放課後児童健全育成事業の運営方針(案)の検討状況等について 1.主旨 第1回子ども・子育て会議において報告した放課後児童健全育成事業の運営方針 (案)の検討状況ついて報告する。 2.放課後児童健全育成事業の運営方針の検討について (1)これまで6回にわたり、世田谷区放課後児童健全育成事業運営方針検討委員会にお いて以下の内容について検討してきた。 7月13日の第6回をもって運営方針検討委 員会での検討を終え、現在調整中である。 今後は、第2回子ども・子育て会議及び議会報告においていただくご意見も踏まえ最 終調整し、区として決定する。 (2)この運営方針は新ボップ学童クラブも含めた今後の世田谷区の放課後児童健全育成 事業の質の確保に活用するとともに、民間の放課後児童健全育成事業所を誘導する際 の募集要項の策定や事業者への指導又は助言に生かすこととする。 3 今後のスケジュール(予定) 令和4年9月 福祉保健・文教常任委員会の放課後児童健全育成事業の活用の考え方等) 11月 民間の放課後児童健全育成事業の募集要項の確定 12月 民間の放課後児童健全育成事業の事業者説明会(予定) 令和5年2月 福祉保健・文教常任委員会(民間の放課後児童健全育成事業者の 募集) 令和6年1月頃 民間放課後児童健全育成事業所の開設(プレオープン含む) 2022年7月13日時点 2022年7月7日現在 世田谷区放課後児童健全育成事業の運営方針案 1 運営方針とは この運営方針は、区で定める放課後児童健全育成事業の支援の質を確保し、事業の安定及び継続性の確保を図り、且つ、子どもの視点に立ち、子どもにとって安心して過ごせる場となるよう、放課後児童健全育成事業を望ましい方向に導くものである。 運営方針策定にあたっては、地方自治法に基づく技術的助言である国の「放課後児童クラブ運営指針」(平成27年3月31日 雇児発第033第34厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)及び「新・放課後子ども総合プラン」を踏まえ、世田谷区子ども計画(第2期)後期計画に準拠したものとした。 2 策定にあたっての方向性 1 子どもの視点(子どもの最善の利益の視点)に立ち、子どもにとって楽しく安心して過ごせる場となるよう、区で定める支援の質やより良い環境を示す。 2 子どもが自分の気持ち(意向)や意見を表現することができるように援助し、子ども自身が放課後の遊びや生活に主体的に関わることができるよう、子どもの意見・意向表明とその受け止めについて示す。 あわせて、子どもが悩みや相談事を気軽に話せるような信頼関係について示す。 3 さまざまな家庭環境にある子どもたちや、障害のある子どもたちが、互いを尊重し、ともに過ごすインクルーシブな放課後の環境づくりと、そのための支援について示す。 4 安心して子どもを託せるために保護者への情報提供や保護者と連携した子育て支援の内容を示す。 5 業の安定性及び継続性の確保を図り、かつ、放課後児童健全育成事業の運営の望ましい方向を示す。 6 世田谷区の地域性や関係機関の状況を反映した世田谷らしい連携・協働を示す。 7 子どもたちの緊急時の支援体制の構築や保護者支援について示す。 8 放課後児童支援員等の専門性の維持・向上と人材育成を示す。 9 国は子どもの健全な育成と遊び及び生活の支援を「育成支援」としているが、世田谷区では「成育支援」という言葉を使う。 これは世田谷区の運営方針として、子どもが成長し発達する力を尊重し、それを保護者や社会が支援することの必要性を重視する立場を明確にするため「成育支援」という言葉を使用する。 理念 子どもが安心して、楽しく・自由に遊べる環境のもとで、生きる力と主体性を伸ばし、成育を支えます。 子ども計画の基本理念 子どもは、一人ひとりが今を生きる主体であるとともに、未来の「希望」です。 子どもは、一人の人間としていかなる差別を受けることなくその尊厳と権利が尊重され、心も身体も健康で過ごし、個性と豊かな人間性がはぐくまれる中で、社会の一員として成長に応じた責任を果たすことが求められます。 世田谷区は子どもが健やかに成長・自立でき、また、安心して子どもを生み、育て、子育てに夢や喜びを感じることができる地域社会を区民の力をあわせ実現します。 世田谷区子ども計画(第2期)後期計画より 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約) 児童の権利に関する条約は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約である。 18歳未満の児童を権利をもつ主体と位置づけ、大人と同様一人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定める。 前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定する。 1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効し、1994年に批准した。 ユニセフ子どもの権利条約より 第1章総則 1 趣旨 放課後児童健全育成事業の支援の質の向上に資することを目的とし、世田谷区が目指す放課後児童健全育成事業の望ましい方針を示す。 子どもの権利保障と最善の利益を考慮して、成育支援を推進する。 この運営指針は、世田谷区放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準に関する条例(平成26年9月世田谷区条例第39号。以下、「基準」という。)に基づき、放課後児童健全育成事業を行う場所(以下「放課後児童クラブ」という。)における、子どもの健全な育成と遊び及び生活の支援の内容に関する事項及びこれに関連する事項を定めるものである。 また、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下、「法」という。)第34条の8の3第3項の規定に基づき措置を命じる場合の処分基準、基準第4条第1項の規定により勧告を行う場合における指導基準の性格を有するものとする。 2 世田谷区放課後児童健全育成事業における成育支援の基本 1 対象児童 世田谷区在住または世田谷区立小学校在籍の小学校1年生から3年生で、その保護者が就労・疾病等により、放課後家庭において継続して適切に保護・育成にあたることができない家庭の児童。 ただし、心身の発達等により個別的配慮が必要な児童は6年生までとする。 2 放課後児童健全育成事業における成育支援 子どもが楽しく自由に遊び、安心して過ごせる生活の場としての環境を整え、安全面に配慮しながら、生きる力と主体性を伸ばし、子どもの成育を支えること。 3放課後児童健全育成事業の社会的責任 子どもへの意見・意向表明支援を行い、子どもの意見・意向を聴き、受け止め、子どもが社会参加することを保障すること。 4放課後健全育成事業における成長に合わせた支援 子どもが成長に合わせて自主的に放課後の居場所を選択し、主体的に過ごすことができるように、さまざまなかたちで成長に応じた支援を行う。 7つの目標 子どもが楽しく過ごし、行きたいと思えるような居場所 子どもが様々な遊びや学び、体験ができる居場所 子どもが自由に発言でき、子どもの意見・意向が大切にされる居場所 子どもが安全で安心して過ごせる居場所 子どもが健やかに成長できる居場所 多様な子どもがお互いを尊重し、合理的配慮のもと、ともに過ごせる居場所 家庭における子育てをしっかり支えられる居場所 1 子どもが楽しく過ごし、行きたいと思えるような居場所とは 子どもそれぞれが楽しく自由に遊び、過ごしたいように過ごし、素でいられる居心地がよい居場所。 日常生活の緊張を解き、ほっとできる居場所。 2 子どもが様々な遊びや学び、体験ができる居場所とは 子どもが、様々な遊びや学び、社会で生き抜く力を得るための糧となる多様な体験ができる。 他者との関わり通じて、自己肯定感を高め、幸せな状態で成長できる居場所。 3 子どもが自由に発言でき、子どもの意見・意向が大切にされる居場所とは 子どもが本音やありのままの意見を話し、受け止める大人がいる。 子どもがやってみたいことを表明し、実現できる。 子どもが困ったときに頼れる大人がいる居場所。 4 子どもが安全で安心して過ごせる居場所とは 子どもが危険なく安心して過ごせる居場所。 5 子どもが健やかに成長できる居場所とは 子どもそれぞれの成長や発達に合わせた支援を行い、人が生きる一生のうちの一時期として、今の姿をとらえ長期的な視点で子どもの育ちが見守られている居場所。 6 多様な子どもがお互いを尊重し、合理的な配慮のもと、ともに過ごせる居場所とは さまざまな発達段階や状態の子どもがお互いを尊重し、ともに過ごすことを通じて、自分と他者、一人と集団、それぞれを豊かにするインクルーシブな居場所。 7 家庭における子育てをしっかり支えられる居場所とは 子育てに対する負担や不安、孤立感を和らげることを通じて保護者が子どもと向き合える環境を整え、子どものより良い成長の実現につなげること。 第2章子どもの成育支援 1 子どもの発達とそのねらい 子どもの発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるように、子どもの発達の特徴や発達過程を理解し、一人ひとりの心身の状態を把握しながら成育支援を行う。 2 放課後児童健全育成事業における成育支援の目指すべき内容 (1)成育支援の内容 1 子どもが楽しく過ごし、行きたいと思えるような居場所とするために 運営主体や放課後児童支援員等は、子どもが楽しく自由に遊び、やりたいことを実現できる3間(時間・空間・仲間)の充実を踏まえた運営を行うこと。 また、おもちゃや道具など、子どもの楽しそうという興味を刺激するものがあり、自由に遊べる環境を整えること。 2 子どもが様々な遊びや学び、体験ができる居場所とするために 運営主体は、子どもそれぞれの成長や発達に合わせ、子どもの発想を大切にした遊び、身体を動かす遊び、外遊びなどの多種多様な遊びを、子どもの視点からサポートすること。 遊びの発展を阻害しないためにも、遊びの時間を継続して1時間以上確保することが期待される。 また、校庭や公園など屋外での遊びも、積極的に取り入れる工夫が求められる。 放課後児童支援員等は、リスクとハザードの違いを把握し、遊びを通して子どもが挑戦できるような工夫ができると望ましい。 【コラム】子どもの危険を判断する基準「リスク」と「ハザード」 「リスク」とは自ら挑戦する危険のことで、自分の限界に挑戦し、乗り越えていくという成長のプロセスでもある。 一方で、「ハザード」とは自分から挑戦できない隠れた危険のことを指す。 例えば、ハンモックのロープが摩耗して切れる、腐食した柱が折れる、綱渡りのロープが首の高さに張られているなど、遊んでいる子どもには予測できない突発的な危険は「ハザード」を指す。 子どもの目に見えないこうした「ハザード」を取り除きつつ、子どもの成長につながる「リスク」をいかに残せるようにするかがポイントである。 出典 青少年にかかわる人のための『困りごと』ヒント集 コラム(神奈川県青少年指導者養成協議会作成)より抜粋 3 子どもが自由に発言でき、子どもの意見・意向が大切にされる居場所とするために 運営主体は、日常の活動において、子どもの意見や気持ちと向き合い尊重すること。 個々の発達段階に応じて、それぞれの子どもが主体的に運営にかかわることができるように工夫する。 放課後児童支援員等は、日常の運営の中で、互いに違っていいという環境を整える。 発言した内容(意見や意向)が、聞き入れられない、受け入れられないと子どもが諦めたり、虚しい気持ちにならないために、子どもの発言を日々の運営に活かすことが望ましい。 放課後児童支援員等は、子どもが悩みや相談事を気軽に話せるような信頼関係を築くよう努めること。 子ども一人ひとりの放課後児童クラブでの過ごし方を把握しながら、子どもの情緒や子ども同士の関係に配慮し、子どもから発信がなくともSOSに気づき、必要に応じて適切に対応すること。 4 子どもが安全で安心して過ごせる居場所とするために 安心して過ごせる環境を整えるために、運営主体は、子どもが安全・安心に過ごせるよう施設や設備を整備するとともに遊具やおもちゃのメンテナンスを行う。 設備基準に則り、くつろげるスペースや休養スペースなどを確保すること。 5 子どもが健やかに成長できる居場所とするために 放課後児童支援員等は、子どもが健やかに過ごせるように、日々の体調や心身の健康を把握し対応するなど、日々の変化に留意する。 6 多様な子どもがお互いを尊重し、合理的な配慮のもと、ともに過ごせる居場所とするために 運営主体や放課後児童支援員等は、多様な子どもが過ごす場として、子どもが安心して過ごし、一人ひとりと集団全体の生活を豊か過ごせるよう合理的な配慮のもと成育支援を行うこと。 また、異年齢児交流を通して、相手の気持ちを考え行動する能力やコミュニケーションスキルを身に付ける支援を行うこと。 7 家庭における子育てをしっかり支えられる居場所とするために 運営主体や放課後児童支援員等は、保護者と連携した成育支援を行う。 (2)配慮を要する子どもへの支援 障害のある子どもや配慮が必要な子どもなど、さまざまな状況や状態の子どもの交流や活動の場として、居場所や放課後の過ごし方について関係機関と連携し、必要な支援を行う。 子どもの特性を踏まえた支援に取り組み、多様な子どもも楽しく過ごせるインクルーシブな居場所を目指す。 (3)児童虐待等、特別な配慮を必要とする子どもへの支援 養育支援を特に必要とする家庭の発見に留意するとともに、信頼関係を作り子どもの状態や家庭の状況を把握する。 保護者に不適切な養育等が疑われる場合は、速やかに区に相談し、子ども家庭支援センター、児童相談所や警察等、関係機関に通告する。 ケース会議に参加するなど連携し、放課後児童クラブとしての必要な支援を行う。 (4)緊急時の支援 帰宅後に犯罪や災害等の子どもだけでは解決できない問題が生じた場合、緊急避難場所として子どもを受け入れ、子どもの安全を確保する。 必要に応じて保護者や関係機関と連携する。 卒所後についても同様に対応する。 3 子どもの主体性を大切に一人ひとりの成長に合わせた支援 子どもの発達段階に応じて、放課後の過ごし方に関する支援を保護者と協力しながら適切に行う。 子どもが成長に合わせて自主的に放課後の居場所を選択し、子どもが主体的に過ごせるよう、一人ひとりの成長に合わせた支援を適切に行うことが望ましい。 子どもが安心して過ごせる学童クラブ(守られた社会)に属している段階で、少しずつ子ども自身が地域社会の中で過ごす経験をすることで、卒所後に子どもも保護者も困らずスムーズに地域社会で活動できるよう支援する。 【コラム】新ボップ学童クラブにおける支援 新ボップ学童クラブでは、守れらた社会の中から地域社会に出るときに(学童クラブの卒所をイメージ)に、子どもも保護者も困らない自立した生活をする術を身につけ、地域社会で子ども自身が自分のペースで主体的に活動できるよう支援している。 地域社会とは、公園や児童館など学童クラブ以外の居場所であり、それらの居場所の職員や利用者、地域住民などである。 子どもが安心して過ごせる学童クラブ(守られた社会)に属している段階で、少し ずつ子ども自身が地域社会の中で過ごす経験をすることで、卒所後に子どもも保護者も困らずスムーズに地域社会で活動できると考えている。 子どもの自我の成長や発達段階に応じて、自らの力で生活する力、見通しをもって主体的に過ごせる力、危険予測や危険回避ができる力(助けを求められるコミュニティ力)をつけられるよう応援していきたい。 子どもの成育支援を通じて育みたい資質・能力(育ってほしい姿) 子どもたちが自ら放課後の過ごし方を考えて、身体・心の健康、体力向上、遊び、学び、社会性、創造性、主体性、自己肯定感、知的好奇心等の育みを目指す。 知的好奇心 新たな知識や体験との出会い、わくわくする気持ちを持ち成長していくことができること。 体力向上 社会性 見守りがある中で小さな失敗を繰り返し、子ども達の間で学び、相手を思いやる気持ちを身につけながら、ゆっくりと社会性を育んでいくこと。 身体の健康 自己肯定感 子どもが自分に自信がもてる。 素のままの自分が大切、自分に価値があると思える。新しいことにチャレンジできること。 主体性 子どもが自ら考え、責任を持ち行動できること、子どもがやりたいことに挑戦できること。 心の健康 など 【コラム】新ボップ学童クラブにおける主体性と自主性について 自主性は、ある程度決められていることや言われたことについて、自ら率先して行うこと。 主体性は、自らの意思や判断に基づいて、自らの責任のもとで行動しようとすること。 何も決まっていない状態において、自ら考え、行動することである。 第3章 保護者との連携 1 保護者との連携における基本的事項 子どもの特性や気持ちに気づき、保護者と子どもの育ちや日々の様子について肯定的に共有する。 保護者と放課後児童支援員等の信頼関係を築き、互いに子どもの育ちや日々の様子を見守る大人という関係をもとに、保護者が安心して子育てと仕事のバランスをとれるよう支援する。 2 保護者との連携 1 保護者との連絡 連絡帳、連絡アプリ、お迎え時の会話、電話、個人面談、保護者会などにより、放課後児童クラブや家庭等における子どもの過ごし方や様子を共有する。 2 保護者および保護者組織(父母会等)との連携 保護者との協力関係を築き、保護者同士が互いに協力して子育てができるように支援する。 3 情報提供・相談支援 保護者との信頼関係を築くことに努めるとともに、子育てのこと等についての保護者への情報提供や相談支援など、ソーシャルワークの援助方法による支援を心がける。 保護者から相談があった場合は、保護者の気持ちを丁寧に受け止め、相互の信頼関係を基本に保護者の自己決定を尊重しながら対応する。 また、必要に応じて関係機関と連携する。 【コラム】ソーシャルワークとは ソーシャルワークは、社会福祉従事者が人々を援助するための多様な援助活動のことである。 『ソーシャルワークのグローバル定義』 ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと開放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。 ※国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)は、2014年7月にメルボルンにて開催された総会にて、ソーシャルワークのグローバル定義(世界レベルの定義)を発表。 つまり、ソーシャルワーカー(援助者)は、ニーズ(生活上の困りごと)を抱えるクライアント(利用者)が、主体的にニーズの解決に取り組み、ニーズの解決や自立支援、自己実現の達成などウェルビーイング(人間の福利)の増進を目指せるよう援助する。 その方法であるソーシャルワークは、クライアント自身の力を高めつつ、人々のニーズにかかわる環境に、社会資源を調整しながらクライアントとともに働きかけていくということである。 すなわち、ソーシャルワークとは、個人や社会をよりよい方向へと変えていこうとする総合的・複合的な活動と言えます。 児童館や児童クラブで働く職員は、利用者が抱える生活上の困りごとに対して、利用者自身が自信をもって自分自身の困りごとに立ち向かえるよう、利用者自身や利用者に関係する人々、地域住民や関係機関などに利用者とともに働きかけることで困りごとを解決し、より充実した生活が送れるよう援助をしていくことが求められる。 利用者のニーズを解決し、ウェルビーイングの増進を図るためには、ソーシャルワーカーは1人に働きかける、2環境に働きかける、3人と環境の交互関係を調整する、という3つの取り組みにより利用者のニーズの解決を目指す。 出典:一般財団法人 児童健全育成推進財団(2019)「児童館・放課後児童クラブテキストシリーズ4ソーシャルワーク」より抜粋 第4章 世田谷区放課後児童健全育成事業の運営 1 職員体制 (1)放課後児童クラブには、年齢や発達の状況が異なる子どもを同時にかつ継続的 に成育支援を行う必要があること、安全面での管理が必要であること等から、区条例に基づき支援の単位ごと2人以上の放課後児童支援員を配置する。 ただし、そのうち1人を除き、補助員(放課後児童支援員が行う支援について放課後児童支援員を補助する者をいう。)をもってこれに代えることができる。 (2)放課後児童支援員等は、支援の単位ごとに成育支援を行わなければならない。 (3)子どもとの安定的、継続的な関わりが重要であるため、放課後児童支援員の雇用に当たっては、長期的に安定した形態とすること。 (4)放課後児童支援員等の勤務時間については、子どもの受入れ準備や打合せ等開所時間の前後に必要となる時間を前提として設定すること。 2 子ども集団の規模(支援の単位) (1)放課後児童クラブの適切な生活環境と成育支援の内容が確保されるように、施 設設備、職員体制等の状況を総合的に勘案し、適正な子ども数の規模の範囲で運営することが必要である。 (2)子ども集団の規模(支援の単位)は、子どもが相互に関係性を構築したり、1つの集団として、まとまりをもって共に生活したり、放課後児童支援員等が個々の子どもと信頼関係を築いたりできる規模として、おおむね40人以下とすること。 1か所の事業所では2支援までとすることが望ましい。 3 開所時間及び開所日 (1)開所時間及び開所日は、保護者の就労時間、学校の授業の終了時刻、その他地域の実情等を考慮した設定に努めるものとする。 平日において、19時まで行うことに努める。 (2)開所時間は、学校の授業の休業日は1日につき8時間以上、学校の授業の休業日以外の日は1日につき3時間以上の開所を原則とする。 なお、子どもの成育支援の観点にも配慮した開所時間とする。 (3)開所する日数は、1年につき 250日以上を原則として、保護者の就労日数、学校の授業の休業日、その他地域の実情等を考慮して設定する。 年末年始(12月29日〜1月3日)・日曜日・祝日・休日を除き、通年実施すること。 (4)新1年生については、保育所との連続性を考慮し、4月1日より受け入れること。 4 開所及び利用の開始等に関わる留意事項 (1)放課後児童健全育成事業所を開所する際は、近隣関係者に対し適切に説明するよう努め、友好な関係性を築くことが望ましい。 (2)運営主体は、入所の募集に当たり、適切な時期に様々な機会を活用して広く周知を図ることが必要である。 その際には、利用に当たっての留意事項の明文化、入所承認の方法の公平性の担保等に努める必要がある。 (3)入所を希望する保護者等に対しては、必要な情報を提供すること。 (4)利用の開始に当たっては、説明会等を開催し、利用に際しての決まり等について説明すること。 (5)特に新1年生の環境変化に配慮して、利用の開始の前に、子どもや家庭の状況、保護者のニーズ及び放課後児童クラブでの過ごし方について、十分に保護者等と情報交換すること。 (6)子どもが放課後児童クラブを退所する場合には、その子どもの生活の連続性や 家庭の状況に配慮し、保護者等からの相談に応じて適切な支援への引き継ぎを行うこと。 5 運営主体 (1)放課後児童クラブの運営については、成育支援の継続性という観点からも、安定した経営基盤と運営体制を有し、子どもの健全育成や地域の実情についての理解を十分に有する主体が、継続的、安定的に運営することが求められる。 (2)放課後児童クラブの運営主体は、次の点に留意して運営する必要がある。 1 児童クラブごとに事業の運営について、以下1)〜13)の重要事項に関する運営規程を定め、また、職員、財産、収支及び利用者の処遇の状況を明らかにする帳簿を整備すること。 1)事業の理念、目的及び運営の方針 2)倫理規程に関する事項 3)職員の職種、職員数及び職務の内容 4)開所時間及び開所日 5)成育支援の内容及び利用料の適正管理 6)個人情報の適正管理に関する事項 7)事業の実施地域 8)事業の利用に当たっての留意事項 9)緊急時等における対応方法 10)非常時、災害時対策、BCP(非常時の事業継続計画)の作成 11)虐待の防止のための措置に関する事項 12)職員の福利厚生 13)その他事業の運営に関する重要事項 2 放課後児童クラブの運営主体に変更が生じる場合には、成育支援の継続性が保障され、子どもへの影響が最小限に抑えられるように努めるとともに、保護者の理解が得られるように努める必要がある。 3 運営主体は、その行った支援に関し、児童課から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。 4 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第83条に規定する運営適正化委員会が行う同法第85条第1項の規定による調査にできる限り協力しなければならない。 6事業計画及び評価 放課後児童健全育成事業の成育支援の内容を踏まえ、年間の事業計画を定めて運営し、結果に対する評価と改善を行うこと。 作成にあたっては、学校行事計画や施設環境、地域環境の特性を生かすことが望ましい。 また、年度始めには保護者、学校、関係機関等に周知・説明し、年間の事業計画について理解と協力を得ること。 事業計画に沿った運営に努めるとともに、適宜、支援方法や経過等をチェックし、修正を行うなど目標の達成を目指すこと。 7 補食 発達過程にある子どもの成長にあわせて、放課後の時間帯に必要とされるおやつを適切に提供する。 おやつの提供にあたっては、以下1〜3について配慮すること。 1 昼食と夕食の時間帯等を考慮して提供時間や内容、量等を工夫する。 2 安全及び衛生に考慮するとともに、子どもが落ちついて食を楽しめるようにする。 3 食物アレルギーのある子どもについては、配慮すべきことや緊急時の対応等について事前に保護者と丁寧に連絡を取り合い、安全に配慮して提供する。 第5章学校及び地域など関連機関との 連携等 関係機関・団体との連携・協働するなど重層的な支援を実現する。 1 学校との連携 日常的・定例的に、子どもの生活の連続性の保障のため、情報交換・情報共有等による連携を図る。 年度替わりなど大きな変更時は緊密な連携を図る。 2 地域資源の様々な大人や団体との連携 児童の放課後の過ごし方をより安全で豊かなものにするため、地域と連携した取組みを行う。 地域の様々な資質を有する多くの大人の参画を得て、子どもたちに、様々な体験・交流活動の機会を提供すると共に、地域住民や地域の社会資源との交流や地域の社会資源(公園等)を通して子どもたちが心豊かに健やかに育まれる環境づくりを推進する。 3 保育所、幼稚園等との連携 新1年生の発達と生活の連続性の保障のため、情報交換・情報共有等を行う。 4 児童館との連携 地区の子育て・子ども成育支援の拠点機能を持つ児童館との連携により、事業運営や相談支援の充実を図る。 また、児童館の有するネットワークに参加し、情報交換・情報共有・交流を図る。 5 新ボップ連絡協議会等の活用 各新ボップに設置する連絡協議会等を活用し、関係機関へ事業内容の周知・情報共有を行い、幅広く意見を聴取しながら必要に応じて事業運営に反映させる。 6 他の放課後児童健全育成事業所との連携 日常的・定例的に、子どもの生活の連続性の保障のため、情報交換・情報共有等 による連携を図る。 7 子ども家庭支援センターや児童相談所との連携 児童虐待の早期発見と対応は放課後児童健全育成事業の重要な役割である。 児童や保護者のSOSのサインをキャッチし、適切な支援をするために学校や子ども家庭支援センター、児童相談所などの関係機関と連携し、児童虐待等の不適切な養育の予防や早期発見、対応に取り組み、切れ目のない支援を行うこと。 要保護児童連絡協議会への参加などにより、見守りが必要な家庭や子どもの情報を共有し、放課後児童クラブとしての適切な支援を実施する。 第6章施設及び設備、衛生管理及び安全対策 1 施設及び設備 (1)「遊び等の活動拠点」「生活の場」としての機能を備え、衛生的かつ安全な専用区画を確保すること。 エアコンや厨房設備等を設置するとともに、個人用ロッカー や使いやすいトイレの設置、バリアフリー化など、設備が充実していることが望ましい。 (2)構造設備は、採光、換気等利用者の保健衛生及び利用者に対する危害防止に十分な考慮を払って設けられなければならない。 また、軽便消火器等の消火用具、非常口その他非常災害に必要な設備を設けること。 2 衛生管理及び安全対策 (1)衛生管理 1 手洗いやうがいをするなど、日常の衛生管理に努める。 また、必要な医薬品その他の医療品を備えるとともに、それらの管理を適正に行い、適切に使用する。 2 施設設備や食器等及び飲用に供する水、おやつ等の衛生管理を徹底し、食中毒の発生を防止する。 3 感染症の発生や疑いがある場合は、児童課及び保健所に連絡し、必要な措置を講じて二次感染を防ぐ。 (2)事故やけが防止と対応 児童の安全と安心の確保のため、日頃からケガや事故を未然に防ぐとともに、発生時には適切な対応・対策が取れるよう、日常的な安全管理体制をつくっておく。 万が一、事故が発生した場合は、速やかに、児童課、当該利用者の保護者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。 事故により賠償すべき損害が発生した場合は、速やかにその損害を賠償しなければならない。 (3)防災及び防犯対策 犯罪や災害時等の緊急時の危機管理と安全確保のため、非常時、災害時対策、BCP(非常時の事業継続計画)を作成し、日頃から児童への安全指導や訓練等を実施すること。 なお、避難及び消火に係る訓練は、定期的に行わなければならない。 第7章職員について 1 職員採用 放課後児童支援員等の採用にあたっては、以下の点を踏まえること。 ○健全な心身を有し、豊かな人間性と倫理観を備え、児童福祉事業に熱意のある人材。 児童福祉事業の理論及び実際について訓練を受けたことがあると望ましい。 ○常に自己研鑽に励み、児童の健全な育成を図るために必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努められる人材。 ○子どもや保護者を取り巻くさまざまな状況に関心を持ち、育成支援に当たっての課題等について建設的な意見交換を行うことにより、事業内容を向上させるように努められる人材。 ○世田谷区が目指す放課後児童健全育成事業を理解している人材。 2 職員の資質向上に必要な事項 子どもの視点(子どもの最善の利益の視点)に立ち、人権に配慮した運営を行うためには、職員一人一人の倫理観、人間性並びに放課後児童クラブ職員としての職務及び責任の理解と自覚が基盤となる。 放課後児童健全育成事業の運営主体は、各職員が職務内容の専門性を高めるため、日々の運営や研修等を通して必要な知識や技術の習得し、維持及び向上できるよう環境の整備に努めなければならない。 (1)実務を通じた教育訓練(OJT)、職員間での学びや気づきの共有 放課後児童健全育成事業の運営主体は、日々の運営を通して業務に必要なスキルや知識及び技術の習得する機会を設ける。 また、日々の運営の中で、子どもや保護者等から「学びや気づき」を職場内で共有できる機会(日々のミーティングや研修等)を設けることが望ましい。 (2)職場外の研修(オフ−JT) 放課後児童健全育成事業の運営主体は、放課後児童支援員等が自発的、継続的に研修に参加できるように、研修受講計画を策定し、管理するなどの環境を整備していくとともに、放課後児童支援員等がレベルに合わせてスキルアップできるよう自己研鑽、自己啓発への時間的、経済的な支援や情報提供も含めて取り組んでいく。 <研修テーマ例> ●ソーシャルワーク ●プレイワーク ・児童館や新ボップ等との実務交流 ・虐待防止に関する研修 ・アレルギー児童への対応に関する研修 ・配慮を要する児童の支援に関する研修 ・人権・マイノリティ、多様なジェンダーに関する研修 ・子どもの貧困と支援に関する研修 ・子どもの心理に関する研修 ・東京都放課後児童支援員認定資格研修及び資質向上研修 【コラム】プレイワークとは プレイワークとは、子どもが遊ぶことについてのアートとサイエンスとして、哲学、心理学、生物学、教育、福祉などの各分野の知見を土台に、「子どもが自ら遊び育つニーズとそのための環境の大切さ」「実際に子どもが遊ぶ空間を整え、子どもにかかわる大人の役割」を体系化したもの。 プレイワークには次のような関わり方が挙げられる。 1 一緒に遊ぶ 子どもの遊び相手になったり、遊びの集団メンバーとして加わったりして、遊びを促進する。 子ども同士の関係を調整し、遊びをリードしていく。 2 遊びを見守る 子どもたちの安全や、他の子どもたちの遊びとの調整などに気を配る。 遊びに参加しながら、状況に応じて遊びの外にいて子どもたちを見守る。 3 遊びを伝える 昔の遊びや子どもたちが知らない遊びを紹介したり新しい遊びを考え出したりする。 また、遊び方や遊具の使い方など、遊びを広げるための知識や技術を提供する。 4 遊びを助ける 子どもが遊びのなかでやりたいことを実現するために必要な援助をする。 遊びに必要な環境づくりや事前の準備等をおこない、子どもたちが遊びを発展させられるようにする。 出典:一般社団法人 日本プレイワーク協会ホームページより抜粋 一般財団法人 児童健全育成推進財団(平成26年9月)児童館・放課後児童クラブ テキストシリーズ1健全育成論より抜粋 第8章職場倫理及び事業内容の向上 1世田谷区放課後児童健全育成事業の社会的責任と職場倫理 放課後児童支援員等は、仕事を進める上での倫理を自覚し、成育支援の内容の向上に努め、運営主体は全ての放課後児童支援員等が職場倫理を自覚して職務に当たるように組織的に取り組む。 『放課後児童クラブ運営指針における職場倫理』 ○ 子どもや保護者の人権に十分配慮するとともに、一人ひとりの人格を尊重する。 ○ 児童虐待等の子どもの心身に有害な影響を与える行為を禁止する。 ○ 国籍、信条又は社会的な身分による差別的な扱いを禁止する。 ○ 守秘義務を遵守する。 ○ 関係法令に基づき個人情報を適切に取り扱い、プライバシーを保護する。 ○ 保護者に誠実に対応し、信頼関係を構築する。 ○ 放課後児童支援員等が相互に協力し、研鑽を積みながら、事業内容の向上に努め る。 ○ 事業の社会的責任や公共性を自覚する。 放課後児童支援員等に求められる姿 ・「子どもが何を求めているか」を知ろうとする。 ・子どもの権利について職員全体で確認し、十分配慮する。 ・一人ひとりの子どもの行動や欲求に、わかりやすい言葉で穏やかに個々の子どもに語りかけ、応答的に関わる。 ・一人ひとりの子どもの生活習慣や文化、多様性、特性などの違いを知り、それを認めあう心を育てるよう努める。 ・地域社会との交流及び連携を図り、ソーシャルワークの視点を持って保護者及び地域社会との連携に努める。 ・職員会議、研修、他の放課後児童クラブ等との交流等を通して、自身の育成の課題や不足している専門知識・技術について「気づき」の機会を多く持つ。 2 要望及び苦情への対応 要望や苦情を受け付ける窓口や担当者を設置し、子どもや保護者に周知するとともに、苦情対応には、迅速かつ適切に、誠意を持って対応する。 苦情や要望があった際は、職員間で情報を共有するとともに事務改善に生かしていくこと。 3 事業内容向上への取り組み (1)職員集団のあり方 会議の開催や記録の作成等を通じ、情報交換・情報共有を図り、事例検討等により相互に協力し自己研鑽し、事業内容の向上を目指す職員集団を形成する。 (2)運営内容の評価と改善 自己評価及び利用者評価又は第三者評価を行い、その結果を公表するように努め、評価結果は改善の方向性を検討して事業内容の向上に生かす。 (3)記録の保管・情報の開示 事業において収集および聴取した記録は適切に管理すること。 法令に基づき、運営にかかる情報は公開を原則とする。 個人情報の取り扱いについても同様とする。 【コラム】社会福祉法 法第59条の2項社会福祉法人に関する情報の公開の規定 運営の透明性の確保を目的に財務諸表、計算書類、計画等を公開することが定められている。 子ども・子育て応援都市宣言 子どもは、ひとりの人間としてかけがえのない存在です。 うれしいときには笑い、悲しいときには涙を流します。 感情を素直にあ らわすのは、子どもの成長のあかしです。 子どもは、思いっきり遊び、失敗 しながら学び、育ちます。子どもには、自分らしく、尊重されて育つ権利があります。 子どもは、地域の宝です。 大人は、子どもをしっかり見守り、励まし、支えます。 地域は、子育て家庭が楽しく子育てできるように応援します。 子どもは、成長に応じて社会に参加し、自分のできることと役割、みんなで支えあう大切さを学んでいきます。 子どもは、未来の希望です。 今をきらめく宝です。 大人は、子どもにとっていちばんよいことを選び、のびのびと安心して育つ環境をつくります。 世田谷区は、区民と力をあわせて、子どもと子育てにあたたかい地域社会を築きます。 ここに、「子ども・子育て応援都市」を宣言します。 平成27年3月3日 世田谷区