世田谷区人と動物との調和のとれた共生推進プラン(第2次)案 はじめに 世田谷区では、平成16年に「世田谷区人と動物との調和のとれた共生に関する条例」を制定し、本条例に基づいて、平成17年に「世田谷区人と動物との調和のとれた共生推進プラン」を定め、人と動物との共生社会の実現を図るべく様々な施策に取り組んでまいりました。一方で、本プランは策定から17年が経過し、人と動物とを取り巻く状況は大きく変化しています。 新型コロナウイルス感染症の影響で、人との繋がりが持ちにくくなるなど生活環境が変化している中、動物は私たちに心の癒しを与え、また家族の絆を深めてくれる家族の一員となり、そして人生のパートナーとして位置づけられる大切な存在となりました。区においても、令和3年度に犬の総登録件数が過去最高を記録し、ペットの存在がより大きなものとなっていることが伺えます。一方で、飼い主の高齢化や近隣との関係などの理由によりペットを飼育できなくなったケースや、いわゆる多頭飼育崩壊の事例が発生しております。ペットの存在が、飼い主自身の健康や近隣住民との関係に悪影響を及ぼさないように、不測の事態があっても、適切な対応で飼い主を支えられるように、地域全体で人と動物との共生について考え、取組む必要があります。 このような状況下、社会情勢の変化や課題等に的確に対応していくため、動物行政に精通した学識経験者や獣医師、東京都動物愛護推進員、ボランティア団体等の代表者、町会役員、区関係所管等の委員から構成する「世田谷区人と動物との共生推進のための連携協議会」において、人と動物との調和のとれた共生社会の実現に向けて本プランについてご審議いただき、改定いたしました。 今後も、本プランを区の動物行政の基盤として、また、団体ボランティアをはじめ、広く区民の皆様と連携し、「人と動物との調和のとれた共生社会」の実現に向け、プランに定めた施策を着実に推進してまいります。 令和5年〇月 世田谷区長 保坂 展人 第2次 世田谷区人と動物との調和のとれた共生推進プラン 目次 第1章 区における人とペットを取り巻く課題 (世田谷区人と動物との調和のとれた共生推進プラン改定の背景) 1 社会状況の変化  区は、平成17年に策定した世田谷区人と動物との調和のとれた共生推進プラン(以下、「共生推進プラン」という。)に基づき、動物愛護管理施策に取組んできました。新型コロナウイルス感染症の影響による区民意識や生活環境の変化、高齢化と少子化・核家族化の進展や災害時における同行避難ペット数の増加、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展、動物由来感染症予防の推進など今般の一般社会情勢の変化に伴い、平成17年に策定した共生推進プランの基本的視点の一つである「飼い主責務の徹底」のみでは解決できない等の課題が生じています。そのため時代に即したプランとしていくため、区の現状を再認識し、またこれまでの区の取組みを踏まえ、人と動物を取り巻く現状と課題への的確な対応を目的に、共生推進プランを改定することとしました。 人と動物をめぐる社会情勢の変化(新たな課題) ・新型コロナウイルス感染症の影響により、在宅時間が増えたことに伴うペットと接する時間の増加や癒しを求めて新たにペットを飼育する人の増加 ・高齢化と少子化・核家族化の進展による、飼育困難となるケースの発生 ・災害時における同行避難ペット数の増加 ・犬猫のマイクロチップ装着義務化に伴う、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展 ・動物由来感染症予防の推進 (1)新型コロナウイルス感染症の影響により、在宅時間が増えたことに伴うペットと接する時間の増加や癒しを求めて新たにペットを飼育する人の増加  新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大により、我が国においても、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され、行動制限が実施されるなど従来の生活様式から新しい生活様式への転換が図られました。在宅で過ごす時間が増え勤務先で働いていた方がリモートワーク勤務となる、学校に通っていた子どもがオンラインで授業を受けるなど、家族が家で過ごす時間が増えました。これらの影響によると思われますが、区では、犬の登録数が令和3年度に前年度から1,689頭増加するなど犬を飼育する人が増えていることをはじめ、区民がペットとの生活による癒しを求めたり、ペットが家族の絆を深める役割を担っていることが伺えます。 (2)高齢化と少子化・核家族化の進展による、飼育困難となるケースの発生 全国的に少子高齢化が進んでおり、区においても同様の傾向があります。近年、世田谷区の人口全体が増えている傾向があり、高齢化率は横ばいですが、高齢者人口は増え続けています。令和7年に向けて後期高齢者(75歳以上)が増え、その後も高齢者人口全体は増え続け、令和22年は団塊ジュニアの世代が65歳を迎えると想定されています。 一方、少子化という全国的な流れがある中、区では、10代から30代前半までの年齢層において、転入超過の状況にあり、人口、子どもの数ともに増加し続けていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年7月から転出超過の状況が続き、令和3年4月1日時点の人口は平成26年以降、はじめて前年度同月を下回る結果となりました。区の合計出生率(合計特殊出生率)は、全国や都全体と比べて低い数値で、平成27年ごろまで回復傾向にありましたが、その後、低下傾向に転じています。今後の区の人口推計では、年少人口(0〜14歳)は、緩やかな減少傾向が続き、生産年齢人口(15〜64歳)は、当面は微増傾向で推移していきます。高齢者人口(65歳以上)は一貫して増加が続き、今後の10年間で約2万3千人の増加(約13%の増加)となる見込みです。区の人口移動を見てみると、10代から30代前半までの年齢層において、緩やかな転入超過の状況となる見込みです。核家族世帯の増加につながっていると考えることができます。 核家族化の進行、地域社会との関わりの希薄化の進行は継続しており、身近に相談できる人がいない、必要な情報が得られない、といった状況が生じている懸念があります。近年区内でも、高齢者の飼い主が、急遽入院が決定した際などに、ペットの預け先をどうすればよいか、といった相談が多くなっており、ペットの飼い主が高齢や入院等による理由で、動物の飼育が困難になる事例が発生するようになりました。 出典:第8期 世田谷区高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画 出典: 世田谷区将来人口推計(令和3年7月) (3)災害時における同行避難ペット数の増加 令和4年5月、東京都は最新の知見等を踏まえた首都直下地震等による東京の被害想定を新たに公表しました。あわせて区の被害想定も示しており、人口の増加等を理由として避難生活者が増加することが見込まれていることから、災害時に同行避難するペット数も増えることが想定されます。 (4)犬猫のマイクロチップ装着義務化に伴う、ICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展  新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、緊急事態宣言等による不要不急の外出を控える要請がなされ、区役所の窓口に来所することが難しい状況となりました。 区は、コロナ禍を背景に、令和2年度後半から令和3年度における区政運営の指針として「世田谷区政策方針」を策定しました。その柱の一つとして「施策事業の本質的な見直し、事業手法の転換」を掲げ、ICT等を活用した行政サービスの向上に取り組むとともに、時代の変化に敏感な若い世代の提案を受け入れ、新しいスタイルの働き方で区の業務の効率化を一層進めています。 また、令和4年6月1日より、一部改正された動物の愛護及び管理に関する法律(以下、「動物愛護管理法」という。)が施行され、犬猫等販売業者は、犬又は猫を取得したときは、取得してから30日以内に、当該犬又は猫にマイクロチップを装着し、その情報を環境省が整備するデータベースに登録することが義務化されました。それに伴い、狂犬病予防法の犬の登録の手続きの特例措置が実施され、上記データベースに飼い主が犬の情報を登録することで、狂犬病予防法上の犬の鑑札とみなす制度が開始されました。 区は、国や東京都の動向を踏まえ、区民の利便性を向上させるため、飼い犬に関する手続きのオンライン化を推進していきます。 (5)動物由来感染症予防の推進  人と動物に共通する感染症として、特に危険性が高い病気(狂犬病、高病原性鳥インフルエンザ)は、動物への感染予防(飼育施設の衛生管理、排泄物の速やかな清掃、餌・水を清潔に保つ、感染の疑いのある動物と隔離)、人への感染予防(衛生的な飼育管理、ペットとの過剰なふれあいを控える、排泄物等を処理したときは手をよく洗い・消毒を行う)を行うことが重要となります。狂犬病のように犬に予防注射をすることで未然に防げるものについては、積極的に啓発していくことが重要です。 第2章 人と動物との調和のとれた共生推進プランの改定について 1 基本理念 共生推進プラン基本理念 人と動物との調和のとれた共生社会を推進し、健康で豊かな生活環境を形成します。 世田谷区人と動物との調和のとれた共生に関する条例(以下「共生条例」という。)は、区における人と動物との調和のとれた共生社会の推進について基本的な理念について定めたものです。 共生推進プランは、平成16年4月1日に施行された共生条例第3条に基づく計画です。区の動物関係施策の基本的な方針や取組むべき施策を定めたものであり、区民、ボランティア・関係団体、区といった動物関係施策に関わる様々な主体に共通の行動指針となるものです。 第2次共生推進プランの基本理念は、共生条例及び第1次共生プランの理念を踏まえつつ、新たな課題等を加え、今後重点的に取組むべき施策及び目標として基本理念を定めました。 2 めざすべき全体像 全体像 人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、区民、ボランティア・関係団体等、区がそれぞれの役割を果たしながら、互いに連携・協力して取組みを進めていく必要があります。各主体が協働し、区民の健康で豊かな生活環境の形成に寄与し、人と動物とが幸せに暮らすことのできる安心・支えあいの共生社会の実現をめざします。 区民、ボランティア・関係団体、区がそれぞれの役割を果たしながら、安心・支えあいの共生社会を実現するため、互いに連携協力できる体制づくり、人と動物との調和のとれた共生社会を推進し、健康で豊かな生活環境を形成します。 3 共生推進プラン改定にあたっての視点  動物行政に精通した学識経験者や獣医師、東京都動物愛護推進員、ボランティア団体等の代表者、町会役員、区関係所管等の委員から構成される「世田谷区人と動物との共生推進のための連携協議会」(以下、「協議会」という。)における議論、区民意見募集、区民参加のワークショップの実施により幅広く意見を聴取し、様々な立場からの意見を反映し、共生推進プランを改定しました。 4 目標設定の方向性(考え方) (1)理念の継承  平成16年4月1日施行の共生条例は、区の動物愛護行政に関する普遍的な理念である「人と動物との調和のとれた共生社会の推進」の実現に向けて、区及び区民の拠り所となるものです。また、共生推進プランはこの理念を具現化し、推進する行動計画となります。この共生条例及び第1次共生推進プランをより多くの区民に啓発し、浸透させていくことが共生社会の推進につながることから、第2次共生推進プランにおいても理念を継承します。 (2)共生推進プランの期間  第2次共生推進プランは、令和5年度から令和13年度までの9年間を計画期間とします。重点施策については数値目標による進行管理を行い、策定から5年後を目途に中間評価を行い、必要に応じて計画の改定を予定しています。 (3)定義  共生推進プランで言う動物とは、動物愛護管理法第7条第7項の規定に基づき、環境省で定める「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(令和4年5月26日環境省告示第54号)に規定されている動物(哺乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物)のうち、愛がん動物又は伴侶動物(コンパニオンアニマル)として家庭等で飼養及び保管されている動物とします。 (4)目標設定の考え方  第2次共生推進プランでは、共生条例及び第1次共生推進プランの理念を継承しつつ、新たな課題等を加え、今後重点的に取組むべき施策として目標設定を行い、9年後に達成しているべき目標を定めます。 目標1 区民と動物が安心できるコミュニティの形成【新規】  人と動物との調和のとれた共生社会実現するためには、飼い主が飼っているペットが地域社会に受け入れられていると認識すること、及び動物を飼ったことがない人や苦手な人も含め、命ある動物に対する理解を深め、動物が人の生活環境内に存在しているという認識が必要となります。人と動物との調和のとれた共生社会がどの程度達成されているか、各施策の有効性を図る指標として、ペットを飼っている人と飼っていない人とが共に地域社会で安心して暮らせる生活環境が実現できていると考える度合いの調査を実施し、各施策に取組んでいきます。 ≪人と動物との共生社会(飼い主と区民が安心して暮らせる生活環境)の実現度合いに関する調査≫ 現況 令和13年度 平均約60点/100点(令和4年度) 平均75点以上/100点 目標2 人と動物との共生推進事業の推進【新規】  人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、区民、ボランティア・関係団体等、区がそれぞれの役割を果たしながら、互いに連携・協力して取組みを進めていく必要があります。人と動物との共生推進事業を推進していくためには、地域の動物の状況及び課題の把握と、各主体の連携を促進するためのボランティア(世田谷区動物連絡員)の活動が重要となります。世田谷区動物連絡員の登録人数76名をめざします。 ≪世田谷区動物連絡員登録数≫ 現況 令和13年度 令和5年度より実施 76名 目標3 飼い主のいない猫対策の推進【継続】  人と動物との調和のとれた共生社会において、飼い主のいない猫は害獣として駆除するのではなく、地域住民の理解のもと、地域住民が飼い主のいない猫の餌や糞尿の管理等一定のルールに基づき、適正に管理するとともに飼い主のいない猫の増加を防止し、一代限りでその命を全うさせ、飼い主のいない猫の減少を図る「地域ねこ活動」を推進する必要があります。その活動の中で、猫の不妊・去勢手術の費用助成制度を普及啓発し、年間助成件数180件をめざします。 ≪飼い主のいない猫の不妊・去勢手術の助成件数≫ 現況 令和13年度 138件(令和3年度) 180件 目標4 動物由来感染症予防の推進(狂犬病定期予防注射の徹底)【継続】 動物由来感染症とは、動物から人に感染する病気の総称です。狂犬病は、動物由来感染症の一つで、狂犬病に感染した動物にかまれることにより人に感染します。現代でも治療法はなく、発症すると100%死亡します。日本では、現時点で狂犬病は発生していませんが、毎年世界では推計で5万9千人が亡くなっています。 新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、海外からもたらされる感染症のリスクは再認識されているところです。世界には非常に多く動物由来感染症が存在しており、特に海外ではむやみに野生動物や飼い主不詳の動物に触れてはいけないことを普及啓発することが必要となります。また、ペットが介在する動物由来感染症に対する正しい知識は、人と動物との共生社会の実現に必要な知識となります。飼い主をはじめ、区民やボランティアへの普及啓発の充実が必要です。 区では、近年、狂犬病予防注射の接種率は緩やかな低下傾向が続き、令和3年度で74%となっています。一層の普及啓発に力を入れて、本来接種率は100%をめざすべきですが、現状からの接種率向上をめざすものの、病気等により獣医師の判断で接種しない場合や、死亡届が出ていない犬が少なからず存在することも考慮し、接種率80%をめざします。 ≪狂犬病予防注射の接種率≫ 現況 令和13年度 74%(令和3年度) 80% 第3章 区民、ボランティア・関係団体の役割と区の役割 1 区民の役割  人と動物との調和のとれた共生社会の実現のためには、動物を飼っている人だけでなく、飼ったことがない人や苦手な人も含め、それぞれの立場に配慮し、お互いを思いやり、すべての区民が、命ある動物に対する理解を深め、動物が人の生活環境内に存在しているという認識のもと共生社会を推進しなければなりません。 ・飼い主は、マナーを守って動物を適正にかつ、生涯にわたって責任をもって飼養するように努めなくてはなりません。 ・すべての区民が、命ある動物に対する理解を深め、動物が人の生活環境内に存在しているという認識のもと共生社会を推進しなければなりません。 ・人と動物とが気持ちよく共生できるように、すべての区民がマナーとルールを守ることで環境の確保を行うことが求められます。   2 ボランティア・関係団体等の役割  動物関係のボランティア団体、東京都獣医師会世田谷支部(以下、「獣医師会」という。)や町会等の関係団体は、人と動物との調和のとれた共生社会の実現のために、行政等関係機関と連携・協働していきます。また、行政と連携・協働し、飼い主のいない猫対策、災害時のペット救護活動等協力体制の推進、狂犬病予防注射等を更に推進していきます。 ・飼い主が動物の飼育が困難となる事例等、地域社会の生活環境を脅かす状態となっている場合の問題解決に向け、行政等関係機関と連携・協働します。 ・行政と連携・協働し、飼い主のいない猫対策、災害時のペット対応、狂犬病予防注射等を更に推進します。 3 区の役割  区は、協議会の議論を踏まえ、人と動物との調和のとれた共生社会の実現に向けた取組みを推進していきます。 飼い主が動物の飼育が困難となる事例に対し、飼い主の支援及び動物の保護、譲渡等に向けた相談体制を関係機関と連携して構築します。 ・協議会の議論を踏まえ、人と動物との調和のとれた共生社会の実現に向けた取組みを推進します。 ・様々な活動主体と各種啓発や飼い主のいない猫対策活動等での連携・協働を行います。 ・飼い主が動物の飼育が困難となる事例に対し、飼い主の支援及び動物の保護、譲渡等に向けた相談体制を関係機関が連携して構築します。 ・災害時の備えに関する啓発やペット同行避難にむけた体制整備等を推進します。 ・犬の登録、狂犬病予防注射の徹底、飼い犬や飼い猫飼育のマナー啓発、飼い主の いない猫対策の支援、動物愛護等、正しい知識の普及啓発等を行います。 第4章 区における人とペットを取り巻く現状 1 ペットの飼育状況 (1)犬 @犬の登録数の推移  区内の犬の総登録数は、近年、増加傾向にあります。令和3年度における区内の犬の総登録数は40,869頭で初めて4万頭を超えました。新規登録数は、近年は3,000頭程度で、横ばいで推移していましたが、令和2年度以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、自宅で過ごす時間が増えた事やコロナ禍における癒しを求めて新たにペットを飼育する人が増えたことが要因と思われる新規登録の増加があり、令和2年度、3年度と3,600頭を超える新規登録がありました。その結果として、総登録数も過去最多を記録しています。 一方、全国的にも、コロナ後に新規登録は増えていますが、総登録数としては平成23年度をピークに犬の登録数は減少傾向にあります。 A犬の登録状況(地区別)  区内の地区別の登録状況は以下の通りです。  最多の登録があるのは、深沢まちづくりセンター管内で、3,080頭、最少は北沢まちづくりセンター管内で、848頭です。人口及び1世帯あたりの飼育頭数は、成城まちづくりセンター管内が最多、最少は松原まちづくりセンター管内となっています。比較的、単身者が多く住むエリアでは飼育割合は低く、世帯構成人員が多いエリアでは飼育割合は高いことを示しており、1世帯あたりの人員と犬の飼育割合(世帯比)については、1世帯あたりの人員が多くなると犬の飼育割合が高くなることが示唆されました。 ※ドットは前ページの「まちづくりセンター管内ごとの犬登録数」に対応しています。 ※区内では、1世帯あたりの人員が多くなると犬の飼育割合が高くなる傾向があります。 B狂犬病予防注射の注射済票発行枚数の推移と接種率  区での狂犬病予防注射接種率は、73〜79%で推移しています。近年、接種率は、低下傾向がみられますが、世田谷区の予防接種率は、74.5%であり、全国平均71.3%、東京都平均73.0%(いずれも令和元年度平均値)を上回っています。 ? (2)猫  猫は、登録制度が無いため正確な頭数の把握は困難ですが、東京都や民間で実施された実態調査から得られた飼育比率や平均飼育頭数から推計すると、令和3年現在、区内の猫の飼養頭数は、約8万頭と推定されます。 ? (3)教育現場における動物飼育 区では、人と動物との共生推進事業の一環として、獣医師会に委託し、区立小学校、区立幼稚園、区立保育園にて飼育されている小動物の飼育指導及び無料治療を実施しています。  件数は、年間120〜160件前後で推移しています。 ? 2 ペットに関する苦情相談 (1)苦情相談件数の推移  区におけるペットに関する苦情相談件数は、年間500件程度であり、大半が犬または猫の相談です。また、犬よりも猫に関する苦情件数が多い傾向にあります。 (2)犬の相談 @相談内訳  犬の苦情内訳では、糞尿被害と鳴き声に関する苦情が例年それぞれ3〜4割を占めています。年度によって、糞尿が多い年度や鳴き声の相談が多い年度もありますが、例年その二つで、相談件数の7割以上を占めています。 ? A咬傷事故件数の推移  飼い犬が人を噛んだ際は、東京都動物の愛護及び管理に関する条例により、24時間以内に保健所に連絡を行い、48時間以内に獣医師の診断をうける必要があります。近年、区での咬傷事故は年間20〜30件前後で推移しています。 区では、咬傷事故防止のために、区内の警察署と合同で、ノーリードで散歩をする犬の監視パトロールやチラシの配布など、咬傷事故抑止の活動を行っています。 ? (3)猫の相談 @相談内訳  猫の相談件数としては、糞尿の相談が2〜3割と最も高い割合となっていますが、餌やりなどの相談を含むその他が6〜7割を占めており、相談が多岐に渡っていることが伺えます。 ? A飼い主のいない猫の不妊去勢手術 区では、区内に生息する飼い主のいない猫の世話をしていて、飼い主のいない猫が生息する地域への説明等を実施した方を対象に、不妊去勢手術費用の一部助成を行っています。獣医師会に所属する動物病院で手術を実施しており、近年は、130〜160件の助成をしています。  助成件数は、オスよりもメスが多い傾向となっています。 ? B飼い猫の不妊去勢手術 区では、飼い猫に不妊・去勢手術を受けさせることを奨励し、猫のみだりな繁殖及び飼い主のいない猫の増加による区民の生活環境が害されることを未然に防止することにより、人と動物との調和のとれた共生社会の推進に資するため、飼い猫の飼い主を対象に、不妊去勢手術費用の一部助成を行っています。獣医師会に所属する動物病院で手術を実施しています。近年は、1,000〜1,300件の助成をしています。  助成件数は、オスよりもメスが多い傾向であるのは、飼い主のいない猫と同様ですが、その差は小さくなっています。 第5章 区の取組むべき事項 1 飼い主と区民が安心して暮らせる生活環境の形成【新規】  人と動物との調和のとれた共生社会の実現のためには、飼い主が飼っているペットが地域社会に受け入れられていると認識すること、動物を飼ったことがない人や苦手な人も含め区民全員が命ある動物に対する理解を深めること、区民は動物が人の生活環境内に存在していると認識することが必要となります。その認識の度合いを飼い主満足度として数値化し、以下の各施策を行うことで向上を図ります。 (1) 動物愛護の普及啓発 @飼い主の飼育マナー等の啓発 動物愛護管理法第7条第4項では、飼い主の責務として、「動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達成するうえで支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること「終生飼養」に努めなければならない。」と定めています。また、第5項では、「動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。」とも定められており、みだりに繁殖して飼育が困難にならないよう不妊去勢手術等の繁殖制限措置を講じるよう努めることを求めています。 ペットが家族の一員としてだけでなく、地域の一員として受け入れられ、人と動物とが共生した地域社会を築いていくためには、飼い主が秩序(飼育マナー、周辺環境への配慮等)を守り、責任(終生飼養、経済的負担に対する備え等)を持って飼育することが重要です。住宅密集地である区において、地域の特性に配慮したペットの適正な飼い方と、飼い主の責務としてのしつけの重要性について、飼い主をはじめ区民全体へ正しい知識の普及啓発の充実を図ります。 ・リーフレット等の配布 犬の飼い主に対し、保健所窓口やイベント時に、愛犬手帳、せたがや犬のマナーブック、ペット用汚物処理袋を配布し、犬を飼育するときのマナーを啓発していきます。 ・猫の室内飼養の推奨 猫にとって外の世界は、交通事故や、様々な感染症の罹患などのリスクがあり、危険です。飼い主によっては、猫は外で自由に生きるべきだとする考え方も存在します。しかしながら、猫が飼い主の目を離れ、外の世界で危険に直面した際に、飼い主には猫を守るすべがありません。 猫は、室内に十分な餌と清潔な飼養環境を用意し、上下運動が可能なスペースを整えれば、ストレスを与えず健康に飼育することが可能な動物です。区では、飼い猫を安全な場所で健やかに過ごさせることは適正飼養の一部であり、飼い主の重要な責任であると捉え、リーフレットやポスターの掲示、各町会・自治会への回覧などを通して飼い主に対し猫の完全室内飼養を普及・啓発していきます。 ? ・犬のしつけ方に関する講座の開催  犬の飼い主に対し、犬の飼い方やしつけ方に関する講座を定期的に開催します。専門の講師(ドックトレーナー)が、座学だけでなく、実演や実技を交えた講義を行います。犬との良好な関係のつくり方や、飼育マナー、災害時の備えなどについて周知し、飼い主の交流も促進しています。 ・マナープレートによる啓発 飼い主による犬の糞や尿の後始末を啓発するため、マナープレートを配布しています。保健所のほか、各総合支所くみん窓口、出張所、まちづくりセンターで配布をしています。 ・ノーリードに対する注意喚起 散歩のときに犬をリードから放すことは、東京都動物の愛護及び管理に関する条例で禁止されています。犬をリードから放してしまうことで、犬が通行人に飛びついてしまう、犬が思わぬケガをしてしまうなど、事故が発生する危険性があります。区では、マナープレートを配布し、積極的に啓発を行っていきます。 ? A飼い猫の不妊・去勢手術への助成金交付 猫は非常に繁殖力の強い動物です。また、発情期には、鳴き声や尿のにおいが強くなるなど、近隣の方への影響も懸念されます。そのため、飼い猫に不妊・去勢手術を施すことが強く推奨されます。  さらに、手術の施されていない飼い猫を放し飼いにしていると、外で生活する他の猫と交配して知らないところで子猫が生まれ、飼い主のいない猫を増やしてしまう場合もあります。 区では、猫のみだりな繁殖によって、区民の生活環境が損なわれることを未然に防止するため、飼い猫の不妊・去勢手術費用の一部助成を行っています。  先に触れたように、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、家で過ごす時間が増えたことによる影響で、新たにペットを飼う人が増えている傾向にあり、犬だけでなく猫の飼育頭数も大幅に増加したことが推測され、区の助成額は令和2年度に過去10年間で最高となり、令和3年度も高い水準を維持しています。区では引き続き、飼い主に猫の不妊・去勢手術の重要性の周知を行い、積極的な手術の実施を呼びかけていきます。 B区による普及啓発事業 ・動物愛護週間 動物愛護管理法に基づき、9月20日〜26日は、「動物愛護週間」と定められています。動物愛護週間をきっかけに、動物が好きな人も苦手な人も命の大切さを再認識し、動物の飼育マナーや、人と動物との共生についてあらためて理解を深める場とするため、区ではパネル展示等の啓発事業を実施していきます。 ? ・動物フェスティバル 毎年11月には、動物とのふれあいを通して動物に対する理解と愛情を深めることを目的として「動物フェスティバル」を区で開催しています。 保健所のブースでは、東京都動物愛護推進員の協力を得ながら、クイズ形式で動物愛護や適正飼養について呼びかけるとともに、愛犬とのよりよい暮らしづくりに必要な「しつけ方教室」を開催しています。ドッグトレーナーによる実演や、飼い主と犬が一緒に参加し、散歩の仕方やしつけの基本を一緒に学び、飼い主の交流も促進します。また、獣医師会の協力により、長年にわたり深い愛情をもって飼養している飼い主をたたえる高齢犬表彰も行っています。 ? ・教育現場における普及啓発の支援 区は、獣医師会や教育機関と連携し、幼児・児童に対する動物愛護教育及び飼育動物の適正な飼養管理の支援をしています。 C 動物の遺棄・虐待を防止する取組み 区は、動物の遺棄・虐待を未然に防止するため、ポスター等により、遺棄・虐待が犯罪であることについて、周知を図るとともに、区民からの情報や相談に対し現場調査を実施し、飼い主への説明を行うことでペットが適正に飼育されるように努めています。 動物の虐待を疑う事例や、不審死の事例があった際には、警察、東京都、獣医師、ボランティアや地域住民等と連携し、早期解決及び再発防止に努めます。 (2) 災害時の動物救護体制の充実  災害は突然起こります。被災者のなかには、ペットを飼養する方もおり、ペットとともに災害を乗り切る必要があります。区では、獣医師会をはじめ、被災動物ボランティア、町会、自治会、関係団体と連携・協力について協議を進めており、災害に備えています。 @在宅避難の備え 区では、在宅避難の周知・啓発活動を行っています。避難所は自宅被害等に遭われた方がやむを得ず一時的に滞在するところであり、倒壊等の危険がなく、安全が確保されている住居がある方は必ずしも避難所へ避難する必要がなく、その住居にとどまることが原則となります(※)。日頃の環境とは異なる避難所での生活は、避難者だけでなく動物にとっても過度なストレスになることからも、各家庭において日頃より住宅の耐震化や家具の転倒・落下・移動防止を行い食料や水など必要なものを確保するなど、人・ペット共に在宅避難のための備えが重要であり、その周知・啓発に取組んでいきます。 Aペット同行避難の周知  区では、やむを得ずペットを同行して指定避難所へ避難する場合を想定し、避難所運営マニュアル(標準版)(平成30年修正版)にて、災害が発生した際のペット同行避難に関して、標準的なルールを定めています。パンフレット「災害時にペットを守るために」及びチラシ「ペット同行避難のルール」を作成及び配布し、災害時の対応方法や同行避難のイメージ、日ごろの備えなどを区民に周知しています。  また、避難所運営訓練にて、実際の受け入れのシミュレーションを行い、問題点や課題の洗い出しを進めていきます。 B被災動物ボランティア制度 区では、災害時に避難所等で活動するボランティアの登録制度を平成28年より実施しています。 ボランティアは、活動内容に応じて三つの種類があり、令和4年4月現在、全体で144名の登録があります。また、災害時に備えた研修会も毎年1回開催しています。 ・ 災害時活動ボランティア 避難所等における被災動物のためのスペースの管理、施設提供ボランティアが提供した施設等の維持運営及び被災動物の世話等の支援を行います。 ・ 情報管理ボランティア ホームページへの掲載、ソーシャルネットワークサービス等の活用により、被災動物の受入状況等に関する情報の提供を行います。 ・ 施設提供ボランティア 被災動物を一時保護するための施設(区内又は区と他の区若しくは市との境界付近に存するものに限る)の提供を行います。 C獣医師会との災害時協定 区では、獣医師会と災害時の動物救護活動についての協定を平成17年に締結しています。 災害発生時には、獣医師会に所属する動物病院が救護所となり、被災した動物の応急手当を受けることができます。また、被災した動物の保護管理、被災した動物に関する情報提供、動物飼育の助言などについても、区と協力して救助活動を行います。 Dマイクロチップ装着の普及啓発  災害時は、どんなに気をつけていてもペットと離れ離れになってしまう場合があります。令和4年6月1日より、犬と猫に関するマイクロチップ装着の新たな制度が始まりました。これにより、飼い主の登録・変更手続きのオンライン化による手続き負担の軽減と逸走した犬や猫の情報を地方公共団体及び警察で共有し、飼い主のもとに犬や猫が戻る確率の向上が見込まれます。すでに飼われている犬や猫はマイクロチップの装着が努力義務となりますが、逸走時のメリット等を飼い主に周知し、装着と情報登録の啓発を国や東京都とともに進めていきます。 (3) 犬の飼い主へのアンケート調査  令和3年度から犬の飼い主の実態把握を目的として、「狂犬病予防注射のお知らせ」と併せて、オンラインで回答する愛犬の飼育に関する実態アンケート調査を実施しています。  令和4年度より飼い主と区民が安心して暮らせる生活環境の形成の指標となる調査項目を充実し、共生推進プランの進捗状況を把握していきます。 2 共生推進ボランティアの制度・助成の実施【新規】  共生推進プランの理念実現のために、協議会での議論(特に、社会情勢の変化に対応)を踏まえ、効果的な施策を展開していきます。共生推進事業は、区のみで達成できるものではなく、区民、ボランティア・関係団体、区が互いに連携・協力して取組みを進めていく必要があります。主体の一つであるボランティアについて、共生推進プランを推進するための制度を新たに構築していきます。 (1) 世田谷区人と動物との共生推進のための連携協議会 区では、飼い主が動物を適正に飼育することが困難な状況が生じたときに、飼い主の支援及び動物の保護、譲渡等に向けた相談体制の構築を関係機関が連携して推進するため、「世田谷区人と動物との共生推進のための連携協議会」を設置しました。 協議会では、学識経験者、獣医師、町会役員、東京都動物愛護推進員、動物の保護や譲渡をするボランティア団体等に所属する者、東京都動物愛護相談センター、区関係所管を委員とし、人と動物との調和のとれた共生社会の実現に向けた取組みの推進に関する事項等を協議・検討し、ペットの飼育困難事例や、地域における動物にまつわる困りごとについて、区民、ボランティア・関係団体、区が連携・協力して対応していくための意見交換を行います。 (2) 共生推進ボランティア事業の実施  区は、区民、ボランティア・関係団体と連携・協力し、互いの役割を果たしながら、人と動物との調和のとれた共生社会をめざしています。共生社会実現のために区と協働して取組んでいただけるボランティア制度を実施します。 @ 世田谷区動物連絡員制度 多頭飼育崩壊が一度発生するとその解決に向けての活動には、区民、ボランティア・関係団体、区それぞれに多大な負担が発生します。多頭飼育崩壊に至る前に予防・防止する活動が重要となります。地域の動物の状況及び課題の把握と、各主体の連携を促進するためのボランティア(世田谷区動物連絡員)の活動が重要となります。各活動地域における、区民からの連絡・相談に対し、区と協働して課題把握に取組む世田谷区動物連絡員制度を令和5年度より開始します。 (3) 飼育困難・多頭飼育崩壊事例解決に向けた取組み @ 高齢者等による一時的な飼育困難への対応 少子高齢化や核家族化が進み、動物は私たちに心の癒しを与え、また家族の絆を深めてくれる家族の一員となり、そして人生のパートナーとして位置づけられる大切な存在となっています。 一方で近年、区内でも、高齢者の飼い主が急遽入院の際などに、ペット預け先をどうすればよいかという相談を多く受けます。ペットは、終生飼養が原則です。飼い始める段階で、もしもの時の場合に備えることの重要性や高齢者等が一時的に飼育困難となった場合にあらかじめ預け先を決めておく等事前の備えについて、普及啓発を行っていきます。 また、高齢者のペット飼育を重点課題ととらえ、協議会での議論を行い、高齢者が安心してペットを飼育できる社会をめざします。 A  多頭飼育崩壊への対応 飼い主が高齢等に伴い、判断力、認知能力が低下したことや、社会との結びつきが希薄となったことによる社会的な孤立、経済的困窮など様々な理由などによって、飼っているペットが、飼い主自身で管理しきれない数に増えてしまう、いわゆる多頭飼育崩壊が区内でも発生するようになりました。近年、区内でも、高齢者の飼い主が飼い主のいない猫を家の中に入れた事が発端で、適切な不妊去勢手術を行わなかった事により、最初は2匹だった猫が、2年で50匹以上にまで増え、悪臭や害虫の発生といった周囲の生活環境の悪化を招く事例が発生しています。このような課題に対応するためには、飼い主と動物の双方への働きかけが重要であり、人と動物とが末永く共生できるよう、人と動物に関係する様々な機関が連携・協力して解決をめざしていく必要があります。 地域包括ケアの地区展開の枠組みの中で、福祉担当所管や、地区において区民の身近な相談に応じているまちづくりセンター等と情報を共有し、飼い主や近隣住民にも寄り添い、区が飼い主と動物の両面から働きかけ、飼い主本人、動物、また近隣住民の生活環境の改善を図ります。 B  活動ボランティアへの助成制度 上記@Aの事例に対して、区では庁内関係所管、獣医師会や動物保護施設、ボランティアの方々等と連携・協力しながら、人と動物の共生をめぐる様々な課題の解決に向けて対応しています。 その活動主体の一つであるボランティアについては、寄附や募金を中心に活動費用をあてており、新型コロナウイルス感染症の影響も加わり、継続的な活動が大変困難な場合もあります。また、多頭飼育による生活環境の崩壊の解決を協働して行っているボランティアには、保護したペットに対する多額の費用負担が発生する場合があり、それが継続的な活動を難しい状況としている場合があります。これらを踏まえ、動物関係の諸問題に区と協働して取組むボランティアに対して支援を実施します。 3 地域ねこ活動の推進・普及啓発【継続】 (1)地域ねこ活動の推進 地域ねこ活動とは、飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を施し、定期的な餌やりやトイレの管理などの一定のルールの下で、地域の理解を得ながら適切に管理を行い、飼い主のいない猫の数を減らしていくことをめざす活動です。 区では、地域ねこ活動の紹介リーフレット、「飼い主のいない猫対策の手引き」等を作成し、猫の問題にお困りの方、猫に餌を与えている方それぞれへの本事業の周知に取組んでいます。また、猫が多く存在している地域にはボランティアとともに自治会への説明を行うなどして、活動を円滑に進めていくための地域の合意形成を支援していきます。 @ 地域ねこ活動の概要(現状の取組み) ・世田谷区地域ねこ活動セミナーの実施 区では、地域ねこ活動の普及・推進のため、「世田谷区地域ねこ活動セミナー」を実施しています。講師として、本事業に長年携わっているボランティアや、実際に地域ねこ活動に取組んでいる町会・自治会の方などをお招きし、実際の活動事例、活動時のノウハウや流れ、注意点などについて講演していただいています。猫の問題に困っている方や、猫に餌を与えているものの、これからどのような行動を起こせばよいかわからず悩んでいる方、ボランティア活動にすでに取組まれている方など、さまざまな立場の方が参加され、現状についての相談や、意見交換、飼い主の交流の促進を行っています。 今後も、地域ねこ活動が地域住民を中心に、地域に根差した活動として区内全域に展開されるよう、広報活動・相談対応を通して地域の支援を行っていきます。 ・飼い主のいない猫の不妊・去勢手術助成金の交付 地域ねこ活動を推進するため、飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を実施することを支援することを目的として、獣医師会との協定により、獣医師会に所属する動物病院にて猫の不妊・去勢手術を行う場合に手術費用の一部を助成しています。 助成制度の普及啓発を行い、助成件数の目標達成に向けて取組んでいきます。 ・地域への普及啓発 猫の糞尿被害の軽減のため、猫に餌を与えている方に対して、猫用の餌を外に置いたまま放置することなど、不適切な餌やり行為によって周辺の生活環境が害されることのないよう、問題が発生した箇所には置きエサ禁止のマナープレートの掲示などによって啓発しています。また、周囲への配慮として猫用トイレの設置を含めた周辺環境美化の呼び掛けを行います。猫の糞尿等の被害に困っている方に対しては、猫が嫌がるにおいのするもののうち、比較的身近で手に入れやすいもの(例:酢やみかんの皮、とうがらしなど)を紹介し、これらを使用した被害箇所への猫の忌避実施を推奨していきます。 A 世田谷区動物連絡員制度を活用した取組み  地域ねこ活動等の正しい知識・実施方法の普及啓発を区と世田谷区動物連絡員が協働して実施します。  区民に対して、地域で身近に活動する世田谷区動物連絡員による区で作成している地域ねこ活動に関する各種リーフレット等を用いた地域ねこ活動の普及啓発活動、区主催の世田谷区地域ねこセミナー等のイベント告知を行っていきます。 4 狂犬病定期予防注射及び動物由来感染症の普及啓発【継続】 (1) 狂犬病予防注射の普及啓発 狂犬病予防法により、飼い主には生後91日以上の犬に毎年1回の狂犬病予防注射を受けさせることが義務づけられています。区では、以下の取組みを実施し、飼い主に対し接種を呼び掛けていきます。 ・狂犬病定期予防注射のお知らせ 区では、狂犬病予防注射の接種率向上のため、毎年3月下旬にすべての登録済みの犬の飼い主に対し、狂犬病定期予防注射のお知らせを郵送しています。 ・獣医師会との狂犬病定期予防注射実施に関する協定 獣医師会と狂犬病定期予防注射実施に関する協定書を平成20年に取り交わし、それに基づき、狂犬病予防注射済票交付を委託しています。これにより、区民は区内の獣医師会に所属する動物病院で、狂犬病予防注射と狂犬病予防注射済票の交付が同時にでき、保健所等の窓口に来所して注射済票交付申請手続きをする必要がなくなります。 ・ポスター広報 狂犬病予防注射を推進するため、啓発ポスターを作成し、獣医師会に所属する動物病院や各総合支所くみん窓口などで定期予防注射期間に合わせてポスターの掲示を行っています。 (2) 動物由来感染症に関する正しい知識の普及啓発  動物由来感染症とは、動物から人に感染する病気を表す言葉です。新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、海外からもたらされる感染症のリスクは再認識されているところです。日本で発生する場合もありますが、世界中では例外的に動物由来感染症が少なく、寄生虫や真菌による疾病を入れても数十種類程度と思われます。しかし、世界には非常に多く動物由来感染症が存在しており、特に海外ではむやみに野生動物や飼い主不詳の動物に触れてはいけないことの普及啓発が重要となります。  また、ペットが介在する動物由来感染症に対する正しい知識は、人と動物との共生社会の実現のための必要な知識として、飼い主をはじめとした区民やボランティアの方への普及啓発を充実していきます。 ? 5 目標達成のために取組むべき事項 (1)積極的な広報活動  人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、本プランの理念や考えを区民に知ってもらい、共感を得ることが何よりも重要となります。動物を飼っている人だけでなく、飼ったことがない人や苦手な人も含め、正しい知識を広く知ってもらうよう取組んでいきます。 @  SNS等の積極的な活用 ICTの進展を踏まえ、ホームページのさらなる充実、保健所ツイッターによる広報、区広報広聴課で行っているメールマガジン・フェイスブックへの掲載、デジタルサイネージの活用等、区民に広く知ってもらうため、様々な手法を積極的に活用していきます。 A  既存啓発物品のさらなる活用 ポスターやプレート、パンフレット等すでに活用している啓発物品について、活用先・活用方法の検討を行い、新たな啓発手法に取組みます。 B  全区民への啓発 共生社会実現のためには、動物を飼っている区民以外の方への共生推進プラン理解促進が必要不可欠となります。動物関連施策の寄附金制度を導入することは、資金面のみならず区における人と動物との調和のとれた共生社会の推進を広く区民に訴えることにつながります。共生推進の活動主体の助けとなる区民にわかりやすい手法による寄附金制度導入の検討を進めていきます。 (2)関係機関との協力体制の構築 近年、動物の飼育が困難となる事例についての相談が多く保健所に寄せられています。問題解決のためには、動物だけに留まらず、飼い主の生活再建等が必要なケースもあり、保健所のみでは解決ができない場合もあります。福祉担当所管を始め、獣医師会、東京都、警察、各種団体との連携を強化し、多頭飼育崩壊のような、最悪の事態となる前に、飼い主・動物双方に負担が少ない段階での問題解決を進めていきます。 @  福祉担当所管、獣医師会との情報共有  飼い主の生活再建等が必要なケースは、保健所のみでは解決できず、一方、動物を飼っている場合は、福祉担当所管のみでは解決できない状況にあります。また、飼われている動物は、獣医師による治療が必要な場合もあります。日頃より関係機関相互による情報共有を行い、動物を飼っている方の状況等を共有する仕組みづくりを行います。 また、飼っている動物の変化を関係機関相互で共有し、飼い主のケアにつなげる仕組みも検討していきます。  A  東京都、警察との情報共有  令和2年6月1日に動物愛護管理法が改正施行され、動物の所有者等が遵守すべき責務規定の明確化、動物の適正飼養のための規制が強化されました。区に寄せられる相談でも、動物虐待を疑うケースも残念ながらあります。そういったケースを解決していくためには、区、東京都(動物愛護相談センター)、警察の連携・協力が不可欠となります。関係機関相互の情報共有の仕組みづくりを進めます。 B 様々な主体との協働体制 人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、上記@Aの関係機関以外の様々な主体(ボランティア団体、NPO団体、地域団体等)との連携した取組みが必要となります。多様な担い手と連携・協力する仕組みづくりを進めます。  C 飼い主の交流促進  飼育困難事例や多頭飼育崩壊などでは、身近に相談できる人がいなかったことが問題を大きくした要因の一つとなっています。世田谷区動物連絡員制度の活用と合わせて、飼い主どうしの交流を各種セミナーやイベント等で促進する取組みを行っていきます。 (3)ボランティアの拡充 人と動物との調和のとれた共生社会の実現のためには、区はもとより、飼い主、ボランティア、関係団体など共生を推進する多様な担い手の方々と連携・協力し、お互いの役割を果たしながら各種の取組みを進めていくことが必要となります。ボランティアが持続可能な活動を行うことができる仕組みづくりをすすめます。 @  ボランティア活動の周知 被災動物ボランティア及び世田谷区動物連絡員制度を区民向けに周知し、人と動物との共生を推進するボランティア活動に興味・関心がある方に対し、積極的に参加を促していく取組みを実施します。 A  ボランティア団体との意見交換 区には、すでに区と協働して日々活躍するボランティアが多数います。定期的にボランティアとの意見交換を行う場を設けて、情報共有、交流も促進できる仕組みづくりを検討していきます。 B  ボランティア事例検討会 人と動物との調和のとれた共生社会の実現のための活動を推進するための理念の共有や、被災動物ボランティア及び世田谷区動物連絡員の活動を行うにあたり必要な知識・スキルの獲得、最新の区内状況や各ボランティアの活動内容等の情報共有、交流を促進するため、検討会を開催します。 第6章 推進体制と進行管理 1 推進体制 区民、ボランティア・関係団体と区が連携・協働し、人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、それぞれの役割を果たしながら互いに連携・協力して取組みを進めていく必要があります。区は、区民、ボランティア・関係団体の取組みを支援するとともに、各事業の普及啓発に努めます。また、各施策の取組みの状況を協議会等に適宜報告し、助言を得ながら効果的に取組みを進めていきます。 2 共生推進プランの進行管理 第2次共生推進プランは、令和5年度から令和13年度までの9年間を計画期間とします。重点施策については数値目標等により実績評価・進行管理を行い、策定から5年後を目途に中間評価し、必要に応じて計画を見直します。