【風水害編】 第2部 災害予防計画 第2章 都市施設対策 電気、ガス、上下水道、通信などのライフライン施設や道路、鉄道などの施設について、平常時から被害を最小限に止めるための対策を行う。 ライフライン施設の機能が充分に発揮され、社会全体に及ぼす影響を最小限に止めるための安全化対策を行う。 第1節 ライフライン施設 1 電気施設(東京電力グループ) 【実施主体】東京電力グループ 「被災しにくい設備づくり」「被災時の影響軽減」「被災設備の早期復旧」を基本方針として実施する。 電力系統は、発電所から連係する放射状の送電線からの電力供給を、首都圏の周囲に張り巡らした二重三重の環状の送電線で一旦受け止め、そこから網の目のようなネットワークを使い電力供給するよう構成されている。 送電線は変電所で接続変更できるため、万一、一つの送電ルートが使用できなくなっても、別のルートから速やかに送電することができる。 電気の供給信頼度の一層の向上を図るため、災害時においても、系統の切り替え等により、早期に停電が解消できるよう系統連携の強化に努める。 電気施設の防災計画として、高潮対策、地盤沈下対策、水害対策、風害対策及び塩害対策を実施する。 (1)地盤沈下対策 ①計画目標 地盤沈下地帯及び将来沈下が予想される地域に構造物を設ける場合には、将来の沈下量を推定して設計する。 ②施設の現況 施設名 送電設備 施設の現況 地盤沈下の著しい地区については、脚の不均一な沈下によって鉄塔部材が変形し、必要な強度を損なうことのないよう対策を実施している。また、地中線の場合、必要に応じ管路の強化改修を実施している。 施設名 変電設備 施設の現況 地盤沈下の著しい地区については、高潮及び洪水対策を行う場合に、建設後の沈下により高潮、洪水対策の効果が失われないように考慮している。 施設名 配電設備 施設の現況 地盤沈下に応じた対策を実施している。また、必要に応じ改修を加えている。 施設名 通信設備 施設の現況 地盤沈下に応じた対策を実施している。また、必要に応じ改修を加えている。 (2)水害対策 ①計画目標 計画高水位以上 ②施設の現況 施設名 送電設備(架空線) 施設の現況 土砂崩れ,洗掘などが起こるおそれのある箇所のルート変更,よう壁,石積み強化等を実施する。 施設名 送電設備(地中線) 施設の現況 ケーブルヘッドの位置の適正化等による防水対策を実施する。 施設名 変電設備 施設の現況  浸・冠水のおそれのある箇所は,床面のかさ上げ,窓の改造,出入口の角落し,防水扉の取付,ケーブルダクト密閉化等を行うが,建物の構造上,上記防水対策の困難な箇所では屋内機器のかさ上げを実施する。 また,屋外機器は基本的にかさ上げを行うが,かさ上げ困難なものは,防水・耐水構造化,または防水壁等の組合わせを実施する。 施設名 配電設備 施設の現況 浸・冠水のおそれのある供給用変圧器室は,変圧器のかさ上げ等による防水対策を実施する。 施設名 通信設備 施設の現況 浸・冠水のおそれのある箇所は,床面のかさ上げ,窓の改造,出入口の角落し,防水扉の取付,ケーブルダクト密閉化等を行うが,建物の構造上,上記防水対策の困難な箇所では屋内機器のかさ上げを実施する。 (3)風害対策 ① 計画目標 建物に対する風圧力は、建築基準法による。 送電、配電、通信の各設備に対する風圧荷重は、電気設備に関する技術基準の各該当項目による。なお、変電設備の屋外鉄構については、上記に準じ、風速40m/sとしている。 ② 施設の現況 施設名 送電設備 施設の現況 電気設備の技術基準により実施している。 施設名 変電設備 施設の現況 建築基準法および電気設備の技術基準により実施している。 施設名 配電設備 施設の現況 電気設備の技術基準により実施している。 施設名 通信設備 施設の現況 電気設備の技術基準により実施している。   (4)電気施設予防 電気工作物を常に法令に定める技術基準に適合するように保持し、さらに事故の未然防止を図るため、定期的に東京電力グループの電気工作物の巡視点検(災害発生のおそれがある場合には特別の巡視)及び自家用需要者を除く一般需要者の電気工作物の調査等を行い、感電事故の防止を図るほか漏電等により出火にいたる原因の早期発見とその改修に努めている。 配電設備全般について、5年に1回巡視して設備状況を確認する。また、必要に応じ、パトロールにより設備状況を確認する。 一般用電気工作物について、新設又は増設の際及びその後4年に1回調査して、不良箇所を発見、通知することによって災害の未然防止を図る。 2 ガス施設 【実施主体】東京ガス (1) 施設の現況 ①製造施設 ガス製造施設は、根岸LNG基地、袖ケ浦LNG基地、扇島LNG基地、日立LNG基地の4箇所にあり、各工場とも風水害を考慮した設計を適用し、施設の安全性を確保している。 ガス事業法等に基づき、緊急遮断弁、防消火設備、防液堤の設置、保安用電力の確保等の整備を行い、二次災害の防止を図っている。 ②供給施設 ガス供給設備は、基本的に気密構造になっており、浸水による影響を受けにくい。加えてガス輸送と圧力調整は、ガス自身の圧力差により行い、電力を利用しないため、停電による影響も受けにくい。 水害による家屋倒壊等が懸念される地区では、保安確保のために供給停止を行う場合がある。 ガス事業法(昭和29年法律第51号)に基づき、遮断装置・圧力上昇防止装置等を考慮して設計及び施工している。 (2)ガス施設の定期検査 ガス施設に対しては、ガス事業法の規定に基づいた定期検査を実施する。 3 水道施設 【実施主体】都水道局 浄水場等の施設が停止しても可能な限り給水できるよう、浄水場と給水所との間や各給水所を結ぶ広域的な送配水管のネットワーク化を進めていくとともに、特に重要な幹線については二重化を進めるなど、水道施設全体のより一層のバックアップ機能の強化を図っていく。 大規模停電時など、不測の事態が生じた場合でも安定給水を実現するため、浄水場等に自家用発電設備を増強して電力の自立化を推進し、浄水処理及び配水ポンプ等の運転が継続できるようにするとともに、配水本管テレメータについて、停電時にも機能を維持できるよう順次バッテリーを設置し電源の確保を図っている(自動水質計器については平成27年度に設置完了済)。 内閣府の中央防災会議等における年超過確率1/200の降雨量での浸水被害想定に基づき、浸水被害のおそれのある水道施設については、施設の機能維持を図るため、出入口等に止水堰(せき)の設置、施設のかさ上げ等の浸水対策を実施している。主要な浄水場等については、対策を完了しており、引き続き、多摩地域における浄水所等の施設についても対策を実施していく。 土砂災害警戒区域等内の浄水所、配水所等については、断水被害想定を踏まえ、ハード対策としてバックアップルートの確保や、ソフト対策として応急給水体制の確保等を順次実施していく。 風水害による上水道施設の災害防止のため、平素から各施設について監視、点検を行っているが、特にダム、取水堰等については、ゲート操作の円滑性を維持するため、定期的に点検、整備を実施している。 水道施設は、水道施設の技術的基準を定める省令(平成12年厚生省令第15号)の要件を備えている。 施設名 浄水施設 施設の現況 洪水等による水質悪化に対処するため、凝集剤等の各種薬品の注入を強化するが、これに必要な数量を常時貯蔵している。 高濁度原水のピークカットも行っている。 4 下水道施設 【実施主体】都下水道局 水再生センター・ポンプ所では津波による電気設備への浸水を防ぐ耐水対策を実施している。 施設名 水再生センター・ポンプ所 施設の現況 都防災会議で示された最大津波高さ(T.P.+2.61)に対し、電気設備などの浸水を防ぐ耐水対策を実施している。 5 通信施設 災害時においては、迅速かつ的確な情報の伝達を図ることが必要であり、この中で通信の果たす役割は非常に大きい。 このため、災害による通信施設の被災を最小限に止め、また、通信施設が被災した場合においても、応急の通信が確保できるよう通信設備の整備を行う。 機関名 NTT東日本 防災施設等 電気通信設備等の高信頼化を推進 電気通信設備及び附帯設備の防災設計(耐震・耐火・耐水設計等)を実施するとともに、通信施設が被災した場合においても、応急の通信が確保できるよう通信設備の整備を行う。 機関名 各通信事業者 防災施設等 人口密集地及び行政機関の通信確保に向けた対策を講じる。 【実施主体】NTT東日本 事項 電気通信設備 安全化対策 電気通信設備等の高信頼化 次のとおり電気通信設備と、その附帯設備(建物を含む。以下「電気通信設備等」という。)の防災設計を実施する。 (1) 豪雨、洪水、高潮又は津波等のおそれがある地域にある電気通信設備等について、耐水構造化を行う。 (2) 暴風又は豪雪のおそれのある地域にある電気通信設備等について、耐風又は耐雪構造化を行う。 (3) 地震又は火災に備えて、主要な電気通信設備等について耐震及び耐火構造化を行う。 事項 電気通信システム 電気通信システムの高信頼化 災害が発生した場合においても通信を確保するため、次の各項に基づき通信網の整備を行う。 (1) 主要な伝送路を多ルート構成又はループ構成とする。 (2) 主要な中継交換機を分散設置する。 (3) 大都市において、とう道(共同溝を含む。)網を構築する。 (4) 通信ケーブルの地中化を推進する。 (5) 主要な電気通信設備について、必要な予備電源を設置する。 (6) 重要加入者については、当該加入者との協議により加入者系伝送路の信頼性を確保するため、2ルート化を推進する。 6 ライフライン対策連絡協議会の設置 都とライフライン事業者間及びライフライン事業者相互間において、平常時の連絡を密にし、災害発生時に的確な対応が図れるような情報連絡体制を確立する。 第2節 道路及び交通施設等 1 道路施設 【実施主体】区、都建設局、関東地方整備局、首都高速道路(株) (1)施設の現況 ①道路の延長 (平成28年4月1日現在) 道路種別 総数 延長(m)1,184,122 面積(m2)8,224,558 道路種別 高速道路 延長(m)11,915 面積(m2)316,916 道路種別 国道 延長(m)10,128 面積(m2)320,097 道路種別 都道 延長(m)69,955 面積(m2)1,110,738 道路種別 区道 延長(m)1,092,124 面積(m2)6,476,807 平成28年度 世田谷区土木施設現況調書  ②防災施設等 機関名 都建設局 防災施設等 低地部の道路及び立体交差(アンダーパス) 都の地勢及び河川の分布からみて、水害は主として上流よりの洪水、海岸よりの高潮及び低地帯、谷底平野部での内水氾濫等に区分される。立体交差(アンダーパス)等で流水が自然流下することができない箇所には道路排水場(56箇所)がある。 機関名 首都高速道路 首都高速道路は、高架構造が大部分を占めているので、風水害時、平面街路が利用不可能な場合でも、高架構造の部分は救援物資の輸送、避難等に利用できる。 首都高速道路には、中央環状線山手トンネルほか19箇所に総延長30,799mの道路トンネルがあり、これらのトンネルには、非常用電話、トンネル入口警報表示板等の防災設備を整備している。 (2)予防対策 各機関の予防対策は、次のとおりである。 機関名 区 事業計画 管理する道路について、利用者の安全確保を図るため、道路、橋りょうの強化及び必要な防災施設の整備を行う。 機関名 都建設局(第二建設事務所) 事業計画 全橋りょうについて日常点検や5年に1度行っている定期点検等を基に、日常の維持管理及び補修・補強事業を実施する。 機関名 警視庁・警察署 事業計画 風水害による交通信号等の施設の被害を防止し、交通の安全を確保するため、次の要領により整備を行う。 交通信号機用制御機内への浸水を防護するため、その取付位置を必要に応じて見直す。 背面板等、風圧を受けるおそれがある施設の取り付けは、必要最小限度とする。 風水害予想地域に設置してある信号施設の被害を防止する          ため、台風シーズン前に灯器用アーム及び背面板等の点検補強を実施する。 信号施設の維持管理の適正を期するため、年2回の定期点検を実施する。 機関名 首都高速道路 事業計画 ①供用中の高速道路及び付属施設 排水ポンプ、電気設備、通信設備等の諸設備について、定期的に点検を行い、安全を確保する。 ②供用中の自動車駐車場 利用者及び自動車の安全を確保するため、防火、電気等の諸設備について、定期的に点検を行う。 ③工事中の道路及び付属施設 常に現場の整理を行い、不時の災害に対する各種資材等の需給計画を策定し、安全を確保する。 2 鉄道施設 【実施主体】京王電鉄(株)、小田急電鉄(株)、東急電鉄(株) 鉄道は、多数の人員を高速で輸送するという機能をもつところから、台風等により事故が発生した場合、その影響は極めて大きい。 このため、各鉄道機関は、従来から施設の強化や防災設備の整備を進めてきたところであるが、今後とも、これら施設等の改良、整備を推進し、人命の安全確保及び輸送の確保を図る。 3 無電柱化の推進(都建設局、区土木部) 【実施主体】都建設局、都第二建設事務所、区土木部 道路上の電線類を地中化することにより、災害時の救助活動の円滑化や避難道路機能の確保など都市防災の一層の向上を図るとともに、高度情報化社会において欠かせない電力の安定供給と通信の信頼性の向上を図るため、次のとおり整備を進める。 センター・コア・エリア内の計画幅員で完成した都道の無電柱化を完成させるとともに、多摩地域及び周辺区部の緊急輸送道路において無電柱化を推進する。緊急輸送道路のうち、震災時に一般車両の流入禁止区域の境界となる環状7号線では、令和6年度末までに無電柱化を完了させる。 地区幹線道路及び主要生活道路、鉄道連続立体交差化事業に伴う駅前広場整備や防災性の向上に寄与する路線を電線地中化の整備路線として位置づけていく。 4 屋外広告物対策 【実施主体】都都市整備局、区災対都市整備部、災対土木部 広告塔、広告板等の屋外広告物は、強風の際に脱落し、被害を与えることも予想される。 このため、都屋外広告物条例(昭和24年都条例第100号)に基づき、表示者等に対し、屋外広告物の許可発行時、安全管理について注意喚起を行うとともに、更新時には、安全点検報告書の提出を求めている。 また、令和元年度に、道路の安全管理のため、突出し看板等の調査を実施し、区の管理する道路内に落下の危険のある屋外広告物について指導を行った。