令和5年第1回世田谷区議会定例会区長招集挨拶

最終更新日 令和5年2月20日

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招集挨拶をする保坂区長

令和5年第1回世田谷区議会定例会にあたり、区議会議員並びに区民の皆様にご挨拶を申し上げます。

2月6日、トルコ南東部を震源として発生したマグニチュード7.8の地震によって、トルコとシリアの両国でこれまでに4万6千人を超える死者が出ています。お亡くなりになった方々に哀悼の意を表しますとともに、負傷された方々に心よりお見舞い申し上げます。また、被災された方の救援・救護が一刻も早く進むことを心より願っております。

区としても、日本赤十字社をはじめ、UNHCR等、国際関係機関への義援金を呼びかけるとともに、被災地の復興支援についても取り組んでまいります。

3年間を超えるコロナ禍が未だ収束しない中、社会経済状況の見通しがつきにくい状況が生じていますが、私たちには区民の生命と暮らしに責任を持つ自治体として、地域社会を健全に発展させていく使命があります。

とりわけ、次世代を担う子どもたちをいかに支えるかが重要な時期となります。

このたび、令和5年度当初予算を「子ども全力応援予算」として編成しました。

従来からの区の子どもと若者、子育て家庭への支援への集積をもとに、さらに思い切って強化するものです。

この間、若者が参加したシンポジウム、子どもや子育て家庭、支援者等から意見を伺い、子ども・子育て会議での議論を踏まえて、今回、令和5・6年度を期間とする「子ども・子育て支援事業計画調整計画」の策定案の中に、子どもと若者、子育て家庭への支援の戦略として「グランドビジョン」(案)をとりまとめました。

区の『子ども・子育て応援都市宣言(平成27年・2015年)』では、子どもが生まれてくることを祝福し、歓迎する地域とは、子どもの保護者のみならず、子育てをしていなくても、すべての地域の大人が、子どもを温かく見守る社会であると宣言しました。

23区で初めて制定した『世田谷区子ども条例(平成13年・2001年)』では、子どもの権利条約により、子どもを権利の主体とし、子どもの権利が尊重され、成長段階に応じた環境がある『子どもが、すこやかに育つことのできるまち』の実現を目指しました。

保育待機児童が「全国ワースト1位」から「待機児童数0」(国基準)を実現する過程でも、「保育の質の確保」を最優先の条件として園庭のある認可保育園を中心に保育施設等の整備を進めました。

一方で、日本の少子化は、コロナ禍の3年間で想定を超えるペースで進んでいます。令和4年(2022年)の出生数は80万人を割り込むことも確実となっていて、急激な出生減が、区にも波及しています。次世代が減少する影響で、人口維持が前提の社会保障制度の根幹が揺らぎ、経済活動の縮小をもたらし、活力ある地域社会が大きな打撃を受けます。

もちろん、結婚や出産、子育ては、あくまでも個人の自由な意思に基づくものです。それでも、経済的負担や周囲の支え、社会的支援がないことを理由に、妊娠や子育て、第2子以降の出産を希望していても、諦める人たちが多いのも事実です。社会的な障壁を乗りこえて、子育てを希望する誰もが、その願いを実現できるように、社会や地域が支えることは大切な課題です。

さらに重要なことは、子どもや若者たち一人ひとりが生き生きと楽しく元気に輝いていること、失敗しながらも挑んでいけること、そして、あらゆる地域の大人が子どもを温かい目で見守り応援していることです。

今こそ、身近な基礎自治体としての理念と役割をしっかりと刻み、事業者を含むすべての区民とともに、「子ども・子育て応援都市」の施策と地域社会資源を総動員して、これらの課題を積極的に解決します。

「グランドビジョン」の前書きで、現状の認識と今後の方向を示しています。出生減の社会的な要因を取り除き、子どもと若者、子育て家庭が「このまちで育ってよかった」と思える地域を実現することが、区の役割です。このビジョンは、次期子ども計画への展望も見据えて、現在の子ども計画後期計画の取組みを一層加速させるものとして議論していただき、より良きものとしていきたいと思います。

次に、「子ども全力応援」の具体策についてです。

まずは、来年度の区立小中学校の学校給食費の無償化です。

物価高騰の波が暮らしの現場を直撃しています。昨年から区では、コロナ禍で食材費が高騰する中にあっても、これまで通りの栄養バランスや量を保った学校給食を安定的に維持・継続していくため、学校給食費の値上げは行わず、学校給食費単価の10%相当分を公費負担してきました。

昨年2月からのロシアによるウクライナ侵攻は長期化して、資源・食糧の流通量不足と価格高騰をもたらすと共に、昨年進んだ円安の影響もあり、実質賃金の低下と消費者物価の上昇が家計を圧迫しています。影響の長期化も懸念されることから、令和5年度の緊急的な措置として区立小・中学校に在籍する児童・生徒約5万人の給食費について、所得制限を設けずに全額公費で負担することとし、保護者の負担軽減を図ります。

実施期間は令和5年4月から1年間とし、令和6年度以降の継続については、その後の社会経済状況を踏まえ、改めて判断いたします。

これまで給食室改修工事期間中はご家庭からの弁当持参をお願いしてきましたが、給食費無償化に伴い、その間は1日630円の協力金を新たに支給するとともに、対象校へ弁当配送可能な事業者を公募して学校・PTAへ情報提供するなど、保護者の負担軽減を図ってまいります。さらに、不登校の児童・生徒がいつ登校しても給食を食べられるよう体制を整えるとともに、不登校特例校「ねいろ」での給食提供も検討してまいります。

また、出産費用は、近年上昇が続いており、東京都の公立病院の平均においても、健康保険制度から支給される出産育児一時金を大きく上回る状況にあり、出産後の家計において重い経済的な負担になっております。国は、この4月より出産育児一時金を、全国の公立病院の平均値をもとに現行の出生児一人あたり原則42万円の支給から、原則50万円に引き上げることにしましたが、都内における出産費用の実態とは未だに乖離しております。区では、さらに独自の支援として、第一子から出生児1人につき一律5万円を支給することとします。現在の第三子以降の出産費助成制度を見直し、統合します。この出産費助成は、これからの子育てについて、切れ目のない支援を提供することと合わせて、経済的負担を軽減することで、子どもと子育て家庭を応援し、誰もが安心して子どもを産み育てられる環境づくりを図ってまいります。

次に、学校教育についてです。

まずは、不登校の子どもたちへの支援を急ぎます。

区における不登校児童・生徒の数は、令和3年度で1,228人となっており、コロナ禍の3年間で、403人増加していて、短期間のうちに人数は約1.5倍となっております。

昨年4月より、新たな不登校生徒の支援と学びの場として、区立世田谷中学校の分教室として不登校特例校「ねいろ」を、開設したところです。現在、30人の生徒が静かで落ち着いた環境下で学んでいますが、新年度4月入学希望者も多く、教育会館を一部改修し、受け入れ態勢の整備を行っています。あわせて、「ねいろ」における学びや支援内容の検証と分析をしながら、今後の充実をはかり、ニーズを受け止めながら新たな不登校特例校分教室の整備についても検討を進めてまいります。

また、不登校児童・生徒の数が増加している状況の中、これまでの支援の枠にとらわれない新たな学びの場や居場所の確保が喫緊の課題となっています。

区では、令和3年度よりNPO法人カタリバと協力協定を締結し、タブレット型情報端末を活用した学習支援や居場所支援を行い、オンラインによる新たな支援の手応えを得たところです。次年度は、オンラインの利便性を最大限に生かし、これまでの学習支援や居場所支援に加え、個別相談支援や子ども同士の交流、保護者支援など、支援内容を拡充したかたちで実施していきます。

強い好奇心や感受性、豊かな想像力、高い身体的活動性、鋭敏な五感など特性に恵まれながら、学校環境になじめない児童生徒がいることも予想されます。「特定の分野に特異な才能のある児童生徒」への支援について、国の調査研究事業なども活用しながら、教育総合センターでのバックアップも含めて、来年度から学校現場の実証研究に着手してまいります。

今後も様々な手法や工夫を凝らしながら、不登校の子どもたちが安心して過ごすことのできる、多様な学びや居場所の確保に努めてまいります。

さらに不登校対策と関連して、「子どもがイキイキと学び、通いたくなる学校づくり」についての議論を総合教育会議で始めています。すでに昨年秋の同会議において、汐見稔幸氏より「非認知的な能力を伸ばす新しいタイプのアート型の学校の可能性があり、実現を図るべき」との提言もあり、その具体像について、議論を深めていきます。

従来までの学校教育にとらわれることなく、子どもが意欲を持って集中的に学ぶ場に「芸術・文化・科学」などの第一線のクリエイターや研究者の力を借りて、オルタナティブスクールの可能性を探ります。その「新たな学びの場」の創り方や運営のあり方について、総合教育会議を基軸にして、有識者の意見も伺いながら検討を進めていきます。

次に、「次期基本計画の策定」についてです。

令和6年からの次期基本計画の策定に向け、昨年9月8日の第1回基本計画審議会を初回として、毎月審議会を開催し議論を重ねて、現在は、世田谷区基本計画大綱をまとめる段階に入っています。

審議会では、変化が激しく予測困難な時代にあって、区がこれまで培ってきた風土や文化、歴史や自然環境などの世田谷固有の魅力を伸長させながら、次の世代に継承させていく持続可能な地域社会を築くため、熱心な議論が続いています。

第5回の審議会では、時間を延長し、テーマ別意見交換を行いました。「子ども・若者」では、「一人ひとりの子どもが、自分のやりたいことを見つけるために学校を変えることが重要だ」などのご提案が、「コミュニティと福祉」では、住民による住民参加のコミュニティを目指して「皆に居場所と出番があるまちづくりを進め、そこに参加し活動することが個人の健康につながる」などのご指摘がありました。「魅力的なまち」では、「ウォーカブルなまちづくりとは、知らない人同士が出会う中で化学反応を起こし創造性があふれる」などのご意見をいただきました。

第6回の審議会では、基本計画大綱の作成に向け、「持続可能な未来を確保し、あらゆる世代が住み続けたい世田谷をともにつくる」ことを基本方針にといったご提案をはじめ、計画全体を貫く考え方や重点政策といった全体の構成を含めた幅広い議論が行われました。

今後は大綱に盛り込むべき事項についての具体的な議論をさらに積み重ねて、3月末に答申をいただく予定です。今後も審議会での状況を議会、区民に報告し議論を深めていきます。 

次に、財政の健全性についてです。

12年前に私は、熊本前区長からバトンを渡されて以来、「財政の健全性」を取り戻すために、支出の大きな事業の予算内容にメスを入れ、行政手法の転換や見直しによる行政経営改革に取り組んできました。

平成25年度決算では、22年ぶりに基金残高が特別区債残高を上回る状態となりました。その後も、本庁舎等整備や学校改築・改修等の財政需要に備えて、必要な基金への積立てを計画的に行っており、令和4年度末の基金残高は約1,465億円で過去最高となる見込みです。この基金残高は、特別区税の単年度分に相当する額であり、税収の悪化などの景気変動に対応する財政基盤ができつつあります。

本庁舎等整備も、総額約460億円規模の大事業ですが、この間、基金に約277億円を積み立て、出来る限り起債を抑制し、一般会計予算に与える歳出影響を最低限に止めています。今後も堅実な基金残高の確保と起債抑制に努めると共に、これから策定する次期世田谷区基本計画にそって、大局観に立った福祉の増進と街づくりを進めていきます。 

次に、DX推進についてです。

区では、「行政サービスのRe(リ)・Design(デザイン)」に掲げる、デジタル化による行政サービスの向上の一環として手続き等のオンライン化を推進しており、2月6日より開始したマイナンバーカードの利用による「引越しワンストップサービス」に加え、来年度には、子育て及び介護関係の26手続についてマイナポータルから電子申請が行えるよう準備を進めています。

また、昨年12月には大手民間事業者と連携協定を締結し、オンライン手続きを含む申請業務の最適化や電子通知の実証などを協力して進めることで、行政の枠に留まらず、豊富なノウハウを持つ民間企業との協働により、区民サービス向上や行政事務の効率化に取り組んでまいります。

また、昨年11月から、池尻、松原、用賀、船橋、上北沢の5か所のまちづくりセンターにおいてオンライン相談のモデル実施を開始しています。保健福祉センターとの相談事例の積み上げを行いながら、今後、本庁など相談の繋ぎ先の拡大や、相談と併せた申請手続きの実現を目指して検討を進め、デジタルに不慣れな方への支援も行いながら、まちづくりセンターの窓口サービスを充実させていきます。

次に、世田谷区地球温暖化対策地域推進計画の見直しについてです。

この度、環境審議会から答申をいただき、2030年度において、2013年度比で57.1%削減を目指す計画案を取りまとめました。また、野心的な目標として、2013年度比で66%削減を掲げています。

全庁をあげて、気候変動に取り組む推進体制として、全部長で構成する気候危機対策会議の中で、各部のテーマについても議論を深めてきました。

計画案に至る過程では、区民説明会を開催し、意見交換を行うとともに、計画素案に対する区民意見募集でも沢山のご意見・ご提案を頂戴しております。

また、地球温暖化に関する子どもたちの声に耳を傾けるために、3,000人の小中学生を対象にアンケート調査を実施し、773名から回答が届きました。今後、回答してくれた子どもたちと相談し、春休みに「せたがや子ども気候会議」を開催します。2050年に社会の中心を担う子どもたちと共に、気候危機に向けた有効な対策と行動を選択していきます。

区民・事業者の皆さんの電気やガスの使用量の削減に応じてポイントを付与する、省エネポイントアクションを毎年実施しています。新年度からは、「再エネでんきコース」を新設し、区内の再エネ拡大を図ります。

2050年、区内の二酸化炭素排出量実質ゼロに向けて、区民の皆さんや議会でもご議論いただきたいと考えています。

次に、京王線沿線の街づくりについてです。

区は、東京都や京王電鉄と共に、京王線の連続立体交差事業に取り組んでいます。用地取得が進んだエリアから、鉄道本体工事に着手し、明大前駅東側や桜上水駅前、千歳烏山駅以西では、下り線の高架橋の駆体が建ち始めています。区は、同時に駅周辺のまちづくりに取り組んでいます。

下高井戸駅周辺地区では、地元の街づくり協議会で作成された「みんなでつくる明日のしもたかブック」が「区民街づくり協定」に登録されました。区は、街づくりの将来像を地域と共有しながら、ルールづくりを進めています。

千歳烏山駅周辺では、令和3年6月に地区計画等を策定し、街づくりに取り組んでいます。駅周辺の商店街連合会に設置された街づくり委員会では、目指すまちの姿を取りまとめ、実現に向けた活動を進めています。

また、駅前広場南側地区では、地権者により、市街地再開発事業を活用した事業の検討が進められ、昨年12月に再開発準備組合が設立されました。区は、地元との連携や活動支援による街づくりに取り組んでまいります。

こうした住民主体の取り組みを支援しながら、区は京王線沿線の街づくりについて、京王電鉄や隣接する渋谷区や杉並区とも意見交換しつつ、参加と協働を土台に各駅周辺の特性も踏まえ、沿線各駅を利用する多くの区民等とも情報共有や話し合いをしながら進めてまいります。 

次に、本庁舎等整備についてです。

世田谷区本庁舎等整備工事は、令和3年7月の着工以降、解体工事、掘削工事等、進めてきましたが、今後の工事の安全性を鑑み、このたび、1期棟完成予定日を2か月間延伸することとしました。これにより、区民会館を含む1期工事の完成は、令和5年9月末となります。新庁舎全体の完成予定は令和9年10月から変更はありません。確実な工程遵守に向けて、引き続き、工事受注者としっかり連携し、取り組んでいきます。

工事現場では、年が明けてからは、新しい庁舎の骨組みとなる鉄骨の組立工事が順調に進み、その姿は日々、完成形に近づいています。区民会館も、春頃には、ホール外壁周りを覆っている足場の撤去作業が始まり、建設当時に復元された姿を、いよいよ見ることができます。

せたがやの文化・芸術の魅力の発信拠点となる、この区民会館は、このたびの整備で、ホールの音響・照明等の性能が大幅に向上し、より使いやすい施設となって、リニューアルオープンいたします。

令和6年1月から3月には、区民会館の大改修を記念するとともに、歌舞伎舞踊やプロのオーケストラによる優れた音楽等の公演と区民参加の公演を組み合わせた文化事業を展開し、誰もが気軽に文化・芸術に触れることができる機会の創出と文化・芸術の新たな拠点となる区民会館の多様な魅力を発信するオープニングイベントの開催を予定しています。

本庁舎等が「区民自治と協働・交流の拠点」として親しまれる施設となるよう、区民の皆様との話し合いを進め、区民交流スペースに近い環境の施設を活用した事業の試行等を通じて、運営方法などの検討も重ねていき、区民・事業者との協働をより一層進めてまいります。

次に、高齢福祉施策についてです。

まず、介護基盤の整備についてです。私が区長に就任した平成23年(2011年)以来、特別養護老人ホームは11か所整備されました。定員は1,352人から722人分増加したことにより、現在は計28か所、定員2,074人となっています。

また、この間、認知症高齢者グループホームが32か所、定員684人分が開設されるなど、介護基盤整備が進んだ結果、平成23年(2011年)3月に2,464人であった特別養護老人ホームの待機者は、令和5年1月時点で1,312人と約1,100人減少しております。

今後も、現在建設が進んでいる弦巻5丁目国有地における整備のほか、大規模団地建替えに伴う創出用地の活用などにより、計画的に特別養護老人ホームの整備を推進してまいります。

認知症になってからも、元気に自分らしく暮らし続けられるように、令和2年(2020年)10月に「認知症とともに生きる希望条例」を施行し、令和3年(2021年)4月から計画をスタートしています。

2月12日には、認知症のご本人が企画段階から参画した条例2周年イベントを開催するなど、条例の普及啓発等に努めております。今後も、「認知症観の転換」を図り、「認知症になってからもひとりひとりが希望を大切にしあい、ともに暮らすパートナーとして支え合うための地域づくり」を進めてまいります。

次に、障害施策についてです。

「世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例」が1月1日に施行されました。今後、この条例を基礎とし、国連障害者権利委員会の日本政府への勧告や、障害当事者の方からのご意見を踏まえ、令和6年度からの「せたがやノーマライゼーションプラン」の策定を進めてまいります。

条例の施行に先行する形で、令和4年10月より、障害者や家族の緊急時に対応する「緊急時バックアップセンターの試行」を開始し、障害者の地域生活支援機能の強化を図っています。

令和5年度には、重度障害者の通勤や就労中にヘルパー利用を可能とする事業の新設、人工呼吸器等を使用している18歳以上の医療的ケアが必要な方への災害時の安心確保のためのポータブル電源等の配付拡充を行うとともに、聴覚障害者の世界的なスポーツの祭典である「デフリンピック」が、2025年に東京を中心として開催されることも踏まえ、手話言語条例の制定に向けた検討を進めるなど、インクルーシブな地域共生社会の実現に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

次に、経済対策についてです。

引き続くコロナ禍や世界的な燃料費の高騰、物価高の影響により、区内経済は大きなダメージを受けています。しかも、今後の世界経済の見通しは不透明であり、区民生活にも厳しい状況が続くことが予想されます。

区としては、区内経済の回復に向け、事業者の新たな挑戦を専門家が伴走型で支援する「SETACOLOR」の取組みに力を入れ、一つでも多くの事業者の経営が改善するよう、支援に努めてまいります。

また、来年度は東京都とともに商店街に対しても伴走型支援を実施し、DXの推進やコミュニティ機能の強化、エリアリノベーションなど、時代の流れに対応した新たな商店街づくりを支援していきます。

さらに、地域経済を長期的に支えるため、区民に出来るだけ区内で消費していただき、区内経済循環を加速することが必要です。来年度も世田谷区商店街振興組合連合会の「せたがやPay」によるポイント還元などを実施し、区内事業者への消費誘導や物価高騰下における区民の生活支援に取り組んでまいります。

次に、旧池尻中学校跡地活用事業についてです。

本事業については、昨年7月より施設の運営を担う事業者選定のための提案募集を行ってまいりました。昨年12月に募集を締め切ったところ、計5事業者・団体から応募をいただき、本年1月、選定委員会にて運営事業候補者を選定しました。

選定した提案は、池尻という立地を生かして、区内事業者に具体的な支援を提供するのみでなく、地域住民をはじめとした多くの区民に対しても、交流や学び、新たなチャレンジを応援する魅力的な取組みが詰まった提案となっています。

今後、事業者提案を基に詳細の協議を重ねていくことになりますが、本事業については、地元の学校関係者及び区民、区議会から多くの意見をいただいてきました。今後、協議の過程を丁寧に報告しながら、必要な改修工事及び企画内容の改善を期して準備を進めていきます。

次に、在宅避難の推進についてです。

区の指定避難所は、震度5弱以上の地震が発生した際、被害の状況や施設の安全確認などのうえ開設を決定します。小中学校の体育館など、94か所を指定避難所としていますが、改めて申し上げれば、92万区民全員を受け入れることは不可能です。また、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等が示されておりますが、区の避難所では、重症化リスクの高い方も含め集団で過ごすこととなるため、医療機関や高齢者施設と同様に、クラスター防止対策を継続し、密集回避に努めていく方針としております。

自宅で過ごせる場合は「在宅避難」が原則であり、区は、在宅避難推奨の啓発物の全戸配布などを行うとともに、安心して在宅避難ができるよう、スマートフォンや医療機器等の電源の確保のための充電スポットの整備、防災対策優良マンション認定・防災アドバイザー派遣制度の導入など在宅避難者支援の充実に取り組みます。

また、在宅避難の推進と同時に、まちづくりセンター、総合支所、本庁は連携して、ボランティア・NPOによる避難所運営支援や、避難者自身による避難所運営への参加促進に向け、助け合いの意識の向上や防災活動への参加促進に取り組んでまいります。

次に、世田谷区個人情報保護条例の改正についてです。

個人情報保護法の改正により区の個人情報保護条例は大幅な見直しを行う必要が生じました。区としては、新たな法の枠組みの中で、区がこれまで実施してきた個人情報保護に関する先進的できめ細やかな施策を可能な限り維持・発展させていきたいと考え、審議会での議論を重ね、また、パブリックコメントを通じて区民の皆さんから様々なご意見をいただくなど、慎重で丁寧な検討に努めてまいりました。

新たな条例の案は、世田谷区個人情報保護条例の名称を継承するとともに、審議会による一定の関与を規定するなどの制度設計をしています。検討の中でご意見をいただいた、国籍、性的マイノリティ、ドメスティック・バイオレンスを「特に配慮を必要とする個人情報」として条例に規定するなど区としての独自色を盛り込んだ内容としています。引き続き、個人情報の適切な取り扱いに努め、区民に信頼される区政の実現に取り組んでまいります。

次に、公契約条例に基づく取組みについてです。

区は、公契約に従事する労働者の適正な労働条件の確保や事業者の経営環境の改善等を通して、公共事業の品質確保や地域経済の活性化、区民福祉の増進を図ることを目的に、平成27年(2015年)4月に世田谷区公契約条例を制定しました。

本条例に基づき設置された世田谷区公契約適正化委員会の答申を受け、区では今年度、公共事業入札に関する従来の考え方を転換し、品質と価格のバランスのとれた公契約の推進を目指して、過度な低価格入札を抑制する価格評価や、労働環境整備などの条例に基づく取組みへの評価を盛り込んだ「世田谷区建設工事総合評価方式入札」を開始しています。

さらに来年度からは、同様の趣旨から委託契約における効果的なダンピング対策の実現に向けて、「変動型最低制限価格制度」を導入する予定です。一連の入札制度改革により、事業者の経営環境及び労働者の労働条件、公共事業の品質の向上を図ってまいります。

また、公契約適正化委員会の労働報酬専門部会において、区の公契約の業務に係る労働報酬下限額についてもご審議いただいており、委託等契約に係る令和5年度の下限額は、昨年11月に提出された意見書を踏まえ、現在の1時間あたり1,170円から60円引上げ、1,230円に改定いたします。

この改定により、公契約の従事者の賃金を底上げし、事業者の人材確保と定着につなげ、更には好循環が地域経済の活性化へと広く波及していくことが期待できると考えており、一層の周知拡大に努めてまいります。

次に、令和4年度補正予算についてです。

令和4年度の一般会計第7次、及び4つの特別会計の補正予算ですが、新型コロナウイルス感染症対策や事業進捗等を踏まえた経費の増減への対応に加え、特別区税や特別区交付金などの歳入の増を踏まえ、基金繰入金と特別区債を抑制すると共に、今後の行政需要に備えた基金への積立てを行うため、合計292億2,600万円の補正予算を計上するものです。

次に、令和5年度当初予算についてです。

一般会計の予算規模は、3,619億8,700万円、前年度と比べ、プラス8.5%の増となっております。

歳入につきましては、特別区税は人口動向等を踏まえ、前年度比で58億円の増収を見込んでいます。また、特別区交付金は、財源である固定資産税や市町村民税法人分の増等により、前年度比で74億円の増額、地方消費税交付金は前年度比で37億円の増額を見込んでいます。

歳出につきましては、今後の子ども施策の考え方(グランドビジョン)に基づく子ども・子育て関連施策の拡充や、社会保障関連経費、都市基盤整備、公共施設の改築・改修への対応、大規模自然災害への備え、さらにはエネルギー価格・物価高騰等への対応など、増加する行政需要に対し、将来を確実に対応するため、必要な予算を計上しています。

一般会計に、4つの特別会計を合わせました予算額の合計は、5,486億2,400万円、前年度比プラス7.1%の増となっております。

最後に、本議会にご提案申し上げます案件は、令和5年度世田谷区一般会計予算など議案43件、諮問1件、報告16件です。

何とぞ慎重にご審議の上、速やかにご議決賜りますようお願いしまして、ご挨拶とします。

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