「世田谷区豪雨対策行動計画」(改定) 令和4年3月 世田谷区 世田谷区豪雨対策行動計画 はじめに 世田谷区では、近年頻発している局所的な集中豪雨から区民の生命と財産を守り、「水害に強い安全・安心のまち世田谷」を目指して、平成21 年に「世田谷区豪雨対策基本方針」、同22 年に「世田谷区豪雨対策行動計画」を策定し、その後、2回の行動計画の改定を経て豪雨対策に取り組んできました。 この間、国では令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等、全国各地での激甚化、頻発化する豪雨による水災害の増加に対応するために、多摩川水系流域治水プロジェクトを立ち上げるとともに、流域治水対策として特定都市河川浸水被害対策法、河川法、下水道法、都市計画法、建築基準法等の一部を改正する法律が公布しています。 また、東京都では、平成19 年に策定し、同26 年に改定した「東京都豪雨対策基本方針」に基づき、河川流域ごとの特性に応じた豪雨対策計画を策定し、河川・下水道の整備を進めています。 こうした中、「世田谷区豪雨対策行動計画(改定)」では、流域対策推進地区を追加し、また、グリーンインフラの視点を引き続き取り入れながら、「流域対策」を強化するなど豪雨対策を推進します。 令和4年3月 世田谷区長 保坂 展人 世田谷区豪雨対策行動計画 世田谷区豪雨対策行動計画(改定) 目 次 はじめに 1. 世田谷区豪雨対策行動計画の基本的な考え方 ............................................1 1.1 これまでの経緯 ....................................................................1 1.2 行動計画の位置付け ................................................................6 1.3 豪雨対策の4つの柱 ................................................................7 1.4 行動計画の体系 ....................................................................10 1.5 「本行動計画」の期間 ..............................................................11 1.6 前行動計画における取組状況を踏まえた課題............................................12 1.7 行動計画における目標 ..............................................................14 1.8 グリーンインフラの更なる推進・促進 .................................................18 2. 4 つの柱に対する行動計画 ............................................................19 2.1 「河川・下水道の整備」の推進 .......................................................19 2.2 「流域対策」の強化 .................................................................35 2.3 「家づくり・まちづくり対策」の促進 ..................................................62 2.4 「避難方策」の強化 .................................................................69 3. 進行管理等 ..........................................................................72 3.1 実施主体 ...........................................................................72 3.2 進行管理 ...........................................................................73 3.3 世田谷区及び東京都における主な整備内容の一覧 .........................................74 参考資料「雨の強さと降り方」 1 1. 世田谷区豪雨対策行動計画の基本的な考え方 1.1 これまでの経緯 1.1.1 国の経緯 国は、近年の気候変動等に伴い、水資源の循環の適正化に取り組むことが課題となっていることを踏まえ、その対策の一環として、雨水の利用を推進し、水資源の有効な利用を図り、あわせて、河川・下水道等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することを目的とした「雨水の利用の推進に関する法律」を平成26 年5月に施行しています。 また、国は、「水循環に関する施策を総合的かつ一体的に推進し、健全な水環境を維持し、または、回復させ、国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上」を目的とした「水循環基本法」を平成26 年7月に施行しており、水の貯留・涵養機能の維持・向上や水の適正かつ有効な利用促進を推進しています。 浸透 水インフラの適切な維持管理 蒸発散 ■「健全な水環境」とは、人の活動と環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態を言います。 出典:流域マネジメントの事例集(内閣官房水循環政策本部事務局)に一部加筆 図 1.1 水循環の示す姿 2 さらに、近年では、全国各地で水災害による甚大な被害を受けていることから、国は、 「水防災意識社会の再構築」の取組みをさらに一歩進め、気候変動の影響や社会状況の 変化などを踏まえて、あらゆる関係者が協働して流域全体で対応する「流域治水」への 転換を図ることが必要とされており、「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正す る法律」が、令和3年5月に公布しました。 ※1 現在は公布され、案が取れている。 図 1.2 特定都市河川浸水被害対策法等の概要(出展:国土交通省) 3 国と多摩川沿川の都県・区市町村等は、令和元年東日本台風に伴う多摩川沿川での広範囲の浸水被害も踏まえ、多摩川流域のあらゆる関係者が連携して、流域全体で水害を軽減させる治水対策の全体像として「多摩川水系流域治水プロジェクト」を、令和3年3月に策定して、流域治水対策を計画的に進めています。流域の自治体においては、浸水被害を軽減させる対策を目的に、雨水流出抑制施設の整備等が位置づけられています。 多摩川水系流域治水プロジェクトの中で、世田谷区内に関連する対策の概要は、以下の通りです。 ○氾濫をできるだけ防ぐ、減らすための対策 ・堤防整備、河道掘削、水衝部対策、調整池整備、分水路整備、護岸整備等 ・合流部対策の検討・実施 ・下水道樋管等のゲート遠隔操作化等 ・下水道施設(雨水幹線、貯留施設等の整備)による浸水対策 ・利水ダムにおける事前放流等の実施、体制構築 ・雨水貯留浸透施設整備(校庭貯留、浸透ます、浸透人孔等の設置、透水性舗 装、その他) ○被害対象を減少させるための対策 ・土のう等の備蓄資材の配備等 ○被害の軽減、早期復旧、復興のための対策 ・自治体との光ケーブル等接続 ・浸水想定区域の指定 ・タイムラインの高度運用の検討 ・マイタイムラインの取組や取組の推進 等 ・ハザードマップの作成・周知、まちごとまるごとハザードマップの検討 ・小学生を対象とした水防災教育の実施 ・要配慮者利用施設の避難確保計画作成の促進等 ・自治体職員対象の排水ポンプ車運転講習会 ・移動式排水設備(排水ポンプ車等)の整備、運用 4 1.1.2 東京都及び世田谷区の経緯 東京都と区市町村は、昭和61 年7月の「東京都における総合的な治水対策のあり方について(以下、「61 答申」という。)」の提言内容を実現するため、同年12月、東京都都市計画局(当時)、東京都建設局、東京都下水道局及び関係区市で構成する「東京都区部中小河川流域総合治水対策協議会(平成5年に「東京都総合治水対策協議会」に拡大改組、事務局:東京都都市整備局)」を発足させ、平成7年度までの間に「総合的な治水対策暫定計画」を策定し、総合的な治水対策を推進してきました。 しかし、近年、都内の多くの地域で局地的な集中豪雨が頻発しており、その中でも平成17 年9月には、杉並区・中野区を中心に甚大な浸水被害甚大な浸水被害をもたらし、世田谷区においても、広範囲で浸水被害が発生しました。 こうした状況を受け、東京都は、平成19 年8月に「東京都豪雨対策基本方針」を策定しました。この基本方針に基づき、「東京都総合治水対策協議会」は、神田川、渋谷 川・古川、石神井川、目黒川、呑川、野川、白子川の7流域において、平成21年に「各流域豪雨対策計画」を策定しました。 その後、平成26 年6月に東京都豪雨対策基本方針」が改定されました。この改定を受けて、平成30 年から令和元年にかけて7流域の「各流域豪雨対策計画」を改定し、平成31 年3月には「谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画」を新たに策定しました。この「谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画」の策定をもって、「総合的な治水対策暫定計画」はすべて廃止されました。 世田谷区では、上位計画である「東京都豪雨対策基本方針」や「各流域豪雨対策計画」の改定等を踏まえ、「世田谷区豪雨対策基本方針」及び「世田谷区豪雨対策行動計画」を適宜改定し、対策を進めています。 東京都及び世田谷区におけるこれまでの豪雨対策の経緯は、表 1.1 及び表 1.2 に示すとおりです。 5 表 1.2 東京都及び世田谷区における豪雨対策の経緯 昭和56年11月総合治水対策連絡会 設置 昭和57年6月総合治水対策連絡会 中間報告 7月 総合治水対策流域貯留・浸透事業実施要綱 策定 10月総合治水対策調査委員会 設置 昭和59年7月総合治水対策調査委員会 中間報告11月世田谷区総合治水対策計画 策定 7月 東京都における総合的な治水対策のあり方に ついて(61答申) 12月東京都区部中小河川流域治水対策協議会設置 目黒川流域の総合的な治水対策暫定計画 策定 神田川流域の総合的な治水対策暫定計画 策定 平成 4年4月野川流域の総合的な治水対策暫定計画 策定 呑川流域の総合的な治水対策暫定計画 策定 東京都区部中小河川流域総合治水対策協議会を東京都総合治水対策協議会に拡大改組 平成 7年5月谷沢川・丸子川流域の総合的な治水対策暫定計画 策定 平成 8年4月世田谷区流域治水対策推進計画 策定 平成12年3月雨水整備クイックプラン 策定10月世田谷区流域治水対策推進計画(第2次)策定 平成16年9月新・雨水整備クイックプラン 策定 平成19年8月東京都豪雨対策基本方針 策定 平成20年9月 東京都地下空間浸水対策ガイドライン −地下空間を水害から守るために− 策定 3月神田川流域豪雨対策計画 策定10月世田谷区豪雨対策基本方針 策定 11月目黒川、呑川、野川流域の豪雨対策計画 策定 平成22年3月世田谷区豪雨対策行動計画 策定 2月東京都下水道事業 経営計画 2013 策定 12月豪雨対策下水道緊急プラン 策定 平成26年6月東京都豪雨対策基本方針(改定) 策定12月 世田谷区豪雨対策行動計画(後期) (平成26年度〜平成29年度まで)策定 平成28年3月東京都下水道事業 経営計画 2016 策定 3月世田谷区豪雨対策基本方針 修正 平成30年3月神田川流域豪雨対策計画(改定) 策定6月 世田谷区豪雨対策行動計画(平成30年度〜平成33年度) 策定 平成31年3月 野川、呑川流域豪雨対策計画(改定) 策定 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画 策定 令和元年11月目黒川流域豪雨対策計画(改定) 策定 令和2年1月東京都豪雨対策アクションプラン 策定 令和3年3月東京都下水道事業 経営計画 2021 策定 令和3年8月城南地区河川外3河川流域治水プロジェクト 策定 令和4年3月世田谷区豪雨対策行動計画(改定) 策定 6 1.2 行動計画の位置付け 「世田谷区豪雨対策行動計画(改定)」(以下、「本行動計画」という。)は、「世田谷区豪雨対策基本方針(平成28 年3月)」(以下、「区基本方針」という。)に基づく豪雨対策を計画的に推進するため、区が実施する事業の内容や実施目標を示したものです。 その中で、豪雨対策を着実に実施していくためには、区だけではなく、区民、事業者※1、国、東京都等が役割に応じた責任を果たしながら連携し、協働することが重要です。 ※1 事業者:区内で店舗・会社・工場・事務所等の事業活動を行う方や建築や開発事業者を指す。 図1.2 「本行動計画」の位置付け 関連する主な計画・法令等 東京都豪雨対策基本方針(改定) 水循環基本法 世田谷区「水防計画」(水防法第32条) 世田谷区「地域防災計画」(災害対策基本法第42条) 多摩川水系河川整備計画(河川法第16条の2) 東京都公共下水道事業計画(下水道法第4条) 東京都下水道事業経営計画2021 豪雨対策下水道緊急プラン 雨水の利用の促進に関する法律 神田川流域豪雨対策計画 目黒川流域豪雨対策計画 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画 野川流域豪雨対策計画 各流域豪雨対策計画 (東京都総合治水対策協議会) 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画 多摩川水系流域治水プロジェクト 東京都豪雨対策アクションプラン 都市づくりのグランドデザイン (旧水循環マスタープラン) 7 1.3 豪雨対策の4つの柱 東京都は、「東京都豪雨対策基本方針(改定)」で目標を明確にし、「流域対策」、「河川整備・下水道整備」、「家づくり・まちづくり対策」、「避難方策」の4つの柱について、総合的な豪雨対策を推進しています。 世田谷区としても、「世田谷区豪雨対策基本方針」及び「世田谷区豪雨対策行動計画」で、東京都と同様の4つの柱を位置付け、豪雨対策を進めています。 出典:東京都豪雨対策基本方針(改定)の記載に一部加筆 図 1.3 豪雨対策の施策 「避難方策」の強化 「家づくり・まちづくり対策」の促進 「流域対策」の強化 「河川・下水道整備」の推進 その中で、目標降雨規模に対する東京都の役割として「河川整備・下水道整備」を、世田谷区の役割として公共施設や民間施設における雨水貯留浸透施設の設置等を推進・促進する「流域対策※1」を担っています。 また、「家づくり・まちづくり対策」や「避難方策」は、東京都と区が連携し、目標を超える降雨に対しても生命の安全を確保するための対策を実施します。 東京都と区が連携し、豪雨対策の4つの柱を進めていく際のイメージを図 1.4、表 1.3 に示します。 出典:「東京都豪雨対策基本方針(改定)」の記載を一部修正 図 1.4 豪雨対策の4つの柱のイメージ 9 「避難方策」の強化 「家づくり・まちづくり対策」の促進 「流域対策」の強化 (雨水貯留浸透施設、グリーンインフラの推進・促進) 世田谷区 東京都 <区と東京都の役割分担> 「河川・下水道整備」の推進 (流下施設、貯留施設) 表1.3 豪雨対策の役割分担のイメージ 世田谷区の役割である流域対策については、各流域豪雨対策計画(東京都総合治水対策協議会)で示された、令和19 年度までに時間10 ミリ相当以上の降雨の流出抑制を推進します。 「河川・下水道整備」+「流域対策」による豪雨対策の内訳を、表1.4 に示します。 表 1.4 「河川・下水道整備」+「流域対策」による豪雨対策の内訳 ※1 雨水を一時的に貯留し、また浸透させることにより、大量の雨水が一気に河川や下水道に流出することを抑制する対策のこと。流域対策に用いる施設は、浸透ます、浸透トレンチなど敷地内の雨水を浸透させる施設や、透水性舗装などがある。 10 1.4 行動計画の体系 「本行動計画」では、「区基本方針」に掲げた、豪雨対策の取組みについての4つの柱に対する具体的な取組みに対して、それぞれの施策の内容を示します。 図1.5 「本行動計画」の体系図 3つの基本的な視点 4つの柱具体的な取組施策の内容 世田谷区豪雨対策基本方針〜水害に強い安全・安心まち世田谷〜 「雨と向きあう」「雨水(あまみず)をたくわえる」「雨水(あまみず)を活かす」 「河川・下水道整備」の推進 「流域対策」の強化 「家づくり・まちづくり対策」の促進 「避難方策」の強化 流下施設(河道、管渠)・貯留施設(調節池、調整池)の整備 東京都における河川整備 東京都における下水道整備 グリーンインフラの推進・促進 公共施設(区、東京都、公共公益機関)における流域対策の強化 民間施設における流域対策の強化 区管理施設における流域対策の強化 国、東京都、公共公益機関の管理施設における流域対策の強化 浸水に関する情報の事前周知 浸水被害に強い家づくり 水害に強いまちづくり 情報提供の充実 避難誘導体制の整備 野川流域における河川整備 谷沢川・丸子川流域における河川整備 合流式下水道区域の下水道整備 分流式下水道区域(雨水)の下水道整備 野川流域における下水道整備 谷沢川・丸子川流域における下水道整備 区教育施設における流域対策の強化 区立公園・広場等における流域対策の強化 区道における流域対策の強化 区事業所、住宅等における流域対策の強化 大規模民間施設における流域対策の強化 小規模民間施設における流域対策の強化 私道における流域対策の強化 既存住宅における流域対策の強化 浸水に関する情報の事前周知の推進 浸水被害に強い家づくりの促進 水害に強いまちづくりの促進情報提供の充実 避難誘導体制の整備・強化 国、東京都の管理施設・管理道路における流域対策の強化 公共公益機関の管理施設における流域対策の強化 区公共施設、国、東京都、公共公益機関の管理施設における雨水利用施設の設置・促進緑地等の保全及び設置の推進・促進 雨水利用施設設置の推進・促進 民間施設における雨水タンクの設置の促進 11 1.5 「本行動計画」の期間 「本行動計画」の期間は、「前行動計画」の期間終了後、「区基本方針」で定めた目標を着実に達成していくため、令和4年度から令和19 年度までとします。なお、概ね5 年に一度、豪雨対策の進捗状況等を鑑み、本行動計画を検証します。 12 1.6 前行動計画における取組状況を踏まえた課題 世田谷区では、「世田谷区豪雨対策行動計画(平成30 年度〜平成33 年度)」(以下、「前行動計画」という。)策定後、「区基本方針」で定めている10 年後の目標に向けて、豪雨対策の取組みについての4つの柱に基づき、鋭意対策を進めてきました。 「前行動計画」における豪雨対策の取組みは以下のとおりです。 前行動計画における豪雨対策の取組み ○「河川・下水道整備」の推進 東京都により、以下の河川・下水道整備事業が進められています。 (河川整備) ・時間50ミリ対応:野川 令和2年度事業完了(仙川合流部を除く) ・時間50ミリ対応:仙川 事業中(完了時期未定) ・時間75ミリ対応:谷沢川 事業中(谷沢川分水路 令和6年度完了予定) (下水道整備) ・時間50ミリ対応:谷川雨水幹線 令和3年度事業完了 ・時間50ミリ対応:上沼部雨水幹線 事業中 令和4年度完了予定 ・時間75ミリ対応:蛇崩川増強幹線 事業中 令和8年度完了予定 ・時間75ミリ対応:呑川増強幹線 事業中 令和5年度完了予定 ○「流域対策」の強化 ・時間10ミリ対応:雨水流出抑制施設整備の実績<令和2年度末まで> 流域対策量総計 時間7.9ミリ分:55.8万m3(50.5万m3) 区管理施設 :14.3万m3(12.7万m3) 国・都・公共公益機関管理施設:12.0万m3(10.8万m3) 民間施設 :29.5万m3(27.0万m3) ( )は平成29年度末までの実績。 ・グリーンインフラの推進・促進 ○「家づくり・まちづくり対策」の促進 ・自助の取組みの1つとして、公共施設等に土のうステーションを配備 ・地区街づくり計画(新規地区)に浸水対策の項目記載 ・「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」を改正し、「建築物の浸水予防対策 検討結果」の届出の対象を世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップにおい て浸水の予想される区域内の建築物に拡充 ○「避難方策」の強化 ・世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップを改定 ・広報等で風水害時の情報入手方法を周知 13 前行動計画における課題 ○「河川・下水道整備」の推進 ・東京都による谷沢川分水路整備の早期完了(時間75ミリ相当降雨対応)。 ・東京都による仙川の河川整備の早期完了(時間50ミリ相当降雨対応)。 ・蛇崩川増強幹線及び呑川増強幹線の下水道整備の早期完了(時間75ミリ相当降雨対応)。 ・東京都による下水道分流区域における、雨水下水道整備の推進。 ○「流域対策」の強化 ・きめ細やかな流域対策を図るため、河川流域別による目標対策量管理を行う。 ・みどりの計画書や浸透ます等の浸透量算定方法を準用したグリーンインフラの定量的な効果・評価を確立させていく。 ○「家づくり・まちづくり対策」の促進 ・建築行為や土地利用等の際に浸水被害の軽減・防止を促進させていく。 ○「避難方策」の強化 ・区民が避難判断を適切に行えるように、情報提供の充実を図っていく。 14 1.7 行動計画における目標 1.7.1 流域対策における目標対策量の見直し 「各流域豪雨対策計画」は、「東京都豪雨対策基本方針」に基づき、地域の特性に合わせた河川・下水道整備、流域対策、家づくり・まちづくり対策、避難方策などの具体的な内容や実施スケジュールなどを示した計画です。 これまで、昭和61 年7月の「61答申」では、将来的な目標水準として時間100 ミリの降雨量に対して、時間差分10 ミリの降雨の流出量を、流域対策によりまかなう こととしていました。 その後、平成19 年策定の「東京都豪雨対策基本方針」では、区部で時間75 ミリの降雨量に対して、時間差分10 ミリの降雨の流出量を、流域対策によりまかなうことと見直されました。 この「東京都豪雨対策基本方針」に基づいて策定された「各流域豪雨対策計画」では、令和19 年度時点において、時間75 ミリ(多摩部では時間65 ミリ)の降雨量に対して、時間差分10 ミリの降雨の流出量を流域対策における目標対策量とする計画となっています。 15 なお、東京都では、平成18 年度以前の実績量を補正したため、「本行動計画」において区の実績値を補正しました。そのため、区の実績値は「前行動計画」とは異なるものとなっています。世田谷区における流域対策イメージを図1.7 に示します。 16 1.7.2 全体管理から流域別管理への変更 「前行動計画」までは、世田谷区全域合計の目標対策量を設定していました。 一方で、「東京都豪雨対策基本方針(改定)」を受けて見直された「各流域豪雨対策計画(東京都総合治水対策協議会)」において、令和19 年度の流域別かつ同一流域内の区市別目標対策量が初めて明示されました。 以上のことから、「本行動計画」では、最新の「各流域豪雨対策計画」および、これまでの実績を基にした予測値より、表1.6 のとおり、河川流域別に令和19 年度までの目標対策量を設定しました。 表 1.6 世田谷区における最新の「各流域豪雨対策計画の一覧」 計画名 各河川の 支流ごとの エリア 策定年月 目黒川流域豪雨対策計画(改定) 目黒川・北沢川 烏山川・蛇崩川令和元年11月 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画谷沢川・丸子川平成31年3月 野川流域豪雨対策計画(改定) 野川・仙川平成31年3月 呑川流域豪雨対策計画(改定) 呑川・九品仏川平成31年3月 神田川流域豪雨対策計画(改定) 神田川平成30年3月 17 「各流域豪雨対策計画」では、区内は5つの河川流域が設定されていますが、区内の 流域を細分化すると、11 の河川エリアに分かれます。(図 1.8 参照) ただし、目標対策量の数値管理は、「各流域豪雨対策計画」と整合を図る必要がある ため、5つの河川流域ごとに行います。 図 1.8 世田谷区の河川流域の位置図 神田川流域 神田川エリア 目黒川エリア 目黒川流域 北沢川エリア 烏山川エリア 蛇崩川エリア 立会川エリア 九品仏川エリア 呑川エリア 呑川流域 野川流域 野川エリア 仙川エリア 谷沢川・丸子川流域 谷沢川 エリア 丸子川 エリア 多摩川エリア .各流域豪雨対策計画の河川流域 .世田谷区内で細分化したエリア .行政界 丸子川エリア 18 1.8 グリーンインフラの更なる推進・促進 グリーンインフラは、SDGs※が示す目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標13「気候変動に具体的な対策を」などの達成に貢献するものと期待されています。 区豪雨対策行動計画では、グリーンインフラの持つ雨水貯留・浸透、流出抑制機能に着目し、「流域対策」の強化にあたり、「グリーンインフラの促進」を加えています。 「本行動計画」においても、引き続き、工夫をこらしてグリーンインフラに取組み、更なるグリーンインフラの推進・促進に向けて、グリーンインフラ施設(雨庭、緑溝等) を流域対策の考え方に位置付けています。また、それらの施設の定量的な効果・評価と対策量を明確にするため、既存施設での算定方法等と整合を図りながら、「世田谷区雨水流出抑制技術指針」への反映を検討します。 図 1.9 グリーンインフラによる水循環のイメージ(出典:世田谷区みどりの基本計画) ※ 「Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)」の略称であり、2015 年9 月の国連総会において採択された国際社会共通の目標のこと。17 の目標(ゴール)と169 の指標(ターゲット) から構成されている。 ▲グリーンインフラと関連するSDGsの目標 グリーンインフラとは、「みどりやみずなどの自然(グリーン)の持つさまざまな機能を積極的かつ有効に活用することで、雨水の貯留・浸透、流出抑制、水質浄化、利活用、地下水涵養を行う都市基盤(インフラ)や考え方」を言います。 19 2. 4 つの柱に対する行動計画 ここでは、「区基本方針」に掲げた豪雨対策の取組みについての4つの柱である「河川・下水道の整備」の推進、「流域対策」の強化、「家づくり・まちづくり対策」の促進及び「避難方策」の強化について、それぞれの施策の目標を示すとともに、目標の達成に向けた「区の取組内容」を示しています。 「本行動計画」は、「前行動計画」までの活動実績を踏まえた上で策定しました。 2.1 「河川・下水道の整備」の推進 2.1.1 河川の整備状況(多摩川を除く) 区内の一級及び二級河川の整備・管理は、多摩川を除いて基本的に東京都の役割※1となっています。 令和2年3月末現在、野川及び仙川の護岸の整備率は9割を超えています。 野川については下流にある仙川合流部を除き、時間50 ミリ相当の降雨に対応する工事は完了しています。 仙川については、区内の全区間における、時間50 ミリ相当の降雨に対応する工事を実施中です。 谷沢川については、時間75 ミリ相当の降雨へ対応するため、谷沢川分水路の整備が平成30 年度より着工されており、令和6年度に完了予定です。 丸子川流域については、下水道整備により、時間75 ミリ相当の降雨に対応する計画であるため、丸子川は、現 況の流下能力の確保に努めます。 一方、二級河川である目黒川、烏山川、北沢川、蛇崩川、呑川及び九品仏川については、昭和30 年代以降に河道の暗きょ化が進められたことで、河川としての流れの形態は失われ、下水道幹線になっています。 区内における河川(多摩川を除く)の整備状況を図 2.1 に示します。 ※1 「特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例」により、草刈り等の日常の維持管理については、世田谷区の役割となっている。 21 2.1.2 河川整備の行動計画 (1) 河川整備の基本的な考え方 【区の取組内容】 @河道改修(護岸整備、河床掘削等)等の東京都による河川整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図るとともに、河川整備の早期完了を東京都に対して継続的に要請する。 . 「特別区下水道事業促進連絡会※2」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会※3」、「野川・仙川促進期成同盟※4」等において、河川整備事業の早期完了を継続的に要請する。 A河道や河床など、河川の異常の早期発見に努め、「東京都の事務処理の特例に関する条例」に基づき、適切な維持管理に努める。 . 河道の維持管理(河床整正、草木の伐採や河川内のごみの撤去等)を行う。 . 護岸の維持管理(護岸における草木の伐採等)を行う。 . 定期的な河川パトロールの実施及び区民等からの通報において適切に対応する。 ※1 丸子川流域は下水道整備を進めることで、時間75 ミリ相当の降雨に対応する計画であるため、丸子川は、現 況の流下能力の維持に努める。また、谷沢川流域は谷沢川分水路の整備を進めることで、時間75 ミリ相当の降雨に対応する。 ※2 東京都特別区(23 区)が結束して、国土交通省と東京都に対し、下水道事業の財源の確保と充実、促進を強く要望するため、平成16 年に23 区の区長により結成した連絡会。 ※3 城南五区(品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区)における合流式下水道の改善や河川環境の整備等により、住民の生活環境の向上・改善を図ることを目的とした協議会。東京都に対して、雨水下水道管の早期整備や河川改修の早期実施などの要望活動を行っている。 ※4 野川流域9区市(世田谷区、狛江市、調布市、府中市、武蔵野市、三鷹市、小金井市、国分寺市、小平市)における野川及び仙川の改修を促進するため、国や東京都への要望活動及び必要な事業を行う組織。 【目標】 河川施設(流下施設・貯留施設)全体で時間65 ミリ相当(野川流域では55 ミリ相当)の降雨への対応※1を目指して、東京都による河川整備を進める。また、河川の流下能力を確保するため、東京都と区の役割分担に基づき、適切な維持管理を実施する。 22 (2) 野川流域における河川整備 【区の取組内容】 野川流域豪雨対策計画(改定)等に基づき東京都が実施する野川の一部区間および仙川の河川整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。「特別区下水道事業促進連絡会」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」、「野川・仙川促進期成同盟」等を通じて、整備事業の早期完了を東京都に対して継続的に要請する。 【目標】 野川流域豪雨対策計画(改定)に基づき、時間55 ミリ相当の降雨への対応を目指す。 23 (3) 谷沢川・丸子川流域における河川整備 【区の取組内容】 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する谷沢川の河川整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」等を通じて、谷沢川分水路の整備事業等の早期完了を東京都に対して継続的に要請する。 【目標】 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画に基づき、時間65 ミリ相当の降雨への対応を目指す。 ▼谷沢川分水路整備の概要 資料提供:東京都建設局 分水路施工前(現況) 分水路施工後(将来) 世田谷区豪雨対策行動計画(改定) 24 (4) その他の流域 野川、仙川、谷沢川、丸子川以外の河川は、すでに下水道幹線の整備によって暗きょ化されており、河川としての流れの形態は失われています。 2.1.3 河川整備の行動計画における取組一覧 「河川・下水道整備」の推進(河川整備) 基本的な考え方 河道改修(護岸整備、河床掘削等)等の東京都による河川整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図るとともに、河川整備の早期完了を東京都に対して継続的に要請する。河道や河床など、河川の異常の早期発見に努め、「東京都の事務処理の特例に関する条例」に基づき、適切な維持管理に努める。 谷沢川・丸子川流域 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する谷沢川の河川整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」等を通じた、谷沢川分水路の整備事業等の早期完了の東京都に対する継続的な要請 「特別区下水道事業促進連絡会」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」、「野川・仙川促進期成同盟」等において、河川整備事業の早期完了の継続的な要請 河道の維持管理(河床整正、草木の伐採や河川内のごみの撤去等) 護岸の維持管理(護岸における草木の伐採等) 定期的な河川パトロールの実施及び区民等からの通報において適切な対応 「特別区下水道事業促進連絡会」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」、「野川・仙川促進期成同盟」等を通じた、整備事業の早期完了の東京都に対する継続的な要請 26 2.1.4 下水道の整備状況 (1) 区内の下水道告示状況 下水道の整備は、東京都が主体※1となって行っており、合流式下水道区域については、概ね整備が完了しています。一方、分流式下水道区域の汚水下水道整備については、概ね整備が完了していますが、雨水下水道整備率は、約3割(令和2年3 月現在)となっています。 区内における下水道の整備状況を図2.2 に示します。 ※1 下水道法により、特別区の存する区域においては、公共下水道の設置、改築、維持その他管理は都が行うものとすると定められています。 分流式下水道 合流式下水道 蛇崩川幹線 烏山幹線 烏山北 一号幹線 烏山北 幹線 代沢幹線 松原幹線 赤堤幹線 目黒川幹線 北沢幹線柿の木坂幹線 駒沢幹線 呑川幹線 九品仏幹線 杉並区 目黒区 大田区 渋谷区 谷川雨水幹線 谷沢川雨水幹線 上沼部 雨水幹線 等々力 雨水幹線 下野毛 雨水幹線 宇奈根 雨水幹線 凡例 行政界 河川 雨水下水道供用開始告示区域 合流分流の境界 合流式下水道幹線 合流改善対策幹線 分流式下水道雨水幹線 未整備幹線 池尻幹線 三鷹市 調布市 狛江市 参照:「東京都下水道告示現況図(令和元年7月1日)」に一部加筆 図2.2 下水道(雨を流す幹線)の整備状況図(令和元年7月現在) 27 (2) 対策強化流域と対策強化地区 東京都では、浸水被害や降雨特性を踏まえ、甚大な浸水被害が発生している地域について、対策強化流域・対策強化地区を選定し、豪雨対策を強化しています。 「東京都豪雨対策基本方針(改定)」において、世田谷区内では、目黒川、谷沢川・丸子川、野川、呑川及び神田川流域のほぼ区全域にかかる流域(立会川エリア、多摩川エリアを除く)が「対策強化流域」として位置付けられています。また、世田谷区弦巻及び深沢が「対策強化地区」として位置付けられています。 さらに「東京都下水道事業経営計画2021」において、世田谷区野毛及び奥沢が「対策強化地区」として新たに位置付けられています。 世田谷区では、東京都が実施する下水道の整備を円滑に進めるため、東京都と連携・調整を図っていきます。 世田谷区 該当箇所主な対象地区名取組内容 目黒区上目黒、世田谷区弦巻(事業中) 蛇崩川増強幹線 目黒区八雲、世田谷区深沢(事業中) 呑川増強幹線 世田谷区野毛(新規追加) 下野毛雨水幹線流域の増強施設 目黒区自由が丘、世田谷区奥沢(新規追加) 九品仏川幹線流域の増強施設 該当箇所主な対象地区名取組内容 世田谷区玉川(事業中) 主要枝線 大田区田園調布(事業中) 上沼部雨水幹線 対策強化地区(75ミリ施設整備) 対策重点地区 29 2.1.5 下水道整備の行動計画 (1) 下水道整備の基本的な考え方 【区の取組内容】 @各流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 各流域豪雨対策計画等に基づく整備を進めるため、「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」等を通じて、下水道の早期整備を継続的に要請する。 東京都下水道局関連部局と「下水道関連連絡調整協議会」を開催し、情報提供・意見交換を継続的に実施する。 A分流式下水道区域の雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充を図る。 区の下水道整備担当部署による、分流式下水道区域の雨水下水道管枝線工事等の受託工事の継続および受託体制の拡充を検討する。 ※1 野川流域は、時間55 ミリ相当の降雨への対応を目指す。 【目標】 下水道施設(流下施設・貯留施設)全体で時間65※1ミリ相当の降雨への対応を目指して、東京都による下水道の整備を進める。 (2) 合流式下水道区域の下水道整備 【区の取組内容】 神田川、目黒川及び呑川の各流域豪雨対策計画(改定)等に基づき東京都が実施する主な下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 蛇崩川増強幹線及び呑川増強幹線整備事業の早期完了に向けて、東京都と連携・協力する。 浸水被害が多い箇所における公共下水道の増補管※1等を整備する。 ※1 既設の下水道管では対応しきれない雨水を処理するため、既設の下水道管に並行して新たに増設する管渠のこと。 【目標】 目黒川、呑川及び神田川の各流域豪雨対策計画(改定)の目標である、下水道施設(流下施設・貯留施設)全体で時間65 ミリ相当の降雨に対応することを目指す。 31 (3) 分流式下水道区域の雨水下水道整備 1) 野川流域における雨水下水道整備 【区の取組内容】 野川流域豪雨対策計画(改定)等に基づき東京都が実施する雨水下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 浸水被害が多い箇所における増補管やバイパス管等を整備する。 「特別区下水道事業促進連絡会」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」及 び「野川・仙川改修促進期成同盟」等において、分流式雨水下水道管の吐口におけ る放流量の拡大及び、面的な雨水下水道整備の推進などを継続的に要請する。 雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充を検討する。 【目標】 野川流域豪雨対策計画(改定)の目標である下水道施設(流下施設・貯留施設) 全体で時間55 ミリ相当の降雨に対応することを目指す。 河川改修が完了していない場合、河川の洪水被害を防ぐために、雨水下水道管から河川への雨水放流量を制限している。 32 2) 谷沢川・丸子川流域における雨水下水道整備 【区の取組内容】 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する雨水下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 上沼部雨水幹線の早期完了に向けて、東京都と連携・協力する。 浸水被害が多い箇所における増補管等を整備する。 雨水下水道の未整備箇所における雨水下水道を整備する。 「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」などにおいて、浸水被害が頻発している中町地区における雨水下水道整備、谷沢川分水路整備完了後の面的な雨水下水道の整備の推進などを東京都に対して継続的に要請する。 雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充を検討する。 2.1.6 下水道整備の行動計画における取組一覧 下水道整備の行動計画における取組一覧を表2.2 及び表 2.3 に示します。 【目標】 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画の目標である下水道施設(流下施設・貯留施設) 全体で時間65 ミリ相当の降雨に対応することを目指す。 「河川・下水道整備」の推進(下水道整備) 基本的な考え方 各流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 分流式下水道区域の雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充を図る。 各流域豪雨対策計画等に基づく整備を進めるため、「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」通じた、下水道の早期整備を継続的な要請 東京都下水道局関連部局と「下水道関連連絡調整協議会」を開催し、情報提供・意見交換の継続的な実施 区の下水道整備担当部署による、分流式下水道区域の雨水下水道管枝線工事等の受託工事の継続および受託体制の拡充の検討 蛇崩川増強幹線及び呑川増強幹線の整備事業の早期完了に向けて、東京都と連携・協力 浸水被害が多い箇所の公共下水道の増補管等の整備 区の取組内容 合流式下水道区域 神田川、目黒川及び呑川の各流域豪雨対策計画(改定)等に基づき東京都が実施する主な下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 34 世田谷区豪雨対策行動計画(改定) 表 2.3 下水道整備の行動計画における取組一覧(2) 「特別区下水道事業促進連絡会」や「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」などにおいて、浸水被害が頻発している中町地区における雨水下水道整備、谷沢川分水路整備完了後の面的な雨水下水道の整備の推進などを東京都に対して継続的な要請 区の取組内容 野川流域豪雨対策計画(改定)等に基づき東京都が実施する雨水下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 「河川・下水道整備」の推進( 下水道整備) 分流式下水道区域の雨水下水道の整備 谷沢川・丸子川流域 谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画等に基づき東京都が実施する雨水下水道の整備が円滑に進むよう、東京都と連携・調整を図る。 野川流域 浸水被害が多い箇所の増補管やバイパス管等の整備 「特別区下水道事業促進連絡会」、「東京都城南五区下水道・河川連絡協議会」及び「野川・仙川改修促進期成同盟」等において、分流式雨水下水道管の吐口における放流量の拡大及び、面的な雨水下水道整備の推進などの継続的な要請 雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充の検討 上沼部雨水幹線の早期完了に向けて、東京都と連携・協力 浸水被害が多い箇所の増補管等の整備 雨水下水道の未整備箇所における雨水下水道の整備 雨水下水道の整備を推進するため、東京都からの受託体制の拡充の検討 35 2.2 「流域対策」の強化 2.2.1 流域対策の「前行動計画」における評価と「本行動計画」における目標対策量 (1) 流域対策の「前行動計画」における評価 世田谷区では、昭和50 年代から、雨水貯留浸透施設の設置に取り組んでおり、令和2年度末現在で、世田谷区全体で55.8 万m3 の流域対策を行っています。そして、この流域対策の実績値は、「前行動計画」における令和3年度末の目標対策量51.5 万?を満たしています。 なお、東京都において、平成18 年度までの実績量の補正が都内一律で行われたため、これまでの実績値とは異なるものとなっています。 ■.実績 ※1 R3は見込み値 図2.5 年度別設置実績(令和3年3月末現在) 世田谷区全体での流域対策量は「前行動計画」における行動目標を満たしていますが、近年、多発・激甚化している集中豪雨に伴う水災害の発生状況を踏まえて、引続き流域対策の強化が必要です。 (2) 「本行動計画」における目標対策量 「東京都豪雨対策基本方針(改定)」を受けて改定または策定された「各流域豪雨対策計画」によって、令和19 年度までの目標対策量が初めて明示されました。 「本行動計画」においては、最新の「各流域豪雨対策計画」との整合性および、これまでの実績から考慮した予測値に基づき、流域ごとに東京都が示す令和19 年度までの値以上の「区の目標対策量」を設定します。(表 2.4 参照)。 この流域別の令和19 年度までの目標対策量の達成を目指すとともに、近年の集中豪雨や気候変動等に対応するためにも、引続き流域対策を進めます。また、グリーンインフラ等の視点を導入し、流域対策の強化を図ります。 ※1 前行動計画における令和3年度末の目標対策量51.5 万? 表 2.4 流域別の実績値及び目標対策量 (時間10ミリ対応以上) (時間10ミリ対応) 2.2.2 流域対策推進地区と単位対策量の設定 (1) 「前行動計画」における位置づけ 豪雨対策の効果を早期に発現する必要のある地区については、「区基本方針」に示す過去の浸水状況や地区計画等で流域対策の推進が図られる地区等の選定項目を踏まえて、「前行動計画」において豪雨対策のモデル地区として「用賀3、4丁目・上用賀地区」、「鎌田1、2丁目地区」、「上馬・弦巻地区」と「中町・上野毛地区」の4地区を位置付けています。 (2) 「本行動計画」における位置づけ 上馬・弦巻地区は、「東京都豪雨対策基本方針(改定)」においても対策強化地区に指定されており、東京都下水道局により蛇崩川増強幹線が施工されています。 また、谷沢川流域の「用賀3、4丁目・上用賀地区」及び「中町・上野毛地区」、野 川流域の「鎌田1、2丁目地区」は分流式下水道区域であり、雨水下水道の整備に時間を要することや、内水氾濫による浸水被害が繰り返し発生していることから、積極的な対策を引き続き行っていく必要があります。 「本行動計画」では、東京都と連携した流域対策の取組みを推進する必要がある地区として、「前行動計画」における「モデル地区」の名称を「流域対策推進地区」に変更します。 名称変更にあわせて、浸水被害の状況や東京都による河川・下水道整備の進捗、流域対策の進捗等を踏まえ、「尾山台・奥沢地区」、「玉川・野毛地区」を新たに追加します。 また、今後は、東京都及び区が実施する豪雨対策の進捗等を踏まえ、「流域対策推進地区」の見直し検討を行っていきます。 39 2.2.3 単位対策量 区では、区内のエリアごとに、「各流域豪雨対策計画」で定められた値以上の「区の単位対策量」を設定します。また、「流域対策推進地区」では、公園及び道路について、基準をより強化した単位対策量を設定しています。 なお、目黒川流域等のエリアにおいては、流域対策の進捗を鑑み適正化を図ります。 区内における単位対策量は表 2.5 に示します。最新の「各流域豪雨対策計画」において示された令和19 年度の目標対策量以上の雨水流出抑制を図ります。 600m3/ha の流域対策とは? 600m3/haの「ha」は「ヘクタール」と読み、面積の単位です。1haは面積で10,000m2となり、例えば100m四方の敷地面積は1haとなります。 600m3/haの雨水貯留浸透施設とは、10,000m2の敷地に雨が降った場合、その雨水の高さが60ミリになるときの雨水分を浸透又は貯留するということです。 雨水流出抑制施設の設置にあたっての対策量の算定方法は、「世田谷区雨水流出抑制施設技術指針」に記載しています。 雨水浸透施設、雨水タンクの設置効果について 区では、区民や事業者が設置する雨水浸透施設(浸透ます、浸透トレンチ)や、雨水タンクに対し、設置助成制度を設けて流域対策を促進しています。 雨水浸透施設、雨水タンクを設置することより、以下のとおりの雨水流出抑制効果のほか、地下水が豊かになり、湧水の復活やみどりの保全や創出等、住環境の改善等にも繋がります。 雨水浸透ます 雨水浸透トレンチ 雨水タンク 貯留量:100リットルから500リットル 浸透量:0.250〜1.710 m3/個・hr 浸透量:0.247〜0.658 m3/m・hr 一般に直径25cmの浸透ます1個は、1時間にお風呂1杯分程度※の雨水を地中に浸透できます。 ※0.512 m3/個・hr 雨水貯留浸透施設の設置により、600m3 分を貯留浸透 2.2.4 流域別の流域対策の推進 (1) 流域対策の目標対策量 【区の取組内容】 新規 最新の「各流域豪雨対策計画」において示された、または、一部流域では実績から算出した令和19 年度の目標対策量(時間10 ミリ対応)以上の雨水流出抑制を図る。 (2) 目黒川流域における流域対策の着実な推進 【区の取組内容】 新規 流域対策の基本的な考え方に基づき、流域別の特性を踏まえ、施設別の流域対策を着実に推進する。 目黒川流域では、「目黒川流域豪雨対策計画(改定)」に示された令和19 年度の目標対策量(29.5 万?)を達成する見通しであるが、引続き着実に流域対策を推進する。 (R3 は見込み値) 図 2.8 目黒川流域における現状と見通し 【目標】 最新の「各流域豪雨対策計画」において示された、令和19 年度の目標対策量以上の雨水流出抑制を図る。 【目標】 目黒川流域では、令和19 年度の目標対策量の約48.2 万m3 の雨水流出抑制を図る。 (3) 谷沢川・丸子川流域における流域対策の継続的な推進 【区の取組内容】 新規 流域対策の基本的な考え方に基づき、流域別の特性を踏まえ、施設別の流域対策を継続的に推進する。 谷沢川・丸子川流域では、「谷沢川・丸子川流域豪雨対策計画」に示された令和19 年度の目標対策量(15.9 万?)を達成する見通しであるが、引続き着実に流域対策を推進する。 多摩川水系流域治水プロジェクトに基づき、国、都県、区市等の地域が連携した浸水被害軽減対策として、浸水被害を軽減するため流出抑制施設の整備等を推進する。 【目標】 谷沢川・丸子川流域では、令和19 年度の目標対策量の約18.4 万m3 の雨水流出抑制を図る。 (4) 野川流域における流域対策の継続的な推進 【区の取組内容】 新規 流域対策の基本的な考え方に基づき、流域別の特性を踏まえ、施設別の流域対策を継続的に推進する。 野川流域は、目標対策量を達成する見通しであるが、確実な目標対策量の確保を目指し、流域対策量の進行管理を徹底する。 多摩川水系流域治水プロジェクトに基づき、国、東京都、県、区市等の地域が連携した浸水被害軽減対策として、浸水被害を軽減するため流出抑制施設の整備等を推進する。 【目標】 野川流域では、「野川流域豪雨対策計画(改定)」において示された、令和19 年度の目標対策量の約14.3 万m3の雨水流出抑制を図る。 (5) 呑川流域における流域対策の一層の推進 【区の取組内容】 新規 流域対策の基本的な考え方に基づき、流域別の特性を踏まえ、施設別の流域対策を一層推進する。 目標達成に向けた流域対策を一層推進する。 予測値が目標対策量を下回ることが想定されるため、尾山台・奥沢地区を流域対策推進地区に追加し、公園施設、道路施設の単位対策量を引き上げる。 (6) 神田川流域における流域対策の着実な推進 神田川流域においては、「神田川流域豪雨対策計画(改定)」において、流域対象面積が1%以下となる世田谷区、北区及び荒川区の合計が「その他」として分類されている。その3区を合わせた令和19 年度末目標対策量1.7 万m3 に対し、対策実績値は平成27 年度末現在2.5 万m3 となっており、既に目標対策量を満たしているところであるが、近年の気候変動等を鑑み、引き続き流域対策を推進する。 (7) 立会川流域・多摩川エリアにおける流域対策の着実な推進 立会川エリアにおいては、隣接する蛇崩川エリアに、多摩川エリアにおいては、隣接する野川エリアと同等の単位対策量を設定し、引き続き流域対策を推進する。 【目標】 呑川流域では、「呑川流域豪雨対策計画(改定)」において示された、令和19 年度の目標対策量の約10.3 万m3 の確保に向け、対策手法を検討する。 2.2.5 多摩川水系流域治水プロジェクト 【区の取組内容】 新規 「多摩川水系流域治水プロジェクト」を踏まえて、流域における浸水被害の軽減を図り、治水安全度を向上するため、雨水流出抑制施設の整備等を推進・促進する。 図 2.12 多摩川水系流域(谷沢川・丸子川流域及び野川流域)における流域対策量流域別の流域対策の推進における取組一覧を表2.6 に示します。 【目標】 多摩川水系である谷沢川・丸子川流域及び野川流域において、「多摩川水系流域治水プロジェクト」に基づき、令和19 年度までに約32.7 万m3 の雨水流出抑制を図る。 2.2.6 流域対策の基本的な考え方 流域対策の取組みの基本的な考え方 【区の取組内容】 @雨水貯留浸透施設の設置にあたり、次の取組みを行う。 雨水貯留浸透施設の新工法・新材料の調査・研究の採用並びに整備における採用を推進する。 地下貯留浸透施設等の新工法・新技術の積極的な設置を促進する。 A流域対策を進めていくためには、多大な時間と費用を要することから、国や東京都に対して、流域対策において雨水貯留浸透施設設置に関する補助事業の拡充を要請する。 「城南五区下水道・河川連絡協議会」等を通じて、補助事業の拡充を要請する。 B雨水貯留浸透施設の計画的な設置を促進する。 雨水貯留浸透施設の設置実績等を地図上に示すなどの見える化を図り、効率的な対策を進めるための情報を整備する。 C雨水貯留浸透施設の能力を確保するために、適切な維持管理に努める。 区が管理する雨水貯留浸透施設を点検・清掃する。 民間で設置した雨水貯留浸透施設の継続的な点検・清掃を要請する。 国、東京都、公共公益機関で設置した雨水貯留浸透施設の継続的な点検・清掃等を要請する。 D雨水貯留浸透施設の設置促進を図るため、区民や事業者等にPRする。 チラシ・パンフレット等を作成し、活用する。 区のホームページ等による流域対策を周知する。 区民へ流域対策による浸水被害の低減効果のPRを検討する。 E関連自治体間で流域対策の情報共有を図る。 東京都総合治水対策協議会等で「区基本方針」や「本行動計画」について情報共有を図る。 F流域対策を推進するため、グリーンインフラの持つ雨水の浸透機能・流出抑制機能に着目し、緑地等の保全及び設置の推進・促進を図る。 グリーンインフラ施設の定量的な効果・評価と対策量の明確化を図る。 G流域対策について、区職員の意識や技術力の向上を図る。 流域対策についての研修等を実施する。 【目標】 河川流域ごとに定めた目標対策量の雨水流出抑制を達成する。 2.2.7 施設別の流域対策の強化 (1) グリーンインフラの推進・促進 ※1 畑地、林地、芝地、植栽、草地、裸地、グランド等をいう。 【区の取組内容】 @流域対策等におけるグリーンインフラを幅広く区民へ周知する。 パンフレット等による周知・PRをする。 公園の改修・拡張に際し、みどりの関連部署との連携を図ることで、公園及び周辺道路が一体となるグリーンインフラ施設の整備を推進する。 「せたがやグリーンインフラ ライブラリー」を継続的に更新し、区民へ取組みのさらなる見える化を図る。 A公的機関の施設や民間施設の新設や改修時等において、グリーンインフラを取り入れ、緑地等の保全や設置及び雨水貯留浸透施設の設置を推進・促進する。 区が施工する道路新設拡幅工事等にあわせ、グリーンインフラ施設の設置を推進する。 区管理施設、国、東京都、公共公益機関の管理施設の新設や改築時において、緑地等の保全及び設置を推進・促進する。 公的機関の施設及び民間施設において、グリーンインフラ施設の設置を推進・促進する。 小規模民間施設や既存住宅においては、雨樋から植栽へ浸透・貯留させる「雨庭」の創出などを促進する。 緑地等における貯留浸透能力の定量化を検討する。 設置されたグリーンインフラ施設の点検・清掃等、適切な維持管理を実施する。 B庁内の関連部署等と連携を図り、緑地等の保全及び設置を促進する。 民間施設の新築や改築時において、事例等を活用して緑地等の保全及び設置についてパンフレット等で周知・PRを図る。 C 新規 浸透ます等の浸透量算定方法を活用したグリーンインフラの効果・評価の定量化の検討を行い、「世田谷区雨水流出抑制技術指針」への反映を検討する。 事例等に基づき、「世田谷区雨水流出抑制技術指針」へのグリーンインフラの効果・評価の定量化の反映を検討する。 今後、グリーンインフラの効果・評価の定量化をもとに、さらなる流域対策の施策検討を行う。 【目標】 施設の新設や改修時において、グリーンインフラを取り入れ、緑地等※1 の保全及び設置を推進・促進する。 グリーンインフラについて区民への周知・PR 区のおしらせ せたがや(No.1776 令和2年11 月1 日号)より 50 せたがやグリーンインフラ ライブラリー(初版)より一部抜粋 51 グリーンインフラの設置事例(せたがやグリーンインフラ ライブラリーより) ▼レインガーデン (上用賀公園) ▼道路植栽帯を活用した雨水貯留浸透 (世田谷区画街路7号線) ▼緑溝(岡本の丘緑地) ▼屋上緑化(北沢タウンホール) 上用賀公園に設置されているレインガーデンは、植栽されたくぼ地に周辺の雨水を集水して、地中に浸透及び浄化が可能なグリーンインフラである。 道路集水ますに植栽帯直下への透水管を敷設したことにより、 道路に降った雨が、雨水下水道管に流入する前に植栽帯直下へ導かれ、下水道への負荷軽減と植栽育成を共に実現させている。 岡本の丘緑地は、自然的な景観を創出することも考え、園路脇に芝張側溝を整備した。側溝底部の地下には、砕石層を設け、浸透能力を高めるように工夫している。 都市化が進む中で、屋上に植栽基盤を設置して、雨水の一時貯留や植栽の蒸発散作用による冷却効果などを可能にするものである。 (2) 区管理施設における流域対策の強化 1) 区教育施設(小学校・中学校)における流域対策の強化 【区の取組内容】 教育施設の新築、改築及び雨水排水系統の大規模改修時※1において、雨水貯留浸透施設を設置する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 浸水被害の多い地域では、敷地周辺からの雨水の取り込みを検討する。 緑地等の保全及び設置を検討する。 ※1 雨水排水系統の大規模改修:豪雨対策に有効な雨水排水系統施設の大規模な改修 を行う場合をいい、屋根の雨どいの改修等の軽微な改修は含まない。 2) 区立公園・広場等における流域対策の強化 3) 区道における流域対策の強化 4) 区事業所、住宅等※1における流域対策の強化 【区の取組内容】 事業所、住宅等の新築、改築時において、雨水貯留浸透施設を設置する。 区民や事業者等へのPRを兼ねた雨水タンクの設置を検討する。 緑地等の保全及び設置を検討する。 ※1 区が管理する庁舎、保育園、地区会館、土木公園管理事務所、区営住宅等。 【区の取組内容】 公園・広場の新設、改修及び排水系統の改修時において、雨水貯留浸透施設を設置する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 公園・広場等について、遊水地機能を兼ね備えた整備を検討する。 浸水被害の多い地域では、敷地周辺からの雨水の取り込みを検討する。 既存の公園については、部分的な補修においても可能な限り流域対策を実施する。 【区の取組内容】 道路の新設拡幅工事等において、雨水貯留浸透施設を設置する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 企業者工事(上下水道、ガス、電気等)にあわせた流域対策を実施する。 下水道管の改築・更新、雨水下水道管の整備及び暫定分流解消工事等にあわせた 流域対策を実施する。 【目標】 雨水貯留浸透施設等の設置を推進する。 (3) 国、東京都、公共公益機関の管理施設における流域対策の強化 1) 国、東京都の管理施設における流域対策の強化 【区の取組内容】 @国、東京都の管理施設の新築、増改築及び排水系統の改修時において、雨水貯留浸透施設の設置を要請する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 浸水被害の多い地域では、敷地周辺からの雨水の取り込みを要請する。 緑地等の保全及び設置を要請する。 A国、東京都の管理道路の新設、拡幅工事等において、雨水貯留浸透施設の設置を要請する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 浸水被害の多い地域では、敷地周辺からの雨水の取り込みを要請する。 緑地等の保全及び設置を要請する。 2) 公共公益機関※1の管理施設における流域対策の強化 【区の取組内容】 @公共公益機関の管理施設の新築、増改築時において、雨水貯留浸透施設の設置を要請する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 浸水被害の多い地域では、敷地周辺からの雨水の取り込みを要請する。 緑地等の保全及び設置を要請する。 A鉄道事業者※2及び高速道路事業者※3 の管理施設において、雨水貯留浸透施設の設置を要請する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 緑地等の保全及び設置を要請する。 パンフレットの配布や訪問説明などによるPRを実施する。 ※1 東京都住宅供給公社(JKK)、都市再生機構(UR)、NTT 東日本電信電話(株)、 東京電力パワーグリッド(株)、 東京ガス(株)、日本放送協会(NHK)等。 ※2 東急電鉄梶A小田急電鉄梶A京王電鉄梶B ※3 首都高速道路梶A東日本高速道路株式会社梶A中日本高速道路株式会社梶B 【目標】 雨水貯留浸透施設等の設置を促進する。 54 (4) 民間施設における流域対策の強化 1) 大規模民間施設※1における流域対策の強化 【区の取組内容】 大規模民間施設における建築物の新築時、建替え時及び開発行為等において、雨水貯留浸透施設の設置を促進する。 「世田谷区建築物に係る住環境の整備に関する条例」を踏まえて対応する。 「都市計画法」に基づく開発行為の際に設置を指導する。 上記以外の施設においても、「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 緑地等の保全及び設置を促進する。 ※1 敷地又は区域面積が500m2 以上の民間施設。 2) 小規模民間施設※2における流域対策の強化 【区の取組内容】 @小規模民間施設における建築物の新築、建替えや改修時において、雨水貯留浸透施 設の設置を促進する。 「世田谷区建築物に係る住環境の整備に関する条例」を踏まえて対応する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 雨水貯留浸透施設の設置を促進するために、「世田谷区雨水浸透施設設置助成金交付要綱」、「雨水タンク設置助成金交付要綱」による助成制度の活用をPRする。 緑地等の保全及び設置を促進するために、各種助成制度の活用をPRする。 建築確認申請時や当区土木所管等との協議時における雨水貯留浸透施設の設置をPRする。 A小規模民間施設における雨水貯留浸透施設の設置促進策を検討する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」に示す提出書類の簡略化を検討する。 雨水貯留浸透施設の設置に係る助成制度の充実を検討する。 ※2 敷地又は区域面積が500m2 未満の民間施設。 【目標】 雨水貯留浸透施設等の設置を促進する。 55 3) 私道※1における流域対策の強化 【区の取組内容】 私道の新設や改修時等において、雨水貯留浸透施設の設置を促進する。 「世田谷区雨水流出抑制施設の設置に関する指導要綱」を踏まえて対応する。 私道整備助成や私道排水設備の助成による私道の整備時において、雨水貯留浸透施設の設置や透水性舗装による整備を実施する。 雨水貯留浸透施設の設置について、区民へ積極的に啓発活動やPR等を行う。 ※1 開発行為の場合は大規模民間施設の基準による。 4) 既存住宅における流域対策の強化 【区の取組内容】 区民が既存住宅において、雨水浸透施設の助成制度等を活用することにより、雨水貯留浸透施設の設置が促進されるよう周知する。 雨水貯留浸透施設設置の助成制度をPRする。 雨水貯留浸透施設設置における助成制度の充実について検討する。 (5) 雨水利用施設※2設置の推進・促進 1) 区公共施設における雨水利用施設設置の推進 2) 国、東京都及び公共公益機関管理施設における雨水利用施設設置の促進 ※2 建物の屋根などに降った雨を貯留槽等に貯めて、トイレの洗浄水や植栽への散水などに利用する施設であり、雨水タンクや雨水貯留槽等がある。 【区の取組内容】 雨水利用施設の設置を推進する。 公共施設における新築・改築時において、雨水利用施設の設置を推進する。 【区の取組内容】 雨水利用施設の設置を促進する。 国、東京都管理施設及び公共公益機関管理施設における新築・改築時において、 雨水利用施設の設置を要請する。 【目標】 公共施設における雨水利用施設の設置を推進・促進する。 56 3) 民間施設における雨水利用施設の促進 2.2.1 流域対策の行動計画における取組一覧 流域対策の行動計画における取組一覧を表2.6 から表2.10 に示します。 【区の取組内容】 @雨水タンクの設置を促進する。 雨水タンクの助成内容を見直し(要件の緩和等)を検討する。 A雨水タンクの助成内容や設置効果についてPRする。 公共施設に設置した雨水タンクを活用した区民や事業者等へのPRを実施する。 ホームページやパンフレット等を活用した区民、住宅メーカー、不動産業者等へのPRを実施する。 【目標】 民間施設における雨水タンクの設置を促進する。 62 2.3 「家づくり・まちづくり対策」の促進 2.3.1 家づくり・まちづくりの基本的な考え方 世田谷区では、水害に強い家づくり・まちづくりを目指して、雨水貯留浸透施設の設置や浸水予防策について、建築主や事業者等に対し、「世田谷区建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例」や「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」に基づき、周知・啓発を行ってきました。 今後、さらに対策が促進されるよう、関係部署が連携し、豪雨時においても浸水被害を軽減できるような取組みを推進します。 具体的には、まず区民自らが、自分の住む地区における過去の浸水被害や河川、下水道の整備状況及び流域対策の実施状況等に関する情報を十分理解することが大切であり、そのために世田谷区としては、家づくり・まちづくり対策が促進されるよう区民や事業者等に積極的に情報提供を行います。また、雨水利用を大規模施設だけではなく、小規模施設にも推進・促進をしていきます。 そして、情報提供とともに、地区の中で豪雨対策がより効果的に行われるように、地区街づくり計画等の策定や改定にあわせて、地区の豪雨対策を改めて検討し、水害に強い家づくり・まちづくりを目指すことを基本的な考え方とします。 2.3.2 家づくり・まちづくり対策の行動計画 (1) 浸水に関する情報の事前周知の推進 【区の取組内容】 @浸水確認箇所図や世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ等の活用方法の検討及び周知を行う。 浸水確認箇所図を適宜点検し、必要に応じて見直しを行う。 区民利用施設(出張所、まちづくりセンター、区民集会所等)で情報を掲示する。 水防演習や各種イベント等を活用した周知、啓発活動を実施する。 庁内及び関係機関が連携を図り、実態に即した浸水被害状況を迅速かつ的確に把握するしくみを構築する。 A河川・下水道の整備状況や流域対策の状況に関する情報の提供及び周知を行う。 新たな提供項目を検討し、広報やホームページ等を活用した情報提供を行う。 【目標】 区民が自ら住む場所の浸水実績や河川、下水道の整備状況及び流域対策の実施状況等を十分理解できるよう、区民や事業者等に対して必要な情報を提供し、それらの情報に基づいて浸水被害に強い家づくりを促進する。 64 (2) 浸水被害に強い家づくりの促進 【区の取組内容】 @建物等における浸水対策を啓発する。 「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」に基づいて、浸水対策を啓発する。 A建物等における浸水対策を促進する。 止水板・排水ポンプ等の設置について、「世田谷区建築物浸水予防対策要綱」に基づく対応を要請する。 過去に浸水被害のあった土地等では、極力地下や半地下を設けない建築物にすることや、設ける場合でも適切な対策を行うことなど、浸水対策の啓発を図る。 建築物の浸水対策に係るリーフレット等を世田谷区建築物安全安心促進協議会の会員等に配付、周知する。 区民や事業者等との連携を図り、PRや広報を充実する。 B小規模民間施設や既存住宅において、雨樋から植栽へ浸透、貯留させる雨庭の創出などを促進する。 雨庭の効果や施工方法等を、事例等を活用し区民へ周知する。 【目標】 区民自らが実施する浸水被害に強い家づくりを促進する。 65 (3) 水害に強いまちづくりの促進 【区の取組内容】 @地区街づくり計画等の策定や改定時等において、浸水被害対策に関する事項や緑地や農地等の保全による貯留・浸透・遊水機能の確保を盛り込むよう促進する。 水害に強い地区まちづくりのしくみを検討し、水害に強いまちづくりに関する事項を地区街づくり計画等に盛り込むなど、水害に強いまちづくりを促進する。 「みどりの基本計画」や「世田谷区農地保全方針」等に基づき、緑地や農地等の保全による貯留・浸透・遊水機能の確保を促進する。 A過去の浸水被害を考慮し、区民が水害に備えるため、区内に土のうステーション※1 を適切に配備する。 土のうステーションや水防資機材の配備が、区管理施設以外の場所でも可能であるか検討する。 土のうステーションの位置や使用方法を区のホームページ等において、公表・周知する。 B防災活動の一環として、区管理施設等への水防資機材の配備や「防災資機材の整備の助成」の充実について検討する。 . 関係所管と連携し検討する。 ※1 建物の浸水被害軽減・防止する区民の自助の取組みを支援するために、区民がいつでも土のうを持ち出せるように、平成26 年度から区内各地に設置している緊急用簡易土のう置き場。土のうステーションの中に入っている土のうの重さは1袋あたり5キログラムのものと10 キログラムのものがあり、各50 袋、合計100 袋が入っている。 【目標】 地区街づくり計画等の策定・改定時やまちづくりに関する協定等を締結する際に、関係機関との調整のもと、水害に強いまちづくりに関する事項を盛り込むなど、水害に強いまちづくりを促進する。 69 2.4 「避難方策」の強化 2.4.1 避難方策の基本的な考え方 避難方策については、豪雨時に河川・下水道の流下・排水能力を超えて、水が溢れ出したとしても、区民の生命・身体の安全を守ることを前提として、適切な避難に必要な情報提供の充実並びに、区、区民、事業者等地区全体としての避難誘導体制を整備していくことを目指します。 2.4.2 避難方策の行動計画 (1) 情報提供の充実 【区の取組内容】 @豪雨時において、区民や事業者等に防災、避難に関する情報を確実、適切に周知する取組みを推進する。 通信連絡体制(関係機関相互の連絡、指示及び伝達等)を強化する。 雨量・河川水位情報サイト及び災害・防犯情報メールの表示方法の見直しや、情報量、質等について検討し、より分かりやすい情報提供を行う。 河川増水時の危険を周知するための看板等を設置するとともに、親水利用施設への立入防止策を検討する。 河川の洪水・氾濫による水害等についての情報や水害状況を迅速かつ正確に把握するため、ライブカメラを増設するなど、河川情報システムを充実する。 道路冠水の状況についてのリアルタイム配信を検討する。 雨量・河川水位情報サイトや災害・防犯情報メール等の情報入手手段について、洪水・内水氾濫ハザードマップ、土砂災害ハザードマップや広報紙等で住民等へ周知する。 A豪雨時の避難等が適切に行えるよう、平時から適切な情報提供等に努める。 避難行動要支援者の支援に関する協定締結を推進する。 避難支援プラン(個別計画)の作成について検討する。 .世田谷区避難行動要支援者避難支援プラン」を活用した連絡体制づくりを検討・推進する。 【目標】 豪雨災害から、区民の生命・身体の安全を守るため、避難に必要となる適切な情報提供を充実させる。 70 (2) 避難誘導体制の整備・強化 【区の取組内容】 避難誘導体制の整備・強化及び、整備した避難誘導体制に基づき、避難訓練を実施する。 各地区の水害時避難行動マップ等に基づき、地区毎に避難体制(避難場所、避難経路、避難方法等)を検討、構築し、区民に周知する。 区、町会、自治会、消防団等の関係者が連携を図り、定期的な避難訓練や水防訓練を継続的に実施する。 浸水被害が想定される地区内の事業所について、各地区の水害時避難行動マップ等を活用するなど、自主的避難の意識向上を図るための啓発を行う。 「世田谷区避難行動要支援者避難支援プラン」に基づく地域の安心、安全体制を強化する。 3. 進行管理等 3.1 実施主体 「本行動計画」は区が主体となり、豪雨対策を計画的に推進するため、区の事業の内容や実施目標を示したものです。 その中で、豪雨対策を着実に実施していくためには、区だけではなく、区民、事業者、国、東京都等が役割に応じた責任を果たしながら連携し、協働することが何よりも重要です。 各取組みの実施主体は表3.1 のとおりです。 73 3.2 進行管理 「行動計画」は、豪雨対策の実現に向けた区の取組みの指針であることから、計画策定後も、計画に従って施策が確実に遂行されているかをチェックし、適宜見直していくことが重要です。 進行管理の考え方としては、図3.1 に示すPDCAサイクルに基づいて、施策の実施状況の管理を行います。また、計画策定後においても、豪雨対策の推進に関する会議を開催し、施策の進行状況を報告するとともに、「行動計画」を進めていく上での課題や流域対策推進地区を事例とした効率的・効果的な豪雨対策の推進方法等について整理・検討を行います。 会議で抽出した課題や効率的・効果的な豪雨対策の推進方法等を、「行動計画」見直し時に反映することにより、さらなる施策の推進を図ります。 「基本方針」・「行動計画」Plan(計画) @各施設の進行状況の把握 A流域対策推進地区での効果検証 B行動計画を進めていく上の課題抽出 「行動計画」の進行についてCheck(評価) @流域対策については進行状況を公表 A各課題を整理・検討することにより 効率的・効果的な対策案を立案 「行動計画」の見直しAct(改善) 「行動計画」に基づく施策の実施Do(実施) @必要に応じて、関係機関(国、都等)へ課題の解決に向けた対応策について提案・要請 水害に強い安全・安心のまち世田谷の実現 近年の集中豪雨の頻発や治水対策の現状を踏まえ、世田谷区における今後の豪雨対策のあり方について検討するため、有識者に『(仮称)「世田谷区豪雨対策行動計画」(令和4年度〜令和7年度)にかかわる意見聴取』を行いました。 有識者名簿 公益社団法人雨水貯留浸透技術協会 屋井裕幸 特定非営利活動法人雨水まちづくりサポート 神谷博 東京農業大学 地域環境科学部 造園科学科 福岡孝則 芝浦工業大学 工学部 土木工学科 守田優 (敬称略 五十音順) 世田谷区豪雨対策行動計画(改定) 令和4年3月発行 世田谷区広報印刷物登録番号No.2056 編集・発行: 世田谷区 土木部 豪雨対策・下水道整備課 〒158-0094 東京都世田谷区玉川1-20-1 TEL 03-6432-7963 FAX 03-6432-7993