避難行動要支援者支援の進め方 世田谷区 はじめに  この冊子は、災害時に一人では避難することが困難な方(避難行動要支援者)を地域の皆さんで支えあうための方法やヒントを記したものです。  日頃の取組みや災害時の取組みについて、記してあります。地域の皆さんでできることから始められるように、取組みの項目別に整理してあります。  地域でできそうなこと、やってみようと思ったことから始めてみてください。 ※ この冊子は、避難行動要支援者支援に関する協定を結んだ町会・自治会や民生委員・児童委員などからいただいた、具体的な取組み方法に関する問合せの内容を参考にして作成したものです。   主に、協定を結んで避難行動要支援者名簿を受け取った町会・自治会を対象としています。協定を結んでいない町会・自治会には、協定を結ぶことをお勧めします。   すでに独自の取組みを始められている地域などでは、ぜひ活動の参考にしてください。 ※ 平成29年4月から災害時要援護者は、避難行動要支援者に名称が変更となりました。 目 次 第1章 避難行動要支援者の支援 2 第2章 地域でできることから 4 第3章 避難行動要支援者支援の取組み 8 ■訪ねてみる(顔合わせ) 10 ■一緒に話をする(交流) 12 ■役割を決める(支援の体制) 14 ■防災地図をつくる 16 ■個別支援カードをつくる 18 ■備えを働きかける(自助) 22 ■避難訓練を行う 24 ■安否を確かめる 30 ■避難を助ける 32 ■避難生活を助ける 34 資 料 37 ■訪問時あいさつ文のサンプル 38 ■避難訓練開催案内のサンプル 39 ■個別支援カードのサンプル 40 ■問合せ先 44 第1章 避難行動要支援者の支援  地震などの災害時に、加齢や障害により一人では避難や意思表示が困難な方を、避難行動要支援者と呼んでいます。(6頁参照)  近年の災害犠牲者の特徴をみると、60歳以上の高齢の方がとても多いことが明らかになっています。災害時に、こうした高齢の方などの避難行動要支援者の被害をできる限り少なくしていくためには、地域における避難行動要支援者支援の取組みが非常に大切なものとなります。 ① 助けを呼べない  ⇒ 積極的な安否確認と救出が課題 ② 自力で行動できない  ⇒ 避難誘導する支援担当者が必要 ③ 状況の変化に対応できない  ⇒ 避難所や在宅での避難生活への支援 ④ サポートなしでは生きられない  ⇒ 介護サービスの継続が不可欠 ① 安否確認  ⇒ 災害時に各戸を訪問して安否確認 ② 救出・救助  ⇒ 家具の下敷き等で負傷した者の救助 ③ 避難誘導  ⇒ 自宅が危険な場合に指定の避難所へ誘導 ④ 避難生活へのケア  ⇒ 体調を崩さないように生活をケア 第2章 地域でできることから  地震などの大規模な災害では、区全体が大きく混乱し、区役所も数日は地域への対応が困難になると予想されます。  このような状況では、地域における助けあいが大きな力となります。  また、避難行動要支援者の支援には、日頃からの地域の皆さんの関わりあいが欠かせません。  民生委員・児童委員とも協力・連携しながら、無理のない方法で、地域でできることから少しずつ積み重ねていくことが大切です。  区では協定を結んだ町会・自治会に、災害時に援助を必要とする方(避難行動要支援者)の名簿を提供し、助けが必要な方と援助する方とを結びつける取組みを進めています。 ■「避難行動要支援者支援事業」のしくみ ①区と町会・自治会とで避難行動要支援者の支援に関する協定を締結します。 ②区は、避難行動要支援者へ名簿登載の同意確認をします。 ③区は、同意確認のとれた避難行動要支援者のみを登載した名簿を作成します。 ④区は、町会・自治会と該当地区を担当する民生委員・児童委員に名簿を提供します。 ⑤町会・自治会は、民生委員・児童委員と協力・連携して、名簿を活用した助けあい活動に取り組みます。 Q.避難行動要支援者名簿の対象者の範囲は? A 名簿に登載するのは、加齢や障害により自力で自宅外への避難や意思表示ができない方です。区では、次の方を対象とすることを標準案としています。 ①要介護4または5の方 ②要介護3で、ひとりぐらしの高齢者または高齢者のみ世帯の方 ③身体障害者手帳1級で、次の種別に該当する方 視覚、四肢、体幹、半身、両下肢、片下肢、 移動、聴覚 ※聴覚は2級まで対象 ④愛の手帳1度または2度の方   Q.「避難行動要支援者名簿」は日頃の取組みでどう活用したらいいの? A 名簿には避難行動要支援者の所在を示すのに必要な最低限の情報しか掲載していません。また、名簿は避難行動要支援者を支援する目的以外には活用することができません。  支援担当者※1は、名簿管理責任者※2に避難行動要支援者の所在を確認し、その情報を個別支援カード※3や地図上に記録します。記録した情報をもとに避難行動要支援者宅に訪問し、訪問で得た情報を追記していきながら、そのカードをもとに活動します。  名簿は、名簿管理責任者が大切に保管してください。 Q.民生委員・児童委員との協力・連携とは? A 民生委員・児童委員は、厚生労働大臣の委嘱を受けた、住民の立場に立った相談・助言・援助を行う方々です。秘密を厳守することを義務付けられており、関係機関などと協力して、地域保健福祉の推進をめざし、主体的に活動しています。  こうした活動を行っている民生委員・児童委員の持つ経験とノウハウは、避難行動要支援者の訪問や相談の対応など幅広い取組みにおいて、地域の皆さんにとって大きな力となります。ぜひ、民生委員・児童委員と協力・連携して、活動を進めてください。 第3章 避難行動要支援者支援の取組み ■避難行動要支援者支援の流れ  避難行動要支援者の支援をここでは大きく3段階に分けています。「災害時の取組み」以外は日頃から取り組めるものです。それぞれの町会・自治会で取り組めるものから始めてみてください。  避難行動要支援者の支援を進める鉄則! ■取組み例のご紹介(できることから) ■ポイント □ 民生委員・児童委員の協力を得る  地域の民生委員・児童委員の協力を得ることで、訪問方法や避難行動要支援者への対応方法を相談できます。 □ 支援担当者(7頁参照)を決める  避難行動要支援者との信頼関係を築くため、訪問する支援担当者をあらかじめ避難行動要支援者ごとに決めておきましょう。(14頁参照) □ 訪問方法を決める  地域の行事案内などと兼ねて訪ねることで声がかけやすくなります。また、2人以上で訪問すると不安が軽減され、何か問題が起きても対応がしやすくなります。 ■ポイント □ 地域の行事などに誘う  大がかりなイベントではなく、町会・自治会で開催する地域の行事など、気軽に参加できる機会を利用してみましょう。 □ 気軽に楽しめる会  お茶会や簡単なサロンのように避難行動要支援者やその家族が気軽に参加し、くつろげるような会を工夫してみましょう。 □ 多くの支援担当者が集まる会へ  交流の機会を重ねる中で、避難行動要支援者やその家族だけでなく、参加者を民生委員・児童委員や介護事業者など避難行動要支援者をよく知る方にも広げていくことで、幅広い支援に結びついていきます。 ■ポイント □ 地図を利用して役割分担を考える  地図に支援担当者と避難行動要支援者の住まい、避難所などを記入して話し合うと、お互いの位置関係が判断しやすくなり、役割分担に役立ちます。 □ 役割が重複しないように  災害時、町会・自治会には、救助や消火、避難所運営など様々な役割が求められます。一人に負担が集中しないように、分担に配慮しましょう。 □ 仲間を増やす  仲間が多いほど、一人ひとりの負担が減り、活動も楽しく、やりやすくなります。町会・自治会が中心となって、地域の行事や日常のクチコミで仲間を増やし、支えあいの輪を広げましょう。  民生委員・児童委員との協力・連携も大切です。 □ 安否や避難の情報を集める仕組み  避難行動要支援者の安否や避難の情報は1か所に集める必要があります。災害時の連絡方法や情報を集約する場所と担当者を決めましょう。  ■ポイント □ いろいろな人とまちを見る  支援担当者だけでなく、民生委員・児童委員や介護事業者などと一緒にまちを点検することで、別の視点で気づくことがたくさんあります。 ※地図の保管・更新  地図には個人情報が含まれますので、話合いの場などで使うとき以外は大切に保管し、必要に応じて見直しをしてください。 ■ポイント(カードの作成) □ 少しずつ記入する  初めからすべての項目を埋めなくてもかまいません。避難行動要支援者との交流を重ねて、必要な項目を少しずつ書き込みましょう。 □ 2種類のカードを用意する  カードは「支援担当者用」と「避難行動要支援者用」の2種類を用意できると便利です。区では避難行動要支援者用のカードを保管するための磁石付き専用ホルダーを配付しています。 (各総合支所地域振興課、44頁参照) □ 定期的に更新する  カードは名簿の更新にあわせるなどして、年に一度は内容を更新するようにしましょう。 ■ポイント(「支援担当者用」のカード) □ 支援担当者と町会・自治会で保管する  「支援担当者用」のカードは写しを1部とり、原本は支援担当者が、写しはまとめて町会・自治会(名簿管理責任者など)が保管します。カードには個人情報が記載されていますので、大切に保管してください。 □ 安否確認と避難誘導に活用する  「支援担当者用」のカードは安否確認と避難誘導の際に取り出し、住所や避難経路、避難時の注意点、緊急連絡先の確認ができるようにします。  支援担当者が被災した場合は、町会・自治会が保管しているカード(写)を取り出し、他の支援担当者が活用できるようにします。 ■ポイント(「避難行動要支援者用」のカード) □ 避難(生活)に必要な情報を記入してもらう  「避難行動要支援者用」のカードには避難行動要支援者またはその家族の方に、避難(生活)に必要な情報を記入してもらいます。薬など記入しきれない場合は、お薬手帳や別紙を用意してカードと一緒に保管するようにします。災害時にすぐに避難できるように、非常用持出し品も用意してもらいましょう。 □ 決まった場所に保管する  「避難行動要支援者用」のカードは磁石付き専用ホルダーに入れ、決まった場所※につけて保管するようにします。 ※区では冷蔵庫周りを推奨しています。 ■ポイント □ 自助の始まりは訪問から  災害時への備えは、全ての避難行動要支援者が同じとは限りません。訪問や交流を通してお互いに理解を深める中で、備えについて相談してみましょう。 □ できることから一歩一歩着実に始める  あまり時間や費用をかけずに取り組めるものから始めてみましょう。例えば、避難する時に必要な情報や物をまとめ、避難行動要支援者用個別支援カードをつくってみてはどうでしょうか。 □ わからないことは専門家に相談  薬や専用の装具など専門知識が必要なものについては、かかりつけの医師や介護事業者などの専門家に相談しましょう。  家具の転倒防止や建物の耐震化については、区に相談窓口があります。(防災街づくり担当部防災街づくり課耐震促進担当 電話 6432-7177) ■ポイント(企画) □ できることから企画してみる(安否確認から)  初めて訓練を企画する場合は、少ない人数で安否確認の訓練から始めてみましょう。その後、人数を増やしたり、避難誘導の訓練なども取り入れてみてください。  すでに防災訓練を定期的に行っている場合は、防災訓練に安否確認を取り入れてみてはどうでしょうか。段取りなど関係者との調整も大切な経験となります。 □ 多くの人が参加しやすい日程にする  地域の行事や連休などと重ならないようにします。防災訓練などすでに町会・自治会で行っている行事に取り込んでみるのも一手です。会場が利用できるかの確認も忘れずに。 □ 関係機関に相談してみる ・区役所(各総合支所地域振興課、44頁参照) ・最寄りの消防署(応急救護、搬送等の講習) ・施設管理者(会場として借りる場合) ■ポイント(準備) □ 訓練スケジュールを組み立ててみる  内容が決まったら、内容ごとの時間配分を考え、訓練のスケジュールを組み立ててみましょう。 □ 会場のチェック   会場は、部屋の広さや利用できる設備を確認しましょう。特に避難行動要支援者が参加する場合は、会場内の段差や車いすで利用できるトイレがあるかなどの確認も必要です。 □ 参加者の安全確保と広報  屋外等での活動は安全確保が大切です。万一の事故に備え、イベント保険なども活用しましょう。  訓練への参加を広く呼びかける場合は、あらかじめチラシ※を用意しておくと便利です。  (※開催案内のサンプル、39頁参照) ■ポイント(訓練) □ 安全第一で、無理をしない  訓練は参加者全員の協力が大切です。  訓練内容とスケジュールを参加者全員で確認して、安全を第一に、予定した時間に沿ってやってみましょう。  予定通り進まない場合でも、慌てず、反省材料として次の訓練で活かすようにしましょう。 □ 実施内容を振り返る  訓練は写真などで記録をとり、必ず全員で内容を振り返るようにしましょう。  一人ひとりの反省点や感想、意見に、これからの取組みを進めるヒントがいっぱい詰まっています。 ■ステップアップ □ 関係機関への相談  各総合支所地域振興課や最寄りの消防署に相談し、避難行動要支援者支援に役立つプログラムを取り入れてみてください。 □ 地域の人材活用  地域には、災害時に役立つ知識や技能を持った方や、日常から地域貢献を考えている会社や団体などがあります。そういった地域の人材を見つけて、どんどん活かしていきましょう。 ■ポイント □ 決めた手順で  安否の確認は必ず地域で事前に決めた手順で行ってください。決して無理をせず、必要な場合は周りに支援を求めましょう。 ■ポイント □ 決めた手順で  安否確認と同じように、避難は必ず地域で事前に決めた手順で行ってください。決して無理をせず、必要な場合は周りに支援を求めましょう。 ■ポイント □ 避難行動要支援者や家族の要望を確認する  どこで避難生活を続けるか。どのような支援が必要か。はじめに避難行動要支援者や家族の要望を確認しておきましょう。 □ 専門家に相談する  避難行動要支援者の避難生活の支援の内容や方法については、介護事業者、医師などの専門家に相談しましょう。 □ できることから実行する  町会・自治会の皆さんで分担し、できることから行動に移していきましょう。 資 料 ■訪問時あいさつ文のサンプル 38 ■避難訓練開催案内のサンプル 39 ■個別支援カードのサンプル          (支援担当者用) 40          (避難行動要支援者用) 42 ■問合せ先 44 ■訪問時のあいさつ文のサンプル  拝啓  (季節のあいさつ)、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。  初めてお便りを差し上げます。私、この地域の自治会「○○○会」の会長を仰せつかっております ○○○○ と申します。  当会は世田谷区と「避難行動要支援者の支援に関する協定」を締結しております。  この協定に基づき、世田谷区より「避難行動要支援者名簿」が提供されておりますが、同名簿への登載については、既に皆様よりご同意いただいていると伺っております。  この協定は、災害時に援護を必要とされる方への支援活動を目的としております。しかし、震災等の災害時に、双方で面識も、経験も全く持たない現状では、対応が非常に困難と考えられます。  この度、当会では避難行動要支援者支援に関する取組みとして、避難行動要支援者の避難を想定した訓練を実施することとなりました。これに先立ち、平常時の活動としての「顔合わせ」をはじめとして、いろいろお話をお伺いさせていただければ、今後の訓練や災害時の実際の支援活動に活かせると思っております。  後日、当会の支援担当者が事前にお電話の上訪問いたしますので、その際はよろしくお願い申し上げます。 敬具     年  月  日 ○○○会   会長 ■避難訓練開催案内のサンプル ■個別支援カードのサンプル(支援担当者用) ■個別支援カードのサンプル(避難行動要支援者用) ■問合せ先 ■ 世田谷総合支所地域振興課(防災担当) 所在地:世田谷4-22-33 電 話:5432-2831 FAX:5432-3032 ■ 北沢総合支所地域振興課(防災担当) 所在地:北沢2-8-18 電 話:5478-8028 FAX:5478-8004 ■ 玉川総合支所地域振興課(防災担当) 所在地:等々力3-4-1 電 話:3702-1603 FAX:3702-0942 ■ 砧総合支所地域振興課(防災担当) 所在地:成城6-2-1 電 話:3482-2169 FAX:3482-1655 ■ 烏山総合支所地域振興課(防災担当) 所在地:南烏山6-22-14 電 話:3326-9249 FAX:3326-1050 ■ 危機管理部災害対策課 所在地:世田谷4-21-27 電 話:5432-2262 FAX:5432-3014 ■ 保健福祉政策部保健医療福祉推進課 所在地:世田谷4-21-27 電 話:5432-2428 FAX:5432-3017 メモ欄 この冊子は、モデル地区としてご協力いただいた、大蔵住宅自治会と玉堤町会での検討や避難訓練等の結果をもとに作成しました。使用している写真もその時のものです。 避難行動要支援者支援の進め方 令和6年3月 世田谷区 発  行: 世田谷区保健福祉政策部 保健医療福祉推進課  電話 03-5432-2428 世田谷区危機管理部災害対策課  電話 03-5432-2262 広報印刷物登録番号:1820