資料2 令和4年11月8日 保育部保育課 「区立保育園の今後のあり方」に基づく新たな再整備計画について 1 区立保育園再整備に関するこれまでの経緯 区では、子ども子育て会議において、ご意見をいただきながら、平成31年2月に「区立保育園の今後のあり方」を定め、これまでそれに基づき、区立保育園の再整備計画を進めてきた。 「区立保育園の今後のあり方」では、これまでの地域に拠点園を整備するという方針に加え、「各地区ごとに「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割を担う事業を展開する」ことを基本とし、今後は、保育施設の配置状況や未就学児童数から「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割を担える規模、地区内の区立保育園の配置を検討したうえで、概ね築35年以上となる区立保育園の再整備を進める」と定めている。 その考え方に基づき、今回、地区に複数あり、築35以上を超えている区立保育園を対象に保育需要等、様々な条件を検討し、新たな再整備計画を報告するものであることから、すでに決定していた計画を変更するものではない。 2 再整備にあたっての子どもや保護者への事前説明について 今回の区立保育園再整備計画については、本年7月28日の福祉保健常任委員会報告後に再整備対象園の保護者に、再整備計画の概要をまとめたものの周知を行っている。 再整備計画については、在園児に影響がないように移転・統合は5,6年先としているため、保護者から特に反対等の意見は寄せられていない。 また、入園を希望される方向けに「保育のごあんない」では、新たな再整備計画があることを周知するとともに、改築・移設等を予定している保育園には「黒い星マーク」、築45年以上を経過し、今後、老朽化の伴い施設の再整備の対象になる可能性のある保育園には「白い星マーク」を記載しており、配慮している。 今回の計画については、移転・統合等が令和10年度以降となるため、区民の方には今後も継続して、丁寧に周知を続けていくこととする。 3 再整備した後の跡地の活用について 今回報告した園について、移転・統合後の跡地については、グランドビジョンを踏まえ、全て子ども・子育て施策に活用することとしており、今後具体的な検討に入っていく。 4 保育園の統合・集約後の定員の報告について これまで再整備により移転・統合した園については、個別の開設前に定員等を報告している。 今回、令和5年度に開設を予定している区立玉川地域拠点保育園(深沢と奥沢西の統合園)の定員についても、同会議の中で定員数を報告する予定としている。 (参考)新たな再整備対象園の概要の図 (その他) (仮称)玉川地域拠点保育園(奥沢西保育園・深沢保育園の移転・統合) 令和4年7月28日 保育部 「区立保育園の今後のあり方」に基づく新たな再整備計画について 1 主旨 「区立保育園の今後のあり方(平成31年2月5日福祉保健常任委員会報告)」における「今後の区立保育園の再整備の進め方」及び、「今後の保育施策の取り組み状況(令和4年2月1日福祉保健常任委員会報告)」における「今後の区立保育園の再整備計画の方向性」に基づき、「今後の子ども政策の考え方(グランドビジョン)」(以下、「今後の子ども政策の考え方」と言う。)及び世田谷区公共施設等総合管理計画等を踏まえ、新たな再整備計画の対象園を報告する。 2 区立保育園の再整備計画のこれまでの取り組みと再整備の方向性について (1)区立保育園再整備の進捗状況 「区立保育園の今後のあり方」に基づき、これまで8園を4園に統合するとともに、3地域で区立拠点保育園を開設し、現在は、玉川地域拠点保育園の開設に向けて準備を進めており、計10園を5園に統合する予定としている。 (2)区立保育園を取り巻く状況とこれまでの取り組み 令和2年4月に保育待機児童を解消した一方で、民間保育施設の欠員が増加するという新たな課題が生じている。 再整備計画を進めるためには5〜6年という期間が必要なことから、直近の欠員解消のために区立保育園の保育定員弾力化解消や定員調整を行い、保育定員の適正化に取り組んでいる。 また、今般の新型コロナウイルス感染症の影響等により、在宅子育て世帯の孤立化が進んでいることから、区立拠点保育園で開設しているおでかけひろばにおいて、ほっとステイ(理由を問わない一時預かり)を開始するなど在宅子育て支援の拡充を図っている。 更に、民間保育施設の保育の質の維持・向上を図るために、区立拠点保育園が「地域保育ネット」を運営して、地域のネットワーク拠点となり、連携・情報共有を図るとともに、各区立保育園を「サポーター園」として、認証保育所への支援を行うなどの取り組みを進めている。 (3)今後の区立保育園の再整備の方向性について 「今後の保育施策の取り組み状況」(令和4年2月1日福祉保健常任委員会報告)」において、以下の2点を報告した。 1 地区内に複数の区立保育園が配置されている地区(10地区23園)の概ね築年 数が35年を超えている園から選定することを基本とする考え方に基づき、地区内の未就学児童数及び民間保育施設数、人口推計等に基づく保育需要、地区の面積等を勘案しながら、保育待機児童を生じさせないように再整備を進めていく。 2 取り組みにあたり、当該対象園が築65年を迎える令和25年までを目途に進 めることとし、世田谷区公共施設等総合管理計画及び子ども・子育て支援事業計画(調整計画)と整合を図りながら、今後、具体的な計画を順次、策定していく。 なお、今回発表する再整備計画については、既存園舎等を活用して再整備を進めていくこととし、新たな仮設園舎の建設は行わないことを徹底している。 3 「今後の子ども政策の考え方」を踏まえた再整備計画の考え方 「今後の子ども政策の考え方」では、子ども人口の減少にあわせて支援や施設を減らすのではなく、これまでの支援や施設の種別ごとに進めてきた施策を子ども・子育て関連施設全体で必要な施策に組み換え、「子ども・子育て応援都市宣言」をバージョンアップするための施策の構築に取り組む考え方を示している。 そうした中、区立保育園は、園児に限らず広く地域の就学前の子どもと子育て家庭を支援する地域・地区における身近な公共の児童福祉施設として、医療的ケア児の受け入れや一時預かりなど、「就学前の子どもの育ちのセーフティネット」の役割を果たしていくことがより一層求められている。 今後、子育て支援事業や施設の再編・バージョンアップが進められる中、施設の老朽化と今後の保育需要を見据え、計画的に区立保育園の再整備を進め、保育定員の適正化を図るとともに、再整備により生み出される人員、財源を医療的ケア児の受け入れや一時預かりなど子育て支援事業の充実や近隣子育て支援施設とのネットワークの強化、保育現場における多様なニーズへの対応などに機能転換していき、更なる子育て支援の充実へと繋げ、希望する全ての区民が子どもを産み育てることに喜びを感じることができる環境づくりに全力を尽くす。 4 新たな再整備計画の内容 (1)烏山地域拠点保育園の再整備について 区立保育園の地域拠点保育園については、これまで4地域で開設し、烏山地域に拠点保育園を開設することが喫緊の課題となっている。 この度、区立給田幼稚園が、区立幼稚園集約化等計画(案)に伴って、八幡山幼稚園に集約化されることから、令和10年度以降、土地・建物の用途廃止を予定しており、その跡地は、子ども・子育て施策等区の行政需要に合わせ活用することとなっている。 区立幼稚園としての使途は終えるが、「今後の子ども政策の考え方」に基づき、その跡地の一部を活用し、子ども・子育て関連複合施設の機能の一つとして、区立保育園の新園舎を整備し、給田保育園と西之谷保育園を移転・統合し、烏山地域拠点保育園として機能転換を図ることとする。 移転・統合により生じる区立保育園の跡地は、子ども・子育て施策等区の行政需要に合わせて活用を検討していく。 なお、烏山地域拠点保育園については、「今後の子ども政策の考え方」を踏まえ、おでかけひろばの開設及び、新たな医療的ケア児の受け入れの検討等を今後進めていくとともに、開設後は、烏山児童館とも連携・協力し、烏山地域の子育て支援を進めていくこととする。 今後のスケジュール(予定) 令和10年度以降 給田幼稚園を用途廃止し、旧園舎を解体 区立保育園の新園舎改築工事 令和12年度以降 新園舎竣工後、給田保育園を移転 令和13年度以降 西之谷保育園を統合、烏山地域拠点保育園として運営開始 (2)用賀地区及び砧地区の再整備計画について 用賀地区は、用賀保育園・上用賀保育園・ふじみ保育園・用賀保育園分園が4ヶ所あり、用賀保育園を除く3つの園が築40年を超えている。 また、砧地区には大蔵保育園、南大蔵保育園が2カ所あり、特に大蔵保育園は築57年を超えていることから、再整備を進めていく必要がある。 この度、保育待機児童対策として開設した用賀保育園分園を令和10年3月末で閉園することから、閉園後の用賀保育園分園を再整備の用地として活用し、用賀地区及び砧地区における区立保育園の再整備を行っていくこととする。 なお、本計画については、仮設園舎を建てずに既存園舎を活用すること及び、建て替えにあたって、園舎が一時的に移転するため、園児・保護者が少しでも近い園に登園できること等を考慮して、整備手法を検討した。 再整備計画の概要の表 今後のスケジュール(予定) 令和10年度以降 用賀保育園分園を仮設園舎として活用開始 ふじみ保育園に南大蔵保育園児童が移転 南大蔵保育園を用途廃止し、旧園舎を解体 南大蔵保育園の新園舎改築工事 令和12年度以降 新園舎竣工後、仮設園舎から南大蔵保育園に移転 令和13年度以降 大蔵保育園を統合 用賀保育園分園解体工事及び改築工事 令和15年度以降 用賀保育園分園跡新園舎竣工後、上用賀保育園が移転 令和16年度以降 ふじみ保育園を統合 (3)松丘幼稚園跡地を活用した西弦巻保育園・弦巻保育園の移転・統合スケジュールについて 西弦巻保育園・弦巻保育園については、令和2年2月の福祉保健常任委員会において、松丘幼稚園跡地を活用して移転・統合を行うことを報告したが、その後、新型コロナウイルス感染症の影響により、松丘幼稚園が弦巻中学校に合築される時期が延期になったことから、西弦巻・弦巻保育園の移転・統合スケジュールについても延期となっていた。 この度、「区立幼稚園用途転換計画」の見直しにより、松丘幼稚園については、令和8年度以降に桜丘幼稚園に集約化されることとなったため、令和8年度以降、松丘幼稚園の解体・改築工事を進め、令和10年4月以降に西弦巻・弦巻保育園を移転・統合する。 移転・統合により生じる区立保育園の跡地は、子ども・子育て施策や、上馬地区に単独配置されているが、老朽化が進んでいる区立上馬保育園(定員83名(0〜5歳児)築53年)の再整備の仮設園舎としての活用を検討する。 なお、本再整備計画は、詳細スケジュール未定の上で既に周知しているが、令和5年4月に西弦巻保育園の0歳児クラスに入園する児童から影響を与えるため、改めて本年9月以降の入園申込み時や入園承諾時に丁寧な周知と説明を行う。 今後のスケジュール(予定) 令和8年度以降 松丘幼稚園を用途廃止し、旧園舎を解体 区立保育園の新園舎改築工事 令和10年度以降 新園舎竣工後、西弦巻保育園を移転 令和11年度以降 弦巻保育園を統合 (4)奥沢保育園・南奥沢保育園の再整備計画について 奥沢地区は奥沢保育園と南奥沢保育園の2カ所があるが、近年、南奥沢保育園および近隣私立園の欠員が増加していることや、両園とも築年数が50年近くなり建物の老朽化が進んでいること等から、奥沢地区における保育定員の適正化を図る必要性が生じているとともに、再整備を進めていく必要がある。 しかしながら、奥沢地区においては、園舎建て替えに適した区有地等がないため、再整備にあたっては、今後数年かけて、両園(計162名)の定員調整を行い、1園分の定員にしたうえで、令和11年度以降、南奥沢保育園に奥沢保育園を統合する。 南奥沢保育園に統合後、空いた奥沢保育園を改築し、令和13年度以降に、南奥沢保育園から(新)奥沢保育園に移転し、南奥沢保育園は閉園することとする。 移転により生じる南奥沢保育園跡地については、子ども・子育て施策等区の行政需要に合わせて活用を検討していく。 なお、本再整備計画は、令和6年4月に奥沢保育園の0歳児クラスに入園する児童から影響を与えるため、令和5年9月以降の入園申込み時や入園承諾時に丁寧な周知と説明を行う。 今後のスケジュール(予定) 令和11年度以降 南奥沢保育園に移転・統合し、奥沢保育園改築工事開始 令和13年度以降 奥沢保育園新園舎竣工後、奥沢保育園へ移転 令和14年度以降 南奥沢保育園廃止 (5)その他の再整備 今後も地区に複数ある園については、更なる対象園の選定を進め、代替地確保の目処や関係機関等との協議が整った段階で、決定・公表する。 併せて地区に一つしかなく配置が必要な区立保育園についても老朽化が進んでいる園については、再整備を進めていく。 5 再整備により生じる跡地活用について (1)跡地活用とドレミファ保育室の認可移行について (仮称)玉川地域拠点保育園に統合される区立深沢保育園の跡地については、平成30年の保健福祉常任委員会において、ドレミファ保育室(事業者決定済み)の認可移行先として跡地活用すると報告をしていたが、その後、保育待機児童の解消や就学前人口の減少等の社会情勢の変化により、特に深沢地区では認可保育施設等の空きが目立つようになり、移行後の運営が厳しいと予想される状況になった。 一方、九品仏地区において、区立奥沢西保育園が閉園することや、隣接する奥沢地区において、将来的に区立奥沢保育園と南奥沢保育園を統合する再整備計画を検討している状況がある。 また、区立奥沢西保育園のある九品仏地区については、児童館の未整備地区でもある。 これらを踏まえ、区立奥沢西保育園跡地については、令和6年度以降に私立等々力保育園の仮設園舎としての活用を終えた後、奥沢西保育園を解体し、児童館とドレミファ保育室の新たな移行先として、40〜50名程度の私立認可保育園の複合施設として整備を進めることとし、両者が連携しながら、九品仏地区の地域子育て支援の一層の充実を図っていく。 なお、複合施設整備にあたっては、官民複合となるが、敷地面積上、敷地分割することが困難なため、区で躯体全体を整備したうえで、保育園部分について、保育事業者に貸し付けを行い、保育事業者が内装改修工事を行うこととする。 今後のスケジュール(予定) 令和6年度以降 私立等々力保育園の仮設園舎としての活用終了し、旧園舎を解体 私立保育園の新園舎(児童館との複合施設)改築工事 令和10年度以降 ドレミファ保育室の認可移行 (2)区立深沢保育園跡地活用について 区立深沢保育園跡地については、深沢地区に一つしかない区立新町保育園(定員84名・築56年)が老朽化が進んでいることから、仮設園舎としての活用を検討する。 なお、新町保育園の再整備にあたっては、当該園の抱える経緯を踏まえた配慮をする。 6 (仮称)玉川地域拠点保育園の開設時期延期及び名称について (1)(仮称)玉川地域拠点保育園の開設時期の延期について (仮称)区立玉川地域拠点保育園(等々力4−19)については、区立奥沢西保育園と深沢保育園を移転・統合し、玉川地域の拠点保育園として令和5年4月開設を目指して現在、改築工事を行っているところであるが、この度、工期延伸することが判明し、開設時期を令和5年5月以降に延期せざるを得ない状況となった。 そのため、当該園の保護者及び令和5年4月入園申し込み希望者には、工期延伸により開設延期となったことを別途周知し、正式な開設時期が決定した段階で改めて周知することとする。 (2)(仮称)玉川地域拠点保育園の名称について 統合2園とは別の住所地である等々力に移転するため、新しい園名を決定する必要がある。 園名を決めるにあたって、統合2園の保護者にアンケートを取った結果、希望数の最も多かった「等々力中央保育園」を新名称とし、今後、区立保育園条例の一部改正を行うこととする。 7 その他 私立認可保育施設の空き状況改善に向けた管外入園申込み(転入予定者含む)の希望園の制限について (1)主旨 私立認可保育施設等の運営支援の方策として、区外在住者の入園申込みについて、下記のとおり、希望園を私立認可保育施設等に限定した変更を行うこととする。 (2)区外在住者の申込み制限の現状と主な変更内容 1 現状 施設種別については特に制限をかけておらず、区立、私立等どちらについても選択可能。 2 変更後 時期に関わらず、選択できる施設種別を私立保育園等(私立保育園、私立認定こども園、地域型保育事業)に限定する。 なお、区内転入予定者が区民となった後の申込みは区立も希望することができる。 (3)変更月 令和4年10月入園選考 (今年度版の「保育のごあんない」の発行に合わせる) 8 今後のスケジュール(予定) 令和4年7月 ふじみ保育園・上用賀保育園 南大蔵保育園・大蔵保育園 奥沢保育園・南奥沢保育園 給田保育園・西之谷保育園の移転・統合計画の公表 奥沢西保育園・深沢保育園の移転・統合時期延期の公表 (対象園の保護者への周知) 9月「保育のごあんない」にて周知 別紙2 区立保育園の今後のあり方 未来に向けた区立保育園のあり方と「再整備方針」の見直し 概要版 (平成31年2月) 1 未来に向けた区立保育園のあり方と「再整備方針」の見直しにあたって 平成 24 年 2 月の「今後の保育施策推進のための保育施設再整備方針(以下、「再整備方針」という)」の策定以降、未就学児の人口や保育施設数の増加、国の保育施策の動向の変化等、区の保育施策や区立保 育園を取り巻く社会情勢は、多岐に渡って、大きく変化している。現在、「再整備方針」に基づき 10 園を 5 園(うち 4 園は拠点園)に整備する計画を進めているが、老朽化の進む区立保育園(築35年以上)を 計画的に役割が担える施設に更新するには、代替地(保育施設整備の適地)や閉園時の転園先の確保が課題となっており、再整備の手法についても、一部、検討の必要性が生じている。 今後、社会情勢等の変化を踏まえた公設の児童福祉施設としての事業を区立保育園が重点的に展開するには、再整備を計画的に実施し、限られた財源や人員を効率的かつ効果的に活用しなければならない。 幼児教育の無償化や児童相談所の移管を見据え、これまでの区議会や昨年度の子ども・子育て会議部会における議論(参考:「区立保育園のあり方検討部会報告書(平成 30 年 3 月策定)」)を踏まえ、「再整備 方針」を見直すこととし、地域における区立保育園の事業展開や具体的な事業内容、区立保育園の再整備の進め方について、「区立保育園の今後のあり方」として新たに定める。 2 保育施策の取組みにおける課題 (1)保育施設の急増による保育の質の維持・向上 保育施設への巡回指導相談を実施してきたが、保育施設が急増しており、今後、児童相談所の区への移管に伴い対象施設が大幅に増加することも見込まれる。 すべての保育施設と連携・協力し、区全体で「保育の質ガイドライン」に基づく保育の質の維持・向上に努める必要がある。 (2)子育て家庭への支援の充実 子育ての悩みや不安を抱え込んでしまう家庭が増加しており、子育て家庭を支える周囲の環境を整える必要がある。 地域の実情や利用者ニーズの現状を的確に把握した上で、既存事業をより必要とされる事業へ転換する等により、子育て家庭を支え、安心して子育てしやすい環境づくりを進める必要がある。 (3)児童虐待や子どもの貧困などへの対応 虐待を未然に防ぐための予防的な取組みや子育て力の回復を支援する取組みを行うために、専門性や対応力を更に高め、行政機関としての組織力を発揮し、関係機関と協働・連携しながら、子育て支援を実施する必要がある。 (4)配慮や医療的ケアを必要とする児童への対応 特別な配慮や医療的ケアを必要とする児童の受け入れを関係機関と協力して進め、そのノウハウを他の保育施設と共有し広めることで、保護者の就労を支える体制づくりを推進する必要がある。 (5)保育所保育指針の改定を踏まえた乳幼児教育の充実 平成30年4月の「保育所保育指針」の改定により、保育所保育に「幼児教育」が積極的に位置づけられ、より質の高い教育・保育を提供しなければならない。 関係機関がこれまで以上に連携を図りながら、地域における「子どもの育ち」について、一体的に取り組む必要がある。 (6)子どもの育ちにおける保育のセーフティネットの体制づくり 緊急保育や代替保育、地震や水害等の自然災害により一時的に保育が必要となった子どもへの臨時的な預かり等、すべての子どもの安全と健やかな育ちを保障するという区が果たすべき公的責任において、区立保育園が「保育のセーフティネット」の仕組みを検討する必要がある。 (7)区立保育園の老朽化への対応と計画的な再整備の実施 築35年を超える区立保育園は、40園中33園(82%)となっており、引き続き、老朽化が進む区立保育園(築35年以上)を計画的に再整備し、効率的かつ効果的な手法で着実に保育施策を推進する必要がある。 しかしながら、適切な代替地(保育施設整備の適地)や閉園時の転園先の確保が課題であり、再整備対象園の絞込みがなかなか進まない現状がある。 3 未来に向けた区立保育園のあり方 (1)未来に向けた区立保育園のあり方と方向性 保育施策の取組みにおける課題を踏まえ、「再整備方針」の「区立保育園の役割」を見直し、「未来に向けた区立保育園のあり方」と 「3つの方向性」を定める。 未来に向けた区立保育園のあり方 区立保育園は、保育所保育指針に基づき養護と教育を一体的に行いつつ、地域における身近な公設の児童福祉施設(保育所)として、「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割を行政の責任のもと担い、すべての子どもの安全と健やかな育ちを保障する。 方向性1 保育の質の維持・向上に取り組み、保育・幼児教育の充実を図る。 方向性2 支援が必要な子どもや家庭へのサポートをより一層、推進する。 方向性3 在宅子育て家庭への支援を充実させることで、子育てしやすい地域づくりに取り組む。 (2)「未来に向けた区立保育園のあり方」の実現に向けて 考え方 1 すべての子どもの安全と健やかな育ちを保障するためには、保育施設がネットワークで繋がり、子育て家庭への支援や保育の質の維持・向上に取り組むことが重要であり、さらに「予防型施策」に重点を置き、効果的に保育施策を展開する必要がある。 2 区立保育園が公的なセーフティネットとしての事業を継続的に展開するには、保育施設の指導、支援、認可を行う自治体として、保育施設を直接運営し、保育スキルや専門性の向上を図りながら、保育士を育成しなければならない。 また、区立保育園の職員は、区の施策を中心となって担うべき財産であり、今後は、これまで以上に、区立保育園の職員一人ひとりが公的な児童福祉施設の役割をしっかり認識しながら取り組む必要がある。 3 「保育所保育指針」の改定により、保育所保育に幼児教育が積極的に位置づけられ、乳幼児教育をさらに充実するには、これまで以上に幼稚園・保育所・認定こども園・小学校等の関係機関が連携を図りながら、地域における子どもの育ちに取り組む必要がある。 4 高齢者や障害者、子育て家庭等が、住みなれた地域で安心して暮らし続けることができるよう、包括的・継続的なケアを提供する仕組みとして地域包括ケアシステムの構築を推進しており、地区単位で相談支援体制の充実を進めている。 5 未就学児童の増加、待機児対策による民間保育施設の急増や地域によっては民間保育施設が多く存在している等、「地域」において行政に求められる取組みは多岐にわたり、複雑化、多様化している。 実現に向けた施策展開 予防型施策により重点をおき、すべての子ども一人ひとりの育ちをきめ細やかに支えるため、これまでの「地域」単位の考え方に加え、最も身近な行政単位である「地区」ごとに、公的なセーフティネットとしての役割を担う施策を展開する。 未来に向けた区立保育園のあり方と方向性に基づき、地域・地区において公的なセーフティネットとしての役割を担うための施策を展開し、きめ細やかな事業を実施する。 地区・地域における区立保育園の事業展開 「地域」ごとに保育施設間のネットワークの中心としての役割や在宅子育て支援を担う「拠点園」を整備し、「地区」ごとに「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割を担う事業を展開することを基本とする。 保育施設の配置状況や未就学児童数から「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割が担える規模、また区立保育園を設置していない地区への支援方法等を勘案し、地区内の区立保育園の配置を検討した上で、概ね築35年以上となる区立保育園の再整備を進める。 4 未来に向けた区立保育園が果たすべき役割(具体的な取組み) 今後も、子ども計画に定める「子どもがいきいきわくわく育つまち」の実現のため、区内のすべての保育施設が協力し、一体となって保育施策に取り組む。 そのために、区立保育園は、「6つの役割」を果たすため、以下の事業を展開する。 区立保育園が果たすべき6つの役割 (1)保育の質の維持・向上 地域・地区の中心となり、すべての保育施設と連携・協力しながら、「保育の質ガイドライン」に基づき、地域全体の保育の質の維持・向上に努める。 具体的な取り組み 1 地区における保育施設への支援体制の強化 2 「地域保育ネット(保育施設間のネットワーク)」の活動強化 (2)より質の高い教育・保育の提供 地域・地区における教育と保育の連携を進め、より質の高い教育・保育が提供できるよう、柔軟さを持ちながら、先進的に取り組む。 具体的な取り組み 1 質の高い乳幼児教育のための研究(新教育センターとの連携) 2 「幼児教育・保育推進ビジョン」の推進 3 体系的なキャリア形成による保育の実践 4 保育士人材確保とスキルアップ機会の提供 (3)支援が必要な家庭の早期発見及び対応 児童虐待の予防や早期発見・対応のため専門性や対応力を更に高め、関係機関と協働・連携しながら、早期の対応と継続的な見守り・支援を行う。 具体的な取り組み 1 緊急保育・一時預かり保育の充実 2 ソーシャルワーク機能の充実 (4)配慮を必要とする子どもやその保護者への支援 障害や疾病等により、特別な配慮や医療的ケアを必要とする児童の受け入れを関係機関と協力して進め、そのノウハウを区内の保育施設と共有し、広めることで、保護者の就労を支える体制づくりを進める。 具体的な取り組み 1 障害のある子どもや配慮が必要な子どもへの支援 2 指定園における医療的ケアが必要な子どもの受け入れ (5)地域子育て支援機能の充実 地域・地区の実情や子育てに関するニーズの把握に努め、子育てに関する高い専門性やノウハウを在宅子育て家庭も含めた子育て家庭全体に提供することで、地域で安心して子育てしやすい環境づくりを進める。 具体的な取り組み1 ひろば事業の実施 2 子育て支援(既存事業)の見直し及び充実 (6)災害時や緊急時におけるセーフティネット 特別な事情により保育を必要とする場合の緊急保育の拡充や罹災時の応急保育、他の保育施設で保育が困難になった際の支援体制づくりを行う。 具体的な取組み 1 災害時の応急保育の実施 2 緊急事態への対応及び支援 3 緊急保育の拡充(再掲) 5 今後の区立保育園の再整備の進め方 (1) 再整備対象園の選定と整備手法 従前の「再整備方針」を踏まえ、今後、老朽化した区立保育園を計画的に施設更新しながら、未来に向けた区立保育園のあり方と方向性を踏まえた保育施策を推進するために、新たな再整備の手法を定める。 地区内における保育施設の配置状況や未就学児童数から「子どもの育ちのセーフティネット」としての役割が担える規模や区立保育園がない地区への支援方法等を総合的に勘案し、地区内の区立保育園の配置を検討した上で、概ね築35年以上となる区立保育園を対象に、再整備対象園を選定することを基本とする。 今後は、従前の「再整備方針」で定めた整備手法に加え、地区内において区立保育園の配置が必要と判断される場合は、「世田谷区公共施設等総合管理計画」に基づく既存建物の長寿命化改修(※)を検討し、「内外部大規模改修方式」による整備を行う。 その際は、将来経費を含めた費用対効果を検証した上で、より質の高い教育・保育を提供できるよう保育環境や機能等の向上を図る。 ただし、長寿命化改修を検討した結果、躯体等の状況により、困難と判断される場合は、築65年を目処に改築を検討する(他機能との合築による複合化も検討)。 ※築65年での改築または長寿命化改修を検討し(築45年次の中長期保全改修工事時に躯体調査を実施し、長寿命化に伴う物理的データの取得を行い、その後の社会的ニーズを含め判断)、可能な建物は長寿命化改修により、想定使用年限を越えて活用していく。 リノベーションなど機能向上を図る際には、将来経費予測を含めた費用対効果を適正に見極め、可否を判断する。 (2) 区立保育園の運営にかかる財源や人員の機能転換 区立保育園においても、保育待機児童の解消に向けて、約400人の定員弾力化に取り組んできたが、今後、区立保育園の役割として、公的な「子どもの育ちのセーフティネット」の事業を重点的に展開するためには、区立 保育園の計画的な再整備の実施や弾力化定員の見直し、保育定員の調整等により財源、人員を生み出し、社会情勢や区民ニーズに照らしながら、必要な体制整備を図っていかなければならない。 しかしながら、依然として待機児童の解消には至っていない現状もあり、平成32年(2020 年)4月までの待機児童解消に向け、区立保育園も含めて21,584人分の保育総定員の確保を計画しているため、当面はこの計 画に基づき取組みながら、次期「子ども・子育て支援事業計画」を策定する中で、地域ごとの保育需要等をより細かく分析し、区立保育園の弾力化定員の見直しや保育定員の調整を検討する。 (3) 計画的な個別計画の検討と決定 新たな個別の再整備計画については、再整備対象園の選定における基本的な考え方に基づき、5年毎の「子ども・子育て支援事業計画」の策定の中で、保育施設の総定員数や民間保育施設等の整備計画、再整備対象園の定員 等との整合性を図りながら検討し、決定する。再整備による移転・統合・閉園は保育環境の変化が伴うため、原則として、計画決定時に在園する児童の卒園を待って実施する(5〜6年程度の期間を要する)。そのため、統合 後の保育定員や区立跡地の活用方法等は、次々期計画策定時に具体的な検討を行う。なお、今後、国の制度改正をはじめ、保育ニーズや社会情勢の急速な変化なども想定されるため、そうした状況においては、本整備方針を原 則としながらも、必要に応じて再整備計画を前倒しするなど、適切かつ迅速に、対策を講じることとする。