【震災編】 第1部 総則 第2章 世田谷区の現状と被害想定 第1節 世田谷区の概況 1 地勢 (1)位置と面積 世田谷区は、東京都区部の西端に位置し、東は目黒区・渋谷区に、北は杉並区・三鷹市に、西は調布市・狛江市に、そして南は大田区に接し、さらに多摩川を挟んで神奈川県に対している。 地形的な位置では、世田谷区は、関東平野の南西部にある武蔵野台地の南東部にあり、この台地と多摩川沿いの沖積平野にまたがっている。 面積は、58.05km2であり、23区の中で2番目に広い。ほぼ平行四辺形をなしており、東西約9km、南北約8kmである。 (2)地形 世田谷区の標高の最低部分は、多摩川の西方の沖積地で約10m、高い部分は台地面で35~45mである。低地と台地の間には、多摩川に沿って成城付近から南東に大蔵・瀬田を通って尾山台に至る高度差約20mの急な崖がある。 台地面は、仙川、野川、谷沢川、呑川、九品仏川、蛇崩川、烏山川、北沢川などによって樹枝状に浸食され、丘や谷の起伏ができている。 世田谷区の台地は、武蔵野台地の一部である。武蔵野台地は、西の青梅市を頂点として、東の東京湾に向かって開けた古多摩川の扇状地であるが、ただ単なる扇状地ではない。いくつかの段丘面がみられ、下末吉段丘(淀橋台、荏原台、田園調布台はこの中に含まれる。)、武蔵野段丘、沖積面などがあって複雑である。通常武蔵野台地という場合は、上記の諸段丘面をさしている。 (3)地質 武蔵野段丘の地表面は、関東ローム層であり、数メートルの厚さに覆われ、その下に武蔵野礫層がある。それより下には東京層、さらにその下に三浦層群があるが、場所によって多少の違いがある。等々力渓谷では東京層の露出が見られる。立川段丘も古多摩川の堆積物からなっている。 淀橋台、荏原台の地質は武蔵野段丘や立川段丘のものと違い、厚いローム層の下に海成の砂、泥からなる東京層があることから、海底面が陸地になった部分とみられる。 低平な沖積地は、多摩川と台地を浸食して流れるいくつかの川の作用でできたもので土、砂、礫からなっている。   〔世田谷区の地層表〕 *図表省略               *「安心して住めるまちづくりを」平成15年2月 世田谷区   2 人口・産業 (1)人口 〔人口と世帯 (平成31年1月1日現在)〕 総数 人口908,907 人 人口密度(1km2あたり)15,658 人 世帯479,792 世帯 世田谷地域 人口249,833 人 人口密度(1km2あたり)20,272 人 世帯139,760 世帯 北沢地域 人口152,228 人 人口密度(1km2あたり)17,595 人 世帯88,363 世帯 玉川地域 人口224,199 人 人口密度(1km2あたり)14,182 人 世帯111,816 世帯 砧地域 人口162,766 人 人口密度(1km2あたり)12,013 人 世帯76,816 世帯 烏山地域 人口119,881 人 人口密度(1km2あたり)15,539 人 世帯63,037 世帯 65 歳以上人口183,215人 外国人登録人口21,379 人 *「世田谷区統計書」平成30年度版(2018) 世田谷区 〔昼夜間人口〕(平成27年国勢調査による 東京都の昼間人口(従業地・通学地による人口)) 区分 総数 夜間人口903,346人 昼間人口856,870人 流入人口(通勤者)129,451人 流入人口(通学者)57,517人 流出人口(通勤者)203,104人 流出人口(通学者)30,341人 流出超過人口(通勤者)73,653人 流入超過人口(通学者)27,176人 区分 男 夜間人口428,874人 昼間人口398,659人 流入人口(通勤者)75,417人 流入人口(通学者)29,682人 流出人口(通勤者)119,312人 流出人口(通学者)16,002人 流出超過人口(通勤者)43,895人 流入超過人口(通学者)13,680人 区分 女 夜間人口474,472人 昼間人口458,211人 流入人口(通勤者)54,034人 流入人口(通学者)27,835人 流出人口(通勤者)83,792人 流出人口(通学者)14,339人 流出超過人口(通勤者)29,758人 流入超過人口(通勤者)13,496人 (2)産業・都市施設等 ①産業 工業(平成30年工業統計調査) 工場数 138 従業者数 2,015人 商業(平成26年経済センサス基礎調査) 商店数 7,253  従業者数 59,223人 農業(平成30年度農家基本調査) 農家戸数 318戸 農家世帯員数 708人 経営耕地面積 85.89ha 田 0ha  畑 85.89ha ②都市施設等 ア 道路 (平成31年4月1日現在) 道路種別 総数 延長1,186,345メートル 面積8,251,012平方メートル 道路種別 高速道路 延長11,946メートル 面積316,916平方メートル 道路種別 国道 延長10,128メートル 面積320,097平方メートル 道路種別 都道 延長69,968メートル 面積1,110,910平方メートル 道路種別 区道 延長1,094,303メートル 面積6,503,089平方メートル *令和元年度 世田谷区土木施設現況調書  イ 河川(平成31年4月1日現在) 総延長51,630m 1級27,920m 2級23,710m *令和元年度 世田谷区土木施設現況調書 ウ 公園・身近な広場 (平成31年4月1日現在) 区分 区立都市公園 施設数424箇所 面積1,614,870 m2 区分 身近な広場 施設数125箇所 面積133,340m2 区分 市民緑地 施設数13箇所 面積16,878 m2 区分 区内都立公園 施設数4箇所 面積921,707m2 1人当たり面積 2.94㎡ *令和元年度 世田谷区土木施設現況調書 *用途別建築物数(棟数)一覧〔資料編資料第1・P1〕 *橋りょう現況〔資料編資料第2・P2〕 *世田谷区内の急傾斜地〔資料編資料第3・P2〕 *交通施設の現況(鉄道事業者)〔資料編資料第4・P3〕 第2節 被害想定 東京都防災会議は、平成3年に関東大地震の再来を想定した被害想定を、また、平成9年に阪神・淡路大震災を踏まえた東京における直下地震の被害想定を公表してきた。 その後、同会議は、東京の都市構造の変化や国による首都直下地震の被害想定の公表等を踏まえ、平成24年4月18日に新たな「首都直下地震等による東京の被害想定」を発表した。 このため、本計画は、令和元年7月に決定された「東京都地域防災計画」と整合を図り、「首都直下地震等による東京の被害想定」を指標とする。 内閣府に平成23年8月に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」において、南海トラフの巨大地震対策で想定すべき最大クラスの地震・津波の検討を進め、平成24年3月31日に第一次報告の南海トラフ巨大地震の被害推計結果が公表されたが、詳細な被害状況が示されていないため、都は独自の被害想定を行い、平成25年5月「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」を公表した。 「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」及び「首都直下地震等による東京の被害想定」の世田谷区に関する被害のデータを比較すると、全てにおいて「首都直下地震等による東京の被害想定」での結果の方が大きくなる。 <南海トラフ巨大地震における被害想定(世田谷区)> 震度:5強 津波被害:なし *気象庁震度階級関連解説表〔資料編資料第5・P4〕 *首都直下地震による東京の被害想定〔資料編資料第6・P6〕 *南海トラフ巨大地震による東京の被害想定〔資料編資料第7・P8〕 *首都直下地震の震度分布図〔資料編資料第8・P10〕   第1 前提条件 1 考慮する想定地震 種類 東京湾北部地震   震源 東京湾北部  規模 マグニチュード(以下「M」という。)7.3  震源の深さ 約20kmから35km 種類 多摩直下地震(プレート境界多摩地震)  震源 東京都多摩地域  規模 マグニチュード(以下「M」という。)7.3  震源の深さ 約20kmから35km 種類 元禄型関東地震   震源 神奈川県西部  規模 M8.2  震源の深さ 約0km~30km 種類 立川断層帯地震   震源 東京都多摩地域  規模 M7.4  震源の深さ 約2km~20km 2 気象条件等 季節・時刻・風速 冬の朝5時 風速 4m/秒 8m/秒 想定される被害 兵庫県南部地震と同じ発生時間 多くの人々が自宅で就寝中に被災するため、家屋倒壊による圧死者が発生する危険性が高い。 オフィスや繁華街の屋内外滞留者や、鉄道・道路利用者は少ない。 季節・時刻・風速 冬の昼12時 風速 4m/秒 8m/秒  想定される被害 オフィス、繁華街、映画館、テーマパーク等に多数の滞留者が集中しており、店舗等の倒壊、落下物等による被害拡大の危険性が高い。 住宅内滞留者数は、1日の中では最も少なく、老朽木造家屋の倒壊による死者数は朝5時と比較して少ない。 季節・時刻・風速 冬の夕方18時 風速 4m/秒 8m/秒 想定される被害 火気器具利用が最も多いと考えられる時間帯で、これらを原因とする出火数が最も多くなるケース オフィスや繁華街周辺、ターミナル駅では、帰宅、飲食のため多数の人が滞留 ビル倒壊や落下物等により被災する危険性が高い。 鉄道、道路もほぼラッシュ時に近い状況で人的被害や交通機能支障による影響拡大の危険性が高い。 第2 想定結果の概要 〔被害想定の概要(世田谷区)〕 想定される地震による被害として、東京湾北部震源直下地震、元禄型関東地震(関東大震災の再来を想定した海溝型地震)、多摩直下地震、立川断層帯を想定した地震による被害想定がある。このうち、相対的に区への影響が最も大きい「東京湾北部を震源とする直下地震」による被害想定を世田谷区における被害想定の前提として位置づける。 東京湾北部を震源とする直下地震の被害想定では、発災の想定時刻により被害が異なるが、「冬の夕方18時、風速8m/秒」を基本にして、対応を考慮していくこととする。 1 傾向 都では、最大震度7の地域が出るとともに、震度6強の地域が広範囲に発生する。世田谷区では、震度6強の地域が広範囲に発生し、区北部の一部で震度6弱となる。 建物被害(全半壊、焼失)は、震度6強のエリアと木造住宅密集地域を中心に発生する。 死亡は揺れ及び火災を原因とするものが多く、負傷は建物倒壊及び火災を原因とするものが多い。 道路や鉄道の橋りょうなどの被害は、震度6強以上のエリア内で発生する。ほとんどの鉄道は一時運行停止し、また、緊急輸送道路の渋滞も発生する。 ライフラインの被害は、区部東部に被害が多く、世田谷区では、区部東部と比較して被害が少ない。 避難者は、1日後にピークを迎える。 鉄道等の運行停止により、大量の帰宅困難者が発生するとともに、ターミナル駅に乗客等が集中し、混乱する。 エレベーターの閉じ込めが発生する。 2 地震動(地震のゆれ) 想定地震 東京湾北部地震(マグニチュード7.3)震度別面積率 5弱以下0.0% 5強0.0% 6弱33.2% 6強66.8% 7 0.0% 想定地震 多摩直下地震(マグニチュード7.3)震度別面積率 5弱以下0.0% 5強0.0% 6弱78.4% 6強21.6% 7 0.0% 想定地震 元禄型関東地震(マグニチュード8.2) 震度別面積率 5弱以下0.0% 5強0.0% 6弱65.3% 6強34.7% 7 0.0% 想定地震 立川断層帯地震(マグニチュード7.4)震度別面積率 5弱以下6.0% 5強84.5% 6弱9.5% 6強0.0% 7 0.0% 3 橋りょう・橋脚被害(カッコ内は大被害)(都全体) 想定地震 東京湾北部地震(マグニチュード7.3)高速道路10.2%(0.0%)一般国道9.1% 都道3.0% 区市町村道0.7% 鉄道1.9% 想定地震 多摩直下地震(マグニチュード7.3)高速道路3.2%(0.0%)一般国道4.1% 都道1.4% 区市町村道0.5% 鉄道0.8% 想定地震 元禄型関東地震(マグニチュード8.2)高速道路5.1%(0.0%)一般国道6.2% 都道1.8% 区市町村道0.6% 鉄道1.0% 想定地震 立川断層帯地震(マグニチュード7.4)高速道路1.3%(0.0%)一般国道2.7% 都道0.7% 区市町村道0.4% 鉄道0.3% 【東京湾北部地震 M7.3】(世田谷区想定) *図表省略 【参考】国が示した被害想定(平成25年12月) 「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」(平成25年12月、中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ)から都区部を抜粋 *図表省略