【震災編】 第1部 総則 第4章 計画の概要等 第1節 計画修正の背景 国・都等の対応 国は、平成24年6月、東日本大震災を踏まえた法制上の課題のうち、国等が自らの判断で物資等を供給することで、救援物資等を被災地に確実に供給する仕組みを創設するなど、緊急を要するものについて対応するため、災害対策基本法を改正した。 その際、引き続き検討すべきとされた諸課題について、中央防災会議「防災対策推進検討会議」の最終報告(平成24年7月)も踏まえ、高齢者、障害者等の災害時の避難に特に配慮を要する者について名簿を作成する際、必要な個人情報を利用できるようにするなど、平成25年6月、さらなる改正を実施した。 国は、平成28年熊本地震等の教訓を踏まえ、地方自治体の受援業務及び体制の整備に向けて、平成29年3月に「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」を策定した。 国は、救助実施市区町村による救助や都道府県による連絡調整の実施を定めた、災害救助法の改正をはじめとした災害関連法令等の改正に伴い、平成30年6月に「防災基本計画」を修正した。 都は、平成30年1月に「東京都災害時受援応援計画」を策定し、全国の自治体や関係機関等からの応援の円滑な受け入れ、区市町村と連携した早期の被災地支援に繋げていくための手順や具体的ルールを示した。 また、都では、平成28年熊本地震等、前回修正以降発生した地震災害の教訓や、女性視点の防災対策の推進、増加する訪都外国人への対応、防災まちづくりやICT等新技術の進展など、震災対策を取り巻く最新動向を踏まえた取組みを反映し、震災対策の実効性を更に向上させる観点から、令和元年7月に「東京都地域防災計画(震災編)」における所要の修正を行った。 世田谷区の対応 区は、昭和39年に策定して以来、国及び都等の関係計画・法令等、震災及び風水害等の教訓を踏まえて、適時修正を行っており、直近では、平成29年度に修正を行っているが、災害対策関連法令の改正や新規制定、国や都などの上位計画の修正、平成28年熊本地震や平成30年の大阪府北部地震、北海道胆振東部地震の発生など、前回の計画修正以降、本区の災害対策を取り巻く社会情勢等は変化している。 このような状況を踏まえ、最新の関連法令や上位計画に対応するとともに、近年の社会情勢等を踏まえた現行の区計画の課題を明らかにし、関係機関及び区民からの意見を取り入れることにより、現実的で実効性の高い対応策を組み立てることを目的として修正に取り組む。 第2節 重点項目 令和3年修正においては、以下のとおり、主な修正の視点を定め、修正に取り組んだ。 1 区の受援・応援体制の充実強化 庁内、都・区間、区・協定締結団体間等の受援・応援に係る調整体制を強化する。 ボランティア、NPOと区との連絡調整体制等を強化する。 ※具体的な取組みは、震災編 第2部第2章第5節第2「応急対策」5「ボランティアとの連携」及び第5章第5節第2「応急対策」3「応援協力・派遣要請」を参照 2 災害対策本部機能の強化 災害時には区の災害対策の中枢機能を果たす新たな本庁舎の整備に際し、耐震安全性や電力、通信、給排水などの庁舎維持機能、浸水対策、火山灰対策など、区民の生命や財産を守るための機能が十分に発揮されるよう災害対策本部としての強化を図る。 災害時の情報収集・分析及び災害対策本部内での情報共有を迅速かつ効果的なものにし、対応方針等の意思決定を適切に行うことを目的とした防災情報システムを導入する。 ※具体的な取組みは、震災編 第2部第5章第5節第1「予防対策」1「初動対応体制の整備」を参照 3 自助の推進 地震災害による被害を軽減し、拡大を防止するためには、区民一人ひとりの予防の取組みが大切であることから、不燃化促進助成制度や耐震化支援制度等の周知を進め、建物の安全性の更なる向上を図る。 過酷となる避難所生活を回避するため、自宅における家具の転倒防止、携帯用充電バッテリーの準備や7日分の備蓄等による在宅避難を推奨するとともに、在宅避難が困難な場合の縁故避難の考え方も啓発していく。 ※具体的な取組みは、震災編 第2部第2章第3節1「自助による区民の防災力の向上」及び第5節第1「予防対策」1「自助による区民の防災力向上」を参照 4 多様性に配慮した女性の視点 高齢者や障害者、乳幼児などの要配慮者や女性への配慮の必要性、重要性について、地域への普及・啓発を進める。 多様性に配慮した女性の視点からの防災を地域において実践し、啓発を行う女性防災コーディネーターの育成を進める。 ※具体的な取組みは、震災編 第2部第2章第5節第1「予防対策」7「多様性に配慮した女性の視点の反映」を参照   5 新型コロナ等感染症対策 新型コロナウイルス等感染症拡大期に災害が発生した場合について、感染予防のために避難所での感染症拡大防止対策、受援応援およびボランティア活動における感染症拡大防止対策の強化を図る。 ※具体的な取組みは、震災編 第2部第2章第5節第2「応急対策」5「ボランティアとの連携」、震災編 第2部第5章第5節第2「応急対策」3「応援協力・派遣要請」、震災編 第2部第9章第5節第1「予防対策」3「避難所等の管理運営体制の整備等」および第5節第2「応急対策」2「避難所の開設・管理運営」を参照 第3節 計画の全体像 本計画の全体像は、次ページのとおりである。 第2部での個別施策に関しては、地震前の行動「予防対策」、地震直後の行動「応急対策」、地震後の行動「復旧対策」の3つのスキームに分けて記載した。 なお、第4部については、南海トラフ巨大地震等への対策、東海地震の警戒宣言時等に関する事前対策を定めている。   【個別施策と各フェーズの体系整理図】 *図表省略   第4節 施策相互の連携相関イメージ図 *図表省略   第2部各章の施策は、密接に関連しており、特に発災後は、各施策を実施する主体が相互に連携を図りながら、応急対応を実施することが求められる。 本節では、各施策の関係について、①発災直後から応急・復旧に至るまで、全ての対策のベースとなる活動、②発災直後からの72時間以内において特に重要な活動、③発災後、4日目以降に重点的に行う活動の3つに分類し、それぞれの相関のイメージを示した。 1 発災直後から応急・復旧に至るまで、全ての対策のベースとなる活動(危機管理体制、情報通信、道路ネットワーク) 発災後のあらゆるフェーズにおいて的確な応急活動を展開する上で、初動態勢の確保や各機関との広域連携など、危機管理体制を構築することが不可欠である。 また、関係機関が連携して対応するためには、各機関が被害状況、応急対応状況の情報を共有できるよう、防災行政無線等の情報通信を確保する必要がある。 さらに、救出救助活動や消火活動、物資の供給などは、主に車両を使って実施することから、機動的に活動を展開するためには、交通規制や道路啓開などにより、ネットワークを確保することが重要である。 2 発災直後から72時間以内において特に重要な活動(救出救助、消火、医療救護、避難、物流・備蓄、帰宅困難者対策、ライフライン) 救出救助活動や消火活動については、自衛隊、警察、消防などの防災機関による活動と、近隣住民同士の共助による活動が連携を図ることで大きな効果を発揮する。   また、こうした救助活動等によって助けられた被災者に対し、医療機関等において適切な医療を提供することで、一人でも多くの命を救うことができる。 避難所や在宅避難者に対し、生活を支えるために必要な物資を供給するとともに、ボランティアによる支援を円滑に受け入れる必要がある。ボランティアは、受け入れ体制の確立、ボランティア協会・社会福祉協議会・NPO及び区の連携体制の確立、各人材の時系列行動目標と人材確保の取組み表の検討により、迅速な応急・復旧活動を行うことが重要である。 帰宅困難者の一斉帰宅の抑制は、迅速な救出救助活動の展開のためにも不可欠であり、一時滞在のための物資の供給は、帰宅困難者に対しても、円滑に行われなければならない。 また、こうした活動のための非常用電源等によるライフラインの確保や、そのための燃料の安定供給も重要な取組みである。 3 発災後、4日目以降に重点的に行う活動(生活再建、帰宅支援) 発災後4日目以降については、帰宅困難者の円滑な帰宅に向けての帰宅支援を進めるとともに、被災者の早期の生活再建に向け、義援金の支給や応急仮設住宅への早期の入居を実現していかなければならい。