【風水害編】 第1部 総則 第3章 河川及び下水道等の整備概要 第1節 河川 1 中小河川の整備 隅田川以西の区部山の手及び多摩地区の神田川、渋谷川・古川、野川、空堀川などの中小河川の流域では、都市化の進展に伴う保水・遊水機能が減少し、降雨時の河川への流出量が増大し、河川の能力不足による溢水や内水氾濫による被害が発生している。 そのため、都は、市街化区域で改修を必要とする46河川、324kmについて、50mm/hの降雨に対応できるよう河道整備を進めているとともに、洪水の一部を貯留する調節池の設置などを進め、水害の早期軽減に努めている。 また、護岸や調節池の整備とともに、流域における貯留浸透事業の実施など、総合的な治水対策を推進している。 さらに、近年、50mm/hを超える降雨に伴う水害が頻発していることを踏まえ、学識経験者等による委員会より提言を受け、平成24年11月に「中小河川における都の整備方針~今後の治水対策~」をとりまとめた。 本方針では、目標整備水準を50mm/h降雨から引き上げ、区部では最大1時間降水量75mm/h降雨、多摩部では最大1時間降水量65mm/h降雨とし、優先度を考慮して流域ごとに対策を進めることとした。50mm/h降雨を超える部分の対策は調節池による対応を基本とし、広域調節池の整備等、効果的な対策の実施による早期の効果発現を図っていく。 2 多摩川水系における河川事業 多摩川水系の一級河川のうち、多摩川、浅川、大栗川の指定区域外については国の直轄事業として各種施設整備事業を実施し、その他の区間及び河川については都の河川事業として中小河川整備事業などを実施している。 3 世田谷区における河川事業 3-1 区の事業 【実施主体】区災対土木部 (1)現況 世田谷区には、一級河川として、多摩川、野川、仙川、谷沢川及び丸子川の5河川が流れている。多摩川については、河川改修は完了しているが、野川、仙川、谷沢川及び丸子川の一部で、50mm/h相当の降雨に対応する整備が完了していない。野川、仙川については、河川改修工事が進み、護岸はおおむね完了している。谷沢川については、河道拡幅が困難なため、分水路等整備と合わせて75mm/h規模の降雨に対応する計画がある。また、丸子川については、下水道整備により50mm/h相当の降雨への対応をする計画があるため、丸子川は現況の流下能力の維持に努める。 二級河川(目黒川、蛇崩川、北沢川、烏山川、呑川、九品仏川)については、下水道幹線として暗渠化が完了している。 河川改修現況(50mm/h降雨対策)(平成31年4月現在) 一級河川名 多摩川  一級河川名 谷沢川 全延長3,800メートル 改修済1,200メートル 未改修2,600メートル 改修率32 0パーセント 下水道暗渠化延長0メートル 一級河川名 野川 全延長5,500メートル 改修済5,400メートル 未改修100メートル 改修率98 0パーセント 下水道暗渠化延長0メートル 一級河川名 仙川 全延長6,300メートル 改修済6,200メートル 未改修100メートル 改修率98 0パーセント下水道暗渠化延長0メートル 一級河川合計 全延長15,600メートル 改修済12,800メートル 未改修2,800メートル 改修率82 0パーセント 下水道暗渠化延長0メートル 一級河川名 丸子川 二級河川名 目黒川 全延長500メートル 改修済500メートル 下水道暗渠化延長500メートル 二級河川名 蛇崩川 全延長3,940メートル 改修済3,940メートル 下水道暗渠化延長3,940メートル 二級河川名 烏山川 全延長10,720メートル 改修済10,720メートル 下水道暗渠化延長9,600メートル 二級河川名 北沢川 全延長4,540メートル 改修済4,540メートル 下水道暗渠化延長4,540メートル 二級河川名 呑川 全延長2,200メートル 改修済2,200メートル 下水道暗渠化延長1,364メートル 二級河川名 九品仏川 全延長1,810メートル 改修済1,810メートル 下水道暗渠化延長1,770メートル 二級河川合計 全延長23,710メートル 改修済23,710メートル 下水道暗渠化延長21,714メートル ※多摩川は国で管理。 ※丸子川流域は下水道施設において50mm/h対応するため改修対象とならない。 (2)事業計画 災害の危険のある地域について重点的にしゅんせつ・護岸等の工事を施行すると共に公共下水道の促進を図る。 3-2 都の事業 【実施主体】都第二建設事務所 (1)現況 本区内の各河川のうち、多摩川水系の野川、仙川について、都は平成21年12月に策定(平成29年7月修正)した「野川流域河川整備計画」に基づき、50mm/hまでの降雨は河道で対処することを基本に、これを超える降雨には新たな調節池の整備や既存調節池の規模拡大を行うことで、流域対策も含めて、65mm/hの降雨に対応することを目指し、整備を進めている。 (2)計画目標 50mm/hの降雨に対応する河道改修を進めるとともに、50mm/hを超える部分の対策は調節池等により対応する。   (3)事業計画 野川については、多摩川合流点(新二子橋付近)から狛江市境までの延長5.5km(管内)を50mm/h規模に改修するために整備を進めている。新井橋より上流狛江市境までの2.9km区間の護岸整備については、昭和50年度に着手し昭和57年度に完了した。 最下流部(吉澤橋より下流)は、平成11年度から自動車教習所の移転工事と調整を図りながら新しい河道への付替えを進め、平成19年7月末に全ての護岸整備及び河床整備工事を完了させ、50mm/h降雨対応の流下能力となった。護岸整備は仙川合流点付近を除いて完了しており、河床掘削は中之橋付近まで完了している。今後は上流の谷戸橋に向けて河床掘削を進めていく。 仙川については、野川合流点から調布市境(甲州街道)までの延長6.3km(管内)を50mm/h規模に改修するために整備を進めている。最下流部である野川合流点の鎌田橋付近左岸を除き、平成11年度に完成した。未整備区間については、鎌田橋架け替えと同時期に護岸整備する予定である。この改修完了後、50mm/h降雨対応の流下能力にするために、下流から河床掘削を開始する。 河川名 整備状況 事業状況 平成24年度以降残 河川名 野川 整備状況 5.5キロメートル(多摩川合流点~狛江市境) 事業状況 護岸改修 平成24年度以降残 0.1キロメートル 河川名 仙川 整備状況 6.3キロメートル(仙川合流点~調布市境) 事業状況 護岸改修 平成24年度以降残 0.3キロメートル 3-3 国の事業 【実施主体】国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所 (1)現況 多摩川においては、平成13年3月(平成29年3月変更)に策定した、「多摩川水系河川整備計画」に基づき、戦後最大規模の洪水を安全に流下させることを目標として整備を進めている。 (2)計画目標 概ね20年から30年を計画対象期間とし、戦後最大規模の洪水を安全に流下させることを目標として、河道断面の確保や、堤防等の安全性向上対策などを進める。 (3)事業計画 東京23区内唯一の無堤地区である二子玉川南地区において、早期に災害安全度を高めるため、段階的に堤防を整備し、安全なまちづくりを推進する。 また、令和元年10月の令和元年東日本台風(台風第19号)における課題をはじめ、近年、全国各地で多発している災害、増加傾向にある集中豪雨等を踏まえ、情報・広報などのソフト対策をハード面での整備と併せて推進する。 <高規格堤防整備> 洪水は、自然現象である降雨に起因するものである以上、河川の計画規模を上回る極めて規模の大きな洪水(超過洪水)が発生する可能性は常に存在している。 堤防を越えるそのような大洪水が発生した場合は、現状の堤防では防ぎきれず堤防の決壊などから、人命や財産、また、首都圏の中枢機能に甚大な被害をもたらすことが想定され、我が国における社会的影響は計りしれない。 このような超過洪水による壊滅的な被害を回避するため、多摩川では河口(大田区、川崎市)から日野橋(立川市、日野市)までを高規格堤防整備対象区間としている。 高規格堤防は、土でできたゆるやかな勾配を持つ幅の広い堤防である。洪水や地震に強く、広くなった堤防の上は、通常の土地利用が可能で、水と緑に恵まれた快適なまちづくりを行うことができるほか、災害時の避難場所としても活用することができる。 第2節 下水道 近年の急激な都市化の進展は、都市からの雨水の浸透域を減少させ、流域が持っていた保水・遊水機能を低下させている。 その結果、都市の雨水流出形態が変わり、雨水が河川や下水道へ短時間に大量に集中し、「都市型水害」といわれる水害が頻発するようになった。 下水道は、このような状況を解消して災害から区民の生命や財産を守り、都市生活や都市機能を安全に保持していく役割を担っている。 なお、都の下水道は、23区の単独公共下水道と、多摩地域の流域下水道並びに流域関連公共下水道、単独公共下水道及び特定環境保全公共下水道とに大別できる。 1 区部の下水道 区部の下水道計画区域は、多数の大小河川水系流域や地勢、あるいは都市形態をもとに、芝浦、三河島、砂町、小台、落合、森ヶ崎、小菅、葛西、新河岸、中川の10処理区からなる。 下水道の排除方式は大部分が汚水と雨水を一本の管きょで排除する合流式であるが、芝浦、砂町、森ヶ崎の一部、中川の大部分は分流式である。また、河川をはじめとする公共用水域への排除は、原則として自然流下である。しかし、東京湾沿いや多摩川、荒川、隅田川、中川周辺の低地帯は、自然流下による雨水排除が困難であるため、ポンプ吸揚により雨水を排除することとしている。 下水道の整備は、都市施設基盤整備の最重要施策として普及事業を進めてきた結果、平成6年度末には100%普及(概成)を達成した。 普及率100%達成以降の下水道事業のあり方を示す「第二世代下水道マスタープラン」を平成4年7月に策定し、着実に事業を推進している。 都下水道局では、平成13年3月に「下水道構想2001」を策定した。本構想は、下水道経営を取り巻く厳しい状況にあっても、将来にわたり下水道サービスの維持、向上を図っていくため、区部下水道を建設、維持管理してきた経験を踏まえ、都民サービスのさらなる向上、より一層の事業の効率化・重点化の観点から事業全般の進め方を見直した。 また、多発する都市型水害への対応、合流式下水道の改善、老朽化施設の再構築、都の事務事業で排出される温室効果ガスの約4割を下水道事業が占めていることなどから、「下水道構想2001」に基づき、「経営計画2016」と地球温暖化防止計画である「アースプラン2017」を策定し、着実に推進している。 平成23年の東日本大震災を踏まえ、都として今後取り組むべき新たな対策のあり方などについて、平成24年8月に、学識経験者等からなる「地震・津波に伴う水害対策技術検証委員会」より提言を受けるとともに、この提言等を踏まえた「地震・津波に伴う水害対策に関する都の基本方針」を策定した。 平成25年の局地的集中豪雨や台風により、甚大な浸水被害が生じたことから、雨水整備水準のレベルアップを含む検討を進め、同年12月に「豪雨対策下水道緊急プラン」を策定した。   2 世田谷区における下水道事業 【実施主体】都下水道局、区災対土木部 近年は、都市化の進展に伴う雨水流出量の増大や、大型台風、局所的集中豪雨の発生により、既に下水道が整備された地域でも、浸水被害が発生している。 都市における雨水の排除は下水道の基本的役割であり、都下水道局では50mm/hの降雨に対応できるよう幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を進めている。 従来の浸水対策事業に加え、「できるところから、できるだけの対策を行い、浸水被害を軽減させる」という整備方針で、緊急的な対応を図る「雨水整備クイックプラン」、世田谷区においては以下の取り組みが完了している。 <雨水整備クイックプランにおいて完了した世田谷区関連の取り組み> 重点地区 用賀 取組み内容 主要枝線の整備 完了年度 平成14年度 重点地区 桜丘 取組み内容 主要枝線の整備 完了年度 平成15年度 重点地区 千歳台 取組み内容 谷川雨水幹線の整備 完了年度 平成16年度 重点地区 下馬・三軒茶屋 取組み内容 子の神公園雨水調整池の整備 完了年度 平成16年度 重点地区 松原・代田・梅丘 取組み内容 バイパス管の整備 完了年度 平成20年度 重点地区 上馬 取組み内容 小泉公園雨水調整池及び貯留管の整備 完了年度 平成22年度 また、「経営計画2016(都下水道局)」では、「東京都豪雨対策基本方針(改定)」に基づき、概ね30年後の浸水被害解消を目標に、50mm/h降雨に対応する下水道施設を整備することとしている。 50mm/h降雨に対応する施設整備としては、玉川地区で谷川雨水幹線の整備を進めている。 また、「豪雨対策下水道緊急プラン(平成25年12月)」で定めた「75mm対策地区」として、弦巻地区及び深沢地区において、75mm/h降雨に対応する施設整備を推進する。