【風水害編】 第1部 総則 第1部 総則 第1章 計画の方針 第1節 計画の目的及び前提 1 計画の目的 この計画は、災害対策基本法(昭和36年法律第 223号)第42条の規定に基づき、世田谷区防災会議が作成する計画である。その目的は、区、都、指定地方行政機関、指定公共機関、指定地方公共機関等の防災機関が、その有する全機能を有効に発揮して、区の地域において風水害等に係る災害予防、災害応急対策及び災害復旧を実施することにより、区の地域並びに区民の生命、身体及び財産を災害から保護し、「風水害に強い区の実現」を図ることにある。 2 計画の前提 東京においては、近年、市街地の拡大に伴い地域の持つ保水、遊水機能が低下し、河川や下水道に大量の雨水が一気に流れ込むことから生ずる河川の氾濫や下水道管からの雨水の吹き出しなど、いわゆる都市型水害と言われている浸水被害にたびたび見舞われている。 また、百年に一度、二百年に一度という大雨があった場合、荒川等の大河川が氾濫し、広範囲の浸水被害を発生させることも考えられる。 この計画は、実災害から得た教訓等を可能な限り反映し、策定した。 防災対策については、被災者の視点に立って対策を推進することが重要であり、とりわけ、要配慮者や女性などに対しては、きめ細かい配慮が必要である。 東日本大震災において、高齢者、障害者等要配慮者や女性の視点を踏まえた対応が必ずしも十分でなかったとの指摘があったことを受け、国においても、防災基本計画の見直し及び災害対策基本法の改正が行われており、区としてもこうした動向を踏まえて、計画を策定した。 災害対策基本法の改正趣旨等を踏まえて、防災に関する政策・方針決定過程及び防災の現場における女性の参画を拡大し、男女双方の視点に配慮した防災対策を推進していく。 なお、災害対策本部等が設置されない場合でも、本計画に準じて行動するものとする。 また、本計画に定めのない部分は、世田谷区地域防災計画震災編、都地域防災計画風水害編の記載によるものとする。   第2節 風水害に関する近年の動向 国・都等の対応 国は、平成30年7月豪雨を踏まえ、令和元年5月に「防災基本計画」を修正し、水害・土砂災害からの避難対策に関する修正を行った。そこでは、住民が「自らの命は自らが守る」といった意識を持ちとるべき避難行動をとり、行政はそれを全力で支援するといった住民主体の防災対策に転換する方向性を示した。 国は、平成29年6月に水防法等を改正し、逃げ遅れゼロ実現のための多様な関係者の連携体制を構築するため、「大規模氾濫減災協議会制度」を創設し、洪水氾濫による被害軽減を図るための対策を総合的かつ一体的に推進する方向性を示した。 国は、平成30年7月豪雨を踏まえ、平成31年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」を改定し、住民等が情報の意味を直感的に理解できるよう、5段階の警戒レベルを用いた避難勧告等の発令基準を定めた。 国は、令和元年房総半島台風(台風第15号)、令和元年東日本台風(台風第19号)における対応を通じて指摘された様々な課題について、検証チームを設置し、令和2年3月に、一連の災害に係る検証レポートをとりまとめた。 都は、令和元年度に発生した房総半島台風(台風第15号)及び東日本台風(台風第19号)等で明らかとなった課題を検証するため、「大規模風水害検証会議」を設置(期間:令和元年11月6日から同月28日まで)し、7つの視点に基づく風水害対策をとりまとめた。 区の対応 区は、令和元年東日本台風(台風第19号)に関する対応について、風水害対策総点検を実施し、災対各部の取組みについて検証し、課題とそれに対する対応の方向性を整理したうえで対応方針等を取りまとめた。   第3節 重点項目 令和3年修正においては、令和元年東日本台風(台風第19号)に関する区の対応について、風水害対策総点検を実施し、その内容を踏まえて、風水害時における情報提供のあり方や避難所への誘導・運営体制、職員の配置・態勢、備蓄等について強化に取り組んだ。 1 防災情報に警戒レベルの導入 居住者等がとるべき行動を5段階に分け、「行動を居住者等に促す情報」及び「行動をとる際の判断に参考となる情報(警戒レベル相当情報)」との対応を明確にした。 ※具体的な取組みは、風水害編第3部第6章第2節1「避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告又は避難指示(緊急)」を参照 2 風水害対応タイムラインの作成 世田谷区災害対策本部が設置された場合の「世田谷区風水害対応タイムライン」に基づく区の対応を整理した。 ※具体的な取組みは、風水害編第3部第1章 前文を参照 3 風水害時の避難所の拡充 多摩川洪水浸水想定区域外でより身近な水害時避難所を確保するため、特に玉川・砧地域を中心に、大学や都立高校など、民間施設に対して、水害時避難所の拡充について協議を行い、早期運用を目指す。 ※具体的な取組みは、風水害編第3部第6章第4節「避難所の指定、開設・管理運営」を参照 4 洪水ハザードマップの改定 「世田谷区洪水ハザードマップ(多摩川版・全区版)」を改定し、区民への日頃からの周知啓発を図ることとした。 ※具体的な取組みは、風水害編第2部第1章第4節 2「浸水想定区域における避難体制確保」を参照 5 防災無線電話応答サービスの拡充 一度に大量の電話アクセスに対応するため、回線の増加を実施した。 ※具体的な取組みは、震災編第2部第6章第5節第1 2「区民等への情報提供体制の整備」を参照 6 大容量ポータブル蓄電池の配備 避難が長期化した場合の携帯電話への充電手段を確保するため、避難所や帰宅困難者支援施設に大容量ポータブル蓄電池を配備した。 ※具体的な取組みは、震災編第2部第9章第3節 2「避難所・避難場所の指定及び管理運営の整備」を参照 7 避難勧告等の判断基準の改定等 これまで水位により判断していた多摩川の避難勧告等判断基準に、大雨・洪水警報などの気象予報や、内水氾濫による浸水のおそれなどを踏まえ、避難勧告等を発令する際の判断基準を設けた。 水位周知河川の指定に伴い、丸子川・谷沢川・呑川の避難勧告等判断基準などを新設した。 ※具体的な取組みは、風水害編第3部第6章第2節 2「避難勧告等の判断基準等」を参照 第4節 計画の構成 この計画は、区及び防災機関が行うべき風水害対策を予防、応急・復旧の各段階に応じて具体的に記載しており、その構成と主な内容は、次のとおりである。 構成 第1部 総則 主な内容 区の概況と災害、河川及び下水道等の概要、区及び防災機関の役割 等 構成 第2部 災害予防計画 区及び防災機関等が行う予防対策、区民及び事業者等が行うべき措置 等 構成 第3部 災害応急・復旧対策計画 風水害発生後に区及び防災機関等がとるべき応急・復旧対策、災害救助法の適用 等 第5節 計画の習熟 各防災機関は、平素から危機管理の一環として、風水害対策を推進する必要がある。このため、風水害に関する施策、事業が本計画に合致しているかを点検し、必要に応じて見直しを行うとともに、風水害に関する調査・研究に努め、所属職員に対する災害時の役割などを踏まえた実践的な教育・訓練の実施などを通して本計画を習熟し、風水害への対応能力を高める。 第6節 計画の修正 この計画には、毎年、検討を加え、必要があると認めるときに修正する。 修正に当たっては、各防災機関は、関係のある事項について、計画修正案を世田谷区防災会議に提出する。