令和3年8月26日 子ども・若者部子ども家庭課 母子生活支援施設の機能強化について 1 主旨 令和3年2月9日福祉保健常任委員会で報告した「区における母子生活支援施設の今後の方向性について」では、母子生活支援施設(区立:パルメゾン上北沢、民立:母子生活支援施設かわだ、ナオミホーム)について、入所家庭だけでなく広くひとり親家庭等も含めて支えていく地域のひとり親家庭支援の拠点を目指し、「小規模化」及び「多機能化」、「支援の質の維持・向上」を行っていくと定めている。 ついては、この方向性に基づき、母子生活支援施設が地域のひとり親家庭支援の拠点となるために必要な機能強化を行い、ひとり親家庭支援等のより一層の充実を図る。 ※母子生活支援施設の今後の方向性については、別紙1参照 2 令和4年度から5年度にかけての段階的な機能強化 (1)段階的な機能強化の考え方 この間、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を踏まえ、緊急一時保護事業など主に緊急性の高い支援の充実を先行して行ってきたが、区内3施設が地域のひとり親家庭支援拠点となるため、令和4年度から5年度にかけて段階的に機能強化を図る。 令和4年度 入所家庭支援の充実 令和5年度 地域支援の充実 (2)全施設共通の支援の質の維持・向上の取り組み 1「母子生活支援施設の支援者のガイドライン」の策定 当事者を主体とした支援を確実に実践するために、施設の人材育成や支援内容の標準化等を図る「母子生活支援施設の支援者のガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を令和3年度に策定する。 このガイドラインを活用しながら、研修等により職員のスキルアップを図る。 2 各施への当事者主体支援推進担当の配置 母子生活支援施設の今後の方向性の6つの柱のひとつである「ひとり親家庭支援拠点を担い、当事者主体の支援、子ども支援を進める人材づくり」に基づき、当事者主体のソーシャルワークの役割を果たす人材づくりを進めるため、令和4年度に各施設の職員から当事者主体支援推進担当を定める。 その者が中心となって、施設でガイドラインを踏まえた支援が実践できているかを確認し、地域の支援者や児童相談所、子ども家庭支援センターと連携を強化しながら支援を行う。 ・当事者主体支援推進担当の役割 施設でガイドラインを踏まえた支援が実践できているかの確認と改善を施設長とともに行う。 必要に応じて、当事者の思いの代弁や支援者の当事者への説明の仲介など関係機関との円滑な調整を行うといった当事者へ寄り添い伴走する支援の中心を担う。 ・当事者主体支援推進担当に対する区の役割 当事者主体支援推進担当を対象に、ガイドラインを踏まえた複数回の研修を実施し、実践と振り返りを交互に行い、そこで得た学びを他のスタッフとも共有させながら施設全体の質の向上にもつなげていく。 (3)区立施設 1 令和4年度の機能強化 ア 支援の質の向上に向けた民立施設のバックアップ 当事者主体の支援の推進やガイドラインの活用に関し、民立施設への助言を行うなど支援の質の向上の中核的役割を担う。 2 令和5年度の機能強化 ア ひとり親家庭等への土日夜間の相談支援 ひとり親家庭等が、土日夜間も含めより相談しやすい環境を整備し、離婚検討の段階から父母が子どもの福祉を念頭に置いて離婚後の生活等を考えることができるよう相談支援を実施する。 【実施概要】(案) ・相談内容 ひとり親家庭支援や養育費、面会交流等に関する相談 ※相談を通じてDVや養育困難を把握した場合には子ども家庭支援センター等と連携して支援にあたる。 ・開設日時 週3日程度(平日17時〜21時、土日10時〜17時) ※うち月に1回弁護士相談(予約制)を実施 ・対象 ひとり親、離婚検討中の親 ・その他 養育費に関する出張相談を区内公共施設にて年4回程度、土曜もしくは日曜に実施 ※想定経費:8,077千円 特定財源:3,130千円(国 312千円、都 2,818千円) (弁護士相談分⇒国1/2 母子家庭等対策総合支援事業) (本体相談分⇒都1/2、上限5,407千円 子供家庭支援区市町村包括補助事業) (出張相談分⇒都3/4 ひとり親家庭等生活向上事業) イ 母子一体型ショートケア事業での宿泊支援の実施 児童相談所や子ども家庭支援センターとの連携を強化しながら、養育困難な状況にある子育て家庭を見守る体制の充実を図るため、母子一体型ショートケア事業において、利用する母の健康状態や育児不安の強さ等により、必要に応じて子ども(乳幼児等)を夜間にスタッフが預かる宿泊支援を実施する。 ※宿泊支援分経費:180千円(1回あたり12千円の単価払い) 特定財源:90千円(都1/2 子供家庭支援区市町村包括補助事業) (参考:本体分経費672千円) ウ 施設における子育て支援機能の充実 母子一体型ショートケア事業での宿泊支援の実施にあわせ、さらなる施設の体制強化を図る。 体制強化にあたっては、母子一体型ショートケア事業だけでなく、入所家庭に対しても、母の健康状態や育児不安の強さ等により、必要に応じて柔軟に子ども(乳幼児等)を夜間にスタッフが預かる宿泊支援を実施できる体制を構築し、現在も行っている施設内保育機能に加えてさらなる子育て支援機能の充実を図る。 【実施概要】 ・体制強化の内容(人員配置) 国の「育児指導機能強化事業」を活用し、子育て支援担当職員(保育士等の資格者)を配置する。(専任1名) ・支援内容 事業全体の企画、関係機関との円滑な調整、支援対象者への相談や同行支援、宿泊支援、親子レクリエーション、退所者等への家庭訪問 等 ※経費:4,887千円 特定財源:2,443千円(国1/2 育児指導機能強化事業) 3 運営事業者の選定 社会情勢の急激な変化によるひとり親家庭の複雑化かつ多様化している課題に柔軟に対応するため、令和5年度に区立施設の事業内容を見直すことから、令和4年度に運営事業者をプロポーザルにより選定し、令和5年度より委託により実施する。 4 施設改修の実施 上記2アの新たな機能を実施するため、令和4年度から令和5年度にかけて相談室の設置など施設改修(設計・施工)を行う。 ※改修工事費については調整中 5 今後の地域支援の展開の検討 令和5年度に実施するひとり親家庭等の相談支援を通じて把握したニーズ等も参考にしながら、区立施設として必要な地域支援の展開について検討する。 (4)民立施設 1 令和4年度の機能強化 【母子生活支援施設かわだ】 ア 緊急一時保護事業の実施 母子生活支援施設の今後の方向性に基づき、民立施設の小規模化に伴う定員改定を行ったことを踏まえ、新型コロナウィルス感染症拡大の影響による今後のDV被害の増加や深刻化を鑑み、単身女性や妊婦も含め迅速かつ確実にDV避難できる体制を整備するため、母子生活支援施設かわだにて新たに実施する。 ※経費:672千円 特定財源:448千円(国・都1/3ずつ 地域子ども・子育て支援事業) イ 母子一体型ショートケア事業での宿泊支援の実施 区立施設と同内容を委託により実施 ※宿泊支援分経費:180千円(1回あたり12千円の単価払い) 特定財源:90千円(都1/2 子供家庭支援区市町村包括補助事業) (参考:本体分経費672千円) ウ 施設における子育て支援機能の充実 区立施設と同内容を補助により実施 ※経費:4,887千円 特定財源:2,443千円(国1/2 育児指導機能強化事業) エ 施設改修の実施 上記ア、イの実施に伴い、令和4年度にシャワー室の増設など施設改修を行う。 (国の次世代育成支援対策施設整備交付金に基づき、一部費用を補助する。) ※改修工事費については調整中 2 令和5年度の機能強化 【民立施設共通】 ア 「世田谷区母子生活支援施設事業充実費」への地域支援加算の追加 母子生活支援施設の今後の方向性に基づく多機能化に伴う人材確保のために、民立施設に対し、母子の処遇向上及び当該施設の運営充実を図り、もって児童福祉の増進に資することを目的とする「世田谷区母子生活支援施設事業充実費交付要綱」に「地域支援加算」を追加することで、地域のひとり親家庭等への土日夜間の相談支援や就労支援、放課後支援の実施など民立施設が持つ知識や経験、柔軟性等を最大限に活かし、創意工夫による地域に開かれた支援の実施を後押しする。 ※想定経費:9,600千円(1施設あたり4,800千円) 3 「ひとり親家庭支援センター」としての位置づけ 母子生活支援施設は、DV被害者のシェルター機能も有していることから所在地を公開していない。 一方で、地域のひとり親家庭支援拠点を目指していくことから、今回の段階的な機能強化にあわせ、区立施設については、令和5年度に母子生活支援施設とは別に「ひとり親家庭支援センター」として位置づけることとし、「(仮)ひとり親家庭支援センター事業実施要綱」を別途定め、地域に開かれた支援を施設の安全性を保持しながら実施していく。 なお、民立施設については、地域支援の実施状況を踏まえ、「ひとり親家庭支援センター」としての位置づけを検討する。 4 概算経費まとめ 別紙3のとおり 5 今後の主なスケジュール(予定) 令和4年 3月 ガイドライン策定 4月以降 ガイドラインを活用した研修等の実施 母子生活支援施設かわだにて 母子一体型ショートケア事業の充実(宿泊支援) 母子生活支援かわだにて緊急一時保護事業の実施 8月 区立施設運営事業者のプロポーザル公告 10月 区立施設運営事業者の選定 12月 区立施設運営引継ぎ委託契約 5年 4月 区立施設・民立施設の新たな展開 別紙1 参考 母子生活支援施設の方向性 母子を分離せず一体で支援できる唯一の児童福祉施設である強みを最大限に活かし、子どもの最善の利益を優先して考慮しながら、貧困や虐待の連鎖を断ち切る支店を持って、入所者だけでなく広くひとり親家庭等も含めて支えていく地域のひとり親家庭支援の拠点を目指す。 (1)目指す支援の方向性(6つの柱) 1 社会的養育支援の役割を担う (愛着形成・親子の関係づくりなど構築・再構築のための支援について) 施設は、施設内・施設外でのひとり親家庭の親子の関係づくりなど構築・再構築のための支援を行う。 施設の支援としては母子一体型ショートケア事業等の機能をメインとした親子の関係づくりに向けた支援や、地域の中での養育里親などへの子育ての支援を担う。 1 施設内や地域のひとり親のキャリア形成支援を支える 施設は、親と子の子育てと仕事の両立を支えるためのライフステージに合わせたキャリア形成い支援を行う。 自立支援の柱となる自立支援計画の策定、親の就業支援、親子の学習支援など、日々の生活の中で支援をする。 自立支援計画に関しては、子ども家庭支援センター等の関係機関と一体化した支援を行う。 3 地域のひとり親家庭にも開かれた施設として、頼られる支援を行う 施設は、区内のひとり親が施設内で暮らすか、地域で暮らすか今の状態を問わず、様々な状態にある母と子が継続的に、安全で安心な暮らしができるように居場所機能を担う。 また、入所者だけでなく、地域で生活するひとり親家庭に対して、子育て相談や、施設内保育など、施設機能も活用したサービス提供のできる開かれた施設とする。 必要に応じて、地域団体等と連携・協働し、多様なニーズに対応する。 4 地域の多様な社会資源と連携し、ハイリスク家庭等に対するセーフティネットの機能を担う 施設は、DVや虐待被害者への対応として、シェルター機能を確保しつつ、特定妊婦、地域で生活する困難を抱えた家庭など、ハイリスクの家庭に対しても地域で支えていく役割を担う。 5 ひとり親家庭支援拠点を担い、当事者主体の支援、子ども支援を進める人材づくり 施設は、ソーシャルワーク機能を担う職員の育成を行う。 入所者だけでなく、地域で生活するひとり親家庭等に対して、支援の専門性が求められることから施設職員のキャリアパスの仕組みをつくり、新たな機能を担う当事者主体のソーシャルワークの役割を果たす人材づくりを行う。 6 施設の条件にあった事業の見直しを行う 区は、母子生活支援施設の多機能化として施設が地域支援機能を担うために、施設への支援等について検討する。 施設における人材育成のための研修の充実や、既存施設の多機能化について、ひとり親家庭支援拠点としての施設づくりのバックアップを担う。 (2)目指す母子生活支援施設の姿 地域のひとり親家庭を支援する拠点として、方向性の6つの柱を実現するために、以下の施設運営を目指していく。 なお、施設の安全性を保持しながら、母子生活支援施設が持つ様々な機能を活かし、地域のひとり親家庭等にも開かれた支援を展開していく。 1 小規模化 現在の社会状況や生活スタイル、また、様々な課題を抱えるひとり親家庭の個々のニーズにきめ細かく対応するため、受入世帯数を絞り、入所者へのハード面・ソフト面での支援を充実する。 2 多機能化 入所者支援だけでなく退所者や地域のひとり親家庭等も利用できる、親子の関係づくりなど構築・再構築のための支援やDV等保護をはじめ、子育て支援や学習支援、食の支援等の様々な支援を実施することで、地域のひとり親家庭等を妊娠期から高校生世代期まで地域の支援者とともに切れ目なく支えていく。 別紙2「地域のひとり親家庭支援拠点に向けて」を参照 多機能化の考え方 「生活支援、就労・キャリア支援、子育て支援、学びの支援」を組み合わせた多機能化により、必要な支援につながるきっかけを多面的に展開する。 何かでつながれば、同じ施設内で様々な支援につながることができ、今の生活の安定と安心につなげていく。 3 支援の質の維持・向上 当事者を主体とした支援を確実に実践するために、施設の人材育成や支援内容の標準化を図る「母子生活支援施設の支援者のガイドライン」を作成し、施設合同の研修等により支援の質を維持・向上させ、地域の支援者や児童相談所、子ども家庭支援センターと連携を強化しながら支援を行う。