資料6(別紙) 1 ヤングケアラー支援者ヒアリング調査結果 1調査概要 (1)調査目的 本来大人が担うと想定されるような家事や家族の世話などを日常的に行っているヤングケアラーが、適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会を得られるようにするとともに、子どもが介護・世話をしている家族等を必要な支援につなげるための施策検討に向け、令和4年5月〜6月にヤングケアラーに関する実態調査を実施した。 その調査結果に加え、支援者側の視点や現場のニーズを把握し、実情に即した支援体制を構築することを目的として、ヒアリング調査を実施した。 (2)調査期間 令和4年10月〜令和5年1月 (3)調査方法 子ども・若者部子ども家庭課職員による面談または電話聞き取りにて実施 (4)調査対象 支援対象としている子どもが関わることが想定される以下の機関のうち全30か所とした。 ただし、区内すべての支援機関ではない。 1 教育関係機関 区立小学校(4校)、区立中学校(4校)、都立高校(1校)スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー ※スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーは複数人にヒアリングを行ったが、それぞれ1か所とカウント 2 子ども関係機関 児童館(3か所)、せたホッと 3 若者関係機関 メルクマールせたがや 青少年交流センター(1か所) 4 行政機関 子ども家庭支援センター(5か所) 児童相談所 あんしんすこやかセンター(1か所) 5 高齢福祉関係機関 居宅介護支援事業所(2か所) 6 障害福祉関係機関 ぽーと・相談支援事業所(1か所) 居宅介護・重度訪問介護事業所(1か所) 7 生活困窮者支援機関 ぷらっとホーム世田谷 8 地域活動団体 子ども食堂(1か所) 2 主な調査項目 (1)ヤングケアラーを認識したきっかけ (2)職場内での情報共有 (3)他機関との連携 (4)支援内容 (5)支援にあたって難しかったこと (6)あればよいと思う支援 3 調査結果 (1)ヤングケアラーを認識したきっかけ 〇子どもに身近な関係機関では、子どもの普段の様子やふとした会話の中から、ヤングケアラーであることを認識する。 〇不登校や引きこもり、貧困などに関する相談から、子どもがヤングケアラーであることを認識する。 〇ヘルパー業務などで家庭に入った際、子どもが世話をしている場面に遭遇したことにより認識する。 〇子ども家庭支援センターや社会福祉協議会からの紹介で認識する。 〇子ども自身がヤングケアラーであることを自覚して相談したことにより把握できたケースは少ない。 <各ヒアリング先での状況> ・不登校の子どもと関わる中で、家事や家族の世話を担っていることで学校に来られない日があることが分かった。(教育関係機関) ・保健室での何気ない会話から、家庭の課題や子どもがヤングケアラーであることが分かった。(教育関係機関) ・スクールカウンセラーによる全員面接の事前アンケートで「楽しくない」との回答があり、面接で確認したところ、家事を担っていることが分かった。(教育関係機関) ・来館時に疲れて寝てしまう様子が見られ、話を聞いたところ、夜中まで家族の世話を担っていることがわかった。(子ども関係機関) ・子ども家庭支援センターからヤングケアラーである子どもの居場所として紹介され、見守りを行った。(子ども関係機関) ・家事や家族の介護による負担から、本人が自ら相談に来たことで認識した。(若者関係機関) ・親が行政手続きのために来所した際の様子が気にかかり、アセスメントを行ったところ、子どもがヤングケアラーであることがわかった。(行政機関) ・ケアマネジャーが家庭に訪問した際、子どもが家族の介護を担っている様子が見受けられた。(高齢福祉関係機関) ・障害児が通所施設から帰宅したときに、きょうだいが受け入れをしていることがよくある。(障害福祉関係機関) ・ヘルパ―業務の中で、子どもが母の世話をしている場面を日常的にみた。(障害福祉関係機関) ・生活困窮から貸付の相談に来た際、子どもが家事や家族の介護を日常的に担っていることが分かった。(生活困窮者支援機関) ・社会福祉協議会からヤングケアラーの子どもを紹介された。(地域活動団体) (2)職場内での情報共有 〇職場内での定例会議、終礼などで対応を協議する。 〇気になる子どもに関する個別ケース記録をつけ、情報共有する。 〇職場の同僚・上司・専門員などに個別に相談する。 〇情報共有に留まり、支援につなぐまでの検討に至らないケースもあった。 <各ヒアリング先での状況> ・校内委員会で事例を共有する。(教育関連機関) ・定例の事例検討会で共有し、対応を検討する。(教育関連機関) ・日誌や個別ケース記録をつけ、職員間での共有を図る。(子ども関係機関) ・ミーティングで共有し、円滑に他機関へつなぐため、各自が持っている情報を出し合い、協議する。(若者関係機関) ・事業所内で情報共有し、対応を協議する。(高齢福祉関係機関) ・担当内で事例を共有、対応協議し、該当の担当へつなぐ。(生活困窮者支援機関) (3)他機関との連携 〇子ども家庭支援センターや児童相談所につなぐ。 〇子どもの所属する別の機関や地域の方(青少年委員など)と情報共有し、双方で見守りを行う。 〇身近な行政機関に対応を相談する。 〇必要な支援が受けられる機関につなげ、同行支援を行う。 〇家族に知られたくないという理由で、子どもが行政機関との連携を拒否するケースがあった。 〇家族で世話をすることが本人や家族の意向と考え、他機関へはつながなかった。 〇家族が拒否したため、他機関へつなぐことができなかった。 〇過去に子ども家庭支援センターや児童相談所とつながりのあるケースが多かった。 <各ヒアリング先での状況> ・過去に児童相談所に一時保護された経緯があったため、児童相談所に連絡し、連携して対応した。(教育関係機関) ・家族に怒られるため知られたくないという子どもの意向を尊重し、家族には内緒で児童相談所と定期的な面談を行った。(教育関係機関) ・子どもが世話をしている家族を説得し、医療機関につなげた。(教育関係機関) ・地域活動団体と情報共有し、地域でも見守りを行った。(子ども関係機関) ・本人が希望する支援を聞き取り、必要な支援が受けられる機関に職員が同行支援した。(若者関係機関) ・ケアマネジャーと地域の民生委員をつなぐため、地域ケア会議を開いて情報共有を図った。(行政機関) ・受けられる可能性のあるサービスがあったが、家族が拒否したため、つなぐことができなかった。(行政機関) ・当時ヤングケアラーという言葉がまだ広く知られておらず、家族が世話をすることが本人や家族の意向と捉え、他機関へはつながなかった。(高齢福祉関係機関) ・家庭環境に関する懸念があった場合は、区の担当課に対応を協議している。(高齢福祉関係機関) (4)支援内容 〇普段から声かけをすることで子どもとの信頼関係を築き、本人の気持ちや家族のことを話すことができるよう、継続的に見守りを行う。 〇子どもに必要な学習支援や居場所支援のサービスにつなげる。 〇利用可能な制度や福祉サービスを紹介し、支援機関につなげる。 〇子どもの負担軽減につながるよう、サービスを調整する。 〇必要な手続き等に同行支援する。 <各ヒアリング先での状況> ・心理職が定期的に面談し、子どもの心のケアを行った。(教育関係機関) ・子どもが世話をしている家族を説得し、行政機関や医療機関につなげた。(教育関係機関) ・学習面での遅れや、居場所に課題のある子どもを、学習支援や居場所支援のサービスにつなげた。(教育関係機関) ・子どもとの信頼関係を築き、自分の気持ちや家庭のことを話すことができるよう、日常的なコミュニケーションを取り、見守る。(子ども関係機関) ・障害者手帳取得や生活保護申請など、行政手続きに同行支援する。(若者関係機関) ・子どもの居場所づくりとして居場所支援事業につなぎ、本人の心の回復を図った。(行政機関) ・子どもの負担軽減のため、デイサービスの追加やショートステイの提案を行い、利用につながった。(高齢福祉関係機関) ・本人や家族から進学や就職の相談があった場合は、情報を集めたり助言をしたりしている。(障害福祉関係機関) ・必要なサービスにつなげたあとも定期的に連絡を取り、状況を確認する。(生活困窮者支援機関) ・子どもの必要な物資を提供するほか、子どもにとっての居場所となるよう配慮しながら見守りを行った。(地域活動団体) (5)支援にあたって難しかったこと 〇家族のことは家族がやって当たり前という認識があり、支援を受け入れてもらうことができない。 〇行政機関につなげたり、福祉サービスを入れたりすることについて、家族の理解を得ることができない。 〇家庭に介入されることに対する拒否感がある。 〇本人または家族が、ヤングケアラーであることを認識していない。 〇本人または家族が、困っていることや必要なことを求めることができない。 〇本人が本当に困って支援を必要としているのか、判断が難しい。 〇複合的な課題を抱えた家庭に対する多機関連携に課題がある。 <各ヒアリング先での状況> ・家族の世話を家族がするのは当然という価値観があり、必要な支援につなぐことが難しかった。(教育関係機関) ・家族が福祉につながることを求めておらず、必要な支援を紹介しても拒否されてしまった。(教育関係機関) ・家族に外部との接触に対する拒否感があり、家庭に介入することが難しかった。(教育関係機関) ・ヤングケアラー本人とケア対象者の課題に対する担当部署が異なるため、家族全体の課題として捉え、対応することが難しい。(若者関係機関) ・本人と家族が共依存関係になっており、お互いの自立を妨げている。(行政機関) ・本人または家族に障害があり、困っていることや必要なことを自ら発信するのが難しい。(行政機関) ・金銭的負担により、追加のサービスを受け入れてもらえない。(高齢福祉関係機関) ・ヤングケアラーに気がついた時に、どこに相談すればよいのか分からなかった。(高齢福祉関係機関) ・両親も世話をすることができるが、子どもが両親に気を遣って自らケアを担っている場合がある。(障害福祉関係機関) ・課題のある家庭で育った親が人を頼ることができず、子どもに連鎖してしまうことが多い。(生活困窮者支援機関) (6)あればよいと思う支援 〇子どもの学習支援や居場所支援 〇子どもの意向だけでも利用可能なサービス 〇子どものケア負担を軽減できるサービス 〇SNSを活用した相談支援 〇本人や家族に渡すことができる啓発物 <各ヒアリング先での状況> ・学習面や居場所に課題のある子どもに対する、学習支援や居場所支援が充実してほしい。(教育関係機関) ・不登校の子どもに対する登校支援のサービスがあるとよい。(教育関係機関) ・保護者の了解を得なくても子どもの意向だけで利用できるサービスがあるとよい。(教育関係機関) ・サービス導入にあたって、経済的支援があるとよい。(若者関係機関) ・中学生、高校生くらいになると、SNSのほうが話しやすい子どももいる。(若者関係機関) ・本人に気づきを促すための冊子などがあると案内しやすい。(高齢福祉関係機関) ・障害者とその家族の多くにとって、「ヤングケアラーの問題」は高齢介護のイメ―ジが強く、自分たちとは関係のないことだと思っているため、普及啓発できるパンフレットなどがあるとよい。(障害福祉関係機関) ・ヤングケアラーの負担を軽減するホームヘルパー制度があるとよい。(生活困窮者支援機関) 4 調査結果分析 〇子どもの普段の様子やふとした会話、不登校や引きこもり、貧困などに関する相談などから、ヤングケアラーであることを認識するケースが多く、本人や家族がヤングケアラーであることを自覚し、自ら相談をするケースは少ないことから、ヤングケアラーや子どもの人権について、区民、事業者等に向け広く普及啓発を行い、周囲の大人の気づきの感度の向上を図る必要がある。 また、子どもの声を拾いやすくするため、当事者の心情に十分配慮しながら子ども向けの普及啓発を推進し、ヤングケアラー本人の気づきを促す必要がある。 〇ヤングケアラーの背景には、子ども・教育・高齢・障害・生活福祉などの複合的な課題があることから、各分野の支援者がヤングケアラー支援の視点を持ち、より円滑な横断的連携を行う必要がある。 〇家事や家族の世話により、自分の時間や居場所を持つことが難しく、学習面や居場所に課題を抱えている子どもが多いことから、子どもの学習支援や居場所支援の充実を図る必要がある。 〇子どものライフステージや家族の状況により、必要な支援が変化することから、周囲の大人の継続的な見守りにより、ヤングケアラーとの定常的な接点を持ち、身近で相談できる環境づくりを行う必要がある。