資料7(別紙2) 令和3年度 世田谷区児童相談所運営状況 (事業概要)等報告 令和4年8月 世田谷区 第1 児童相談所の概況 1 世田谷区の基本情報(令和4年4月1日現在) 面積58.05平方キロメートル 地域別世帯数・人口数の表 ※児童数とは、0歳から18歳未満の人口のことを指す。 2 児童相談所の所在地等 所在地 世田谷区松原6丁目41番7号 開設年度 令和2年度(令和2年4月1日) 電話 03-6379-0697 交通 小田急線梅ヶ丘駅、豪徳寺駅下車5分、東急世田谷線山下駅下車5分 3 設置の目的・理念 平成28年の児童福祉法の改正では、昭和22年の制定時以来の理念規定が見直され、児童は、適切な養育を受け、健やかな成長・発達や自立が図られ、それらを保障される権利を有することなどが明確にされた。 区は、改正児童福祉法の理念に則り、区民生活に密着した基礎自治体として、児童相談のあらゆる場面において子どもの権利が保障され、その最善の利益が優先された「みんなで子どもを守るまち・せたがや」の実現を目指す。 この目標の達成に向けて、児童が独立した権利の主体であることを尊重し、その最善の利益が優先して考慮されることを保障する見地から、同法第12条第1項及び第59条の4第1項の規定に基づき、児童相談所を設置するものである。 区の児童相談所の設置は、法の新たな理念の実現に向けた、戦後から続く児童福祉のあり方を大きく前進させる大きな挑戦である。 この認識のもと、あらゆる子どもには家庭を与えられるべきという視点に立ち、子どもが家庭で健やかに養育されるよう保護者支援を重点的に行うとともに、子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的な運用を大きな柱として、地域の支援を最大限に活用した予防型の児童相談行政の展開を図る。 4 児童相談所等の沿革 平成20年6月 平成18年(2006年)の都区合意事項からはじまった「都区のあり方検討委員会」において、児童相談所は、区に移管する方向で検討する事務として整理 平成21年4月1日 【改正児童福祉法施行】 ・被措置児童等の虐待相談窓口を設置 ・小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)の創設 ・里親制度の見直し ・要保護児童対策地域協議会の機能強化 平成24年4月1日 【民法等の一部を改正する法律施行】 ・親権停止制度の創設 ・児童相談所長・施設長による監護措置と親権代行について ・未成年後見制度の見直し ・一時保護の見直し 平成25年11月 特別区児童相談所移管モデルの作成 平成27年3月 「世田谷区子ども計画(第2期)」策定 平成28年4月25日 児童相談所強化プラン(厚生労働省児童虐待防止対策推進本部) 平成28年6月3日 【改正児童福祉法施行】 ・児童福祉の原理の明確化 ・家庭養育の推進 ・国や地方公共団体の責任の明確化 等 【改正児童虐待防止法施行】 ・しつけを目的とした児童虐待の防止 【改正母子保健法施行】 ・母子保健施策を通じた虐待予防 等 平成28年10月1日 【改正児童福祉法施行】 ・弁護士の配置 ・児童心理司等、主任児童福祉司の配置 ・施設長等による親子再統合のための支援 【改正児童虐待防止法施行】 ・臨検・捜索手続きの簡素化 ・児童虐待にかかる資料等の提供主体の拡大 ・施設入所等措置解除時の助言実施・安全確認 等 平成29年3月 「世田谷区児童相談所設置計画」の策定 平成29年4月1日 【改正児童福祉法施行】 (※は改正児童虐待防止法にも規定あり) ・市町村における支援拠点整備 ・児童福祉司等の研修義務化 ・児童相談所設置自治体の拡大(特別区も政令の指定を受けて児童相談所を設置できることについて明記) ・児童相談所における里親支援の追加等里親委託の推進 ・18歳以上の者に対する支援継続(※) ・児童相談所から市町村への事案送致(※) 等 【改正母子保健法施行】 ・子育て世代包括支援センターの法定化 平成30年4月1日 【改正児童福祉法施行】 ・親権者等の意に反する一時保護が2か月超えるごとの家庭裁判所承認 ・28条審判確定前の保護者指導勧告 【改正児童虐待防止法施行】 ・接近禁止命令の対象拡大 【民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律施行】 平成30年5月 「世田谷区児童相談所設置・運営計画(第一次更新計画)」策定 平成30年7月 「世田谷区児童相談所設置・運営計画(第二次更新計画)」策定 平成30年7月20日 児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策(児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議) ・転居した場合の児童相談所間の情報共有の 徹底 ・児童相談所と警察の情報共有の強化 等 平成30年12月18日 児童虐待防止対策体制総合強化プラン(児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議) ・児童相談所の人口当たり配置標準の見直し ・里親養育支援児童福祉司の配置 等 平成31年2月 「世田谷区児童相談所設置・運営計画(第三次更新計画)」策定 平成31年3月19日 児童虐待防止対策の抜本的強化について(児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議) ・介入的な対応等を的確に行うことができるようにするための体制整備 ・常時弁護士による指導または助言のもとで対応するための体制整備 ・医師・保健師の配置の義務化 等 令和元年7月 国が示した新たな児童虐待防止対策等を踏まえた「世田谷区児童相談所設置・運営計画(最終更新計画)」策定 令和元年8月22日 世田谷区を「児童相談所を設置する市(区)」に指定する政令の閣議決定 令和元年10月1日 世田谷区児童相談所設置条例制定(令和2年4月1日施行) 令和2年3月 「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」策定 令和2年4月1日 特別区初となる世田谷区児童相談所及び一時保護所の開設 【改正児童福祉法等施行】 ・体罰の禁止 ・児童相談所の体制強化 【改正民法等施行】 ・特別養子縁組の対象年齢の拡大、手続きの見直し 令和2年9月 「世田谷区社会的養育推進計画(素案)」策定、パブリックコメントの実施 令和3年3月 「世田谷区社会的養育推進計画」策定 令和3年12月 「世田谷区児童養護施設小規模かつ地域分散化計画」策定 令和4年4月1日 【改正民法等施行】 ・成年年齢の引下げ(20歳から18歳へ) 5 児童相談所の組織及び職員 (1)組織 本庁 子ども・若者部 児童相談支援課 【主な所掌事務】 ・一時保護及び措置された子どもの権利擁護に関すること。 ・児童養護施設等への入所の措置及び児童自立生活援助の実施等に係る徴収金の徴収に関すること。 ・里親制度の普及促進及び里親支援に関すること。 ・措置費の支弁に関すること。 ・児童養護施設退所者等奨学基金に関すること。 ・子ども家庭支援センター事業に係る調整に関すること。 ・子ども家庭支援センターと児童相談所との連携に関すること。 副参事(子ども家庭専門指導担当) ※世田谷総合支所子ども家庭専門指導担当副参事兼務 副参事(児童相談所・子ども家庭支援連携担当) ※各総合支所保健福祉センター子ども家庭支援課長兼務 児童相談所 副所長 【主な所掌事務】 ・児童及びその保護者の相談に関すること。 ・児童の措置に関すること。 ・里親に関すること。 ・児童虐待に関すること。 一時保護課 【主な所掌事務】 ・児童の一時保護に関すること。 副参事(人材育成担当) 各総合支所 保健福祉センター 子ども家庭支援課(子ども家庭支援センター) ※健康づくり課兼務保健師を含む 【主な所掌事務】 ・子どもとその家庭に係る総合的な相談に関すること。 ・児童福祉法に基づく情報提供、調査、指導等に関すること。 ・要保護児童支援地域協議会に関すること。 ※国の定める「子ども家庭総合支援拠点」の役割を担う。 健康づくり課 【主な所掌事務】 ・妊娠中や産後の支援に関すること。 ・乳幼児健診、区民健診等に関すること。 ・育児相談、健康相談に関すること。 ※国の定める「子育て世代包括支援センター」の役割を担う。 副参事(子ども家庭専門指導担当) ※世田谷総合支所のみ (2)所内組織 児童相談所 副所長 管理係 【主な所掌事務】  ・所内の庶務に関すること。  ・関係機関との連絡調整に関すること。  ・所の施設の維持管理に関すること。  ・所内他の担当係長に属しないこと。 統括支援担当 【主な所掌事務】  ・児童虐待の通告対応・相談・指導の総括に関すること。  ・児童の相談ケースの進行管理に関すること。  ・援助方針会議に関すること。 地域支援担当1(世田谷北沢地域担当) 【主な所掌事務】  ・児童虐待への対応並びに養育困難・非行に係る相談に関すること。 地域支援担当2(砧・烏山地域担当) 【主な所掌事務】  ・児童虐待への対応並びに養育困難・非行に係る相談に関すること。 地域支援担当3(玉川地域担当) 【主な所掌事務】  ・児童虐待への対応並びに養育困難・非行に係る相談に関すること。 育成担当 【主な所掌事務】  ・障害に係る相談に関すること。  ・性格行動の問題を有する児童に関すること。 支援調整担当 【主な所掌事務】  ・親子支援及び家族の再統合に関すること。  ・社会的養護(里親支援)に関すること。  ・調査研究及び研修に関すること。  ・専門職(弁護士)との連絡調整等に関すること。 児童心理担当 【主な所掌事務】  ・児童の心理検査、観察、治療等に関すること。  ・療育手帳の判定に関すること。 一時保護課 一時保護担当 【主な所掌事務】  ・一時保護児の支援に関すること。  ・一時保護所の運営に関すること。  ・一時保護に係る関係機関との連絡調整に関すること。 副参事(人材育成担当) 【主な所掌事務】 ・児童相談所の人材育成に関すること。 (3)所内の職員配置状況(令和4年4月1日現在) 所内の職員配置状況の表 6 児童相談所で取扱う児童相談・援助 (1)相談の種類 養護相談 児童虐待、養育困難に関する相談 非行相談 非行行為、ぐ犯行為、触法行為に関する相談 育成相談 しつけ、子育て、性格行動、家庭内暴力、不登校、ひきこもり、適性相談 など 障害相談 障害児に関する相談、視聴覚障害、知的障害、肢体不自由、重症心身障害、ことばの遅れ、発達障害 など 保健相談 精神保健・精神衛生、思春期、性に関すること、依存等による生活の乱れ など その他相談 親子・家族間の関係、自立(自立援助ホームの利用)、その他 (2)援助の種類 在宅指導等 措置によらない指導 助言指導 1ないし数回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、問題が解決すると考えられる子どもや保護者等に対する指導をいう。 継続指導 複雑困難な問題を抱える子どもや保護者等を児童相談所に通所させ、あるいは必要に応じて訪問する等の方法により、継続的ソーシャルワーク、心理療法やカウンセリング等を行うものをいう。 他機関あっせん 他の専門機関において、医療、指導、訓練等を受けること並びに母子家庭等日常生活支援事業を利用する等関連する制度の適用が適当と認められる事例については、子どもや保護者等の意向を確認のうえ、速やかに当該機関にあっせんする。 措置による指導 児童福祉司指導 複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対し子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは必要に応じ通所させる等の方法により、継続的に行う。 児童委員指導 問題が家庭環境にあり、児童委員による家族間の人間関係の調整または経済的援助等により解決すると考えられる事例に対し、子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは必要に応じ通所させる等の方法により行う。 知的障害者福祉司指導 社会福祉主事指導 問題が知的障害に関するもの及び貧困その他環境の悪条件等によるもので、知的障害者福祉司または社会福祉主事による指導が適当な場合に行う。 訓戒、誓約措置 子どもまたは保護者に注意を喚起することにより、問題の再発を防止し得る見込みがある場合に行い、養育の方針や留意事項等を明確に示すよう配慮する。 児童福祉施設入所措置 家庭での児童の養育が困難な場合に乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童自立支援施設等に入所させる。 指定発達支援医療機関委託 肢体不自由のある児童または重症心身障害児について、指定発達支援医療機関に対し、入院や医療型障害児入所施設と同様な治療等を行うことを委託する。 里親委託 東京都及び児童相談所設置区が登録した里親に養育を委託し、家庭での養育に欠ける子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭を与えることにより、愛着関係の形成など子どもの健全な育成を図る。 小規模住居型児童養育事業委託 家庭における養育環境と同様の養育環境の下で、要保護児童の養育に関し相当の経験を有する養育者に養育を委託する。 児童自立生活援助の実施 義務教育を終了したが、いまだ社会的自立ができていない20歳未満の子ども及び大学等に就学中であって、満20歳に達した日から満22歳に達する日の属する年度の末日までの間にある子どもを対象として、就職先の開拓や、仕事や日常生活上の相談等の援助を行うことにより社会的自立の促進を図る。 福祉事務所送致等 児童や保護者を知的障害者福祉司、社会福祉主事に指導させる場合、助産施設、母子生活支援施設、保育所等への入所措置が必要な場合、及び15歳以上の児童を知的障害者援護施設等に入所させることが適当な場合に送致、報告、通知を行う。 家庭裁判所送致 触法少年及びぐ犯少年について、子どもの最善の利益や専門的観点から判断して家庭裁判所の審判に付すことがその子どもの福祉を図るうえで適当であると認められる場合等に行う。 家庭裁判所に対する家事審判の申立て 児童虐待等の場合で、親の同意を得られない場合の施設入所の承認や、親権停止並びに喪失宣言の請求、未成年後見人選任・解任の請求を行う。 (3)その他 立入調査 児童を児童養護施設へ入所させる場合や、里親へ養育委託するにあたって、必要があると認めるときは、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所等に立ち入り、必要な調査または質問をさせることができる。 なお、正当な理由なく立入調査を拒んだ場合、罰金規定がある。 一時保護・一時保護委託 児童相談所長は、必要があると認めるときは、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、または児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、または適当な者に委託して、一時保護を行わせることができる。 面会・通信の制限 施設等入所中や一時保護中の児童に対し、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは、保護者の面会や通信について制限することができる。 接近禁止命令 上記の面会・通信の制限がある場合において、特に必要があると認めるときは、保護者に対し、児童の身辺でのつきまとい、または徘徊してはならないことを命ずることができる。 なお、この規定に違反した場合、罰金規定がある。 同居児童の届け出 四親等内の児童以外の児童を、自己の家庭に一定期間同居させる意思をもって同居させた者等は、その旨区長に届け出なければならない。 所長の親権代行 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者または未成年後見人のない者に対し、親権を行う者または未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。 出頭要求 児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査または質問をさせることができる。 再出頭要求 保護者が上記出頭要求または立入調査を正当な理由なく拒み、妨げ、または忌避した場合において、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査または質問をさせることができる。 臨検・捜索 保護者が正当な理由なく立入調査を拒み、妨げ、または忌避した場合において、児童虐待が行われている疑いがあるときは、児童の安全確認を行い、またはその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所等を管轄する地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所の許可状により、児童の住所等に臨検させ、または児童を捜索させることができる。 (4)児童相談の流れ 児童相談の流れの表 (5)児童虐待に対する児童相談所の対応 児童相談の流れ(虐待通告の場合)の表 第2 運営状況のあらまし 1 相談の受理状況等 (1)相談経路別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談件数は2,233件であり、令和2年度から101件増加した。 相談経路としては、警察等からの相談が最も多く(712件)、次いで近隣・知人(565件)、家族・親戚(468件)と続いている。 この状況は令和2年度と同様となっている。 《統計資料56ページ》 相談経路別受理状況の表 (2)相談内容別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談件数2,233件のうち、被虐待相談(養護 相談)が最も多く(1,698件)、次いで障害相談(265件)、非行相談(61件) と続いている。この状況は令和2年度と同様となっている。 《統計資料57ページ》 相談内容別受理状況の表 (3)年齢別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談件数2,233件のうち、0〜5歳(未就学年齢)は719件、6〜11歳(小学生年齢)は819件、12〜14歳(中学生年齢)は437件、15〜17歳(高校生年齢)は215件となっており、令和2年度と比較すると、高校生年齢以外では増加している。 また、対児童人口比では、中学生年齢の相談件数が一番多い。 《統計資料57ページ》 年齢別受理状況の表 2 児童虐待相談の受理状況等 (1)経路別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数1,698件のうち、警察等からの通告が最も多く(581件)、次いで近隣・知人(565件)、家族・親戚(143件)と続いている。 警察等及び近隣・知人については、令和2年度、令和3年度ともに他の相談経路と比較してとても多い状況となっている。 全国や東京都と比較すると警察等の割合が少なく、近隣・知人の割合が多くなっている。 《統計資料59ページ》 経路別受理状況の表 ※1全国及び東京都は令和2年度の児童虐待対応件数を掲載 ※2東京都は特別区児童相談所分を含む ※3世田谷区は令和3年度の児童虐待受理件数を掲載 (2)虐待種類別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数1,698件のうち、虐待種類別では心理的虐待が最も多く(1,268件)、次いで身体的虐待(274件)、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)(151件)、性的虐待(5件)と続いている。 令和2年度と比較して、心理的虐待の増加が突出している。 また、その他の種類については児童虐待受理件数が全体として増加しているにも関わらず、減少している。 《統計資料60ページ》 これは、警察等からの通告が増加(令和2年度から84件増)していること、警察等から通告される虐待種類のうち、心理的虐待が82.6%(581件のうち、480件)を占めていることが影響していると考えられる。 虐待種類別受理状況の表 (3)年齢別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数1,698件のうち、0〜5歳(未就学年齢)は601件、6〜11歳(小学生年齢)は664件となり、令和2年度と比較して増加している。 一方、12〜14歳(中学生年齢)は267件、15〜17歳(高校生年齢)は125件となっており、令和2年度と比較して減少している。 これは、令和3年度の相談経路として最も多かった警察等からの通告のうち、未就学年齢と小学生年齢の通告が増加(未就学年齢が168件から207件、小学生年齢が152件から173件)し、中学生年齢と高校生年齢の通告が減少(中学生年齢が112件から68件、高校生年齢が65件から32件)したことが影響していると考えられる。 《統計資料57ページ》 年齢別受理状況の表 3 児童虐待相談の対応状況等 (1)児童虐待相談の対応状況 令和3年度の児童相談所における虐待相談対応件数は、1,709件となっている。 《統計資料61ページ》 また、令和3年度の子ども家庭支援センターにおける虐待相談対応件数は、 1,734件となっている。 ※不受理となった通告等は除く。 児童虐待相談の対応状況の表 【参考:子ども家庭支援センターにおける虐待相談件数の推移】 子ども家庭支援センターの被虐待児童相談対応状況は、令和元年10月から新しい「東京ルー ル」※の運用が開始されたことに伴い、子ども家庭支援センターの新規受理件数が例年より顕著 に増加した。 ※新しい「東京ルール」…都区間の新たなルールとして、都世田谷児童相談所が受理した警察からの心理的虐待(面前DV)案件等は、子ども家庭支援センターが対応することとなった。 「世田谷区保健福祉総合事業概要 統計編」等より作成 【参考:子ども家庭支援センターにおける虐待相談件数の継続状況の推移】 子ども家庭支援センターにおける虐待相談継続件数は、区の児童相談所開設を契機として緩やかに減少している。 種別の内訳で比較すると、心理的虐待は増減を繰り返しながらも300件前後で推移している。 一方で、年度末時点での未対応件数は令和2年度より増加しており、児童相談所からの区分けによる子ども家庭支援センターにおける新規受理件数及び対応件数の増加が影響しているとみられる。 子ども家庭支援センターにおける虐待相談件数の継続状況の推移の表 【参考:区児童相談所における虐待通告件数※の状況】 令和3年度に児童相談所に寄せられた虐待通告件数は、1,825件となっている。 区児童相談所における虐待通告件数の表 ※「通告件数」と「受理件数」、「対応件数」の関係 ・「通告件数」は、児童虐待の相談・通告として寄せられた電話等の件数であり、そのうち、児童相談所が虐待案件として調査等が必要であると判断したものを「受理件数」として扱っている。 ・「対応件数」は、受理された通告に基づき、相談履歴や家庭状況の調査、児童の心理診断などを行い、その後の援助方針を決定した対応中のケースの件数を指す(国の全国統計等ではこの件数が集約され、比較・検証などに用いられている)。 ・通告→通告受理→相談対応という相談援助活動の流れの中で、どの時点のケースを指すかにより、それぞれの件数は異なるため、「通告件数」と「受理件数」、「対応件数」は一致しない。 (2)子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的運用の実績 1 概要 区が児童相談所を設置したことを契機に、地域における子どもに関するあらゆる相談の一義的な窓口である子ども家庭支援センターと、強力な法的権限などの高度な専門性を有する児童相談所の「一元的な運用」を実施している。 本運用では、両機関の職員がチームとなり、日常から担当区域の情報共有を行い、必要に応じて双方が持つ機能を組み合わせた支援や問題の解決まで協働で関わる「のりしろ型支援」を着実に推進することで、虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応が徹底され、子どもの安全と生命を確実に守る予防型の児童相談行政の展開に取り組んでいる。 これらを実現するにあたり、基本的な対応に関する運用のしくみを下記のとおり構築し、適切に実施している。 【主な取組み】 ア チームとして顔の見える職員体制の構築 子ども家庭支援センターと児童相談所の双方が、「住所地域担当制」を実施し、年間を通して同一住所地域を同一の担当者が担当することで、ひとつのチームとして顔の見える職員体制の構築を図っている。 イ 一貫した初動対応の実施(児童虐待通告窓口の一本化) 世田谷区児童虐待通告ダイヤル(0120-52-8343)、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)を通じての児童虐待相談や、警察からの通告は、区の児童相談所で一括して受理し、初動対応の一次的方針の判断を行う体制としている。 これにより、児童虐待通告のうち、一時保護の必要が予見され、専門性・法的権限を要することが見込まれるケースについては、児童相談所が児童の安全確認等を行い、その後の調査及び必要な援助等を実施している。 一方、いわゆる「泣き声通告」など、子ども家庭支援センターの支援が望ましいと判断された事案については、子ども家庭支援センターが迅速に児童の安全確認を行っている。 ウ リスクアセスメントの共有(共通アセスメントシートの作成) 子ども家庭支援センターと児童相談所は、相談ケースのリスク評価を行うにあたり、共通アセスメントシートを用いることで、リスクに対する視点の共有化を図っている。 エ 合同会議、合同研修の実施 世田谷区要保護児童支援地域協議会進行管理部会と同時開催で月1回程度「合同会議」を開催し、子ども家庭支援センターと児童相談所が協働して対応するケースのアセスメントの共有や、援助方針の検討等を行っている。 また、子ども家庭支援センターや児童相談所に配属された職員を対象とし、虐待対応の資質向上に向けた研修体系等を一本化し、理念の共有及び支援の質の底上げを図っている。 2 児童相談所と子ども家庭支援センターの区分け件数 令和3年度に児童相談所において受理した児童虐待通告1,698件のうち、児童相談所に区分けされたものが776件(45.7%)、子ども家庭支援センターに区分けされたものが922件(54.3%)となっている。 令和2年度では児童相談所への区分け件数のほうが多かった(56.4%)が、令和3年度は子ども家庭支援センターへの区分け件数のほうが多かった。 児童相談所と子ども家庭支援センターの区分け件数の表 3 合同会議 【令和3年度開催実績】 世田谷12回 北沢12回 玉川12回 砧12回 烏山12回 計60回 4 合同研修 【令和3年度実施実績】 新任・横転者研修 ・相談援助の基礎 ・児童虐待の基礎的理解 ・子どもの成長・発達と生育環境 ・主要な関係機関との連携 ・ソーシャルワーク演習 等 専門研修 ・多(他)機関連携 ・死亡事例から学ぶ ・母子生活支援施設との連携 ・医療機関との連携について 事例検討研修 ・個別事例の振返りをとおした研修 (3)児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数 令和3年度における児童相談所における児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数は、40.4件※となっており、令和2年度と比較して5.5件の減となっている。 これは、児童虐待相談受理件数は増加したものの、一方で児童福祉司についても増員(36名から42名(令和3年4月時点))しており、結果として児童福祉司一人当たりの対応件数は減少した。 ※算出方法:当該年度児童虐待相談受理件数÷児童福祉司=一人当たりの相談件数 児童福祉司一人当たりの対応件数 2年度45.9件 3年度40.4件 4 調査・診断・一時保護状況等 (1)児童福祉司の活動状況 児童福祉司は、子どもの健全育成、子どもの権利擁護をその役割とし、主に児童虐待や非行など家族の抱える課題の解決に向け、支援が必要な子ども、保護者に対する適切なアセスメントの実施や、保護者との対話を重視したきめ細やかな支援を通して家族再統合を目指し活動している。 子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的運用により、子ども家庭支援センターとの調整(主に電話相談)にかかる実績が増えている。 また、区がこれまで培ってきた地域との顔の見える関係を活かし、関係機関との調整についても密に行うことができており、これに関係する活動実績が反映されているものと考える。 (1社会調査指導「その他」に計上。) 【令和3年度実績】 1社会調査指導の表 2継続的指導等※を要する児童等に対する指導及び調査の表 ※継続指導や児童福祉司指導、児童福祉施設入所、里親委託等 (2)児童心理司の活動状況 児童心理司は、子どもや保護者等の相談に応じ、面接・心理検査・行動観察等を用いて心理診断を行っている。 心理診断で得られた知見は児童相談所としての援助方針を決定する際に用いられる。 児童心理司は決定された援助方針に従い、必要に応じて子どもや保護者等に心理ケアや助言等を行っている。 心理診断と心理ケアは、子どもと保護者が問題に向き合い解決を目指せるように支援していくものであり、児童心理司業務の中核をなすものである。 また、障害相談のうち愛の手帳発行に関わる判定業務は大きな割合を占めている。 1 心理診断 心理診断は、援助の方針・内容を決めるために子どもとの面接や行動観察、心理検査に加え、保護者との面接等の結果等を総合して行うものである。 効果的な支援を行うためには的確なアセスメントが重要である。 【令和3年度児童心理司関与件数】 ア 相談別関与件数の表 ※延人員数 児童及び保護者の延人数 イ 診断指導別回数 診断4,678回 指導6,586回 ※1 知能検査、発達検査、問診、観察等 ※2 助言、治療指導、愛の手帳判定等 2 心理ケア 心理ケアは、心理診断に基づいて様々な技法を用いた個別カウンセリングによる継続的支援を行い、子どもの心理的課題や親子関係の改善を図ることである。 その方法は、原則として子どもや保護者を定期的に児童相談所へ通所させ、継続的な面接等を行うものである。 児童心理司は一人当たり約20ケースを担当し、ケースの状況に応じた方法で定期的な心理面接を実施している。施設措置ケースにおいても施設心理士と連携を図り、児童相談所への通所もしくは施設訪問により同様に行っている。 加えて効果が期待できると思われるケースには、PCIT(親子相互交流療法)、親子グループ、メンタルフレンドの活用、東京都児童相談センター治療指導事業等も適宜活用した継続的支援を行っている。 ア PCIT(親子相互交流療法) 虐待によるトラウマや落ち着きのなさ等の行動がある幼児期の子どもと、育児に悩む養育者の両者に対し、親子の相互交流を深め、親子関係改善に向けて働きかけるために行っている。 【令和3年度実績】 6件(在宅指導ケース5件、施設措置ケース1件) イ 親子グループ 適切な親子関係の構築に向けて、在宅指導ケース・施設措置ケースを対象に養育者には子育てスキルの向上、子どもには感情統制のスキルの獲得を目的に、グループ活動による援助を行っている。 【令和3年度実績】 6件(在宅指導ケース3件、施設措置ケース3件)1クール全4回実施 ウ メンタルフレンドによる支援 不登校や引きこもり等様々な社会的不適応を示し、家に閉じこもりがちな子どもに、お兄さんまたはお姉さんの世代にあたるボランティアをメンタルフレンドとして関わってもらい、子どもとの話や遊び、お菓子作り、工作等を通して子どもの自主性や社会性を高めるための援助を行っている。 【令和3年度実績】 3件(在宅指導ケース) 延べ32回 3 愛の手帳判定に関する業務 東京都愛の手帳交付要綱に基づき、18歳未満の子どもに対して愛の手帳の申請受付と判定業務を行っている。 なお、愛の手帳についての医学診断は、非常勤医師が行っている。 ※区児童相談所が児童の判定を行い、当該結果について東京都への進達を行っている。 【令和3年度実績】 心理判定数 2年度188件 3年度220件 増減32 医学診断数 2年度174件 3年度211件 増減37 手帳交付数 2年度171件 3年度183件 増減12 4 東京都児童相談センター治療指導事業等の活用 区児童相談所は、開設に伴い東京都児童相談センターの持つ事業のうち、東京都全域を対象とする「治療指導事業」及び「家族再統合のための援助事業」について協定書を締結し、援助のひとつとして活用している。 「治療指導事業」は、家庭、学校、児童養護施設等において様々な不適応行動を示す子どもについて、子どもの心身の健全な成長発達を援助する事業である。 「家族再統合のための援助事業」は、被虐待を理由に児童養護施設等に入所中または養育家庭に委託中の子ども及びその保護者等に、家族再統合を図ることに加え、子どもと家族等との関係性の改善、子どもへの虐待の再発防止を目指してグループ心理療法等のプログラムを実施している事業である。 【令和3年度実績】 治療指導事業 6件(在宅指導ケース1件、施設措置ケース5件) 家族再統合のための援助事業 0件 (3)保健師の活動状況 保健師は、保健、医療、育児に関する専門性を活かし、児童の健康及び心身の発育・発達に関するアセスメントや保健相談及び指導の実施、保護者の医療面や児童虐待に関するリスクアセスメントに基づく必要な保健、医療、育児面の相談支援のほか、医療機関、保健機関(地域母子保健、精神保健等)との連絡・調整、子ども虐待防止対策、地域支援体制充実のための地域関係機関との連携業務などを行っている。 令和3年度個別援助活動状況の表 「令和3年度保健師業務年報(東京都福祉保健局)」より再編 令和3年度は、開設2年目となり児童福祉司の増員や役割が整理されたことに伴い統計数に変化が出ている。 訪問の全体数は減少したが、保健師が関わる対象となった児童の世帯は令和2年度は93件、令和3年度は120件と増加している。 一方、対象児童の継続的な関わりから、医療機関からの通告調査やより専門的な医療への繋ぎ、入院、服薬調整等の医療ニーズの高まったタイミングや地域への繋ぎ等の時期に集中した関わりへ変化している。 対象種別としては、児童思春期、妊産婦、幼児や小学校以上の学童など訪問や医療機関との連携が増加している。 ※家庭訪問には、一時保護所や乳児院、同居人届出家庭(児童福祉法第30条)、児童養護施設等への訪問も含まれる。 1 医療機関との連携 令和2年度より子どもの虐待防止対策、地域支援体制充実のため区内の二次救急医療機関※1と、近隣区・市の医療機関の巡回を実施している。 令和3年度はコロナ禍で実施となっていた3医療機関を実施した。 区児童相談所開設の周知と各医療機関の子どもの虐待対応院内組織(CPT※2)の設置状況有無の確認を行い、設置が無い場合は虐待が疑われる児童を把握した際の院内体制の確認と課題の共有を行った。 意見交換を通じ、顔の見える関係の構築、通告や受診、情報のやり取り等連携強化を図っている。 国立成育医療研究センターとは令和2年度より性的虐待・性被害等や自傷行為である性非行等の児童に行われる「系統的全身診察※3」にかかる「覚書」を締結し、必要な児童は診察につないでいる。 また身体的虐待が疑われる外傷等がある児童についても系統的全身診察を活用した。 【令和3年度実績】 性被害等3件 身体外傷等6件 ※1 二次救急医療機関:入院治療及び専門外来医療を提供する医療機関。 ※2 CPT:チャイルドプロテクションチーム(医療機関によってCAPSやSCANなど、様々な呼称がある。) ※3 系統的全身診察:性的虐待を受けた児童又は強く疑われる児童の診察で、虐待被害児診察技術研修を受講した医師により行われる。 2 子ども家庭支援課兼務保健師との連携 令和元年度より子ども家庭支援センターに健康づくり課との兼務保健師を配置し、母子保健との連携の強化を図っている。 令和2年度より児童相談所保健師も5支所兼務保健師連絡会のメンバーとなり、保健師間の情報共有・役割の理解を深めている。 【令和3年度実績】 子ども家庭支援課兼務保健師連絡会 全6回中2回参加(うち、3回は中止) 3 一時保護所看護師との連携 毎月1回の医療職担当者会において、情報交換や保健・医療面の課題(入所児童の健康診断等)を共有し対応策を検討している。 【令和3年度実績】 医療職担当者会 12回実施 (4)業務委託医師の活動状況 児童相談所の医学診察は業務委託により実施し、一時保護児童の健康診断、子どもや保護者等に対する問診等による医学診断、及び児童相談所職員への医学的助言等を行っている。 また、親子関係の評価や精密な精神科学的評価及び心理学的評価等についての必要性が判断された場合は、通院による医学評価業務を行っている。 1 児童相談所または一時保護所での勤務体制 3名の医師が月に20日程度(一日当たり4時間〜8時間)、児童相談所または一時保護所において医学的業務を実施している。 2 主な業務内容 ア 児童相談所または一時保護所で実施する医学的評価 ・子どもや保護者等に対する問診等による医学診断、及び児童相談所職員への医学的助言等 ・援助方針会議、個別カンファレンス等での事案にかかる児童相談所職員等への医学的助言 ・一時保護所へ入所する子どもの健康診断及び入所している子どもの健康チェック イ 通院により実施する医学的評価 ・親子関係の評価や精密な精神科学的評価及び心理学的評価等 【令和3年度実績】 医学診断 2年度45件 3年度48件 増減3 通院による医学評価業務 2年度6件 3年度8件 増減2 (5)弁護士の活動状況 1 弁護士相談の勤務体制 2名の弁護士に業務委託をしており、1名につき、原則月に4日(一日当たり4時間)、児童相談所において相談業務を実施している。 また、弁護士が児童相談所に出勤していない日の法的助言・指導を求める場合は、電話等を用いている。 2 業務内容 ・児童相談所業務に関して、法的な専門的見地から児童相談所職員への助言、指導に関すること及び対外的な対応に関すること。 ・措置や一時保護されている子どもへの支援等に関する法的助言。 ・児童相談所職員の法的対応力向上のための研修の実施。 3 相談の実際 相談内容としては、「戸籍問題」「非親権者への対応」「親権者の同意がない中でのケースワークの進め方」「家庭裁判所への回答」「審査請求への対応」等、多岐に渡っている。 また、月1回程度、援助方針会議に出席し、主には一時保護児童や保護者の養育状況等を把握したうえで、法的対応が必要となるケース等について助言をしている。 児童相談所の方針と保護者の意向が合わず、法的対応が必要となるケースもあり、弁護士に相談するケースは令和2年度と比較して増加している。 児童相談所職員への助言以外では、必要に応じて保護者面接に同席し、法的見地から保護者に対する説明を行っている。 児童福祉法(以下、「法」という。)第28条の申立てや親権喪失または停止の審判、法第33条第5項の、引き続いての一時保護の承認の申立てやこれらに関する審問期日及び口頭弁論出廷、審判にかかる抗告等に対する資料作成等に関する業務については、代理人契約として委任している。 【令和3年度実績】 令和3年度実績の表 ※1 児童福祉法第28条…保護者が児童を虐待するなど児童の福祉を害する場合において、児童を児童福祉施設に入所させるなどの措置をとる際に保護者が同意しない場合、都道府県知事または児童相談所長の申立てにより、家庭裁判所がその措置をとることを承認する審判を行う手続き。 ※2 児童福祉法第33条第5項…一時保護の期間が2か月を超え、かつ親権者の意思に反して一時保護を継続する場合、都道府県知事または児童相談所長の申立てにより、家庭裁判所がその措置をとることを承認する審判を行う手続き。 (6)区の一時保護の状況 令和3年度における区の一時保護は、123人となっており、令和2年度(145人)より減少した。 また、一時保護所での入所率が100%となることはなかった。 区の児童の一時保護の件数 区の児童の一時保護の件数の表 区の児童の一時保護の方法 新規保護(令和3年度計)123人 うち区の一時保護所での保護95人 その他28人 区の児童の一時保護の理由 被虐待76人 養育困難29人 非行16人 その他2人 合計123人 ※令和3年度中に新規保護(保護先の変更は含まない。保護解除後の再保護は含む。)した区の児童の内訳を計上している(保護時点における保護の方法・理由について計上している)。 【参考:区の一時保護所の入所状況※】 区の一時保護の入所状況の表 ※令和3年度中の保護人数を計上 (7)一時保護委託の児童数 令和3年度における一時保護委託児童数は28人となっている。 【乳幼児・学齢児別一時保護委託の件数】 乳幼児・学齢児別一時保護委託の件数の表 5 社会的養護の状況 社会的養護とは、親の死亡や虐待または児童の心身状況から家庭での養育が困難になったなど、保護者・児童の一方または双方の理由により、家庭による養育ではなく、施設や里親により養育を行うことである。 (1)社会的養護のもとで育つ児童数 令和4年3月31日現在、施設や里親等へ入所措置・養育委託されている区の児童は139人となっている。 【施設種別ごとの措置状況※内訳(障害児入所施設の契約含む)】 ※3月31日現在の児童数は、同日付で退所した児童を含めない。 施設種別ごとの措置状況の表 ※1 児童養護施設 保護者のいない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要がある場合には、乳児を含む。以下同じ)虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設。 ※2 乳児院 おおむね2歳未満で保護者のいない乳幼児及び保護者による養育が困難又は不適当な乳幼児を養育する施設。 ※3 ファミリーホーム 小規模住居型児童養育事業。一定の要件を備えた養育者の住居において、5人または6人の要保護児童を、子ども同士の相互作用を活かしつつ家庭的な環境のもとで養育する制度。 ※4 児童自立支援施設 不良行為を行い、又はなすおそれのある児童及び家庭環境その他環境上の理由により生活指導を要する児童を入所させ、又は保護者の下から通わせて、生活指導、学習指導、職業指導等を通じて心身の健全な育成及び自立支援を図る児童福祉施設。 ※5 自立援助ホーム 義務教育を終了した20歳未満の児童等であって、児童養護施設等を退所した者又はその他の都道府県知事等が必要と認めたものに対し、生活指導等を行うことで社会的に自立するよう援助する施設。 ※6 障害児入所施設 心身に障害のある18歳未満の児童を対象とし、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与や治療を行う施設。 【退所者内訳】 退所者内訳の表 ※1 社会的自立:進学、就職など(家庭に戻らず、親族とも生活をともにしないが社会的に自立できた場合) ※2 その他:措置変更、移管、縁組成立など (2)里親等の状況 1 里親制度 里親制度は、児童福祉法に基づく制度で、親の離婚や疾病等の事情により家庭で生活できない児童や、親による虐待等により家庭で生活することが望ましくない児童を家庭に代わって公的に養育する社会的養護のひとつである。 里親には以下の4種類の里親がある。 ・養育家庭:養子縁組を目的とせずに、様々な事情で実家庭を離れて暮らす子どもを一定期間養育する里親。 ・専門養育家庭:専門的なケアを必要とする子どもを一定期間養育する里親。 ・親族里親:両親が様々な事情で養育できない場合、その子どもの扶養義務者である親族が里親となり、養育すること。 ・養子縁組里親:養子縁組を目的とする里親。 養子縁組が成立するまでの期間、里親として子どもを養育すること。 また、養育家庭等で一定経験のある方が、事業届出のうえ、養育者の住居で5人または6人の子どもを養育するファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)がある。 2 区における里親支援に関する業務(フォスタリング業務)の体制 ア 現状 フォスタリング業務は、里親制度を一層推進するため、里親制度の普及啓発、里親の養育力向上や里親委託を推進するなどの以下の業務を総合的に実施するものである。 ・里親制度の普及啓発による里親開拓(リクルート)及びアセスメント ・里親登録前・登録後及び児童委託後の研修・トレーニング ・委託候補児童と里親家庭のマッチング ・未委託期間中から委託解除後のフォローまでを含めた里親養育への支援 区では、以下のような体制で里親支援に関する業務を行っている。 フォスタリング業務の区の現状の図 イ フォスタリング業務委託のあり方検討について 里親支援体制の一層の充実に向けて、令和3年6月に児童福祉審議会のもとに「フォスタリング業務委託のあり方検討部会」(以下「臨時部会」という。)を設置し、「フォスタリング業務委託のあり方」について検討を行った。 臨時部会において「フォスタリング業務委託のあり方の検討結果について」が取りまとめられ、一連のフォスタリング業務を包括的に委託することが望ましいという結論に至ったため、区では、令和5年度からの包括的なフォスタリング業務委託に向けた準備を進めていく。 包括的業務委託の範囲の図 (3)里親支援業務の取組み状況 1 「普及啓発・リクルート業務」「研修・トレーニング業務」 事業内容:令和2年度から、フォスタリング業務のうち、「普及啓発・リクルート業務」及び「研修・トレーニング業務」について一元的に外部委託し実施している。 委託先:東京育成園(フォスターホームサポートセンターともがき) 【令和3年度実績】 ア 相談受付の表 イ 研修・トレーニング業務の表 ※オレンジプログラム 親子関係を良くし、子育てのストレスを軽減させることを目的とした、子どもへの「言葉かけ」や 「行動への対処の仕方」をデモンストレーションやロールプレイなどで体験的に学ぶプログラム。 ウ 普及啓発 ・公式ラインアカウント開設 「世田谷の里親相談室 せたおや」を令和3年6月に開設し、里親情報の発信を行っている。 ・「写真展〜365日のさとおやこ〜」 里親子の写真や想い出の品とともに、社会的養育や里親制度を知るきっかけとするための写真展を開催。 令和3年10月22日(金曜日)〜23日(土曜日)スタジオホットドッグ下北沢 令和3年10月24日(日曜日)〜25日(月曜日)世田谷ものづくり学校 ・東京都の里親強化月間(10月、11月)に合わせ、区立中央図書館にて里親制度に関する書籍コーナー設置 ・区政PRコーナーでのパネル展示 令和4年1月31日(月曜日)〜2月10日(木曜日) 2 里親支援機関事務事業 事業内容:里親委託をより一層推進するため、里親家庭への訪問等による相談支援、里親同士の相互交流、里子の自立支援などの業務を行う。 委託先:東京公認心理師協会 職員配置:里親委託等推進員、自立支援相談員 【令和3年度実績】 令和3年度実績の表 3 育児家事援助者派遣事業 事業内容:育児家事援助者の派遣による養育援助や家事などの生活援助を行うことにより、里親養育の安定を図る。 委託先:NPO法人 バディチーム 【令和3年度実績】 派遣回数33回 派遣時間時間86時間 4 その他の里親支援にかかる取組み状況 ア 里親支援専門相談員 福音寮、東京育成園、カリタスの園つぼみの寮にそれぞれ配置されている里親支援専門相談員が、新規委託フォローアップ訪問、定期巡回訪問を実施し、里親子の状況に応じて、養育に関する助言等を行っている。 また、乳児院及び児童養護施設に入所している児童が里親委託となる際は、長期外泊前のカンファレンスから参加し、支援にあたっている。 【令和3年度実績】 フォローアップ訪問 67回 定期巡回訪問 38回 イ 地域と連携した取組み 里親が地域の関係機関とつながり、適切な支援を受けることで、里子の健やかな成長を目指すこと、また、職員、地域の関係機関が里親制度や地域で生活する里親子について理解を深める機会とすることを目的とした里親応援ミーティングを実施している。 令和3年度は3回開催した。 委託前後のタイミングで里親子と関係機関が顔の見える関係を作り、その後の連携のとりやすさに繋がっている。 また、地域の子育て支援者や、大学などへの制度説明等のほか、おでかけ広場や保育園などでの里親トレーニングの実施、地域子育て支援コーディネーターと里親の交流、緊急保育による受入れなど、様々な形で地域の関係機関等との連携による里親子の支援に取り組んだ。 (4)養育家庭の登録数及び委託児童数 令和4年3月31日現在の区内の養育家庭の登録数は53家庭となっている。 委託児童数は24人となっており、うち区の委託児童数は11人となっている。 養育家庭の登録数及び委託児童数の表 ※区外に登録されている養育家庭へ委託されていている区の児童数は10人 区外に登録されている専門養育家庭へ委託されていている区の児童数は0人 (いずれも令和4年3月31日現在) (5)里親の新規受託児童数 令和3年度中に、区内里親が新たに受託した児童数は14人となっており、うち区の委託児童数は6人となっている。 また、新たに一時保護委託として受託した児童数は10人となっている。 里親の新規受託児童数の表 (6)ファミリーホーム設置数及び委託児童数 令和4年3月31日現在、区内にはファミリーホームが2ホーム設置されている。 委託児童数は7人となっており、うち区の委託児童数は1人となっている。 区内2ホームのうち養育家庭移行型ファミリーホームが1ホーム、法人型ファミリーホームが1ホームとなっている。 ファミリーホーム設置数及び委託児童数の表 (7)里親等委託率の現状 令和4年3月31日現在、区における里親等委託率は23.8%となっている。 里親等受託率 令和3年3月31日現在 21.3% 令和4年3月31日現在 23.8% 里親等委託率の算出方法 養育家庭等・ファミリーホーム委託児童数 【A】わる乳児院入所児童数+児童養護施設入所児童数+養育家庭等・ファミリーホーム委託児童数 【B】 養育家庭や施設等へ養育委託・入所措置されている区の児童(105人【B】)の内訳 (カッコ内の数字は区内の養育家庭や施設等に委託・措置されている児童の内数) 乳児院入所児童 10人( 0人) 児童養護施設入所児童 70人(13人) 養育家庭等 23人(12人) ファミリーホーム 2人(1人) (養育家庭等・ファミリーホーム委託児童数25人【A】) 合計105人【B】 (26人) 【参考:全国・東京都における里親等委託率】 全国・東京都における里親等委託率の表 (出典:「東京都社会的養育推進計画」、「厚生労働省里親制度(資料集)」より抜粋) (8)養子縁組里親の登録と特別養子縁組※1の現状 令和4年3月31日現在、区児童相談所に養子縁組里親として登録された家庭は、48家庭となっている。 養子縁組里親 令和3年3月31日現在 44家庭 令和4年3月31日現在 48家庭 令和3年4月から令和4年3月までの特別養子縁組の成立数のうち、区児童相談所が関与した区の児童の特別養子縁組の成立数※2は3件となっている。 【令和3年度の特別養子縁組成立数】 区内の養子縁組里親 区の児童1 区外の児童4 区外の養子縁組里親 区の児童2 ※1 特別養子縁組制度の概要 ・子どもの福祉の増進を図るために、養子となる子どもの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度。 ・「特別養子縁組」は、養親になることを望む夫婦の請求に対し、要件(実親の同意・養親の年齢・養子の年齢・半年間の監護)を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立する。 ※2 特別養子縁組の区児童相談所の関与 ・特別養子縁組を仲介する機関は、行政機関である児童相談所のほか、民間のあっせん機関(医療機関を含む)がある。 ・区が把握する特別養子縁組の成立件数は、区児童相談所が仲介し、縁組が成立した件数となる。 区児童相談所は、ネウボラ・チームによる「妊娠期面接」等による特別養子縁組を必要とする事例の把握に努め、東京都と連携した早期の特別養子縁組成立に取組んでいる。 参考 東京都による新生児委託推進事業の概要(平成29年7月より実施) ・家庭で適切な養育を受けられない新生児を対象として、養子縁組が最善と判断した場合には、できるだけ早期に里親子を結び付けられるよう、養子縁組里親の養育力向上のための研修や新生児と養子縁組里親の交流支援を行うことにより、新生児委託を推進する(子どもの乳児院入所と同時期から里親との交流の開始など)。 ・都道府県等の許可を受け活動している民間の事業者は、全国に22団体(令和3年4月1日現在)あり、生みの親と暮らせない子どもと育ての親になりたい夫婦をマッチングし、様々なサポートを行っている。 (9)児童養護施設の状況 1 児童養護施設の入所児童数 令和4年3月31日現在、区内にある児童養護施設※1の入所児童数は、児童養護施設(本園)49人、グループホーム※246人、合計で95人となっている。 ※1 区内にある児童養護施設の令和4年3月31日現在の定員数:110人(本園2施設、グループホーム10施設) ※2 グループホーム:児童養護施設から独立した家屋において、要保護児童を少人数で養育する形態。 児童養護施設の状況の表 2 児童養護施設の小規模かつ地域分散化の状況 児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、児童養護施設の小規模かつ地域分散化※の推進に取り組んでいる。 ※小規模かつ地域分散化:本体施設の養育単位(ユニット)を小さくし、小規模グループケアとするとともに、地域のグループホームを増やしていくこと。 【区内児童養護施設における小規模かつ地域分散化の状況】 区内児童養護施設における小規模かつ地域分散化の状況の表 【参考】個別的ケアが必要な児童の入所状況 区内にある児童養護施設に入所している児童104名(令和4年3月1日時点)のうち、個別的ケアが必要な児童※の人数は78名となっており、その割合は75.0%となっている。 ※個別的なケアが必要な児童:反社会的行為、非社会的行為を行う児童や、精神・発達的な問題、情緒的な問題、健康上の問題がある児童など、安心して生活ができるよう生活面・心理面で個別的な対応を必要とする児童。 6 進路状況 令和4年3月に中学校を卒業した区の児童の高等学校等進学率は100%となっている。 また、令和4年3月における区の児童の大学等進学率は、児童養護施設が27.3%、児童自立支援施設が100%となっている。 【中学校卒業児童】 中学校卒業児童の表 【高等学校卒業児童】 高等学校卒業児童の表 7 児童養護施設等退所者支援の概要 (1)事業概要 児童相談所、区内児童養護施設等と連携しながら、満18歳となり児童養護施設や里親、自立援助ホームを退所する若者等に対して、「住宅支援」「居場所・地域交流支援」「給付型奨学金事業」を実施することにより、最も困難な状況にある若者の社会的自立を支援する。 (2)住宅支援 高齢者向け借上げ区営住宅の空室を安価で提供し、児童養護施設等を巣立った若者が地域の中で安定した生活基盤を持てるよう支援する。 また、生活サポートとして、児童養護施設職員が月に一度入居者を訪問面談し、学業・就労の状況や共同生活の状況を確認しながら、社会的自立に向けた支援を実施している。 1 支援内容 ・2LDK〜3DKの住戸に複数名が入居(1人1室)し、共同で生活する。 ・大学等進学者は所定の修学年限の最終年度末まで、就職者は最長2年間入居が可能。 【令和3年度実績】 利用住戸 3住戸(全5住戸) 利用者数 5人(定員13人) (3)居場所・地域交流支援 退所者等が、地域の中で身近に相談できる仲間や大人たちと交流する場、自分の好きなように寛いで過ごせる居場所として、区内2か所で実施。 【延べ利用人数】 延べ利用人数の表 ※令和2年度4、5月は新型コロナウイルス感染症の影響により中止 (4)給付型奨学金事業 児童養護施設・里親のもとを巣立ち大学等へ進学する若者に、寄附を原資とする奨学金を給付し、学業と生活を両立させながら社会的自立を図れるよう支援する。 【奨学金給付実績】 奨学金給付実績の表 【寄附実績】 寄附実績の表 8 18歳到達児童への支援状況 児童相談所が対象とする子どもは、原則として18歳未満の者となっている。 しかし、以下の場合に限って例外規定※が設けられており、18歳に達しても引き続き支援を行っている。 ※18歳以上の未成年の支援にかかる例外規定 ・里親に委託されている子どもの委託の継続及び児童福祉施設等に入所等している子どもの在所期間の延長 ・18歳に達するまでに一時保護(一時保護委託を含む)が行われた子どもの保護期間の延長 ・18歳に達するまでにされた措置に関する承認の申立てに対する審判が確定していない場合または当該申立てに対する承認の審判がなされた後において施設入所等の措置が採られていない場合の一時保護 ・18歳以上の未成年者について児童相談所が行う親権喪失等の審判の請求及びこれらの審判の取消しの請求並びに未成年後見人の選任及び解任の請求 ・里親委託中の18歳以上の未成年者で親権を行う者または未成年後見人のないものに対する親権代行 ・義務教育を終了した子どもまたは子ども以外の満20歳に満たない者の児童自立生活援助の実施 【令和3年度実績】 上記例外規定に該当し、支援を継続した児童数 16名 9 子どもの権利擁護 (1)一時保護所内における取組み 1 一時保護所第三者委員の設置 弁護士等を一時保護所第三者委員として設置した。 委員は定期的に一時保護所へ訪問し、子どもたちの様子を確認するとともに、必要に応じて面談し、意見や要望を聞き取り、その内容は適切に児童相談所等へ伝達するとともに、対応経過と結果について確認している。 【活動実績】 3年度 活動回数12回 子どもからの相談県巣(延べ人数)19件(延べ9人) 【分類別件数】 3年度 生活上での意見・要望 1件 児童相談所への意見・要望 7件 入所者間における人間関係 3件 健康・体調 2件 家族に関すること 2件 その他 444件 2 その他の取組み 入所者等からの苦情や要望の適切な解決を図るための体制を構築するとともに、一時保護所へ入所した際の初回面接時に、一時保護所のしおりを使って一人ひとりの子どもの権利が保障されることを一時保護所職員から説明しているほか、子どもが誰にも見られずに、自身の意見を、第三者委員、人権擁護機関へ相談をすることができる意見箱の設置、入所している子どもたちによる会議の開催(毎週)や職員による子どもの意見を聴く会の実施(毎月)など、一時保護所内における子どもの権利の保障に努めている。 (2)一時保護所の外部評価等の実施 一時保護所において子どもの権利が守られている体制であるかを含めた第三者による外部評価は3年に一度の実施を予定しており、前回は令和2年度に実施した。 中間年となる令和3年度は、前回の外部評価と同様の項目について内部評価を実施した。 また、今回の内部評価の実施にあたっては、前回の外部評価での評価結果(下表参照)も踏まえた取組みとして、法令遵守、職員規範、職員倫理等に関するセルフチェックを一時保護所の全職員で実施し、業務の確認及び振返りを合わせて行い、組織としての、法・規範・倫理に対する意識の向上に取り組んだ。 2年度(外部評価) 評価結果(できていないとなった項目) 「全職員に対して、守るべき法・規範・倫理などの理解が深まるように取り組んでいる」についてできていないと評価を受けた。 3年度(内部評価) 対応 外部評価結果も踏まえ、一時保護所職員セルフチェックを実施し、全職員が業務の振返りをするとともに、法・規範・倫理について再認識する取組みを行った。 (3)措置された子どもにかかる取組み 1 児童福祉審議会措置部会 児童福祉審議会は児童相談所開設に伴い、児童福祉法、世田谷区児童福祉審議会条例を根拠に、区の児童福祉に関する調査審議を行う合議制の機関として設置するもの。 本審議会において設置された措置部会は、子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の措置と一致しない場合などに、児童相談所から諮問を受け審議し、その結果を答申する機関であり、原則として毎月実施することとしている。 委員は6名で学識経験者や弁護士、医師など幅広い分野から構成され、専門性を活かした審議を実施している。 【年度別実績】 2年度 開催回数10回 審議件数12件 報告件数8件 3年度 開催回数11回 審議件数10件 報告件数6件 ※1 審議事項 部会から意見具申や助言を受けるもの(子どもまたはその保護者の意向が児童相談所の援助方針と一致しない事例、児童福祉法第28条に基づく施設入所等措置の申立または同措置の更新の申立を行う事例等) ※2 報告事項 児童虐待防止法に基づく出頭要求等の実施状況や過去に部会から意見具申または助言を受けた事案に対する、その後の援助経過の報告など。 2 被措置児童等虐待対応 児童福祉法第33条の14の規定により、被措置児童等虐待に係る通告、届出がされた場合、速やかに、当該被措置児童等の状況の把握、虐待事実の確認等を行うこととされており、区としては施設等検査・指導担当所管において実施する。 事実確認の結果等については、児童福祉法第33条の15の規定により児童福祉審議会へ報告するとともに、同法第33条の16及び同法施行規則第36条の30の規定により、毎年度、被措置児童等虐待の状況、被措置児童等虐待があった場合に講じた措置等を公表する。 【令和3年度被措置児童等虐待状況】 令和3年度では、被措置児童等虐待通告を2件受理し、そのうち1件について、虐待認定した。 (単位:件) 令和3年度被措置児童等虐待状況の表 【被措置児童等虐待該当事例の内容】 通告受理時期 令和3年10月 通告者 本児措置元児童相談所 被措置児童等の状況 性別 女 年齢階級 小学生 ※他の児童相談所において措置した児童 被措置児童等虐待の類型 身体的虐待 被措置児童等虐待に対して 区が講じた措置 ・通告受理後、区として当該里親からの聞き取り等、事実関係について確認するための調査を行った。 ・事実確認の結果について児童福祉審議会措置部会に報告を行ったうえで、当該里親の認定及び登録を消除した。 ※本児については、措置元児童相談所において、当該事案を把握した段階で一時保護(当該里親への委託は停止) 施設等の種別 里親等 【再発防止に向けた区の取組み】 令和3年10月〜12月にかけて、区児童相談所が措置しているすべての社会的養護の下で養育されている児童の養育状況の点検を行った。 また他の児童相談所の児童を受託している区内の里親についても、他児相や里親支援専門相談員と連携し、養育状況は把握しており、いずれも被措置児童等虐待にあたる事案はないことを確認した。 本事例を通して、こうした事案の発生を未然に防止し、児童にとって最善の養育を提供していくためには、里親の「社会的養護」や「児童虐待」への基本的な認識、関係機関と連携して共に児童を支援していくという視点に対する理解を深めていくことの必要性が、あらためて課題として明らかになった。 これを踏まえ、次のような取組みを進める。 ・里親希望者のアセスメントや、里親制度の理解を深めてもらうために行っているフォスタリング機関による認定前のインテーク面接を、これまでの1回から2回に増やし、里親の強みや課題を把握するとともに、里親希望者が「社会的養護の意義」等の基本的な認識について理解が深められるようにする。 (令和4年3月実施) ・令和5年度からのフォスタリング業務の包括的委託にあたっては、「社会的養護の意義」等について、より一層の理解を促すための研修等のさらなる充実を図るとともに、里親が孤立することなく、早期に適切な支援や指導につなげることができるよう、里親にとって相談がしやすく、かつ相談内容を関係機関が迅速に情報共有を図ることのできる里親の相談支援体制の構築に向け取り組む。 ・里親委託されている児童を含めた子どもの権利擁護(意見表明支援)のあり方について、法改正の動向に即して今後検討を進める。 (4)せたホッとを活用した権利擁護 一時保護や措置された子どもが、児童相談所が行った措置に対する不服・不満がある場合や、施設入所者同士の人権侵害、入所施設等の処遇不満、改善要望などがあった場合は、児童相談所や当該施設等において対応することを基本とするほか、せたがやホッと子どもサポート(以下、「せたホッと」という。)へ相談等できるよう、「一時保護所のしおり」や「子どもの権利ノート※」を用いて、せたホッとの制度や連絡方法を周知した。 子どもからの意見がせたホッとへ寄せられた際には、せたホッととも連携しながら、その内容に応じて必要な改善を図る等の対応を行っている。 ※子どもの権利ノート ・措置された子どもに対して、施設や里親のもとで生活する際の権利が分かりやすく記載された「子どもの権利ノート」を児童相談所の児童福祉司が説明しながら配布している。 また、この権利ノートには施設外部の相談窓口の連絡先やせたホッと宛のはがきを同封することにより、子どもが権利侵害を感じた際に適切に相談できる仕組みとしている。 10 人材育成 (1)人材育成計画 区児童相談所では、継続的に人材育成に取り組むこととし、「世田谷区児童相談所の人材育成研修計画」を作成し、児童福祉司、児童心理司、一時保護所職員の経験年数及び職層に応じた目標を掲げている。 また、新任・横転者については、所内研修を実施し、児童相談所業務の基礎を学んでいる。 実態に応じた知識や技術を習得できるよう、職員のアンケート結果や各SV(係長)の意見、業務内容を踏まえ、年度ごとに研修項目を見直している。 (2)研修内容 1 外部研修等派遣研修 職員が職務遂行に関し、研修課題をもって児童相談業務に関する外部研修、学会等に参加し、その成果を、自己の職務及び職場に反映させることを通じ、職員の資質の向上を図っている。 2 外部講師による研修 日頃の業務の中で必要とされる知識、技法について、医学的、心理的等専門的見地から学び、実践に役立てることを目的としている。 3 サインズ・オブ・セーフティ・アプローチ研修 児童虐待対応の際、家族の強みに焦点をあてることで、家族が主体となり、児童相談所と家族が協働して安全なプランを考え、家族再統合や親子関係の再構築等を目指すためのソーシャルワークを学ぶ。 実践的、かつ継続的、組織的に取り組んでいくことができるよう、月1回の実践リーダー研修と年4回の全体研修を実施している。 4 その他 児童相談所として企画・立案している研修のほか、児童相談支援課が企画している「子ども家庭支援センター・児童相談所職員研修」や特別区が企画している「児童相談所関連研修」等、より多くの研修に参加し、知識や技術の習得を目指している。 (3)OJT研修 新任・横転者職員の支援体制として、児童相談所勤務経験のある職員を中心に技術指導を実施し、各SV(係長)が全体の把握や経験者職員も含めた指導を行っているが、その他にOJT担当職員を置いている。 区が実施している「新規採用職員のOJT」に加え、児童相談所の業務内容に合わせて、「担当職務」、「コミュニケーション」、「スキルアップ」、「健康や生活習慣」の4項目について、OJT担当職員と新任職員で一緒に目標を設定し、3か月ごとに振り返りを実施している。 この体制は、技術指導とは別に、新任職員の不安や負担を軽減する仕組みとしてのメンター的な役割を担っている。 1年目のみでなく、3年程度はOJT担当職員が見守り、エンパワメントすることで、新任職員が自分の成長を継続的、客観的に捉え、今度はその職員がOJT担当職員となり新任職員を支える立場になっていくことを目指している。 【令和3年度所内研修実績一覧】 ※SV=スーパーバイザー(係長) ※網掛け部分は、令和3年度に新設した項目 令和3年度世田谷区児童相談所新任・横転者研修(内部講師)の表 所内研修(外部講師)の表 外部(派遣)研修の表 11 児童相談所と地域の関わり (1)世田谷区要保護児童支援協議会の取組み 1 全区協議会 区全域に関する要保護児童等の支援の課題について検討するとともに、関係機関等の円滑な連携を確保するための環境整備並びに区民などへの普及啓発を行った。 なお、本会は区子ども・若者部が主催している。 【令和3年度開催実績】 2回(世田谷区DV防止ネットワーク代表者会議と共同開催) 令和3年度開催実績の表 2 地域協議会 地域における要保護児童等の支援の課題を検討するとともに、各地域の課題解決に向けて、関係機関等の連携・協力体制の確保を図った。 なお、本会は各地域の子ども家庭支援センターが主催している。 【令和3年度開催実績】 計5回 令和3年度開催実績の表 3 進行会議(合同会議と同時開催) 各地域で毎月ケースの進行管理を実施。 子ども家庭支援センター、児童相談所、児童相談支援課が参加する。 【令和3年度開催実績】 計60回 令和3年度開催実績の表 (2)各関係機関との連携状況 1 子ども本人への普及啓発にかかる連携 要保護児童支援協議会における児童相談所及び児童虐待通告ダイヤルの周知のほか、特に子ども本人を対象とし、児童相談所の存在や、虐待を受けた時の連絡先について、分かりやすいカード等を直接配付するなど、区立小学校、中学校をはじめとする関係機関と連携して普及啓発に取り組んでいる。 【令和3年度実績】 ・児童虐待通告ダイヤル・せたがや子どもテレフォンPRカードの配付 配布先:区内全ての公立小中学校 2 警察との連携 児童虐待対応においては、関係機関が緊密に連携して情報を共有し、早期発見、早期対処していくことが必要であることから、児童の安全確保を目的に世田谷区と警視庁生活安全部少年育成課は「児童虐待対応の連携強化に関する協定書」を締結し、両者が保有する児童虐待事案の情報共有や意見交換会の実施など、必要な連携を図っている。 【協定書の主な内容】 ・児童虐待事案にかかる情報共有 (身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、家庭復帰事案、転居事案など) ・意見交換会の実施(代表者意見交換会、実務者意見交換会) ・要保護児童対策地域協議会における連携の促進 ・普及啓発活動の推進 など 【令和3年度実績】 ・児童虐待事案にかかる情報共有 世田谷区から警察への情報共有 世田谷区から警察への情報共有の表 警察から世田谷区への情報共有 警察から世田谷区への情報共有の表 ・意見交換会 代表者意見交換会 令和3年10月29日 世田谷区が、東京都と警視庁が開催する「児童相談所と警察との連絡会議」に参画することにより、相互の意思疎通と理解を図っている。 実務者意見交換会 令和3年12月17日 世田谷区と世田谷区内各警察署が意見交換会を開催し、相互の意思疎通と理解を図っている。 ※新型コロナウイルス感染症の影響により、1回のみの実施 その他(警視庁と特別区児童相談所の実務者連絡会) 令和3年10月21日 警視庁と児童相談所を開設している特別区が意見交換会を開催し、相互の意思疎通と理解を図っている。 3 せたホッととの連携 世田谷区に在住・在学・在勤の子どもの権利を守り、救済する機関であるせたホッとでは、子どもから様々な相談を受け付けている。 その中でも児童虐待と疑われる相談案件がせたホッとに入った場合は、児童相談所へ通告または、情報提供をしてもらい、解決に向けて連携した対応を行っている。 4 その他、関係機関が主催する研修講師派遣を通した連携 区内の子育て支援機関等が主催する各研修会に児童相談所職員が講師として赴き、児童相談所の開設や、新しい区の児童虐待対応について等の説明を行っている。 【令和3年度実績】 14件 第3 統計資料