【富士山等噴火降灰対策編】 第3章 災害応急・復旧対策計画 第1節 応急活動態勢 震災編 第2部第5章第5節第2「1 初動態勢」を準用する。 第2節 情報の収集・伝達 降灰による被害時において、円滑な応急対策活動を実施するためには、各防災機関の緊密な連携のもと、降灰による被害に関する情報を的確かつ迅速に把握することが必要である。 ここでは、降灰情報の伝達及び降灰による被害発生時における各防災機関の情報連絡体制、被害状況の把握、火山災害時の広報等について定める。 1 噴火警報等 平成19年12月に気象業法が改正され、5段階の噴火警戒レベルが導入された。これにより、これまで防災上の注意事項であった火山観測情報、臨時火山情報、緊急火山情報に代わって法律上の警報にあたる噴火警報、火山周辺警報が発表されることとなった。発表される噴火警戒レベルは次のとおりである。 <火山の警報体系(噴火警戒レベル運用済み火山)> 種別 特別警報 名称 噴火警報(居住地域)又は噴火警報 対象範囲 居住地域及びそれより火口側 レベル 5(避難) 火山活動の状況 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生、あるいは切迫している状態にある。 レベル 4(避難準備) 火山の活動状況 居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生すると予想される(可能性が高まってきている)。 種別 警報 名称 噴火警報(火山周辺)又は火山周辺警報 対象範囲 火口から居住地域近くまで レベル 3(入山規制) 火山活動の状況 居住地域の近くまで重大な影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想される。 対象範囲 火口周辺 レベル 2(火口周辺規制) 火山活動の状況 火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)噴火が発生、あるいは発生すると予想される。 種別 予報 名称 噴火予報 対象範囲 火口内等 レベル 1(活火山であることに留意) 火山活動の状況 火山活動は静穏。火山活動は静穏。 火山活動の状況によって火口内で火山灰の噴火等が見られる(この範囲に入った場合には生命に危険が及ぶ)。 2 火山(降灰)情報 都内の降灰の状況は、下記の経路を通じて、気象庁地震火山部火山課火山監視・警報センターに集約される。 *図表省略 降灰調査項目は、以下のとおりである。 ①降灰の有無・堆積の状況 ②時刻・降灰の強さ        ③構成粒子の大きさ        ④構成粒子の種類・特徴等     ⑤堆積物の採取 ⑥写真撮影 ⑦降灰量・降灰の厚さ※ ※可能な場合 <降灰量階級表(気象庁)> 名称 多量 表現例(厚さキーワード)1ミリメートル以上【外出を控える】 表現例(路面イメージ)完全に覆われる 表現例(視界イメー)視界不良となる 影響ととるべき行動(人)外出を控える 慢性の喘息や慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)が悪化し健康な人でも目・鼻・のど・呼吸器などの異常を訴える人が出始める 影響ととるべき活動(道路)運転を控える 降ってくる火山灰や積もった火山灰をまきあげて視界不良となり、通行規制や速度制限等の影響が生じる その他の影響 がいしへの火山灰付着による停電発生や上水道の水質低下及び給水停止のおそれがある 名称 やや多量 表現例(厚さキーワード)0.1ミリメートル≦ 厚さ<1ミリメートル【注意】 表現例(路面イメージ)白線が見えにくい 表現例(視界イメージ)明らかに降っている 影響ととるべき行動(人)マスク等で防護 喘息患者や呼吸器疾患を持つ人は症状悪化のおそれがある 影響ととるべき行動(道路)徐行運転する 短時間で強く降る場合は視界不良の恐れがある道路の白線が見えなくなるおそれがある(およそ0.1~0.2mmで鹿児島市は除灰作業を開始) その他の影響 稲などの農作物が収穫できなくなったり、鉄道のポイント故障等により運転見合わせのおそれがある 名称 少量 表現例(厚さキーワード)0.1ミリメートル未満 表現例(路面イメージうっすら積もる 表現例(視界イメージ)降っているのがようやくわかる 影響ととるべき行動(人)窓を閉める 火山灰が衣服や身体に付着する 目に入ったときは痛みを伴う 影響ととるべき行動(道路)フロントガラスの除灰 火山灰がフロントガラスなどに付着し、視界不良の原因となるおそれがある その他の影響 航空機の運航不可 都及び各県から収集した降灰の情報は、気象庁地震火山部火山課火山監視・警報センターで取りまとめ、「富士山の火山活動解説資料」として公表される。解説資料は、都、区市町村、関係防災機関に伝達される。 火山現象及びこれに密接に関連する現象についての観測成果ならびにこれに関する状況について、区は次により速やかに情報の伝達を行う。 機関名 区 対策内容  降灰に関する重要な情報について、気象庁、関係機関から通報を受けたとき又は自ら知ったときは、直ちに管内の公共的団体、重要な施設の管理者、住民の防災区民組織等に通報するとともに、警察機関等の協力を得て住民に周知する。 3 降灰予報 気象庁は、平成20年3月31日から降灰予報の発表業務を開始した。平成27(2015)年3月24日からは、量の予測を含めた降灰予報を開始し、噴火後に、どこに、どれだけの量の火山灰が降るかについて、詳細な情報を発表することとした。その種類等は次のとおりである。 <降灰予報> 種類 定時 内容  噴火警報発表中の火山で、予想される噴火により住民等に影響を及ぼす降灰のおそれがある場合に発表 噴火の発生に関わらず、一定規模の噴火を仮定して定期的に発表 18時間先(3時間区切り)までに噴火した場合に予想される、降灰範囲や小さな噴石の落下範囲を提供 (平成30年8月現在の発表対象火山は、浅間山、草津白根山(白根山(湯釜付近))、阿蘇山、桜島、口永良部島、諏訪之瀬島。火山活動の状況により、対象が変わります) 時期 定時 種類 速報 内容 噴火が発生した火山に対して、直ちに発表 発生した噴火により、降灰量階級が「やや多量」以上の降灰が予想される場合に、噴火発生から1時間以内に予想される降灰量分布及び小さな噴石の落下範囲を提供 時期 噴火後5~10分程度 種類 詳細 内容 噴火が発生した火山に対して、より精度の高い降灰量の予報を行い発表 降灰予測の結果に基づき、「やや多量」以上の降灰が予想される場合に、噴火後20~30分程度で発表 噴火発生から6時間先まで(1時間ごと)に予想される降灰量分布や、降灰開始時刻を、市区町村を明示して提供 時期 噴火後20~30分程度 第3節 応援協力・派遣要請 降灰により被害を受けまたは受けるおそれがある場合、各防災機関及び住民は協力して災害の拡大を防止するとともに、被災者の救助・援護に努め、被害の発生を最小限に止める必要がある。 応援協力・派遣要請については、震災編 第2部第5章第2「3 応援協力・派遣要請」に定めるところによる。 第4節 警備・交通規制 降灰による被害発生時には、視界不良や衝突事故などが急増し、様々な社会的混乱や交通の混乱等の発生が予想される。このため、都と連携し、区民の生命、身体及び財産の保護を図るため、速やかに各種の犯罪の予防、取締り、交通秩序の維持その他公共の安全と秩序を維持し、治安の維持の万全を期することが必要である。 警備・交通規制については、震災編 第2部第4章第2「1 道路・橋りょう」を準用する。 第5節 ライフライン等の応急・復旧対策 震災編 第2部第4章第5節第2「4 水道」、「5 下水道」、「6 電気・ガス・通信等」及び第3「4 水道」、「5 下水道」、「6 電気・ガス・通信等」を準用する。 第6節 避難 震災編 第2部第8章(帰宅困難者対策)第5節「第2 応急対策」及び第9章第5節第2「1 避難誘導」を準用する。 第7節 火山降灰対策用物資の備蓄 火山降灰対策用として、区では必要な物資の備蓄、配備等を検討する。 第8節 救援・救護 降灰による被害発生後の被災者に対する救援・医療救護は、震災編 第2部第5章第5節第2「2 消火・救助・救急活動」、「第7章 医療救護等対策」を準用する。 第9節 交通機関の応急・復旧対策 震災編 第2部第4章第5節第2「1 道路・橋りょう」、「2 鉄道施設」及び第3「1 道路・橋りょう」、「2 鉄道施設」を準用する。 第10節 宅地の降灰対策 火山噴火によって降灰が長時間続いた場合は、宅地や公園等に大きな被害を与え、ひいては地域の経済活動や市民の社会生活に著しい障害をもたらし、地域の活力を失うこととなる。このため、降灰によって被害が発生した場合は、早急な復旧対策を行い地域の活力を取り戻す必要がある。 そのため、各関係機関は、平時から緊密な情報交換を行う必要がある。宅地に降った火山灰は所有者又は管理者が対応することが原則である。しかし、一般の区民では対応が困難な対策については、区が対応する。 各関係機関の対応は次のとおりである。 機関名 区(災対統括部) 対策内容 降灰予報やその他火山情報の把握 測定機器の設置・測定 被害額の算定・報告 収集した降灰の処分の都との調整 機関名 災対清掃部 対策内容 宅地から出された降灰の収集・運搬 収集した降灰の処分の清掃組合との調整 機関名 災対地域本部 対策内容 降灰情報やその他火山情報の把握 測定機器の設置・測定 被害額の算定・報告 機関名 災対財政・広報部 対策内容 区民等への注意喚起 マスコミ対応 機関名 災対土木部 対策内容 道路除灰作業 機関名 災対都市整備部 対策内容 火山灰の仮置き場の調整 機関名 災対教育部 対策内容 児童・生徒及び保護者への注意喚起 機関名 災対保健福祉部 対策内容 保護者への注意喚起 機関名 災対医療衛生部 対策内容 区民等への健康に関する注意喚起・情報収集 医療衛生関連情報を関係団体等に情報提供 機関名 都都市整備局 対策内容 降灰予報及びその他火山情報の把握、測定手法、被害額の算定等について指導を行うとともに、国に対して被害状況、被害額等の報告・進達を行う。 機関名 国土交通省、都市・地域整備局 対策内容 都及び区市町村からの降灰による宅地・公園等の被害状況等の報告に基づいて、復旧対策の助成措置等を講ずる。 第11節 火山灰の収集及び運搬 1 火山灰の収集・運搬 火山灰の収集・運搬は、原則として、土地所有者又は管理者が行うものとする。 火山灰の運搬は、一般廃棄物とは別に行い、飛散しないように努めるものとする。 宅地等に降った火山灰の運搬については、区が民間事業者等の協力を得ながら行うものとする。 宅地以外に降った火山灰の収集・運搬については、各施設管理者が行うものとする。 一時的な火山灰の集積は、災害時の応急仮設住宅用地などを活用して行うものとする。 2 火山灰の除去・処分 国が、平成25年(2013年)5月に公表した「大規模火山災害対策への提言」によると、「国は、都市に多量の火山灰が堆積する時に、降灰除去機材の確保、優先的に除灰する道路や施設の選定、除灰作業への機材や人員の投入などを施設管理者や関係機関と速やかに調整する仕組みを構築すべきである。」とされている。 また、「国、地方公共団体は、大規模な降灰に備えて火山灰処分場の確保や降灰除去機材の調達などを検討する火山防災協議会を超えるより広域な枠組みを検討すべきである。」とされている。 都は、国に対し、富士山等の大規模噴火による大量の降灰に備え、火山灰の除去・処分方法について明確な指針を示すとともに、降灰による都市基盤への影響について、的確な調査研究の実施及び具体的な対策の検討を行うことを引き続き要望していくことから、区はこの方針に従うものとする。