第5回世田谷区基本計画審議会 議事録 【日  時】 令和5年1月16日(月) 午後6時00分~午後9時19分 【場  所】 教育総合センター 2階研修室 【出 席 者】 ■委 員   大杉会長、鈴木副会長、江原委員(オンライン)、小林委員(オンライン)、中村委員、長山委員、森田委員、涌井委員、尾中委員、佐伯委員、羽毛田委員(以上11名) ■ 区    保坂区長、中村副区長、岩本副区長、松村副区長、渡部教育長、松村技監(オンライン)、加賀谷政策経営部長、舟波地域行政部長(オンライン)、田中保健福祉政策部長(オンライン)、畝目都市整備政策部長(オンライン)、知久教育総務部長、清水世田谷総合支所長(オンライン)、木本北沢総合支所長(オンライン)、馬場玉川総合支所長(オンライン)、佐々木砧総合支所長(オンライン)、皆川烏山総合支所長(オンライン)、瀬川市民活動推進課長(オンライン)、清水環境政策部長(オンライン)、後藤経済産業部長(オンライン)、柳澤子ども・若者部長(オンライン)、笠原防災街づくり担当部長(オンライン)、釘宮みどり33推進担当部長(オンライン)、石川道路計画課長(オンライン)、工藤土木部長(オンライン)、鎌田豪雨対策推進担当参事(オンライン)、秋山政策企画課長、髙井経営改革・官民連携担当課長(オンライン)、箕田政策研究・調査課長、真鍋政策経営部副参事(計画担当) 開会 【大杉会長】  それでは、定刻になりましたので、第5回世田谷区基本計画審議会を開催いたします。  お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。  議事に入る前に、事務局より、本日の出席状況の報告と、配付資料の説明をお願いいたします。 【真鍋副参事】  それでは、事務局より御報告をさせていただきます。  本日は、青柳委員、汐見委員、安藤委員、下川委員より御欠席の連絡をいただいております。  また、江原委員、小林委員がオンラインでの御参加となります。  なお、汐見委員より、テーマ別意見交換にあたって、動画にて御発言をいただいております。  続いて、配付資料でございます。次第の下段に配付資料一覧を記載しておりますので、資料と併せて御確認をお願いします。  委員の皆様には郵送にて事前送付しているところなんですが、金曜ないし今日も届いていない方もいらっしゃると聞いていまして、大変申し訳ございません。御迷惑をおかけしました。電子データをお送りさせていただいたのですが、ちょっと見切れていない方もいらっしゃるかなと思いますが、申し訳ございません。  まず、資料1でございます。クリップ留めから外したA3の資料が資料1になりまして、こちらは第3回審議会までの御意見を整理した次期基本計画のコンセプトですとか将来像、そういったものを御議論いただいていたんですけれども、そちらに対して、区の様々あります附属機関、関係団体を対象に実施したアンケートの調査結果を取りまとめた資料となっております。  開いての御説明の時間はないので割愛しますが、主な御意見だけ少し御紹介します。  主な御意見としては、町会・自治会や民生委員・児童委員、消防団といった地域の担い手不足への対策の必要性ですとか、産業面、事業者、労働者からの視点が不足しているのではないか。子どもというものが非常に強調されているけれども、高齢者まで、誰もが安心して暮らせる街を目指すべき。コンセプトに多様性の尊重をといった御意見が複数の団体からございました。  あと、あまり議論になっていないところでは、ハード面における災害に強い街づくりの推進ですとか、スポーツができる環境の整備をといった御意見もいただきました。お時間の関係で全てを御紹介できず恐縮でございますけれども、各団体からの意見ということで、今後の議論の参考としていただければと存じます。  続きまして、資料2の関係ですけれども、資料2-1は、第3回審議会までの論点の整理のシート、資料2-2が、前回、第4回審議会での御意見を整理した資料となってございます。加えて、資料2-3は、この間、お示ししてきました区の基本的考え方でございます。  これらを踏まえまして、資料3でございますが、現時点における基本計画大綱のイメージとして資料3を作成してございます。  少しだけ資料3を御覧いただいて、1ページ目に図がございます。こちら、目指すべき将来像につきましては、前回の御議論でも、「将来像が5つは多いのでは」ですとか、「子どもだけではなく大人、高齢者まで対象を多様に」といった様々な御意見をいただきました。そちらを踏まえまして、「誰もが楽しくいつまでも住み続けたいまち」と大きく1つとして掲げてはどうかという案にしております。  この将来像の実現に向けては、一番下に記載してございますような、世田谷区がこれまで築き上げてきた文化、特徴、土壌といったもの、一例ですけれども、そうしたものを土台としながら、その上、「計画全体を貫く考え方」として、外枠に紫色で6つ記載してございます。「計画全体を貫く考え方」として、「区民の生命と健康を守る」、「子ども・若者を中心に据える」、「参加と協働」、「多様性の尊重」、「日常生活と災害対策・環境対策を結びつける」、「地域・地区の特性を踏まえた施策展開」、こちらを、これから計画に掲げていきます政策ですとか施策の立案の際に考慮することとして掲げております。  そして、その円の中、重点政策として6つ記載しているところですけれども、この重点政策をつなぐコンセプトとして、「ワクワク感の創出」というものを据えまして、1つ共通する理念の下、重点政策を展開していくというようなことを図示しているところです。  重点政策については、「子ども・若者が笑顔で過ごせる環境の整備」、「新たな学校教育と生涯を通じた学びの充実」、「多様な人が出会い、支え合い、活動できるコミュニティの醸成」、「誰もが取り残されることなく安心して暮らせるための支援の強化」、「脱炭素による持続可能な社会の構築と自然との共生」、「安全で魅力的な街づくりと産業連携による新たな価値の創出」、こちらの6つを案として掲げているところです。  2ページ以降は、今、項目だけ挙げましたけれども、それぞれの項目ごとに、今まで御議論いただいた御意見などを中心に、少し文章化をして整理をしているところです。本日の直接の議題ではないため、こちらの1つ1つの御説明は割愛しますけれども、現時点のイメージとして共有をさせていただければと思います。  次回、第6回は、基本計画大綱のたたき台をお示ししての議論を予定しているところです。本日のテーマ別意見交換の御議論を踏まえまして、たたき台を作成しますけれども、こちらが現時点のイメージということで、今後の意見交換の中でも少し御参照いただければと存じます。  続いて、資料4から6になります。ちょっとボリュームがあるんですけれども、テーマ別の意見交換に当たりまして、それぞれのテーマに関連する資料を幾つか事務局のほうで御用意しております。  資料4がテーマ別の1、資料5がテーマ別の2ということで対応しているんですけれども、1つ1つの御説明をする時間がございませんが、それぞれテーマ別意見交換の際に御参照いただければと存じます。  続いて、参考資料です。  参考資料1は、第4回審議会の傍聴者からの意見・感想となります。前回同様、共有を図らせていただきたいと存じます。  参考資料2でございますけれども、12月19日、区議会企画総務常任委員会で、第4回の審議会の報告をした際にいただいた御意見になります。  例えばですけれども、町会・自治会、商店街など、これまで地域の中心となって支えてきたところ、こちらが抱える課題なども議論が必要ではないか。世田谷らしさといったものの共通認識をした上で、どこを伸ばしていくのか、何が足りないのかといった議論が必要ではないか。区民が暮らしやすいということについて、どういったことが大事なのかという視点をもっと議論してほしいといった意見をいただいています。  こちらも議論の参考としていただければと思います。  参考資料3は、こちらは第1回審議会で資料として配付した区の現況資料のうち、今日のテーマに係る部分を抜粋して御用意しております。こちらも併せて意見交換の際に御参照いただければと思います。  最後に、こちらは会場のみとなりますが、後ほど、意見交換にて委員の皆様から発表時に使用する委員提供資料を会場内は配付しております。オンラインの方は、画面共有を行って進めていくので、画面で御確認いただきたいと思います。  配付資料の説明は以上でございます。 【大杉会長】  ありがとうございます。  それでは、議題の1から3としまして、テーマ別意見交換に入りたいと思います。  まず、意見交換の進め方について、事務局より御説明をお願いいたします。 【真鍋副参事】  それでは、事務局より御説明をさせていただきます。  本日は、テーマを3つに分けて行わせていただきます。テーマ1が「子ども・若者が笑顔で過ごせるために必要な取組みについて」、その後、テーマ2として「目指すべきコミュニティと安心して住み続けるために必要な支援について」、そちらが終わりましたら、続いて、「世田谷を安全で一層魅力的なまちにするために必要な政策について」、こちらの3つのテーマについて、順次、議論をいただきたいというふうに思っております。  進め方ですけれども、各テーマについて、まずはパネリストを設定させていただいて、パネリストの方から、お一人につき8分程度で御発言をいただきたいと思います。  各テーマのパネリストですけれども、テーマ1が汐見委員、鈴木委員、森田委員。テーマ2が江原委員、中村委員。テーマ3が小林委員、長山委員、涌井委員にお願いしてございます。  先ほど申し上げましたけれども、汐見委員からは、動画にてメッセージをいただいておりますので、テーマ1ではそちらの映像を流させていただきます。  テーマ1、テーマ2、テーマ3のとき、お手数ですけれども、パネリスト席に移動していただいて、パネルディスカッション風にやらせていただきたいと思っております。  パネリストからの御発言が終わった後、意見交換として、パネリスト同士の意見交換の時間、続けて、委員全員で議論いただく時間を設けて、この2つを合わせておおむね30分程度で進めたいというふうに考えております。  なお、本日は、各テーマに関連する部署より区側出席者といたしまして、テーマ1については、教育長、子ども・若者部長、教育総務部長、テーマ2については、世田谷総合支所長、北沢総合支所長、烏山総合支所長、地域行政部長、保健福祉政策部長、市民活動推進課長、テーマ3につきましては、技監、玉川総合支所長、砧総合支所長、環境政策部長、経済産業部長、都市整備政策部長、防災街づくり部長、みどり33推進担当部長、土木部長、豪雨対策推進担当参事、道路計画課長が参加させていただいております。  事務局からの説明は以上でございます。 【大杉会長】  それでは、前回の会議の際に、このように進めさせていただくということで、詳細の設計の部分を御一任いただきましてありがとうございます。かなりタイトな時間の中で進めさせていただくことになるんですけれども、早速進めさせていただきたいと思います。 1 テーマ別意見交換1 【子ども・若者が笑顔で過ごせるために必要な取組みについて】 【大杉会長】  テーマ1ですが、「子ども・若者が笑顔で過ごせるために必要な取組みについて」ということに関しまして、パネリストの汐見委員、鈴木委員、森田委員の順に、お一人につき8分程度、御意見をいただきたいと思います。  本日欠席の汐見委員よりは、動画で御意見をいただいているので、まずはそちらを拝聴したいと思います。  鈴木委員と森田委員については、こちらに移動していただくということでよろしいですか。よろしくお願いしたいと思います。  動画の準備は、もう用意されていますね。  では、よろしくお願いします。 【汐見委員】  汐見です。今日は申し訳ございません。やむを得ない事情でこういう形で参加させていただきます。  世田谷区の子ども・若者の育て方、これを私たちはみんな思い切って原点に戻って、今、考えている最中だと思うんですが、私の考えていることを簡単に短い時間ですが話させていただきます。  1つは、今、世田谷区の子ども・若者の育ちについて、どのような課題があるのか、その課題認識というところが一致しているかどうか、これがやはり大変大きい問題だと思っています。  私は2つのことだけ申し上げますけれども、全般にそうなんですけれども、今の子どもたち、あるいは若者たちが、自分の一生をどういうふうにつくっていくかというときのライフコース、あるいはライフサイクルの描き方というものが、かなり大きく変わってきてしまっているんですね。私たちは、どうしても自分が若いときにこうだったということをモデルとして物を考えがちなんですけれども、頑張って進学校を目指して、偏差値を上げて、有名な大学へ入って、そして企業だとか役所などに就職するという、ある種のサクセスストーリーというのは非常に分かりやすい形であったわけです。  ところが、そういうライフスタイルというのは、かなりもう実は崩壊しているということ。このことに私たち自身が認識を一致させるかどうかということが大きいと思います。社会はもう第三次産業を超えて第四次産業、それを超えて第五次産業と言われていて、しかも1つの企業テーマが、30年、40年続くなどという保証は全くないんですよね。今の人たちは、これからのDX社会の中で、どういうことを必要としているかということについては、実は若者たちのほうがはるかに敏感なんですね。それで、それを受け止めた上で、企業活動にそれを転換していく、翻訳していくというような、そういう仕事を若者たちがどんどんやっていくという、そういう社会をつくっていかないと、古いライフコースにこだわっていると、若者たちが本当にさまよってしまう。ですから、例えばアメリカなどでは、大学で優秀な人間は、絶対大きな企業には就職しない。必ず起業していくという道を選ぶわけですが、日本では、起業して、その若者たちに投資していこうというシステムが十分つくられていません。そのことも含めて、若者たちのライフサイクルということが変わってくると、その多様化が今、現実的なテーマになっていて、学校というところがそれにどう対応できるかという辺り、それが1つの課題だと思います。  2つ目は、残念ながら、子どもの絶対数が減少しているにもかかわらず、不登校の子どもたちの絶対数がどんどん増えている。国のデータでは20数万人と言っていますけれども、これは数え方によっては、40万、50万になっているわけですよね。1人、2人の子どもが学校へ行きたくないというのだったら、その子の中に問題があると思うんですけれども、もう社会現象となっている。ということは、何を表しているかというと、今の学校というのは、今の子どもたちの期待に必ずしも沿う場所ではなくなっているということなんです。学校が今の子どもたちが求めているものとミスマッチを起こしているという、そのことを残念ながら積極的にやっぱり認めるしかない。そこからしか出発はできないと思っているんです。ここは、僕ら、冷静になっていく。特に学校の関係者、教師たちが、やっぱり今の学校と子どもたちの願っていることには大きなミスマッチがあるんだという、そこからもう1回出発しようというふうになるかどうかが大きいと思っています。  今までの学校というのは、大学でこういうことを勉強するためには、高校でこんなことをやる、高校でこんなことをできるようにするためには、中学校でこんなことをやる、中学校でこういうことが分かるためには小学校、上からずっとカリキュラムが決まっているんですよね。それが系統性と言われていたんですが、実は、それは1つの考え方にすぎないんですよね。子どもたちが、「あっ、こんな面白いものがある」とか、宇宙のことについて興味を持ったとか、あるいは、ウイルスについて興味を持ったとか、今、ウクライナのこと、いろいろあって、でも、ウクライナの楽器って面白いものがあって、そんなことに興味を持ったとか、囲碁や将棋に興味を持ったとか、いろいろあるんですが、そういうことに子どもの頃から、とても深い強い興味を持って、そのことをもっともっと自分で身につけていきたいとやっているうちに、それをやるんだったら、これも勉強しなければいけない、これをやるんだったら英語もやらなければいけないという形で、自分で必要なものをどんどん学んでいくという、そういうスタイルがあって、そういうカリキュラムがあるんですね。カリキュラムというのは、本来そういう意味なんです。履歴だとか学びの経験のことをカリキュラムと言うんですね。  そうすると、一人一人の子どもが学校に行って、自分のしたいこと、これからやっていきたいことを見つけるというのが学校のテーマなんだと、そういうふうなカリキュラムの魅力を変えていく。それを教師たちが、みんなでわいわい言いながらやっていってほしい。  私は、それを、教えの学校から学び支援の学校へと言ってきたんですけれども、例えば、「授業」という言葉がありますよね。英語にすると、今、「レッスン」と翻訳するのではないでしょうか。でも「授業」に当たる英語には、もう1つ、学校での「スタディ」というのがあるわけです。私は、どんどん「スタディ」に変えていく。つまり、研究をするというところが学校なんだと。  例えば、自分たちの住んでいるところで、こういう課題がある。例えば、シャッター商店街が増えてきた。どうやったらそれをなくせるか。これを今年1年、みんなで研究していこう。どこだったか、アメリカかどこかで、高校生が、今、ウクライナとロシアの戦争でフェイクニュースがいっぱい流されているんですよね。そのフェイクニュースを見ながら、これは何がフェイクニュースなんだろうかと、それを授業でワーっとみんなで議論しているということがありました。今の社会を本当に知るためにこそ学校で学ぶのだということで、それはまさに「スタディ」、研究なんですね。そういうことがいっぱいできるような、子どもたちのほうがよく知っているんだという、そういう学校をぜひつくっていきたい。これが2つ目であります。  そのためにどうするかということで、もう時間もないので簡単に提案させていただきますと、学校を変えるときに、教育委員会からとか、行政からとか、上から変えようという、そういうやり方が今まで多かったんですが、残念ながらこれはあまりうまくいかないです。上からは、もちろんここを変えようという姿勢を持っていなければいけないんですが、何よりも学校の担い手というのは、教師と、それを支えている保護者なんですよね。ですから、学校の先生方が、こういう学校に変えたい、もっと研究しよう、もっといろいろなものを勉強してみよう、外国へ行って勉強してみたい、そういうふうに先生方が、世田谷というところは、本当に面白い学校がつくれるんだと。そういうふうになっていかなければいけない。  そのために、私は、これをきっかけに、熱心な先生方が何十人か集まって、世田谷学校改革期成同盟のようなものをつくって、これから自分たちの学校でカリキュラムをどう変えていくのか、子どもたちの学びの願いというものをどう受け止めていくのか、私が先ほど言ったような、教えの教育から学び支援の教育に変えるために何をやっていったらいいのか、いろいろ実践で出し合いながら、それをどんどん広げていって、実は学校の意思を変えたいと思っているのは先生方なんだと、そういう社会機運をつくらないと、いくらいい学校を上からつくっても、その校長たちがいなくなったら、また元へ戻ってしまうということを繰り返していくと思うんですね。これがぜひお願いです。  それからもう1つは、不登校の子どもたちがたくさん出てきているということに対して、世田谷は非常に上手に取り組んでいる。これは、フリースクールというものを、もっともっといろいろな形でつくる、学校の中にフリースクールをどんどんつくればいいわけですよね。フリースクールというのは、カリキュラムを自分でつくるという教育のことです。  ですから、今、世界の教育改革というのは、カリキュラムは自分でつくるものだというふうになっているのと、それから、学年制を取らない。日本はインクルーシブ教育でユネスコから厳しい批判を受けたのは御存じですよね。これはインクルーシブになっていない。障害のある子とない子が一緒に教育を受けるということを仮にインクルーシブとすると、それはインテグレートで、エデュケーションで十分できるんです。インクルーシブというのは、人間が多様であるということを本当に大事にしていくという、そういう意味なんですね。そうすると、先生が一方的に教官と聴講方式で教えるような授業形式でやっていて、それで障害のある子とそうでない子が一緒に受けるようになったら、これはもう障害のある子のほうがずっとつらくなってしまいますよね。そんな教育をやっている限り、インクルージョンなんてできないんです。学年なんてもう要らない、イエナプラン教育にしても、プレナー教育にしても、モンテッソーリ教育にしても、実はあまり学年制は取っていません。そこでみんなで興味あるテーマで結びついたグループが、お互いに教え合ったりしながらやっていくというのか、そこには同じ年齢であるという縛りは何ら必要ないんですよね。そういう意味での自由さといいますか、不登校の子どもたちが、そういう公教育のフリースクールが学校の中にあるんだということで、どんどん復帰しているというか、そういうことも考えていかなければいけない。  最後ですけれども、それに、できたら教育委員会、行政、それから校長先生たちが世田谷区学校改革期成同盟のメンバーとして一緒に参加して、できたらそこに、保護者の中で学校にこうなってほしいねという人たちも一緒になって、わいわい授業研究して、そういう形の新しい学校改革運動が世田谷で今起こっているわけです。そういうふうな機運をこれをきっかけにつくっていただければ、全国に注目されてくる、そういう区になっていくことが可能なのではないかと思っています。  子どもたちは、そういう学校改革、学校づくりを本当に待っているんだということを私は強く思っていまして、それをちょっとお話させていただきました。  どうも失礼いたしました。 【大杉会長】  それでは、続きまして、鈴木副会長、よろしくお願いします。 【鈴木副会長】  鈴木です。私は、レジュメと、自分のつい最近書いた論稿を資料で提示しております。  第一に、レジュメのほうから話をさせていただきます。先ほど、汐見先生が話された話とかなり重なってくるのかなと思いますが、第1で、目指すべき方向性ということで、多様な一人一人の個性を尊重すること、守ることをやはり目指すべきであろう。ここについては、いろいろ今までも御議論されていて、反対する話ではない。反対意見が出てくるものではないと思うんですが、その個性というものが、安全安心ということだったり、個々人が本当に大切にするもの、自分が大切なものは人も大切にしてあげられるというような話と、あとはそれぞれの違いを尊重するというところで、今回の資料などで「ワクワク」というところともつながってくるのかなというふうには思っております。  それを目指すべき方向性というものがあるのですが、第2というところで、子どもをめぐる現状。では、実際に今、どうなっているのでしょうかというところで、自分も研究者ですので、いろいろなところへヒアリングに行ったりとか、いろいろなところでの被害に関係しての調査委員会等に入っています。そうすると、やっぱり虐待、データ的にもずっと上がっているということはありますが、虐待の案件がありますし、いじめも調査委員会等に入っていますが、全然いい方向に向かっているというふうには思えていません。SNSが広がってきているというような形で、どんどん見えにくくなって、陰湿化、悪質化しているという状況も感じています。また、学校施設での体罰というところで、表面的にはなくっているように見えないこともないんですが、実際、学校での子どもたちの意見を聞いたりすると、今までどおりというか、よくなっているという状況には見られません。ブラック校則というのも、状況が新聞報道とかに出ていますが、実際、学校に現場に入ってみると、様々な教員が説明できない校則は、後でも出てきますが、決まりは決まりですと。教員側が全然説明はできないけれども、守るべきものなんですという形の押しつけというものがある。だから、子どもに関して、そのような状況というのは、子どもを苦しめているというのが私が見ている景色です。  では、このような状況に対して、「子ども」というキーワードの中で国がどういうふうに動いているかというと、新聞報道でも出ていますが、こども家庭庁ができましたという話、こども基本法もできました。児童福祉法も改正されました。総論的には、すごくきれいに子ども中心のところを目指しますという、異次元という話も出ています。予算もそちらで取りますよという話にはなっていますが、建前はそのとおり、誰も反対はしないと思うんですが、じゃあ、実際、現場がどうなっているのでしょうかという話でいうと、添付論文というものもありますし、「Q」と書いてありますが、国と地方では、先ほど汐見先生の話にもありましたが、国が制度をいろいろ変えてくるんだけれども、そこはやっぱり地方の意見を聞いていなくて、いろいろな制度を押しつけてきますが、現場をちゃんと見えていないのではないのか、理念と現場が乖離しているというのが私が見えている景色です。  添付資料のところをちょっと開いていただきますと、「市町村における子ども・家庭支援の新たな展開と課題」というところで依頼をされたテーマで、私のほうで論文を書いています。市町村の関係ですと、「こども家庭センター」というものを設置しましょうというのが新しい動きとして国が提示しているものです。子どもを真ん中として「こども家庭センター」を設置する。  これはどういうものなのかという話でいうと、詳細を今、詳しくは話しませんが、めくっていただくと、39ページと40ページ、ちょっと前まで国が提示していたのは40ページのところで、「子ども家庭総合支援拠点」というものをつくりますよ。その前に、母子保健のところで、「子育て世代包括支援センター」をつくりますよ、児童相談所と要対協というものがあって、このような構造でいくんですよ、法律も変わって、平成28年改正でこのような形で進みますよ。だから、これに合わせて自治体は、子ども中心で、保健と教育と連携をしながら子どもを守っていくんだというようなものをつくろうとしていたところ、今度は、39ページ、これは国が出している図です。一見、要対協とか地域の連携はどこにいったんだということが見えなくなっているんですよね。なんですけれども、「こども家庭センター」というものが中心になりながら、地域のショートステイとか、いろいろなサービスをつなげますよ、流通ですね。だから、これ、一見すごく分かりづらくなっている。今までの制度設計と、今回がどう違ってきたのか。だから、説明としては、読んでいくと、今までの「子育て世代包括支援センター」と「子ども家庭総合支援拠点」、要するに、子どもを守っていくためには母子保健と福祉が、より一体的にしなくてはいけませんよ、ということでまとめたものが「こども家庭センター」だという話になっています。  でも、このように何かというと、ワンストップになりますよとか、一体化すればうまくいくというのが国の説明なんですけれども、自治体で今までそれぞれ子どもを守りながら連携してきたところを、どうやって、看板だけまとめればいいのかというような話になってしまっているということはあります。  今日、私のほうで話したいのは、理念自体は問題はないというか、賛成しそうなんですけれども、実際、42ページの1行目のところを見てもらうと、そのような制度設計の下で自治体に求められているのが、「三つの壁」と書いてありますが、保健・医療の部分と、福祉と教育、そこのところの連携、一体化を進めていきましょうねというところが、今、示されています。それ自体は反対すべき話ではないのかなと思いますが、44ページのところを見ていただいて、子どもに寄り添っていきましょうというところがあるんですけれども、僕自身が、そのように子ども中心の社会で国の制度設計がされていて、現場も一体的に子どもを守っていきましょうということがありますが、私が、実際に子どもたちからどのような言葉を聞いているのかというところが、44ページの前段、上の後半です。「学校の先生からは、世界人権宣言や日本国憲法の授業は受けた」、「学校の先生からは人権が大事という話は聞く」、しかし、「目の前のいじめの相談には、いじめた側の話も聞かなくてはいけないから」、「いじめた側に注意しておいたから」、中学生になっていくと、子ども同士の自主性を尊重して、「子ども同士で解決しましょう」、「みんなで話し合って解決を」という対応をされています。被害者である目の前の子どもの人権を守るという話とつながっていない、というような子どもたちの声を聞いています。  後段だと、また、下になりますが、「学校の校則」、本当にこれ、よく言われているんです、今でも。びっくりするんですけれども、かわいいは駄目だと言うんですね。どこの学校でも聞いてみる。かわいいのは駄目だとか、あと、流行を追いかけるな、どこかに書いてあったりするんです。あとは、髪をまとめる位置の指定とか、下着の色指定、学校全部に聞いてみていただきたいんですけれども、誰かしらどこかの先生は言っているんです、必ず、子どもに対して。根拠や理由が分からないので相談に行くと、「決まりは決まりです」という話がされて、結局、頭ごなしに秩序やルールの遵守が求められますという声が上げられます。  「一人ひとりの気持ちよりも結局校則とか全体の秩序が上位にある」、「子どもの意見表明や子どものアドボカシー」と言われていますね、今、アドボカシー、だから、何かあると子どものアドボカシーをしましょうと言っているけれども、結局、「どうせ変わらない」と子どもたちは思っている。「どうせ言っても変わらない」、「一部の優等生の意見しか聞かれないのだろう」。いろいろな自治体で、こども会議とか、いろいろなものを開いていますが、結局、自分たちの声は聞かれないという声が聞かれています。  今回の法制度設計はということで、私は強調したいのは、大人の側が試されている。今回の基本計画の中へも入れてほしいと思っているんですが、「どうせまた大人の建前にすぎないであろう」、子どもたちの諦めの気持ちを、「もう一度大人を信頼していいんだ」、「子どもが主人公ということを大人が本気で考えてくれているんだ」、そう思ってもらうための大事な大事な一歩に、今回の法改正後の運用、現場での対応を私たちはつくっていかないといけないと思いますというのが、私の発表で言いたいことになります。  残り時間で、レジュメのところに戻っていただきますと、第2 、子どもをめぐる現状ということで論文を発表させていただきました。  第3、現状の問題や課題の原因はどこにあるのか。今の論文でも書きましたが、結局、大人側にあるのではないのか。大人側が矛盾したメッセージを発していないか。ダブルバインドにしていないか。  実は、キーワード、前回も出ましたが、「選択」というのは僕はキーワードだと思っています。どこかしらに入れるべき話かなと。子どもが選択できる環境に置かれていない。  ちょっと例を挙げると分かりやすいんですけれども、授業で使う道具が足りない、言い方は変なんですけれども、技術室とか音楽室に行ったりすると、技術の使えるものは、例えば3個ぐらいしかない。子どもたちはずっと並んでいるんです。そうすると、そこで争いが起きる。誰が順番なのか、「おまえ、もうちょっと短い間で後ろに回せよ」とか、「譲り合いをしろよ」ということがよく言われています。  そのような無用な争いを起こさせて、でも、先生たちは「早くしなさい」とか、「授業内にしなさい」とか言っているんですけれども、結構、器具とかが実際に足らないというようなことがあります。  あと、そこらでよくあるんですが、例で、「貸して」、「いいよ」と、皆さん、聞いたことありますか。幼児教育の中の典型で、何かを貸してと言われたら、「いいよ」と答えるということを教えられているんです。でも、何かに集中して、これは自分が大事だったら貸せないですよね、僕らも。なんですけれども、「貸して」、「いいよ」というのがキーワードで、それができる子が思いやりのある子どもなんだ、または模範の生徒なんだということがされているのが現状です。  校則、「決まりは決まり」、もうこれ、いいかげん、やめませんかと。教師側が、「決まりは決まり」という回答をしないようにしましょうというふうに思います。説明できないものの強制、「流行を追いかけない」、「かわいいは禁止」ということは実際に言われています。  無用な競争にさらされることが多過ぎる。ランキングとか進学実績とかありますよね。テレビとかいろいろなところで出てきますが、もう要らないのではないのか。  あとは、教員のプライドというものがありまして、ここは時間がないですが、体罰、暴力で亡くなった部活での強制。何か足らない、もう少し鍛えないと駄目だというような形での暴力が行われたり、あとは、子どもたちが逃げようということに対して、ちゃんと校庭でとどまっていなさいねというような大川小の問題とかもあります。  改善策ということで、私としては、やはり1番、教員・保育者の教育こそが大事なのだろうなというふうには考えています。子どもを大事に支える。SOSが出せるというようなこと、それを拾っていけるような教育、それが教員側には多様性の心がなければ、そのようなことはできないだろうと。教員・保育者の多様性を尊重しよう、多様性尊重の学習の機会を増やそうというところを1つとして出しています。子どもに規範を押しつけない、説明できない校則をなくすというのは、例として挙げています。  2番目ですが、子どもの個性尊重と子どもの個性を守るのは、ずっと今回強調していますが、大人の責任ですよね、大人側がちゃんと子どもが輝くようにしないといけないでしょう、僕らの責任ですよねというところはあります。  最後、3番目ですが、子どもと大人は価値対等というところで、大人が子どもに押しつける、何かを学ばせるというところではなくて、やっぱり価値対等というところから出発しないといけないのではないのか。ちょっと違った、大人がちゃんと背中を見せるというのは、またちょっとずれてしまうのかもしれないですけれども、そのようなことがない限り、言葉だけで僕らがいいことを言っても、子どもに信じてもらえない、子どもに信じてもらうためには、僕らがそこの姿勢を見せないといけないということがすごく大事なことだというふうに思っております。  以上で発表を終わらせていただきます。 【大杉会長】  ありがとうございます。  それでは、次に、森田委員、お願いします。 【森田委員】  私も簡単にパワーポイントを作っておきました。ちょうど順番的にはこれがよかったかなと思います。  汐見先生と鈴木先生とお話しくださった中で、結局、今、子どもたちや若者たちが一体どのような状況にあるのか。そして、私たちはこの基本計画の中で何を論じて、何をここに書き込まなければいけないのかというところを、私は少しお話をさせていただこうと思っています。  まず、実はこの前の計画の段階は、子ども・若者を真ん中に置くということですよね。具体的には、世田谷区が、ほかの地域はずっと少子化が進んでいたんだけれども、世田谷はそれでも人口が増えていて、選ばれていた。そしてまた、そこの中で若者たちは、元気にしようとしていたというのか、そんな時期が実は10年ぐらい前の世田谷の状況だったわけです。  だから、簡単に言えば、この一番上なんですが、子ども・若者施策をやると、多くの世代を巻き込むことができたし、それから、事業者も巻き込むことができたし、街づくりの核にすることができたんです。だけど、実は今、その力は、若者や子どもたちの世代に、ひょっとしたらないのではないか。そこがもう崩れてしまっているのではないかということを私はとても心配しているということを申し上げたかったんです。  それが多分、今日も、先ほどの紹介の中で、子ども・若者の真ん中ということに対して、いろいろな異論が出てきている。先ほど、鈴木副会長は、いや、総論としては問題ないのではないかみたいな言い方をされていたけれども、実はそうでもないのではないかという気がするんですね。子どもや若者に対する目線というのは、随分変わってきているような気がします。  2番目です。今、区の子ども・若者は、前の計画のときにもずっと言われていたんですが、要するに、子どもが若者になって、子どもを生み育てる。そして人生をここで、世田谷で送っていく。そのためにどうしたらいいかという議論を組み立てていました。そんなもので具体的には世田谷に対する愛というものをつくり上げていくということだったんですが、今のこの時期、今日もたくさんの市民の方たちが、若い人たちには、ぜひ語ってほしいと思うんですが、世田谷区への「愛」はどこにあるんだろうと私は思ったんです。  つまり、例えば、区内での次の家族形成は本当にできるんだろうか。これをやっぱり想像できないと愛は生まれてこないと思うんですけれども、この世代間の分断というのがものすごく激しくなってきている。  これは世田谷区だけでもないし、恐らく世田谷区の中でも非常に強くなっていると思うんですが、結婚や子育てを希望しない人はかなり増加してきている。つまり、世田谷の中での50年ということが、もう想定できなくなってきてしまっているのではないかということです。  具体的には、次のデータを出していただきたいんですが、これは日本財団が行った子どもと家族に関する17歳から19歳の調査ですけれども、この中で、下のほうの2つ、8%は「家庭を居場所と感じない」、9%は「家庭にも家庭以外にも居場所がない」、つまり、家庭を居場所として感じないという若者たちは17%もいる。つまり、子どもの6人に1人は、もう家庭に居場所がないというふうに考えている時代なんです。  それは親子関係というところが、もちろん私たちは、そこを想定して社会的な養育という場を、特に妊娠・出産のところから組み立てていくということをやってきたわけですけれども、この辺りの施策ではもう全然間に合わない時代がやってきているということが、このデータではないかというふうに思っていて、ここから次の世代を世田谷でどう考えていくのかということだと私は思っています。  では、今、世田谷区の中で、子どもと若者たち、どんなふうにいるんだろうというふうに考えてみると、1番は、まず、今住んでいる子どもや若者たちがもちろんいます。それは、親が住んでいて、子どもとして住んでいるという場合もあれば、アパートなどで住んでいるという子たちもいるだろうし、いろいろいると思うんですが、この子たちの居心地はどうだろうなというふうに思うんです。  それから、人との関係はどうなんだろうと。つまり、ここに居続けるという決断はつくのだろうかというふうに思ったんです。  ポツを2つつけておいたんですが、これがこれまで言ってきたことの総括的な言葉なんですけれども、貧困と暴力、安心なき安全が、子どもたちの居心地の悪さをつくり出している。この安心なき安全というのは、結局、大人たちがつくり出した経済的に効率のいい場所なんですね。でも、子どもは、やっぱり失敗だとか、あるいは、ある意味、危ないところとか、汚いとかというところの中で、いろいろな価値形成をしていくわけで、決してきれいなところが子どもたちにとって居心地のよいところではないわけです。そうすると、この安心なき安全というものは、どうして起きてしまうのだろうというと、やっぱり大人たちの、先ほど鈴木副会長がおっしゃったように、片手間の子どもへの仕事というのでしょうか、要するに、これまでの子どもに関わってきた大人たちは、ある意味、全力で子どもたちを支えてきた。やっぱりこの子どもを支えるという仕事に生きがいを感じ、地域でも本当にみんなそういった気持ちで子どもたちに関わってきたわけで、これが世田谷、あるいは日本全体をつくってきたと思うんですけれども、子どもたちにとってとても大事なことは、今の主体を保障する、主体的な生活を保障するということ。よく未来の主権者とか、未来の主体とか言われますけれども、世田谷はもうそのレベルではありませんけれども、やっぱり多くの人たちは、未来の主権者という視点は持っていても、今生きている子どもという視点が欠けている。よく言われましたよね、「わんぱくでもいい」という言葉、こんな言葉など今どき言われることがなくて、世田谷の中で、「泣いてもいいよ」缶バッジみたいな、私たち、つけたことがあるんですけれども、つまり、そんなレベルももうなくなってきた。子どもたちや若者たちがいるということ自体、声が上げられない状態が今見えているということを、子どもたち、若者たちは言い始めています。  もう1つ、世田谷区を利用している子ども・若者たち、これはよく言われますけれども、下北沢などのところが特にそうで、お隣の渋谷区などは、若者のメッカみたいな形で、すごく大きな文化をつくり出していると思うんですけれども、やっぱり世田谷というのは、ある種の面白さがその中にあるはずであって、この多様な活動の場、地域とか、あるいは人の魅力とか、そういったものが世田谷区を利用している子ども・若者たちの中にあるはずです。  これらを総合的に見てみると、私はやっぱり、生きていく、暮らしていくということと働くということのバランスであったり、人と人が交流するときの出会いであったり、やり直しであったり、あるいは、多様な関係性で自由とゆるみがあったり、こういった、結局、ある種のバランスの取れた、そして子どもたち、若者たちが、ここで生きていくということを選べるような、そういったメッセージ性が今必要なのではないかというふうに思っています。  最後にですが、世田谷区で暮らし続けるときの環境要因なんですが、これも前回には随分議論しました。どうやったら多様な世代がここで暮らし続けられるのだろうということも議論しました。やっぱり多世代が暮らしていくときの自宅の住みやすさみたいなもの、あるいは、地域の安全性だとか価値だとかというところの居住環境の問題。若者たちが世田谷に住むためには、どうやっても高くなっている家賃を下げなければどうしようもないというところがあります。所得が上がらなかったら家賃も下げる、生活水準を下げるということがどうしても必要です。そういう意味で、やっぱり日本中がこぞって若者世代をゲットしようとするためにやっていることは、世田谷区の中でも、これはもう本当に緊急で考えなければいけないのではないかと思っています。  それからもう1つ、これはもう皆さんおっしゃったので、私が言うまでもありませんけれども、多様な文化だとか価値というものを受け入れるということと同時に、不安だとか、困ったときの社会的な支援というものが非常に重要だということ。それから最後に、若者の起業については、もっと積極的に支援するということと同時に、伴走し続けるという仕組み。これがどうにも世田谷区の中にないというところが、若者たちにとってみると、魅力が一過性のものになってしまうということになるのではないかと思います。  以上です。 【大杉会長】  ありがとうございます。  3人のパネリストの方々に御発表いただきました。最初に申し上げておけばよかったんですけれども、普段ですと、この審議会全体で皆さんから御意見を出していただくのですが、今回の趣旨としては、まず、パネリスト間でぎゅっと議論をしていただいて、その後、皆さんにまた議論を開いていくというような、少しメリハリをつけた進め方をしたいと思います。汐見委員は残念ながらビデオ出演ですので、汐見委員から御意見は聞けないんですが、今、お三方の御意見が出そろったところで、鈴木副会長のほうで、汐見委員、森田委員の御意見などに対して、御議論とか、御意見とかがあれば、まず出していただければと思いますが、いかがでしょうか。 【鈴木副会長】  汐見先生のお話を聞いていて、メモしながら聞いていたんですけれども、やはり教えからスタディ、一人一人、自分が自発的に何かをやっていくということを助けていくというのは、すごく大事なことなんだろうなというふうに私も思っています。  やはり個性を尊重とかというような話があるけれども、学校とかをずっと小中高といくときに、やはり与えられたもので枠組み、僕ら大学教員も、シラバスというものをつくらされて、そのとおりやりなさいねみたいな話になっているので、自由にいろいろ教えたり、学生に臨機応変にというのは、ゼミなどではやっているつもりなんですけれども、なかなかできていないのだろうなというふうに思います。何かそこを汐見先生が話されていた世田谷区で改革していくんだというのは、僕もすごく触れたというか、教育という文科省からの統一的なものというのはあるんだけれども、何かそこをちょっと動かしていくというか、自由な教育、世田谷で新たなという言葉が入っていたと思うんですけれども、新たな教育、自由を勝ち取るみたいな形のところが、やっぱりインクルーシブというところもつながっていく話ですし、何かすごく大事な話なのかなというふうに思いました。  あと、汐見先生が話されたところの、わいわいみんなで会話するというのは、学校現場の中で、やはり外の意見はあまり聞かない、自分たちでカリキュラムをつくってやっていく。最近、地域に開かれてということもありますけれども、建前的にはそうですけれども、実際のところでは、そんなに開かれていないというふうに僕は思っていますので、そこを風通しよくする、みんなでオープンにする、子どもも保護者も地域の人も入れて、学校の教育の内容まで考えていくとかというところが、この基本計画というようなところに触れられるといいのかなというふうに思いました。  森田先生のところの中で、すごく大きい話、僕の中では、子ども中心というところは理解が一定程度得られるでしょうというお話をしたんですけれども、森田先生の話、やっぱりそうだなというか、子どもの施策をど真ん中にと、いろいろなところで言っているけれども、実はそこでもかなり不協和音というか、子どもばっかりではないよね、子どもがいない世帯もあるんだからという話があるとすると、共通のテーマでないような時代に、じゃあ、子どもについて、でも、未来の世代、今の子どもを守っていくためにというところは、よりすごく力を入れて説明をするとかということが求められているだろうなというふうに思います。  あと、森田先生が話された中の、すごく残った部分だと、僕なりに理解を進めるとというか、困ったときの社会的支援を充実する。具体的には、どういうことなのかなというふうに思っていて、ちょっと違うかもしれないですけれども、一人でも子どもを連れて外に出られるというか、そこで安心というか、不安がないような社会、世田谷区、一人でも外に出られる。あと、ちょっと違うかもしれませんけれども、子どもを置いても外に出られる。言い方は変ですけれども、子どもがいると外に出られないんだけれども、逆説的ですけれども、子どもを置いていても誰かが支えてくれるとか、地域の人が見てあげられるよとか、要は、困った、不安というときに、ショートステイとか、いろいろな枠組みがあるんですけれども、地域でいつでも自由に外へ出たりとか、いろいろなところに出かけていって、子どもが邪魔にされないということを目指すということが、すごく大事な話なのかな、何かそこが入れられるといいなと、安心安全とはどういうことなのかとかというところの中の具体例を聞きながら思った部分がございます。 【大杉会長】  森田先生、いかがでしょうか。 【森田委員】  私、ライフサイクルの描き方がすごく変化してきているということについては、汐見先生のお話の中で、やっぱり私たち大人たちがやってきた、自分たちはもう終わりだからいいよみたいな話ではないよねという、そこはすごく感じましたね。  次のプランを考えていくときに、やっぱりこの今度のキーワードの中にも「一緒に考える」ということが出てくるんだけれども、一緒につくっていく、そのパートナー、パートナーという言葉も今日も議論していたんですが、すごく難しい言葉であるけれども、それでもやっぱり私たちは、若者たちと一緒に考えていくという、そのスタンスは、私はすごく大事かなというふうに思ったんですよね。逃げようとも私たちは離さないぞ、みたいな感じくらいの決意というものがないと、恐らく子どもや若者たちは、この今の社会の中で、発言するなど怖いことは絶対にしないという話になってしまう気がします。  もう1つ、汐見先生のお話の中で、運動、学びの運動というふうにおっしゃったんです。要するに、学校を改革していく運動ですよね。それは、やっぱり一人一人を育てないと、運動の担い手にならないんですよね。私、前の計画のときにも思ったんですが、世田谷区は、生涯学習というところをあまり公民館運動とかをやってこなかったので、実は、その辺りは個人にゆだねられてきているんですね。点としての、もちろんこれだけの住民がいて、そして、ここの委員の方々の中にもたくさんの区民の方がいらして、こういう人たちの力を借りるということができるし、世田谷発といういろいろな活動というものがあるわけなんですけれども、やっぱりきちんとこの人たちが、区民として誰もがこの世田谷の中で育っていくみたいな、そういう基盤をもうちょっとつくっていく必要があると思います。今だからこそ、高齢者も含めて、市民大学みたいな、そういった講座をもっともっといろいろなところでやりながら、そして、もちろんみんな豊かなわけではないんですけれども、やっぱりそこの中で、例えば少しはお金も回って、お母さん、お父さんたちも、そこで何か生業が成立していくような、そういう育成の場というのでしょうか、これ、日本中にはたくさんこういった子育て支援の場を市民にもっと開いて、そこで市民を育てていくみたいな、そういう活動をやっている自治体がたくさんあるんですよね。だから、もっと市民を信じて、市民に出していく。その中に若者もいるみたいな、そういう新しい起業を、市民の社会性を育てていく基盤にするぐらいの形でやらないと、ただ単に運動をと言っても、多分、展開しないだろうという気がしました。  鈴木副会長のお話の中で、やっぱり私はいつも思うんですが、要するに、子どもの声を、こういった多様性の尊重とかの教育ということだけではなくて、そこの中に、専門家がせっかくいるので、その専門家を活用した、何か子どもの声を聞くというような人たちを育成する場みたいなものはできないのだろうかと。大人の責任は本当に絶対そうだと思うから、やっぱりここの中に、もっともっとこれが大人たちには学習できるような場みたいな形で開いていく、強制的に開くぐらいの、そういうようなことをやって、そこで仕事もつくり出していくぐらいの新しい場をつくり出したらどうかなというようなことを感じました。  以上です。 【大杉会長】  ありがとうございます。  3人の委員の方々の御意見を出していただきました。ちょっと私の感じたところを申し上げますと、特に3番手の森田先生から、かなり現状に対する厳しいといいますか、認識を示されて、子どもたちが、未来の選択だけではなくて、現状においても選択できないような、そういう切羽詰まった状況に置かれているのではないかというような趣旨のお話をいただいて、非常に胸にささるところもあったんですけれども、それぞれの3人の委員の方々が議論を展開していく中で、学び、しかもそれが子どもというものを見守り、育て上げていく中で、大人の側が、教員の側が、きちんとスタディ、学び、研究していくということの大切さということを言われたということも非常に私は感銘を受けたところでもあります。教育というものの前で、学びの豊かさということが出てこずに、鈴木先生が御指摘いただいたような様々な思考停止と言ってもいいような、校則の理解であるとか、そういうようなことが、全ての教員がというわけではないでしょうけれども、そういうようなところが見られてしまっているような、そうしたところをどうしていくのかというような御意見をはじめとして、様々な提言があったかと思います。  ここから先、皆様、ほかの委員の方々も、今、パネリストの3人の方々が出されたことに対して、御意見、コメント、あるいは御質問も含めて、いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。  中村委員、どうぞ。 【中村委員】  どうもありがとうございました。教えられることが多い3人の御発表だったと思いますが、ただ、教育のお話などが中心になっていて、世田谷が安心して子どもを育てられる地域かどうかというお話がありましたけれども、子ども・子育ての1つのテーマは、子どもが生まれない、それから子どもが生まれても、先ほど、子どもを置いて外に出られるかというお話がありましたけれども、そういう子ども・子育てを支援するサービスが、高齢者のサービスなどに比べて圧倒的にないです。3歳以降は、ほとんど保育園、こども園、幼稚園に行きますけれども、言わば、そういうサービスに接していない3歳までのお子さんを抱えている悩む母親もいる。そういった点などについては、どうお考えなんですか。それは皆さんの認識では、目指すべきコミュニティという、私どもの第2テーマのほうに譲るという考えなんでしょうか。子ども、子育て、若者というのは、生まれた後の子どもの教育とか、そういったことを考えればいいということですかというか、その辺について、どうお考えなのか聞きたいと思います。 【森田委員】  基本的には、もう妊娠のところから子どもということは考えていますので、当然、私も子ども・子育て会議の責任者として今までつくってきたときも、そこから考えていきました。そして、3歳未満のところについては、拠点としてすごく整備してきたんですが、足りないことはまだまだあって、前回のところでも、すごく対等にしなければいけないと言いながらできなかったのは、いわゆる在宅で子育てしている人たちなんですね。やっぱり世田谷区は、ものすごく待機児対策というところにシフトしてきて、そして、在宅の親子というところは、あまり、手がつけられなかった。そこに、このところ一気にこれをカバーするための政策を打ってもらってきているということはあると思います。  そのときに、今、中村先生がおっしゃったみたいに、やっぱりここはものすごく大事なときで、結局、親になるということは、社会との関係性がものすごくできていくときなので、このときをやはりつかんで、きちんと社会との関係性をつくっていくような体験ができるような手厚いサービスを、市民と一緒につくっていくということが、私はすごく大事で、これを成功しているところは、地域の子育て支援というものが有効に機能している。そして、子どもを産む、育てるというところに、あまり負担感を感じなくなっていきますので、とても大事な事業だろうと思います。 【大杉会長】  いかがでしょうか。 【鈴木副会長】  僕のほうは、少し空気を読んでしまったというか、今まで子どもと保護者というところで、僕の基本的な考え方としては、先ほどの論文にもありましたけれども、子ども支えていくためには、低年齢児等がいる親も支えるということを言ってきている話なんです。  今回、空気を読んだという言い方は変なんですけれども、テーマ別のところを見ていて、子ども・若者という形になっていたので、ちょっと教育とかそっちのほうにシフトしたほうがいいのかなと、自分の主張をまとめてしまったところがあるんですが、まさに中村先生がおっしゃったように、じゃあ、区で総合的に基本計画をまとめるときに、こういう形にしていくのか、先ほどおっしゃったみたいに、保健のところとか、生まれる前、妊産婦で妊娠期の頃からのところをどこに位置づけて、どうやって連続的に書いていくのかというのは課題だなと、今、御指摘をいただきまして思いました。 【大杉会長】  いかがでしょうか。 【中村委員】  鈴木副会長の論文の中の42ページの御紹介がありましたけれども、やはり今まで、子ども・子育て施策は、保育あるいは福祉と医療の壁があったし、福祉の中でも、従来、都がやっていた児童相談所の行政と、区のやっていた一般的な子育て支援との間に壁があったし、さらに教育委員会とそれら三者の間に壁があって、うまくいっていなかったということが、少なくとも世田谷区はどうか知らないけれども、全国的な評価で、そこのところの壁を打破していこうということが目指されているんだと思います。世田谷も、それについては、もっと、せっかく児童相談所もできたわけですし、教育の話もこれをきっかけで出たわけですから、そこのところを意識して、基本計画なり、個別計画をつくっていく必要があるのではないかと思いましたので、質問させていただきました。 【大杉会長】  ありがとうございます。  このテーマ分けについては、どこかで分けなければいけないということもあって、この辺は事務局もかなり悩まれた上のことですので、当然またがって考えなければいけないところも多々あるかと思いますので、そういった点も御遠慮なく意見として出していただければと思います。  ほかの方々、いかがでしょうか。  区民委員の方も、いかがですか。 【尾中委員】  少し概念的なお話になるかもしれませんけれども、若者が育っていって、行政がサポートの充実という部分に関して、働く環境をどうやって世田谷区でつくるか、また、働く環境の構築をどう考えていくかというところの話と、私はやっぱり若者の方にアンケートみたいな、それこそ子どもにどういうふうに将来の世田谷にしたいかというところをアンケートをしてみて、将来的な視点で、どのようなサポートが受けられるか、どういう世田谷区なら住みたいのかというところを諮っていく、それを総括して、例えば世田谷区の取組を考えていくというのはどうでしょうか。ちょっと感想です。 【大杉会長】  この基本計画策定にあたって、若い人たち向けのアンケートなどを行ってみてはどうかということですね。  審議会でまず答申をまとめ上げていって、具体的な計画づくりはその後に入っていくんですが、計画策定を進めるにあたって、担当のほうとしては、例えばそういう基本計画に関連するような事柄を、例えば中学生とか高校生とか、若者世代とか向けにアンケートを取るとか、何かそういうような機会を設けるような予定であるとか、事務局のほうでお答えできますか。 【真鍋副参事】  来年度、答申後に、骨子を策定した段階で、様々な意見聴取を行う予定ですけれども、子ども・若者向けアンケートというものはやっていこうと思っています。対象をまだ決めていないので、起業のところまでいくような対象とするのか、もう少し違う内容とするのかというのは、もし御意見をいただければ、参考にさせていただきたいというふうに思っております。  以上です。 【保坂区長】  では、加えて私のほうからも。  気候危機に関して、これから気候危機区民会議とかをやっていくにあたって、若者も含めて、子どもたちを必ず同席していただこうと思っています。それに先立って、3,000人の小中学生に、今、タブレットを配っていますので、意見を下さいということでやったところ、3,000人のうち700人だったか、相当返りがあるんですね。結構すごい回収率と、やっぱり熱心に書いてくれているということもあって、これは事務局と相談しているんですけれども、バルセロナ市で使われるようになったDecidimという、バルセロナの基本プランですか、一応100万都市で9万人ぐらいの参加があったらしいのですけれども、そういったものも使って、リアルのミーティングとかも組み合わせながら、ぜひ若い世代の子どもの意見と、我々のつくるプランとうまく接点をつくりながらやっていきたいなと思っております。  具体的なやり方については、まだ決まっていません。 【大杉会長】  ありがとうございます。  せっかく苦労してGIGAスクール構想でタブレットを配布したんですから、小中学生には皆さんから意見を寄せてもらうぐらいの、何かそういうような仕組みを考えてもいいのかなと思います。今日も大学でゼミをやってきて、ちょっとしたレポートを報告してもらうのにも、友達100人にインスタを使ってアンケートを取りましたとか、行政がしっかりやらないと、もう一般的にどんどん、皆さんのほうから進めていただいても構いませんので、実態のほうが先行していったと思いますが、ただ、この計画づくり、やっぱり将来世代の人たちの声をきちんと聞くということは不可欠だとは思っておりますので、きちんと考えていければと思っております。  ほかにございますか。  どうぞ。 【鈴木副会長】  ちょっと問題提起になってしまうかもしれないんですけれども、さっきも若者と言ったときに、本気で議論していくんだったら、どこを射程にするのかということはあるのかなと。グラデーションで何かというと、0歳から始まって、小中とかというのは、世田谷はやっぱりど真ん中でやらなければいけなくて、さっきずっと議論に出ていたのは、そこでの施設、学校とか保育園の縛りとかがあって、それを開放してあげて、多様な主体として、ちゃんと子どもの意見を聞きましょうということはあると思うんです。でも、高校になっていくと、今の制度設計の中では、世田谷の義務教育ではなくなってきて、その高校生も世田谷で何かしらど真ん中のものとして支援をしていくのかどうかというのは、ちょっと僕はグラデーションが違うのかなと思っていて、小中学校はど真ん中で世田谷はやらなければいけないけれども、高校の人たちとか大学生に、世田谷でここを中心にして、皆さん、生活しましょうね、それを求める話なのかというのは、ちょっと議論は違うのではないのかなと。またでも若年でとか、ひとり親家庭でとかとなってきて、また戻ってきて、そこだったら妊婦のときからちゃんと支えましょうねということもあるんですけれども、ただ、間のところが抜けることについての、ある程度の抜けないようにしようというのは、ちょっと違う方向まで余計な力を入れるということもあるのではないのかと、問題提起としてさせてもらいました。 【大杉会長】  その点に関連して私も申し上げたいんですけれども、全国各地で、今、地域づくり、地方創生とかでやっていく中で、若者というと、大体40まで入れていますよね。世田谷で考えるときに、どう若者を捉えるのかというのは、そこはしっかりと考えていかなければいけないところで、若い人たちの親世代ということではない若者として、30代の人たちを捉えるのか、捉えないのかというようなこともあるでしょうし、今言われたように、グラデーションなのか、それぞれ何かどこかで分節されていくのか、本来ここのテーマのところで、そこを含めて考えていく必要があり、もし何か御意見があれば、ちょっと出していただきたいと思います。 【森田委員】  いわゆる39歳までの若者たちをどう位置づけるかということについては、世田谷は子ども計画のところにきちんと位置づけて、その延長線上に、彼らが問題を抱えるときも、やっぱり子ども期をそのまま引きずっていくんだという考え方があるわけです。  それと同時に、先ほど私が、住んでいる若者たちの問題と、世田谷の中に来てくれる若者たちという、いわゆる移動していく人たちとしての若者たちが世田谷を支えるということもあるだろうと。そういう意味で、まちづくりというときには、本当に若者たち、39歳までの支え方ということも、単に保護的な支えだけではなくて、保護から次の社会の担い手、リーダーシップとして育てていくための牽引者としての若者たちという位置づけもあると。だから、若者たちというところに世田谷区は早くから着目して、この若者たちを、この世田谷区の中の中核として育てていくということをやってきたわけで、これは私はとても大事なことだというふうに思います。  そういう意味で、私は、空ける必要もないし、空けてはいけない。つまり、今までだったら、放っておいてよかった層が、そこが分断されたりして、継続的な保護が必要な若者たちもいるし、また、そこで逆にその人たちを支える人たちも出てくる。そういういわゆる分断がその中に生まれてくるんだけれども、そこをまた私たちは見続けなければいけないのではないかというふうに思っているということです。 【大杉会長】  ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。  羽毛田委員、どうぞ。 【羽毛田委員】  区民委員の羽毛田です。教育に関する課題とか、改革の提言、いろいろな面で大変興味深いお話をいただいて、ありがとうございます。  1点、伺って思ったのが、身近に高校の先生とかがいて、やっぱり土日に部活の試合が増えるので、外に出ていかなければいけなくて、運転しなければいけないとか、そういう苦労した点が、お話を伺って、先生方の責任感が非常に強いんだなということを話を聞いているだけでも感じています。今までの教育は、どうしても教えるというスタンスだったので、そういうすごい責任感を持ってやっていただいているのかなと思うんですけれども、今後の教育のあり方は、一緒に学んでいく、学びの場をコーディネートするみたいに変わっていくのかなと思って、教師と対等な関係になる。ある意味で、無理に責任を負わないでほしいなというのは親としても学校に感じています。できないならできないし、そうであれば、親として子どもを守ったり育てたりする、そういう覚悟も持っていなければいけないかなと思っています。  そういう意味でも、逆に一緒に学校のあり方に関与して改善できたらいいなというように思っていて、大学とかPTAだと、大体業界出身者が時々プレゼンして授業とかあると思うんですが、そんな形で、小学校、中学校ぐらいであれば、全然成り立つのかなというふうに思っています。  以上になります。 【大杉会長】  今の点、何かありますか。 【森田委員】  今言われたことは、多分、今までの従来型のPTAではなくて、親も一緒に学習していくみたいな、新しい教育課題みたいなもの、あるいは、その中での学習課題みたいなものをつくり出していく。結局、そこら辺の信頼関係がないと、今、保育園にしても、幼稚園とか学校などにしても、親たちが訴える、あるいは苦情として出すみたいなことに収斂してしまっているような気がしていて、むしろそこがきちんと問題提起されて、一緒に話して、一緒に解決していくみたいな、何かそういう信頼感が生まれてこないと、先ほど言った安全というところに落ちてしまって、なかなか挑戦的な教育、新しい学習というようなことも生まれてこないし、結果的にそれは子どもにとってみると、非常な不幸がそこに来てしまうという気がするので、やっぱり親たちがどう参加できるか。そして、教師や保育士、あるいはいろいろな支援員たちとの信頼感をどう持てるかということに、私はかかっているような気がします。 【大杉会長】  ありがとうございます。  部活動などの地域化といいますか、地域の方々がいろいろ関わっていくという動きは、1つ流れとしてはあるでしょうし、それ以前から学校のコミュニティ・スクール化とか、いろいろな形で徐々には学校が地域に対して開かれるというようなことも、もしかしたら次のテーマに関わってくるところ、むしろそちらに密接に関わってくるところなのかもしれませんけれども、そうした地域と学校の境という、子どもと親との境といいますか、そういうようなところをどう開いていくのか、これは非常に大きなテーマだと思いますので、そこを世田谷区の計画としてどう考えていくのか、大学まで含めて、非常に教育資源があって、逆にそれをどう活用していくのかということにも関わってくるところかと思いますので、その点、引き続きまた考えさせていただければなというふうに思います。  よろしいでしょうか。  どうしても、ほかにもまたがるいろいろな論点があるかと思いますので、蒸し返していただいて構いませんので、ほかのところで今このテーマ1に関連するようなことをまた取り上げていただいてもいいですが、テーマ1につきましては、一旦ここで締めさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。  ありがとうございました。テーマ1については以上とさせていただきます。 2 テーマ別意見交換2 【目指すべきコミュニティと安心して住み続けるために必要な支援について】 【大杉会長】  続きまして、テーマ2ですが、「目指すべきコミュニティと安心して住み続けるために必要な支援について」ということで、続けてこれをやってしまってよろしいですか。休憩は大丈夫でしょうか。  続けさせていただきます。  それでは、江原委員、中村委員の順に御発言をいただきたいと思います。  中村委員、恐縮ですが、こちらにお願いします。  江原先生、よろしくお願いします。 【江原委員】  私は、パワーポイントで説明させていただきますが、多様性を持つ人々の観点から、安心して住み続けられるような世田谷区の地域コミュニティ、そういうものをつくるということを考えてみたいと思いました。  多様性を持つ人々というふうに言いますけれども、多様性というのは、実は多様性の多様性がありまして、非常に多様な観点から違いというものを持つ人たちが増えているんですね。年齢というのは、もちろん高齢化していきますので、0歳から90歳、100歳ぐらいまで、年齢も広がっていますし、ライフスタイルも非常に変わっている。それから、先ほど、森田先生のお話にありましたけれども、子どもを持つとか持たないとかということの考え方、自分がどういうような生き方をするかということの価値観も変わっていますし、現実に世帯の形態も変わっています。  あと、セクシュアリティというふうに書きましたのは、世田谷区は同性パートナーシップを早い段階からやっておりまして、同性愛者というか、従来の異性愛を中心としたセクシュアリティの考え方、これまで当たり前とされていた異性愛・性別二元論とは違うような性的な指向や性的な欲望のあり方を持つ方々の、その方々に対する様々な施策も進めています。それから、働き方も違っている。価値観、最近は、国籍とか、どこの出身、どこの外国につながっているか、母語、文化、宗教、経済的状態、もちろん前から問題になっているような身体の状態とか、障害の有無、病気の有無、年の問題など、いろいろな観点で違いがあります。世界的にも先進国において多様性はものすごく増大しているんですね。特に、グローバリゼーション以降、外国につながる人々と日本では呼んでおりますけれども、そういう人々の比率が非常に多くなっていて、日本はそうでもないんですが、それから、経済状態とか、セクシュアリティとか、ジェンダーについての考え方、これらがものすごく多様になっていて、先進国全体においては、コミュニケーションメディアそのものも、どの多様性に即しているかによって違うものを取っているみたいなことが起きていて、人々の間にコミュニケーションが成立しないような、そういう状態が一般に先進国で起きています。日本でもややそういう傾向が見られています。これらのことは、先進国においても民主主義の危機というふうに認識されているというふうに思います。  世田谷に即して考えてみますと、従来のコミュニティに参加しない人々がどんどん増大してくるだろうということが想像できます。資料にいただきましたところに、従来のコミュニティは、自治会、町会です。そこに参加している人の比率がどんどん下がっているんですね、今。そういう人たちが多く地域に居住するようになっていくということが、これからの世田谷です。そうなったときに、どうやってその人たちを一緒に、その人たちにとって住み続けやすい、住み続けられる世田谷区をつくるか。また、そういう観点で見たんですけれども、実は一番今日言いたいことは、その次のところで、「多様性尊重は自分事」と書きましたけれども、多様性を尊重すると言いますと、今、私、大学でそういうことを教えているんですけれども、まず学生さんは、自分はマイノリティではなくてマジョリティだと思って、マイノリティのことを支援するとか、マイノリティの問題だというふうに捉えるんですね。ところが、例えば障害などを例に取りますと、障害になる、その障害が発生したときの年齢は、中高年が非常に多いんですよね、比率としては。最初から障害者というカテゴリーで見ていた人たちが、「えっ? 途中でなるの?」みたいな、学生さんたちはそれでびっくりしたりして、大変多いんですよと。成人病で障害を持つ人たちが非常に多い。そうすると、障害を持つ人たちが住みやすい社会というのは、他人のためにマジョリティがマイノリティのためにかわいそうだからやってあげることではなくて、まさに自分事なんですね。人生100年時代というのは、誰もが変化し続ける時代であって、だからこそ多様性を尊重するコミュニティを目指すことは、実は多様性を持つ人々のためでありながらも、誰にとっても住み続けられる社会を目指すことになるというふうに思っています。  次の資料をお願いします。まず、2020年の世田谷区の世帯ですが、これ、世帯数で見ますと、二人以上の世帯と単身世帯では、二人以上の世帯がちょっと少ないんですね。これ、世帯数ですので、人口ではありませんので安心してください。単身のほうが実は多いんだというくらいに、今、世帯類型というのは大きく変化しております。世田谷は平均世帯人数が1.92人ですか、その中でも単身高齢者とか、高齢夫婦世帯というのがかなり多くなっています。  次の資料をお願いします。これは人口です。これもよく皆さん御存じだと思いますが、1つポイントを、皆さん、ちょっと面白いことをお話しすると、実は世田谷は結構女性が多いんですよね。区民の人数として、5万人ぐらい多いのかな、女性計と男性計を合わせますと、女性が非常に多い区なんです。特に面白いのが、40代あたりの女性たちが非常に多くいて、特に独身者、独身の方を見ると、40代女性の居住が世田谷は非常に多いというような研究もございます。  次お願いします。これは40代未婚単身男女の居住区別男女比率の差というものですけれども、世田谷は右のほうなんですね。目黒区とか中央区、港区、文京区あたりは女性が多いんですが、左のほうは男性が多い地域なんですね。そういう意味では40代未婚単身男女で女性が多い区というのは大変少ない。この辺りが世田谷の特徴だと私は思っているんですけれども、多様性の1つのあり方ですね。40代で未婚ですから、子どもを産む、産まないということに関して言えば、かなり産めないのかな、産みたくないのかなあたりの方々ではないかと思います。  次の資料をお願いします。これは外国人の人口です。1980年から2015年までなんですが、世田谷区で、結構、3倍弱ですけれども増えております。決して世界的に見て多くありませんし、23区の中でも多いほうではございませんが、着実に増えている。それから、政府の試算によると、これからの日本は人口減ですので、外国人労働者を大量に必要とするということもいろいろ出ているようでございますので、この人口はどんどん増えていくだろうと推測されます。  次の資料をお願いします。これはパートナーシップ制度の利用者数です。これは2020年における同性パートナーシップ制度利用者数ですが、大阪市が1番多いですが、次が世田谷区なんですね。次が札幌市、横浜市とか出ていますけれども、東京都渋谷区も同じ2015年。世田谷が多いのは、早く始めたからだという考え方もありますが、同じように始めた渋谷区よりも3倍近く利用者が多い。世田谷がある意味、同性パートナーシップを利用する方々にとって、利用しやすいのか、あるいは、そういうところに移ってきているのか、多様性を認めるというような施策が評価されていると考えることもできるかもしれません。  次の資料をお願いします。ただ、これは世田谷の資料ではございません。日本人全体なんですけれども、例えば海外の人が増えてくるということに対して、日本人1万人というところで、これはインターネット調査です、全国で調査したものであると。総論としては、抵抗感のある人のほうが、抵抗感のない人よりも多いというような、そういうような意識調査の結果も出ております。  生活空間から遠いところ、例えば、お店などで外国人が働くのはいいよという、そういうような意識があるけれども、「一緒に仕事をすること」は、まあまあ。でも、「住んでいる地域に、外国人が住むこと」、ちょっと嫌だな、心配だな。「家族・親族が外国人と結婚すること」、うーん。「家のすぐ近くに、外国人が住むこと」、うーん。「自分が外国人と結婚すること」、えーっ。「自宅で外国人によるサービスを受けること(介護、家事代行など)」というふうに、近くなればなるほど、ある意味、日本人全体としてはまだ抵抗感があるという方が多いというようなことがありまして、実は私、この前、つまらないことを言いますけれども、埼玉県の飯能でしたか、イギリス系の方と、その御家族が3人殺されたということがあったんですが、私の義理の妹が全く同じような形態で暮らしていまして、あの事件があった後、すぐうちに連絡があって、「すごい怖いのよ」と言っていて、近所でも同じような事件があって、あれを聞いて震え上がった。まだ全然結果は分からないので、動機が分からないので違うかもしれないけれども、もしかすると、外国籍の人に対する、ある種のヘイトクライムなのではないかという不安感がやっぱりかなりあるみたいですね。そういうことがあって、要するに、日本が本当に外国人に対して抵抗感がないのかとか、そういうことについてはいろいろ心配なことがございます。  次の資料です。これは、結婚の自由を全ての人にということで、LGBTQの方々が心配しているということを並べてみたんですが、多様性のある方々というのは、いろいろなことにおびえていらっしゃいます。心配していらっしゃいます。ほかのこと、女性でもそうですし、子どもを持たないでシングルで生きている女性もそうですし、ひきこもりの人もそうですし、それから、失業している男性もそうですし、いろいろなことがあるんです。ヤングケアラーの方とか。  1つだけ例でこちらへ持ってきましたが、パートナーとの関係が保障されていないために、抱えている困難や不安、実際に起きた出来事はどういうことがあったか。入院・緊急・万一のときに連絡が取れるのか、家族扱いしてもらえるのかの不安が圧倒的に強い。これが同性パートナーシップ制度の1つの使い方なんですけれども。あと、感染時の家族・友人・病院・会社・学校への報告や公表に関する不安、収入減少・補償・看護休暇に関する不安、外国籍による入国制限、これは外国籍であることによって入国できないとか、家族に反対されて何年も会えないとかということが随分生じましたね。入国・証明・家族関係などの心配。保険・遺産相続関係の不安。外出自粛・感染リスク対策により会えない。日本人も海外に出る時代ですので、こういうところの不安というのは、実は自分事でもあるわけです。  次の例にいきます。これらの多様性を持つ人々というのは、やはり例えば外国籍の方であれば、在留資格に伴ういろいろな制限とかがあって、そういう特定のニーズに適合した具体的で、かつ的確な支援が必要なんですね。そして、ヒアリングの中などにも出ていましたけれども、結構、つくり上げているinstitutionというのは、落とし穴があって、どちらにも入らないとか、どちらとも言えないので、あなたはどちらでも適用されませんとか、すごくそういうことが多いらしいんです。その制度の落とし穴が、そういうものがあってはいけないとか、そういうことはやっぱりすごく言われるんですが、これが1つの制度についての要求です。何か支援のあり方というのは特定のニーズに適合した具体的で、かつ的確な支援が要るんだということ、マイノリティの場合、多様性を持つ人々の場合、普通の人たちはそこのところを分かっていないわけですから、それが必要なんですが、それだけではないということを今日は強調したくて、この資料を作ったんですが、つながりやすい支援、こういう非常に具体的で的確にある方々のニーズに合わせた支援だけつくっていると、その支援にいかない人が必ず出てくるんです。その支援というのは、一般的に多様性を持つ人々、マイノリティの方が多いですから、スティグマが発生するんですね。そういう支援を受けることに対するスティグマというのは常にありますので、その支援の場そのものを避けるという傾向がありますので、マイノリティ意識を持ちがちな人は、傷つけられることを大変恐れているわけです。であれば、行きたくないという気持ちになり、せっかく支援があってもつながらないということがあって、つながりやすい支援が必要です。  最後、結論にいきますけれども、これ、湯浅誠さんが2022年9月に書いた「地域の居場所とWELL-BEING」という論文を読んで、「うん、そうなんだな」というふうに私も思ったんですけれども、2つの場が要るんだということを彼は非常に強調しています。誰でもが参加できる居場所の形成、これも1つの支援なんだと。とすると、支援する側とされる側が区別されている場所ではなくて、みんなが参加できる。実は本当はこれ、町内会・自治会等が担っていたんですが、実際には多様性が増大する中で、マイノリティみたいに言われるような人々は、町内会・自治会に参加しないとか、そこに参加すると、自分が傷つけられるのではないかというような不安の中で、なかなかそこに参加していかないということがあるということを湯浅さんは書いています。  ですから、マイノリティの人が参加できるような居場所づくりが要るんだということが1つ、インクルーシブな地域づくりが要るんだという。  もう1つが、特別なニーズを持つ人のための支援であって、そこでは参加者と支援者は分離していていい、支援者は組織化されていて、いつも的確に支援をする必要がある。ただ、こういう支援については、これまでは地域からは排除されがちだったということも湯浅さんは強調しています。  例えば、ホームレスの方に対する炊き出し支援のようなことは、地域社会、その地域の町内会・自治会からは、せっかくホームレスがいなくなるように努力したのに、また呼び寄せてしまってと怒られたそうです。そういうことがあって、地域、社会から、これまで排除されやすかったけれども、そうならないためにはどうしたらいいかという問題があります。  先ほど言いましたように、特別なニーズがないと行きにくい場になりがちの場所でもある。ラベリングが怖いんだということがありまして、2つの支援の場が必要である。参加型を参加する。支援する側と支援しない人が、支援するとされる側が分かれているような場と、分かれていない場みたいな、そういう2つの支援の場が地域に要るんだということを書かれていまして、私はこれを読ませていただいて、「あっ、そうだな」というふうに思って、今日はこういう形でまとめさせていただきました。  以上です。 【大杉会長】  江原委員、ありがとうございます。  では、続きまして、中村委員、よろしくお願いいたします。 【中村委員】  それでは、「目指すべきコミュニティと安心して住み続けられるために必要な支援について」というものが与えられたテーマですので、できるだけ時間の範囲内でお話をさせていただきたいと思います。  まず、前提ですが、パワーポイントで御説明させていただいております。これは年金が5年に一度、財政検証しているときの資料でありますが、人口の問題を出しております。これは日本全体の話でありますが、2042年まで65歳以上人口は増え続ける、しかし、2008年をピークとして総人口は減っている、当然、労働力人口も減る、こういう図になっております。  何が言いたいかというと、2042年まで労働力人口が減る中で高齢者人口が増える、人口学的に言うと、あと20年くらいつらい時期が続く。その先はどうかというと、65歳以上人口も減り出しますので、非常に残念なことでありますが、総人口が減る中で、高齢者人口は総人口の一定のままで減っていくので、そういった意味では、高齢化問題はなくなるということになります。  前提の2点目は、医療と介護の立場からお話をしますと、これは2020年の医療費ですが、この茶色の部分です。実は日本の医療費というのは、もう61.5%は65歳以上の人が使っている。つまり、日本の医療は、もう高齢者医療で医療者は食べている、言葉は悪いですが、そういう状況です。  先ほど申し上げましたように、65歳未満、若い人の医療は38.5%でありますが、これがどんどん人口が減っておりますので、これ以上増えない。65歳以上の医療費は増え続けるということがあります。  横に介護を足してありますが、10兆円にこのときなっておりますので、医療と介護を合わせますと53兆円ということで、日本の社会保障は130兆円ですから、40%くらいになっています。2040年まで、社会保障の中、190兆円になると見込まれているんですが、増えるのは医療と介護が増えるということであります。  今日でも、医療と介護を足した場合、65歳以上の人が、その医療介護費用の7割近くを使っているということになります。2040年頃になりますと、190兆円の半分は医療と介護の費用になる。年金は、今の制度では年金が増えませんので、縮小していくというのが2点目であります。  前提の3点目は、そう言った中で、85歳以上の人、今、人口の5%が85歳以上ですが、85歳以上の方になりますと、この左の図は要介護認定率、介護保険のサービスを使う人の割合ですが、65歳以上の人に対しては18.6%でありますが、75歳以上、後期高齢者になると、3人に1人が要介護認定に該当している。85歳以上になりますと、6割以上ということになります。  つまり、超高齢者が増えるんですけれども、その人たちは、医療と介護、この増加率は非常に、85歳以上の人が高いわけでありますが、医療と介護両方のニーズがある。そのことを考えて、地域づくりもしていかなくてはいけないということであります。  前提の4点目でありますが、これは2008年のときに、私、厚生労働省におりましたときに担当局長でありまして、これからの地域福祉をどうしようかということを考えたことがあります。ここに書いてある標題「地域における「新たな支え合い」を求めて-住民と行政の協働による新しい福祉-」という研究会報告を有識者にまとめていただいたんですが、その報告の図がこれであります。  2008年の提言ですと、早期発見、ニーズを早期発見し、住民の支え合いによる支援をして、困難ケースを専門家につなぐための地域福祉のコーディネーターが必要ではないか。あるいは、公的なサービスは限られていて、制度外のニーズ、制度の谷間にあるニーズ、地域で生活している人にしか見えないニーズ、社会的排除、複合的なニーズ、こういった当時の公的福祉サービスで全然捉えられていないニーズについては、何とか地域の新たな支え合いで支えていかなくてはいけない。しかし、こういったものについては、ほとんど制度がないという状況でありました。  今日これを比べてみるとどうかというと、2014年の介護保険法の改正で、生活支援コーディネーターなどが配置されます。様々なコーディネーターが配置されるようになっておりますし、2017年、2020年の社会福祉法の改正によりまして、国の制度としても、こういった人々、こういうニーズについて応えていきなさいと、言わば制度化されているということになります。  何と、2020年の改正法で、国のほうでも住民の複雑化、複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備しろ、こういうふうなことになっているわけであります。  そういった前提を踏まえて、目指すべきコミュニティについて考えてみますと、私は、やはり住民の力を引き出し、住民の参加を促すコミュニティというものが、人材が豊富であるという世田谷区の特性も生かしますので必要ではないか。  前のこの審議会でも申し上げましたが、区民を施策の対象として捉えるのではなく、自ら地域をつくり支える存在として位置づけていく。全ての人に「居場所と出番」がある、出番というのは、役割があるまちづくりを心がけるべきではないか。  それは、活動と参加が、住民の健康といいますか、福祉に大きく影響するからであります。これは2013年の厚生労働省の介護保険部会、審議会で配られました資料であります。千葉大学の公衆衛生の近藤克則教授の資料でありますが、ここにありますように、スポーツ関係、ボランティア、趣味関係のグループ等の社会参加の割合が高い地域ほど、なんと、転倒や転ぶこと、認知症や鬱のリスクの低い傾向が、これは高齢化の年齢調整もした上でこういう関係が見られるということが明らかになっております。  2019年、近藤教授は検討をさらにデータを集められておりまして、ここにありますように、社会参加割合が高いと要支援・介護認定率が低いとか、社会参加割合が高い地域ほど、例えば中性脂肪の値が高い人が少ないとか、BMI高値者、高い値の人が少ないとか、こういうことが言われております。  つまり、活動と参加ということが地域でつながることを促し、そういった住民の人たちが、心身ともに健康である割合を高めることにも貢献するということになります。それがそういった意味で、目指すべきコミュニティの姿ではないかと思います。  もう1つの課題である必要な支援ということでありますが、先ほど申し上げましたように、国全体の政策の動向も、要支援、要介護になっても、要医療になっても、住み慣れた地域で暮らし続けていくために、地域包括ケアシステムの構築ということが、2012年閣議決定され、ずっとそれ以来、目標として掲げられてきております。  また、高齢者に限らず、障害のあるなし、様々な属性、縦割りを超えて地域共生社会を実現していこうという法改正もなされています。これらは国がこういう改正をする前から、世田谷区は積極的に取り組み、まさに国に先駆けて、他の地域に先駆けて施策を構築してきたと私は考えております。そのことを誇りにし、また、その地位をずっと保っていく必要があると私は思っております。  一方、2005年の障害者自立支援法の改正などによりまして、障害のある方の地域への移行、就労支援の推進ということも言われておりますが、この点については、世田谷区がそれほど進んでいるというふうには、データ的には出ていないということを私は残念に思っておりますので、この辺は進めていく必要があると考えております。  地域包括ケアについては、この5つの要素、住まい、医療、介護、介護予防、日常生活の支援ということであります。医療と介護はまさに専門職によるサービスでありますので、その連携が大事と言われております。住まいや介護予防、要介護にならないようにする、要介護になったとしても重度化しないという介護予防、あるいは、制度前のサービスを使わざるを得ない日常生活の支援のところに線を引かせていただきましたが、これらについては、まだまだ専門職によるサービスの連携がうまくいっているという意味ではありませんが、この線を引いたあたりは、もっともっと頑張っていかなければならないところではないかと思います。  つまり、制度・政策は格段に整備されてきておりますが、問題はオペレーションであると思います。世田谷区の場合、本庁-5地域-28地区という三層構造でうまく対応していただいておりますが、これを今後どのように機能させていくのか。高齢者分野で成果を上げ、それを拡げてまいりました。先ほど議論にあった子ども・子育て、若者支援、そういった中でこういう体制をどう考えていくのか。行政、区と社会福祉協議会や事業者、民間、住民組織、それぞれをどうやって活性化させていくのか。従来は、医療と福祉、介護の連携ということが言われておりましたが、今は、先ほど言ったように、地域づくりそのものが医療と福祉も関係しますので、労働・教育・住宅・防犯・防災等々の分野との連携が必要である。これらを考えますと、区政そのものであり、まさに基本計画で考えていただく領域ではないかと思います。  高齢者施策についてちょっと申し上げますと、世田谷区民は、男性が1,700の自治体の中で第3位、女性がたしか第8位ということで、非常に長寿の区であります。ただ、健康寿命はそれほどでもないということで、したがって、結果として、要介護の期間が長いという問題があります。また、要介護認定率、65歳以上の人に対する要介護認定で該当している人の割合は、全国平均や東京都よりも高いというような状況になっております。健康寿命を伸ばし、重度化させない、要介護にできればならない介護予防といったものが必要となりますし、個々の高齢者のケアにおいても予防を重視する。なぜかというと、もちろん年齢が高くなると要介護度が悪化するということは避けられないわけですが、そういった中でも、データ上、入院に至るような疾患に襲われますと、脳梗塞、心不全、肺炎、骨折、尿路感染症などでありますが、明らかに要介護度が進むということが、データ上、明らかになっております。したがって、こういうことにならないようにするケアマネジメント、予防重視のケアマネジメントが必要になると思います。  日本は、1950年代は、9割の方が自宅で亡くなっていたわけですが、どんどん医療機関の発達に伴って、病院死、あるいは診療所のベッドで亡くなる人の割合が増えて、1977年に病院で亡くなる人が半数を超え、2005年がピークでありますが、82.4%まで医療機関で亡くなるという状況になっております。  2005年以降、自宅や自宅に代わる施設で亡くなる人が増えてきているということでありまして、これは練馬区のデータですが、練馬区内で亡くなっていて、お医者さんにかかって亡くなっている人の、10年前は87%が、病院、診療所で亡くなっていたわけですが、2020年には、それが3分の2程度、68%まで落ちてきている。逆に言いますと、在宅や施設での看取りが増えているということになります。  ということは、そこまで支えられるサービスが必要になりますし、そういったことについて、本人、家族の意思決定ということが大事になります。医療と介護の連携が不可欠であり、バックアップとしての病院、在宅で暮らし、ときどき入院するということで、だんだん看取りに向かうということになります。  そうしますと、やはり区内の専門家職能団体や事業者の果たすべき役割は大きい。例えば世田谷区医療連携推進協議会などありますが、もっともっと果たすべき役割を大きくしていかなければならないと思います。  世田谷区の介護の特色としては、今、世田谷区民で介護保険で施設で使っているサービスは21%であります。これは全国平均の33.9%に比べると、非常に小さい。つまり、特別養護老人ホームや老人保健施設などで暮らしている人は少ないわけですが、他方、有料老人ホーム、介護保険では特定施設と言っていますが、これが17%、全国平均では5.6%ですから、非常に世田谷区の介護のサービスというのは際立った特色があります。この特定施設は、株式会社が設置するものが多いなど、特別養護老人ホームが民間でないということではありませんが、社会福祉法人に対して、株式会社などが主流になっています。ここに入っている人たちは在宅となりますので、訪問ヘルパーさん、訪問看護も使う、つまり、世田谷のこういうサービスの利用状況、提供状況を考えながら、世田谷にふさわしい医療・介護・福祉のサービス提供体制をつくっていくことが必要だと思います。  先ほどのお話にありましたように、単身の世帯が増えている、単身高齢者が増えている、また貧困、格差の問題がある。そういった中で、医療、例えば世田谷区は幼少期の医療費の無料化を実施されておりますが、医療や介護や保育や教育など、ベーシックなサービスをきちんと維持することが、所得のいかんにかかわらず、基礎的なサービスが保障されるということが、格差、低所得の方々に対して大きな福音になりますし、逆進性を緩和する機能を持っておりますので、そういったことを意識して政策を進めるべきではないかと思います。  まとめといたしまして、目指すべきコミュニティとして、住民主体で構成する生活中心生活中心モデルを重視していく。  人々の「尊厳を支えるケア」を実現し、自立支援ができるように地域の生活課題に取り組む。狭い医療や福祉や介護だけではなく、まちづくりそのものとして取り組んでいく。  包括的な支援体制の整備、特に地域移行・就労支援を重視する必要がありますし、これらを実現するためには、区民も含めた関係者のネットワークで支えることが必要なのではないかと思います。  以上であります。どうもありがとうございました。 【大杉会長】  中村委員、ありがとうございます。  それでは、こちら、テーマ2につきましては、パネリストお二人ということで、この後の議論が展開していくように、お二人の間で意見交換をいただければと思うんですが、まず、江原委員からお願いできますでしょうか。 【江原委員】  中村先生、どうもありがとうございました。  高齢者福祉に関連して、高齢者の介護とか、そういった暮らせるということに関連して、大変子細な論を展開していただいて、勉強になりました。  1つ、一番大きい、こういう言い方をしていいのかどうかちょっと分からないんですが、よくネットなどの意見の中で、高齢者に対する福祉というのは、それなりに制度化されているけれども、じゃあ、同じようなことが子育て世帯にあるのかと、そういうこと、つまり、ほかの障害のあるお子さんを抱えているような子育て世帯とか、それから、それこそシングルマザーの人とか、それから、今は同性カップルでも子どもを持たれている方たちもいらっしゃるんですね。そういう方々、いろいろな方々が、例えば今、とても制度の隙間がないようにとか、いろいろなお話を伺って、やっぱり高齢者福祉は進んでいるんだと思ったんですが、同じような形での支援があるのかということを考えながら伺っていました。  私は、ネットで、それがないという意見をちょっと見たり読んだりするので、それだけなんですけれども、根拠はないんですが、それらのことはどうなっているのでしょうか。高齢者に特化した支援制度、高齢者の制度はかなり進んでいるけれども、ほかのものに比べて進んでいるというように思っていいのでしょうか。その辺の先生のお考えを教えてください。 【中村委員】  日本はずっと高齢化、高齢化ということを言われてきて、1994年に国際的に高齢社会だと言われている高齢化率14%を超え、それが94年で、30年足らずでもう29%を超えていますので、世界一の高齢国家になっています。そういう中で、みんな高齢者の人数も増える、シルバーデモクラシーということもある、それから、明日は我が身だと、みんな年を取るということは分かりますから、そういった意味で、非常に理解が得られやすかったということもあって、2000年に、皆さんから保険料を出してもらってサービスをするという介護保険制度も、医療保険制度のアナロジーもあってできたということもあり、そういった意味では、確かに高齢者の数も多いということもあって、介護保険制度の下で飛躍的に高齢者介護サービスは増えたことは確かです。ただ、それをモデルにして、障害福祉行政も、それから、子ども・子育て行政も、保険料こそ頂いておりませんが、そういうサービスを目指すべきだということで、税金で行ってはいますが、できる限り、保険料がない介護保険制度的に伸ばしていこうということで、2005年以降の障害者福祉サービスの伸び、それから、特に2010年の子ども手当を入れたこと、2014年から消費税の増税分を子ども・子育てに使うということも認められたということもあって、他のサービスも増えてきているとおりです。  そういったことを受けて、高齢者介護で、いち早く地域包括ケアシステムということを謳い出したわけですが、そういう手法を使って、もう制度の縦割りも超えて、とにかく住民の方のニーズに着目してサービスをつくっていこうという方向性は出ているわけです。  ただ、残念なことに、保険制度のある介護保険と違って、予算をセットしないと、なかなかサービスが保障されないという子ども・子育て分野は、苦しんでいることは確かです。ただ、GDP、1990年頃、日本で合計特殊出生率がうんと下がったと言われた1990年頃の子ども・子育て費用のGDPに占める割合は0.35%なんです。それが今日では、一応、1.9%まで増えてきておりますので、先進国並みの3%にするためには、あと5兆円ぐらいあると、一応、子ども・子育ても充実すると、3%ラインになるというようなところまで来ていますので、言われているほど、ほかのサービスが遅れているわけではない。ただ、先ほども0歳から3歳児のところで申し上げたように、児童行政は、保育所をつくるということ、待機児童の解消に、今までそればかり力を注いできましたので、やっとそれも待機児童ゼロも達成されましたので、これからは本当に個々の子育ての悩みに寄り添う、即したサービスが展開できるようにしていく。そのために、地域の拠点なり、先ほど来お話に出ている住民の方も含めた子ども・子育て支援を地域でやっていくということが必要なのではないかと思います。  以上です。長くなりまして、すみません。 【江原委員】  どうもありがとうございます。1つだけちょっと付け加えたいというか、聞きたいことがあって、高齢者に対する介護、とても必要だということは私も10年やったのでよく分かっているんですけれども、そのほかの問題については、意外と社会的合意がつくりにくいというのか、子どものいる人といない人とか、障害のある子どもがいる人といない人とか、例えば、医療的ケア児などはものすごく増えているんですね。医療が発達することによって倍ぐらいになっているけれども、実際支援はあまり十分ではないですね。その医療的ケア児を抱えた御家族は本当に苦労されています。そういうことを見たときに、なぜこんなことが起こるんだというふうに怒ってしまうんですが、やっぱり社会的理解が、さっき、私、多様性のある社会、人々と言ったときに、マイノリティというふうに申し上げてしまいましたけれども、高齢者はみんななるという、そういうイメージで皆さんそれで合意できるかもしれないけれども、そういう人たちは特別の人だから、その人たちに対しては、そんなに合意ができないということが背景にあるのかなとちらっと思ったんですが、そういうことはないんでしょうか。皆さんとの合意を形成していけば、だんだん高齢者介護に関わるような制度の、これまでの展開みたいなものが、若者の場合にも適用できると思っていいのかどうか、その辺、ちょっと私はまだ心配しているところがあるんですけれども。 【中村委員】  どうもありがとうございました。今の点については、私はこのように考えます。  確かに、これまでは、それぞれの制度、介護保険制度、保育所の制度、それぞれの制度で多くの人が困っていることに対して優先的にやってきた。それがまがりなりにも一定の水準に達してきていると思います。これからの社会、本当に成熟社会は、そういった意味で、これまで数的に少なかったりして、言い方が難しいんですが、十分手を差し伸べてこられなかった部分に、やっとちゃんとできる状況が整ってきている。  実は、費用的に言うと、圧倒的に数が問題でありますので、医療的ケア児のお子さんに、ちゃんとしたことをするというのは、お金は大したことはないんです。だから、それは、やる気になれば、特に世田谷区のようなところでは、やろうと思えばできると思います。それが本当の意味での福祉、進んだ福祉社会、福祉国家だというふうに私は思いますので、したがって、今度の基本計画で、この分野での課題は、今までできなかった複合的な問題、複雑な問題、そこにチャレンジしていくことが課題だということを申し上げているわけです。  だから、画一的な、ある意味、定型的なサービス、そういう言い方は、介護保険や保育に対して失礼ですけれども、イメージとすれば、そういうサービスはもう何とかできてきた。これからは、もうちょっと上級編を、ケアとしては、福祉サービスとしては、もっと難しく、これまでうまくできなかったことにちゃんとチャレンジし、そういった方々のニーズに応えていくということ。それは区役所なり、公的制度だけでやるのではなく、それを住民の人たちと一緒にやっていくという地域づくりをしていく、それがまた皆さんの理解にもつながるということではないかと思っております。  以上です。 【江原委員】  どうもありがとうございました。 【大杉会長】  今度は逆に、中村委員のほうから江原委員のほうにコメントをいただければと思います。 【中村委員】  江原先生の多様性を持つ人々が安心して住み続けられるというのは、非常に大事なことだと思います。そういった中で、先ほど来、従来のコミュニティ、町内会などに参加しない人が増えているということがあります。地域福祉の問題を検討したときによく言われるのは、従来の地縁型組織は、どうも振るわなくて、これからは、機能型のNPOとか、そういう支援の形が必要なんだという言われ方をしますが、江原先生は、町内会・自治会を活性化させるための秘策について、何かアドバイスがあれば伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。 【江原委員】  秘策になるかどうか分からないんですが、町内会が持っている誰でも参加できるというところは、やっぱりある意味、そういう支援の仕方は必要なんですよね。ただ、そのところに自分は行ってはいけないのではないかと思うような人々がたくさん、少しずつ増えて生まれてきてしまっているのだから、1回ずつ、自治会とか町内会が、例えば外国人の方と一緒にやりましょうみたいな何々地域会とか、障害がある人と一緒にやる自治会組織とか、何かそういうものを少しずつインクルーシブな自治会のイベントの在り方というものをつくっていくということが、結構いいかなと思っています。  あと、独身者の方がやっぱり入りにくいんですね。単身者の方が大変入りにくいというところがありますので、単身者部会というものを例えばつくって、単身者の方だけで新たなコミュニケーションの場みたいなものを、その自治会の中につくるとか、町内会の中にそういう場をつくるとかということが、とてもいいのではないかと思っています。やっぱり足を運ぶというか、そこに入ることは、自分はいいんだろうかみたいな気持ちになっている人が結構いるのではないかと私は思っています。  大したアイデアではないですけれども、以上です。 【中村委員】  どうもありがとうございました。 【大杉会長】  ありがとうございます。  先ほどの中村委員の御報告の中にも、そういう地域の活動に参加している人の健康度合いが非常に高いというようなことと、それから、本当に、これまでこの審議会であまり大きなテーマとして出されてこなかったんですが、町内会・自治会のあり方というのは、世田谷区も含めて、どの地域でも担い手不足ということが言われてくる中で、今言われたような、もともとその地域に対して開かれて、包括的で、どんな人でも本来入っていいところですが、それがなかなか入りづらいと思わせている部分をどうしたらいいのかというようなところで問題提起いただいたかというふうに思います。  また、江原先生、多様性ということを御報告で言われました。  それから、中村先生からは、福祉に関連しても、世田谷区はいろいろな先進的な取組をしてきている一方で、まだ残されている課題についても幾つか貴重な御提言をいただいているかと思います。そういったことも含めて、皆様、ほかの委員の方々から御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  どうぞ。 【羽毛田委員】  町会について考えたことがありますので話させていただければと思います。  私、5年前に世田谷区に移ってきていまして、町会に加入していないです。転入以来、勧誘もされていないです。恐らく集合住宅なので、会の中で加入しづらいんだろうなと思われているのかなと思うんですけれども、私個人としては、積極的に関与していきたいなと思うんですけれども、町会側とか、自治会側が、うまく新しい人を巻き込んでいく知見とかノウハウとか、そういう仕組みが整っていないのかなと感じています。  町会は着実に会員数が減っているというような現状でも、最初から話をされていますので、ここをうまく、新たに世田谷に入ってくる人を呼び込んでいくことはぜひ必要かなというふうに感じております。  町会に入りづらいと思っているわけではないのですが、入る糸口がないということが率直な感想です。 【中村委員】  よろしいですか。中村から、今のお話についてコメントさせていただきますと、確かにマンション居住者は、民生委員さんや福祉関係者でも非常に問題になっているというか、オートロックになっているので入れないというので、地域福祉を語る場合に、マンション問題をどうするかというのは大きな課題になっています。  活発な活動をしている自治体というか、そういうところでは、そういうマンションの管理組合などに働きかけて、マンション部会をつくったり、そういったことで巻き込んでうまくいっているというようなお話は、私が先ほど申し上げました地域福祉の報告書を2008年につくったときには、全国各地、よくやっているという自治体を少し回らせていただいて勉強したんですが、そういう試みがなされているところはあります。世田谷の町内会・自治会の皆さんがどういうふうに活動されているかは、むしろ28地区あって、それを言わばまとめている総合支所の方も今日参加されていますので、少し聞いてみたらいいのではないかと思います。 【大杉会長】  何かお答えされますか。もし何か御意見があれば、出していただきたいと思いますが。  それから、中村委員から、先ほど、地域行政の話もございました。町会等との関係ということも考えますと、地区のまちづくりセンターであるとか、そういうところとの関係の中で、そうしたコミュニティ活動をどうしていくのかというのは、非常に大きなテーマになるかと思いますが、その点、もしあれば。 【中村委員】  世田谷区の福祉の相談窓口、三者で構成している地区の社協の方、あんしんすこやかセンター、これは行政施策でいうと、地域包括支援センター、それにまちづくりセンター、これは区役所の言わば地区出張所のようなわけですが、その三者が1つの屋根に入って、たらい回しにしないで住民の相談を受け止めるというのは、非常に全国的にも紹介され、注目されているモデルで、本当に、やはり福祉や介護は日常生活圏域になりますので、28地区、大体人口規模3万人、地方都市並みの人口を抱えているところで、そういう相談窓口があり、また、在宅療養の相談も受け、医師会の先生も担当者を決めていただいて、1人の先生が必ず福祉の相談窓口に担当として出てくるというような、非常に優れた制度だと思います。それを今まで三者連携と言っていたものを、児童館も入れて四者連携にするという御説明を、区長さんや区のほうから伺っておりますので、まさに子ども・若者支援のために四者連携まで進むということで、結構なことではないかというふうに思います。  ただ、児童館ですから、同じ屋根の下にあるというわけにはいかないし、児童館の機能としても、そういう相談、四者連携の担い手であるということを自覚していただく必要はあるのではないかなと私は思っております。  以上です。 【大杉会長】  ありがとうございます。  いいですよ、もちろん。 【鈴木副会長】  鈴木です。中村先生の先ほどお話があったパワポで、高齢者のところとは別に、障害者のところについてはいまいち進んでいない面があるのではないか。私も自分の研究の中で聞いているところで、やっぱり障害者に関しての、活動参加はすごく大事なことだと思うんですが、自分たちはなかなかそこができないなというので、そのスローガンに対しての置いていかれ感みたいなところをよく聞くんですけれども、それについて、ちょっとお考えと提言があったら教えていただきたいなと思います。 【中村委員】  どうしても福祉は発展形態からいうと、老人ホームもそうですが、施設サービスから始まってきて、長らくそのサービスに従事してこられた人は、施設でお世話するのが一番だという意識が強いし、それから、例えば、知的障害の方の場合、お父さん、お母さんが、「自分が亡くなった後、この子はどうなるんだろうか」ということで、自分がいなくなっても、ずっと面倒を見てもらえる施設を頼りにするというようなこともあって、実は地域移行を目指す人たちが、その当該障害のある方が地域移行できたのは、御両親が亡くなってからだというようなエピソードをよく聞くんです。だから、そういう家族の不安、そういったものが結構地域移行を阻んでいるという要素がありますし、もう1つは、やっぱりそういう中で、就労支援ということもし、障害年金と就労したことによる工賃や賃金、そういったもので、地域での住居で、グループホームなり、普通のアパートの1室でもいいんですが、暮らし続けられるようにしていくということが求められていることだと思います。  それは特に精神障害のある方も、これは周りの偏見ということもあると思いますし、やっぱり医療の中断、例えば薬の中断などは問題がありますので、きちんと医療とのつながりを持ちながら地域の中で暮らせるようにしていくというのは、世田谷区にとっても大きなチャレンジしなければならない課題だと思います。 【大杉会長】  森田委員、どうぞ。 【森田委員】  世田谷の中にたくさんある空き家とか、つまり、高齢になって一人でお住まいになっていらっしゃる方たちの問題とか、空き家の問題とかというようなことは、この住み続けるということとの関係性の中で、どんなふうに、この地域福祉領域ではお考えなんでしょうか。 【中村委員】  なかなか難しい問題、相続の問題とか、そういう問題もあって難しいのかもしれませんが、例えば、一人暮らしの高齢者の方が施設に入居したような場合、家が空くと、そういった空いている施設を、逆に今度は施設に入所している人たちが、デイサービスの反対の形態ですね、日中ちょっと普通の、どうしても施設は施設の生活でしかないから、日中の疑似居住の場所として活用するというようなことは、かなり前から、そういうことに目覚めた福祉事業者の方はやったりしておりますね。  だから、空き家の活用の延長でいくと、もしその持ち主のお年寄りが亡くなっても、事情が許せば、地域福祉の拠点として御縁があったので使い続けるというようなことはできるのではないかとも思います。  だから、そういう形で慣れていけば、あるいは、所有権は移転しなくても、どうぞ使ってください。あるいは、資料の中にたくさん出ていた、それこそ地域の拠点として活用するというようなことは考えられるのではないかと思います。 【森田委員】  なかなかシェアハウスの問題だとか、そういった具体的な、いわゆる共同の活動の場所の拠点として使っていくとかということは、もう何十年も言われながらも、なかなか展開しない。やっぱり財産とか、そういった資産とかを持たない若い人たちは、なかなかそういう場がないために活動が展開しないというところがあるので、何かそこをやっぱりもっと一気に解決していくような手法を考えないと、結局、私なども自分が高齢になってきてすごく思うのは、やっぱり危険ですよね。地域の中で高齢者だけが暮らすというのは、本当に驚くぐらいいろいろな問題が発生するので、そういったことを地域の中で解決していくような何か仕組みということを、きちんと世代を超えて議論しないといけないかなというふうに思います。  以上です。 【大杉会長】  今ちょっと中村委員のほうからも触れていただいたかと思うんですが、資料5-2に、私が所長として務めさせていただいているせたがや自治政策研究所のほうで、「小さなまちの拠点」ということで、この概念はどう定義するのかというのは、まだはっきりと定義づけるということはしていないんですけれども、例えば、サロンであるとか、ミニデイであるとか、認知症カフェであるとか、子ども食堂であるとか、そういったものを、今、区内でどれぐらい、どのような位置で、どう活動しているのかということを調査しようということで、まずは今、把握できるだけ網羅的に取り上げています。  こちらを1枚めくっていただくと、地図上にプロットしてあるんですが、1,000か所近くあるだろうと。ただ、コロナ禍でずっと調べてきたんですが、実際、どの程度活動しているかとか、その実態については、まだこれからというところなんですが、こういったところが、先ほどの町会や自治会のような活動、それから、まちセンのような地域行政等とどうつながっていくのか。こうした活動拠点も、それこそ若い人が関わってやっているところもあれば、やはり世代交代の波といいますか、町会・自治会と同様に、担い手の高齢化であるということで、なかなか立ちゆかなくなってきているようなところが出てきているというようなことも含めて検討していかなければいけないと思っておりまして、まだ確固としたことが言えてはいないんですが、こうしたところをきめ細かく見ていき、どうつなげていくかというようなことは、これからの在り方として非常に重要になってくるのではないのかなというふうにも考えているところです。  すみません。私のほうからちょっと長くしゃべりましたけれども、ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。  ちょっと時間が長くなりましたけれども、ありがとうございます。 3 テーマ別意見交換3 【世田谷を安全で一層魅力的なまちにするために必要な政策について】 【大杉会長】  それでは、次に、テーマ3のほうに移らせていただきたいと思います。  テーマ3は、「世田谷を安全で一層魅力的なまちにするために必要な政策について」ということで、パネリストは、小林委員、長山委員、涌井委員にお願いしたいと思います。お一人8分程度で御意見をいただきたいと思います。  では、長山委員、お願いできますでしょうか。 【長山委員】  それでは、資料に沿いましてお話しします。駒澤大学の長山です。よろしくお願いいたします。  「世田谷におけるアントレプレナーシップと地域づくり」ということでタイトルをつけましたが、基本的には、テーマ別意見交換の中の3番のところを意識して、特に資料3について、「現時点での基本計画大綱イメージ」というものがありますので、その辺りに最後、含意が出せればと思っております。  では、1ページへいっていただきまして、これはこの審議会の中でもずっとお話が出ていたところだと思いますが、まず今、危機の時代いうことで、地球規模の危機も含めて、今、VUCAの時代と言われているわけです。  そうした中で、2ページ目ですが、今回出たものですが、「ワクワク感の創出」というものが重点政策をつなぐ基本の理念ということですが、ここが6つの重点政策をつなぐものだということですが、本当にそういったことでいいのかどうかということは、やはり考えていかなければいけないのではと思いました。  また、今、3つにテーマを分けて深掘って議論していますが、もう既にいろいろな議論がオーバーラップされてきているので、この6つの重点政策が、そもそもどのようにつないでいくのかということを考えるほうがよろしいのではないかと思っております。  3ページ目ですけれども、これは私のところで提起しました産業分野に関するものです。以下、ここに書かれていることを事例を通じて説明していきます。  4ページ目です。「ワクワク感の創出」といった話と、「アントレプレナーシップ」という言葉は、比較的親和性が高い言葉です。一般的には「起業活動」と言われていますが、実際に何もないところから価値を創造するプロセスという意味です。「起業家精神」ということだけではなくて、起業家の行動やプロセスも含めた活動ということで、「起業活動」と訳されます。個人の際立った特性ということだけではなくて、経験とか実践を通じた起業活動で、誰でも起業活動ができるものと捉えられます。  そういうことで、駒澤大学でもアントレプレナーシップ教育に取り組んでおり、地域の中でもラボ活動をやっていまして、その経験の中からどういうことが言えるのか話をしたいと思います。   5ページ目です。駒澤大学のラボでは、15分近隣ぐらいの地域において起業学習のコミュニティをつくっていっています。ここは、若い人、特に起業に関して全く関心のない人(起業無関心者)と、実際に起業している人が入り交じるような場です。  6ページ目です。ここからどういった価値が創造されていくのかということですが、最終的には、地域の起業文化の醸成です。いわゆる起業に無関心な人に関心を持ってもらう、「創業機運醸成」につながるのではないかと考えています。それには、いきなり創業スクールみたいな形で、起業するということを前提としないで、まず世田谷という地域に関わりがあるとか、何らかの思い入れがあるといった人に来てもらって、まちづくりのようななかから考えていってもらう。地域の課題解決といっても、いろいろなテーマがありますので、特定のテーマ、例えば、防災でも、子育てでも良いのですが、そういったテーマに共感して、何より共感が大事なのですが・・、共感をして集まって、つながって、共に学ぶといったことを通じて、参加からの学習、起業学習の場というものをつくっていくということが大事なのではないかと思っています。 こうした取り組みの中から、実際に幾つか起業するというも出てきます。7ページ目ですが、世田谷では、既に起業家を支援する「創業支援ネットワーク制度」の仕組みはできていますから、その中にこういった「創業機運醸成」となる起業学習をリアルにやっております。一応、私もこれらに関わっていますので、今回の「ワクワク感の創出」というようなものは、確かにそういった言葉として、1つ表現としてあり得るのかなと思ったところです。  8ページ目ですけれども、次へ移りまして、大学でやっていた活動を、世田谷といったところまで拡げて考えていった場合に、私のなかでは産業振興基本条例の改正へとつながり、その中でも「ワクワク感の創出」というものは、かなり意識されているのだろうと思います。ここでは最終的には、地域の経済発展条例という形になっておりますように、特定の産業をターゲットに見て振興していくということではなくて、プレーヤーなり、担い手をいかに育てていくかという話になっているということです。  9ページ目にありますけれども、一般的には、産業振興といった場合には、商業の振興というような特定の産業の振興ということを意味します。それは地域的には商店街の振興ということになりますが、そもそも商店街というもの自体が、もう経済活動の機能という、買物の場というようなものではなくて、地域コミュニティの担い手というように位置づけが変わっております。そういった面においては、先ほど、会長が「小さなまちの拠点」という話があり、その中には区民センターや子ども関連の施設、町内会・自治会などが挙がっていましたけれども、そういうものの1つとして、商店街も同じような位置づけられると思っています。商店街は、地域の住民と起業家のコミュニティの場であって、また、アントレプレナーシップ、起業活動の苗床になるものと位置づけられます。商店街自体が社会的な価値の創出も併せて行う場として位置づけられるのではないかということは、産業振興条例の改正の中でもそのように捉えております。  10ページです。ワクワク感の創出の場の1つの例として、今、池尻の中学校の跡地を使って、ものづくり学校を新しいコンセプトでつくり直すという事例が挙げられます。これはまさに新たな産業・学びの拠点、さらにはコミュニティづくりの拠点であり、「6つの重点政策」を横断的に実現する拠点としての世田谷モデルになるのではないかと期待しています。池尻中学校跡地の新拠点は、「コレクティブインパクト」といったアプローチを取って実現していきます。「コレクティブインパクト」という考え方は、この基本計画の中でも生かしてもいいのではないかと思っております。新拠点のコンセプトは、資料にも書いてありますように、新しい産業を振興すること、先ほどの起業活動、アントレプレナーシップの創出ということが掲げていますし、子どもたちの学ぶ場としても、また商店街の再生にもなるものとして描かれています。これは世田谷区の1つの総合的な拠点との位置づけですが、5つの地域の地域計画がありますから、5つの総合支所ごとに、こうした拠点形成ができるとよろしいのではないかと思います。それがまさに、産業自治だと捉えることができるのではないかと思っています。  ただ、産業自治といいますと、テーマ2(コミュニティ)のところでやった話が漏れてしまう可能性があります。11ページのスライドですけれども、コミュニティといったような話が、例えば、この「みんなのおうち」みたいなものが、さらに地域を分割したまちづくりセンターや小中学校区の範囲においては「小さな拠点」として必要でしょう。産業コミュニティの小さな拠点では、「みんなのおうち」のように、この資料にあるように、人が集まって、つながって、居場所があって、なおかつ、協同労働のような形で仕事を興すというような、こういった機能を持った「小さな拠点」が何カ所あるのかというところがポイントで、先ほどの会長のお話のあったデータを定性的に調査していく必要があります。例えば、子育て広場などは、こういった機能を実際に担っているところもあります。また、コワーキングスペースのなかにも、こうしたコミュニティづくりと起業学習の機能を持っているところもあります。  12ページ目です。町内会の話がありましたが、やはり町内会の担い手が不足しています。町内会を担っている人が、PTAや防犯組合など幾つものコミュニティ団体と掛け持ちで、取組みが重複してしまっている。そうした課題がある中、例えば、防犯とか、子育てとか、防災とか、テーマごとに横串を立てたような連携体制を取る、プラットフォーム型の組織をつくっていくということが必要だろうということで、広島市など先進的な自治体では既にその方向で進めていますので、1つの参考になるものと思われます。  まとめとしますと、私としては、13ページ目に示したようなものが、6つの重点政策をつなぐイメージとして考えています。起業家というのは、何か新しいことを生み出す人であり、ワクワク感というところの担い手となる人たちということですが、特別な人ではなく、世田谷の住民全員が対象だと思います。また、世田谷にこれから来るような移住者や関係人口も含めてということになります。そういったワクワク感、アントレプレナーシップの担い手を軸とした自治体の産業政策、産業自治というものをこの資料では描いてみました。多様なテーマがあって、今日も幾つも出ていたと思いますが、まさにケアというところ、医療福祉の分野においては、もう既にプラットフォームづくりが進んでいるということですが、この資料に示した他のテーマに関しても併せてやっていく必要があるでしょう。まちづくりセンター単位の小さな拠点でやっていくものもあれば、産業自治というところで言うならば、5つの総合支所ごとの地域計画の中でやっていくようなものもあり、レイヤーごとに特定テーマのプラットフォームを重ねていくという発想が、新時代の自治体産業政策の有り様だと考えているところです。  最後です。15ページ目に1枚飛びますけれども、真ん中に据えるものは何なんだというところです。「ワクワク感の創出」ということで良いのか、ここに関してはもっと議論が必要です。私の資料では、真ん中には、地域の価値づくりといったものが最終的な内面化の局面としています。これは商業化されない、いわゆるオーセンティシティといわれている真正性という概念が鍵です。これはいわゆる資本主義の中で、生産様式でつくり出していくものができないようなものでありますし、歴史とか自然や社会といったような人々の知恵の結晶のようなものであって、コモンです。世田谷コモンといったようなものが、やはり根っ子の部分として大事にしていくべきものだろうし、それこそが真ん中にあるのではないかと、私は思いました。  以上です。 【大杉会長】  ありがとうございます。  では、涌井委員にお願いしてよろしいでしょうか。 【涌井委員】  私、資料等の用意をしておらずお詫びいたします。これを受け取ったのが、実は今日でございまして、しかしながら、これ、特に1ページ目のこのイメージを拝見して、なかなかよくできているなという気はするんですが、もし私が意見を求められるとすると、ここに「参加と協働」というのが、この6つの要素のうちの1つになっているんですね。これは違うのではないかというのが私の意見であります。すなわち、これを全部つなぐのが参加と協働というのが世田谷らしさという、別な言い方をすると、保坂区政らしさなのではないかという気がするわけであります。  御存じのとおり、SDGsの17の目標を、最近あれは非常に水平的でおかしいという意見がありました。あれをウェディングケーキという考え方に直すべきだと。  そのウェディングケーキというのは一体何かというと、生物圏というものがまず基盤の第一層目のケーキの層であって、つまり地球環境です。その上に社会環境が乗って、その真ん中に経済が来る、こういう捉え方をしていかないと、17をフラットに考えいくという考え方では、具体的な方法が取れないということがよく言われています。  もともと自然系のまちづくり研究者ということが私の立場でありますから、そういう立場から言っても、ぜひそういうような立体的な考え方をして、環境というのは、1つの要素ではなくて、あるいは、参加と協働も1つの要素ではなくて、できればこの図の後ろ側に、我々の持っている次の世代に対する一番重要な責任である持続的な未来を我々の世代でいかに担保していくのかという使命感みたいなものが、この世田谷区であろうと何であろうと、地球上のあらゆる、個人であろうと、ステークホルダーであろうと、区民であろうと、そこが一番重要な義務なので、持続的な未来なくしては将来の計画もないので、その部分を明確に示していくべきなのではないか。  では、そのコンセプトは一体何かというと、簡単に言えば、地球から地域までが1つだと。最近、この間もちょっと申し上げましたけれども、ワンヘルスという考え方を申し上げましたが、COVID-19以来、我々は何を教えられたかといえば、個人の健康だけを考える時代ではもうない。個人が健康であるためには地域が健康でなければならないし、地域が健康であるためには地球環境全体が健康でなければいけない。そういう1つの方向に今、どんどん感染症や何かの問題から、中村先生にも、この間、ちょっとそれについて御指導をいただいたという記憶がありますけれども、そういう方向にあるわけですから、むしろベーシックなものをしっかり明確にしながら、持続的な未来に世田谷区がどう貢献していくのか、その中で区民が、一人一人が何をやっていくべきなのかというところを明確にしていくべきなのではないかという意見があります。  同時に、参加と協働というのは非常に重要なテーマでありまして、実は私の記憶では、世田谷こそ参加と協働のまさに嚆矢というか、最初に手をつけたところだというふうに記憶しております。もう亡くなりましたが、大村虔一さんという、羽根木プレーパークをつくられた方ですが、東北大学の元教授で、最終的には宮城大学の副学長をやられて亡くなられたんですが、彼が下馬に住んでいるときから、下馬の街づくりというものを主導しまして、木密の地域の中でどうやって子どもたちの遊び場を確保するのかというところから取り組みながら、それが結果としては、国連児童年のときに、羽根木プレーパーク、そしてその次に世田谷、そして駒沢というような形でどんどん彼の活動が盛んになっていって、そのときは、私も覚えていますけれども、親御さんたちや区の方たちは、瑕疵担保責任をどうするんだという議論で盛んだったんです。それをバッジに損害保険をつけることでカバーして、結局、市民の力であれをやり続けた、こういうような仕組みまで進んできたというのは画期的なところがある。世田谷であればこそ、まさにそういう1つの方向になるのではないかと。  例えて言いますと、グリーンインフラ、これ、実は非常に早くから世田谷では取り上げていただいて、組織名称としてグリーンインフラという名前がついたのも、恐らく全国では初めてだろうというふうに思います。  私は、実は、政府が設けているグリーンインフラ官民連携会議、会長は損保ジャパンの会長で、私は会長代理でやっているんですけれども、まさにそういう面では世田谷は称賛すべき場所だというふうに言われているわけで、しかも、なおかつ、豪雨対策や何かについてもレインガーデンという非常に前向きに市民を巻き込んだ形を持っているわけです。  私は、実はこのグリーンインフラについて、いつも国に言っているのは、グリーンインフラは入り口でしかないと、実は出口のほうが重要なんだ。出口とは何かといえば、グリーンコミュニティだと。すなわち、先ほど中村先生のほうから極めてすばらしいデータをいただいたわけですけれども、我々がいかに社会活動に参与しているのかということで、高齢者の参加意識をかき立てながら、そして1つのコミュニティをこしらえていく。このコミュニティのあり方は、先ほどの町内会・自治会といった、それを縦軸のチェーン結合型のコミュニティだとすると、出会いとか目的型の横軸の2軸のコミュニティ、これはNPOとか、例えば最近の例で言うと、シモキタ園藝部などというものがあるんです。下北沢で、まさにあの後、出来上がって、これは今、全国的なブームになろうとしているぐらい、非常に注目されているわけです。  そういう形で、花や緑という人間と共通するDXの傍らで、全く反対側のシームレスな生命活動というものに何となく共感を持って、そこに参与しながら、自分の健康も維持し、地域の健康も維持していくというような活動のきっかけとしては、まさに参加と協働そのものになるのではないかと、今、先生がおっしゃったコモンズというのはまさにそういうことだろうというふうに思います。  そういうような、言わば町会・自治会加入率が、今や51.9%というような状況ですけれども、それはそれで大事でありそれを縦軸とすると。そのほかにもう1つ、地縁を超えた目的別の行動のコミュニティを横軸にした2軸のコミュニティの創生を図るという方向感を政策化して頂きたい。例えばシモキタ園藝部などがその好例ではないかと思います。  ただし、ここまではいい話なんですけれども、これからの議論、先ほどもちょっとクリティカルな話をさせていただきましたが、世田谷が目指すべき都市像が私には見えてこないんです。どういう都市像を世田谷が目指すのか。  というのは、私、実は、二子玉川の再開発に、長年携わって参りました。最初に始まったのが昭和57年(1982年)、二子玉川再開発を考える会というところからスタートしました。その折に通称イエロー・リポートという都市整備の要件に纏わる膨大な資料集を私自身が作ったことを想い起します。そこから都市計画制度を前提にその範囲の中で最大の効果を生み出すような基本計画を何枚も書き起こしました。その作業は、1978年からやっていたんです。そうやってようやく2007年に着工して、2010年にはライズが着工した。まちづくりというのはそれほど時間を要するものなんです。  その頃の私の世田谷への問題意識は、区内4地区に対する問題意識の中で二子玉川を考えるという方向感でした。このように区を俯瞰的に見て全体像を描き出し、区民の共感を得ながら都市像を明確にしていく事なくして、世田谷という1つの都市像を行政のみならず、区民共々イメージすることは出来ないのではないでしょうか。その頃の問題意識を思い起こしますと、地区的に言えば、下北沢、そして二子玉川、三軒茶屋、それにもう1つ別な問題からのアプローチではありますが、成城・烏山の4か所が焦点でした。その内、二子玉川は残念ながら、参加と協働という形は、地権者が多岐にわたったことから協議会や組合という形では実施されましたが、それ以上の拡大は図ることができませんでした。 しかし、見事に下北沢を参加と協働という形で街づくりをしていくことができた。とりわけその4地区の中で大きな課題を有し一刻も早い解を得る必要があるのは、個人的な感想ながら、三軒茶屋なんです。区の記述には、平面的に防災とか災害対応とか書いてありますけれども、現実的には、災害時に生々しく大変な犠牲が出るということは明確なんです。 私が申し上げている参加と協働の本質は、公共私という3つの要素の中で、改めて「共」を再構築することと同じ意味であると考えています。昔は私権が制限されますので、お上の言うことに従わざるを得ず、唯一匿名性の高い「共」で自主・自立の姿勢を以って公権力に対応せざるを得なかった。そうした時代には、「結」とか「もやい」といった地域結合型の匿名性の共同体を運営することで相互扶助し、公権力への耐性を作り出しました。  ところが、戦後、公が共を取り込んでしまったんですね。公共になってしまったために、共が非常に縮退してしまった。まさにコモンズの精神が失われてしまった。そのために地縁結合型社会も、崩壊する方向を宿命づけられ、その延長が、町内会等の活動収縮にも繋がっていくのではないでしょうか。成熟型社会を指向する上で、改めて新しい共の価値を再構築していく事が求められています。新しい地縁や目的へ多くの人々が相互扶助によりウェルビーイングな日常を創り出すことが重要なのではないでしょうか。こうした方向とその受け皿としてのまちづくりというのは、切っても切れない関係にあります。 これまで先生方から、社会福祉や教育について重要なご意見がございました。これを料理に例えれば、それをどのような器に盛るのかという視点が欠如することがあってはならないと考えます。 先ほど、居場所と出番があればというお話もございました。まさにそういう1つのきっかけ、グリーンインフラなり、あるいは、目指すべき都市像というものを掲げながら、その中で持続的な未来をどう担保していくのかという考え方でやっていくべきなのではないか。新たなインクルーシブなまちづくり、共同体というものをどうやってつくり込んでいくのかということが非常に重要なテーマになるのではないかという気がして、その辺りの都市像もこの基本計画の中では、ぜひ明確に示していく必要があるのではないだろうかというのが私の意見でございます。  御清聴ありがとうございました。 【大杉会長】  ありがとうございます。  小林委員、よろしくお願いします。 【小林委員】  世田谷区が一番住みやすい場所でないところは一生懸命直せばいいと思うんですが、仮に一番すばらしい場所になったとして、一体何のためにそれをするのかということをもう少し議論していただきたいなと。  極端に言うと、やはり世田谷にたまたま住んでいる人のためだけにというよりは、ちょっと今の涌井先生の意見ともかぶるところがあると思うんですけれども、むしろ地球の生態系とか、そういうものにきちんとしたお返しができるような、そういった暮らしの場といったものをつくっていかないと、単なる都民ファーストではないですけれども、区民ファーストになってしまうのかなという感じがちょっと気になっております。  2番目についてですが、具体的にどうなのかということですが、はっきり言えば、例えば福祉と予算制約の衝突とか、あるいは、福祉と防災との競合とか、そういうような非常に個々の縦割り計画が、答えられない問題にやはり基本計画は答えていただきたいなというふうに思います。  そういう意味で言いますと、さっき涌井先生がおっしゃったような、区全体の都市像みたいなものでしょうし、それから、それぞれの場所の問題点みたいなことですね。症状がどうなのかということをきちんとみんなでコンセンサスをつくって、その後で、どういうふうにやっていくかというのは、また個別の計画でもできると思うんですけれども、いずれにしても、基本計画のときでないとできないような大所高所の話をしていただきたいなというふうに思います。  特に、区しかできない役割というのは、やはり区民に義務を課すようなルールとか、いざとなれば、収用するような公共事業、こういうものは区しかできないので、そういうものをどうやってやるのかというのは、ここはぜひ基本計画に定めておくべきだと思いますし、逆に、今日もいろいろな議論がありました。自助をする、どこまで区民の責任で、負担でやらなければいけないのかというようなことも、やはりこういう場でないと議論できないので、していただきたいなというふうに思っております。  今、基本計画というのは、こういうことに答えてほしいということで申し上げたんですが、次に、それをあえて、3番目の紙ですけれども、じゃあ、私、恐らく環境の専門家ということなのでしょうから、環境分野に落とし込んでいってみますと、区の政策の目的としても、日本全体の自然の生態系の健全性の維持に役割を果たす、あるいは、地球の生態系の健全性の維持向上に、区なり区民の役割を果たすということは、はっきり書いていただきたいなと思いますし、そういった区民と環境との関係を、別に全部、世田谷区で解決できるわけではないのですが、言わば住宅都市の21世紀の見本となるようなものにするというような言い方だといいかなというふうに思います。  それから、涌井先生もおっしゃっていましたけれども、やっぱり地区ごとの都市像みたいなことで、ここは改めるべきだというようなことは、こういう機会に議論をしておいていただければありがたいと思います。  あと、やはり天変地異に対する災害です。そういう災害の人命の被害の最小化というようなことは、最優先だと思いますので、そういったところの予算措置は最優遇するというような方針を書いていただければと思います。  そのほか、例えば再生可能エネルギーの活用だとか、緑の導入とか、ごみ捨てやリサイクルなどについての個人の責任、そういったものは条例で定めることができますから、こういったローカルルールをしっかり鍛え上げていくというようなことも書いていただきたいなと個人的には思います。  ちょっと時間がなくなってしまったのですが、ぜひこの基本計画でなければできないことをお話ししていただければと思いました。  最後に1つだけ、頂いた資料の中で、基本計画のイメージみたいなものが大分出てきまして、すごくいいと思うんです。ワクワクするということで、自然環境にワクワクするような世田谷に住むんだというふうに書いてあって、とてもいいと思うんですが、ただ、順番が、最後にそれを価値に変えるというようなところが6番目の柱でこっちに出てくるといいますか、順番からすると、5番目と6番目は逆のほうが座りがいいかなと個人的には思いました。  いろいろ言いたいことはあったんですけれども、時間がなくてすみません。資料に書いてありますので、見ていただければと思います。  以上です。 【大杉会長】  ありがとうございます。  せっかくつながっていますので、そのままお二人の委員の先生に対して、何かコメントがあれば、引き続きいただければと思います。 【小林委員】  涌井先生の最後のところの発言しか聞けていなくて、ずっとコンピューターが落ちていたので、大変申し訳ございません。パネリストとして議論ができなくて申し訳ないです。 【大杉会長】  分かりました。  それでは、長山先生のほうから、二人に対してコメントをお願いします。 【長山委員】  都市像を明確にするというお話であったと思うんですけれども、下北沢、二子玉川、三軒茶屋、烏山と出ていて、私も何となくイメージはもちろん分かるんですけれども、三軒茶屋がこれからは面白いのではないかという話で、資料6-4に、三軒茶屋のミライの関連資料がありますが、三軒茶屋のミライを見て、涌井先生はどのように考えられたか教えていただければと思います。 【涌井委員】  まちづくりというのは、自分の敷地の中だけで、どうやって、そこにどういう建物を建てたらいいのかという、そういう発想が1つあります。  それから同時に、広域の中で自分のまちはどういう役割を果たしているのか、こういう捉え方があります。これは、その中では、非常に楽しい話だなと私は思っています。  ただ一方で、例えば今、どういう現実なのかというと、首都高の3号線というのは、雪が降ると一発で分かるんです。実は、除雪はできても排雪ができないんです。雪を片づけられない。もしもそのときに関東大震災が起きたときに、要するに、国幹道という国が管理する高速道路です、東名高速から首都高に乗り入れていると、一切上がれなくなる。首都高が渋滞状況で、つまり、雪が下ろせないということは、車も下ろせない。  そういうようなことを考えていくと、要するに、東京が天災の試練に遭ったとき、そのときにどういう救援のルートをどうやって開いていくのかあたりのことになりますと、そこの問題は非常に大きいんです。それは世田谷区民にとっても非常に大きなファクターになっていく。  それから同時に、あの頃、経済成長でガンガンやってしまったものですから、新玉線と首都高速の構造を一体化しているんです。だから、非常にこれは深刻なんです。どっちもいじれないという、上をいじったら、下もいじらなければいけない。下をいじったら、上もいじらないといけない、こういう構造に、極端なことを言えばなっているんです。  それでいて、木密は、三軒茶屋、もう車で私も何回も自分でチャレンジしているんですけれども、大体1回チャレンジするごとに1回傷がつきます。特にそれが笑ってしまうのは、世田谷消防署と警察の裏側は、なおひどい状況になっているというのが、何か不思議だなというように思うんですけれども、そういう状態であるわけですね。  三軒茶屋というのは、ある意味では、東京の大きな顔だと思うんです。大山街道と筏道、その他もろもろ。あそこをどういうふうにしていくのかというのは、私は世田谷が試されているところだと思っているんです。下北沢とは違う意味で、三軒茶屋というのは非常に世田谷のある種の個性を代表する場所でもある。そういう面で言えば、二子玉川とは全く違う。  二子玉川は、どちらかというと、ゲートウェイ都市みたいな、そういう意味合いでつくって、それで、ライズという、あれは、実は、私、精いっぱいの市民参加型の街をつくったわけです。実は公園なんですよ。区立の公園につながっていく、駅前から公園化したわけです。ですから、担保されているので、一々あれを潰すようなことはできない。あれを再開発して高層ビルにするようなことは、都市計画上できない仕掛けにしてあるわけです。  それでしかも、今、先生がおっしゃったように、皆さん、誤解するんです。ウォーカブルなまちづくりというのは、楽しく歩けるまちづくりという意味ではないんです。実は、全く知らない人がそこで出会って、すれ違うことによって、ケミストリーな関係ができて、クリエイティビティが生まれる。創造性というのは、こういう会議室の中から生まれるものではなくて、偶然な違う要素が、多様性が出会ったときに、そこに化学反応が起きて、そこにクリエイティビティが生まれるというのが非常に重要で、だから車ですれ違っても、何もクリエイティビティなど生まれないし、環境も悪くなるのだから、歩きやすい環境、まちづくりをすることによって、そこに新しい創造性ができて、新しいサービス産業の芽が芽生えてくる。これが典型的なのが下北沢だと思います。下北沢は、それこそ東日本大震災の後に、2003年に連続で立体にするというので計画が決まって、2008年から工事が始まった。2011年に3・11があって、今、その間をずっと見ていきますと、今どれほどあの辺で新しい出来事が起きているかというのは、驚くべき出来事が起きている。これはまさにウォーカブルな街をつくったというのが、結果としてはそういうアントレプレナー、インキュベーションになって、大きな機会になっているわけです。  世田谷はそういうようなクリエイティビティをどうやって起こすのかということがすごく大事で、先ほど私が言った都市像をどうつくるのかというのは、そういうクリエイションが起きるような都市像をどうやってつくっていくのかということとイコールだというふうに考えていただきたいと思います。  長くなりました。すみません。 【大杉会長】  よろしいですか。  逆に、涌井先生のほうからいかがでしょうか。お二人の先生に対して。 【涌井委員】  小林先生のおっしゃることは、非常にそのとおりだと思います。SDGsというのは、ゴールとよく言うんですけれども、何がゴールだと私は思っているんです。SDGsというのは、簡単に言うと、地球人としてわきまえなければいけないマナーブックの17項、それに169のお作法の詳細が書いてあるよというふうに理解すべきだと思います。つまり、もうそうやっていかなければ、持続的な未来はないんだということを、我々が危機感をどれだけ持てるのかという話で、バッジをつけていればいいというものではないというふうに考えているので、小林先生がおっしゃることは本当にそのとおりだというふうに思います。  それから、長山先生がおっしゃっていただいたアントレプレナーの話は、まさに日本の経済はこれからものづくりではなくて、ことづくりの方向へどうやって切り替わっていくかということだと思いますが、ソフト化経済というのは、ライフスタイルの中に眠っているので、それをどうやって増すように成長させていくかというところがすごく大事だと私は認識しているんですが、いかがですか。 【長山委員】  同じような意見です。 【大杉会長】  ありがとうございます。非常に貴重ないろいろな考え方、御意見が出されたかと思います。私も前の基本構想の段階で、歩いて楽しい街というようなことが入っていたんですが、ウォーカブルというようなところを、クリエイティビティということとつなげられたお話をはじめとして、長山先生の御意見、それから小林先生の御意見と全てつながってくる。都市像を明確にしていくという、やっぱりここは、世田谷区、ある意味で非常に難しいところでもあるかとは思っているんですが、そういう提起もいただきました。  時間が大分長時間やっている上に過ぎてしまって大変申し訳ないんですが、ぜひ御意見はいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。  はい、どうぞ。 【鈴木副会長】  小林先生の教育と防災との競合の難問に応える、その点だけ、教育と防災の競合というのは、どういうことをおっしゃっているのかということだけ教えていただけますか。 【小林委員】  具体的に言えば、例えば予算を介した競合というのはいくつもあると思うんです。それはどんなものについてもあると思います。  防災について言えば、例えば、分かりませんけれども、防災施設を造るとか、防災投資をするということで教育予算が入るというようなこともあり得る。ですから、そういう極端な、常にトレードオフがあるというものではありませんけれども、そういったことも応える必要があるかなというふうに思っています。  逆に、トレードオンもいっぱいあると思うんです。SDGsの中をよく見ますと、一方がよくなると、例えば教育はほとんどどんな目標にも貢献することができると思うので、そういう意味で、トレードオンもたくさんあります。ですから、そういうトレードオンとトレードオフを見て、そしてどういうふうな配分をするかというようなことを議論することは、縦割りではできないので、こういう基本計画の場で議論していただきたいと思います。  そうした中で、最後まで勝ち残るのは、やはり、ちょっと涌井先生もさっきおっしゃっていましたけれども、災害対策、これはどうしようもないというふうに思います。特に世田谷、東京都もそうですけれども、大都市はとても脆弱ですから、これについては相当事前に手配をしなければいけない。また教育の中でも、ほかのことを教えるべきかもしれませんけれども、防災の教育をしていただかないと、教育の時間は限られていますから、その中で何をやるかというのは、やはりどうしてもトレードオフが出てくる。そういう面も、予算以外にも時間的な配分でもあるかなというふうに思います。そんなところが、あえてそんなこともあるのではないかということで言っただけなので、あまり絶対競合するということではございません。すみません。 【大杉会長】  どうぞ。 【中村委員】  すみません。涌井委員に質問なんですが、先ほど、目指すべき都市像の中で、世田谷は4つの地区があって、3つのお話をしていただいて、烏山だけされていないので、それを聞かないと、ちょっと今日は眠れなくなってしまうかもしれない。ちょっと烏山のお話を教えてください。 【涌井委員】  私は、まず1つは、市街地農地、都市農地というのは非常に重要な存在だと思っているんです。それはこれからの食糧問題だとか、それから生命教育とか、そういう面で、いわゆるこのまちの中に農地があるというのは、新潟県に田んぼがあるのとはちょっと違う意味がある。とりわけ高齢者の方たちも、子どもたちも、やっぱりそういうリアルなものに触れるということが非常に重要で、私が今、一番自分で研究していて困っているのは、やっぱりスマホの問題だと思うんです。これからはデジタルトランスフォーメーションが起きれば起きるほど、言わばテクノストレス系の心療内科的生理疾患がどんどん出てくる可能性がある。私は振り子と同じように考えていて、デジタルに行けば行くほど、これをリアルに戻す必要がある。これで開放していかないと、結果としては非常に生理疾患になっていって、医者ではないんですが、いろいろなデータを見ていくと、そういうふうに思うんです。  したがって、都市農地が非常に重要だと。だからといって、不便でいいのかというと、そうではないだろうと。むしろアクセシビリティは、あそこは全然悪いんですよね。しかも、残念なことに、東京は、交通の体系が、全部丸の内、霞が関に行くように放射状に全部がつながっているんです。だから、横断的に行こうとすると、ものすごい時間がかかるんです。  だから、そういう面で、アクセシビリティをどうやって改善するのかということは非常に重要だし、それから、場合によると、防災でどこかが大きな被害を被ったときに、烏山のところで受皿になっていただくという可能性もあるのではないかという気もしないでもないので、そういう面で非常に重要な場所だというふうに考えています。  答えになっていますでしょうか。 【中村委員】  ありがとうございます。 【大杉会長】  ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。  今、防災の話も出まして、その前のコミュニティの話ともやっぱりつながってくるところですし、全て3つのテーマが非常にリンクしてきたところかなと思うんですけれども、すみません、ちょっと私の運営の不手際で、予定より時間をちょっとオーバーしてしまって、本当はまだ言いたいというような方もいらっしゃると思いますし、また、今日、本当に盛りだくさんな議論を皆さんに提供していただいたので、またそこから触発されて、本当はこれが言いたかったというようなことをまた思いついたり、夜眠れなくなったりするかもしれませんので、またぜひそれは、事務局のほうに御意見として出していただければというふうに思います。  この審議会もいよいよ大詰めになってきて、先ほど、事務局は大変高揚感があるのか、ワクワク、ワクワク、いっぱい書いてあるものを出されてきましたけれども、先ほど涌井先生のほうからは、立体的にもうちょっとつくったらという宿題も出されたようですので、そこら辺の、今日、このワクワクというようなことから、コモンであるとか、価値の創出、創造というようなところも導き出されてきたこともあろうかと思います。そうしたところを基軸にして、基本計画の骨格、もう一度改めて考えていくようにできればなというふうに思っています。  皆様、御協力いただきまして、ありがとうございます。  すみません。ちょっともう時間的に、ここ自体がそろそろ閉まってしまうという時間も迫ってきているようですので、最後に事務局、事務連絡をよろしくお願いします。 【真鍋副参事】  長い時間、ありがとうございました。  今、会長からもあったとおり、何かお気づきの点があれば、事務局までメール等で御連絡いただければと思います。  事務連絡ですが、議事録はいつもどおりの対応とさせてくださいという点が一点、もう1点が、次回、第6回は、2月6日、6時半からになります。こちらの会場を予定していますが、マイクの不足等、いろいろこちらの会場も不都合がございまして、もしかすると、こちらではないかもしれませんが、今の時点ではこちらを考えています。  事務連絡は以上です。 【大杉会長】  よろしいですか。  1点、確認ですけれども、次回はどういう段階に進むのかということを、簡単に一言だけ。 【真鍋副参事】  次回は、冒頭申し上げたとおり、基本計画の大綱のたたき台をお示しし、御意見をいただこうと思っています。今日、イメージをお示ししましたけれども、ここを少し文章化して、大綱のたたき台というような案をつくらせていただきます。こちらを基にしつつ、今日の御意見を踏まえてなんですけれども、先ほど何かお気づきの点がありましたら事務局までと言ったのは、大綱に載せる部分も含めて、少し具体の御意見があれば頂戴できればなというふうに思っています。 【大杉会長】  基本計画では、言ってみれば、施策レベル、事務事業レベルについての詳細を定めていくことになりますが、それをどういった考え方で、どういう方向性を持たせていくのかということを決めるのが、この審議会での我々の役割となっております。それをお伝えできる機会として言うと、もう次にたたき台に入るということは、今日の議論を踏まえて、ここだけはというところは、ぜひ事務局にお伝えいただきたいと思いますし、もちろんたたき台がそのまま案として確定するわけではないので、そこからも変えられるのですが、やはりたたき台をつくる段階の前に、ぜひ御意見がある場合は出していただければというふうに思います。  ということで、今日は大変長々と長時間お付き合いいただきまして、ありがとうございます。これで第5回の審議会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。お疲れさまでした。 ―― 了 ――