資料5 福祉保健常任委員会資料 令和5年2月10日 子ども・若者部 児童相談支援課 児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討状況について 1 主旨 令和4年6月に成立した児童福祉法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)を踏まえた児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する取組みについて、この間の世田谷区児童福祉審議会臨時部会での検討状況を報告する。 2 児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討について (1)検討の経緯 ・児童相談所が関わる子どもの権利擁護については、児童相談所等が行政処分(一時保護、施設の入所措置等)を行う場合において子どもの意見・意向を把握してそれを勘案して対応するなど、権利擁護が図られる環境が整備され、子どもにとって最善の利益となる対応が成されるよう、令和4年6月に改正法が成立したところである。 (令和6年4月より施行) ・区では、今回の法改正への対応について、令和4年8月に児童福祉審議会の下に臨時部会(児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討部会)(以下「臨時部会」という。)を設置し検討を行ってきた。 (2)改正法の概要(臨時部会での主な検討事項) 1 子どもの権利擁護に係る環境整備(改正法第11条) 都道府県知事又は児童相談所長が行う意見聴取等や入所措置等の措置、児童福祉施設等における処遇について、都道府県の児童福祉審議会等による調査審議・意見具申その他の方法により、子どもの権利擁護に係る環境を整備することを、都道府県等の業務とする。 2 児童相談所や児童福祉施設における意見聴取等(改正法第33条の3の3) 都道府県知事又は児童相談所長が行う在宅指導、里親委託、施設入所等の措置、指定発達支援医療機関への委託、一時保護の決定時等に意見聴取等を実施することとする。 3 意見表明等支援事業の体制整備(改正法第6条の3、第33条の6の2) 都道府県等は、子どもの意見表明等を支援するための事業(意見表明等支援事業)を制度に位置づけ、その体制整備に努めることとする。 意見表明等支援事業 児童相談所長等の意見聴取等の義務の対象となっている子ども等を対象とし、子どもの福祉に関し知識又は経験を有する者(意見表明等支援員)が、意見聴取等により意見又は意向を把握するとともに、それを勘案して児童相談所、都道府県その他関係機関との連絡調整等を行う。 ※ 上記いずれも「都道府県知事」は「世田谷区長」、「都道府県」は「世田谷区」と読み替える。 (3)臨時部会における検討体制及び経過等 1 検討体制(臨時部会委員) (五十音順、敬称略) 1 弁護士 池田 清貴 2 東洋英和女学院大学 名誉教授 石渡 和実 3 日本女子大学 名誉教授 鵜養 美昭 4 NPO法人東京養育家庭の会 理事長 能登 和子 5 児童養護施設東京家庭学校 校長 松田 雄年 6 NPO法人子どもアドボカシーをすすめる会とうきょう 代表 森 時尾 7 NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク 理事長 吉田 恒雄 2 検討経過 第1回8月22日(月曜日) ・子どもの権利擁護に係る取組みの現状について ・児童相談所における意見聴取等措置について 第2回9月19日(月曜日)・関係者※へのヒアリング・振り返り 第3回10月26日(水曜日)・せたホッとへのヒアリング・振り返り 第4回11月22日(火曜日) ・一時保護所第三者委員へのヒアリング・振り返り ・子どもの権利擁護機関の所掌イメージ 第5回12月26日(月曜日) ・世田谷区の子どもの権利擁護機関における役割の整理 (児童相談所の措置等に対する不満について) ・その他の主な子どもの意見について ・意見表明等支援事業について ※ 養育家庭(里親)、児童養護施設職員、児童養護施設経験者、養育家庭(里親)経験者(元里子) 3 臨時部会審議期間の延長について ・ 臨時部会での検討にあたっては、これまで子どもの権利擁護を担っている既存の機関や社会的養護の当事者からのヒアリングを丁寧に進めていく必要があることから、3回に分けて各関係機関や当事者からのヒアリングを実施してきた。 ・ また、国においても改正児童福祉法を踏まえた取組みについて検討が進められており、今後、具体の方策等が示される予定とされている。 さらに、東京都においても、子どもの意見表明を支援する仕組みの在り方に関する検討を行うため、東京都児童福祉審議会専門部会を設置し議論が行われており、令和4年12月に検討を終えたところである。 ・ 当初、臨時部会での審議は令和4年12月に終了することを予定していたが、こうした動きも踏まえながら、世田谷区としてのあるべき姿について十分に議論を深めながら取りまとめる必要があることから、審議期間を令和5年6月まで延長することとした。 4 中間報告書のとりまとめ(別紙のとおり) 令和5年1月11日開催の世田谷区児童福祉審議会本委員会において、「世田谷区児童福祉審議会臨時部会(児童相談所が関わる子どもの権利擁護に関する検討部会)中間報告書(検討経過のとりまとめ)(以下「中間報告書」という。)」を提出し、この間の臨時部会で検討した内容と主な意見を取りまとめ、現時点においての目指すべき方向性を示したところである。 3 中間報告書で示された主な今後の方向性(検討経過のとりまとめ) (1)子どもの権利擁護の環境整備に関すること(「2(2)改正法の概要1」関係)児童相談所が関わる子どもの権利擁護の環境整備(権利擁護システム全体像の整理)では、主に一時保護や施設入所措置などの児童相談所の措置等に対する不満や不服がある場合の対応について、既存の児童福祉審議会措置部会(以下「措置部会」という。)とせたホッととの役割を整理しつつ、今後の方向性を検討した。 (参考)措置部会に係る現状 〇 現在措置部会においては、児童相談所が児童福祉法第27条第1項第1号から第3号まで若しくは同条第2項の措置※を採る場合、またはこれらの措置を解除、停止若しくは変更する場合であって、子どもの意向と当該措置が一致しないとき、児童相談所からの諮問を受け、措置の適否を答申しているが、一時保護の決定や解除時における子どもとの意向不一致や、措置決定後、子どもの意向が一致しなくなった場合には措置部会への諮問は行なわれていない。 ※ 児童福祉法第27条各項に基づく措置について(一部抜粋) 【第1項第1号】訓戒・誓約措置 【同第2号】児童福祉司指導 等 【同第3号】ファミリーホーム委託、里親委託、児童福祉施設入所措置 【第2項】指定発達支援医療機関委託 〇 児童相談所の措置等に対する不満や不服への対応について 今後の方向性 (措置部会について) ・ 現在措置部会の諮問対象とされていない、一時保護の決定・解除時における子どもとの意向不一致や、措置等決定後の経過の中で子どもの意向が児童相談所の援助方針と一致しなくなった場合には、児童相談所は措置部会から意見を聴くこととし、援助内容が子どもの権利擁護のために適切であることを都度担保する仕組みを構築する。 ・ 子どもが保護や措置を求めているにもかかわらず、児童相談所がそうした対応を行わない場合などに、子ども本人または今後検討する意見表明等支援員を通じた措置部会への申立て制度や、必要に応じて措置部会へ出席し、直接子ども本人等が措置部会へ意見を表明できる仕組みを構築する。 (せたホッとについて) ・ せたホッとに児童相談所の措置等への不満に関する相談があった場合、せたホッとは子どもの意見に寄り添いながら相談に応じ、子どもへの必要な助言や支援、児童相談所との調整等を行う。 (その他) ・ せたホッとや措置部会の存在、それぞれの役割及び相談・申立てができること等について、一時保護された子どもや措置された子どもに分かりやすく説明するなど、子どもの権利擁護機関の普及啓発に取り組む。 ・ 措置等の決定そのものを取り消す機能は行政不服審査法に基づく審査請求により対応するものとする。 (2)児童相談所が行う意見聴取等措置に関すること(「2(2)改正法の概要2」関係) 現在、児童相談所では、改正児童福祉法に規定されている意見聴取等措置を行うタイミングにおいて、すべて子どもの意見を確認しているところである。 引き続き、適切なタイミングで子どもの意見を聴取するとともに、今後、具体的な聴取の方法や意見の取扱い等が国の指針等で示された際には、適切に対応するものとする。 (3)意見表明等支援事業に関すること(「2(2)改正法の概要3」関係) 意見表明等支援事業については、この間の議論や関係者からのヒアリングを踏まえ、現時点で見えてきた今後の方向性を整理した。 〇 意見表明等支援事業の実施形態について 今後の方向性 ・ 児童相談所とは別の組織(子ども・若者部など)が意見表明等支援事業を所管する。 ・ 意見表明等支援事業は外部委託し、受託事業者が意見表明等支援員を確保する。 〇 意見表明等支援員の役割 今後の方向性 ・ 意見表明等支援員はアウトリーチを中心に活動し、日常生活から子どもに寄り添い、考えを整理して意見を形成することの支援、子どもが意見を表明することの支援、意見の代弁をする。 ・ 子どもの意見を伝えた機関の対応結果を子どもにフィードバックする役割も担うが、意見表明等支援員は子どもの側に立つ役割であり、子どもを説得する立場にはならない。 ・ 第三者委員制度と異なり、施設等のサービスの質の向上のために自発的に意見を述べる役割は負わない。 〇 意見表明等支援員の担い手 今後の方向性 ・ 意見表明等支援員は年齢や資格のみを要件にするのではなく、必要な専門性を備えていることを要件とする。 ・ 意見表明等支援員は施設等の状況や子どもが置かれている状況を把握しながら業務を行う。 〇 意見表明等支援事業の実施方法 今後の方向性 ・ 遊びや勉強、食事などを一緒にしながら、信頼関係を構築していく。 ・ 業務内容に守秘義務を盛り込み、心理的な安全を確保する。 ・ 意見表明等支援員は複数名が対応できる体制を確保し、スーパーバイズ機能を設けることとする。 ・ 継続的に関わりながら信頼関係を築けるよう、実施頻度について検討する。 〇 事業実施時の留意点 今後の方向性 ・ 独立性を確保しつつも、関係機関との連携が必要になるため、関係機関に事前説明を行い理解を得る。 また、関係機関との連携を深めるための仕組みについて検討する。 ・ せたホッとや第三者委員制度など、既存の制度があることに留意し、事業の主旨や意見表明等支援員の位置づけを子どもが理解できるよう、丁寧に説明する。 ・ 子どもが親しみやすい制度となるよう、名称や周知方法を検討する。 4 スケジュール(予定) 令和5年2月〜6月 児童福祉審議会臨時部会での検討 令和5年6月 児童福祉審議会本委員会(検討結果の最終報告) 令和5年7月 福祉保健常任委員会(検討結果の最終報告) 令和5年7月以降 報告内容を踏まえた取組みの実施に向けた検討 令和6年4月 改正法施行