資料5 第2回子ども・子育て会議資料 子ども・若者施策推進特別委員会資料 令和5年7月7日子ども・若者部児童相談支援課 児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討結果について 1 主旨 令和4年6月に成立した児童福祉法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)を踏まえた児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討について、世田谷区児童福祉審議会臨時部会での検討結果がとりまとめられたので報告する。 2 児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討について (1)検討の経緯 ・ 児童相談所が関わる子どもの権利擁護については、児童相談所等が行政処分(一時保護、施設の入所措置等)を行う場合において子どもの意見・意向を把握してそれを勘案して対応するなど、権利擁護が図られる環境が整備され、子どもにとって最善の利益となる対応が成されるよう、令和4年6月に改正法が成立したところである。(令和6年4月より施行) ・ 区では、今回の法改正への対応について、令和4年8月に児童福祉審議会の下に臨時部会(児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討部会)(以下「臨時部会」という。)を設置し検討を行ってきた。令和5年1月には中間報告として、令和4年中の臨時部会で検討した内容と主な意見を取りまとめ、中間報告時点での目指すべき 方向性が示されたところである。(令和5年2月10日福祉保健常任委員会報告済) ・ 中間報告以降、さらに臨時部会を開催し検討結果をとりまとめ、令和5年6月28日開催の児童福祉審議会本委員会において、「世田谷区児童福祉審議会臨時部会(児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討部会)最終報告書」(以下「最終報告書」という。)がとりまとめられたところである。 (2) 改正児童福祉法の概要(臨時部会での主な検討事項) @ 子どもの権利擁護に係る環境整備(第11条第1項第2号リ) 都道府県知事又は児童相談所長が行う意見聴取等や入所措置等の措置、児童福祉施設等における処遇について、都道府県の児童福祉審議会等による調査審議・意見具申その他の方法により、子どもの権利擁護に係る環境を整備することを、都道府県等の業務とする。 A 児童相談所や児童福祉施設における意見聴取等(第33条の3の3) 都道府県知事又は児童相談所長が行う在宅指導、里親委託、施設入所等の措置、指定発達支援医療機関への委託、一時保護の決定時等に意見聴取等を実施することとする。 B 意見表明等支援事業の体制整備(第6条の3第17項、第33条の6の2) 子どもの意見表明等を支援するための事業(意見表明等支援事業)を新たに法に定める事業として位置づけ、都道府県はその体制整備に努めることとする。 意見表明等支援事業 児童相談所長等の意見聴取等の義務の対象となっている子ども等を対象とし、子 どもの福祉に関し知識又は経験を有する者(意見表明等支援員)が、意見聴取等に より意見又は意向を把握するとともに、それを勘案して児童相談所、都道府県その 他関係機関との連絡調整等を行う。 ※ 児童相談所設置市である世田谷区の場合、上記いずれも「都道府県知事」は「世田谷区長」、「都道府県」は「世田谷区」と読み替える。 (参考)臨時部会所掌事項イメージ (3) 臨時部会における検討体制及び経過 @ 検討体制(臨時部会委員) (五十音順、敬称略) 所属・役職 氏名 1 弁護士 池田 清貴 2 東洋英和女学院大学 名誉教授 石渡 和実 3 日本女子大学 名誉教授 鵜養 美昭 4 NPO法人東京養育家庭の会 理事長 能登 和子 5 児童養護施設東京家庭学校 校長 松田 雄年 6 NPO法人子どもアドボカシーをすすめる会TOKYO 代表 森 時尾 7 NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク 理事長 吉田 恒雄 A 検討経過(中間報告以降) 部会 時期 議事内容 第6回 2月24日(金) ・意見表明等支援事業について 第7回 4月19日(水) ・意見表明等支援事業の大枠について ・児童相談所職員、里親、児童養護施設職員等の意見表明支援に関する理解の促進について 第8回 5月23日(火) ・意見表明等支援事業の実施を踏まえた一時保護所第三者委員のあり方について・最終報告書(案)について 第9回 6月13日(火) ・最終報告書(案)について 本委員会 6月28日(木) ・最終報告(児童福祉審議会本委員会) 3 最終報告書で示された主な今後の方向性 (1) 子どもの権利擁護の環境整備に関すること @ 児童福祉審議会措置部会を活用した子どもの権利擁護に関する仕組みの構築 ・ 児童相談所が関わる子ども、主に一時保護や施設入所措置などの児童相談所の措置等に対する不満や不服に係る対応については、原則、児童福祉審議会措置部会(以下「措置部会」という。)を活用して権利擁護を図ること。 ・ そのため、一時保護の決定時・解除時や措置等の決定後の経過の中で子どもの意向が児童相談所の援助方針と一致しない場合にも、児童相談所は措置部会から意見を聴くこと。また、子ども本人が措置部会へ申し立て、意見を表明できる仕組みを構築すること。 ・ そのほか、区には子どもの権利擁護機関であるせたホッとがある。措置部会とせたホッとの存在や役割等を説明するなど、子どもの権利擁護機関の普及啓発に取り組むこと。 A 児童相談所職員等の意見表明等支援に関する理解促進に係る取組みの実施 ・ 児童相談所が関わる子どもの権利擁護システム全体が十分に機能していくためには、児童相談所職員、里親、児童養護施設職員等が制度的アドボカシーとしての役割や、子どもの意見表明等支援の重要性を十分に理解し、子どもの意見を踏まえた対応を行うことが重要である。 ・ そのため、子どもの意見表明に特化した研修や説明会を実施するなど、子どもの意見表明等支援に関する理解の促進に向けた取組みを進めること。 (2) 児童相談所による意見聴取等措置に関すること ・ 改正法に規定されている意見聴取等措置の実施については、具体的な聴取の方法や意見の取扱い等、国の指針等で示される内容に基づき適切に対応すること。 ・ また、意見表明等支援員の活動は、児童相談所による意見聴取等措置が前提にあるものである。児童相談所が意見聴取等措置を行う際は、意見表明等支援事業について丁寧に説明し、意見表明の機会を実質的に確保できるよう取り組むこと。 (3) 意見表明等支援事業に関すること ・ 意見表明等支援事業は令和6年度から実施するものとして、区は本報告内容を踏まえ、さらなる検討及び必要な準備を進めること。 ・ また、意見表明等支援事業は「意見表明等支援事業の大枠」に記載された内容を十分に考慮して組み立てること。 ・ ただし、事業を展開していくにあたっては、区内施設や区内里親等関係機関の理解と協力が必要であることや、他自治体との調整、意見表明等支援員の担い手の育成といった課題もある。 ・ そのため、事業を段階的に実施することや、実際に意見表明等支援員が活動を開始するまでに必要な準備期間を設定しながら詳細な実施内容を調整することなども含めて検討し、事業展開に係る課題一つひとつに丁寧に対応しながら取り組むこと。 4 意見表明等支援事業の大枠(要約) (1) 対象者 施設入所、里親養育委託、児童福祉司指導を行っている子どもなど、児童相談所の意見聴取等の義務の対象となっている子どもを対象とする。 (2) 実施方法 外部委託により実施し、委託事業者が意見表明等支援員の確保・養成を行う。 (3) 意見表明等支援員の担い手   @ 担い手 意見表明等支援員の担い手に基礎資格(弁護士、社会福祉士、児童福祉司任用資格など)は不要とする。ただし、委託事業者は意見表明等支援員が必要な専門性を確保できるよう人材育成を行うこととする。   A 専門性を確保するための方法 ア 区が定める到達目標を踏まえた研修カリキュラムを設定し、研修を実施する。 イ スーパーバイズ機能を整備し、意見表明等支援員の指導、教育やケース検討等を行う。 (参考)意見表明等支援員に求められる専門性の例(アドボカシーに関するガイドライン案抜粋) 1 アドボカシーに関する基本的な専門性(知識・態度・スキル) 権利の主体としての子ども、子どものアドボカシー、意見表明支援員に求められる態度・スキル 2 社会的養護に関する基本的な専門性 児童福祉制度の概要、児童相談所の業務と役割、社会的養護制度と権利擁護システム、児童福祉審議会の概要、在宅支援におけるアドボカシー、一時保護所におけるアドボカシー、代替養育におけるアドボカシー (4) 意見表明等支援員の役割  意見表明等支援員は、子どもとの信頼関係の構築、子どもへの権利の啓発、子どもの意見の傾聴、子どもの意見形成支援、子どもの意見表明支援、子どもの意見を代弁する役割を担う。 (5) 意見表明等支援員の活動内容 ・ 児童相談所の措置等の決定の場面、自立支援計画策定の場面において、子どもの意見・意向を確認し、必要に応じて児童相談所と内容を共有する。 ・ 一時保護所中の子ども、施設・里親家庭で生活している子ども及び在宅指導中の子どもに対して、定期的に施設への訪問、あるいは子どもや関係者からの要請に基づき活動する。活動の中で、子どもとコミュニケーションを図りながら、日常生活における子どもの悩みや不満、児童相談所の援助内容、今後の見通しなどについて、子ども自らの意見または意向を表明できるように支援を行う。 ・ 児童相談所の援助方針に不服がある場合の措置部会への申立てや、せたホッとへの相談について、子ども自身が行うことを支援するほか、子どもからの希望があれば、子どもに代わって行うものとする。 (6) 事業の評価検証 意見表明等支援事業の実施主体である区は、定期的に事業の評価検証を行い、事業の質の確保及び向上に向けて取り組むものとする。 5 今後のスケジュール(予定) 〜令和5年10月 報告内容を踏まえた取組みの実施に向けた検討 11月 子ども・若者施策推進特別委員会           (意見表明等支援事業実施体制の報告) 令和6年 4月 改正法施行 参考改正児童福祉法抜粋(臨時部会所掌事項に係る主な部分)(令和6年4月1日施行) 〔事業〕 第六条の三 P この法律で、意見表明等支援事業とは、第三十三条の三の三に規定する意見聴取等措置の対象となる児童の同条各号に規定する措置を行うことに係る意見又は意向及び第二十七条第一項第三号の措置その他の措置が採られている児童その他の者の当該措置における処遇に係る意見又は意向について、児童の福祉に関し知識又は経験を有する者が、意見聴取その他これらの者の状況に応じた適切な方法により把握するとともに、これらの意見又は意向を勘案して児童相談所、都道府県その他の関係機関との連絡調整その他の必要な支援を行う事業をいう。 〔都道府県が行う業務〕 第十一条 都道府県は、この法律の施行に関し、次に掲げる業務を行わなければならない。 (略) 二 児童及び妊産婦の福祉に関し、主として次に掲げる業務を行うこと。 (略) リ 児童養護施設その他の施設への入所の措置、一時保護の措置その他の措置の実施及びこれらの措置の実施中における処遇に対する児童の意見又は意向に関し、都道府県児童福祉審議会その他の機関の調査審議及び意見の具申が行われるようにすることその他の児童の権利の擁護に係る環境の整備を行うこと。 〔意見聴取等措置〕 第三十三条の三の三 都道府県知事又は児童相談所長は、次に掲げる場合においては、児童の最善の利益を考慮するとともに、児童の意見又は意向を勘案して措置を行うために、あらかじめ、年齢、発達の状況その他の当該児童の事情に応じ意見聴取その他の措置(以下この条において「意見聴取等措置」という。)をとらなければならない。ただし、児童の生命又は心身の安全を確保するため緊急を要する場合で、あらかじめ意見聴取等措置をとるいとまがないときは、次に規定する措置を行つた後速やかに意見聴取等措置をとらなければならない。 一 第二十六条第一項第二号の措置を採る場合又は当該措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合 二 第二十七条第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を採る場合又はこれらの措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合 三 第二十八条第二項ただし書の規定に基づき第二十七条第一項第三号の措置の期間を更新する場合 四 第三十三条第一項又は第二項の規定による一時保護を行う場合又はこれを解除する場合 〔児童の健全な育成及び措置解除者等の自立に資するための事業実施の措置〕 第三十三条の六の二 都道府県は、児童の健全な育成及び措置解除者等の自立に資するため、その区域内において、親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業及び意見表明等支援事業が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。