世田谷区基本構想シンポジウム 日時:平成25年6月29日(土) 午後1時 場所:世田谷区民会館ホール 午後1時開会 ○司会(望月基本構想・政策研究担当課長) 皆様、こんにちは。本日は、世田谷区基本構想シンポジウムにご参加いただきましてまことにありがとうございます。  私は、本日の司会を務めさせていただきます世田谷区基本構想・政策研究担当部担当課長の望月敬行と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、ただいまより世田谷区基本構想シンポジウムを始めさせていただきます。  本日のシンポジウムは、基本構想素案に対するパブリックコメントの一環として開催するものでございます。本日、お手元にこのようにお配りしております「区のおしらせ」特集号におきまして、昨日から来月18日までをパブリックコメントの期間として、区民の皆さんからのご意見を募集しております。本日ご来場いただきました皆様からのご意見も、パブリックコメントとして基本構想の策定に向けて活用させていただきます。  もう1点でございます。区の広報用として本日のシンポジウムの模様を撮影しております。撮影した写真や動画につきましては、「区のおしらせ」やホームページなどにおいて今後、掲載させていただきますので、ご承知おきください。  それでは初めに、世田谷区長、保坂展人よりご挨拶を申し上げます。(拍手) ○保坂区長 皆さん、こんにちは。世田谷区長、保坂展人です。今日は、この大変貴重な土曜日に基本構想シンポジウムにご参加をいただきましてありがとうございました。  世田谷区では、一昨年の暮れから20年後の世田谷区のビジョンを描いていく基本構想を策定するために、基本構想審議会に諮問をいたしまして、議論をしていただきました。大変熱の込もった議論で、3つの部会に分かれて相当長時間議論されたと聞いています。また、この間、無作為抽出の区民参加型ワークショップや意見提案・発表会なども行ってきました。そして、4月に森岡会長から基本構想審議会の答申をいただきました。皆さんの熱意を尊重いたしまして、また非常によくつくられた答申であったことから、これを世田谷区の素案にいたしまして、きのうから区民の皆さんにパブリックコメントを寄せていただく。また、こういった今日のシンポジウムを皮切りにタウンミーティングを開催しながら、大きく皆さんの意見をお聞きしていく。そして議会での議論をいただいた上で、秋に議決をしていただきたいというふうに考えております。  こちらの号外のほうがお手元に配られているかと思います。基本構想をわかりやすく記したものですが、今日限られた時間でありますが、この基本構想審議会答申並びに区の素案、そして区では基本計画ですね。今度10年越しの区の行政の指針となる基本計画の検討状況もつくっております。こうした最新の到達点を皆さんにお示しをしながら、大きく議論をしていくスタートラインにしたいと思います。  長時間になりますが、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手) ○司会 どうもありがとうございました。  それでは、引き続き、基調講演に移らせていただきます。  本日の講師をご紹介いたします。首都大学東京都市教養学部教授、宮台真司様です。(拍手)  宮台様は、社会学博士であり、映画批評家でもあります。教育論、外交論、文化論など幅広い著書があり、主な著書として「14歳からの社会学」「日本の難点」などがございます。世田谷区基本構想審議会では、会長職務代理として多大なるご尽力を賜りました。  本日は、「住民自治の確立をめざして」というテーマでお話をしていただきます。  それでは、宮台様、よろしくお願いいたします。(拍手) ○宮台氏 皆さん、こんにちは。楽しい週末にこのように多数お集まりいただきましたことに感謝申し上げたいと思います。今、ご紹介にあずかりましたとおり、世田谷区基本構想審議会の座長代理を務めてまいりました宮台真司と申します。  世田谷区基本構想は、20年後の未来に向けた区政の羅針盤です。日本には憲法と憲章の区別ができない方もいるのですけれども、基本構想は、世田谷区民がどんな理念や価値に従って世田谷区の行政を操縦するのかという指針で、憲法的な役割を目指したものです。  国連憲章がそうであるように、メンバー同士の参加目的の確認が憲章だとしますと、日本国憲法や合衆国憲法がそうであるように、市民が統治権力に何をさせるのかを記したものが憲法です。専門的に言えば、制限規範を前提にした授権規範ということになります。  基本構想にそうした性格を与えるために、区民参加の長時間のワークショップや意見・提案発表会の内容をも踏まえた上で、公募委員を含めた多数の基本構想審議会委員が、1年半もの時間をかけまして、場合によっては深夜にまで及ぶ徹底的な議論をした上で、この基本構想素案にこぎつけた次第でございます。  思えば、2年前の東日本大震災と原発事故は、任せて文句を言うだけのお任せ民主主義が我々の命を守らないという事実を明らかにしました。引き受けて考えることを旨とした参加民主主義へのシフトが求められているわけです。まさにそれゆえに、この基本構想への取り組みが開始されました。  私の役割は、今さわりを述べました基本構想素案の背後にある事実認識と価値意識を区民の皆様と改めて再確認する営み、これをサポートすることでございます。これから先、皆様が基本構想を読まれる際に、明確なイメージを抱けるようにするためのご案内だというふうにも言えます。  憲法におきましては、前文がとても重要な意味を持ちますが、今回の基本構想素案におきましても、この前文が非常に大切な意味を持っております。その一部を読ませていただきます。皆様のお手元にこのチラシがあるかと思います。第2段落以降、少し読ませていただきます。  少子高齢化によって、世田谷区でも人口構成が大きく変わり、単身・高齢者世帯がますます増えていきます。金融、労働、情報などのグローバル化が進み、地球資源の限界にも直面しています。かつてのような経済成長を前提とした社会の再来は望めず、格差や少子化、社会保障の維持などの課題に取り組むには、新たな発想が求められています。また東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、災害への日ごろの備えがきわめて重要で、緊急の課題であることをあらためて認識させただけでなく、一人ひとりの生き方や地域社会のあり方を見なおすきっかけとなりました。  こうした厳しい時代にあっても、先人から受け継いだ世田谷のみずとみどりに恵まれた住環境や、多様性を尊重してゆるやかに共存する文化・地域性は、子どもや若者の世代へ引き継いでいかなければなりません。多様な人材がネットワークをつくり、信頼関係に支えられてだれもが安心して暮らすことができる都市を築いていくことが必要です。  世田谷区はこのような考え方のもとで、基本構想として、今後の目標や理念を九つのビジョンにまとめました。これは今後20年間の公共的指針です。区民が主体的に公にかかわり、地域とのつながりをさらに深めていけば、自治はより確かなものになり、多くの課題を克服できると考えています。  この前文で書かれてあることの皆様の間でのシェア、共有を目的として、これから短い時間、お話をさせていただきます。よろしくお願いします。  まず第1に、非常時の常態化がキーワードになります。東日本大震災の後、地震学会や地質学会の認識が示されてまいりましたが、東海や東南海における巨大地震がいつ起こっても不思議ではない状況です。地震を忘れることができる平時は、とっくに今は昔になりました。  それだけではありません。グローバル化、すなわち人、物、金の自由化が進んで、産業構造改革を遂げない限りは新興国と競争せざるを得ない状態になりました。すると、必然的に、つまり不可避的に中間層の分解と共同体の空洞化が深刻化していくことになります。  その結果、ポジションを失った人々は鬱屈化し、あるいは将来不安におびえる方々が不安化いたします。かくして鬱屈した人々の溜飲を下げ、不安な人々に承認を与えるようなポピュリズムが議会制民主主義を支配しがちになります。  具体的に言えば、例えば外交問題についてはヘイトスピーカー、つまり外国人を口汚くののしる人々が蔓延し、内政問題についてもクレーマー、つまり私的利害を公共的だと叫ぶ人々が蔓延することになります。そして、それが政治や行政に影響を与えるという事態は、日本のみならず、今先進各国に生じております。  巨大震災へのおそれと暴走するポピュリズムへのおそれは、くしくも共通の処方箋によって初めて対処可能になります。それが参加と包摂です。実はもともと民主主義の本体は多数派政治ではなくて、参加と包摂です。多数決はいわば最後の手打ちにすぎません。  次に、今申し上げた参加と包摂のうちの参加というキーワードについて申し上げます。参加とは、引き受けて考えることです。参加民主主義という場合の参加です。参加の重大な意義は、フィクションの繭を破ることにあります。  先進諸国は原発推進国だらけです。しかし、絶対安全神話や全量再処理神話や原発安価神話のようなでたらめなフィクションをベースにした原発推進政策を続けてきたのは日本だけです。私はそれに気づいて、まさに原発推進論者である私自身が、日本に限っては原発推進はだめだというふうに意見をシフトさせたのが、震災の少し前のことです。  似た話ですけれども、先進国はどこでも、どんな電力会社からどんな電源を購入するのかを選べます。選ぶのは家庭であり、事業者であり、役所です。安いのを選ぶ人もいれば、原子力が好きな人は原発電源を選びます。ところが、日本だけは独占企業体からの強制購入でございまして、東電の巨大発電所が事故でポシャれば一巻の終わりというていたらくを示してきたわけです。  こうした日本だけのスペシャルな枠組みは、自分たちの社会がどのように回っているのかということについて、私たちが観察しないがゆえのフィクションの繭に支えられてきています。大震災は、こうしたフィクションの繭の恐ろしさを私たちに突きつけたわけです。  実は政治学の最先端では、こうしたフィクションの繭を破るには、情報公開と熟議が不可欠であることを示してきました。ちなみに熟議という言葉は、ようやく人口に膾炙しましたが、日本では誤解されています。じっくり話し合うという意味ではありません。特別な目的と仕組みに基づいた話し合いのことです。  具体的に言えば、あらかじめ存在する価値やイデオロギーの配置を前提にした数合わせではなくて、事実や価値についての気づきを目的とした討議です。さらに、それによって、例えば日本的審議会制度にありがちな行政官僚や背後にいる政治家が描いた事前のシナリオ、つまり、メンバーを決めた時点でシナリオが決まっているというやり方を排除するものです。  例えばヨーロッパで広がっているコンセンサス会議というやり方では、対立的な立場の専門家の意見や専門家同士の討議を市民が観察した上で、市民と専門家の間の質疑応答をも加えて科学の民主化を徹底して行った上で、最終的には専門家を排除して、市民だけが決定に参加します。  こうしたやり方を通じて、極端さや勇壮さを競うだけの、事実認識がでたらめなポピュリストの主張を無力化すると同時に、新しい事実や価値についての気づきを獲得して、まさに我々を構築するわけです。つまり、民主主義を通じて民主主義をバージョンアップしていく営みなんですね。  ちなみにこうした参加民主主義は、日本で言われがちな議会軽視ではありません。なぜならば、市民の熟議を経たフィクションの繭破りや事実や価値についての新たな気づきは、議会の討議の水準を圧倒的に上昇させ、例えば原発事故で面目を失うようなていたらくを回避できるからです。  続いて、参加と包摂という場合の包摂について申し上げたいと思います。  実証的なさまざまな研究が明らかにしているように、理不尽に噴き上がるヘイトスピーカーやクレーマーは、孤独ゆえに鬱屈や不安を抱えた存在です。彼らの意見が政治や行政に影響を与えないように無力化するだけでは問題が残ります。  そこで、鬱屈や不安を互いに緩和できるような人間関係の中へと彼らを包摂することが課題になります。実は熟議には地域の人間関係を再び顔の見えるものへと変化させ、カテゴリーに基づいたステレオタイプを解消させるという重大な目的もあるんです。  実は昨今のヘイトスピーカー―新大久保など、デモで話題になっている―のルーツは、関西での特権たたきです。とりわけ関西では、歴史的な経緯ゆえに、被差別者に対する分厚い特権が設けられてきました。その一部は、やがて行き過ぎたものになりましたが、それに過剰に噴き上がったのが、地域の経緯を知らない新住民あるいは新住民的ないわば孤立した存在でした。  一般によく知られていることですが、旧住民と新住民の分断があると、副作用をまき散らして、問題解決を困難にするような感情的噴き上がりが起こりがちになります。こうした政治学でよく知られた事実を踏まえることにも、実は政治学者を呼んだ上での熟議がとても役立つわけです。  また、日本人にも立派な人と浅ましい人がいるように、外国人にも立派な人もいれば、浅ましい人もいます。当たり前ですね。外国人との交流経験が豊かな人であれば、浅ましい日本人と立派な外国人のどちらが友人としてふさわしいか、もはや自明です。同じことは若者と年配者との間にも言えます。若者にも立派な人、浅ましい人、年配者にも立派な人、浅ましい人がいます。  地域の分断は、経験値の上昇を妨げることによって、勘違いのステレオタイプを蔓延させることになります。外国人はとか、最近の若者はとか。熟議には、交流経験を通じた経験値の上昇によって、外国人だから、日本人だから、老人だから、若者だからといった未熟な思い込みを緩和させるという重要な働きが期待されています。  前文にもございましたように、未来の豊かさに思いを託して、苦しみを我慢するという時代はとうに終わっています。これからは小さくなるパイを分け合って幸せにならなければいけない、そういう時代です。それには、私たちが住むのはこういう町だから、それじゃなくて、これが必要だといったような評価、当事者、住民による評価が不可欠です。  これは当事者意識を欠いた行政官僚にはできないし、まして霞が関の役人にはできません。全国一律基準やその受け売りは、リアリティを欠いたフィクションそのものです。参加によるフィクションの繭破りと包摂による地域の分断の克服なくしては地域住民の幸せはありません。これがこれからの摂理となります。  世田谷区基本構想は、こうした摂理を踏まえた世田谷区民が、参加と包摂を旨とした共同体自治を構築し、維持していくという重大な意思表明につながるものです。したがって、行政に対して意思表示をしたら終わりというものではなくて、まさしく今後の私たちの継続したかかわりが求められているということになります。  私からの話は以上です。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○司会 宮台様、ありがとうございました。皆様、いま1度盛大な拍手をお願いいたします。(拍手)  それでは、引き続きまして、基本構想素案等の概要のご説明と保坂区長による基本構想の策定の趣旨説明に移ります。  本日の資料として「区のおしらせ」特集号をお配りしております。これに基づきまして、世田谷区基本構想・政策研究担当部長、田中より概要を説明した後、保坂区長による策定の趣旨についてご説明いたします。  それでは、よろしくお願いいたします。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 基本構想・政策研究担当部長の田中と申します。  保坂区長から基本構想の検討に着手した背景とか、素案の趣旨等についてこの後、ご説明をさせていただきますけれども、それに先立ちまして、私からは素案の検討の経過と構成、そして基本計画の検討状況について簡単にご説明をさせていただきます。  初めに、検討の経過について申し上げます。  今から約1年半前の平成23年12月、第1回基本構想審議会が開催されまして、新たな基本構想の検討が始まりました。その後、答申が出された本年4月の審議会まで、審議会が8回、テーマ別に設置された3つの部会が延べ16回、文章の作成に当たる起草委員会が7回開催をされまして、熱心なご議論が行われてまいりました。特に各部会では、委員がご自分の所属される部会以外にも積極的に出席をされまして、具体的なテーマの1つ1つについて、中身の濃い議論をされたことは画期的だったと思います。  こちらは部会の議論の様子を写した写真でございます。  また、区の基本的な方向性を共有するための基本構想として、多くの方に関心を持っていただくことが目指す将来像の実現に向けた第一歩になると考えました。このため、審議過程の公開と区民参加に関してさまざまな取り組みをしてまいりました。先ほど区長からも少しご紹介をさせていただきました。  まず、審議過程の公開という点では、審議会やその部会を公開で行うとともに、会場にお越しになれない方のために、審議会の資料や議事録はもちろん、審議会の様子を撮影した動画もホームページからご覧いただけるようにいたしました。また、区民の皆様から意見をいただくに当たっては、これまで余り区政にかかわる機会をお持ちにならなかった方にもご参加をいただこうと、住民基本台帳から無作為で選ばせていただいた方によるワークショップを昨年6月に行ったほか、区民意見・提案発表会、区民アンケートなどを実施してまいりました。  こちらが、上のほうが区民ワークショップ、下のほうが区民意見・提案発表会のときの写真でございます。  こうしてお寄せいただきましたさまざまなご意見、ご提案は全て審議の参考とさせていただきました。非常に日程が厳しい中、審議会の委員の皆様にはご負担も大きかったと思いますが、こうしたプロセスを踏みながらいただいた答申をもとに、本日ご説明する区としての基本構想素案が作成されました。  それでは、基本構想素案の構成についてご説明をさせていただきます。  基本構想素案は、前文に当たる文章と九つのビジョン、そして実現に向けてという3つの部分から構成されています。この構成と文章表現のあり方も、審議会からのご提案による今回の素案の大きな特徴でございます。1人でも多くの区民の皆さんに自分たちのものとして読んでいただくため、できるだけわかりやすく、端的な表現を用いるように工夫された審議会の意向を尊重しています。  初めに、前文に当たる部分についてご説明いたします。先ほど宮台先生もご朗読をいただきましたところでございます。「区のおしらせ」の2ページに載っております。全体は4つの段落に分かれています。最初の段落では、区の歴史や地理的な特徴、地域性などについて、そして2段落目では、今日の世田谷を取り巻くグローバル化などの社会動向や、先ほどもお話のありました大きな影響を与えた東日本大震災などについて述べられています。そして3段落目では、将来像として引き継いでいくべき世田谷のよいところ、また今後目指す都市の姿などが、そして最後の4段落目で、この構想の意義や基本的な理念が書かれています。  現在の基本構想のような章立ての形式はとっておりませんで、一つながりの文章として読んでいただけるように構成をされています。  次に、九つのビジョンでございます。基本構想の中心となる部分であり、目標や理念をあらわしています。できるだけ具体的な表現となるように配慮をしながら、あえて番号は振らずに掲げております。これまでの構想に比べて数は多くなっておりますが、部会でのテーマ別の議論をベースに記述をしています。「区のおしらせ」では4ページから6ページに解説とともに掲載しています。  今ご説明した前文に当たる文章の内容と九つのビジョンの1つ1つについては、この後のパネルディスカッションの中で、このようにまとめられるまでの議論なども含め、もう少し詳しくご説明をさせていただく予定にしております。  最後が実現に向けてでございます。「区のおしらせ」の7ページにございます。区が基本構想の実現に向けて取り組むべきことをまとめて箇条書きにしてあります。主な内容としては、計画的な行政運営、客観的な評価、区民参加の促進、自治体としての自治権の拡充、持続可能な自治体経営、区外との協力というようなことが挙げられております。基本構想は、今日のシンポジウムや今後のタウンミーティングを初めといたしまして、パブリックコメントでお寄せいただくご意見などを踏まえまして、9月には最終案をまとめ、議会の議決をもって策定される予定になってございます。  次に、基本計画の検討状況についてご説明をいたします。基本計画は、基本構想の実現に向けた10年間の行政の計画で、行政の政策を総合的に体系化するものになります。この基本構想のもとで都市整備や保健福祉など、分野別の計画であるとか、実施計画などを策定いたしまして、具体的な事業を進めていくことになります。  その構成と今後の進め方について簡単にご説明をいたします。あちこちわたって恐縮です。「区のおしらせ」の8ページ、裏表紙に当たるところをご覧ください。基本計画は、基本的な考え方、計画策定の基本方針、重点政策、分野別政策、地域計画、実現の方策という構成を予定しており、資料では、それぞれの項目に盛り込む予定の内容について解説をしています。計画の柱立てなど、具体的な内容の検討はこれからですが、審議会からの答申をもとに、九つのビジョンの実現に向けた基本方針として、住民自治の確立、参加と社会的包摂、これは今、宮台先生がお話しいただいた内容ですけれども、あとは環境と調和した地域社会の実現、自治権の拡充と持続可能な自治体経営の推進という、この3点を全体を通す基本方針として挙げています。  基本計画は、今後、9月には政策の項目や項目ごとの取り組み例を含む素案を作成いたしまして、議会でのご議論やパブリックコメント、またもう1度タウンミーティングなどを開催しながら、来年3月の策定を目指してございます。  最後に、2つほどグラフをご覧いただこうと思います。区では、毎年世田谷区区民意識調査というのを実施しております。昨年5月から6月にかけて実施した調査では、基本構想について幾つか質問をさせていただきました。1つ目が、19年前に策定されました現在の基本構想の認知度でございます。「少し知っている」、「よく知っている」というのを合わせて「知っている」と答えた方は23.8%で、「今初めて知った」という方が73.9%と7割を超えております。少し残念な結果だなと思っています。  一方、新たな基本構想策定への関心度をお伺いした質問への回答がこちらでございます。「大いに関心がある」、「少し関心がある」を合わせて「関心がある」とお答えいただいた方が64.6%と6割を超えています。新たな構想の策定に向けては関心と期待を持っているのかなというふうに感じています。説明の最初でも申し上げましたが、基本構想で描く将来像を実現していくためには、多くの方に関心を持っていただくことが大切です。本日お集まりいただきました皆さんを初め、1人でも多くの方がこの素案をお読みになり、ご意見をお寄せいただけるようお願いをいたしまして、私からの説明は終わりにいたします。  続いて、基本構想の検討に着手した理由、またメッセージなどについて、保坂区長からお話をさせていただきます。区長、よろしくお願いいたします。(拍手) ○保坂区長 それでは、続きまして、ちょっとデッサン風に基本構想という今回の素案の中身、17年前の基本構想、現在ございます。新たにこれを立ち上げていく意味を皆さんと一緒に考えてみたいと思うんです。  あるアンケート調査を用意いたしました。これはリクルートが行ったみんなが住みたい町ランキング、3月、関東圏で3,000人に聞いたというアンケートの結果です。実はこれは冒頭に住みたい駅というランキングがありまして、これは断トツに吉祥寺なんですね。2位に恵比寿、3位に横浜、4位に目黒、5位鎌倉と入っていまして、この駅でいうと世田谷区は14位に二子玉川や22位に三軒茶屋、あるいは下北沢などが入っているということになります。ここでお見せしているのは、いわゆる行政市区ランキングというもので、ご覧のように1,115得点で世田谷区が圧倒的に1位になっています。  これは男性と女性を分けてみました。さあ、どうでしょうか。やはり男女とも世田谷区が1位、2位以下は男女でちょっと違うというふうになっています。  これはひとり住まい、シングルでどうかということで、やはりここでも男女とも世田谷区が1位ということになっています。  今度はファミリー層、これはどうかというと、やはり世田谷区が1位、これは男女とも2位鎌倉、3位目黒、4位港までは一緒なんですね。  別の調査も1つ見て見ましょう。これは東京のどこにでも家を建てられるならどこがいいですかという調査なんですが、これはちょっと母数が少なくて200人なんですが、やはりここでも1位が世田谷区、男性がちょっと高いですね、14%。そして女性のほうが11%ですか。平均すると12.5%という数字になっています。これを世田谷区の外でいろいろやっていると非常に嫌みなんですけれども、あえてやっぱり区民の皆さんだからこそ、1位というのはこれ以上はいかないわけですね。1位より上というのはないわけで、私たちはそんなものかいなというふうに思いがちなんですが、他の自治体の方は恐らく、1位の世田谷区というのはどこが魅力なのかな、どうして世田谷区というのは1位になるのかなということをきっと考えたり、ちょっと調べて分析してみようよというようなことを話しているだろうということで、多分この1位というのは、そんなに簡単に短い時間ででき上がったものではなく、今日お集まりの皆さんも含めて、長い時間をかけて住宅都市としての歴史を刻んできた。さまざまな文化あるいは商業や農業やさまざまな活動があった。その歩みの総和として、どうも世田谷区というのは、そういう意味でイメージとしての1位というものを保っているんだというふうに思います。  これはあくまでもイメージでありまして、では、私たちが抱えている現実はどうかというところを次に見たいと思います。  人口です。17年前の基本構想は、実は今年あたりは大体人口が75万人になっていると予想しておりました。予想は外れました。13万人ほど多い、現状だと88万9,526人、間もなく89万人、もしくはなかなか把握できない人もいらっしゃいますので、実際には90万人に到達しているのかもしれない。そのぐらいの人口増が顕著であります。  これは区の西のほうで、特に大きな緑を提供してきている農地やあるいはお屋敷、これが相続のときにどうしても相続税の問題で売却せざるを得ない、処分せざるを得ないということでマンションが建っていく。あるいは区内には社宅もたくさんございます。これまでありました。そういった社宅や公務員住宅などがやはり同じように処分されて、集合住宅に成りかわるということが大きな要因だったのかなと思いますし、比較的バブル前後の大変な価格から比べると約半分ということで、手が届く価格になった時期がこの時期だったかと思います。ここのところ、特に平成22年からのこの4年間は、階段のようにとんとんとんとんと人口がふえています。  これは0歳から5歳の人口なんですが、当然区の重点的な今の取り組みで待機児童解消の問題があります。見ていただくと、平成24年から25年のこの1年間で約1,000人、正確に言うと950人なんですが、子どもがふえております。実は人口がどのぐらいふえたのか、世田谷区は転入、そして転出が多い区です。ですから、入ってくる人、出てくる人、いろいろなんですが、差し引いて、最終的に5,400人が増えておりました。この5,400人のうち、ここにある5歳までの子どもの数が950人ということで、私もこのデータは大変びっくりしました。約2割であります。  これも平成22年ぐらいから見ていただくと、やはり大体1,000人ずつ、5歳までの子がぐいぐいぐいとふえているということになります。そして、平成19年などと比べると5,000人ぐらい人口が違うので、小学校に上がった子たちよりも、今ゼロ、1歳、生まれたてのお子さんの数のほうが多いということになっております。  待機児童の解消の問題で、区の保育園の整備目標などを今世田谷区にいる皆さんということで勘定をしていると、外からこうして子育てをするなら世田谷区でと考えていらっしゃる方の部分はなかなか読み切れないんですね。だけれども、そこを読み切れないとこの待機児の問題は解消しないので、これからはそれをしっかり見ていこうと。今年884人と過去最高だったんですけれども、来春までに1,550人ということで、今保育課のほうは、本当に総力を挙げて保育園整備をしています。  高齢者人口、65歳以上の方々の人口です。ずっと15万人台でした。24年まで15万人が、25年1月16万人という数になりました。団塊の世代が65歳以上になってきているということで、これからはこの階段もかなり急になるぞということが予想されています。  次のグラフでちょっと一緒に考えてみたいと思います。これが高齢者の世帯、これはちょっと数が抜けていて申しわけない。全部で11万5,000世帯ほどあるんですね。この中で、まず単独の世帯、ひとり暮らし世帯がどのぐらいかと申しますと、この35%、約4万世帯と言われています。そして、夫婦のみ世帯が大体3,200世帯と言われています。夫婦のみですから、合わせると10万人ちょっとということになります。そうすると、残ったその他の世帯というのは、夫婦だけではなくて、ご家族で暮らしている世帯ということになり、その中にいらっしゃる高齢者の人数は約6万人ということになりますが、この6万人の中に、お母さんが90歳、そして娘さんご夫婦が70歳という方も実は含まれています。ですから、寺内貫太郎一家とか、サザエさんのようなおじいちゃん、おばあちゃんとお互いに家族の中で呼んでいるような家族の中で過ごしている人たちのほうが、実はこれだけ少ないのかということで大変驚きました。と同時に、ひとり暮らしの方が容態に急変があったり、体調が急激に悪くなると危険です。高齢者のみのご夫婦の場合も、片方の方が倒れたりすると非常に弱ってしまいます。そういう意味で、地域の中で高齢の方が身近に余り人がいない状態の中で過ごしているということは、ぜひ念頭に置いておきたいなと思います。  やはり家族は物すごく大切なものだと私は思います。私自身も家族は大切にしていますし、家族ということにかわる価値はなかなか見出しがたいと思います。しかしながら、家族と別れたり、家族と離れたりして住んでいる方が高齢者に限ってもこれだけ多い。世田谷区全体は44万世帯ありますが、半分はひとり暮らしです。もちろん若い学生さんはアパートを借りて学校に通っているんでしょうけれども、しかし、そういう年代の若者だけではなくて、30代、40代、50代のひとり暮らしも多いので、そういう意味で、家族は大事だけれども、ひとりで暮らしていらっしゃる方にとっては地域家族、地域における家族的な役割、家族ではないけれども、友達以上のつき合い、つながりだよという部分のコミュニティが大変大事かと思います。  区民の意識調査を見てみたいと思います。これはもう圧倒的に3月11日以後、区が取り組むべき事業、第1位、災害に強いまちづくり56.4%、第2位、防犯、地域安全の対策44.6%になります。まさにここはしっかりやっていきましょうよという意識のあらわれかと思います。したがって、この基本構想審議会でも3月11日、あるいは原発事故、あの大変な危機の事態を決して忘れることなく、ここを逆にどうやって再生可能、修復可能なコミュニティをつくるのかということで議論が活発に進んだと受けとめています。  これは現在の基本計画の中にリーディングプロジェクトというのを掲げてあるんですけれども、そういうところで共感ができる取り組みはどれですかというアンケートをちょっと抜き出しました。身近で利用しやすい道路、交通環境の整備65.6%、誰もが町に足を運びたくなる安全、便利な歩行空間の整備61.6%、そして3位に子育て環境の向上57.8%、地域とともに子どもを育てる55.3%、町を快適に歩くあるいは移動するということと、子育てに優しい町ということが区民の共感を呼んでいるということがわかります。  こうした区民の要望と声を受けて、1年半の時間をかけて基本構想審議会が行われました。森岡会長、そしてこの文面は起草委員の方が本当に夜遅くまで議論しながらまとめてくれたんですが、この努力に敬意を払うとともに大変よくまとめられているということで、この答申案をそのまま区の案として、皆さんにパブリックコメントなどをいただきたいということで提出をしております。  なぜ今基本構想なんですかということについて入っていきたいと思います。  基本構想というのは、基本は、これは当たり前ですが、「おおもとの」という意味であって、構想は、「これからこうやっていこうということの考え」ということになります。現在の基本構想は、平成6年、1994年の秋に世田谷区議会で議決をされました。大変簡潔にまとまって、時代を先取りしたものだと私も思います。一方時代は、その直後から激しく動きました。明けて1995年1月、平成7年には阪神大震災がありました。3月には地下鉄サリン事件、それ以後ずっと言っていくと時間がなくなるので、まさに一昨年の東日本大震災、原発事故に至るまで激しく時代は動いてきたということになります。  この間何が変わったんだろうかというのを少し考えてみました。例えば宮台さんのお話にもありましたように、地球規模でヘッジファンドあるいは資本がダイナミックに、それこそ1秒もしないうちに移動して、1日のうちに株が乱高下するというようなグローバル社会になっています。一億総中流と言われた日本社会の、みんな中流だよという、そんな意識はなかなか難しくなって、中間層が分厚かったのが上下に引き剥がされて格差が広がったという問題があります。  東日本大震災、そして福島第一原発事故も契機になって、災害に対して備えよう。そして災害だけではなくて、ふだんの暮らし方を変えていかなければならないんではないか。また、地域の顔と顔が見える関係というのも非常に意識され出したと思います。  もう1つの特徴は、この間、日本は人口減少社会に入ったということです。2005年に2万人が減ったそうです。昨年はというと、22万人が減っています。つまり、日本列島の中で静かな収縮が始まっている、縮んでいるわけです。そういう社会に今入っているということ、そして、先ほど見たように、超高齢化、この波も否応なしにやってきています。家族の形もこう変容してくる。こうした中で、その家庭という中に見えなかった、例えば児童虐待の問題という、17年前にもありましたが、しかし、なかなか表に出なかった。障害者に対する虐待、あるいは高齢者に対する虐待、あるいはドメスティック・バイオレンス、それぞれあったと思います。しかし、そういう家庭の中のものを1つ1つ、やはり社会的な弱者、あるいは一方的な暴力ということは許してはならないんだということで、行政の仕事の中にも、家族という密室の中で万が一そういった暴力や生命、身体への危機に直面をした人たちを救うという役割も新たに生まれてきています。  そして、高齢化の進展とともに、地域コミュニティの担い手、やはり高齢化をしていっています。これは先ほどの写真で見せた無作為抽出型のワークショップで、20代の方から、40代、50代、そして70代と、一つのグループで大体6人ぐらいなんですが、朝10時から夕方5時まで話していただきました。皆さん、感想はどうですかと言ったら、これはおもしろかったと皆さん言われます。つまり、異世代で、違う世代でこれだけ長い時間、同じ世田谷に住んで、直面して話してとても楽しかったよと。ですから、地域にコミュニティカフェのようなものをつくろうじゃないかと。今までだとつくってくださいだったんですが、私たちがつくりたいと思うと。それに対して行政も条件を整えてくれるように一緒に走ってくれと、そんな意見が飛び出してきたのも印象的でした。  また、日本全国に現在、空き家、空き室が総務省の統計で757万件ございます。大変な数です。日本全体の住宅は5,759万件ですから、13%が空き家、空き室。世田谷区の場合、この調査だと3万5,000が空き家、空き室と言われています。一戸建てで6,000、それ以外が集合住宅ということになろうかと思いますけれども、この傾向はこれから続くだろうと。ここをコミュニティの機能回復のために使えないだろうかということで、現在、空き家活用のためのモデルプロジェクトというものを募集したりもしています。  今回の基本構想では、これまでの基本構想になかった3つのポイントがあります。1つは、阪神大震災、東日本大震災という大きな災害を挟んで、防災、減災、そして町がよみがえっていく復元力、この点で新しい言及があります。そして2番目に、子どもや若者たちをひとつながりで支えていこう、そこにも力を入れていくということがございます。そして地球環境、エネルギーの問題、これは原発事故を繰り返さずに再生可能エネルギーも大いに活用しながら、暮らしのあり方、これも転換をしていこうというような内容になっています。  この3つを見ると、例えばみどり33という運動を世田谷区はやっています。みどり率を33%まで持っていこうという取り組みなんですが、このみどり33の大きな要素はやはり農地なんですね。先ほど人口増のところでも言いました。この農地のことで言うと、今日も等々力の玉川総合支所で等々力朝市というのをやっていまして、たくさんの方が並んでいらっしゃいました。年に2回朝市、とれたての野菜だよということで、全部で200人ぐらいいらっしゃったでしょうか。世田谷ならではの光景でありますけれども、年々農地は減っていってしまっているということがあります。  こうした点から見ると、ふだんの食を提供してくれている農地は、いざ大地が揺れたときに命のスペースになるよということは、東日本大震災で非常に多くの方が実感したところであります。また、ふだんはその畑でできる新鮮な野菜、そういうものを育てたり、あるいは調理していく。子どもたちがそこに直面するという食育という機会にもなりますよねと。3つの要素はいろんな組み合わせがあるなと。今農業というのは1つの例でしたけれども、そんなことを考えました。  従来からあった基本構想、ここも膨らましがあります。現在の基本構想は人間尊重のまちづくりということを言っていますが、今回の基本構想の素案では、この中で個人の尊重、多様性の尊重、人と人とのつながり、さまざまな形でのマイノリティ、その社会的な包摂を持って、差別とか迫害ではなくて、お互いが承認し、支え合う、そういう社会へということだと思います。そして区民自治の確立、この区民自治の確立も区民が主体的に参加をして、自治を確立していく。宮台さんのお話にもありましたけれども、区民が行政に対してリクエストを出すだけではなくて、むしろ区民のすぐれた構想力、実行力で地域の単位で、例えば福祉事業について、あるいはさまざまな自然エネルギーのプロジェクトや子育て支援でもいいです。そういったことについて、自分たちのことは自分たちで決めるという部分が強調されているかと思います。  基本構想の位置づけは、先ほど田中担当部長が言ったとおり、公共的指針というふうにうたっています。この世田谷区だけではなくて、世田谷区の一員である区民の皆さんや事業者の皆さんも一体として、全ての世田谷区、区民、事業者で共有する公の目標なんですよと。  そして自治、これは自分たちのことは自分たちで解決するということが原点で、全員参加でこの基本構想の実現を目指していこうというのが大きな位置づけになります。  基本理念、こちらは区民が主体的にかかわる、区だけが公を担うのではなく、これは誤解があるといけないんですが、当然区は公のことはやっていくわけです。ただ、高齢化率が非常に高くなり、子どももどんどんふえていくという中で、無限に区役所の職員をどんどん増員することはできません。やはり地域の中で区民の参加による公共サービス、自分たちのことを自分でしていくという仕組みをつくっていくということがあろうかと思います。  そして自治体としての権限を広げる。サザエさんの問題で大分お叱りを受けました。税金を掛けるなと。これは申しわけないですが、固定資産税は東京都なんですね。これは二重に申しわけないですが、本来、90万規模の自治体であれば、固定資産税、法人税など、ちゃんと課税自主権があって、税を課して、この税源でいろんな事業をしていくということがあってしかるべきなんですね。しかし、23区という制度の中で、こういった問題はまだ課題を大きく残しています。ですから、自治権の拡充ということを、7つの県より大きい特別区なんですよということを何回か私も言ったんですが、言っているうちにこれは本当におかしいなと思うようになってきています。7つの県、実は佐賀、鳥取、島根、徳島、高知、そして福井、山梨より大きいというのが現在の世田谷区であります。  将来像、世田谷区の財産を守り育て、子どもや若者の世代に引き継いでいく。緑豊かな住環境や住民が主体的に、これは本当に緑道などすばらしい財産を私たちの先輩は残してくれました。こういうものを子どもたちにさらに発展型で残していきたいということであります。  そして、将来像の2番目に多様性を尊重して緩やかに共存する社会をつくる。ここも自分らしく暮らすことができる。互いに認め合って、違いは違いで認め合っていく。そしてともに助け合って暮らしていくというような理念が書かれています。  これから基本計画というものをこの基本構想の策定と同時に世田谷区ではつくっていくことになります。10年間の行政プランということになります。この柱がこの3つ、「住民自治の確立―参加と社会的包摂―」。参加と社会的包摂については宮台さんからもお話があったとおりです。「環境と調和した地域社会の実現」、そして「自治権の拡充と持続可能な自治体経営の推進」。持続可能な自治体経営、当然、財政基盤がしっかりしているということが大事です。  以上がこの世田谷区基本構想及び基本計画の検討状況についての説明、デッサンでありました。世田谷区の全てのことを語っていません。ちょっと特徴的な数字とか、アンケート、こういったものを見ていただく中でこれからの報告を聞いていただけたらと思います。  ご清聴どうもありがとうございました。(拍手) ○司会 ありがとうございました。  それでは、これより10分間の休憩に入ります。パネルディスカッションは14時15分開始の予定でございます。  なお、本日お渡しした資料の中にこのような意見交換用の意見・質問用紙が入っております。ただいまのご説明、あとこの後のパネルディスカッションの内容についてのご意見、ご質問は、この用紙で受け付けいたします。パネルディスカッションの前と後の休憩時間に係員が回収いたしますので、よろしくお願いします。  それでは、休憩に入ります。 午後2時3分休憩 午後2時15分再開 ○司会 それでは、ただいまよりパネルディスカッションを始めさせていただきます。  「20年後の世田谷の姿」をテーマに、基本構想審議会の会長を初め基本構想審議会委員の皆様と区長により進めていただきます。  パネリストを紹介いたします。  世田谷区基本構想審議会会長、放送大学教授、森岡C志様です。(拍手)  首都大学東京都市教養学部教授、宮台真司様です。(拍手)  共同通信編集委員兼ニュースセンター整理部委員、竹田昌弘様です。(拍手)  東洋大学社会学部教授、森田明美様です。(拍手)  明治大学理工学部教授、小林正美様です。(拍手)  基本構想審議会区民委員、永井ふみ様です。(拍手)  世田谷区長、保坂展人でございます。(拍手)  世田谷区基本構想・政策研究担当部長、田中文子です。(拍手)  これより進行は田中部長により行います。よろしくお願いいたします。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 それでは、パネルディスカッションを始めたいと思います。  ただいまご紹介をさせていただきましたように、ここでは審議会で委員をお務めくださった方々にご参加をいただきまして、「区のおしらせ」の文章だけではお伝えし切れなかったことも含めて素案の内容をご説明いただきながら、意見交換でより深めていければというふうに考えておりますので、皆様、どうぞよろしくお願いをいたします。  それでは初めに、審議会の会長として大変ご苦労されながら答申をまとめてくださった森岡先生から、審議会の運営を通してお感じになったことなども含めながら、前文に当たる部分と、それから九つのビジョンの1つ目にある「個人を尊重し〜」というビジョンについてご説明いただきたいと思います。  森岡先生、どうぞよろしくお願いいたします。 ○森岡氏 皆さん、こんにちは。審議会の会長を務めました森岡でございます。  4月18日に基本構想審議会の答申を区長にお渡しすることができまして、今幾らかほっとしているところでございます。先ほどからの区長、また部長のご説明にもありましたように、それまでの期間、さまざまな機会を通して、多くの区民の方々から貴重なご意見をいただきました。また、審議会、それから3つの部会でも委員の方々から積極的なご発言をたくさんいただきました。改めて感謝申し上げます。  その意見は実に多様でありまして、かつ1つ1つが有意義でありました。こうした意見をどのようにして集約して、基本構想としてまとめていくのか、この点が最も大きな問題でございました。おかげさまで基本構想の前文、それから九つのビジョンとともに大変簡潔な文章にまとめることができましたけれども、ここまでまとめるにはそれなりの苦労もございました。できるだけ読みやすい文章にするために表現を工夫する必要もありました。2カ月たちまして読み返してみますと、なかなか読みやすい構想に仕上がっているなと改めて自画自賛しておりますけれども、同時に何げなく読み進んでしまう1文1文の背後に、審議会や部会、そして起草委員会での議論の積み重ねがあることや、表には出ていませんけれども、その表現に至るまでの検討の積み重ねがあることを思い起こします。  前文につきましては、既に区長からもご説明がありましたし、また宮台さんの講演でも、その中心部分、核心部分に触れていただいておりますから、それに呼応しながら、かつ重ならないように少し感想を申し上げたいと思いますが、文章としては、前文では表立って書かれていませんけれども、重視した視点や思いといったものが幾つかございました。それらの思いが込められたものとして、一見するとさりげなく書かれている前文が成立していると私は思っています。  本日のシンポジウムのテーマの住民自治の確立にかかわることで、自治の前提とも言えることに結びつく、そうした思いがございます。それは、大都市のこの世田谷の生活の中で、私たちが当たり前だと思っている暮らし方を見直す必要があるという思いであります。前文では、「新たな発想が求められています」とか、「一人ひとりの生き方や地域社会のあり方を見なおすきっかけ」などと表現されています。これをもっと正直に、また今申し上げた思いに絡めて申し上げますと、区民一人ひとりの自立、そして行政依存からの脱却という表現が一番ストレートな表現になろうかと思います。要するに、自立、つまりみずから引き受けて関与していく、かかわっていくこと、それから行政サービスの依存から脱却することでございます。私たちは知らないうちに行政サービスに深く依存してしまっています。それを見直していくこと、そういう点を区民の方々に求めたいということになるわけでございますが、そのようにあからさまに表現してしまいますと、おせっかいで、図々しくて、何か区民の方々に指図をしているように受けとめられかねません。うんと表現をやわらかくしていった結果、ある意味無難な現在の、先ほどちょっと引用いたしましたような前文の表現になったというわけでございます。  自立や依存からの脱却とともに重視したのは、これと密接に関連いたしますけれども、参加、社会的包摂、格差の縮小という3つの視点でございます。参加と包摂については、既に宮台さんの非常に丁寧な、かつ核心に触れた説明がございました。参加はともかくとしまして、社会的包摂や格差の縮小という言葉は、ふだん私たちが聞きなれている言葉ではありません。このため、前文ではこの言葉を用いる場合には、少し丁寧な説明が必要になります。ただ、そういたしますと、簡潔に短くまとめたい前文がどうしても長くなってしまいます。いろいろ工夫はいたしましたけれども、結局うまくいきませんで、これらの言葉の趣旨あるいは込められた思いというものは、九つのビジョンの説明の中でできるだけそこに溶け込ませるという工夫をいたしました。また、一部は基本計画大綱の中の、先ほど区長のご説明にありましたが、基本方針に生かすことにいたしました。  参加も包摂につきましても、そうした言葉は、既に今日の講演で十分に説明されておりますから、これ以上申し上げることはないように思います。一言だけつけ加えるとすると、社会的包摂という言葉と格差の縮小というこの2つの言葉は、今後、本格化する超高齢社会の中でますます重要になるということだけつけ加えておきたいと思います。高齢者層には、ほかの年齢層に比べますと、結果の不平等とでも言うべきものがより顕著にあらわれます。豊かな高齢者と貧困に苦しむ高齢者の格差が拡大します。そのことが結果として、社会全体の格差の拡大を導くということになっていきます。  また、同時に、ひとり暮らしの高齢者がこれからどんどんその量と割合を増加させていきますが、こうしたひとり暮らしの高齢者の人々を孤立させない、あるいは災害弱者や交通弱者として放置しない仕組み、つまり社会的包摂の仕組みづくり、そうしたものの必要性がますます高まっていきます。  さまざまな事情で、前文で明確には語っていませんけれども、そこに込められた視点や思いは、現実の社会の中で相互に連動し合って出現する事象に深くかかわることでもあるということを申し上げておきます。  次に、九つのビジョンにつきまして最初に申し上げたいことは、今回の答申ではあえて順位をつけなかったという点でございます。理由は簡単でございます。これが基本だと言えるビジョンは含まれておりますけれども、順位をつけることができない、つまりビジョンとしての優位性では同列だとみなさざるを得ない、そういうビジョンが多いということであります。例えば2番目に挙がっておりますビジョン「子ども・若者が住みやすいまち、住みたいまちをつくる」、それから3番目の「健康で安心して暮らしていける基盤を確かなものにする」、4番目の「災害に強く、復元力を持つまちをつくる」、この3つのビジョンを比べてみてください。いずれも同じように重要であって、そう簡単に順位をつけられるものではありません。区民の方々もそれぞれの立場によって、それぞれのポジションによって想定する順位がかなり異なってくるということも十分に考えられます。そうした理由から、九つのビジョンはあえて順位づけをせず、いわば並列的な位置づけになっているということになります。  ただ、一番最初に掲げました「個人を尊重し、人と人とのつながりを大切にする」というこのビジョンだけは、最も基本的で最も重要なビジョンという意味で特別扱いをしてもよいように思います。このビジョンには、個人が価値の源泉であるということ、世田谷区民一人ひとりという意味での個人の可能性を最大限に生かすために行政があるんだということ、そういう理念が込められております。そしてさらに、さまざまな立場の、さまざまな属性の、また多数派になれない、それゆえに弱い立場にならざるを得ない人々の人権を守る社会をこの世田谷につくるんだという強い決意を述べるものでもあります。「多様性を認め合い、自分らしく暮らせる」という表現は、このことを実は示しています。同時に、個人は1人だけで生きているわけではありません。さまざまな人とのつながりの中で生きている存在ですから、そのようなつながりを大切にできる社会であることも必要です。1番目のビジョンには、そういう意味で、ほかの8つのビジョンを支える基本的ビジョンという役割が与えられています。  ちょうど与えられた時間になったようでございますので、次は、森田先生、よろしくお願いいたします。 ○森田氏 私は社会福祉を専門にしております。今回、今日の柱の中では2つの柱について、私からお話をさせていただきます。  皆さんのお手元に資料がございます、九つのビジョンの中で、今会長からお話がありました、2つ目と3つ目の項目になります。  まず、「子ども・若者が住みやすいまち、住みたいまちをつくる」という、この下のほうにありますのは、なかなか発言する機会が与えられない子どもたちから今回たくさんの意見をもらう場を設定いたしました。この区民参加、いろんな形で今回の長期構想のところで行ってきたという報告が先ほどありましたけれども、その中の1つの柱として、子どもたちの参加もさまざまな形で行ってきた。区長との対話もありましたし、子どもたちが夏休みなんかでいろいろ書いてくれた資料は、皆さんのお手元にちょうどありますが、この緑色の冊子になって配付されておりますので、ぜひご覧いただけたらと思います。  ちょうど子どもたちが今10歳前後ぐらいで例えばこれを書いてくれたとしますと、20年後というのは、この子たちがまさに世田谷区の中心的な住民としての役割を担うことになりますので、この人たちが一体今何を感じ、そしてこれからどういう役割を担っていくのかということをぜひ一緒に考えてみたかったというのが、この今回の長期構想の中での大きな特徴だというふうに思っております。そんな形で意見をいただきながら、この構想をつくってまいりました。  第1の構想をここで書いてございますけれども、この一番大きな特徴というのは、まず若者という視点をこの中で明確にしたということだと思います。通常の場合だと、ここでは子どもが住みたい町とか、そういった子育て家庭が住みたい町とかとなってくるわけですが、世田谷区の場合に、やはり今いろいろな形で中心になってもらわなければいけない若者たちがいまひとつ元気がない。ここの部分をどういうふうに区民として、この一員としての参画を求めていくのかということについてかなり中心的な議論をしてまいりました。  そして、ここの中では下のほうにございますけれども、この子どもたちや若者たち、そしてその親たちが住みやすい町であると同時に、この人たちを応援すると同時に、一番下のところにありますが、NPOや区民たちによる、こういった人たちと一緒に子どもや若者、子育て家庭が一緒になって活躍していくという視点をつくり出しています。  それから、次の項目の「健康で安心して暮らしていける基盤を確かなものにする」、この議論の中ですごく中心になってきましたのは、100歳まで皆さんに元気でこの世田谷区の中で活躍していただきたい、こんな議論をよくいたしました。その中で、見ていただきますと、特に世田谷区は大変市民活動が盛んな町です。これを20年後もぜひ続けたい。例えば今60歳の方は80歳、80歳の方は100歳になられるわけですので、そこまでとにかく世田谷区の中での中心的な活動を区民が担っていくということ、こういう視点でやりたいということなんですね。  これは下のほうに、フロアに張ってあった図なんですけれども、ちょうど永井さんがうちの部会で描いてくださったものですが、これのちょうど上のほうを見ていただくと、世田谷区はこの20年間に何が一番変わるかというと、やっぱり家族が変わる。もう今もかなり変わり始めていますけれども、結局20年後というのは、今潜在化している問題が物すごく顕在化してくるというのが20年間なんですね。ですから、そこの中でどう暮らしていくのか、今あるこのよいところをもっと生かしながら、これから出てくる課題にどう対応していくのか、こんな議論をずっとしてきました。その中で一番大きなことというのは、やはり市民主体であるということ、ここをとても大事にしたわけです。  これは世田谷区の―細かくてよく見えないんですが、見えなくていいんですね。これぐらい実はたくさんの計画がこの2つの項目の中を支えているということだけを見ておいてくださればいいんです。これは世田谷区の、物すごくたくさんの計画の図です。  この図を支えるために世田谷区がいろんな事業を行っています。そのときに、世田谷区の強みというのは、先ほど市民が非常に多くの力を持っているということをお話しいたしましたけれども、それ以上にここの中でいうと、下のほうにありますが、例えば世田谷区の中で小学校というのがありますけれども、具体的には小学校というのは一体どういう地域の中でのポジションにこれから変わっていくんだろうとか、あるいはとてもおもしろかった議論は、例えばこれからの世田谷区の中で、高齢世帯が非常に増えていく中で、具体的にロボットが介護するのか、例えば外国人がお手伝いに来てくださるのか、あるいは家族の中でやるのか、こんな議論もかなりいたしました。恐らく私たち社会福祉の領域では、この20年間で、多分日本はロボットがたくさんの介護を担う社会になっていくだろうという議論はもう当たり前に行われているわけですが、そんな議論もいたしました。つまり、そういった人たちが入ってくることによって、家族がどう変わり、暮らしがどう変わっていくかという議論を真剣にしたということです。  そういった中で、私たちがどんな社会をつくり出していくかという議論です。1つは、非常に大きな視点として、やはりやり直しのできる社会でなければならない。恐らくいろいろなことがこれから起きていくんでしょうけれども、そういう中で、家族が変容し、社会が変容し、そして社会を支える仕組みも変わっていったときに、恐らくやり直しができるということは非常に大きな視点だろうというふうに思う。そのやり直しを家族が支える時代から、やはり社会の中で支える時代に変わっていく。そんなことを私たちは話させていただきました。  たくさんの計画に支えられ、そしてよき市民に支えられて、そして世田谷区の中で安心して私たちは100歳まで生きることができる、そんな社会を私たちは目標に、市民活動と一緒にこの暮らしを十分な豊かなものにしたいというふうに持ったということです。  以上です。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。今2つ目と3つ目をあわせて森田先生からご説明をいただきましたけれども、それでは、引き続いて、4つ目の災害に強くというところから、環境、産業、それから文化・芸術・スポーツ、そしてより住みやすく歩いて楽しいまちというこの5つの項目について、小林先生と永井さんからまとめてご説明をお願いいたします。 ○小林氏 それでは、私と永井さん、一緒に全ての部会に参加させていただいて、横断的にいろいろ見させていただきましたので、ちょっと私のほうで幾つか区からいただいたデータをもとに、世田谷全体でどのような分布で人が住んでいて暮らしているかというところをちょっと先に見ていただいてから、具体的なビジョンのお話をしたいと思います。  これは世田谷区の全体の地形を示していますが、全体には武蔵野台地があって、それから多摩川の流域の河川敷で、水域としては多摩川の水域と目黒川に流れていく蛇崩川、経堂のあたりの引き込みのところですね。真ん中に分水嶺が走っていると。国分寺崖線も有名ですけれども、これが実は時々出てくる南北交通を遮っている大きな理由だったり、あるいは自転車道を計画するときに、かなり南北が厳しくて、東西のほうの交通のほうが滑らかだというような、全体の人がどういうところに住んで暮らしているかということのかなり根本のところに地形があるということがまずわかってきました。  それで、これは緑生図、ちょっと見にくいですけれども、今みどり33という目標を掲げているにもかかわらず、関東大震災以降とそれから戦後の宅地化ということで、緑が圧倒的に宅地化してしまって、この多摩川のあたり、あるいは砧公園のあたりにしか、農地もありますけれども、20数%まで減ってしまっている。  まず、先ほど保坂区長からご紹介があった、4万人ぐらいの未就学児がどのあたりに住んでいるかというと、全般的に分散しているんですけれども、段々やはり西のほうに増えているということがわかってまいります。  これは公立の幼稚園あるいは保育園との分布ですけれども、例えば下北沢のあたりでは、もう人口は減っているんですが、施設は多くて、逆に西のほうでは、段々人口は増えているにもかかわらず、まだ足りていないということもわかります。  これが小学生の分布です。小学生の分布は、やはり東のほうから段々西のほうに少し、増え方も西のほうがふえているという統計が出ておりまして、それに対して小学校の分布はどうかといいますと、やはり最初のころに人口が多かった東側に多くて西のほうがまだ少し足りていない。ですから、どちらかというと、行政区界のところで非常に近いところもありますけれども、西のほうがこれからまだ建設をしなくてはいけない状況もあるし、逆に東側では、先ほど森田先生のお話にありましたけれども、小学校を1つのコアとして新しい防災ユニットといいますか、あるいはコミュニティユニットを考えるときの非常に重要なポイントになるので、この小学校の配置というのはこれからすごく大事な要素になるというふうに思います。  ティーンになりますと、全体に分散しておりますが、20代になると、極端にこちらの三軒茶屋とか下北沢の東側に集中しているんですね。20代の方は余り西部のほうには住んでおられないと、これは極端に出てまいりました。30代になりますと、先ほどの未就学児の母親、父親の方が段々西のほうにふえてきて、40代になると、ほぼ全域に分布している。50代もほぼ一緒です。これが意外だったんですけれども、65歳以上の、先ほど16万人の方々は実は割と東部のほうに住んでおられる方が多いと。ただ、先ほどの独居老人、おひとりの方がこの中に四、五万人いるということですね。その方々が安全に暮らせるためにどうするかということは、非常に大きな課題です。  これは鉄道以外にバスがどう分布して走っているかという図なんですが、これをもとに、ちょっと見にくいですけれども、バス停から200メートルの円、駅から500メートルの円、これが一応歩いて暮らしやすいところとすると、交通不便地という言い方があるんですが、こういうところが出てくるんですね。それを65歳の方々の分布と重ねてみると、例えばこういう経堂の少し南のあたりの方々は、陸の孤島と言っては言い過ぎですけれども、非常に交通不便なところに住んでおられるということがわかります。こういうところも優先的にやはり考えていかなければいけない。  次に、自転車道のネットワークですけれども、先ほどの地形のところでお話ししましたが、実は南北が余りよくつながっていません。それで、やはり東西のほうは平地があるために割とつながっているんですけれども、環状7号線、8号線というのは無理やり通した道なので、自転車道のネットワークというのはまだまだこれから―私は都市整備方針の委員会に入っていますけれども、今考えているところです。  それから、文化施設です。ギャラリー、ホール、文化財、これも今までの人口分布に合わせて駅周りのところにかなり集中しているんですが、西部のほうの住宅地の中には非常に希薄であるということで、これからの時代のこういう配置というのも、小さい単位でもいいと思いますけれども、考えるべきポイントです。  図書館、これはもう1人の審議会委員の永井先生もおっしゃっていましたが、90万人の自治体の中にこれしかないのは圧倒的に少な過ぎると。先ほどの文化のほうでも音楽ホールも少ないのも実は僕は問題だと思っていますが、これは暮らしている地域の中にもっと小さな単位でもつくっていかなければいけないんじゃないかと私は思っております。  それから、スポーツ施設は、逆に土地が余りない密集地のほうには余りなくて、どちらかというと多摩川沿いにあるわけですけれども、逆に言うと、こういう三軒茶屋とか下北沢には民間のアスレチックジムとか、そういうところが補完をしているという関係があるんですね。しかし、行政としてはもっとしっかりとやっぱりスポーツ施設というのを考えていただかなくてはいけない。  最後ですけれども、これは卸売業、小売業、いわゆる商店街の配置を見ますと、これから商店街は新しい地域の拠点ということで今回も入っていますが、実はやっぱり駅周りにかなり多くて、その住宅地の中にはないので、私は実は新産業というのはこういうところの中に、大学と連携しながら、新しい産業も実は起こしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。  では、ここから3つ、まず永井さんにお願いしたいと思います。 ○永井氏 こんにちは。公募区民として1年半基本構想審議会に携わらせていただきました永井と申します。よろしくお願いします。  私は、まさに区長さんが情報提供されていた未就学児2人を連れて2年半前に引っ越してきて、さらに保育園にも入れて働いているような、典型的な転入住民といいますか、そういう立場の者です。  ただ、やはり世田谷区になぜ転入してきたかというと、大学からずっと世田谷のまちづくりにかかわっておりまして、とても愛着のある町ということで今ここに座らせていただいていると考えています。ですので、一区民として、できるだけこの審議会では自らの体験をもとに発言することを心がけてきました。そのような立場で、災害に強いまちづくりと環境に配慮したまちをつくる、職住近接が可能なまちにするという3つを私からご紹介させていただければと思っています。  まず、「災害に強く、復元力を持つまちをつくる」というところでは、防災の専門をされている先生からも情報提供があって、非常に印象的だったのが、宮台先生もおっしゃっていた非常時の常態化ということだと思うんですが、災害のことだけを思って、そのときに備えるというだけではなくて、日々楽しく、歩いて地域の人たちとつながりをつくりながら暮らしていくということが、最終的には強い防災につながり、コミュニティづくりにつながるというようなお話がありました。歩くということは、町の特徴を自ら知ったり、あと危険なポイントをしっかり把握したり、また地域の人としっかり知り合っていくということが生まれるというお話を伺いました。  私も小学校を拠点にして防災を進めていくということが非常に重要だと発言もしたんですけれども、やはり小学校という地域の拠点、避難場所、一時避難場所になっている場所で、町会・自治会の方などが一生懸命防災訓練を学校と連携してやっていらっしゃる実績というのもあると思います。そんな中でいかに独居老人の方など災害弱者を把握していくのかという話もありました。また、地域の中で商店街も安心安全のコミュニティのかなめになる場所だという話も出ていました。地域のコミュニティで自助努力、共助でしっかり災害に強いまちづくりを行っていけるといい。また、区民意識調査で半分以上の方が一番興味、関心を持っていらっしゃる分野だということなので、幅広く区民参加とかコミュニティづくりを進めていく上で、災害に強いまちづくりというのをきっかけ、一歩として進めていければいいのではないかと思っています。  その際に、やはり地域のコアとして小学校での取り組みをしっかり生かしていきたいというようなことですとか、地域の人と顔を合わせながら暮らし、働いていく、職住近接、あるいはエネルギーの地産地消の拠点としてもというようなキーワードが出てきていました。特に災害弱者という方々にしっかり手を差し伸べることができるように、地域のコミュニティづくりを進めていくということですとか、そのような暮らし方というものを実現していければいいなと考えています。  「環境に配慮したまちをつくる」というところでは、大量消費を前提とした上での省エネルギー、エネルギーを省いていくという発想ではなくて、私たち自身が知恵を絞り、技術を使って無理なく小さなエネルギーでの暮らしやライフスタイルを目指していくことが非常に重要だという話になりました。そのために、地域ぐるみで楽しく暮らしに小エネルギーのライフスタイルを取り入れて、みんなが担い手になっていけるような普及啓発といいますか、教育というものをみんなで広げていくことが大切かなという話をしました。  また、エネルギーの地産地消をやはり進めていって、地球に優しいエネルギーをみんなで使っていこう、生み出していこうというような話もしました。個人としては、私はほとんど自転車も車も使わず歩いているんですけれども、車をできるだけ使わず、歩いたり、自転車を使って暮らしていけるような都市の構造、自転車のネットワークも非常に重要ですし、今ある農地も含めた武蔵野の豊かな緑の風景をしっかり守っていくということが非常に重要だと思います。  次に、「地域を支える産業を育み、職住近接が可能なまちにする」という段です。世田谷には本当にさまざまな魅力があると思います。商店街のにぎわいや都会とは思えない、私のふるさとを思うような農の風景、寺町ですとか、若者の創作意欲をかき立てるような下北沢の町とか、すてきな二子玉川の新しい町というのもあると思います。イベントもとても盛んだと思います。このような幅広い魅力を生かして、働く舞台として、産業を生み出していく舞台としての世田谷もどんどん大切に伸ばしていけるといいなと思います。それを支える人として、シニア世代や若者、また大学や子育て中で、余り従来だったら働けない方というのも、担い手としてなっていけるんじゃないかと思います。  そういったときに、身近な商店街ですとか、資源を生かした町なか観光の取り組みやまさに職住近接ということで、私もちょっと働き方を変えて、今かなり自宅で作業をしていたりするんですけれども、職住近接になって、やはり非常に子どもとの時間や家での時間というのが充実するようになりました。そういう意味でも、子育てをしながら働くことがキーワードとして出ましたけれども、ライフワークバランスなどもみんなで考えて、世田谷でも産業を生み出していければいいと思います。  また、私も含めかわかりませんけれども、今の若い方々はいかに地域に貢献する中で自己実現をするかというところに価値を見出す方がふえているというのも1つあると思います。そういう中で、ソーシャルビジネスとか、技術や文化も掛け合わせて新しい価値を生み出していくような創造的産業というのも、この世田谷では、大学もありますし、非常に可能性があって、実現していきたいですねというような話もありました。  ちょっと模造紙に隠れちゃったんですけれども、ライフワークバランスというところで、今こういう経済状況の中で結婚が難しい、妊娠することも難しい、出産も難しい、保育所に入れるのも難しいというような、子どもを産んで育てて、自分も働いて、年老いて死んでいくというのをすること自体が非常に難しい時代かなと思います。そういう中で、ライフワークバランスという言葉をもう1度問い直して、職住近接が可能なまちというのを考えていけるといいかなと思います。  では、小林先生にかわります。 ○小林氏 それでは、次の2つを私が。「文化・芸術・スポーツの活動をサポート、発信する」というところで議論が出たポイントは、やはり今回震災以降のつながりを考える意味では、スポーツというのは非常にお互いを知ったり、あるいは高齢者の方と若い人が知り合う、やっぱり一番可能性の高い日常行為だろうということで、コミュニティをつくるときの1つのつながる要素と考えようと。それから、人間形成ですね。多大なる影響を与える。それをどういうところでやっていくかということなんですけれども、スポーツ空間というのをやはり確保していかなければいけない。1つは、生徒数が減っている小学校というのは、スポーツや文化の1つの拠点になるだろうということを随分議論いたしました。先ほど見ていただいた地図でもわかりますように、大きな公的施設はやっぱり少ないですね。ですから、もっと地域、地域に根差した、誰でも参加しやすいような文化だとか、芸術だとか、そういったものの拠点として、1つは、小学校を考えるということはいいんじゃないかという議論がありました。それから、先ほど森田先生に紹介していただいた中学生の文章にもありましたけれども、いろんなお祭りを20年後もちゃんと続けていきたいとか、そういったこともありますので、今までずっと引き継いできたものを若い人たちに引き継いでいくということも非常に大きなポイントです。  私の最後ですけれども、「より住みやすく歩いて楽しいまちにする」というところでどういう議論があったかといいますと、やはり緑が少なくなっているんですけれども、実は23区、ほかと比べると、僕は圧倒的に緑が多い区だと思いますし、それから、70年代、80年代に住民参加のまちづくりとか、景観あるいは地域風景資産とか、区が取り組んでこられたことも非常に今重要な資産になっているわけですね。ところが、先ほどの地形の話でもありましたように、南北は移動がしづらいということがあります。  これは、僕は20年後の世田谷をグリーンコンパクトシティを目指すべきだろうというふうに思っているんですが、高齢者の方々も地域の中で歩いて暮らせるような、スプロールと言うんですが、今までのんべんだらりと広がってしまった宅地ではなくて、やはり農地は農地として残しながら、ちゃんとコンパクトなまちづくりをすべきだろうというような議論をしてきました。  それがこういう文書になりましたけれども、今までしっかりと世田谷区はやってきたということ、それから先ほどの公共交通が足りていない部分があります。それから、商店街と文化施設などをうまくつないでいく。それから、先ほど区長のお話にあった空き家、空き室などを生かして、住まい方、核家族ではないような住まい方もあるだろう、あるいは風景、町並み、それを皆さんと一緒に、区民が一緒に都市をデザインして提案していく、そういう新しいまちづくりをしましょうというような議論をいたしました。  時間をちょっと超えたかもしれませんが、私どもの発表をこれで終わります。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは、引き続きまして、最後の9番目、区民参加のところを竹田さんからよろしくお願いいたします。 ○竹田氏 最後になりますけれども、これまでの8つは基本的な政策のビジョンですが、9つ目はそれらを実現するための区政の運営とか、あるいは手続に関するビジョンを挙げています。  先ほどの宮台先生の講演にあったように、いわゆる参加と包摂、あるいは引き受けて考える、フィクションの繭を破る、あるいは地域分断の克服、こういうものはこれからの日本社会の大きな課題であるという考え方のもとに、それに向かって世田谷区政をどのように運営すべきかということを考えていきました。  ここにあるように、情報公開とか、これも非常に重要なタームなんですけれども、最も重要なキーワードは無作為という言葉です。スライドにあるようなワークショップ、昨年の6月に開かれたワークショップ、これは住民基本台帳からくじで選ばれた有権者が区政に関する意見を述べられました。区長を初め、とても参考になったと感想を述べられていた方がたくさんいらっしゃいました。手を挙げて主張する人たちではなく、引き受けて考える人たちだったというふうに思います。  無作為という点では、今裁判員裁判というのが行われております。この中にもしかすると裁判員を経験された方がおられるかもわかりませんけれども、各地の裁判所で裁判員の皆さんは裁判という仕事を引き受けて、そして考えて、そして公を担われているわけです。  裁判もあるいは政治も同じなんでしょうけれども、正しいかどうかは、要は神のみぞ知るであります。昔は、神様や国王あるいは皇帝、日本では天皇あるいは将軍が政治や裁判をやっておりました。彼らのやることは正しいというフィクションのもとで社会が動いていたわけです。民主主義の社会においては、やっぱり主権者、有権者が投票するとか、あるいは引き受けて考える、直接参加するということによって、主体的に公にかかわる。それはきっと政治や裁判の正当性が保たれるんだと、それによって要は政治の正当性が保たれるんだと。そういうコンセプトがこの9つ目のビジョンに込められています。  以上です。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  これで前文に当たる文章のところから九つのビジョンについてのこれまでの部会の検討なども含めた委員の方々からのご説明が終わりになったわけですので、ここからは少しフリーでお話をいただければというふうに思うんですけれども、今日のシンポジウムのテーマは、「住民自治の確立をめざして」ということでさせていただいております。宮台先生のご講演を初めとして、これまでの説明の中でも、世田谷にいらっしゃる人材とか、知恵を生かしていくというようなこと、それからコミュニティづくりをしていくということ、そして区民の主体的な参加ということが、それぞれ九つのビジョンの説明の中でも共通するものとして出てきたかなというふうに思っております。  先ほど宮台先生のご講演の中でも、お任せ民主主義からの脱却とか、参加と熟議なんていうこともお話がありました。森岡先生からもありました。世田谷区は割と区民参加のまちづくりなんかがこれまでも行われていて、区民の皆さんの中にもかなり実績がもうあるかなというふうにも思いますけれども、さらにこの辺を深めていくために、具体的にどんなふうに進めていけばいいのかということについて何かアドバイスがあれば、宮台先生、いかがでしょうか。 ○宮台氏 昨年、中国に行ったときに、中国のタクシーの運転手さんたちの話を結構聞いたんですが、今中国で物すごい格差が広がっていますが、しかし、例えば3年から5年で所得が倍になるという高度成長が続いていたので、何とかなるというふうにして我慢してこれたというふうに言っているんですね。これは一般に格差が耐えられないということではなくて、将来が明るければ耐えられるんですけれども、将来が暗くなると耐えられないものになるということで、現在の中国は高度経済成長時代が終わろうとしていて、生産人口減少を含めた低成長の始まりが各地の暴動とも連動しているというふうに僕は理解をしています。  これはもちろん人ごとではなくて、いち早く高度経済成長時代が終わってしまったこの日本の実は課題です。しかし、課題であることが意識されてこなかったんです。その象徴的な例が幸福度調査の結果です。日本は幸福度調査が75位から95位ぐらいの間を低迷している状態です。日本がかつて経済的に元気であった時代であっても、実は幸福度は非常に低かったんですね。現在、GDPでいえば、個人別のGDPは残念ながら20位、あるいはそれ以下に恐らく今落ちていると思いますが、しかし、国別ではそれでも第3位ぐらいに位置しているはずなんですが、幸福度は見る影もないんですね。  もう1つデータを言いますと、将来、成長が解決してくれるはずだという恐らく前提があったんでしょうが、例えばGDPに占める教育費の割合もOECD加盟国中圧倒的に最下位です。国レベルで言えば、国家予算に占める社会保障費の割合も最下位です。今後、高度経済成長が問題を解決してくれる可能性がないところでこの数字は、はっきり言ってスキャンダルだというふうに言わざるを得ません。  このような今申し上げた幸福度から教育費の割合、社会保障費の割合を含めた厳然たるこの数値が、今後20年間、放っておけば、僕たちを恐らく地獄に突き落とすだろうというふうに想像されます。厳然たる数字がそのことを示しているのです。さらに、OECD加盟国関連のデータでいうと、何としてでも親の死に目に会いたいという人々の数は日本が恐らく最も少ない状況です。これは日、米、中の調査ですと、圧倒的に日本が少ないのです。そのほか、家族のきずなを示すデータも日本がOECD加盟国中ほぼ最下位に近いような状態を低迷しているのです。  物事はいち早く手を打ったほうが傷が深くなくて済むんです。今でも既にある程度傷が深いところに達しつつあるのですけれども、世田谷は人口上昇がまだ続いて、しかも所得水準あるいは区政の中に占める住民税との割合、特別区の中で比較してもまだ相当にいいポジションなんですね。今のうちにという言い方もちょっと不遜な言い方で、いろんな区の方もいらっしゃると思いますけれども、今のはちょっとやめましょう。ひどくならないうちに、僕たちが将来あり得るかもしれない悲劇を回避するべく、自分たちでやっぱり考えていくしかないんですね。  知識社会というキーワードを私は申し上げたいんですが、知恵がないと切り抜けられなくなります。知恵というのは無限の資源ではありませんので、知恵をいかに集約するのかというところで、人材の徹底した有効利用が必要になります。その意味でも、実は参加がとても重要です。参加すればするほど多くのアイデアを集約することができます。以前のように、全国一律基準で、上からの天下り式に降ってきたアイデアに乗っかって我々が幸せになれる可能性は全くありませんので、その意味で、実は単なる余裕のある政策的選択肢ということではなくて、僕たちがやっぱり幸せになるためには、参加によってフィクションを破り、なおかつ知恵を徹底的に集約した上で、僕たちの幸いにとって必要な枠組みをつくり上げていくということが必要だというふうに思います。  以上です。(拍手) ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。先ほど森岡会長のお話の中でも格差の拡大ということがあり包摂の仕組みがより重要になってくるんだというお話がありました。今の宮台先生のお話もそういうところと共通するところがあって、そのためには何としても自分たちで考える、参加というものが必要なんだというようなご意見があったかなと思います。  区民参加というようなことで言うとどうでしょうか。永井さん、区民参加ということではいろいろと経験もお持ちかなと思いますけれども、区民の立場から、区政を初め自分たちの地域のことに参加していくというようなことに何かご意見があればお願いします。 ○永井氏 区民としてこういう場に参加者として参加するということは、実は全く初めてな経験でした。改めてどういうふうにしてみんなそれぞれ、お忙しかったり、生活がある中で参加を進めていくんだろうと自分自身に問いかけたときに、私が感じているのは、やはり私個人としては、地域の担い手としての自分というのは、子どもとともに育っているなという感覚が非常にあります。結婚して2人で住んでいたときは、全く地域とのかかわりというものはありませんでしたし、昼夜逆転みたいな生活を続けていたので、地域の方とは全く接点もなかったというような状況でした。子どもが生まれると、全然知らない人がかわいいですねみたいなことで声をかけてくれたりとか、お母さん、大変ねとか、助けましょうかということで、地域の人のありがたみというのをすごく身にしみて感じるようになります。  今は一番上の子が小学校に上がりました。そんな中で、学校にかかわったりしていくと、また違う視界が開けてきまして、やっぱり地域が主体となってやらなければ解決できない問題があるなというふうに感じているところです。1つは、やはり防災の話です。世田谷の小学校は、今年度から全部地域運営学校になったというふうに聞いています。そんな中でかわかりませんけれども、うちの子が通っている小学校も、これまで学校は学校で子どもを対象に防災訓練をしていました。地域と学校で大人だけで避難所運営訓練をしていた。そういう状況だったのが、今年は1日で、子どもから、地域の方から、消防団の方、区の方も皆さんで集まられて学校開放、地域の保護者、私たちが参加できる日に防災訓練をされていました。私もこういうところで、先ほど申し上げたようなビジョンを皆さんとまとめたところだったので、ぜひ行ってみようということで行きましたらば、やはりやられていることは非常にすばらしくて、ぜひこのまましっかり進めていっていただければいいなと思ったことはあるんです。  そこで感じた限界というのは、やはり学校が主体ですと、安全上の問題とかで一般の方が外から見ていて、参加したいというふうに思っていても、やはり安全確保の問題などで参加させることができないというような、ちょっと細かい話ですけれども、そんな限界がありました。もしこれが地域主体で、楽しい防災イベントとして開かれていたならば、一般住民の方も広く参加できたでしょうし、実際保護者の参加というのはすごく少なくて、ふらっと来ていたのは、お手伝いさん以外には私と数名だったりしたんですけれども、もっと家族ぐるみで参加して、家族でも防災の話ができたりとか、地域で防災の話ができたりとか、消防団の方とつながったり、消防団へのスカウトがあったりというような展開につながっていくんじゃないかなと思いました。ちょっと細かい具体的な話から入って申しわけなかったんですけれども、皆さん、地域にかかわられている中で、地域でしかできないことにやはり知恵を絞って、みんなで楽しく取り組んでいけることが一歩かなと思って、私も地域の担い手として、よちよち歩きですけれども、そういうふうに思っています。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございます。やはり地域につながるきっかけというのは、お子さんを通してという方も非常に多くいらっしゃって、そうした中でも、地域が今後主体になることでより間口が広がるんじゃないかというのは非常に重要なご提言かなと思いました。  それにも関連するんですけれども、森田先生、学校にいるうちは何となく地域とのつながりを持ちやすいということもあると思うんですけれども、これまでだと若者のところになると、なかなかそういうことが難しいというようなことも言われていたと思います。先ほど森田先生のご説明の中で、若者というのが入ったことが今回1つの大きな特徴というようなお話がありましたけれども、やっぱり20年後の基本構想ということで、それを担う若者たちを、私たちが次の世代をどう育てていくのかというようなところで何かご意見があればお願いします。 ○森田氏 今回の議論の中で、年齢を串刺しして議論してみる。今まで福祉というのも、大人と子どもであったり、あるいは対象別に分かれている議論というのはたくさんされていて、先ほどもご紹介したように、膨大な計画がこの世田谷区の中であるわけですけれども、それを串刺しにして考えてみるといったときに、やっぱり非常に重要なのは、年齢でずっと世田谷区の中で育っていったときに、1つは、若者期が非常に貧困になっているということの中で、住み続けられない世田谷という問題がやっぱり発生しているわけですね。それは1つは、高齢世帯の初老と老人みたいな形の生活が今あるとすると、20年後には老老になってしまう。そういうところを若者たちがもっとやはり世田谷の中で自立した経済力を持ち、そしてこの中で新しい生活を、あるいは新しい家族を育てていけるような、そんな町にしないとこの町が続かないという、やっぱり非常に厳しい危機感みたいなものが部会の中では議論されていたわけです。  そこで、具体的には世田谷の中には、先ほどもお話ししたように、今非常に市民力豊かな市民活動があるわけですね。例えば成年後見にしても、見守り活動にしても、世田谷発、あるいはチャイルドラインみたいな子どもの電話相談だとかというようなものもあります。こういった市民活動に、ある意味では世田谷区のイメージがそこに引きずられているということもあるんですね。本当のことを言えば、やっぱり90万人近い住民がいるわけですから、例えば5地区を分けてみると、1つずつなければいけないようなものが1つしかない。だから、先ほど世田谷区の地図を描くとどうしても西のほうが足りないという状況というのはあったわけですね。子育て家庭にとっても、子どもにとっても、やっぱり西のほうが、課題はたくさん抱えやすいのにサービスが少ないという問題があります。だから、それは若者にとっても同じで、若者は今まで家族を支えるとか、自活していく存在として位置づけられたものが、やっぱり家族で支え切れなかったり、自分自身ではどうにもできない社会状況の中で苦しんでいる若者たちはいっぱいいるわけです。そこにやはり世代を超えて、例えば今会社をリタイアした方とか、あるいは事業主であった方たちとか、そういった方たちがもっと若者世代と力を合わせて、世田谷の中での新しい文化活動やさまざまな商工の事業だとかというようなものも起こせたらいいんじゃないかというような議論をさまざまにしました。  幸いなことに、今年の4月からは若者支援担当課も世田谷区はできましたので、そういったところとも協力し合いながら、保護される対象というよりは、やはりこの世田谷の中で新しい事業を多世代あるいは異世代が協力し合えるような関係性の中で、例えば福祉も射程に入れながら事業を起こしていく。そんな新しい取り組みの中で自立的な仕組みができていったらいいんじゃないかという、これはかなり具体的な議論がなされて、その中で大学とか、あるいはさまざまな事業者の方たちとかというのがかんでいけたら、非常におもしろい20年間というのが展開できるんじゃないかという議論になりました。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 家族の変容というようなことも先ほどもお話に出ていましたけれども、そういう中で、若者を保護の対象とするのではなくて、多世代の協力の中で自立を支えていくというようなご提言かなと思います。ありがとうございます。  残念ながら、このディスカッションの時間がもうほとんど残っていないことになってしまいましたので、最後、まとめる意味で、会長にちょっとお話をいただければと思います。こうしたいろんな議論から審議会からご提言をいただいて、区のほうに今これが託されたということになるわけですけれども、グローバル化とかいう中で、いろいろ分業みたいなものが進んでいく中で、そうはいっても、人々の暮らしというのは、地域に根差した、決して縦割りではない。そういうところで、だからこそ私たち身近な自治体として果たさなければいけない役割みたいなのがあると思うんですけれど、こうした中で基礎的自治体としての世田谷区がぜひこういう役割をというようなことが何かあればお願いします。 ○森岡氏 3つぐらい考えたんですけれども、1つは、これは住民の側と行政の側、両方に求められることですが、要するに参加を進めるしかないだろうということなんですね。この間無作為抽出型の新しい参加のやり方を模索いたしましたけれども、あれは私は大変びっくりしました。やっぱり世田谷区民の方々のレベルは非常に高いなと思いました。それから、作為がない抽出で選ばれた、ふだんから集会とか、多分こういうシンポジウムにほとんど出席されないような、参加されないような方々が出てこられて活発に議論された。大変貴重な経験であったわけです。ですから、そういう参加の新しい仕組みや仕掛けをどんどんつくっていくということがこれからの行政にまず第一に求められることだと思います。  2番目は、住民の側に求められることで、先ほど行政サービスの依存からの脱却と言いましたけれども、行政サービスにはある程度はというか、かなりの程度は依存せざるを得ない。依存しないと都市の生活は営めないんですね。例えばし尿の処理、飲料水の供給という基本的な問題1つとりましても、これは村落のように、個別に井戸を掘ったり、個別に便所に穴を掘ってし尿をためるというわけにはいきませんから、そんなことしたら町じゅう穴ぼこだらけになってしまいますから、とてもできない。江戸時代のときから、江戸のような100万都市の時代から、共同の便所をつくり、その廃棄物、し尿を近郊の農民たちがとりに来る。それをとりに来るために行政側、領主と言いますか、為政者の側はあらかじめ細かく水路をつくるということをやっていました。それから人口密集地域の下町に、神田上水とか玉川上水と言われている上水道、あの時代からもう既に水道をつくって、地下を掘って木のくだを通していたわけです。そういうふうに大がかりな装置は江戸のときから行政がつくっていました。そういう部分は依存せざるを得ない。だけれども、依存しなくていいところまで私たちは今依存してしまっています。  それは、本来は住民たちの共通、共同の問題なんだけれども、自分たちでは処理できなくて、行政に頼んだんだけれども、いつの間にか自分たちの問題が行政の問題であるようになってしまいました。本来は自分たちの共同の、あるいは共通の問題であったはずなのです。つまり、住民の側がこれは公共の問題なのか、共の問題なのか、私の問題なのかと自分たちで判断していくことが求められています。共の問題であれば、できるだけ自分たちで処理できないかどうかを考える。あるいはここの部分は行政に任せるけれども、ここの部分は俺たちがするよというような枠を住民の側でつくっていく。そういう参加の仕方というものがこれから必要になってきます。それが私はやっぱり新しい参加だと思うし、同時にそれは都市の生活の仕方というものを私たち自身が見直していくということにつながるんだろうというふうに思っております。  最後の3点目は、行政の内部のいわゆる縦割りをできるだけやめていくということです。要するに、行政サービスのコミュニティ化が必要だということなんですね。このことは余りくどくど申し上げませんけれども、一応3点だけ気づいたことを申し上げました。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは、時間が来てしまいましたので、最後に、今のお話を受けて、区長からまとめをお願いいたします。 ○保坂区長 お聞きしていまして、やはり基本構想のこの前文と九つのビジョン、本当に長い議論の中でつくられたんだなということが改めてよくわかりました。  先ほど私のデッサンで申し上げたように、日本は今1年で22万人の人口が減っていくという、ぎゅっぎゅっと縮んでいくという社会にもう入っています。超高齢化社会、こういう中で世田谷区が局所的、幾つかの区もそうです。世田谷区だけではありませんけれども、しかし、日本中どこを見ても余りないぐらい人口の増加と子ども人口のとりわけの増加、そして高齢化はやはり大きくなっていくという、ちょっと全国的には異なる状況を今の時期に迎えているわけです。今のうちに手を打つということを宮台さんがおっしゃいましたけれども、もしここで、世田谷区でかなり難しい、高齢の方が非常に増え、この中でひとり暮らしの方も相当の数になり、そして、小さな子どもたちを持つ子育て家庭も、それぞれ地域のつながりがない中で転入してきたりしますから、そういうときにどうやってこの行政需要を満たしながら、これで暮らしていけるねというふうにいわば社会を復元するということができるかということ、今この基本構想とか基本計画で考えている問題というのは、日本がこの先どうなるのかということとかなり奥のほうで結びついているように私は感じています。  社会が複雑化していき、そしてこれまで地域を支えていたコミュニティが少し弱くなってきていますよね。典型的なのが子どもの声がうるさいという苦情の問題です。これだけいわば子育ての支援ということでたくさん保育園をつくるという、これで現在も計画、プランを進めているわけですが、最大の障害で実は声についての、これは許容できないという方がいらっしゃるときに、事業者は撤退するケースも結構あるんですね。では、その子どもの声、次の世代の遊び声とか、泣き声とか、その声をどうやって、例えば高齢でひとり暮らしの方と、その保育園あるいは幼稚園とつなげられないんだろうかと。つなげるためには、多分コミュニティの復元力を橋渡しするような何かが必要なんだろうと。それは多分行政の仕事で、先ほど森岡会長が縦割りと言いましたけれども、まさに先ほどちょっと私が触れたように、児童虐待、ドメスティック・バイオレンス、高齢者虐待、障害者虐待、それぞれ実はやっている担当課は少しずつ違うわけです。そうすると、一番よくないのは、1つの家に幾つかの問題が発生したとすると、お互い知らずに取り組んでいるということも起き得るわけですね。  ですから、この世田谷のような大きな人口を抱えて、そして無作為抽出で区民の方に話し合っていただくと、もっと力を尽くすよと、工夫するよと、だから、そういうチャンスをつくりたいんだと言われていたことが忘れられないんですが、そういう力で、行政がきちっと住民の方がお互いがつながっていく、そして安心してその難題を乗り越えていくという条件をつくれるように、この基本構想、基本計画で一方踏み出せたらいいなということを感じました。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  少し時間が超過いたしましたけれども、これでパネルディスカッションの意見交換のところは終了させていただきたいと思います。  休憩を挟みまして、今度会場からいただいた質問にお答えする時間をとりたいと思いますので、またパネリストの皆様にはお戻りいただければと思います。  それでは、休憩にさせていただきます。 ○司会 それでは、10分間の休憩に入りたいと思います。スケジュールよりも少し変更しまして、15時35分まで休憩いたしますので、よろしくお願いいたします。 午後3時26分休憩 午後3時35分再開 ○田中基本構想・政策研究担当部長 それでは、休憩が終わりまして、これからは会場からいただいた質問をもとに、もう1度パネリストの皆様からご意見、ご回答をいただく時間をとりたいと思います。  大変たくさんの質問をいただきました。まだ数えているものもありますが、合計して96件ほど、今裏のほうで集計をしております。そういう関係で、全ての質問に1つ1つお答えするというのはちょっとできないかなというふうに思いますけれども、似ているものもありますので、幾つかまとめながら、また、基本構想で先ほど来皆様からご説明いただいている内容の中に絞りまして、少しコメントをいただいていきたいというふうに思います。  それでは、順番にお願いしたいと思いますが、まず森岡先生からよろしいでしょうか。基本構想のつくり方とか、つくる意味、つくる意義についてというようなことで出ております。目的の達成とか実現のためには、具体的な計画を策定し、実行することが必要であって、大きな基本目的、目標を持つことが大切だと思うけれども、この意味で、素案に示されているものは少し足りないところもあるんじゃないだろうかというようなご質問がありまして、行政と住民、事業者が一体となって努力を続けていかなければならないのではないかというようなご意見というか、ご質問があります。  それから、地方自治法の改正によって、自治体が構想をつくる義務はなくなったんだけれども、そういう中で、構想をつくっていくということについてはどういうふうに考えますかというようなことですけれども、この辺について少しコメントをいただければと思います。 ○森岡氏 前半部分はそのとおりで、これで十分だというふうには私も思っていません。先ほど来申し上げているように、簡潔に9つの、本当は7つのビジョンで世田谷セブンとかにしたかったんですが、それでもやっぱり9つになってしまいました。世田谷ナインということで、9つに絞りましたから、当然いろいろ候補に挙がっていて、結局のところ落とさざるを得なかったものもございます。そういう意味では、完全に十分なものであるというふうには思っていませんし、一番大事なことは、これを具体的にどう計画に移していくかという点でありまして、今後も区がどういうふうな基本計画をつくるかということについても、引き続き区民の方々が関心を持たれて、さまざまな意見をお寄せいただくことがいいのではないかというふうに思っております。  確かに法律が変わりまして、基本構想をつくる義務づけがとれましたけれども、しかし、基本構想をつくるということは、今後の20年間を見据えた区政の基本的な指針を区民とともにつくるという点で、いわば区政を縛るという基本原則を打ち立てるという意味を持っておりますから、そういう点では、この基本構想をつくるということは、今後の区政を区民とともに監視するという意味で、非常に大きな意味があるというふうに思います。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  たくさんあるので、次のご質問を申し上げたいと思いますが、もしお答えいただいたパネリストの先生以外にもそれについてということがあれば、手を挙げていただければ、お話しいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは次に、個人の尊厳についてという1番目のビジョンにかかわるようなご質問です。宮台先生にお願いしたいと思いますが、個人の尊厳という表現はよいけれども、なぜ基本的人権という言葉を使っていないのかというようなご質問であるとか、最初のところで「年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず」という表現がありますが、性的マイノリティとか、出身地による差別などを、「など」という言葉でくくるのは配慮が足りないのではないかとか、多様性を認め合いということはよいけれども、言語を多国籍化し、ユニバーサルを推進する区政の方向性を明確に示すべきではないかというようなご質問がありますけれども、ちょっと難しいかもしれませんが、この1番目のところに関して少しお話しいただいてもよろしいでしょうか。 ○宮台氏 人権、あるいはそのほかの言葉でもいいんですが、概念規定や言葉にこだわることには余り意味がありませんという学問的な主張が今非常にアメリカではあります。例えばリチャード・ローティという人がこう言っていますね。いまだにアメリカでは人権とは何かという議論をしている人がいるが、我々アメリカ人は1965年に至るまで黒人や女性を人間としては認めてこなかった。そのことのほうがはるかに重大であり、我々が誰を人間だというふうに理解できるのか。我々の想像力や感受性を変えることが第1の問題であり、そのためには、彼の言葉は感情教育が必要だと。つまり、僕たちの想像力の働き方、感情の働き方をより適切なものに向かわせるための実践が必要なのであるということを言っているんですね。全面的に賛成をいたします。  包摂は概念というよりも実践そのもののことを言います。したがって、例えば、最近でもNHKに外来語がふえたということで訴訟を提起した人がいますけれども、多国籍化するとか、言葉をいろんな言葉にするということも、うまいやり方でしないと、ある種の方々を阻害したり、排除されたというふうな感覚を逆に抱いてしまったりするという可能性もあるんですね。なので、恐らく知恵を集約していけば、いろんなアイデアが出てくるとは思いますけれども、根本は感情教育、つまり、僕たちの想像力の働き方や感情の働き方それ自体をより適切なものに、より包摂的なものに、より共生に、つまり、ともに生きるということにふさわしいものに練り上げていくということが重要だというふうに考えます。  ちょっと一言だけよろしいでしょうか。騒音の話が先ほど区長からございましたが、社会心理学の繰り返しの実験によれば、自分の知っている人間が出している音は騒音には聞こえないという結果がわかっています。したがって、その地域住民の間で、あるいは保育園と幼稚園と、周りの高齢者なら高齢者との間で絶えずコミュニケーションが存在すれば、あの子の声だとか、あれはあの遊びをやっているんだなというふうになって騒音とは感じないんですね。つまり、騒音というのはデシベルではかれるような客観的なものにはとどまらず、我々が騒音源とどういうふうな社会関係を持っているのかということによりまして感じ方が全く変わってしまうんですね。これも実は感情教育にかかわる実践の1つのデータになります。子どもの出している声なんだから我慢しろとか、そういう排除的、阻害的な暴論はあり得ません。実はそのことを区長もおっしゃっていたわけです。  我々は概念とか、ある種必要なことはこれだみたいなことにこだわり過ぎると、子どもの騒音ぐらい我慢しろよみたいな暴論で、つまり想像力の貧困そのもので終わりがちです。それを回避したいというふうに僕は考えます。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。先ほど森岡会長からもお話がありまして、言葉のところは少し分量の問題もあって、必ずしも全ての言葉を盛り込めたわけではないですけれども、1番目のところではその感受性をというところを大切な意味として込めたというようなお答えだったかなというふうに思います。 ○森岡氏 今の人権の件で言いますと、確かに構想案をつくっているときに人権という言葉も出たんですけれども、ただ、例えばジェンダー問題であるとか、あるいは性的マイノリティ問題ということになってきますと、人権というだけではもはやくくれないさまざまな問題が生じてきます。したがって、人権という言葉ではくくりきれない範疇のさまざまな問題を提示しようと思うと、かえって人権という言葉が問題の視野を狭くしてしまうということに気づきまして、あえてその言葉を明示的には使わなかったのです。ただ、この文章の中には、暗黙のうちに人権という意味合いも当然込められていますけれども、それよりももう少し幅広く現在の問題を扱っています。  ですから、例えば性的マイノリティの人権と言ってもいいけれども、性的マイノリティに対しても、そういう人に対する許容度を高めていくとか、異性愛志向の人がマジョリティだけれども、同性愛志向の人がマイノリティだからといって差別されたり、偏見を持たれたりすることがないような社会をつくるという意味合いをもっと込めていく、また、それをもっとジェンダー問題にも広げていくとかなど、さまざまなことを考慮しますと、単に人権という言葉ではあらわせない問題があるんだということでございます。 ○竹田氏 憲法の中に、11条に基本的人権という言葉が出てきて、13条に個人として尊重という言葉が出るんですけれども、個人の尊厳を尊重しというのは、これは人権を含んでいるというふうに―実はこの部分、私もちょっと書いたんですけれども、私の理解では、日本国憲法もそうなんですけれども、まず11条で「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」と書いておいて、13条で「すべて国民は、個人として尊重される。」、その生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は保障される。それで法のもとの平等と続くということを考えますと、個人の尊厳という中に、ジェンダー問題であったり、出身地の―出身地は入れるか入れないか実はちょっと議論になったんですけれども、私は入れたほうがいいなと思っていたんですけれども、例示も余り多くなり過ぎてもというようなお話もあって、個人の尊厳の中にそういうものも含まれているというふうに考えていただければ幸いだと思います。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは、ちょっと引き続いてになりますが、今度区民参加のことについて竹田委員に伺いたいと思いますけれども、区民参加について、構想に掲げられた文化、スポーツ、まちづくりなどを話し合う場所という場が必要ではないかと考えるが、どう思いますかとか、住民意見の聴取が必要であると思うが、どうか。住民側に立って硬直した行政のあり方を変えていくべきと考えますが、どう考えるか。また、ちょっと違った観点かなと思います。これ以上に自助、共助を求めるのはもう限界があるので、公助をもっと拡大すべきと考えるが、どうかというようなご意見もありますけれども、この辺をまとめて、少し区民参加ということでお願いできますでしょうか。 ○竹田氏 議会というのがあって、有権者が投票で選んだ人が政治を動かしているというのは基本としてあるわけです。ただ、2つちょっと問題点があって、1つ1つの課題、ある4年間なら4年間、区議会でも都議会でも議員の方は任期があって、国も参議院は6年、衆議院は解散があるので若干違いますけれども、結構長い期間やられていて、それぞれ次から次へ起こる問題にどこまで臨機応変に対応できるのかということは、行政の役所のほうに頼らざるを得ないみたいな限界がまず1つある。  それともう1つは、昭和30年代、40年代は投票率が70%を超えておったんですけれども、最近はやっぱり国政選挙でも50%ちょい。今国で言えば、国会で自公を合わせて議席を300以上持っていますけれども、実際にこの間自民党に入れた人は4人に1人いるかいないかなんですね。半分近くの有権者は実際選挙に行かれていないので、とすると、国政は本来行くべきなんでしょうけれども、ただ、地域の地方自治ということになると、本来もっと投票率を上げなければいけないという一方で、もう1つは、投票に行けない、行かない人たちの声もやっぱり吸い上げなければいけない。  1つの考え方、主張があって、手を挙げて物を言う住民、これは当然必要なんですけれども、そういう方々だけでは、実は非常に細かい地域の問題に対応できないんじゃないかということで、その無作為で住民基本台帳から選んだ方に集まっていただいて、今話し合う場所、あるいは住民側に立った意見表明という話がありましたけれども、そこで意見を述べていただく。テーマを決めて集まるのが一番いいと思いますけれども、それで表明していただく。そうすると、その正当性というのは非常に高くて、さっきちょっとお話ししたように、無作為で選んだ人たち、これは例えば欧米では裁判はみんなそういう形で陪審制度とか、参審制度をやっていますし、スイスとかだと、行政に、政治においてもそうやってくじで選んだ人に意見表明する議会みたいなものをつくっているんですね。そういうふうにきめ細かい地方自治にはやっぱりそういうのが必要で、ぜひくじで選ばれたときは、ふだん思っていることをそのままおっしゃっていただくというのが非常にいいんじゃないかなと思います。  自助、共助の部分も余り僕らは強調しているわけではなくて、要は無作為に選んだ区民の皆さんがどういう意見を述べられるか非常に聞きたいのですけれども、要するに限られた税金の中でどうなのかという1つは財政問題もあるんですね。実はこの審議会の中で私が当局にお尋ねしたところ、世田谷区は2,000億円ぐらい年間予算があるんですけれども、みんな国や都のひもつきで、区が自由に使えるお金は50億円しかないんですね。  やっぱりそうすると、おのずから特に地域の行政依存の限界というのが非常に見えていまして、宮台先生がいつもおっしゃっているようにいかに参加していく、引き受けて考えていくということがやっぱり大事で、そういう意味では、確かにある人にとっては、自助も限界だというのは私も非常によくわかりますけれども、とはいえ、共助がどこまでこれから縮んでいく。もう高齢者が4人に1人、3人に1人、世田谷区は若干人口構成は違いますけれども、そういう縮んでいく中でどこまでできるかということも考えれば、そういう意見もぜひ無作為で選ばれたときに述べていただいて、皆さんで話し合う中で、どういう道がいいのか、それはぜひ議論されるのがいいかなと思います。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは次に、小林先生にお伺いしたいと思います。ちょっと具体的なご質問になりますが、緑道の活用方法ということで、ご提案というか、ご意見があります。高齢者の活用の場としての活用とか、区分を分けて利用できるようにするなど、緑道を活用したらどうですかというようなご意見で、緑道に限らず、もしよろしければ地域の資源みたいなことで少しお話をいただければと思います。 ○小林氏 昔、小川だった、川だったところを暗渠にして、烏山緑道とか、蛇崩川緑道、北沢緑道はすごく歩きやすい、いい緑のネットワークができているんです。ふだん散歩して、お花見をしたり、そういう場所が実は防災帯、火事を防ぐ大事な帯になっていて、いざといったときに避難場所に逃げられる、そういうルートに実はなるべきだとやっぱり思います。  それで、今まで出てきた議論の中では、子どもたちとできるだけ地域を親が歩き回って、いざといったらここに逃げようねとか、まずは小学校かもしれないし、一時避難所かもしれないんですけれども、そういったときに、ぜひ緑のネットワークを使っていく。まだ全然足りていないと思うんです。今日中学生の作文の中にも、高齢者が歩いていると、きっと自転車が非常に危ないので、そこにちょっと極端に高齢者のための歩く場、ゾーンをつくったらいいと書いてあるんですが、それは逆だと思うんですけれども、できるだけ安全に歩ける、あるいは自転車もちゃんとレーンをつくるとか、そういうことは僕は必要だと思います。  余り僕の時間はきっとなさそうなので、今日少し問題提起として言いたいことを言っておきますと、やっぱり世田谷区は今まで都心に依存したベッドタウンだったと思うんです。ですけれども、これからやっぱり20年を考えたときに、いかに自立するかを考えなければいけない。保坂区長が言われたように、課税自主権というのが制限されていて、住民税だとか法人税、せっかく本社を呼んできても、実はそれが余り区のほうに法人税が落ちないとか、まだいろんな制約があるんですね。それで議論で一番僕がびっくりしたのは、一番大事な小学校の教員の人事権というのが東京都がまだ管理していて、自分たちが選べないというようなことがまだあるということがわかって、まさしく皆さんがどんどん参加していただいて、今までみんなが知らないようなことがまだまだある。それをどんどんやっぱりみんなで声を上げて解決していかないと、最終的な―議論の中では、激しい委員の方は、もう早く政令都市として独立すべきだというのもありましたけれども、そのためにはまだ新産業、産業が足りないと僕は思うので、若者たちが夢を持てる産業育成というのはすごく大事だと思う。だから、独立まではまだ無理だと思いますけれども、それを目指すぐらいのつもりのやっぱり自立性を僕は持たなければいけないんじゃないかと思います。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは、続いて、森田先生にお伺いをします。福祉の代表ということでちょっと申しわけないですが、お願いしたいんですが、高齢者の問題の施策について述べられているところが少し少ないのではないかというようなこととか、障害者に対する考え方が余り見えてこないのではないかというようなご質問が幾つかございます。それから、高齢者が活躍できるための仕事づくり、環境を整えるという視点、言葉をかえて、別の方ですけれども、シルバー世代が元気に働ける社会というようなことをぜひ言ってほしいというようなご意見がありますので、この辺についてお願いいたします。 ○森田氏 その福祉の問題というのが、この九つのビジョンの中に具体的に十分に書き込まれていないというのは、恐らく皆さん思われることだろうというふうに思います。実は部会の中でも福祉だけが突出されていたわけじゃなくて、やっぱり福祉の中に人権だとか、先ほどの話ですけれども、例えば男女平等だとか、教育だとか、そういったいろんな問題の中に福祉というものを包み込むという形になっていました。  そういう意味で、各項目が取り出されてこのビジョンの中に入っているわけではなく、しかし、その構造としては、子ども、若者、そして大人たちということの中に、全体として高齢者も含めたということと、それからもう1つは、やはり障害というのも具体的な基本的な考え方のところできちんと入れたということがあります。  むしろビジョンの中でこういった包括的な考え方を示して、そして基本計画のところできちんと述べていくという方法をとっています。今日は時間の関係でその基本計画のところを十分にお話しすることができませんでしたけれども、こういったビジョンを計画のところにどう移すかというところで、具体的には、例えば「健康で安心して暮らしていける基盤を確かなものにする」という、そこの中で申し上げれば、高齢者、障害者に関する、例えば保健や医療の問題とか、あるいは先ほど100歳まで本当に元気でその地域の中で活躍できるようなさまざまな活動の問題とかというのは、基本的には基本計画のほうに書き込まれているということをお話しさせていただいて、ぜひそれをお読みいただければというふうに思います。  そして、地域を支えるという、この項目でいくと5ページのところですけれども、さまざまな産業のところでも、先ほどの最後のお話ですが、仕事づくりというところでのご質問がありましたけれども、「地域を支える産業を育み、職住近接が可能なまちにする」ということの中に、最後のところで申し上げると、障害者、お年寄りも働き手になると。やっぱりそういう意味では、地域全体が、みんながそれぞれの抱えている状況の中で、働き、支え合い、そしてこの世田谷の中で働き続けて、そして社会参加し続けながら、この社会を支えていくという発想の中で、このビジョンと計画というものがつくられているということです。  以上です。 ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございます。今森田委員からもお話がありましたように、多世代が活躍するとか、特に元気な高齢者の方の活躍の場をというのは、いろんな部会とか審議会でもかなり話題になったことかなと思っていますので、この中に考えとしては盛り込まれているというふうに思います。  それでは次に、永井さんにお伺いをしたいと思いますけれども、コミュニティ関連についてということです。一住民として地域で何をしていけばよいのか具体的な事例を、さっきちょっと学校でというようなお話がありましたけれども、顔見知りを増やすための具体的な事例を聞かせてもらいたいということです。  あとは、真に開けた相談しやすい環境づくりも大切だと思いますが、いかがでしょうかというようなことです。  ちょっと具体的なご質問があるので、これは永井さんのみならず、もしかしたら別の委員さんも、私はこんなことをやっているよというのをお答えいただいたらいいかなと思いますけれども、地域コミュニティの再生、活性化が基本になると思うが、例えば町会・自治会にどうかかわっていますかという質問が来ていますので、この辺について少しお答えいただけますでしょうか。 ○永井氏 まず最初のものについて、私が地域でのかかわりづくりで気をかけていることということでよかったでしょうか。私は、ちょっとこれは自慢なんですけれども、2年半しか住んでいないんですけれども、地域の人とのつながりとかご近所づき合いというものがすごくあって、いつも農作物をもらってきたりとか、誰々さんから情報が入ってきたことを伝えると、何でそんなことを知っているのみたいなことをお母さんの友達から言われたりしているので、新住民にしてはその地域でのネットワークはかなりあるのかなと思っています。  それが何で私がほかの人と比べてすごいかというと、子どもと一緒にすごくとにかく地域を歩いて移動しているからかなというふうには思っています。それもやっぱり日中がポイントかなというふうに思うんですけれども、やはり人が出てきている、水をやる時間ですとか、犬を散歩する時間に歩いていると、こんにちはということになったりとか、そこに子どももいると、おじさん、水かけてとか言って、急に仲よくなってしまって、おうちにまで上がらせてもらうみたいな、そんな楽しいことの繰り返しで、地域に入り込んで、知らぬ間に地域の末席に座らせてもらっているような気がしています。  こんなことでよかったでしょうか。ちょっとちゃんと受け取れていないかもしれないです。  2番目が、どういう相談窓口があったらいいんですかということだったと思うんですけれども、悩みが起こったときにどこに相談に行けばいいのか本当にわからなくて、私もマンションでちょっといろいろあったときに、いろいろなところに行って、あっちですよ、こっちですよと言われましたけれども、余り上手に答えられないんですけれども、本当に先ほどの1つの家庭にいろんな問題があるところにいろんな行政のセクションがかかわっているという行政の縦割りから生まれるものもあると思うんですが、住民からすると、やっぱり一本化されているといいなとは思うんですけれども、今の自分としては、本当にいろんな人に話を聞いてもらうということも結構重要だったりとか、いろんな区の人に住民として課題に思っていることというのをしっかり伝えていくことで、お互い変わっていくというようなことを心がけられればいいかなと思います。  世田谷区では受けていないんですけれども、私としては、行政に相談に乗ってもらって一番よかったなという思いは、子どもが生まれて1カ月たった後に役所の人が訪れてきてくれて、子どもの状態や経産婦の人の状態を見るんですけれども、そのときは一番、私は相談にすごく乗ってくれて本当に助かったというような経験があります。余りまとめにならないんですけれども、済みません。  最後に、町会・自治会にどういうふうにかかわられていますかとか、どういうふうに認識されていますかという話なんですけれども、やはり町会・自治会の会長さんだとか、誰が町会・自治会の人なのかというのが、割と仲よくなっても見えてこなかったりするなと。仲よくなった方が町会を担っていらっしゃったりとか、学校に出ていくと、この人が町会長さんなんだという感じなんですけれども、先ほどちょっと言ったように、学校にかかわったりしていく中で、消防団に入らないといきなり声をかけられたりとか、そういうことで、段々地域が見えてきたりとか、逆に地域の人からこの人にはこういうことをお願いできるのかなというような、お互い知り合うところから始めていかなければ、責任とか何かの役割のなすりつけ合いになるかなという気がするので、できるだけ本当に日ごろからいろんなお祭りですとか、そういう楽しいコミュニケーションを充実させたり、日常的に歩いて移動することによって仲よくなっていく中で、信頼関係のもと、そういう役割をできるときに担っていけるといいなというふうに思っています。  ちょっと長くなってしまったし、まとまりづらいんですけれども、先ほど子どもとともに私は地域の担い手として座っていますという話をしたんですけれども、今子どもがいらっしゃらない方も非常に多くて、私の周りもかなり半分以上そんな感じだったりするんですけれども、子どもがいない人でもやはり地域にかかわりたいという気持ちを非常に強く持っていらっしゃる方も多いということは確かです。そういう意味では、私としてできることは、そういう世代間をしっかりつないでいく中で、私が窓口になるなり、情報提供するなりして、もっと参加の入り口というのをしっかり自分としても広げていけるといいなと思います。  ちょっと長くなってしまうんですけれども、もう一言。同じく区民委員をされていた松田さんともその後、メールでやりとりなどがあるんですけれども、松田さんがやはりずっとおっしゃってきたことというのは、基本構想はすごく大きなテーマであるからこそ実行力が問われていると。いかに区民を巻き込み、一緒につくり上げていくかという点が非常に重要で、構想だけでは終わらせたくないというすごく熱いメールをいただいたので、お伝えしつつ、私はやはり先ほど問われていること、繰り返しになると思うんですけれども、基本構想が今後、基本計画や個別の計画に落とし込まれていくと思うんですけれども、やはりここに集まった皆さんと一緒に、これをきっかけに議論をし続けて、区民が参加する、あるいは地域にかかわって仲間をふやして地域で実現していくということを一生懸命やっていきたいなと思っています。  以上です。(拍手) ○宮台氏 基本構想は、もう1度繰り返しますが、私たちはこのような社会生活を送るから、だから行政はこうしてくれというタイプのものなんですね。つまり、僕たちがどういう社会的な実践を今行っていて、あるいはこれから行おうとしているのかということがとても大切なんです。まさに僕たちが今行っている、これから行おうとしている社会的実践がまさに共助に当たるところなんですね。「もう十分に共助はしているから。」、これははっきり申し上げるとうそです。私たちはまだ共助の想像力を十分に働かせてはいません。  あの3・11の大地震の直後、東電の福島第一原子力発電所の1号機と3号機が爆発をしました。僕はたまたま情報の筋があって、米軍が軍関係者に出したファクスの内容を知っていましたので、家族を疎開させることにしました。日本政府も東電も情報を握り潰すことがもう既にわかっていたので、ただ、そのときに、僕はよその子を含めて疎開をさせました。そういう場所がありましたので。ところが、後でわかったことは、疎開させた人は多かったけれども、よその子を連れて疎開した人がやはりとても少なかったという事実です。これは僕にとってはとても残念なことです。  僕は小さいころ関西で育ちましたが、よくよその家で飯を食っていました。京都で育ちましたけれども、今よくわかりません。なので、これは日々のコミュニケーションの延長だなと思ったから、とにかく子どもたちにはよその子を家に呼べと言って、一生懸命家に呼んでいます。僕が書斎で勉強していようがしていまいが、お母さんたちもどんどん呼べということで、年がら年中、子どもたちを含めて地域の人たちが僕のうちには来ています。そういうこともあるので、狭い家なんですよ。ちょっとしたスペースに防災グッズ、持ち出し袋、非常用食料、非常用飲料も結構たくさんストックして、妻にも子どもにも、これは僕たちだけで独占するためにあるんじゃなくて、ここに来る人たちのためにあるんだからなというふうに言ってあります。  そういうのは、昔の僕が育った地域社会では当たり前のことだったような気がするんですけれども、そういう昔あったはずの想像力でさえ失われているということが、余りにも低い幸福度の背景にあるのではないかというふうに僕は想像をいたしています。ということは、つまり実はできることは結構あるということだと思います。それは、よくわからなければ人に聞けばいいんですね。人に聞くチャンネルがなければ、インターネットで探れば知恵はやっぱり見つかります。  その後、やっぱり自分で社会的な実践を試みて、当たり前ですけれども、自分だけいい思いをしようは無理で、人を幸せにしようと思う人間にしか幸せになれないというこの大原則、いいとこ取りはやめましょうということです。人を幸せにしようとする人間にしか幸せになれない。僕はそういうふうに随分小さいときに教わりましたけれども、言いかえれば、浅ましい人間は幸せになれないということなんですが、浅ましくなくなるための自己陶冶を遂げれば、直ちにそれは共助の実践になるんですね。という当たり前のことを申し上げさせていただきました。(拍手) ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  それでは、申しわけありません。ちょっと終了の時間を過ぎたんですが、最後に、区長に寄せられたご質問に幾つかお答えいただければと思います。1つは、財政問題についてということで、財政自主権が限られている中で、20年先の見通しをどう考えますかというようなこと、それから基本構想の実現のための予算措置は今後どうしますかということがまず大きく1点です。  それから、人口増について。人口増の話がさっきから出ていますけれども、適正な人口規模、またそれに見合うような住宅、道路等の具体像というのをどう考えますかということとか、巨大なマンションができているけれども、老朽化など、将来の治安や安全の不安があるけれども、そのところはどうでしょうかということ。  それから、人口の分散、例えば友好都市への分散というようなことというふうに書いていらっしゃいますが、例えばそういう人口の分散みたいなことに関してもどうでしょうかという、小さく言うと5つですけれども、お願いします。 ○保坂区長 それでは、2つとも関連する質問なので、まとめて答えたいと思います。  まず、人口についてお話ししたいと思いますけれども、一般的には市町村と言いますよね。23区だと区市町村というふうに言ったりするわけですが、これは基礎自治体と言いますが、基礎自治体としては明らかに適正規模を超えた人口になっていると思います。89万人というのはとんでもない大勢の数です。したがって、平成3年、91年に総合支所制度というのを当時の大場区長を中心につくって、世田谷区というのは5つの総合支所を軸に27のまちづくりセンター、出張所というところで地域行政制度をやってきました。この地域行政制度をつくったということは非常に先見の明があったというふうに思います。ですから、世田谷区が政令市、県とも言いたいところですが、あえて政令市というふうに言えば、政令市における行政区としての役割を総合支所がしっかり果たしていくということが、今日的に問われているはずだと。  もう1つは、基本構想の議論もそうでしたけれども、災害にどうやって復元力のある地域をつくるかというと、やはり地域の住民自身が常時コミュニケーションをしている必要があります。ということでいうと、今の地域行政の一番のフロント、いわばまちづくりセンター、出張所はちょっと弱過ぎるんじゃないかという声が車座集会等で出ました。防災という機能も持っていこうよということを今年から始めていますけれども、もっとそれを強化する必要があるかと考えています。  それから、高層マンション、確かに大きなマンションがあちこちにできています。一方で、木造住宅の、もう本当に道路が狭い、災害に対してここは危ないなという地域もまだ世田谷には残っています。相当の広さです。そういう意味では、集合住宅の適正な規模、そして狭隘な木造住宅密集地域の安全な整備、これは2つやっていかなければいけないと思うんですけれども、そういう意味では、この基本構想の哲学をもってまちづくりのビジョンというものを打ち立てていくことが必要なのかなと思います。  人口についてですけれども、過去を見ていると、1987年、昭和62年に80万人まで行った世田谷区の人口が、91年には78万5,000人に減り、95年には77万5,000人と減っているんです。したがって、前の基本構想のときには、今大体75万ぐらいと予想しているわけですが、これはもう明らかに地価高騰の影響だと思います。やはり世田谷区の中の集合住宅というのは、普通のサラリーマンが買える金額ではなくなってしまったと。一方で、97年に金融危機があり、出口のないデフレ不況という時期に突っ込んでいきます。この中で、世田谷区の集合住宅の家賃あるいは価格、これがバブル当時の半分近くまで下がっていくということときちっとかみ合って、10万人以上の人口がふえていったという関係にあるので、なかなか人口のコントロールというところは、国や世界経済の動向と非常に深く絡んでいるので、この点は難しいと思いますが、もちろん無限に人口がふえることを目指すなんていうことは考えていません。しかし、今住んでいらっしゃる人を大事にして、そして今の世田谷区からのバランスをどういうふうにとっていくかということを考えたいと思っています。  という意味で、財政の問題も、一般会計予算が2,500億円です。介護保険とか、国民健康保険などの特別会計が1,500億円で約4,000億円です。ここに先ほどサザエさんで申し上げた固定資産税とか、今度二子玉川に楽天という大企業が来るというふうに言われていますけれども、普通なら、世田谷区さん、大変収益がありますねなんて言われるわけですね。ところが、それは全部東京都で一旦吸い上げて配分するという制度になっています。財政調整制度という制度ですが、23区がこぞって財政課税自主権を拡大するということを言ってきました。実は特別区の区長が選挙で選ばれるようになってからまだ余り時間がたっていないです。38年しかたっていない。大場区長が28年やられて、熊本区長が8年やられて、私が2年ということで、そういう意味では、その長い年月の中で少しずつ自治権拡充がされているわけですけれども、多分20年後の基本構想の、20年と言わずこの10年の中で、やはり基礎自治体にしては大き過ぎるこの現状にふさわしい権能、課税自主権も含めてかち取っていきたいというふうに思っているところです。  最後になりますけれども、外から見た世田谷区の話で、いわゆる1位ですよという話を最初にしました。ブランド総合研究所というところが教えてくれたんですが、全国の皆さんが世田谷区はなぜ住みやすいんですかという理由を、特に数字が上のほうの理由を2つ教えてくれました。1つは、住民参加のまちづくりなんですね。これは、それがそれほど知られているのかと逆に驚いたんですけれども、住民が参加しながら町をつくっていくということがそれなりに知られているということが1つと、もう1点が、子育てがしやすい町、本当にしやすいかどうかは、これは今待機児が大変ですから、個々にはなかなか大変な状況があると思いますけれども、この2つが柱になっているとすれば、このイメージをもしかしたら現状よりもはるかにふわっと大きく膨らんだ風船のようなイメージかもしれません。でも、それを本当にしっかりやっていくことは、基本構想をシェアしてこれからの10年、20年を描いていくということは、本当にその自治体の強さと将来への希望になっていくのかなというふうに思います。  どうもありがとうございました。(拍手) ○田中基本構想・政策研究担当部長 ありがとうございました。  本当に進行が悪くて、20分も予定の時間をオーバーしてしまいました。また、本当にたくさんご質問をいただきましたので、お答えできないものもたくさんできてしまって本当に申しわけなかったんですけれども、私たちのほうで区長にもちゃんとお伝えさせていただこうというふうに思っています。  それでは、これをもちまして本日のシンポジウムは終了とさせていただきます。長時間にわたりまして本当にありがとうございました。(拍手) ○司会 パネリストの皆様ありがとうございました。皆様、いま一度盛大な拍手をお願いいたします。(拍手)  なお、ご案内でございますが、この後、区内の5地域で7月7日よりタウンミーティングを開催いたします。まだ定員に若干余裕がございますので、本日ロビーにて受け付けをしておりますので、まだお申し込みをしていない方はお帰りの際にぜひお申し込みください。  それでは、本日はご来場ありがとうございました。 午後4時23分閉会