保の状況について「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が、それぞれ全体の5割、7割となっています。今後、全国的に現役世代の人口減少が見込まれる中、事業者による人材の確保とともに、人材の育成・定着に向けた支援が必要となります。 施策の概要 (1)安心して暮らせる居住環境の整備 住宅確保要配慮者への入居支援を進めるため、区の福祉部門や不動産団体、居住支援法人との連携を強化し、居住支援や賃貸物件情報提供サービスの推進を図ります。 在宅での自立した生活を送ることが困難な方も、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、また、病院や施設にいる人が住み慣れた地域での生活に戻れるよう、多様な住まいの適切な供給を図っていきます。 (2)地域生活課題の解決に向けた取組み 地域共生社会の実現に向けて、障害理解の促進施策と、精神障害者や医療的ケア児(者)を始めとしたとした、障害のある方への支援施策に取組み、安心して暮らし続けられる地域づくりを推進します。 認知症や障害、ひきこもり状態にある方等が住み慣れた地域に安心して暮らし続けられるよう、区民や地域団体、関係機関、事業者等との協働のもと、本人支援策や地域づくりなど各施策に取り組みます。 (3)在宅医療・介護連携の推進 医療や介護が必要になっても、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らし続けることができるよう、医療機関と介護事業所との連携や24時間診療体制の構築に取り組むとともに、在宅医療やACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生会議)について更なる普及啓発に取り組みます。 (4)福祉人材の確保及び育成・定着支援 福祉人材の確保・育成・定着支援を総合的に推進するため、世田谷区福祉人材育成・研修センターも活用し、区内でサービスを提供している福祉サービス従事者に対する研修、事業者への活動支援、情報収集・研究等を行います。 災害・危機管理 政策10 安全・安心のまちづくり 目指す姿 区民一人ひとりの防災意識が向上し、町会・自治会をはじめとした多様な主体や人材の防災力の底上げがされ、地区のコミュニティが連携して救護や避難に取り組むことができ、地域の防災力が向上しています。また、区民が、日ごろから健康危機に対する意識を持ち、健康危機発生時には正しい情報のもとに適切な行動をとることができます。持続的な安全・安心の施策を展開し、体系的・継続的な治安基盤や関係機関との強固な連携体制を整備することで、安全・安心に暮らし続けることができるまちとなっています。 成果指標 安全・安心に暮らせていると感じる区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 災害時の被害を抑えるためには、区民一人ひとりによる「自助」や地域住民による「共助」の取り組みが重要であり、防災区民組織等が中心となって、地域特性を踏まえた防災計画を作成し、住民が一体となって防災意識・防災力の向上に取り組む必要があります。 ⚫ 過去の災害を契機として、高齢者や障害者、乳幼児などの要配慮者や女性、性的マイノリティなどへの配慮の必要性、重要性が再認識されており、災害時及び平常時における多様性に配慮した視点からの準備、対策が必要です。 ⚫ 震災の際は必ず指定避難所に行かなければならないという認識が一般に浸透していることなどにより、キャパシティを超える避難者が指定避難所に詰めかけることが懸念されます。指定避難所の過密状況を避け、適切な避難所運営を可能とするため、在宅避難の推進に取り組む必要があります。 ⚫ 犯罪を未然に防ぐ環境整備の方策としての防犯カメラ設置は、設置費用が高額であることや町会・自治会内等への加入率の低下による財源の減少等により要望通りに設置に至らない状況にあります。設置状況には地域差があり、今後は犯罪発生状況や環境変化を踏まえ、地域と共に設置促進に向けた積極的な取組みが必要です。 ⚫ 世田谷区内の犯罪発生件数は年々減少する一方、コロナ禍の影響により高齢者の在宅率が上がったこともあり、還付金詐欺をはじめとする特殊詐欺被害が令和3年(2021年)より再び増加に転じています。今後、高齢者を狙った特殊詐欺対策として、ATMコーナーへの携帯電話抑止装置設置拡充、自動通話録音機貸与促進、広報・啓発活動を重点的に実施していきます。 ⚫ 新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、区は、新興・再興感染症への対応をはじめとする健康危機体制の抜本的な見直しに取り組み、令和6年(2024年)3月に、「新型インフルエンザ等対策行動計画」を改定するとともに、新たに「感染症予防計画」、「健康危機対処計画」を策定しました。健康危機体制の強化に着実に取り組むとともに、計画の実効性を高めるべく平時から関係機関との連携強化等に取り組みます。 施策の概要 (1)地域防災力の向上 災害に強く、安全・安心なまちづくりを実現するため、区民一人ひとりの防災意識向上の推進と町会・自治会をはじめとした多様な主体や人材の防災力の底上げに取り組みます。また、在宅避難の必要性の啓発を進めます。 (2)犯罪抑止の取組み 犯罪のない安全で安心して暮らせるまちづくりを進めるためには、区や警察などの関係機関と地域が連携し、防犯体制の充実・強化を図っていくことが重要です。今後は、地域の自主的な防犯活動を支援し、自助、共助による地域の防犯対策を充実させることにより、地域住民の犯罪不安の軽減や犯罪の起きにくい地域環境の整備を推進していきます。 (3)健康危機管理体制の強化 新型インフルエンザ等新興・再興感染症が今後流行した場合であっても、迅速かつ適切に区が対応を行えるようにするため、「新型インフルエンザ等対策行動計画」、「感染症予防計画」、「健康危機対処計画」に基づき、保健所体制整備に取り組みます。 また、震災等の災害が発生した場合に、迅速に保健医療活動を開始できるよう、区が設置する医療救護活動拠点の環境整備や災害拠点病院等に設置する緊急医療救護所の運営体制の整備を進めます。 政策11 災害に強い街づくり 目指す姿 災害に強い街づくりを進めることにより、豪雨や地震といった自然災害に対する 強靭さを備え、安心して暮らすことができるまちになっています。また、自然災害が発生した場合における地区での救援・避難から生活再建に向かう復興街づくりを迅速かつ円滑に進められるようになっています。 成果指標 災害に強い街づくりが進んでいると感じる区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 区の骨格となる都市計画道路の整備率は23区中20番目であり、延焼遮断帯の形成、消防活動・避難困難区域の解消及び災害からの円滑な復旧復興対策等、防災・減災機能強化の観点から、道路ネットワークの早期整備が求められています。 ⚫ 区内の公園面積は目標の半分であり、特に災害時の避難地としての機能を果たすことができる1ヘクタール以上の中規模公園が不足しており、機会を捉えて中規模公園を整備することが求められています。 ⚫ 区内には、東京都の「防災都市づくり推進計画」において、震災時に特に甚大な被害が想定される整備地域のほか、震災時に延焼被害のおそれがある老朽木造住宅が密集している木造住宅密集地域等に指定された地区における、建物の不燃化等が必要となっています。 ⚫ 首都直下地震が今後30年以内に70%の確率で起こるとされ、被害を軽減すべく建築物の耐震化を進めていくためには、区民の耐震に対する意識を向上させていくことが重要です。 ⚫ 区内の道路上には、電柱が乱立するとともに、それらを結ぶ電線類が輻輳しており、災害時には電柱倒壊による救急活動や物資の輸送等に支障をきたす恐れがあります。また、歩行者、車いす利用者などの通行の妨げとなっていることや、都市としての美しい景観を損ねる要因となっています。このことから、電柱や電線を取り除き、災害に強く、歩きやすい、美しい街並みを築いていく必要があります。 ⚫ 震災が発生した場合に、区が地域住民や事業者、東京都等と連携しながら復興まちづくりを迅速かつ円滑に進めていくため、地域住民の参加を得ながら区職員に対する訓練等を行うことが必要です。 ⚫ 近年の強力な台風や、線状降水帯に伴う集中豪雨などに対応していくため、東京都の河川・下水道整備を推進するとともに、雨水の流出を抑制し河川・下水道への流入負担を軽減させる流域対策をグリーンインフラの持つ機能も取り入れ強化するなど豪雨対策に取り組み、浸水被害を軽減する必要があります。 ⚫ 区内には幅員4m未満の道路(狭あい道路)が多く存在し、区道の総延長の約1/4(世田谷区道路整備白書 令和5年(2023年)4月)が狭あい道路であり、区民意識調査においても、地域における日常生活の困りごととして「道路が狭くて危険」が最も高くなっています。緊急車両等の通行の支障となる狭あい道路の解消が求められています。 ⚫ 管理不全な空家等は、倒壊や火災の延焼等が発生するおそれもある等、近隣住民の生活環境に悪影響を及ぼします。高齢者のみの世帯数は増加しており、今後、空き家が増えていく可能性が高く、官民が連携した総合的な取組みにより対策を進めていく必要があります。 施策の概要 (1)震災に強い街づくり 震災に強い街づくりに向けて、都市基盤である道路や公園等の整備、無電柱化整備を計画的に進めるとともに、建築物の耐震化や不燃化等について、対策の重要性を区民に周知し協力を得ながら取り組みます。 (2)都市の事前復興 震災が発生した場合に、区が地域住民や事業者、東京都等と連携しながら復興まちづくりを迅速かつ円滑に進めていくために区職員がとるべき行動手順や役割分担などを地域住民の参加を得ながら理解し、復興まちづくりの実務で活用します。 (3)水害を抑制する街づくり 浸水被害を軽減するため、「豪雨対策基本方針・行動計画」に基づき、河川・下水道整備について、東京都と協力し事業の円滑な推進を図るとともに、雨水流出抑制施設の設置による流域対策の強化など、区民、事業者、国、東京都、流域周辺自治体と連携・協働して豪雨対策に取り組みます。 (4)日常の安全・安心な街づくり 安全で住みやすい街づくりを進めていくため、建築物の建替えの機会をとらえ、効果的・効率的な狭あい道路拡幅整備を進めます。あわせて、管理不全な空家等の解消を目指すことで日常の安全・安心な街づくりに取り組みます。 環境・リサイクル・みどり 政策12 脱炭素化の推進 目指す姿 将来を担う世代に、良好な環境を引き継いでいくため、区民や事業者の行動や取組みが地球温暖化や気候危機に与える影響、効果が広く認識され、区民・事業者・区をはじめあらゆる主体が一丸となって、令和32年(2050年)までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指し、地球温暖化対策に取り組んでいます。 成果指標 区内の二酸化炭素排出量 千t- CO2 現状と課題 ⚫ 地球温暖化に起因する強力な台風や集中豪雨が頻発しその被害は年々甚大化していますが、世界の二酸化炭素排出量は今なお増加しています。区部における真夏日、猛暑日、熱帯夜も増加傾向にあり、今後も引き続き地球温暖化が進行すれば、極端な気象現象がさらに増えていくと予測されています。気温上昇を止めるためには、令和12年(2030年)までにCO2排出量を半減し、令和32年(2050年)頃までに正味ゼロとすることが優先すべき課題です。 ⚫ 平成30年(2018年)の住宅の省エネルギー設備の整備状況については、全住宅約46万戸のうち、「太陽光を利用した発電機器」を整備した住宅は1.44%、「二重サッシまたは複層ガラスの窓」を全ての窓に整備した住宅は11.64%でした。こうした状況を踏まえ、ZEHレベルの省エネルギー性能を備えた新築住宅の普及を進めていくとともに、既存住宅ストックにおける断熱性能向上や公共施設の率先的なZEB化等の対策を進めていく必要があります。 ⚫ 区内の自動車登録台数は、令和2年(2020年)において約26.5万台で緩やかな減少傾向にある中、走行時にCO2等のガスを出さないZEV(電気自動車等)は、197台(平成25年(2013年))から1,638台(令和2年(2020年))に増加しています。区内の自動車登録台数に占めるZEVの割合は依然として低く、移動に係る脱炭素化に向けZEVの利用促進が課題です。 ⚫ 令和元年度(2019年度)の温室効果ガス排出量を部門別に見ると、家庭部門(44.6%)の割合が最も高い状況です。平成30年(2018年)の区民意識・実態調査によると、省エネルギーに関する取組みへの意識は概ね8割前後と高く、再生可能エネルギーを利用している回答者の割合は3.4%(平成25年度(2013年度))から6.5%と関心が高まっています。今後、家庭部門のCO2削減を推進するためには、区民の関心を高め、利用電力の再生可能エネルギーへの切り替えや脱炭素型ライフスタイルへの転換を促していくことが必要です。 ⚫ 令和元年度(2019年度)の温室効果ガス排出量を部門別に見ると、家庭部門 (44.6%)の割合が最も高い状況です。平成30年(2018年)の区民意識・実態調査によると、省エネルギーに関する取組みへの意識は概ね8割前後と高く、再生可能エネルギーを利用している回答者の割合は3.4%(平成25年度(2013年度))から6.5%と関心が高まっています。今後、家庭部門のCO2削減を推進するためには、区民の関心を高め、利用電力の再生可能エネルギーへの切り替えや脱炭素型ライフスタイルへの転換を促していくことが必要です。 施策の概要 (1)区民・事業者の脱炭素行動の支援 区民や事業者などあらゆる主体が、脱炭素型のライフスタイルやビジネススタイルへの転換を促進していくため、エコ住宅や省エネ行動などに対する補助や支援制度の拡充、再エネ利用を促す取組みの拡充などを進めます。 (2)公共施設や区事業活動における脱炭素の実施 区役所の率先行動として、公共施設のZEB化や再エネ利用の拡大、公用車のEVへの転換などを計画的に進めます。 政策13 快適で暮らしやすい生活環境の構築 目指す姿 きれいな空気や水の保全が進められ、良好な生活環境が次代に引き継がれています。地域・区民が協働した、ポイ捨てや歩きたばこの防止などの環境美化への取り組みによりきれいなまちが実現し、いつまでも快適な生活環境で暮らせる魅力あるまちになっています。 成果指標 生活するうえで、まちがきれいであると感じる区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 区内において、ごみのポイ捨て禁止の周知・啓発を行っていますが、いまだ多く確認できます。現在、区内一斉清掃であるせたがやクリーンアップ作戦を実施し、環境美化への区民意識醸成を図っていますが、参加者数は1,000人前後とほぼ横ばいが続き、決して多くはありません。今後、個人も含めた多様な団体などへの参加促進を図り、地域の輪の拡大に向けた取り組みが必要です。 ⚫ 区では屋外の公共の場所等での環境美化及び迷惑防止を促進するため、「世田谷区たばこルール」を定め、ガードレールや電柱への啓発看板の設置や路上喫煙禁止キャンペーンの実施による周知活動を行っていますが、路上喫煙者は依然として存在します。喫煙マナーの向上や分煙化を図るためにも、喫煙者への意識改革及び喫煙場所の整備促進が必要です。 ⚫ 廃棄物の発生抑制と再使用を中心に再生利用も含めた3Rについて、区民・事業者の意識醸成・行動変容を促し、ごみ減量と資源循環型社会の形成を推進します。 施策の概要 (1)地域環境美化活動の推進 快適な生活環境で暮らせる魅力あるまちの実現に向けて、区民のまちをきれいにしていく意識醸成を図るため、清掃活動を通じた環境美化を推進していきます。 (2)たばこルールの推進 区民のマナー向上に向け、「世田谷区たばこルール」の周知徹底を図るため、環境美化指導員による巡回指導や、路面標示・電柱・ガードレール看板を活用したPRおよび区民、事業者と連携したキャンペーン活動の実施を推進していきます。また、喫煙場所整備に向けた補助等の推進により、誰もが快適に過ごせる環境を整備いたします。 (3)ごみ減量と資源循環型社会の形成 ごみの減量を図り、区民に身近な食品ロス、生ごみ削減などに対する意識・行動の変化を促します。また、ものをすぐに捨てて買い替えるのではなく、長く使い続ける、手を加えてより長く使うなど、リユース意識の醸成と行動変容を促し、家庭からの廃棄物の発生を抑制するとともに、事業者による3R活動を支援します。 政策14 豊かな自然環境の保全・創出 目指す姿 国分寺崖線や大規模公園など核となるみどりが保全され、みどりと生きもののネットワークが広がっています。協働による公園緑地の維持管理や農業公園での活動などを通じて、区民は暮らしの中で生物多様性の豊かな恵みを実感しています。まちに広がるみどりは、ヒートアイランド現象を緩和し健全な水循環を保つことで地域の生態系を維持し、安全に暮らし続けられる環境住宅都市として持続可能性が確保されています。 成果指標 みどり率 % みどりに関する区民満足度「大変満足している」の割合 % 現状と課題 ⚫ 世田谷らしい多様なみどりを確保し、区制100周年となる令和14年(2032年)に区内のみどり率33%の達成を目指すため、「世田谷区みどりの基本計画」に基づきみどりの保全・創出を進めていますが、区内におけるみどり率は平成23年(2011年)の24.60%から令和3年(2021年)の24.38%とこの10年でもほぼ横ばいの状況です。民有地のみどりの減少を抑制するために、多方面にわたるさらなる取組みとともに、宙水を含めた地下水の涵養と健全な水循環を維持する取組みが必要です。 ⚫ 開発などによる自然環境の改変や外来種による地域固有の生態系への被害、適切な管理が行われないことによる生態系の質の低下、地球温暖化による生態系バランスの乱れなど、生物多様性は大きな危機にさらされています。将来にわたって生態系サービスを享受しつづけるためには、生物多様性の損失を止め、回復させるための急務の行動が求められています。 ⚫ みどりの量の確保と質の向上を支えるためには、誰もがみどりが大切であるという認識を持つことができるよう、みどりと関わる場づくりと多様な主体の協働が必要です。農作業体験や植樹体験などのみどりに関する活動への参加を望む声は多く、体験や参加を通してみどりや生物多様性保全の意識の醸成と行動変容につなげていくことが重要です。 施策の概要 (1)世田谷らしいみどりの保全・創出 国分寺崖線や社寺林・屋敷林、農地など世田谷の歴史あるみどりを保全するとともに、区民の意欲的な発想を活かし、様々な手法によって多様なみどりを新たに創出し、世田谷らしいみどりの保全・創出を進めます。 (2)生物多様性の保全 将来にわたって生態系サービスを享受し続けるため、多様な生物が生息・生育する場を保全するとともに、生きものに配慮した場を創出し、外来種や野生生物の適正管理を目指します。 (3)協働によるみどり豊かなまちづくりの推進 多様な主体がみどりや生物多様性の重要性を理解し、その保全にむけて主体的に行動する意識を醸成するため、イベントや講習会、体験活動など、みどりに直接ふれあえる機会を提供します。 経済・産業 政策15 持続可能な地域経済の実現 目指す姿 事業者の事業活動の基盤強化となる環境整備に加え、幅広い事業者の新たな挑戦や多様な主体による有機的なつながりの促進、多様な働き方の実現、地域課題や社会課題のビジネスの観点からの解決などにより新たな価値が創造される土壌や環境が整っています。これらの環境整備により地域の経済発展と地域や社会の課題の解決を両立する持続可能な地域経済が構築され、豊かな区民生活の実現に寄与しています。 成果指標 事業活動及び経済活動等の充実度 % 現状と課題 ⚫ 卸売・小売業や飲食業など、区民生活と密接に関連する産業の事業所数や付加価値額の低下がみられる一方、引き続き、主要産業として重要な位置付けにあります。また、医療・福祉業、教育・学習支援業などの生活に深く関連する産業も増加傾向にあるなど、区内産業は多様化している一方で、建設業や福祉産業を中心とする区民生活を支える産業で人材不足が顕著となっています。これら生活関連産業を中心とする既存産業の高付加価値化や活性化、人材確保を図っていくことで、区民の生活の質の向上に寄与していくことが必要です。 ⚫ コロナ禍を経て、職住近接又は職住一体の流れが強まる中で、働きやすい環境の整備や多様な働き方を実現するための環境整備や支援ニーズが高まっています。また、起業創業の選択肢は多様な働き方に資するのみならず、新たな価値を創出したり、課題の解決に資する可能性を高めるものであることから、多様な働き方の実現や起業・創業の促進を進めることが必要です。 ⚫ 価値観の多様化や社会の複雑性が増す傾向にある中で、地域課題や社会課題も複雑化・多様化しています。これらに対して、区民や民間企業のアイデア・実行力など、ビジネスの視点を取り込んだ解決を促進・後押しすることの重要性が増しています。 ⚫ 地域の賑わいや地域の地域経済循環の向上、将来に向けて産業を取り巻く環境を維持・継続していくことなどが重要と考えられます。そのため、地域内での消費の向上や来街者からの消費の獲得など地域内循環向上の取組み、環境の維持などを通じて、地域経済の活性化を図るとともに、地産地消などをはじめとするエシカル消費の観点についても普及啓発していくことが必要です。 施策の概要 (1)多様な地域産業の持続性確保に向けた基盤強化 地域の事業者が安心して継続的に事業を営むことができる環境や、区民の生活に必要な産業が円滑に引き継がれていく環境など、多様な事業者の事業活動の基盤となる環境整備に取り組んでいきます。また、事業者のチャレンジを後押し、意欲ある企業が世田谷に定着するような、地域経済の活性化につながるビジネス環境の整備を行っていきます。 一人でも多くの方が安定した仕事に就くため、仕事を探している人に就労につながる支援やマッチングの場の提供などに取り組みます。 事業所が必要とする人材を獲得できるようにするため、事業者に採用コンサルティングやマッチングの場の提供など採用支援に取り組みます。 (2)起業の促進と多様な働き方の実現 多様な働き方に触れることができる機会を充実させ、個々のライフスタイルや取り巻く環境に応じた多様な働き方を選択できる環境を整えるとともに、地域産業の新たな担い手を創出する起業・創業しやすい環境を整備するなど、幅広い層による起業・創業を後押しする取組みを進めます。 (3)地域や社会の課題の解決に向けたソーシャルビジネスの推進 社会課題や地域課題への関心や問題意識を持つ層の裾野を広げていくとともに、問題意識を持つ方と解決に向けたスキルを提供できる多様な人材・業種の交流を促すことで、社会課題・地域課題の解決の機会の増大や、課題をビジネス視点で解決していこうとする活動を応援・後押しする取組みを進めます。 (4)地域経済の持続可能性を考慮した事業活動及びエシカル消費の推進 地域の賑わい創出や地域内での消費向上、産業を取り巻く環境の維持、脱炭素など自然環境に配慮した事業展開など、事業者の持続可能性を高める取組を進めていきます。また、域外からの誘客による消費の獲得などのまちなか観光の取組を通じて、地域経済の活性化を促進していきます。また、エシカル消費の重要性や必要性等に関する啓発、フェアトレード商品を取り扱う事業者等による商品販売などにより、エシカルに触れる機会の提供を行います。 文化・スポーツ 政策16 文化・芸術の振興 目指す姿 年齢、国籍、障害の有無、また経済的状況にかかわらず、区民の誰もが日常生活または非日常の中で、文化・芸術に親しんでいます。一流の芸術から、気軽に参加できる文化的イベントまで、多彩で幅広い文化・芸術に気軽に触れることができ、文化・芸術活動を行う人同士の交流も活発です。住んでいて楽しく、住み続けたいと思えるまちになっています。 成果指標 区内の文化環境に満足している区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 文化・芸術に関する区民意識調査の結果では、最も重視してほしい施策は「身近なところで文化・芸術に触れられる」ことでした。街中など、区民が歩いていて自然に文化・芸術に触れられる身近な場所での文化・芸術鑑賞機会の拡充が必要です。 ⚫ 世田谷区には美術館や文学館、劇場など全国的にも評価の高い文化施設が充実しています。これらの文化施設と地域との交流を深めることで、より地域の発展と文化施設の認知度向上を図り、地域の愛着を深めていく取組みの継続が必要です。 ⚫ 文化・芸術に関する区民意識調査の結果から、紙媒体がメインの高齢層とSNSがメインの若年層で情報入手のしやすさに隔たりがあることが分かりました。このことから、各年代の特徴を踏まえた効果的な情報発信を工夫していく必要があります。 ⚫ 文化・芸術に関する区民意識調査では、文化財や史跡の活用が2番目に高い要望となっており、区の魅力として広くPRすることが望まれています。ボロ市をはじめとする地域のお祭りなどの伝統文化と合わせ、地域の魅力として積極的に発信していく必要があります。 ⚫ 区内文化・芸術団体等ヒアリング調査では、同様の活動をしている団体間のネットワークづくり支援への要望がありました。文化・芸術活動団体の横のつながりをつくる機会を創出する取組みが必要です。 施策の概要 (1)誰もが文化・芸術を身近に感じ楽しめる環境の整備 区民の誰もが文化・芸術を楽しめるよう、身近な場所での文化・芸術鑑賞機会の拡充を図ります。また、区民が文化・芸術に関する情報を入手できるよう、情報発信の工夫を図るとともに、文化・芸術活動を行う団体の情報発信への支援が可能となる環境の整備を行います。 (2)交流の促進による文化・芸術活動の活性化 文化・芸術を通じた区民や活動団体の交流を促進することにより区内の文化・芸術活動を活性化させるため、再整備後、新たな文化・芸術の拠点となる世田谷区民会館等において、区民が気軽に文化・芸術を楽しむ事業や文化・芸術活動団体向けの交流事業を充実させます。 政策17 生涯スポーツの推進 目指す姿 区民が生涯を通じ身近な地域で「いつでも」「どこでも」「だれでも」「いつまでも」気軽にスポーツ・レクリエーションに親しみ、楽しむことができています。 成果指標 週1回以上スポーツや運動をしている区民の割合 % 現状と課題 ⚫ スポーツへの関わり方や動機・理由は、年代、性別、家族構成、生活状況などによって変わってきます。ライフスタイルやライフステージに合わせた事業の実施やスポーツ施設の開設時間などの見直しが課題です。 ⚫ 共生社会の実現に向けた取組みとして、障害の有無や運動の不得意に関わらず、誰もが一緒にスポーツを親しみ楽しむ機会の場を提供していくことが求められています。 ⚫ プロスポーツチームや競技団体等と連携したスポーツ観戦機会提供の取組みが充分に行われていないため、身近にスポーツを観る機会が少なく、地域や産業の活性化にもつながっていないことが課題です。 施策の概要 (1)スポーツを通じた生きがい・健康づくり 生活の質を向上させ、生きがいや健康づくりを支えるために、多様なライフスタイルに応じたスポーツの取組みを推進したり、スポーツをしていない人や関心が低い層へのアプローチを行っていきます。 (2)スポーツを通じた共生社会の実現 共生社会の実現を目指し、スポーツ事業のユニバーサル化を進め、パラスポーツを推進し、誰もが楽しめるスポーツの場の創出に取り組みます。 (3)スポーツを通じた活力あるまちづくり 活力あるまちづくりを進めるために、地域スポーツを支える人材の育成・活用、スポーツを通じた地域や産業の振興に取り組みます。 都市整備 政策18 魅力ある街づくり 目指す姿 地域や文化に根差した歴史ある風景を守り、街並みを形成しながら、魅力が感じられる風景づくりやにぎわいのある拠点づくりなどが進められており、区内外の多くの人々を惹きつけ、新たな居住者が増えています。また、地区の特性を踏まえた参加と協働による地区街づくりや歩行者にやさしい歩きやすい道路環境の整備等を推進することにより、地域コミュニティや共助意識が向上し、区民が安全で快適に暮らし続けることができるまちになっています。 成果指標 自然や街並みなど地域の生活環境がよいと感じる区民の割合 % 街が魅力的でにぎわいがあると感じている区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 今後、人口の微増傾向が継続し、高齢者人口は一貫して増加する見込みである中、区民が安全で快適に暮らし続けられるまちの実現に向けて、魅力と活力ある拠点づくりや、みどり豊かで住みやすい良好な住環境の維持、向上に取り組む必要があります。また、安全で住みやすい快適な環境を保全・育成するため、引き続き、区民や事業者等の参加と協働によるさらなる街づくりの推進が必要です。 ⚫ 地域の気運醸成やまちづくり推進体制の構築及び市街地の再構築に向けた活動の支援等を進めることにより、三軒茶屋、下北沢、二子玉川駅周辺の広域生活・文化拠点をはじめとする生活拠点の整備において、地域特性を踏まえた街づくりを進め、目指す都市像を区民や事業者等と共有していく必要があります。あわせて、鉄道連続立体交差事業、大規模公園の整備・改修、大規模な土地利用転換などを街づくりの契機として活かし、魅力とにぎわいのある都市の創出を図る必要があります。 ⚫ 区内各地で建設や開発、農地の宅地化などが進められ、風景が変化しています。また、各地で区民による地域の魅力ある風景を守り育てる活動が行われています。区民、事業者、区が協働して、地域の個性を活かし、まちの魅力を高める風景づくりの推進が必要です。 ⚫ 電柱や段差等の存在が歩行者や車いす利用者の通行の妨げとなっていたり、一息つける場所も少ないため、ユニバーサルデザインの施設整備や電線の地中化、ベンチの設置を進めることで、災害に強く、歩きやすい魅力的な街並みを築いていく必要があります。 施策の概要 (1)地区特性に応じた街づくりの推進 区民が安全で快適に暮らし続けられるまちの実現を目指し、地区の特性に応じて、区民や事業者等の参加と協働を基本とした地区計画等の策定及び見直しに向け、取り組みます。 (2)魅力あるにぎわいの拠点づくり 地域の気運醸成やまちづくり推進体制の構築及び市街地の再構築に向けた活動の支援等として社会実験の実施や地権者勉強会等を開催していきます。また、多様な主体による参加と協働の街づくりの実現に向け、各主体との相互理解を深めていくため、街づくり協議会など住民主体の街づくり活動を支援するとともに、勉強会など情報共有や意見交換の機会を設けていきます。 (3)歩いて楽しめる魅力づくり 無電柱化や歩道等へのベンチ等の設置により、安全で安心な歩行空間を確保するなど、人中心の歩いて楽しい街づくりを進めます。 また、地域の個性あふれる風景を守り、育て、つくり、次代を担う子どもたちが世田谷に愛着と誇りを持てるよう、建設行為等における周辺風景への配慮の誘導や区民主体の風景づくり活動の支援、風景づくりの普及・啓発などを進めていきます。さらに、大規模な公園等における住民参画や官民連携を取り入れた魅力ある公園づくりを進めるほか、民間主体との連携を進め空き家の利活用を図るなど、地域資源をいかした街の魅力向上に繋げます。 政策19 交通環境の整備 目指す姿 区民、交通事業者、区が協力・連携して総合的に「交通まちづくり」に取り組み、 交通ネットワークの充実や、公共交通が不便な地域における移動環境の改善などを図ることで、様々な交通手段を活用し、誰もが快適に安全・安心な移動ができるまちになっています。 成果指標 区内の交通手段(移動手段)に満足している区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 今後、見込まれる超高齢社会や単身高齢者の増加等を踏まえ、住み慣れた地域で自立して暮らし続けられるよう、区民生活を支える地域公共交通の維持・確保、整備に向けた取組みを推進するために、地域公共交通活性化協議会を設置し、「地域公共交通計画」の策定が求められています。バス路線の採算悪化による改廃の影響にも留意しながら、代替交通の課題も検討し、今後の公共交通機関の骨格を守ることが必要です。 ⚫ 平成27年(2015年)3月に策定した「世田谷区自転車ネットワーク計画」に基づいて、自転車ナビマーク等の自転車走行位置表示を中心に自転車通行空間の整備を進めており、令和4年度(2022年度)末時点で計画路線延長167.4㎞のうち、約51㎞の整備が完了しています。 ⚫ また、都内の自転車事故は、令和2年(2020年)に減少しているものの増加傾向にあり、自転車単独の事故は増加しているが、自転車対車両の事故は減少傾向にあることから、自転車通行空間整備が一定の効果があると考えられ、引き続き、歩行者・自転車・自動車相互の安全に配慮した自転車通行空間の整備を進める必要があります。 施策の概要 (1)地域公共交通の活性化 区民が快適に安全・安心な移動ができるように、地域公共交通の維持・確保、整備と、最寄りの鉄道駅やバス停留所から一定以上の距離がある「公共交通不便地域」の解消に向けて取り組みます。 (2)自転車利用環境の整備 「世田谷区自転車ネットワーク計画」(平成27年(2015年)3月)に基づき、区内にある国道・都道、隣接自治体の道路との連続性を確保しながら、歩行者・自転車・自動車がともに安全で快適に通行できる環境を整備し、区民の日常生活を支援する自転車ネットワークを形成するため、自転車通行空間の整備を進めます。 政策20 都市基盤の整備・更新 目指す姿 区民の日常生活を支える重要な都市基盤である道路・公園等について、区民、事業者等との協働により整備計画が実現するとともに、適切な維持・更新が実施され、区民一人ひとりが安全で快適に暮らし続けることができるまちになっています。 成果指標 道路・公園等の都市基盤が整備・維持・更新され、安全で快適に暮らしていると感じている区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 区の骨格となる都市計画道路の整備率は23区中20番目であり、整備の遅れにより生じている交通渋滞・交通不便地域の解消や通過交通の住宅地への流入対策等が課題です。また、延焼遮断帯の形成、消防活動・避難困難区域の解消及び災害からの円滑な復旧復興対策等、防災・減災機能強化の観点からも、道路ネットワークの早期整備が求められています。 ⚫ 区民一人当たりの公園面積は令和5年(2023年)4月1日現在2.95㎡となっており、「区立公園条例」に定める区民一人当たり6㎡以上の目標達成に向け、計画的な整備が求められています。 ⚫ 世田谷区は道路管理者として、「道路法」に基づき道路を常に良好な状態に保つ責を負っています。区内には延長1,094㎞の特別区道、159橋の道路橋があり、この膨大なストックの道路インフラを効率的かつ計画的に維持更新していく必要があります。 施策の概要 (1)道路ネットワークの計画的な整備 交通環境の改善や防災・減災機能等の強化を図るため、道路ネットワークの骨格である都市計画道路及び主要生活道路の整備に取り組みます。また、歩行者等の全ての利用者の安全性を確保するとともに、消防車の通行や消火活動が困難な区域が生じないよう、区民生活に最も身近な地先道路の整備に取り組みます。さらに、連続立体交差事業に合わせた都市計画道路・駅前交通広場の整備を着実に進めます。あわせて、区民生活の安全性の確保、快適性の向上等を目的として、最も基礎的な都市基盤施設である道路、橋梁の維持、更新を計画的かつ効率的に進めます。 (2)公園・緑地の計画的な整備 公園面積一人当たり6㎡以上に向けて、計画的に公園を整備します。また、区民の安全な憩いと遊びの場を提供することを目的として、都市基盤施設の一つである公園の維持、更新を計画的かつ効率的に進めます。 人権・コミュニティ 政策21 多様性の尊重 目指す姿 個人の尊厳を尊重し、年齢、性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、多様性を認め合い、自分らしく暮らせることができ、人と人との繋がりを大切にし、誰一人取り残されない社会が実現しています。 成果指標 自分らしく安心して暮らしていると感じる区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 基本的人権が侵されることなく、一人ひとりが自分らしく生き、すべての人が尊重される社会の実現を目指していますが、国内には、未だに17の主な人権課題が掲げられています。多様性を認め合うとともに、人権課題への理解を深め、あらゆる人権侵害の根絶に向けた人権意識の啓発・理解促進が必要です。 ⚫ 「男女共同参画基本法」をはじめ、職場における男女平等の推進や女性に対する暴力防止・被害者支援に関わる法律・制度は整備されつつあるものの、固定的な性別役割分担意識や、「男・女であるから」という性別を前提とした選択肢は様々な分野で残っています。男女共同参画社会の実現に向けて、様々な取組みを区民、地域団体、事業者等と連携・協働して庁内横断的に推進していく必要があります。 ⚫ DV相談件数は、コロナ禍による緊急事態宣言下では急増し、さまざまな被害者の状況が顕在化しています。夫に経済的に依存せざるを得ない状態で「逃げないDV被害者」や男性の被害者が一定数見られ、子どもがいないDV被害者や性的マイノリティのDV被害者の発見と支援も課題となっています。また、「DV防止法」の一部改正を機に、子ども家庭支援センターと児童相談所が連携して、DV対応と児童虐待対応との連携強化が必要です。 ⚫ 区内在住外国人の人口比率は、令和5年(2023年)1月1日現在で、約2.5%と低いものの、実数では23,094人と、多くの外国人が暮らしており、今後更に増加する見込みです。多様な文化を理解し合える機会の提供や情報の多言語化など、多文化共生社会に向けた取組みが一層必要となります。 施策の概要 (1)人権への理解促進 女性や子ども、高齢者、障害者、外国人、性的マイノリティなどを理由に差別されることなく、多様性を認め合い、人権への理解を深めるため、人権意識の啓発や理解の促進に取り組みます。 (2)男女共同参画の推進 男女共同参画意識の啓発とワーク・ライフ・バランスの推進に取り組み、すべての男女が自らの意志によって社会のあらゆる分野で活躍し、個性と能力を十分に発揮することができる環境づくりを進めます。 (3)DV防止の取組み 精神的暴力もDVであるとの認識を徹底するなど、早期発見につながる啓発や地域ぐるみでDVを防止する意識づくりを強化し、DV防止、若年層を対象としたデートDV防止、早期発見に向けた働きかけに取り組みます。 (4)多文化共生の推進 多様な文化を理解し合える交流イベント等により、多文化共生の意識づくりを推進し、外国人に対する偏見や差別を解消するとともに、外国人が地域住民との相互理解を深め、地域で活躍できる場づくりを行います。また、多言語や「やさしい日本語」、ICT等を幅広く活用し、外国人が安心して地域で生活するために必要な情報を入手することができ、困りごとを相談できる体制づくりに取り組みます。 政策22 地域コミュニティの促進 目指す姿 区民一人ひとりが地域に関心を持ち、日常生活の中で気軽に参加できる居場所があり、役割を持ちながら孤立することなく地域とのつながりを感じて暮らしています。町会・自治会やNPOなどの様々な団体によって、多様な地域活動が活発に行われる中で、区民相互・団体相互がつながるとともに行政とも連携・協働しながら、多様化する地域の課題解決に主体的に取り組んでいます。 成果指標 身近な地域活動に参加している区民の割合 % 現状と課題 ⚫ 区民による参加と協働のまちづくりを進めていくためには、ひとりでも多くの区民が地域活動に参加し、地域の課題解決に取り組むことが求められています。現在も、身近な地域活動に一定の割合で区民が参加していますが、さらに増やしていく必要があります。 ⚫ 地区や地域には多様な区民のつながりや活動があり、団体間の情報共有や協働は現在も行われていますが、横につながり交流する機会を増やし、活動の活発化と相乗効果の発揮を図ることで、団体活動の活性化と地区・地域の課題解決に資するものと考えられます。 ⚫ 現在、地域別に行政情報の発信を行っていますが、地区への関心を高めるとともに、地区への関心の醸成による地区課題の解決に向けた参加と協働を促進するためには、現状の行政からの情報発信等従来の手法だけでなく、地域SNSの活用など地区や地域に関わる者が相互に情報の発信・共有ができる環境が必要です。 ⚫ あらゆる人が地域社会と繋がり、いきいきと暮らし続けられるよう、多様な社会参加の機会の拡充が求められています。 ⚫ 町会・自治会は地域コミュニティの基盤ですが、高齢化・核家族が進み、担い手の高齢化・役員の固定や地域とのかかわりが希薄となっています。また、区民意識調査では、「町会・自治会」に加入していない理由が「どのような活動をしているかわからない。」が最も高いことから、活動内容の周知等が求められています。 施策の概要 (1)地域への参加促進と地域活動の活性化 地域への参加意欲が向上し、活動に参加するきっかけが創出されるような機会やコミュニティの場の提供を行っていきます。また、町会・自治会やNPO等をはじめとする市民団体を支援することで、地域活動団体の活性化に取り組みます。 (2)区民や活動団体の連携・協働促進 活動団体相互の連携・協働のさらなる促進のため、区民や活動団体等の新たな交流の創出を図ります。また、地区への関心を高めるとともに、地区への関心の醸成による地区課題の解決に向けた参加と協働を促進するため、まちづくりセンターを拠点に地区での情報共有と地域参加のためのプラットフォームづくり等を推進します。 第5章 計画実行の指針 計画に掲げる施策の推進にあたり、必ず考慮すべき指針について、次のとおり定めます。 1. SDGsの推進 ⚫ SDGsの目標年次である令和12年(2030年)に向け、基本計画の施策と SDGsとの関連性を明らかにし、関連性を意識しながら分野横断的な施策展開を図り、一体的に推進していきます。 ⚫ 事業の意思決定にあたり、事業がSDGsに対して与える影響を考慮して複眼的な視点で可否を決定するなど、最大の効果を発揮できるよう努めます。 2. DXの推進 ⚫ 時代に即したデジタル技術の活用によりDXの取組みを推進し、区民主体のサービスデザインを徹底して利便性を高めるため、デジタルファーストで行政サービスを再構築します。 ⚫ デジタルツールを効果的に活用した多様な世代の意見表明や区政参加の促進の取組み、様々な情報の共有が可能となる仕組みの検討を進めます。DXの推進にあたっては、デジタル機器の扱いに不慣れな区民に情報格差が生じないよう、フォロー体制も合わせて構築します。 ⚫ オープンデータや庁内でのデータの分野横断的な利活用、新たなクラウドサービスの活用について、仕組みの構築や運用ルールの整備を図るほか、デジタル化における他自治体との連携や既存ツールの活用も考慮しながら、より快適で効率的な環境づくりを進めていきます。 ⚫ 生成AI等をはじめとして、劇的に進歩しかつ重要視されているデジタル技術については、区の業務改善等にも大きなチャンスをもたらす可能性を秘めています。利用にあたっては、その特性や限界と進化や変化、リスク等も正しく理解しながら安全かつ適正に使いこなし、さらなる業務効率の改善を進めていきます。 3. 緊急時・非常時の体制整備 ⚫ 天変地異に起因する災害や新たな感染症の感染拡大など、緊急事態・非常事態が生じた際は、人命の救助と被害の軽減を最優先に取り組みます。 ⚫ 緊急時・非常時の職員配置等の体制整備や必要な対策への予算措置を最優先し、状況に応じて補正予算などで迅速に対応します。 ⚫ 緊急事態・非常事態に迅速かつ柔軟に対応するため、明確な指揮命令系統のもと、組織の垣根を超えた全庁的な体制を構築し、対応にあたります。 ⚫ 職員一人ひとりが緊急時・非常時の対応や業務継続計画の内容を十分に理解し、的確に行動できるよう平時から意識を高めていきます。 4. 組織運営の変革 (1)柔軟な組織体制 ⚫ 社会状況の変化が目まぐるしい中、突発的な課題に即座に対応していくため、課題に応じた機動的な対応が可能なアジャイル型組織*7への転換を目指すとともに、民間を含む多様な社会資源とも連携を図りながら、柔軟な組織体制を構築していきます。 7 機動的でスピード感に優れた組織。ソフトウエア開発で用いられていたアジャイル開発(開発工程を機能単位の小さなサイクルで繰り返し、状況の変化に応じながら開発を進めていく手法)の概念を、組織全体に適応させた考え方。 (2)職員の政策立案・政策実現能力等の向上 ⚫ 基本計画の策定、推進に際して、EBPM(証拠に基づく政策立案)の推進をはじめ、職員の政策立案能力や政策遂行能力の向上に取り組みます。 ⚫ 飛躍的に進展しているデジタル技術など時代に即した知識や職務遂行の土台となる法令知識の習得など、基本計画を支える職員のスキル向上に取り組みます。 ⚫ 民間企業への職員派遣や外部人材の登用などを積極的に進め、民間企業の経営 感覚やコスト意識、時代の変化に対応するスピード感など公務では得られない 専門知識やノウハウの取得によるスキル向上などを図り、専門性の高い課題の 解決や新たな施策展開につなげていきます。 ⚫ 基本計画の実効性を高めるため、職員が日頃から自らの業務を振り返り、より精度を高めていけるよう、調査研究を日常業務の一環として捉えてしっかりと行えるための体制づくりを進めます。 (3)行政サービスの提供体制の整備 ⚫ 社会情勢の急激な変化や区民ニーズの高度化・多様化に的確に対応していくため、デジタル技術の活用、業務手法の見直しなどを通じて、適切な行政サービスの提供体制を整備します。 ⚫ 生産年齢人口が減少する中で、多様な働き方の整備や業務生産性の向上、職員の意識改革などを通じて、持続可能な形で行政サービスを提供する組織・人員体制を整備します。 5. 情報発信・情報公開 ⚫ 世田谷区の取組みを区民や事業者をはじめ、他自治体などにも広く正確に理解してもらえるよう、プッシュ型、プル型の情報発信に一層力を入れるとともに、戦略的かつ効果的な情報発信により、世田谷のブランド力の向上を図っていきます。 ⚫ 情報公開を通じて、公正で開かれた区政を実現するため、区政に関する情報や文書の適切な管理、保存などを徹底するとともに、利用者の立場に立った情報開示・情報公開の利便性の向上に取り組みます。 6. 行政評価 ⚫ 基本計画を着実に進めるため、基本計画が目指す目標や姿について指標を設定して進捗状況の把握や評価を行うとともに、各政策や施策についても、指標に基づき定期的に成果管理を行う行政評価を徹底し、課題と改善方法を明らかにします。 ⚫ 計画全体の進捗状況を確認するための適切なチェック体制や各政策や施策の相互の関連性によってもたらされる効果や影響についても評価を行える仕組みの検討を進めます。 7. 他自治体や国際社会との協力連携 ⚫ 世田谷区政は他自治体や世界各国の共通の課題意識とも触発し合い、支え合いながら進めてきたことを再認識し、政策や施策の立案・推進にあたっては、常に他自治体やグローバルな国際社会への影響などを意識して協力連携を図りながら、取組みを進めます。 ⚫ 区がこれまで積極的に進めてきた地方・都市との交流・連携について、政策面での連携を含め一層の推進を図るとともに、国際交流について、儀礼的なものから政策形成に結実するものまで、多様なかたちで連携を進めていきます。 第6章 持続可能な自治体経営 計画に掲げる「目指すべき未来の世田谷の姿」の実現に向け、以下の視点からの取組みを進め、持続可能な自治体経営の確立を目指します。 1. 区民目線による行政サービスの向上 区民目線からサービスデザインの考え方を取り入れた事業推進や進化するテクノロジーをフルに活用した利便性の大幅な改善などにより、現在の縦割りの組織のあり方や仕事の進め方を改め、各組織ごとの情報の共通資源化や可視化、蓄積、また、柔軟なワークスタイルの実現など従来の枠組みを超える行政経営のスタイルの構築に取り組み、柔軟かつ機動的に対応できる問題発見・解決型組織に生まれ変わります。 2. 多様な主体との連携強化による経営力の向上 区民ニーズや区政課題に区単独で対応するには限界があるなか、区民や地域団体、民間事業者など、多様な主体で形成されるネットワークと積極的に協力し、課題解決に向けた取組みを進めることが重要です。 そのため、行政の持つ情報を積極的に共有するなど、多様な主体が公共サービスの担い手となれる環境を整備し、最適な担い手とともに地域課題を適切に把握し解決できるよう、外部からのアイデアやスキル、資源を積極的に活用していく新たな仕組みを専門家集団である各部署が構築し、柔軟かつ的確な行政経営を行います。 新たな行政経営体制への移行の促進を図り、生み出した経営資源を地域行政推進の考え方を踏まえた、地域や地区の特性を活かす政策、施策展開へと振り向けます。 3. 経営資源の最適化 自律的な行財政運営に向け、時代にあった事業の刷新や更なる財源確保の取組み、公共施設の有効活用の更なる推進などにより、増加する行政需要に対し、限りある経営資源を投入・活用するなど、「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われる経営資源を適切に管理、投入することで効果を最大限発揮させます。