資料5 令和4年11月8日 子ども・若者部子ども家庭課 ヤングケアラーに関する実態調査の結果について 1 主旨 ヤングケアラーとは、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされている。 ヤングケアラーは、勉強や遊びに対する時間がとれず、本来守られるべき子どもの権利が侵害されている可能性がある。 区では、子どもが適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会を得られるようにするとともに、子どもが介護・世話をしている家族等を必要な支援につなげるための施策立案に必要な基礎資料を得ることを目的に、区立小学校4〜6年生、区立中学校1〜3年生及び高校生世代に対し、ヤングケアラーに関する実態調査を行った。 ついては、アンケート調査結果を取りまとめたので報告する。 2 アンケート調査の実施概要 (1)主な調査項目 国が令和2年度及び令和3年度に実施したヤングケアラーの実態に関する調査の調査項目に、一部独自項目を加え実施した。 具体的には以下のとおり。 主な項目 学年、性別、家族構成、普段の生活の状況、お世話を必要とする家族の有無、お世話している家族、お世話の内容、お世話の頻度、お世話による生活への影響等 (2)調査対象 1 区立小学校に在籍する4〜6年生の児童 2 区立中学校に在籍する全生徒 3 令和4年5月17日時点で区内に住民登録のある高校生世代の区民 (平成16年4月2日から平成19年4月1日までの間に生まれた者) (3)調査対象数 1 小学生 19,039名 2 中学生 11,750名 3 高校生世代 20,232名 (4)調査方法 1 小学生及び中学生 各学校を通じて、児童・生徒に調査依頼文を配布。 児童・生徒は区から貸与されているタブレット等で、依頼文中の二次元コードを読み込み、ウェブ上のフォームから回答。 2 高校生世代 郵送により調査依頼文を送付。 調査対象者は自身のスマートフォン、タブレット等で依頼文中の二次元コードを読み込み、ウェブ上のフォームから回答。 (5)有効回答数・率 1 小学生 5,430件(28.5%) 2 中学生 2,626件(22.3%) 3 高校生世代 2,581件(12.8%) (6)調査期間 令和4年5月27日〜6月19日 3 アンケート調査結果 別紙1 概要版のとおり 4 アンケート調査結果から見えた主な状況と検討すべき課題について (1)世話をしている家族についての結果から ・家族の世話をしていると回答した子どもは、回答者のうち、小学生で17.7%、中学生で7.7%、高校生世代で4.9%であった。 ・ 小学生の割合が中学生や高校生世代に比べて高くなっているが、小学生へのアンケートではヤングケアラーに関する実態調査であることは伏せて実施し、「お世話」の説明としては「家事」、「きょうだいのお世話やほいく園への送りむかえ」などの例示にとどめたため、日常生活における「お手伝い」と「お世話」が一定程度混在して現れていると考えられる。 ・ 特に低年齢の子どもは、自分が育った環境が当たり前と思い、自分の置かれている状況を客観的に判断することが難しいため、周囲の大人が広く見守る中で、子どもの小さな変化を敏感に捉え、心理的な配慮をしながら本人へ働き掛けていく必要がある。 (2)学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援についての結果から ・学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援については、全世代において「特にない」との回答が、回答者の半数を超え、最も高い割合であった。 ・一方、学習面でのサポートや、自分が自由に過ごせる時間や場所がほしいと回答する割合が回答者の1割以上あったため、学習支援や居場所につながる支援が必要である。 (3)希望する相談方法についての結果から ・「自分のことについて話を聞いてほしい」、「家族のお世話について相談にのってほしい」と回答した人が希望する相談方法は、全世代において、「直接会って」と回答した割合が高かった。 ・このことから、本人の身近な所で相談ができる環境をつくることが必要である。 (4)世話について感じていることの結果から ・世話について感じていることとして、「やりがいを感じている」、「楽しい」との肯定的な回答の割合が高かった。 ・このことから、世話をすることが本人のやりがいになっている場合もあり、本人の心情や家庭等の背景に十分配慮した見守りや働きかけが重要である。 (5)世話についての相談経験がない人が相談しない理由についての結果から ・世話についての相談経験がない対象者において、相談したことがない理由としては、全世代において「家族以外の人に相談するような悩みではないから」、「自分のことをかわいそうと思われたり変に思われたりしたくないから」と回答した割合が一定程度みられた。 ・このことから、当事者が相談をしやすい気運を醸成するため、ヤングケアラーと子どもの人権について、当事者を含め、広く普及啓発を行う必要がある。 5 今後のスケジュール(予定) 令和4年11月以降 調査結果を受けた詳細分析及び支援の仕組みづくりの検討 支援者側へのヒアリング調査 12月 ヤングケアラー・若者ケアラー支援シンポジウム 令和5年2月 福祉保健常任委員会(検討状況のまとめ) 令和5年度 新たな普及啓発の実施(当事者・支援者・一般向け) 国・都の検討を踏まえた区の支援マニュアル策定 世田谷区 ヤングケアラーに関する実態調査概要版 調査の概要 ○調査目的 ヤングケアラーとは、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされている。 ヤングケアラーは、勉強や遊びに対する時間がとれず、本来守られるべき子どもの権利が侵害されている可能性がある。 区では、子どもが適切な養育を受け、健やかな成長と教育の機会を得られるようにするとともに、子どもが介護・世話をしている家族等を必要な支援につなげるための施策立案に必要な基礎資料を得ることを目的に、本調査を実施した。 また、本調査を通じて、子どもたちに子どもの権利やヤングケアラーに関する啓発を行い、気づきを促すことも目的としている。 ○調査構成 1 小学生の生活についてのアンケート調査 2 中学生の生活についてのアンケート調査(ヤングケアラーに関する実態調査) 3 高校生世代の生活についてのアンケート調査(ヤングケアラーに関する実態調査) ○調査期間 令和4年5月27日(金曜日)〜6月19日(日曜日) ○調査設計 1 小学生調査 調査対象 区立小学校在籍児童4〜6年生全員 対象人数19,039人 対象学校61校 調査方法 各学校を通じて、児童・生徒に調査依頼文を配布。 児童・生徒は区から貸与されているタブレット等で、依頼文中の二次元コードを読み込み、ウェブ上のフォームから回答。 回収率28.5%(5,430人) 2 中学生調査 調査対象 区立中学校在籍生徒1〜3年生全員 対象人数11,750人 対象学校29校 調査方法 小学生調査と同様 回収率22.3%(2,626人) 3 高校生世代調査 調査対象 区内に住民登録のある高校生世代の区民(平成16年4月2日から平成19年4月1日までの間に生まれた者) 対象人数20,232人 調査方法 郵送により調査依頼文を送付。 調査対象者は自身のスマートフォン、タブレット等で依頼文中の二次元コードを読み込み、ウェブ上のフォームから回答。 回収率12.8%(2,581人) 小学生 自分がお世話をしている家族について 自分がお世話をしている家族が「いる」と回答した人は、17.7%。 世話を必要としている家族は「きょうだい」が最も高く、次いで「お母さん」、「お父さん」となっている。 世話の理由が「わからない」の割合が高く、おばあさんでは「高齢」、きょうだいでは「幼い」が最も高くなっている。 世話の内容は全体的に「家事」が高く、きょうだいでは「見守り」が最も高くなっている。 中学生 自分がお世話をしている家族について 自分がお世話をしている家族が「いる」と回答した人は、7.7%。 世話を必要としている家族は「きょうだい」が最も高く、次いで「お母さん」、「お父さん」となっている。 世話の理由は、お母さん、お父さんでは「その他」が最も高く、おばあさん、おじいさんでは「高齢」、きょうだいでは「幼い」が最も高くなっている。 世話の内容は、お母さん、お父さんでは「家事」が最も高く、おばあさん、おじいさん、きょうだいでは「見守り」が最も高くなっている。 高校生世代 自分がお世話をしている家族について 自分がお世話をしている家族が「いる」と回答した人は、4.9% 世話を必要としている家族は「きょうだい」が最も高く、次いで「母親」、「父親」となっている。 世話の理由は、母親では「その他」、父親では「わからない」が最も高く、祖母、祖父では「高齢」、きょうだいでは「幼い」が最も高くなっている。 世話の内容は、母親、父親、きょうだいでは「家事」が最も高く、祖母、祖父では「見守り」が最も高くなっている。 小学生 世話をしている頻度、生活への影響について 世話をしている頻度はお母さん、お父さん、きょうだいでは「ほとんど毎日する」が最も高く、おばあさん、その他のあなたのほごしゃでは「毎日ではないが、よくする」、おじいさんでは「ときどきする」が最も高くなっている。 世話をすることによる生活への影響は「とくにない」が77.6%と最も高くなっている。 それ以外では、「ねむる時間が足りない」、「宿題など勉強する時間がない」、「友だちと遊べないことがある」が、ほかと比べて高くなっている。 中学生 世話をしている頻度、世話に費やす時間、生活への影響について 世話をしている頻度はお母さん、お父さん、おばあさん、きょうだいで、「ほぼ毎日」が最も高くなっている。 平日1日あたりの世話に費やす時間は全体的に「1時間〜2時間未満」が高くなっている。 休日1日あたりの世話に費やす時間は全体的に「1時間〜2時間未満」が高くなっている。 世話をすることによる生活への影響は「特にない」が64.2%と最も高く、次いで「勉強する時間がない」、「友達と遊べないことがある」、「すいみんが十分に取れない」となっている。 高校生世代 世話をしている頻度、世話に費やす時間、生活への影響について 世話をしている頻度は母親、父親、祖母、きょうだいで、「ほぼ毎日」が最も高くなっている。 平日1日あたりの世話に費やす時間は全体的に「1時間〜2時間未満」が高くなっている。 休日1日あたりの世話に費やす時間は全体的に「1時間〜2時間未満」が高くなっており、世話をしている時間は平日より長い傾向にある。 世話をすることによる生活への影響は「特にない」が65.9%と最も高く、次いで「勉強する時間がない」、「友達と遊べないことがある」となっている。 小学生 世話について感じていること、支援してほしいこと、希望する相談方法について 世話をすることについて感じていることは「楽しい」が最も高く、次いで「やりがいを感じている」、「つかれる」、「とくに何も感じていない」となっている。 学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援は「とくにない」が約6割と最も高く、次いで「自由に使える時間がほしい」、「自分が自由にすごせる場所がほしい」、「勉強を教えてほしい」となっている。 希望する相談方法は「自分のことについて話を聞いてほしい」、「家族のお世話について相談にのってほしい」と回答した人に、希望する相談方法を聞いたところ、「会って話す」が64.6%と最も高く、次いで「電子メール」が20.2%、「電話」が19.2%となっている。 希望する相談方法(複数回答) 中学生 世話について感じていること、支援してほしいこと、希望する相談方法について 世話をすることについて感じていることは「楽しい」が最も高く、次いで「やりがいを感じている」、「特に何も感じていない」となっている。 学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援は「特にない」が5割半ばと最も高く、次いで「学校の勉強や受験勉強など学習のサポートをしてほしい」、「自由に使える時間がほしい」となっている。 希望する相談方法は「自分のいまの状況について話を聞いてほしい」、「家族のお世話について相談にのってほしい」と回答した人に、希望する相談方法を聞いたところ、「直接会って」が52.2%と最も高く、次いで「電子メール」が39.1%、「SNS」が21.7%となっている。 高校生世代 世話について感じていること、支援してほしいこと、希望する相談方法について 世話をすることについて感じていることは「特に何も感じていない」が最も高く、次いで「楽しい」、「やりがいを感じている」となっている。 学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援 「特にない」が約5割と最も高く、次いで「自由に使える時間がほしい」、「自由に過ごせる場所がほしい」、「進路や就職など将来の相談にのってほしい」、「家庭への金銭面での支援をしてほしい」となっている。 希望する相談方法は 「自分のいまの状況について話を聞いてほしい」、「家族のお世話について相談にのってほしい」と回答した人に、希望する相談方法を聞いたところ、「直接会って」が50.0%と最も高く、次いで「SNS」が43.8%、「電話」が25.0%となっている。 小学生 世話についての相談経験、相談相手、相談しない理由について 世話について相談した経験のない人は67.3%と6割半ばを超えている。 相談経験のある人の相談相手は、「家族や親せき」が約8割と最も高く、次いで「友だち」、「学校の先生(ほけん室の先生以外)」、「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー」となっている。 相談経験のない人の理由としては、「だれかに相談するほどこまっていないから」が最も高く、次いで「自分のことをかわいそうと思われたり、変に思われたりしたくないから」 、「相談しても何も変わらないと思うから」となっている。 中学生 世話についての相談経験、相談相手、相談しない理由について 世話について相談した経験のない人は72.6%と7割を超えている。 相談経験のある人の相談相手は「家族」が約6割と最も高く、次いで「友達」、「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー」となっている。 相談経験のない人の理由としては、「だれかに相談するほどのなやみではない、または、なやみはないから」が最も高く、次いで「家族以外の人に相談するようななやみではないから」となっている。 高校生世代 世話についての相談経験、相談相手、相談しない理由について 世話について相談した経験のない人は66.7%と6割半ばを超えている。 相談経験のある人の相談相手は「友達」が約6割と最も高く、次いで「家族」、「学校の先生(保健室の先生以外)」、「親戚」、「スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー」となっている。 相談経験のない人の理由としては、「誰かに相談するほどの悩みではない、または、悩みはないから」が最も高く、次いで「家族以外の人に相談するような悩みではないから」となっている。 中学生・高校生世代 ヤングケアラーという言葉の認知度について 中学生は約5割が、高校生世代では6割半ばが「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことがあると回答している。 「ヤングケアラー」という言葉をどこで知ったかには、中学生、高校生世代ともに、「テレビや新聞、ラジオ」が最も高く、次いで「SNSやインターネット」、「学校」となっている。 追加分析1 小学生 世話を必要としている家族の傾向(世話をすることによる生活への影響) 世話を必要としている家族が複数人の場合、ほかと比べて「ねむる時間が足りない」の割合が高くなっている。 世話を必要としている家族が祖父母のみの場合、ほかと比べて「友だちと遊べないことがある」の割合が高くなっている。 追加分析1 中学生 世話を必要としている家族の傾向(世話をすることによる生活への影響) 世話を必要としている家族がきょうだいのみ(上記以外)の場合、ほかと比べて「友達と遊べないことがある」、「勉強する時間がない」、「すいみんが十分に取れない」の割合が高くなっている。 世話を必要としている家族が複数人の場合、ほかと比べて「部活動や習い事が思うようにできない」の割合が高くなっている。 追加分析1 高校生世代 世話を必要としている家族の傾向(世話をすることによる生活への影響) 世話を必要としている家族が複数人の場合、ほかと比べて、「部活動や習い事が思うようにできない」、「勉強する時間がない」の割合が高くなっている。 追加分析2 小学生 世話をしている頻度の傾向(世話をすることについて感じていること) 世話をほとんど毎日する場合、ほかと比べて全体的に回答割合が高く、特に「やりがいを感じている」、「楽しい」の割合が高くなっている。 世話の頻度が低くなるにつれ、「とくに何も感じていない」の割合が高くなっている。 追加分析2 中学生 世話をしている頻度の傾向(世話をすることについて感じていること) 世話の頻度が高くなるにつれ、「体力的につらい」の割合が高くなっている。 世話の頻度が1か月に数日の場合、ほかと比べて「特に何も感じていない」の割合が高くなっている。 追加分析2 高校生世代 世話をしている頻度の傾向(世話をすることについて感じていること) 世話をほぼ毎日する場合、ほかと比べて「体力的につらい」の割合が高くなっている。 世話を週に3〜5日する場合、ほかと比べて「精神的につらい」の割合が高くなっている。 追加分析3 中学生 世話に費やす時間の傾向(世話をすることについて感じていること) 世話に費やす時間が長くなるにつれ、「精神的につらい」の割合が高くなっている。 世話に費やす時間が3〜7時間未満の場合、ほかと比べて「体力的につらい」、「時間のよゆうがない」の割合が高くなっている。 追加分析3 高校生世代 世話に費やす時間の傾向(世話をすることについて感じていること) 世話に費やす時間が3〜7時間未満の場合、3時間未満と比べて「やりがいを感じている」、「体力的につらい」の割合が高くなっている。 追加分析4 小学生 世話をすることについて感じていることの傾向(学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援) もっと遊んだり勉強したりする時間がほしいと感じている場合、ほかと比べて「自分のことについて話を聞いてほしい」、「自由に使える時間がほしい」、「自分が自由にすごせる場所がほしい」、「勉強を教えてほしい」の割合が高くなっている。 追加分析4 中学生 世話をすることについて感じていることの傾向(学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援) やりがいを感じている、楽しい、じゅうじつしていると感じている場合、「特にない」の割合が最も高くなっている。 体力的につらい、精神的につらい、時間のよゆうがないと感じている場合、「自由に使える時間がほしい」、「自分が自由に過ごせる場所がほしい」、「学校の勉強や受験勉強など学習のサポートをしてほしい」の割合が高くなっている。 追加分析4 高校生世代 世話をすることについて感じていることの傾向(学校や大人に助けてほしいこと、必要な支援) 精神的につらいと感じている場合、ほかと比べて「自分のいまの状況について話を聞いてほしい」、「家族のお世話について相談にのってほしい」、「自分が行っているお世話を代わってくれる人やサービスがほしい」、「家庭へ金銭面での支援をしてほしい」の割合が高くなっている。 時間の余裕がないと感じている場合、ほかと比べて「自由に使える時間がほしい」、「自分が自由に過ごせる場所がほしい」の割合が高くなっている。