世田谷区一般廃棄物処理基本計画 平成27年3月 世田谷区 目次 第1章 計画の概要 1. 計画改定の背景 2. 計画の位置づけ 3. 計画の対象 第2章 清掃事業の現状と課題 1. 清掃事業の役割 2. 区が行う資源回収・ごみ処理 3. 清掃事業の課題 第3章 循環型社会形成のための基本的な考え方 1. 基本理念 2. 基本方針 3. 目標値の設定と管理 4. ごみ量推計 5. 区民・事業者・区の協働 第4章 循環型社会形成のための施策 施策1 不用な「もの」を出さない暮らしや事業活動の促進 施策2 分別の徹底とリサイクルの推進 施策3 安定的な収集・処理の推進 施策4 情報提供と意識啓発の推進 第5章 生活排水処理基本計画 1. 現状 2. 基本方針 3. 施策 第1章 計画の概要 1. 計画改定の背景 世田谷区は、平成17年度から平成26年度を計画期間とした、「世田谷区一般廃棄物処理基本計画−環境に配慮した持続可能な社会を目指して−」(平成17年3月発行、平成22年3月改定)を策定し、持続可能な社会の実現に向けた施策を展開してまいりました。 国においては、平成25年に「第三次循環型社会形成推進基本計画」を策定し、再生利用『リサイクル』より優先順位の高い2R(発生抑制『リデュース』・再使用『リユース』)の推進、使用済製品からの有用金属の回収、水平リサイクル等の高度なリサイクルの推進などを掲げています。国の「中央環境審議会」及び「産業構造審議会」においては、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」の改正に向けた議論がなされており、拡大生産者責任による事業者責任の強化と、消費者・事業者・自治体の役割分担が明確にされることが期待されます。また、東日本大震災において、大量に発生した災害廃棄物の処理が大きな社会問題となったことから、災害時における廃棄物処理体制を準備しておくことの重要性を指摘しています。 区は、平成25年度に、世田谷区の望ましい将来像の実現に向け、区民主体のまちづくりを進め、自治の発展を目指す区政の基本的な指針として、新たな「世田谷区基本構想」と「世田谷区基本計画」を策定しました。また、廃棄物の減量及び適正処理に関して調査・審議する世田谷区清掃・リサイクル審議会より、平成26年8月に「世田谷らしい更なるごみ減量施策について」の提言がなされています。 前回の改定版の策定時から5年を経て、国の計画や区の上位計画並びに審議会提言などを踏まえて、これまでの3Rの推進から発生抑制『リデュース』と再使用『リユース』の2Rに重点を置き『世田谷区一般廃棄物処理基本計画』を全面的に見直しました。 2. 計画の位置づけ 本計画は、中・長期的視点から世田谷区の一般廃棄物(資源・ごみ、生活排水)に関する施策の方向性を明らかにするものです。本計画の位置づけは次の通りです。 * 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)」第6条第1項及び「世田谷区清掃・リサイクル条例」第35条に規定する一般廃棄物処理計画に該当します。 * 「世田谷区基本構想」(平成25年から20年間)、「世田谷区基本計画」(平成26年度から平成35年度)を上位計画とし、「世田谷区環境基本計画」と整合を図るものです。 * 東京都が策定する「東京都廃棄物処理計画」、東京二十三区清掃一部事務組合(以下、「清掃一組」という。)が策定する「東京二十三区清掃一部事務組合一般廃棄物処理基本計画」との整合を図るものです。 3. 計画の対象 (1) 計画期間 計画期間は平成27年度から平成36年度の10年間で、計画の前提条件に大きな変更があった場合など、概ね5年で見直すこととします。 (2) 対象廃棄物 本計画では、「廃棄物」、「資源」、「ごみ」を次のように定義します。 * 廃棄物 家庭や事業所から排出される不用なもので、「資源」、「ごみ」、「生活排水」の総称です。 * 産業廃棄物 事業活動に伴って生じる廃棄物のうち、燃え殻、汚泥など廃棄物処理法に定めるものです。 * 一般廃棄物 産業廃棄物以外の廃棄物です。家庭から排出されるものと、事業活動から排出されるものから成ります。 * 資源 家庭や事業所から排出される不用なもののうち、区が資源回収の対象としている品目、または、有償で買い取ってもらえる品目のことです。 * ごみ 家庭や事業所から排出される不用なもののうち、区が資源回収の対象とせず、かつ、有償で買い取ってもらえない品目のことで、発生源によって、「家庭ごみ」と「事業系ごみ」と定義します。 本計画では、区内で発生するすべての一般廃棄物(資源・ごみ、生活排水)とあわせ産廃を対象とします。 第2章 清掃事業の現状と課題 1. 清掃事業の役割 (1) 区の価値の向上 区は、公衆衛生の向上と生活環境の保全を通じ区の価値を高め、維持することを目的に清掃事業を実施します。資源回収・ごみ処理は、リソースを投入することで区内外での価値を生み出しています。 ごみの収集作業によって区域を清潔で快適なものとすることで、美的価値の向上、環境汚染の防止、公衆衛生の向上などにより地域環境の保全という価値を生み出しています。また、適正な資源回収・ごみ処理をすることで、資源の保全、最終処分場の延命、温室効果ガス等の削減などの地球環境の保全という価値を生み出しています。 (2) ごみ処理の工程 ごみ処理は、発生から最終処分に至るさまざまな工程から構成されます。家庭や事業所で発生したごみは、家庭や事業所などで保管されたのち、集積所に排出され、収集以降の処理工程に送られます。ごみ処理というと、収集から最終処分までの工程と理解されがちですが、ごみが発生した段階からごみ処理の工程は始まっています。 工程ごとの管理目標は次のとおりです。 *発生・保管・排出 区民及び事業者に対して、ごみの発生抑制及び分別保管を要請します。またそのために、必要な指導を行います。 街の美化を維持するために、必要な措置を行います。 *収集・運搬・中継 排出されたごみによって、生活環境に支障が生じないうちに収集します。収集運搬に伴う環境負荷を最小限に抑制するための方策を講じます。 *中間処理・資源回収 可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみについては、清掃一組で処理します。 再資源化については、資源回収事業を実施するとともに、地域における集団回収等を促進します。 処分先に於ける環境負荷を抑制するために、処分区施設に搬入する物量を抑制し、組成を適切なものとします。 *再資源化 回収した資源を円滑に再資源化します。 *最終処分 焼却残さは全量を東京都が運営する海面埋立処分場で最終処分します。その限られた埋立容量を長く活用するために、搬入する量の抑制に努めます。 *コスト管理 公衆衛生・環境保全・区民の利便性と、それに掛かる費用を総合的に評価しながら、最も効率的な清掃事業を目指して改善努力を続けます。 2. 区が行う資源回収・ごみ処理 区は、平成26年度当初時点で、以下のような資源回収・ごみ処理を実施しています。 (1) 資源・ごみの分別区分と収集方法 資源・ごみの分別区分と収集方法は、次のとおりです。 *可燃ごみ 集積所 週2回 *不燃ごみ 集積所 月2回 *粗大ごみ 戸別 申込制 *資源(古紙、びん、缶) 集積所 週1回 *資源(ペットボトル) 集積所 月2回 *資源(紙パック、白色発泡トレイ) 拠点回収 回収ボックス *資源(食品用透明プラスチック、色・柄付発泡トレイ、廃食用油) 拠点回収 回収員手渡し (2) 回収・収集作業 回収・収集作業は、集積所に排出された資源・ごみを清潔かつ安全に収集し、それらを円滑に処理施設やリサイクル施設に搬入することを目標としています。回収・収集作業の従事者は、区民・事業者とコミュニケーションを図りながら、集積所に適正に排出された資源・ごみを確実に収集しています。 資源・ごみを集積所まで自分で出すことができない65歳以上の1人暮らしの高齢者等(要介護2程度、障害者)については、玄関先等から資源回収・ごみ収集を行うとともに、安否確認を行い異常時には必要な措置を講じる「安否確認付き高齢者等訪問収集」を実施しています。なお、粗大ごみを屋外に自分で出すことができない65歳以上の高齢者、障害者世帯については、室内から運び出す「粗大ごみ運び出し収集」を実施しています。また、飲食店などが密集する特定の繁華街については、午前7時台の早朝収集を実施しています。 車両の運行にあたっては、交通法規を遵守するとともに、燃料消費・騒音・排ガス発生の抑制などに努めています。また、車両の整備を適切に行うとともに、積み込み作業時の排気ガスの排出を抑制できる電動架装車両など、環境に配慮した車両も導入しています。 (3) 中間処理・最終処分 清掃一組が運営する清掃工場や不燃ごみ処理センター、粗大ごみ破砕処理施設で中間処理(焼却・破砕)を行った後、東京都が設置・運営している中央防波堤外側埋立処分場及び新海面処分場へ埋立処分しています。新海面処分場は、東京23区最後の処分場と言われており、ごみの発生・排出を抑制することにより、最終処分量を減らし、埋立処分場の延命化に取り組まなければなりません。 @ 可燃ごみ 可燃ごみは、主に世田谷区に在する千歳清掃工場、世田谷清掃工場の2工場に搬入し焼却処理しています。一部は、目黒清掃工場、多摩川清掃工場など世田谷区外の清掃工場に搬入し焼却処理しています。 A 不燃ごみ 不燃ごみは、区内の中継所に搬入し、金属製品(鍋・フライパン等)、小型家電、蛍光管、スプレー缶などを選別した後、不燃ごみ処理センターで処理しています。金属製品や小型家電等はリサイクル業者に売却し、有用金属等をリサイクルしています。蛍光管等は、金属水銀を含むため、民間業者に委託して適正に処理しています。 B 粗大ごみ 粗大ごみは、区内2箇所の中継所に搬入し、金属部分を含む製品を選別した後、粗大ごみ破砕処理施設に搬入し、破砕しています。破砕後の可燃物は焼却処理し、不燃物は埋立処分しています。金属部分を含む製品はリサイクル業者に売却し、有用金属等をリサイクルしています。なお、エコプラザ用賀において、まだ使用できる家具等を修理し、希望の方に抽選で有償にて提供しています。 C 資源 古紙・缶・ペットボトル等の資源は、民間の処理施設で中間処理・再商品化しています。なお、ガラスびんは世田谷区資源循環センター(リセタ)で中間処理を実施し、民間の処理施設で再商品化しています。 (4) 助言・指導 区は清掃事業を適正かつ効率的に遂行するために、資源・ごみの分別や排出に関する助言や指導をしています。 @ 清掃職員による排出指導 清掃職員による専任の「ふれあい指導班」が、集積所等において、区民及び事業者に資源・ごみの適正排出に関する助言と要請(ふれあい指導)をしています。また、ごみ収集の直接の担い手である清掃職員の区民及び事業者とのコミュニケーション等の能力を向上するために、研修を実施しています。 A 不法投棄・不適正排出ごみの取扱い 家電リサイクル法の対象品やパーソナルコンピュータ、排出禁止物(タイヤ・バッテリー・石膏ボードなど)が集積所に排出された場合は、警告などの措置をとっています。頻繁に不法投棄される集積所には、警告看板の設置等による対策を講じています。また、分別区分のルールを守らず資源・ごみを排出する者への指導を強化する等、適正な分別排出を推進しています。 (5) 区民及び事業者の責務 区民及び事業者の責務を示します。 *区民・事業者 資源・ごみは、区が定める区分に従って適正に分別すること。 資源・ごみの減量化及び再利用、リサイクルの推進に努めること。 資源・ごみは、分別区分に応じた収集日の午前8時までに、資源・ごみ集積所等に排出すること。資源・ごみの排出に際しては、集積所の清潔維持に努めること。 集合住宅においいては、分別した資源・ごみを保管するための場所を指定し、専用の集積所を用意すること。 *事業者 店舗と住宅を兼ねている事業者においては、事業系ごみと家庭ごみの分別を徹底すること。 事業系ごみは、家庭ごみの収集に影響がない範囲において区で収集を行うこととなっており、区の収集を利用する事業者は負担の適正化の観点から、必ず所定の処理料金の事業系ごみ処理券を購入し貼付すること。 事業系ごみを一定以上排出する場合には、区が許可する一般廃棄物処理業者に処理を委託すること。 (6) 民間での処理 区の許可を受けた一般廃棄物処理業者や資源回収業者が行う、資源・ごみ処理及びリサイクル活動を区の清掃事業の一環と位置づけ、支援等を行っています。 @ 集団回収・地区回収 集団回収・地区回収とは、町会、集合住宅、PTAなど10世帯以上で構成される地域の住民団体が、各家庭から出る資源を持ち寄り、団体が契約した資源回収業者に引き渡す自主的なリサイクル活動です。区に登録した団体(資源再利用活動団体)には、回収量に応じて区から報奨金が支給されます。区は、効率的で、ごみ減量の意識醸成及び良質な資源の回収が期待できる集団回収・地区回収活動を支援しています。 A 事業系リサイクルシステム 事業系リサイクルシステムとは、事業者が排出する「古紙・ガラスびん・アルミ缶・スチール缶」の資源の有効活用を推進するため、資源回収事業者の組合と区が協定を結び、実施している区内事業者向けのリサイクルシステムです。区内事業者向けの事業系有料ごみ処理券を使用して区の収集を利用するよりも価格が安く、事業所の営業時間内に事業所から直接回収するなど利便性を高めています。 B 事業系ごみの民間処理 事業系ごみは、排出事業者の自己処理を原則とします。一般廃棄物の処理料金の上限は区の条例で規定しているので、排出事業者は合理的な費用で民間業者のサービスを利用することができます。区は、排出事業者に対して民間業者とのごみ処理契約の締結を促しています。 C 一般廃棄物処理業の許可及び指導 一般廃棄物処理業者は、区の一般廃棄物処理業の許可を受けて、廃棄物処理法の定める基準に従って区域内のごみ処理を行います。業の許可は区長が行いますが、許可の申請受付及び内容審査は、東京二十三区清掃協議会が行います。区は、一般廃棄物処理業者のごみ処理の状況を監督し、必要な指導を行っています。 3. 清掃事業の課題 (1) 地域特性からの課題 @ 人口 世田谷区の人口は増加しており、世田谷区の人口推計によると、本計画の計画期間中は人口増加が予想されています。一人あたりのごみ量が減少しても、人口が増加すればごみの総量は増加することから、人口増に対応したごみ処理体制の構築が必要です。 A 高齢者人口 人口が増加する中で、特に高齢者(65歳以上)人口とその割合の増加が顕著になっています。世田谷区の人口推計によると、本計画の計画期間中の高齢者人口は増加が予想されていることから、高齢者に配慮した収集体制の構築が必要です。 B 家族人数別の世帯数 世田谷区の世帯数は増加していますが、世帯あたりの平均人数は2人を下回っています。特に、単身者の増加が著しいことから、単身者を中心とした普及啓発施策を検討する必要があります。 C 住居形態別の世帯数 住居形態別では、マンションやアパートなどの集合住宅が増加しています。住居形態に対応した適正な収集体制の整備が必要です。 D 外国人人口 様々な言語を使用する外国人が居住していることから、適正な分別や集積所の利用を促進するための普及啓発施策が重要です。 E 転入者数 世田谷区の転入者数は近年6万人前後(人口の約7〜8%)で推移しています。転入者に資源・ごみの排出ルールを正確に周知する必要があります。 F 事業所の状況 世田谷区の事業所の56.7%は従業者数が5人未満の事業所です。事業系ごみについては自己処理が原則ですが、小規模な事業所の多くは区収集を利用していると考えられます。許可業者の収集が促進されるとともに、一方で区収集を利用する場合は事業系有料ごみ処理券の貼付が徹底されるような施策を検討する必要があります。 (2) 清掃事業の課題 @ 前計画の達成状況 前計画(平成22年度から平成26年度)では数値目標として、平成26年度の区民1人1日あたりのごみ排出量とリサイクル率を設定しました。平成25年度の実績値を比較すると、区民1人1日あたりの排出量は目標値540gに対して実績値は579g(達成率93%)、リサイクル率は目標値の24.0%に対して実績値は21.4%(達成率89%)です。 A 資源・ごみ量の推移と家庭ごみ組成分析調査について 平成16年度から平成25年度にかけて、ごみ収集量は減少傾向にありますが、減少割合は鈍化しています。資源回収量は、平成19年度までは5万t台でしたが平成20年度からは4万t台で推移しており、その結果、リサイクル率は20%前後で推移しています。なお、平成20年10月に、区内全域で分別区分の変更(廃プラスチック等を不燃ごみから可燃ごみに変更)を実施しているため、平成21年度以降は可燃ごみが増加し、不燃ごみが減少しています。 平成26年度に実施した家庭ごみ組成分析調査によると、可燃ごみには23.1%の資源化可能物が含まれており、内訳は紙類が14.7%、布類が5.7%、プラスチック類が2.5%、不燃系資源化可能物が0.2%となっています。また、不燃ごみには12.0%の資源化可能物が含まれており、内訳はびん類が9.3%、缶類が2.4%、紙類などの可燃系資源化可能物が0.3%となっています。そのため、ごみに含まれる未使用食品や資源化可能物を減らすなど、更なるごみ減量をはかる必要があります。 普及啓発による2Rの促進、古紙類をはじめとする既存リサイクル品目の回収率の向上、リサイクルの推進などにより、ごみ収集量を削減することが求められています。 B 清掃費の推移 年度ごとの清掃費は約80〜90億円で推移しています。今後も効率的な取組みを行い、コストを減らすことが必要です。 第3章 循環型社会形成のための基本的な考え方 1. 基本理念 環境に配慮した持続可能な社会の実現 区民・事業者が主体となって、「もの」との付き合い方を見直し、環境に配慮した暮らしや事業活動へと転換し、不用となった「もの」は循環させ、それでもなお排出されるごみは適正に取り扱う、このような社会を目指します。 平成12年に策定した「ごみゼロプラン2000」では、「もののライフサイクル全体を見据え川上に重心をシフト」し、「環境負荷を最小限にとどめる」ことにより、「循環型社会」を目指すことを基本理念としました。前計画では、そのための取組みを一層推進するため、「環境に配慮した持続可能な社会」を基本理念としました。本計画においても、この考え方に変化はありませんので、前計画の基本理念を継続します。 2. 基本方針 基本理念「環境に配慮した持続可能な社会」を実現するための基本方針は次の3つです。基本方針は、本計画に基づく施策や事業を展開するうえでの行動基準になります。 基本方針1 区民・事業者主体による取組みを推進する 区民・事業者が主体となった環境に配慮した意識の形成、暮らしや事業活動のあり方の転換を図るとともに、区民と事業者の協働による取組みを進めます。区は、区民・事業者が主体となって行動を起こすための調整・支援役を担います。 基本方針2 拡大生産者責任の考え方に基づく発生・排出抑制を推進する 拡大生産者責任の考え方に基づき、「もの」の流れの川上に位置する製造・流通を視野に入れた取組みを重視し、生産、消費の両面からごみを出さないための取組みを進めます。 基本方針3 環境への負荷低減などの効果と費用を勘案した効率的な事業を展開する 環境への負荷の低減を念頭に置き、ごみの減量や処理経費とのバランスをとりながら、効果的な事業推進を図るとともに、区民の満足度を高める取組みを進めます。 3. 目標値の設定と管理 本計画では、計画の達成状況を「区民1人1日あたりのごみ排出量」で評価します。計画の中間年度の平成31年度には532gに減量し、その後、普及啓発活動による分別協力率の向上等により、最終年度の平成36年度には492gを目指します。 この減量目標を達成するためには、平成25年度の579gから87gの減量が必要です。87gの減量数値を身近なものにたとえると、Sサイズのみかん1個分に相当します。 区は目標値を達成するため、次のようなごみ減量に取組みます。 * 2Rによる発生抑制を促進するための情報提供と意識啓発 * 古紙類、びん・缶・ペットボトル等のリサイクルの拡充 本計画の数値目標の達成状況を管理し、以後の事業実施に反映するため、事業の点検・見直し・評価を行う仕組み(PDCAサイクル)を実施し、結果をホームページ等で公表します。 4. ごみ量推計 平成21年度から25年度までの区民1人1日あたりのごみ排出量から、「現状施策で推移したごみ量」を推計し、ごみ減量目標を考慮して「計画ごみ量」を設定しました。 5. 区民・事業者・区の協働 基本理念である「環境に配慮した持続可能な社会」を実現するためには、区民・事業者・区のそれぞれが役割を分担し、協働していくことが必要です。 第4章 循環型社会形成のための施策 循環型社会形成のため、次に示す4つの柱(施策の方向性)のもとに施策展開を図ります。 施策1 不用な「もの」を出さない暮らしや事業活動の促進 「環境に配慮した持続可能な社会」を実現するためには、3Rのうち優先順位の高い、発生抑制と再使用の2Rの取組みが必要です。区は、「もの」の生産・流通・消費に関わる区民・事業者全てが「もの」との付き合い方を見直し、不用な「もの」を出さない暮らしや事業活動への転換を促します。 また、区民・事業者が主体的に2Rに取り組むためには、それに取り組むことができる環境が整備されていることが必要です。区は、環境整備に向けて、国等の関係機関に対して、基盤となる法制度等の整備、拡大生産者責任の徹底に向けた働きかけを行っていきます。 【具体施策】 1-(1) 2R行動の促進 「ものを大切にする」意識を醸成するため、普及啓発施設(エコプラザ用賀・リサイクル千歳台)を拠点とする、粗大リユース品の展示・提供や各種修理講座など、既存の取組みについて更なる充実を図ります。また、区民、事業者の主体的行動のきっかけとなる情報を提供するとともに、知識や技術を学べる場の確保、充実を図ります。特に、可燃ごみに占める割合の高い生ごみは、工夫次第で減量できる余地が大きいことから、発生・排出抑制の取組みを最優先に促進します。 【主な取組み】 ○生ごみの発生・排出抑制の促進 ・食品ロス削減に向けた取組み ・生ごみの水切り行動の促進 ・家庭で取り組める堆肥化の促進 ○リユースショップやNPO団体等が主催するフリーマーケットなど、民間等の取組みに関する情報提供の充実 1-(2)2R活動の支援 普及啓発施設を拠点とした区民相互の不用品情報交換(「不用品情報ボード」)や学習会、催しものの開催など、既に区民・区民団体が取り組んでいる主体的な行動を促進します。 また、区民・区民団体は、地域における活動主体であると同時に、活動を通して普及啓発の担い手となることから、円滑な活動の継続ができるよう、必要な支援を行い、地域で自立した活動ができる区民・区民団体を育成していきます。 【主な取組み】 ○子育て世代のリユース活動の支援、主体的2R行動の促進 ・子ども用品等の交換機会の確保・充実 ○団体の育成や活動しやすい環境の整備 1-(3) ごみの発生抑制のための主体間連携の強化 ごみそのものを減らすためには、経済活動や消費行動に関わる事業者や消費者との連携・協力が欠かせません。区は、区民、事業者をはじめ、NPO団体や区内大学等、様々な主体との連携の強化を進め、各主体が自立した取組みを展開するとともに、複数の主体が共同で取組みを発展させることによって実践できる効果的な関係・環境の整備と取組みを検討・実施していきます。 1-(4) ごみの発生抑制手法の検討 レジ袋の削減・有料化やデポジット制度など、拡大生産者責任の拡充やごみ減量について調査研究を行います。特に、ごみ減量に効果があるといわれている家庭ごみの有料化について、効果や問題点、手数料の活用方法などについて調査研究を行います。 施策2 分別の徹底とリサイクルの推進 区は、2R(発生抑制・再使用)の取組みを行ってもなお排出される不用な「もの」については、限りある天然資源を循環させるために、可能な限り資源としてリサイクルを推進します。 そのため区は、第2章の2に示す資源回収を実施し、自ら3Rやごみの適正処理に取り組むとともに、区民・事業者には、ごみと資源の分別徹底を協力してもらうことにより、適正な収集やリサイクルも含めた円滑な処理体制の効率的な構築を継続して図っていきます。 【具体施策】 2-(1) 区民・事業者主体の資源回収活動の促進・支援 区民・事業者主体の資源回収活動が円滑に継続できるよう、引き続き必要な支援を行います。また、無理なく活動を始められ、自主的な活動を継続できるよう、制度を工夫していきます。 【主な取組み】 ○資源再利用活動団体への活動支援 ○区内の事業者(スーパーなどの店舗)が自ら資源を回収する取組みの促進 2-(2) 家庭からの資源回収の推進 更なるごみ減量化とリサイクルの推進に向け、区民・事業者主体による取組みの推進、拡大生産者責任の考え方に基づく事業者の独自の回収に向けた取組みの促進を基本にしつつ、引き続き、安定的かつ効率的に行政による資源回収を行うとともに、区民が環境負荷を意識しながらリサイクルに取り組む場を、公共施設等を活用して提供していきます。国の動向やリサイクルに関する技術向上に注視しながら、環境への負荷低減などの効果と費用を勘案し、更なる資源化の推進に向けた取組みを検討していきます。 また、ごみ減量の基盤となる区民のリサイクル意識の低下につながる資源の持ち去り行為については、条例に基づく厳しい対応を図るとともに、持ち去りにくい環境づくりを更に進めていきます。 【主な取組み】 ○拡大生産者責任に基づく事業者の取組みの促進(事業者自らの回収促進) ○区施設での拠点回収の拡充 ○資源化対象品目の調査研究 ○2Rの取組みを促進し、より効率的な資源回収方法の検討 2-(3) 事業系リサイクルの拡充 事業所のリサイクルを促進するため、取組みに関する情報提供を行うとともに、中小企業の自主回収を支援する事業系リサイクルシステムの活用を促進し、事業者の自主回収の徹底を促していきます。 【主な取組み】 ○事業者が活用しやすい事業系リサイクルシステムへの拡充に向けた助言・指導 ○区施設から排出されるごみの資源化 ○緑化廃棄物(剪定枝等)の再生利用の促進 施策3 安定的な収集・処理の推進 区は、3Rの取組みを行ってもなお、ごみとして処理しなければならないものについては、排出指導を徹底するとともに、効率的かつ安定的なごみ収集を実施し、環境負荷を最小限にしながら適正処理を行います。 区としての主体的な取組みを積極的に進める一方、現在23区のごみ処理は広域的に行われている現状を踏まえて、清掃一組、他区、東京都との連携を強化するとともに、区としても主体的な取組みを積極的に進めます。 また、大規模災害が発生した際には、区民生活への影響を最小限に抑えるべく清掃一組や他区、東京都などと連携し、態勢整備を進めていきます。 【具体施策】 3-(1) 家庭ごみの適正排出を促す環境整備 安定的・効率的なごみの収集・処理を継続するためには、区民がごみの適正な排出を自ら(自然に)できるよう、環境の整備を図っていきます。また、区民が排出の際に戸惑う在宅医療廃棄物や、排出禁止物(区がごみとして収集できないもの)などについては、関係機関等と連携し、取り扱いについての情報提供などを行い、家庭ごみに関する適正排出を促す環境づくりを進めます。 【主な取組み】 ○適正な排出を促す環境づくり ・集積所における不法投棄防止等のための看板の設置 ・単身者用集合住宅に対する分別徹底の指導 ・貯留機やコンテナを常設している大規模集合住宅に対する分別徹底の指導 ○清掃職員による排出指導(「ふれあい指導班」)の充実 ○排出禁止物の適正処理 ・排出禁止物を適正処理している専門処理業者の情報提供 ・在宅医療廃棄物の適正処理の推進 3-(2) 事業系ごみの適正処理の促進 事業系ごみの処理は、排出者の自己処理責任が原則であることから、排出事業者による自己処理を促進することが必要です。効率的で、かつ円滑な自己処理を促進するためには、ごみの排出実態を踏まえたうえで、事業所の規模や業種に応じた事業所指導を実施するなど、事業者が適正な排出を行える環境を整備します。また、小規模事業者や商店街の共同処理についても、関係機関等との連携や調査研究を進め、活動を支援します。 【主な取組み】 ○排出実態の把握 ・事業用大規模建築物の対象範囲拡大 ・商店街調査の実施 ○適正排出の促進 ・事業系ごみの自己処理原則の周知徹底 ・区が収集する事業系ごみの重量の見直し ・事業系ごみ処理券の未貼付事業所への行政指導の徹底 ・事業者勉強会への講師(職員)の派遣 ○許可業者による適正処理の確保 ・区内許可業者との適正処理に向けた情報共有の機会の充実 ・許可業者を利用する事業者への情報提供の充実 ・許可業者への指導・処分基準の明確化 施策4 情報提供と意識啓発の推進 3R行動によるごみの減量化及び適正処理の推進には、区民・事業者による取組みが不可欠です。特に、発生抑制と再使用の2Rについては、区民・事業者の主体的な行動が大事であり、また、リサイクルの推進と適正処理を円滑に進めるためには、分別・排出ルールに沿った行動が求められています。 区民・事業者の主体的な3R行動を促すためには、区は、区民・事業者に必要な情報提供を図り、知識と行動に乖離が生じることなく、ストレスのない行動ができるよう意識啓発を更に推進していきます。 【具体施策】 4-(1) 区の特性を踏まえた効果的な情報提供の推進 転入者や単身世帯、小規模事業者が多い地域特性があり、若年世代に代表される無関心層のほかに、様々な生活様式を持った区民が生活していることから、従来取り組んできた区民・事業者全般を対象とした情報提供に加え、情報を受け取る側の特性を踏まえた情報提供の充実を図ります。また、情報提供のあり方については、わかりやすく、興味関心を引く効果的な情報提供や手法の改善に努めます。 【主な取組み】 ○対象に応じた情報提供の充実 ・不動産管理会社、集合住宅等管理組合と連携した(分別・排出ルール等の)情報提供 ・外国人等への情報提供(分別・排出ルール等) ・事業者向けガイドブックの作成・配布 ○多様な広報媒体の活用 ・紙媒体、電子情報媒体による情報提供 ○地域のごみ減量・リサイクル推進委員会と連携した普及啓発活動 4-(2) 環境教育・環境学習の推進 区民・事業者・学生等を対象として、対象者のライフステージや立場にきめ細かく応じた環境教育・環境学習を実施します。特に、子どもたちへの環境教育は、次世代の循環型社会を担う人材育成につながるだけではなく、学習の成果が子どもたちから家庭、地域へと還元されることも期待できることから、引き続き充実を図っていきます。また、地域主体の環境学習活動の促進、支援を継続していきます。 【主な取組み】 ○児童(保育園・小学校)・生徒(中学校)向け「ごみ・リサイクルに関する環境学習プログラム」の実施 ○体験学習用ごみ収集車「カティ」を活用した環境学習 ○児童向けの啓発リーフレットの作成・配布 ○町会、自治会など、各種団体が開催する学習会等への講師(職員)派遣 ○事業者、大学等との連携による主体的3R行動の促進(「自ら学び、行動する機会」の創出) 第5章 生活排水処理基本計画 1. 現状 (1) 排出状況 本区の下水道普及率はほぼ100%となっており、生活排水はほとんどが下水道によって処理されており、くみ取り戸数は年々減少する傾向にあります。一方、集合住宅の増加に伴い、ディスポーザ排水処理システムの設置が進んでいます。ディスポーザ排水処理システムから発生する汚泥の処理を適切に行う必要があります。 (2) 収集・運搬状況 家庭から排出されるくみ取りし尿については、原則として2週間に1回収集しています。しかし、くみ取り世帯は年々減少しており、区内に点在しているので、収集が非効率となっています。 浄化槽汚泥、ディスポーザ汚泥、事業系し尿及びし尿混じりのビルピット汚泥は、一般廃棄物収集運搬業の許可業者が収集・運搬しています。 (3) 輸送及び処分 収集されたし尿及び浄化槽汚泥、事業系し尿及びし尿混じりのビルピット汚泥は、清掃一組の品川清掃作業所において、固液分離、脱水等の処理を加え、水分は下水排水基準内に希釈したうえで、下水道に放流します。固形分は、焼却して埋め立てます。 2. 基本方針 * 下水道供用地域では、し尿を含む生活排水は遅滞なく公共下水道によって処理しなければならないとされており、都と連携して排水施設の設置を誘導していきます。 * くみ取り戸のより効率的な収集・運搬体制について検討を進めます。 * 浄化槽汚泥、ディスポーザ汚泥、事業活動に伴って排出されるし尿混じりのビルピット汚泥及び事業系し尿は、事業者による処理(一般廃棄物収集運搬業の許可業者への委託)とします。 3. 施策 * くみ取り便所のし尿 残存するくみ取り便所のし尿については、効率的な収集を進め、処分については、清掃一組の下水道放流施設で共同処理します。 * 浄化槽汚泥 浄化槽管理者の委託を受けて一般廃棄物収集運搬業の許可業者(浄化槽清掃業許可を併せ持つ)が収集・運搬し、清掃一組で共同処理します。 * ディスポーザ汚泥 東京都下水道局が認めたディスポーザ排水処理システムから発生する汚泥については、浄化槽汚泥の処理に準じて処理します。 * 事業系し尿及びし尿混じりのビルピット汚泥 事業者の委託を受けて一般廃棄物収集運搬業の許可業者が収集・運搬し、一般廃棄物処分業の許可業者が自己施設で処理します。なお、集合住宅のし尿混じりのビルピット汚泥は、浄化槽汚泥の処理に準じて処理します。 * 浄化槽の適正な維持管理 浄化槽の機能を維持するため、浄化槽管理者に対しては、環境保全の意識の向上を図るとともに、定期的な清掃・保守点検及び定期検査を行うよう周知します。浄化槽清掃業者についても立入指導等を実施します。 * 災害時の対応 災害時のし尿の収集については、区内の浄化槽清掃業者と締結した「災害時におけるし尿収集車両等の供給に関する協力協定」を有効に活用し、東京都、清掃一組、近隣自治体等と協議し、遅滞無く行える態勢を引き続き確保していきます。