資料6 令和5年2月14日 子ども・若者部子ども家庭課 ヤングケアラー支援に関する検討状況の報告について 1 主旨 本来大人が担うと想定されるような家事や家族の世話などを日常的に行っているヤングケアラーが、適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会を得られるようにするとともに、子どもが介護・世話をしている家族等を必要な支援につなげるための施策検討に向け、令和4年5月〜6月にヤングケアラーに関する実態調査を実施した。 その調査結果に加え、支援者側の視点や現場のニーズを把握し、実情に即した支援体制を構築するため、支援者へのヒアリング調査を実施した。 ついては、ヒアリング調査結果及びヤングケアラー支援の取組みに関するこれまでの検討状況を取りまとめたので報告する。 2 令和4年度の取組み (1)ヤングケアラーに関する実態調査 区立小学校4〜6年生の児童、区立中学校全生徒及び高校生世代の区民を対象として、アンケート調査を実施 ≪令和4年5月〜6月≫ (2)ヤングケアラー支援者ヒアリング調査 学校関係者、子ども・若者関係機関、区ケースワーカー、福祉サービス事業者、ヤングケアラー支援団体等へヒアリング調査を実施 ≪令和4年10月〜令和5年1月≫ (3)個別研修・講演等 区立小中学校教職員、スクールカウンセラー、青少年地区委員、民生委員・児童委員、福祉サービス事業者、子ども家庭支援センター職員をそれぞれ対象とした個別研修や講演を実施 ≪令和4年7月〜令和5年3月≫ (4)ヤングケアラー・若者ケアラー支援シンポジウム 学識経験者による基調講演と、元ヤングケアラー、福祉サービス従事者及び子ども家庭支援課職員によるパネルディスカッションを実施 ≪令和4年12月≫ (5)ヤングケアラー支援連絡会・勉強会の開催 子ども・教育・高齢・障害・生活福祉の各関係機関の管理職で構成されるヤングケアラー支援連絡会及び実務担当である係長級で構成される勉強会を各3回開催し、支援の仕組みづくりを検討 ≪令和4年5月〜令和5年1月≫ 3 ヤングケアラー支援者ヒアリング調査 (1)調査期間 令和4年10月〜令和5年1月 (2)調査方法 子ども・若者部子ども家庭課職員による面談または電話聞き取りにて実施 (3)調査対象 支援対象としている子どもが関わることが想定される以下の機関のうち全30か所とした。 ただし、区内すべての支援機関ではない。 1 教育関係機関(区立小学校、区立中学校、都立高校、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー) 2 子ども関係機関(児童館、せたホッと) 3 若者関係機関(メルクマールせたがや、青少年交流センター) 4 行政機関(子ども家庭支援センター、児童相談所、あんしんすこやかセンター) 5 高齢福祉関係機関(居宅介護支援事業所) 6 障害福祉関係機関(ぽーと・相談支援事業所、居宅介護・重度訪問介護事業所) 7 生活困窮者支援機関(ぷらっとホーム世田谷) 8 地域活動団体(子ども食堂) (4)主な調査項目及び調査結果【別紙参照】 1 ヤングケアラーを認識したきっかけ ・子どもに身近な関係機関では、子どもの普段の様子やふとした会話の中から、ヤングケアラーであることを認識する。 ・不登校や引きこもり、貧困などに関する相談から、子どもがヤングケアラーであることを認識する。 ・ヘルパー業務などで家庭に入った際、子どもが世話をしている場面に遭遇したことにより認識する。 ・子ども家庭支援センターや社会福祉協議会からの紹介で認識する。 ・子ども自身がヤングケアラーであることを自覚して相談したことにより把握できたケースは少ない。 2 職場内での情報共有 ・職場内での定例会議、終礼などで対応を協議する。 ・気になる子どもに関する個別ケース記録をつけ、情報共有する。 ・職場の同僚・上司・専門員などに個別に相談する。 ・情報共有に留まり、支援につなぐまでの検討に至らないケースもあった。 3 他機関との連携 ・子ども家庭支援センターや児童相談所につなぐ。 ・子どもの所属する別の機関や地域の方(青少年委員など)と情報共有し、双方で見守りを行う。 ・身近な行政機関に対応を相談する。 ・必要な支援が受けられる機関につなげ、同行支援を行う。 ・家族に知られたくないという理由で、子どもが行政機関との連携を拒否するケースがあった。 ・家族で世話をすることが本人や家族の意向と考え、他機関へはつながなかった。 ・家族が拒否したため、他機関へつなぐことができなかった。 ・過去に子ども家庭支援センターや児童相談所とつながりのあるケースが多かった。 4 支援内容 ・普段から声かけをすることで子どもとの信頼関係を築き、本人の気持ちや家族のことを話すことができるよう、継続的に見守りを行う。 ・子どもに必要な学習支援や居場所支援のサービスにつなげる。 ・利用可能な制度や福祉サービスを紹介し、支援機関につなげる。 ・子どもの負担軽減につながるよう、サービスを調整する。 ・必要な手続き等に同行支援する。 5 支援にあたって難しかったこと ・家族のことは家族がやって当たり前という認識があり、支援を受け入れてもらうことができない。 ・行政機関につなげたり、福祉サービスを入れたりすることについて、家族の理解を得ることができない。 ・家庭に介入されることに対する拒否感がある。 ・本人または家族が、ヤングケアラーであることを認識していない。 ・本人または家族が、困っていることや必要なことを求めることができない。 ・本人が本当に困って支援を必要としているのか、判断が難しい。 ・複合的な課題を抱えた家庭に対する多機関連携に課題がある。 6 あればよいと思う支援 ・子どもの学習支援や居場所支援 ・子どもの意向だけでも利用可能なサービス ・子どものケア負担を軽減できるサービス ・SNSを活用した相談支援 ・本人や家族に渡すことができる啓発物 4 主な課題と取組みの方向性 ヤングケアラーの子どもの権利が尊重され、健やかな成長と教育の機会が享受できる環境を整備するとともに、子ども本人とその家族を必要な支援につなげるよう、実態調査及びヒアリング調査を通じて見えた以下の主な課題に対して、取組みの方向性に基づき支援を推進する。 また、今後策定する各種計画にも位置付け、全庁横断的に取り組む。 (1)主な課題 ・ヤングケアラーの早期発見における課題 世話をしていることを相談したことがない子どもが6割半ば〜約7割に上り、その理由として「相談するほどの悩みではない」、「家族以外の人に相談するような悩みではない」との回答が多かったことから、子どもが自ら声を上げることが難しい現状がある。 ・多機関、多職種連携における課題 ヤングケアラーの抱える課題は、子ども・教育・高齢・障害・生活福祉と多岐に渡るため、各分野の支援者がヤングケアラー支援の視点を持ち、横断的に連携する意識を強化する必要がある。 ・子どもの学習面や居場所における課題 家事や家族の世話により、自分の時間や居場所を持つことが難しく、学習面や居場所に課題を抱えている子どもが多い。 ・子どもの未来を見据えた継続的支援における課題 子どものライフステージや家族の状況に合わせ、必要な支援が変化する。 (2)取組みの方向性 ・ヤングケアラーの早期発見における課題への取組み ヤングケアラーを早期発見し、必要な支援につなげるため、ヤングケアラーと子どもの人権について、区民、事業者等に向け広く普及啓発を行い、周囲の大人の気づきの感度の向上を図る。併せて、当事者の心情に十分配慮しながら子ども向けの普及啓発を推進し、ヤングケアラー本人の気づきを促すことにより、相談につながりやすい環境づくりを行う。 ・多機関、多職種連携における課題への取組み 支援マニュアルにより、ヤングケアラーに関する支援体制やサービスの全体像を見える化し、横断的連携の強化を図る。 ・子どもの学習面や居場所における課題への取組み すべての子どもの教育機会の確保や、子どもが安心して過ごせる居場所の環境整備に向け、学習支援や居場所支援の充実を図る。 ・子どもの未来を見据えた継続的支援における課題への取組み 周囲の大人の継続的な見守りにより、ヤングケアラーとの定常的な接点を持ち、身近で相談できる環境づくりを行う。 5 令和5年度の主な取組み (1)ヤングケアラー普及啓発子ども向けハンドブック等の作成【新規】 区立小学校4〜6年生、区立中学校全生徒に配布するほか、区内私立・都立・国立学校(小・中・高)、大学及び子ども・若者関係機関等に配布する。 令和5年度予算案 2,461千円(特定財源 1,640千円) (2)ヤングケアラー支援者向け個別講座、研修等【拡充】 ヤングケアラー支援に関わる学校関係者や区民、事業者等に対し、普及啓発と理解促進を図るための個別講座や研修等を実施する。 令和5年度予算案 305千円(特定財源 203千円) (3)ヤングケアラー支援マニュアルの作成【新規】 ヤングケアラー支援にかかる横断的連携を強化するため、区の支援体制やサービスの全体像を見える化する。 令和5年度予算案 146千円 (4)ヤングケアラー・若者ケアラー支援シンポジウムの開催 区民及び支援者等の理解を深め、周囲の大人の気づきの感度を上げることにより、ヤングケアラーが支援につながる仕組みづくりを行う(令和5年12月予定)。 令和5年度予算案 599千円(特定財源 398千円) 6 今後のスケジュール(予定) 令和5年4月以降 ヤングケアラー支援者向け個別講座、研修等の実施 9月 ヤングケアラー普及啓発子ども向けハンドブック作成 12月 ヤングケアラー支援マニュアル作成 ヤングケアラー・若者ケアラー支援シンポジウム