資料2 令和4年7月22日 子ども・若者部 児童相談所 令和3年度世田谷区児童相談所運営状況(事業概要)等報告(概要版)について 1 主旨 令和3年度の児童相談所の運営状況(事業概要)(速報版)を取りまとめたので、報告する。 2 児童相談所の運営状況等 別紙令和3年度世田谷区児童相談所運営状況(事業概要)等報告(速報版)のとおり 報告内容の基本的な考え方 区児童相談所開設2年目となったことから、開設初年度実績との経年比較を行った。 各地域の児童虐待相談における子ども家庭支援センターとの区分け状況や対応件数等について掲載し、地域の実情を把握できるようにした。 主な報告事項の抜粋 相談の受理状況等 令和3年度の児童相談所における相談数は2,233件であり、相談経路としては、警察等からの相談が最も多く(712件)、次いで近隣・知人(565件)、家族・親戚(468件)と続いている。 この状況は令和2年度と同様になっている。 児童虐待相談の対応状況等 令和3年度の区児童相談所における虐待相談対応件数は、1,709件となっている。 区の一時保護の状況 令和3年度における区の一時保護は、123人となっている。 令和3年度中の一時保護所での入所率が100%となることはなかった。 社会的養護のもとで育つ児童数 令和4年3月31日現在、養育家庭や施設等へ養育委託・入所措置されている区の児童は140人となっている。 里親委託業務の取り組み状況 フォスタリング業務や里親支援機関事務事業、育児家事援助者派遣事業の実績を記載。 養育家庭の登録数及び委託児童数 令和4年3月31日現在の区内の養育家庭の登録数は53家庭であり、区の委託児童数は11人となっている。 里親等委託率の現状 令和4年3月31日現在、区における里親等委託率は、23.8%となっている。 3 今後のスケジュール 令和4年8月 令和3年度世田谷区児童相談所運営状況(事業概要確定版)の公表 別紙 令和3年度 世田谷区児童相談所運営状況(事業概要)等報告(速報版) 令和4年5月 世田谷区 第1 児童相談所の概況 1 世田谷区の基本情報(令和4年4月1日現在) 面積58.05平方キロメートル 地域別世帯数・人口数の表 2 児童相談所の所在地等 所在地 世田谷区松原6丁目41番7号 開設年度 令和2年度(令和2年4月1日) 電話 03-6379-0697 交通 小田急線梅ヶ丘駅、豪徳寺下車5分、東急世田谷線山下駅下車5分 3 設置の目的・理念 平成28年の児童福祉法の改正では、昭和22年の制定時以来の理念規定が見直され、児童は、適切な養育を受け、健やかな成長・発達や自立が図られ、それらを保障される権利を有することなどが明確にされた。 区は、改正児童福祉法の理念に則り、区民生活に密着した基礎自治体として、児童相談のあらゆる場面において子どもの権利が保障され、その最善の利益が優先された「みんなで子どもを守るまち・せたがや」の実現を目指す。 この目標の達成に向けて、児童が独立した権利の主体であることを尊重し、その最善の利益が優先して考慮されることを保障する見地から、同法第12条第1項及び第59条の4第1項の規定に基づき、児童相談所を設置するものである。 区の児童相談所の設置は、法の新たな理念の実現に向けた、戦後から続く児童福祉のあり方を大きく前進させる大きな挑戦である。 この認識のもと、あらゆる子どもには家庭を与えられるべきという視点に立ち、子どもが家庭で健やかに養育されるよう保護者支援を重点的に行うとともに、子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的な運用を大きな柱として、地域の支援を最大限に活用した予防型の児童相談行政の展開を図る。 4 児童相談所等の沿革の表 5 児童相談所の組織及び職員の図 (1)組織 (2)所内組織 (3)所内の職員配置状況(令和4年4月1日現在) 6 児童相談所で取り扱う児童相談・援助 (1)相談の種類 養護相談 児童虐待、養育困難に関する相談 非行相談 非行行為、ぐ犯行為、触法行為に関する相談 育成相談 しつけ、子育て、性格行動、家庭内暴力、不登校、ひきこもり、適性相談など 障害相談 障害児に関する相談、視聴覚障害、知的障害、肢体不自由、重症心身障害、ことばの遅れ、発達障害など 保健相談 精神保健・精神衛生、思春期、性に関すること、依存等による生活の乱れなど その他相談 親子・家族間の関係、自立(自立援助ホームの利用)、その他 (2)援助の種類 助言指導 1ないし数回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、問題が解決すると考えられる子どもや保護者等に対する指導をいう。 継続指導 複雑困難な問題を抱える子どもや保護者等を児童相談所に通所させ、あるいは必要に応じて訪問する等の方法により、継続的にソーシャルワーク、心理療法やカウンセリング等を行うものをいう。 他機関あっせん 他の専門機関において、医療、指導、訓練等を受けること並びに母子家庭等日常生活支援事業を利用する等関連する制度の適用が適当と認められる事例については、子どもや保護者等の意向を確認のうえ、速やかに当該機関にあっせんする。 児童福祉司指導 複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対し子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは必要に応じ通所させる等の方法により、継続的に行う。 児童委員指導 問題が家庭環境にあり、児童委員による家族間の人間関係の調整または経済的援助等により解決すると考えられる事例に対し、子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは必要に応じ通所させる等の方法により行う。 知的障碍者福祉司指導 社会福祉主事指導 問題が知的障害に関するもの及び貧困その他環境の悪条件等によるもので、知的障碍者福祉司または社会福祉主事による指導が適当な場合に行う。 訓戒、誓約措置 子どもまたは保護者に注意を喚起することにより、問題の再発を防止し得る見込みがある場合に行い、養育の方針や留意事項等を明確に示すよう配慮する。 児童福祉施設入所措置 家庭での児童の養育が困難な場合に乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童自立支援施設等に入所させる。 指定発達支援医療機関委託 肢体不自由のある児童または重症心身障碍児について、指定発達支援医療機関に対し、入院や医療型障害児入所施設と同様な治療等を行うことを委託する。 里親委託 東京都及び児童相談所設置区が登録した里親に養育を委託し、家庭での養育に欠ける子ども等に、温かい愛情と正しい理解を持った家庭を与えることにより、愛着関係の形成など子どもの健全な育成を図る。 小規模住居型児童養育事業委託 家庭における養育環境と同様の養育環境の下で、要保護児童の養育に関し相当の経験を有する養育者に養育を委託する。 児童自立生活援助の実施 義務教育を修了したが、いまだ社会的自立ができていない20歳未満の子ども及び大学等に就学中であって、満20歳に達した日かた満22歳に達する日の属する年度の末日までの間にある子どもを対象として、就職先の開拓や、仕事や日常生活上の相談等の援助を行うことにより社会的自立の促進を図る。 福祉事務所送致等 児童や保護者を知的障碍者福祉司、社会福祉主事に指導させる場合、助産施設、母子生活支援施設、保育所等への入所措置が必要な場合、及び15歳以上の児童を知的障碍者援護施設等に入所させることが適当な場合に送致、報告、通知を行う。 家庭裁判所送致 触法少年及びぐ犯少年について、子どもの最善の利益や専門的観点から判断して家庭裁判所に付すことがその子どもの福祉を図るうえで適当であると認められる場合等に行う。 家庭裁判所に対する家事審判の申し立て 児童虐待等の場合で、親の同意を得られない場合の施設入所の承認や、親権停止並びに喪失宣言の請求、未成年後見人選任・解任の請求を行う。 (3)その他 立ち入り調査 児童を児童養護施設へ入所させる場合や、里親へ養育委託するにあたって、必要があると認められるときは、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所等に立ち入り、必要な調査または質問をさせることができる。 なお、正当な理由なく立ち入り調査を拒んだ場合、罰金規定がある。 一時保護・一時保護委託 児童相談所長は、必要があると認めるときは、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、または児童の心身の状況、そのおかれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、または適当な者に委託して、一時保護を行わせることができる。 面会・通信の制限 施設等入所中や一時保護中の児童に対し、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは、保護者の面会や通信について制限することができる。 接近禁止命令 上記の面会・通信の制限がある場合において、特に必要があると認めるときは、保護者に対し、児童の身辺でのつきまとい、または徘徊してはならないことを命ずることができる。 なお、この規定に違反した場合、罰金規定がある。 同居児童の届け出 四親等内の児童以外の児童を、自己の家庭に一定期間同居させる意思をもって同居させたものは、その旨区長に届け出なければならない。 所長の親権代行 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者または未成年後見人のない者に対し、親権を行う者または未成年後見人があるに至るまでの間、親権を行う。 出頭要求 児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査または質問をさせることができる。 再出頭要求 保護者が上記出頭要求または立ち入り調査を正当な理由なく拒み、妨げ、または忌避した場合において、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、児童委員または児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査または質問をさせることができる。 臨検・捜索 保護者が正当な理由なく立ち入り調査を拒み、妨げ、または忌避した場合において、児童虐待が行われている疑いがあるときは、児童の安全確認を行い、またはその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所等を管轄する地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所の許可状により、児童の住所等に臨検させ、または児童を捜索させることができる。 (4)児童相談の流れ (5)児童虐待に対する児童相談所の対応 第2 運営状況のあらまし 1 相談の受理状況等 (1)相談経路別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談数は2,233件であり、令和2年度から101件増加した。 相談経路としては、警察等からの相談が最も多く(712件)、次いで近隣・知人(565件)、家族・親戚(468件)と続いている。 この状況は令和2年度と同様になっている。 (2)相談内容別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談数2,233件のうち、被虐待相談(養護相談)が最も多く(1,698件)、次いで障害相談(265件)、非行相談(61件)と続いている。 この状況は令和2年度と同様になっている。 (3)年齢別受理状況 令和3年度の児童相談所における相談数2,233件のうち、0〜5歳(未就学年齢)は719件、6〜11歳(小学生年齢)は819件、12〜14歳(中学生年齢)は437件、15〜17歳(高校生年齢)は215件となっており、令和2年度と比較すると、高校生年齢以外では増加している。 また、対児童人口比では、中学生年齢の相談件数が一番多い。 2 児童虐待相談の受理状況等 (1)経路別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数1,698件のうち、警察等からの通告が最も多く(581件)、次いで近隣・知人(565件)、家庭・親戚(143件)と続いている。 警察等及び近隣・知人については、令和2年度、令和3年度ともに他の相談経路と比較してとても多い状況となっている。 全国や東京都と比較すると警察等の割合が少なく、近隣・知人の割合が多くなっている。 (2)虐待種類別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数1,698件のうち、虐待種類別では心理的虐待が最も多く(1,268件)、次いで身体的虐待(274件)、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)(151件)、性的虐待(5件)と続いている。 令和2年度と比較して、心理的虐待の増加が突出している。 また、その他の種類については児童虐待受理件数が増加しているにも関わらず、減少している。 これは、警察等からの通告が増加(令和2年度から84件増)していること、警察等から通告される虐待種類のうち、心理的虐待が82.6%(581件のうち、480件)を占めていることが影響していると考えられる。 (3)年齢別受理状況 令和3年度の児童相談所における児童虐待受理件数は1,698件のうち、0〜5歳(未就学年齢)は601件、6〜11歳(小学生年齢)は664件となり、令和2年度と比較して増加している。 一方、12〜14歳(中学生年齢)は267件、15〜17歳(高校生年齢)は125件となっており、令和2年度と比較して減少している。 これは、令和3年度の相談経路として最も多かった警察等からの通告のうち、未就学年齢と小学生年齢の通告が増加(未就学年齢が168件から207件、小学生年齢が152件から173件)し、中学生年齢と高校生年齢の通告が減少(中学生年齢が112件から68件、高校生年齢が65件から32件)したことが影響していると考えられる。 3 児童虐待相談の対応状況等 (1)児童虐待相談の対応状況 令和3年度の児童相談所における虐待相談対応件数は、1,709件となっている。 また、令和3年度の子ども家庭支援センターにおける虐待相談対応件数は、1,734件となっている。 参考 子ども家庭支援センターにおける虐待相談件数の推移 子ども家庭支援センターの被虐待児童相談対応状況は、令和元年10月から新しい「東京ルール」の運用が開始されたことに伴い、子ども家庭支援センターの新規受理件数が例年より顕著に増加した。 新しい「東京ルール」とは、都区間の新たなルールとして、都世田谷児童相談所が受理した警察からの心理的虐待(面前DV)案件等は、子ども家庭支援センターが対応することとなった。 参考 子ども家庭支援センターにおける虐待相談件数の継続状況の推移 子ども家庭支援センターにおける虐待相談継続件数は、区の児童相談所開設を契機として緩やかに減少している。 種別の内訳で比較すると、心理的虐待は増減を繰り返しながらも300件前後で推移している。 一方で、年度末辞典での未対応件数は令和2年度より増加しており、児童相談所からの区分けによる子ども家庭支援センターにおける新規受理件数及び対応件数の増加が影響しているとみられる。 参考 区児童相談所における虐待通告件数の状況 令和3年度に児童相談所に寄せられた虐待通告件数は、1,825件となっている。 「通告件数」と「受理件数」、「対応件数」の関係 「通告件数」は、児童虐待の相談・通告として寄せられた電話等の件数であり、そのうち、児童相談所が虐待案件として調査等が必要であると判断したものを「受理件数」として扱っている。 「対応件数」は、受理された通告に基づき、相談履歴や家庭状況の調査、児童の心理診断などを行い、その後の援助方針を決定した対応中のケースの件数を指す(国の全国統計等ではこの件数が集約され、比較・検証などに用いられている。) 通告、通告受理、相談対応という相談援助活動の流れの中で、どの時点のケースを指すかにより、それぞれの件数は異なるため、「通告件数」と「受理件数」、「対応件数」は一致しない。 (2)子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的運用の実績 1 概要 区が児童相談所を設置したことを契機に、地域における子どもに関するあらゆる相談の一義的な窓口である子ども家庭支援センターと、協力な法的権限などの高度な専門性を有する児童相談所の「一元的運用」を実施している。 本運用では、両機関の職員がチームとなり、日常から担当区域の情報共有を行い、必要に応じて双方が持つ機能を組み合わせた支援や問題の解決まで協働で関わる「のりしろ型支援」を着実に推進することで、虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応が徹底され、子どもの安全と生命を確実に守る予防型の児童相談行政の展開に取り組んでいる。 これらを実現するにあたり、基本的な対応に関する運用のしくみを下記のとおり構築し、適切に実施している。 主な取り組み ア チームとして顔の見える職員体制の構築 子ども家庭支援センターと児童相談所の双方が「住所地域担当制」を実施し、年間を通して同一住所地域を同一の担当者が担当することで、ひとつのチームとして顔の見える職員体制の構築を図っている。 イ 一貫した初動対応の実施(児童虐待通告窓口の一本化) 世田谷区児童虐待通告ダイヤル(0120-52-8343)、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)を通じての児童虐待相談や、警察からの通告は、区の児童相談所で一括して受理し、初動対応の一時的方針の判断を行う体制としている。 これにより、児童虐待通告のうち、一時保護の必要が予見され、専門性・法的権限を要することが見込まれるケースについては、児童相談所が児童の安全確認等を行い、その後の調査及び必要な援助等を実施している。 一方、いわゆる「泣き声通告」など、子ども家庭支援センターの支援が望ましいと判断された事案については、子ども家庭支援センターが迅速に児童の安全確認を行っている。 ウ リスクアセスメントの共有(共通アセスメントシートの作成) 子ども家庭支援センターと児童相談所は、相談ケースのリスク評価を行うにあたり、共有アセスメントシートを用いることで、リスクに対する視点の共有化を図っている。 エ 合同会議、合同研修の実施 世田谷区要保護児童支援地域協議会進行管理部会と同時開催で月1回程度「合同会議」を開催し、子ども家庭支援センターと児童相談所が協働して対応するケースのアセスメントの共有や、援助方針の検討等を行っている。 また、子ども家庭支援センターや児童相談所に配属された職員を対象とし、虐待対応の資質向上に向けた研修体系等を一本化し、理念の共有及び支援の質の底上げを図っている。 2 児童相談所と子ども家庭支援センターの区分け件数 令和3年度に児童相談所において受理した児童虐待通告1,698件のうち、児童相談所に区分けされたものが776件(45.7%)、子ども家庭支援センターに区分けされたものが922件(54.3%)となっている。 令和2年度では児童相談所への区分け件数のほうが多かった(56.4%)が、令和3年度は子ども家庭支援センターへの区分け件数のほうが多かった。 3 合同会議 4 合同研修 (3)児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数 令和3年度における児童相談所における児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数は40.4件となっており、令和2年度と比較して5.5件の減となっている。 これは、児童虐待相談受理件数は増加したものの、一方で児童福祉司についても増員(36名から42名(令和3年4月時点))しており、結果として児童福祉司一人当たりの対応件数は減少した。 4 調査・診断・一時保護状況等 (1)児童福祉司の活動状況 児童福祉司は、子どもの健全育成、子どもの権利擁護をその役割とし、主に児童虐待や非行など家族の抱える課題の解決に向け、支援が必要な子ども、保護者に対する適切なアセスメントの実施や、保護者との対話を重視したきめ細やかな支援を通して家族再統合を目指し活動している。 子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的運用により、子ども家庭支援センターとの調整(主に電話相談)にかかる実績が増えている。 また、区がこれまで培ってきた地域との顔の見える関係を活かし、関係機関との調整についても密に行うことができており、これに関係する活動実績が反映されているものと考える。 (2)児童心理司の活動状況 児童心理司は、子どもや保護者等の相談に応じ、面接・心理検査・行動観察等を用いて心理診断を行っている。 心理診断で得られた知見は児童相談所としての援助方針を決定する際に用いられる。 児童心理司は決定された援助方針に従い、必要に応じて子どもや保護者等に心理ケアや助言等を行っている。 心理診断と心理ケアは、子どもと保護者が問題に向き合い解決を目指せるように支援していくものであり、児童心理司業務の中核をなすものである。 また、障害相談のうち愛の手帳発行に関わる判定業務は大きな割合を占めている。 1 心理診断 心理診断は、援助の方針・内容を決めるために子どもとの面接や行動観察、心理検査に加え、保護者との面接等の結果等を総合して行うものである。 効果的な支援を行うためには適格なアセスメントが重要である。 2 心理ケア 心理ケアは、心理診断に基づいて様々な技法を用いた個別カウンセリングによる継続的支援を行い、子どもの心理的課題や親子関係の改善を図ることである。 その方法は、原則として子どもや保護者を定期的に児童相談所に通所させ、継続的な面接等を行うものである。 児童心理司は一人当たり約20ケースを担当し、ケースの状況に応じた方法で定期的な心理面接を実施している。 施設措置ケースにおいても施設心理士と連携を図り、児童相談所への通所もしくは施設訪問により同様に行っている。 加えて効果が期待できると思われるケースには、PCIT(親子相互交流療法)、親子グループ、メンタルフレンドの活用、東京都児童相談センター治療指導事業の活用等の継続的支援を行っている。 ア PCIT(親子相互交流療法) 虐待によるトラウマや落ち着きのなさ等の行動がある幼児期の子どもと、育児に悩む養育者の両者に対し、親子の相互交流を深め、親子関係改善に向けて働きかけるために行っている。 イ 親子グループ 適切な親子関係の構築に向けて、在宅指導ケース・施設措置ケースを対象に養育者には子育てスキルの向上、子どもには感情統制のスキルの獲得を目的に、グループ活動による援助を行っている。 ウ メンタルフレンドによる支援 不登校や引きこもり等様々な社会的不適応を示し、家に閉じこもりがちな子供に、お兄さんまたはお姉さんの世代にあたるボランティアをメンタルフレンドとしてかかわってもらい、子どもとの話や遊び、お菓子作り、工作等を通して子どもの自主性や社会性を高めるための援助を行っている。 3 愛の手帳判定に関する業務 東京都愛の手帳交付要綱に基づき、18歳未満の子どもに対して愛の手帳の申請受付と判定業務を行っている。 なお、愛の手帳についての医学診断は、非常勤医師が行っている。 4 東京都児童相談センター治療指導事業等の活用 区児童相談所は、開設に伴い東京都児童相談センターの持つ事業のうち、東京都全域を対象とする「治療指導事業」及び「家族再統合のための援助事業」について協定書を締結し、援助のひとつとして活用している。 「治療指導事業」は、家庭、学校、児童養護施設等において様々な不適応行動を示す子どもについて、子どもの心身の健全な成長発達を援助する事業である。 「家族再統合のための援助事業」は、被虐待を理由に児童養護施設等に入所中または養育家庭に委託中の子ども及びその保護者等に、家族再統合を図ることに加え、子どもと家族等との関係性の改善、子どもへの虐待の再発防止を目指してグループ心理療法等のプログラムを実施している事業である。 (3)保健師の活動状況 保健師は、保健、医療、育児に関する専門性を活かし、児童の健康及び心身の発育・発達に関するアセスメントや保健相談及び指導の実施、保護者の医療面や児童虐待に関するリスクアセスメントに基づく必要な保健、医療、育児面の相談支援のほか、医療機関、保健機関(地域母子保健、精神保健等)との連絡・調整、子ども虐待防止対策、地域支援体制充実のための地域関係機関との連携業務などを行っている。 令和3年度は、開設2年目となり児童福祉司の増員や役割が整理されたことに伴い総計数に変化が出ている。 訪問の全体数は減少したが、保健師が関わる対象となった児童等は令和2年度は93名、令和3年度は120名と増加している。 対象児童の継続的な関わりから、医療機関からの通告調査やより専門的な医療へのつなぎ、入院、服薬調整等の医療ニーズの高まったタイミングや地域への繋ぎ等の時期に集中した関わりへ変化している。 対象種別としては、児童思春期、妊産婦、幼児や小学校以上の学童など訪問や医療機関との連携が増加している。 1 医療機関との連携 令和2年度より子どもの虐待防止対策、地域支援体制充実のため区内の二次救急医療機関と近隣区・市の医療機関の巡回を実施している。 令和3年度はコロナ禍で未実施となっていた3医療機関を実施した。 区児童相談所開設の周知と各医療機関の子どもの虐待対応院内組織(CPT)の設置状況有無の確認を行い、設置が無い場合は虐待が疑われる児童を把握した際の院内体制の確認と課題の共有を行った。 意見交換を通じ、顔の見える関係の構築、通告や受信、情報のやりとり等連携強化を図っている。 国立成育医療研究センターとは令和2年度より性的虐待・性被害等や自傷行為である性非行等の児童に行われる「系統的全身診察」にかかる「覚書」を締結し、必要な児童は診察につないでいる。 また身体的虐待が疑われる外傷等がある児童についても系統的全身診察を活用した。 2 子ども家庭支援課兼務保健師との連携 令和元年度より子ども家庭支援センターに健康づくり課との兼務保健師を配置し、母子保健との連携の強化を図っている。 令和2年度より児童相談所保健師も5支所兼務保健師連絡会のメンバーとなり、保健師間の情報共有・役割の理解を深めている。 3 一時保護所看護師との連携 毎月1回の医療職担当者会において、情報交換や保健・医療面の課題(入所児童の健康診断等)を共有し対応策を検討している。 (4)業務委託医師の活動状況 児童相談所の医学診察は業務委託により実施し、一時保護児童の健康診断、子どもや保護者等に対する問診等による医学診断、及び児童相談所職員への医学的助言等を行っている。 また、親子関係の評価や精密な精神科学的評価及び心理学的評価等についての必要性が判断された場合は、通院による医学評価業務を行っている。 1 児童相談所または一時保護所での勤務体制 3名の医師が月に20日程度(一日当たり4時間〜8時間)、児童相談所または一時保護所において医学的業務を実施している。 2 主な業務内容 ア 児童相談所または一時保護所で実施する医学的評価 子どもや保護者等に対する問診等による医学診断、及び児童相談所職員への医学的助言等 援助方針会議、個別カンファレンス等での事案にかかる児童相談所職員等への医学的助言 一時保護所へ入所する子どもの健康診断及び入所している子どもの健康チェック イ 通院により実施する医学的評価 親子関係の評価や精密な精神科学的評価及び心理学的評価等 (5)弁護士の活動状況 1 弁護士相談の勤務体制 2名の弁護士の業務委託をしており、1名につき、原則月に4日(一日あたり4時間)、児童相談所において相談業務を実施している。 また、弁護士が児童相談所に出勤していない日の法的助言・指導を求める場合は、電話等を用いている。 2 業務内容 児童相談所業務に関して、法的な専門的見地から児童相談所職員への助言、指導に関すること及び対外的な対応に関すること 措置や一時保護されている子どもへの支援等に関する法的助言。 児童相談所職員の法的対応力向上のための研修の実施。 3 相談の実際 相談内容としては、「戸籍問題」「非親権者への対応」「親権者の同意がない中でのケースワークの進め方」「家庭裁判所への回答」「審査請求への対応」等、多岐にわたっている。 また、月1回程度、援助方針会議に出席し、主には一時保護児童や保護者の養育状況等を把握したうえで、法的対応が必要となるケース等について助言をしている。 児童相談所の方針と保護者の意向が合わず、法的対応が必要となるケースもあり、弁護士に相談するケースは令和2年度と比較して増加している。 児童相談所職員への助言以外では、必要に応じて保護者面接に同席し、法的見地から保護者に対する説明を行っている。 児童福祉法(以下「法」という)第28条の申し立てや親権喪失または停止の審判、法第33条第5項の、引き続いての一時保護の承認の申し立てやこれらに関する審問期日及び口頭弁論出廷、審判にかかる抗告等に対する資料作成等に関する業務については、代理人契約として委任している。 (6)区の一時保護の状況 令和3年度における区の一時保護は、123人となっており、令和2年度(145人)より減少した。 また、一時保護所での入所率が100%となることはなかった。 (7)一時保護委託の児童数 令和3年度における一時保護委託児童数は28人となっている。 5 社会的養護の状況 社会的養護とは、親の死亡や虐待または児童の心身状況から家庭での養育が困難になったなど、保護者・児童の一方または双方の理由により、家庭による養育ではなく、施設や里親により養育を行うことである。 (1)社会的養護のもとで育つ児童数 令和4年3月31日現在、施設や里親等へ入所措置・養育委託されている区の児童は140人となっている。 (2)里親等の状況 1 里親制度 里親制度は、児童福祉法に基づく制度で、親の離婚や疾病等の事情により家庭で生活できない児童や、親による虐待等により家庭で生活することが望ましくない児童を家庭に代わって公的に養育する社会的養護のひとつである。 里親には、以下の4種類の里親がある。 養育家庭 養子縁組を目的とせずに、様々な事情で実家庭を離れて暮らす子どもを一定期間養育する里親。 専門養育家庭 専門的なケアを必要とする子どもを一定期間養育する里親。 親族里親 両親が様々な事情で養育できない場合、その子どもの扶養義務者である親族が里親となり、養育すること。 養子縁組里親 養子縁組を目的とする里親。 養子縁組が成立するまでの期間、里親として子どもを養育すること。 また、養育家庭等で一定経験のある方が、事業届け出のうえ、養育者の住居で5人または6人の子どもを養育するファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)がある。 2 区における里親支援に関する業務(フォスタリング業務)の体制 ア 現状 フォスタリング業務は、里親制度を一層推進するため、里親制度の普及啓発、里親の養育力向上や里親委託を推進するなどの以下の業務を総合的に実施するものである。 里親制度の普及啓発による里親開拓(リクルート)及びアセスメント 里親登録前・登録後及び児童委託後の研修・トレーニング 委託候補児童と里親家庭のマッチング 未委託期間中から委託解除後のフォローまでを含めた里親養育への支援 イ フォスタリング業務委託の在り方検討について 里親支援体制の一層の充実に向けて、令和3年6月に児童福祉審議会のもとに「フォスタリング業務委託の在り方検討部会」を設置し、「フォスタリング業務委託の在り方」について検討を行った。 臨時部会において、一連のフォスタリング業務を包括的に委託することが望ましいという結論に至ったため、区では、検討結果を踏まえ、令和5年度からの包括的なフォスタリング業務委託に向けた準備を進めていく。 (3)里親支援業務の取り組み状況 1 「普及啓発・リクルート業務」「研修・トレーニング業務」 事業内容 令和2年度から、フォスタリング業務のうち、「普及啓発・リクルート業務」及び「研修・トレーニング業務」について一元的に外部委託し実施している。 委託先 東京育成園(フォスターホームサポートセンターともがき) 令和3年度実績 ア 相談受付 イ 研修・トレーニング業務 ウ 普及啓発 公式ラインアカウント開設 世田谷の里親相談室せたおやを令和3年6月に開設し、里親情報の発信を行っている。 「写真展 365日のさとおやこ」 里親子の写真や想い出の品とともに、社会的養育や里親制度を知るきっかけとするための写真展を開催 東京都の里親強化月間(10月、11月)に合わせ、区立中央図書館にて里親制度に関する書籍コーナー設置 区制PRコーナーでのパネル展示 2 里親支援機関事務事業 事業内容 里親委託をより一層推進するため、里親家庭への訪問等による相談支援、里親同士の相互交流、里子の自立支援などの業務を行う。 委託先 東京公認心理士協会 職員配置 里親委託等推進員、自立支援相談員 3 育児家事援助者派遣事業 事業内容 育児家事援助者の派遣による養育援助や家事などの生活援助を行うことにより、里親養育の安定を図る。 委託先 NPO法人バディチーム 4 その他の里親支援にかかる取り組み状況 ア 里親支援専門相談員 福音寮、東京育成園、カリタスの園つぼみの寮にそれぞれ配置されている里親支援専門相談員が、新規委託フォローアップ訪問、定期巡回訪問を実施し、里親子の状況に応じて、養育に関する助言等を行っている。 また、乳児院および児童養護施設に入所している児童が里親委託となる際は、長期外泊前のカンファレンスから参加し、支援にあたっている。 イ 地域と連携した取り組み 里親が地域の関係機関とつながり、適切な支援を受けることで、里子の健やかな生徒湯を目指すこと、また、職員、地域の関係機関が里親制度や地域で生活する里親子について理解を深める機会とすることを目的とした里親応援ミーティングを実施している。 令和3年度は3回開催した。 委託前後のタイミングで里親子と関係機関が顔の見える関係を作り、その後の連携のとりやすさにつながっている。 また、地域の子育て支援者や、大学などへの制度説明等のほか、おでかけ広場や保育園などでの里親トレーニングの実施、地域子育て支援コーディネーターと里親の交流、緊急保育による受け入れなど、様々な形で地域の関係機関等との連携による里親子の支援に取り組んだ。 (4)養育家庭の登録数及び委託児童数 令和4年3月31日現在の区内の養育家庭の登録数は53家庭であり、区の委託児童数は11人となっている。 (5)ファミリーホーム設置数及び委託児童数 令和4年3月31日現在、区内にはファミリーホームが2ホーム設置されている。 委託児童数は7人となっており、うち区の委託児童数は1人となっている。 区内2ホームのうち、養育家庭以降型ファミリーホームが1ホーム、法人型ファミリーホームが1ホームとなっている。 (6)里親等委託率の現状 令和4年3月31日現在、区における里親等委託率は23.8%となっている。 (7)養子縁組里親の登録と特別養子縁組の現状 令和4年3月31日現在、区児童相談所に養子縁組里親として登録された家庭は、48家庭となっている。 令和3年4月から令和4年3月までの特別養子縁組の成立数のうち、区児童相談所が関与した区の児童の特別養子縁組の成立数は3件となっている。 (8)児童養護施設の状況 1 児童養護施設の入所児童数 令和4年3月31日現在、区内にある児童養護施設の入所児童数は、児童養護施設(本園)49人、グループホーム46人、合計で95人となっている。 2 児童養護施設の小規模かつ地域分散化の状況 児童ができる限り良好な家庭的環境において養育されるよう、児童養護施設の小規模かつ地域分散化の推進に取り組んでいる。 6 進路状況 令和4年3月に中学校を卒業した区の児童の高等学校進学率は100%となっている。 また、令和4年3月における区の児童の大学等進学率は、児童養護施設が27.3%、児童自立支援施設が100%となっている。 7 児童養護施設等退所者支援の概要 (1)事業概要 児童相談所、区内児童養護施設等と連携しながら、満18歳となり児童養護施設や里親、自立援助ホームを退所する若者等に対して、「住宅支援」「居場所・地域交流支援」「給付型奨学金事業」を実施することにより、最も困難な状況にある若者の社会的自立を支援する。 (2)住宅支援 高齢者向け借り上げ区営住宅の空室を安価で提供し、児童養護施設等を巣立った若者が地域の中で安定した生活基盤を持てるよう支援する。 また、生活サポートとして、児童養護施設職員が月に一度入居者を訪問面談し、学業・就労の状況や共同生活の状況を確認しながら、社会的自立に向けた支援を実施している。 1 支援内容 2LDK〜3DKの住戸に複数名が入居(1人1室)し、共同で生活する。 大学等進学者は所定の修学年限の最終年度末まで、就職者は最長2年間入居が可能。 (3)居場所・地域交流支援 退去者等が、地域の中で身近に相談できる仲間や大人たちと交流する場、自分の好きなように寛いで過ごせる居場所として、区内2か所で実施。 (4)給付型奨学金事業 児童養護施設・里親のもとを巣立ち大学等へ進学する若者に、寄付を原資とする奨学金を給付し、学業と生活を両立させながら社会的自立を図れるよう支援する。 9 18歳到達児童への支援状況 児童相談所が対象とする子どもは、原則として18歳未満の者となっている。 しかし、以下の場合に限って例外規定が設けられており、18歳に達しても引き続き支援を行っている。 里親に委託されている子どもの委託の継続及び児童福祉施設等に入所等している子どもの在所期間の延長 18歳に達するまでに一時保護(一時保護委託を含む)が行われた子どもの保護期間の延長 18歳に達するまでにされた措置に関する承認の申し立てに対する審判が確定していない場合または当該申し立てに対する承認の審判がなされた後において施設入所等の措置がとられていない場合の一時保護 18歳以上の未成年者について児童相談所が行う親権喪失等の審判の請求及びこれらの審判の取り消しの請求並びに未成年後見人の選任及び解任の請求 里親委託中の18歳以上の未成年者で親権を行う者または未成年後見人のないものに対する親権代行 義務教育を修了した子どもまたは子ども以外の満20歳に満たない者の児童自立生活援助の実施 令和3年度実績 上記例外規定に該当し、支援を継続した児童数16名 10 子どもの権利擁護 (1)一時保護所内における取組 1 一時保護所第三者委員の設置 弁護士等を一時保護所第三者委員として設置した。 委員は定期的に一時保護所へ訪問し、子どもたちの様子を確認するとともに、必要に応じて面談し、意見や要望を聞き取り、その内容は適切に児童相談所等へ伝達するとともに、対応経過と結果について確認している。 2 その他の取り組み 入所者等からの苦情や要望の適切な解決を図るための体制を構築するとともに、一時保護所へ入所した際の初回面接時に、一時保護所のしおりを使って一人ひとりの子どもの権利が保障されることを一時保護所職員から説明しているほか、子どもが誰にも見られずに、自身の意見を、第三者委員、人権擁護機関へ相談をすることができる意見箱の設置、入所している子どもたちによる会議の開催(毎週)や職員による子どもの意見を聴く会の実施(毎月)など、一時保護所内における子どもの権利の保障に努めている。 (2)一時保護所の外部評価等の実施 一時保護所において子どもの権利が守られている体制であるかを含めた第三者による外部評価は3年に一度の実施を予定しており、前回は令和2年度に実施した。 中間年となる令和3年度は、前回の外部評価と同様の項目について内部評価を実施した。 また、今回の内部評価の実施にあたっては、前回の外部評価での評価結果も踏まえた取り組みとして、法令遵守、職員規範、職員倫理等に関するセルフチェックを一時保護所の全職員で実施し、業務の確認および振り返りを合わせておこない、組織としての法・規範・倫理に対する意識の向上に取り組んだ。 (3)措置された子どもにかかる取り組み 1 児童福祉審議会措置部会 児童福祉審議会は児童相談所解説に伴い、児童福祉法、世田谷区児童福祉審議会条例を根拠に、区の児童福祉に関する調査審議を行う合議制の機関として設置するもの。 本審議会において設置された措置部会は、子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の措置と一致しない場合などに、児童相談所から諮問を受け審議し、その結果を答申する機関であり、原則として毎月実施することとしている。 委員は6名で学識経験者や弁護士、医師など幅広し分野から構成され、専門性を生かした審議を実施している。 2 被措置児童等虐待対応 児童福祉法第33条の14の規定により、被措置児童等虐待にかかる通告、届け出がされた場合、速やかに、当該被措置児童等の状況の把握、虐待事実の確認等を行うこととされており、区としては施設等検査・指導担当所管において実施する。 事実確認の結果等については児童福祉法第33条の15の規定により児童福祉審議会へ報告するとともに、同法第33条の16及び同法施行規則第36条の30の規定により、毎年度、被措置児童等虐待の状況、被措置児童等虐待があった場合に講じた措置等を公表する。 令和3年度被措置児童等虐待状況 令和3年度では、被措置児童等虐待通告を2件受理し、そのうち1件について、虐待認定した。 再発防止に向けた区の取り組み 令和3年10月〜12月にかけて、区児童相談所が措置しているすべての社会的擁護の下で養育されている児童の養育状況の点検を行った。 また他の児童相談所の児童を受託している区内の里親についても、他児相や里親支援専門相談員と連携し、養育状況は把握しており、いずれも被措置児童等虐待にあたる事案はないことを確認した。 本事例を通して、こうした事案の発生を未然に防止し、児童にとって最善の養育を提供していくためには、里親の「社会的養護」や「児童虐待」への基本的な認識、関係機関と連携して共に児童を支援していくという視点に対する理解を深めていくことの必要性が、あらためて課題として明らかになった。 これを踏まえ、次のような取り組みを進める。 里親希望者のアセスメントや、里親制度の理解を深めてもらうために行っているフォスタリング機関による認定前のインテーク面接を、これまでの1回から2回に増やし、里親の強みや課題を把握するとともに、里親希望者が「社会的養護の意義」等の基本的な認識について理解が深められるようにする。(令和4念3月実施) 令和5年度からのフォスタリング業務の包括的委託にあたっては、「社会的養護の意義」等について、より一層の理解を促すための研修等のさらなる充実を図るとともに、里親が孤立することなく、早期に適切な支援や指導につなげることができるよう、里親にとって相談がしやすく、かつ相談内容を関係機関が迅速に情報共有を図ることのできる里親の相談支援体制の構築に向け取り組む。 里親委託されている児童を含めた子供の権利擁護(意見表明支援)の在り方について、法改正の動向に即して今後検討を進める。 (4)せたホッとを活用した権利擁護 一時保護や措置された子どもが、児童相談所が行った措置に対する不服・不備がある場合や、施設入所者同士の人権侵害、入所施設等の処遇不満、改善要望などがあった場合は、児童相談所や当該施設等において対応することを基本とするほか、せたがやホッと子どもサポート(以下「せたホッと」という)へ相談等できるよう、「一時保護所のしおり」や「子どもの権利ノート」を用いて、せたホッとの制度や連絡方法を周知した。 子どもからの意見がせたホッとへ寄せられた際には、せたホッととも連携しながら、その内容に応じて必要な改善を図る等の対応を行っている。 11 人材育成 (1)人材育成計画 世田谷区児童相談所では、継続的に人材育成に取り組むこととし、「世田谷区児童相談所の人材育成研修計画」を作成し、児童福祉司、児童心理司、一時保護所職員の経験年数及び職層に応じた目標を掲げている。 また、新任・横転者については、所内研修を実施し、児童相談所業務の基礎を学んでいる。 実態に応じた知識や技術を習得できるよう、職員のアンケート結果や各SV(係長)の意見、業務内容を踏まえ、年度ごとに研修項目を見直している。 (2)研修内容 1 外部研修等派遣研修 職員が職務遂行に関し、研修課題をもって児童相談業務に関する外部研修、学会等に参加し、その成果を、自己の職務及び職場に反映させることを通じ、職員の資質の向上を図っている。 2 外部講師による研修 日頃の業務のなかで、必要とされる知識、技法について、医学的、心理的等専門的見地から学び、実践に役立てることを目的としている。 3 サインズ・オブ・セーフティ・アプローチ研修 児童虐待対応の際、家族の強みに焦点をあてることで、家族が主体となり、児童相談所と家族が協働して安全なプランを考え、家族再統合や親子関係の再構築等を目指すためのソーシャルワークを学ぶ。 実践的、かつ継続的、組織的に取り組んでいくことができるよう、月1回の実践リーダー研修と年4回の全体研修を実施している。 (3)OJT研修 新任・横転者職員の支援体制として、児童相談所勤務経験のある職員を中心に技術指導を実施し、各SV(係長)が全体の把握や経験者職員も含めた指導を行っているが、そのほかにOJT担当職員を置いている。 区が実施している「新規採用職員のOJT]に加え、児童相談所の業務内容に合わせて、「担当職務」、「コミュニケーション」、「スキルアップ」、「健康や生活習慣」の4項目について、OJT担当職員と新任職員で一緒に目標を設定し、3か月ごとに振り返りを実施している。 この体制は、技術指導とは別に、新任職員の不安や負担を軽減する仕組みとしてのメンター的な役割を担っている。 1年目のみでなく、3年程度はOJT担当職員が見守り、エンパワメントすることで、新任職員が自分の成長を継続的、客観的にとらえ、今度はその職員がOJT担当職員となり新任職員を支える立場になっていくことを目指している。 12 児童相談所と地域のかかわり (1)世田谷区要保護児童支援協議会の取り組み 1 全区協議会 区全域に関する要保護児童等の支援の課題について検討するとともに、関係機関等の円滑な連携を確保するための環境整備並びに区民などへの普及及び啓発を行った。 なお、本会は子供・若者部が主催している。 令和3年度開催実績 2回(世田谷区DV防止ネットワーク代表者会議と共同開催) 2 地域協議会 地域における要保護児童等の支援の課題を検討するとともに、各地域の課題解決に向けて、関係機関等の連携・協力体制の確保を行った。 なお、本会は各地域の子ども家庭支援センターが主催している。 令和3年度開催実績 計5回 3 進行会議(合同会議と同時開催) 各地域で毎月ケースの進行管理を実施。 子ども家庭支援センター、児童相談所、児童相談支援課が参加する。 令和3年度開催実績 計60回 (2)各関係機関との連携状況 1 子ども本人への普及啓発にかかる連携 要保護児童支援協議会における児童相談所及び児童虐待通告ダイヤルの周知のほか、特に子ども本人を対象とし、児童相談所の存在や、虐待を受けたときの連絡先について、わかりやすいカード等を直接配布するなど、区立小学校、中学校をはじめとする関係機関と連携して普及啓発に取り組んでいる。 令和3年度実績 児童虐待通告ダイヤル・せたがや子どもテレフォンPRカードの配布 区立小学校、区立中学校 2 警察との連携 児童虐待対応においては、関係機関が緊密に連携して情報を共有し、早期発見、早期退所していくことが必要であることから、児童の安全確保を目的に世田谷区と警視庁生活安全部少年育成課は、「児童虐待対応の連携強化に関する協定書」を締結し、両者が保有する児童虐待事案の情報共有や意見交換会の実施など、必要な連携を図っている。 協定書の主な内容 児童虐待事案にかかる情報共有(身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、家庭復帰事案、転居事案など) 意見交換会の実施(代表者意見交換会、実務者意見交換会) 要保護児童対策地域協議会における連携の促進 普及啓発活動の推進など 令和3年度実績 児童虐待事案にかかる情報共有 世田谷区から警察への情報共有 意見交換会 代表者意見交換会令和3年10月29日 世田谷区が、東京都と警視庁が開催する「児童相談所と警察との連絡会議」に参画することにより、相互の意思疎通の理解を図っている。 実務者意見交換会令和3年12月17日 世田谷区と世田谷区内各警察署が意見交換会を開催し、相互の意思疎通と理解を図っている。 その他(警視庁と特別区児童相談所の実務者連絡会)令和3年10月21日 警視庁と児童相談所を開設している特別区が意見交換会を開催し、相互の意思疎通と理解を図っている。 3 せたホッととの連携 世田谷区に在住・在学・在勤の子どもの権利を守り、救済する機関であるせたホッとでは、子どもから様々な相談を受け付けている。 その中でも児童虐待と疑われる相談案件がせたホッとに入った場合は、児童相談所へ通告または、情報提供をしてもらい、解決に向けて連携した対応を行っている。 4 その他、関係機関が主催する研修講師派遣を通した連携 区内の子育て支援機関等が主催する各研修会に児童相談所職員が講師として赴き、児童相談所の開設や、新しい区の児童虐待対応について等の説明を行っている。 令和3年度実績 14件