別紙1 世田谷区社会的養育推進計画 令和3年4月 世田谷区 はじめに 平成13 年12 月に世田谷区が「世田谷区子ども条例」を制定してから18 年が経過しました。 この間、区は、多様な取り組みを立ち上げ、子ども・子育てにかかる支援を前進させるとともに、令和2年4月には、子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進する「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」に基づく新たな取り組みをスタートしました。 時を同じくして、令和2年4月に区立の児童相談所を開設したことにより、特別区で初めてとなる、家庭への養育支援から代替養育までを通した社会的養育の推進に一貫して取り組む基盤が整えられました。 こうした基盤の下、社会的養育の着実な推進を図るにあたっては、強固な推進体制の整備と、それに向けた区の基本的考え方や目標とする全体像を具体的に示す必要があります。 そのため、これらを明らかにした「世田谷区社会的養育推進計画(令和3年度〜11年度)」を策定することとし、令和2 年度において、児童福祉審議会による専門的かつ広範的な見地からのご議論をいただくとともに、パブリックコメントによる区民意見募集や、社会的養護の当事者へのヒアリングなどを行ってまいりました。 このような経過を経て本計画を策定するものであり、区民の皆さまのご期待に応えるべくその推進に全力を尽くし、平成28年改正児童福祉法の理念に則り、子どもの権利の保障と、最善の利益が優先された“みんなで子どもを守るまち せたがや”を実現してまいります。 引き続き、区民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。 令和3年4月 世田谷区長 保 坂 展 人 第1章 基本的考え方と全体像 1 計画の概要 各都道府県は、「家庭養育優先原則」を徹底し、子どもの最善の利益の実現に向けた社会的養育の体制整備の基本的考え方と全体像を「都道府県社会的養育推進計画」として策定することとされている。 平成30年7月に、その策定要領が国より示されており、基本的には各都道府県において策定するとされているが、児童相談所の設置市(児童相談所を開設した特別区含む)においても本計画を策定できることとされている。 参考 都道府県社会的養育推進計画の記載事項(平成30年7月厚生労働省子ども家庭局長通知抜粋) (1)都道府県における社会的養育の体制整備の基本的考え方及び全体像 (2)当事者である子どもの権利擁護の取組(意見聴取・アドボカシー) (3)市区町村の子ども家庭支援体制の構築等に向けた都道府県の取組 (4)各年度における代替養育を必要とする子ども数の見込み (5)里親等への委託の推進に向けた取組 (6)パーマネンシー保障としての特別養子縁組等の推進のための支援体制の構築に向けた取組 (7)施設の小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化・機能転換に向けた取組 (8)一時保護改革に向けた取組 (9)社会的養護自立支援の推進に向けた取組 (10)児童相談所の強化等に向けた取組 (11)留意事項 2 策定の目的とこれまでの経緯 区は、児童相談所開設に伴い、家庭への養育支援から代替養育までを通した社会的養育の体制整備に一貫して取り組むこととなる。また、社会的養育を着実に推進していくためには、その体制整備に向けた区の基本的考え方と、目標とする全体像を具体的に示す必要がある。 こうしたことから、区は、「世田谷区児童相談所設置・運営計画」(令和元年7月最終更新)において、これらを明らかにした「世田谷区社会的養育推進計画(令和3年度〜11年度)」(以下、この章において「本計画」という。)を策定することを定めたものである。 3 計画の「理念」・「目指すべき姿」 背景 子どもや子育て家庭を取り巻く環境は、社会情勢とともに目まぐるしく変化している。 こうした変化に対応するため、平成12年の「児童虐待の防止等に関する法律」の制定など国による児童虐待防止の取り組みが進められるとともに、区においても、地域と力を合わせ、児童虐待の発生予防や、早期発見・早期対応、虐待を受けた子どもの保護・自立などの施策を展開してきた。 一方、東京都においては、都の児童相談所と、特別区の子ども家庭支援センターの両機関が連携した児童相談行政が展開されてきたが、児童虐待相談対応件数の増加が続く中、都区の二元的な運用体制の下で生じる、情報共有をはじめとした様々な問題が指摘され、その解消が喫緊の課題となっていた。 こうした背景の下、特別区は、妊娠から出産、保育、幼児教育、学校教育まで責任を持つ区による一元的な児童相談行政の運営が必要であるとの認識から、児童相談所の特別区への移管に向けた都との協議に臨んできた。 その後、特別区長会の要望を受け、平成28年の児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正において、平成29年4月より特別区も政令の指定を受けて児童相談所を設置できることが明記され、ようやくその設置が具体化されるに至った。 区の児童相談所設置とその目標 平成28年の児童福祉法の改正では、昭和22年の制定時以来の理念規定が見直され、児童は、適切な養育を受け、健やかな成長・発達や自立が図られ、それらを保障される権利を有することなどが明確にされている。 区は、こうした法改正の趣旨等を踏まえ、早期の児童相談所の移管が子どもの最善の利益のために必要であると判断し、令和2年4月に特別区初となる区立の児童相談所を開設した。 区の児童相談所の設置は、法の新たな理念の実現に向けた、戦後から続く児童福祉のあり方を大きく前進させる大きな挑戦である。 この認識の下、あらゆる子どもには家庭を与えられるべきという視点に立ち、子どもが家庭で健やかに養育されるよう保護者支援を重点的に行うとともに、子ども家庭支援センターと児童相談所の一元的な運用を大きな柱として、地域の支援を最大限に活用した予防型の児童相談行政の展開を図っている。 本計画の「理念」・「目指すべき姿」 区は、児童相談所の開設と、児童相談行政の再構築に向けたこれまでの取り組みを引き継ぎ、そのさらなる前進を目指すこととし、本計画において、次のことを理念として定め、その実現に向けた取り組みや目標などを明らかにするものとする。 本計画の「理念」・「目指すべき姿」 区は、子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進するとともに、家庭への養育支援から代替養育までを通した、社会的養育の体制整備に一貫して取り組み、平成28年改正児童福祉法の理念に則り、子どもの権利が保障され、最善の利益が優先された「みんなで子どもを守るまち・せたがや」の実現を目指します。 4 計画の位置づけ (1)区の社会的養育の全体像 令和2年4月、区は子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進する「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」に基づく新たな取り組みを開始した。 この「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」は、区の子ども・子育てにかかる相談支援を網羅し、家庭への養育支援から代替養育までを通した区の社会的養育の全体像として位置づけられるものである。 世田谷区子ども計画(第2期)後期計画の概要 (世田谷区子ども計画(第2期)後期計画より抜粋・一部編集) (2)世田谷区社会的養育推進計画と他計画との関係性 1 世田谷区子ども計画(第2期)後期計画と本計画の関係 本計画は、「家庭養育優先原則」を徹底し、子どもの最善の利益の実現に向けた体制整備を進めるため、国の示す策定要領に沿いながら、「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」で示す様々な取り組みのうち、当事者である子どもの権利擁護や、里親等への養育委託の推進等に向けた目標や具体的な内容等について定めるものである。 2 世田谷区児童相談所設置・運営計画と本計画の関係 「世田谷区児童相談所設置・運営計画」は、児童相談所の開設に向けた目標を設定し、児童相談所開設後における児童相談行政の運営にあたっての基本的な指針とするべく、有識者・関係機関との議論や、実務面での検討状況を取りまとめ、令和元年7月の最終更新をもって確定したものである。 本計画は、「世田谷区児童相談所設置・運営計画」で定めた方向性を踏まえつつ、児童相談所開設以降における子どもの権利擁護や、里親等への養育委託の推進等に向けた目標や具体的な内容等について定めるものである。 3 「都道府県社会的養育推進計画」と本計画の関係 本計画は、「新しい社会的養育ビジョン」及び「都道府県社会的養育推進計画策定要領」を踏まえるとともに、区の実情を踏まえ、定めるものである。 一方、都は、令和2年3月に、国の示す策定要領に沿い、令和2年度から令和11年度を計画期間とする社会的養育推進計画を策定したところである。区は、これを踏まえつつ、地域との顔の見える関係を最大限に活用し、家庭養育を優先した社会的養護の受け皿の拡充を図るなど、区ならではの社会的養育推進計画の策定を目指すものである。 区の計画策定にあたっては、都の計画の着実な取り組みを前提に、区の子どもたちが適切な養育を受けられる機会の拡充を目指すこととし、都の計画推進とも整合を図りながら定めるものである。 5 計画期間 令和3年度から令和11年度までの9年間とする。 令和6年度に進捗状況の検証、計画の見直し等を行う。 令和6年度は、区の社会的養育の全体像として位置づけられる「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」の終期にあたるとともに、本計画の中間年にあたることから、当該年度において本計画に基づく取り組みの進捗状況の検証や、計画の見直し等を行うものである。 コラム1 社会的養育推進計画の策定にあたって (今後の世田谷区の取り組みに期待すること) 明治学院大学名誉教授 松原 康雄 (世田谷区児童福祉審議会委員長) 現代社会にあって、家族が子育ての基礎集団としての機能を果たすためには、1994年に日本も締約国となった「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)でも確認されているように社会的な支援が必要です。 特に、生活や養育に課題を抱える親子には手厚い支援が必要です。 社会的養育推進計画は、2016 年の児童福祉法改正を踏まえて、「新しい社会的養育ビジョン」を実現していくために児童相談所を設置する自治体に策定が求められているもので、児童相談所を任意設置できる中核市や特別区も策定できるとされています。 社会的養育推進計画(以下、「計画」という。)は、「家庭養育優先原則」の徹底による「子どもの最善の利益」の達成を目的としています。 世田谷区では、児童相談所設置特別区として、計画策定に取り組みました。 地域の親子により近い場所で支援を提供することには、きめ細やかな支援を実現するうえで大きなメリットがあります。 同時に都内最大の人口を有する特別区という規模と、それにみあった自治体としての「力」を有した世田谷区が計画することは幅広い支援策策定とその実施を可能としました。 計画は世田谷区が設置する児童福祉審議会のなかに設けられた策定のための部会を中心に検討されました。 部会には児童福祉審議会より学識経験者、施設関係者、弁護士、区民委員、計9 名の参画を得て熱心な論議がなされました。 策定過程のなかでは、当事者を含めた参考人からのヒアリング、区議会での検討、パブリックコメントなども実施されました。 ヒアリングでは、関係者から、子どもへの暖かい眼差しと、厳しい現状と課題を教えていただき、当事者からは貴重な示唆をいただけました。 議会での議論も参考となりましたし、パブリックコメントでは計画案に対するご意見に加えて、子育てや生活に関するご意見もいただくことができました。 このようなプロセスを経てこの計画は、「子どもの最善の利益」とは何か、どのようにしたら実現できるのかを中心にして策定されました。 子どもの成長発達、子どもの養育は地域の支えが必須です。 これを欠いた計画は画餅となります。この計画を「わがこと」という立場から受け止め、支えていただければ、児童福祉審議会の委員長・部会長として幸いです。 計画は、常に点検され、見直しがなされていくものです。 区としても当事者である、子どもや家族の声を尊重しながら、計画実施と改定に取り組まれることを期待します。 第2章 世田谷区の状況 1 人口等 (1)区の人口の推移 区の総人口・児童人口ともに増加傾向にある。 年代別にみると少し傾向が変わりつ つあり、これまで0〜5歳人口の増加が顕著であったが、6〜11歳人口の増加が著しい。 平成27年から令和2年にかけての人口の増減> 総人口 35,813人増 0〜5歳人口 33人増 6〜11歳人口 5,136人増 12〜17歳人口 1,924人増 各年1月1日現在 「住民基本台帳人口(日本人のみ)」より作成 (2)区の人口推計 平成29年7月に策定した「世田谷区将来人口推計」では、0〜5歳人口については令和7年まで横ばい傾向で令和8年以降は増加、6〜11歳人口については令和4年まで1,000人ずつ増加、12〜17歳人口については毎年1,000人以上の増加で推移するものと推計している。 「世田谷区将来人口推計」(平成29年 世田谷区)より作成 (3)区の年次別出生数と合計特殊出生率の推移 出生数、合計特殊出生率ともに増加傾向にあったが、平成29年はともに減少、平成30年は出生数はさらに減少、合計特殊出生率は微増している。 出生数 7,093人(平成20年) から 7,371人(平成30年) 合計特殊出生率 0.90(平成20年)から1.07(平成30年) 「世田谷区保健福祉総合事業概要 統計編」より作成 (4)区の乳幼児の養育状況の推移 区における保育所等(認可保育施設・事業、保育室・保育ママ・認証保育所)の入所状況の割合は年々上昇しており、平成31年度は全体の41.2%が保育を利用している。 「世田谷区保健福祉総合事業概要 統計編」より作成 (5)社会的養護のもとで育つ児童数 令和2年10月1日現在、養育家庭や施設等へ養育委託・入所措置されている区の児童は117人となっている。 (養育家庭や施設等へ養育委託・入所措置されている区の児童の人数。他自治体所在の養育家庭・ 施設等へ養育委託・入所措置されている児童を含める。) (里親等の区分・施設区分ごとの状況については、次ページ以降を参照。) 参考 都全体における社会的養護の措置児童数の推移 ここ数年、都全体における社会的養護の措置児童数は4,000人前後で推移している。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 2 里親等の状況 (1)養育家庭の登録数及び委託児童数 令和2年10月1日現在の区内の養育家庭の登録数は44家庭であり、委託児童数は18人となっている。 区内に登録されている養育家庭へ委託されている児童数であり、他自治体が措置した児童を含む (里親委託や里親への一時保護委託を行うに際して、子どもの最善の利益を保障する観点から、区内の里親に限らず、都区全域で適切な里親と子どものマッチングを実施している)。 区内の養育家庭の登録数及び委託児童数 養育家庭の登録数……44家庭 委託児童数……………18人(うち区の児童6人) 参考:都全体における養育家庭の登録数及び委託児童数の推移 都全体における登録家庭数及び委託児童数は増加傾向だが、伸びは緩やかになっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 区内の養育家庭 44家庭 他自治体の児童 12人 世田谷区の児童 6人 委託児童18人 (2)ファミリーホーム設置数及び委託児童数 令和2年10月1日現在、区内にはファミリーホームが2ホームあり、委託児童数は10人となっている。 区内2ホームのうち養育家庭移行型ファミリーホームが1ホーム、法人型ファミリーホームが1ホームとなっている。 ファミリーホームとは、小規模住居型児童養育事業。 一定の要件を備えた養育者の住居において、5人又は6人の要保護児童を、子ども同士の相互作用を活かしつつ家庭的な環境のもとで養育する制度。 参考 都全体におけるファミリーホーム設置数及び委託児童数の推移 都全体におけるファミリーホームは、平成30年度末現在、25ホームあり、うち養育家庭 移行型ファミリーホームが16ホーム、法人型ファミリーホームが9ホームとなっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (3)里親等委託率の現状 令和2年10月1日現在、区における里親等委託率は、20.5%となっている。 里親等委託率の算出方法 養育家庭等・ファミリーホーム委託児童数 (A) 乳児院入所児童数たす児童養護施設入所児童数たす養育家庭等・ファミリーホーム委託児童数 (B)イコール里親等委託率 参考 都全体の里親等委託率の推移 都全体における里親等委託率は上昇傾向であるが、全国平均よりも低く推移している。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (4)養子縁組里親の登録と特別養子縁組の現状 令和2年10月1日現在、区児童相談所に養子縁組里親として登録された家庭は、 37家庭となっている。 令和2年4月から同年9月までの区児童相談所が仲介した特別養子縁組の成立数は2件となっている。 特別養子縁組制度の概要 子どもの福祉の増進を図るために、養子となる子どもの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度。 「特別養子縁組」は、養親になることを望む夫婦の請求に対し、要件(実親の同意・養親の年齢・養子の年齢・半年間の監護)を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立する。 特別養子縁組の区児童相談所の関与 特別養子縁組を仲介する機関は、行政機関である児童相談所のほか、民間のあっせん機関(医療機関を含む)がある。 区が把握する特別養子縁組の成立件数は、区児童相談所が仲介し、縁組が成立した件数となる。 区児童相談所は、ネウボラ・チームによる「妊娠期面接」等による特別養子縁組を必要とする事例の把握に努め、東京都と連携した早期の特別養子縁組成立に取り組んでいる。 参考 東京都による新生児委託推進事業の概要(平成29年7月より実施) 家庭で適切な養育を受けられない新生児を対象として、養子縁組が最善と判断した場合には、できるだけ早期に里親子を結び付けられるよう、養子縁組里親の養育力向上のための研修や新生児と養子縁組里親の交流支援を行うことにより、新生児委託を推進する(子どもの乳児院入所と同時期から里親との交流の開始など)。 都道府県等の許可を受け活動している民間の事業者は、全国に22団体(令和2年11月12日現在)あり、生みの親と暮らせない子どもと育ての親になりたい夫婦をマッチングし、様々なサポートを行っている。 3 児童養護施設、乳児院の状況 (1)児童養護施設の入所児童数 令和2年10月1日現在、区内にある児童養護施設※1の入所児童数は、児童養護施 設(本園)52人、グループホーム※248人、合計で100人となっている。 ※1 区内にある児童養護施設の10月1日時点の定員数:110人(本園2施設、グループホーム10 施設) ※2 グループホーム:児童養護施設から独立した家屋において、要保護児童を少人数で養育する形態。 区分 令和2年10月1日現在 入所児童数 100人(うち区の児童12人) 児童養護施設(本園) 52人(うち区の児童 5人) グループホーム 48人(うち区の児童 7人) 【参考:都全体の児童養護施設の入所児童数の推移】 都全体における児童養護施設で生活する児童数はここ数年、横ばいで推移している。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 区内にある児童養護施設 定員110人 他自治体の児童 88人 世田谷区の児童 12人 入所児童数100人 (2)児童養護施設の小規模化の状況 区内の児童養護施設における小規模化(グループホームもしくは8人以下のユニット)の状況は、令和2年10月1日現在において100%となっている。 参考 都全体の児童養護施設の小規模化の状況 都全体の児童養護施設における小規模化の状況は、平成31年2月1日時点で、グループ ホームが910人と児童養護施設定員の28.3%となっている。 また、本体施設で行っている8名以下のユニットケアとグループホームを合わせた小規模化の状況としては、児童養護施設全体の70.8%まで進んでいる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (3)乳児院の状況 区内に乳児院が存在しないため、ここでは都の状況を参考として掲載する。 参考 都における乳児院在籍児童の障害等の状況 都全体を通して、乳児院では、障害や疾患等を抱えていたり、虐待を受けるなど、医療や療育上の手厚いケアが必要な乳幼児の入所が増加している。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 参考 都における乳児院の小規模化の状況 都全体における、乳児院の中で4人から6人までの小規模で家庭的な運営を行うユニットは、全体の47%となっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (4)グループホーム設置数 令和2年10月1日現在、区内の児童養護施設におけるグループホームの設置数は、10か所となっている。 東京育成園 4か所 24人 福音寮 6か所 36人 合計 10か所 60人 参考 都全体のグループホーム設置数の推移 都全体におけるグループホームの設置数について、平成17年度に、国から児童養護施設の小規模化に関する通知が発出されたこともあり、大幅に増加したが、近年、伸びは緩やかになっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (5)個別的ケアが必要な児童の入所状況 施設に入所している区が措置した児童(10月1日現在、乳児院入所7人、児童養護施設(本園)入所46人、グループホーム入所 40人の合計93人を対象に調査を行った。)のうち、個別的なケアが必要な児童(虐待により心身に傷を受けた児童や、何らかの障害がある児童など、安心して生活ができるよう生活面・心理面で個別的な対応を必要とする児童)の人数について調査を行った(令和2年10月1日時点調査)。 その結果、個別的なケアが必要な児童は93人中54人となっており、その割合は 58.1%となっている。 参考 都全体の個別的ケアが必要な児童の入所状況 都全体における個別的なケアが必要な児童の割合は、平成21年度の62.3%から平成30 年度は73.7%と大幅に増加している。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 4 進路・離職状況 (1)進路状況 令和2年3月に中学校を卒業した区の児童の高等学校等進学率は、児童養護施設・里親(養育家庭)ともに100%となっている。 また、令和2年3月における区の児童の大学等進学率は、児童養護施設は66.6%となっている。 参考 全国的に見た平均的な大学等進学率との比較 児童養護施設等の子どもたちの多くは、児童福祉法の規定により原則18歳で退所の日を迎えるが、経済的不利等により希望の進路に進むのが難しい傾向がある。 退所後は自活を余儀なくされるため一般と比べ経済的に不利な面が多く、全国的にみても大学進学率も著しく低い状況にある。 令和2年3月時点における区の児童養護施設等退所者の大学等進学率は、厚生労働省調査による平成30年5月現在の全国平均を上回っているが、これはせたがや若者フェアスタート事業の給付型奨学金などの取り組みなどによるものと考えられる。 出典 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課調べ(平成30年5月現在) 参考 都全体における進路状況 平成30年3月に卒業した児童の高等学校等進学率は、児童養護施設で97.5%、児童自立支援施設で91.1%、里親で100%となっている。 また、大学等進学率は、児童養護施設で44.2%、里親で42.9%となっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (2)進学した学校における在籍・卒業状況 令和2年3月に中学校・高等学校を卒業し、進学した区が措置した児童の進学後の在籍状況は、児童養護施設・里親(養育家庭)ともに100%となっている。 参考 都全体における進学した学校における在籍・卒業状況 都全体における施設等退所後に進学した学校等の中途退学率は、児童養護施設で17.7%、児童自立支援施設で31.6%、養育家庭で31.3%となっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (3)離職状況(参考) 令和2年3月に中学校・高等学校を卒業した区の児童のうち、就職した児童はいなかった。 なお、参考として、都の状況は、次のとおりである。 参考 都全体における施設等退所後に就いた最初の仕事の離職状況 都全体では、施設等退所後に就いた最初の仕事を「すでに辞めている」と回答した方(181人) の約5割が、1年未満で辞めている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 5 児童相談所等の運営状況 (1)児童虐待相談の対応状況 令和2年4月から同年9月までの区児童相談所における虐待相談対応件数は、578件となっている。 また、令和2年4月から同年9月までの子ども家庭支援センターにおける虐待相談対応件数は、718件となっている。 参考 都世田谷児童相談所における虐待相談対応件数の推移 ※狛江市含む 都世田谷児童相談所の虐待相談対応件数は、年々増加傾向が顕著となっていた。 「東京都児童相談所事業概要」より作成 参考 子ども家庭支援センターにおける虐待相談対応件数の推移 子ども家庭支援センターの被虐待児童相談対応状況は、令和元年10月から新しい「東京ルール」(都区間の新たなルールとして、都世田谷児童相談所が受理した警察からの心理的虐待(面前DV)案件等は、子ども家庭支援センターが対応することとなった。)の運用が開始されたことに伴い、子ども家庭支援センターの新規受理件数が例年より顕著に増加した。 「世田谷区保健福祉総合事業概要 統計編」等より作成 参考 区児童相談所における虐待通告件数の状況 令和2年4月から同年9月までの間に、区児童相談所に寄せられた虐待通告件数は、 1,073件となっている。 「通告件数」と「対応件数」の関係 「通告件数」は、児童虐待の相談・通告として寄せられた電話等の件数であり、不受理となった ものや、同一ケースの重複を含む。 「対応件数」は、受理された通告に基づき、相談履歴や家庭状況の調査、児童の心理診断などを行い、その後の援助方針を決定した対応中のケースの件数を指す(国の全国統計等ではこの件数が集約され、比較・検証などに用いられている)。 通告から通告受理。通告受理から相談対応という相談援助活動の流れの中で、どの時点のケースを指すかにより それぞれの件数は異なるため、「通告件数」と「対応件数」は一致しない。 なお、都世田谷児童相談所の虐待相談受理件数は、平成30年度は1,097件、令和元年度は1,352件 である(児童虐待通告件数の公表はなし)。 (2)所内の職員配置状況(令和2年10月1日現在) 参考 都世田谷児童相談所の職員の配置状況(平成31年4月1日現在数) 児童相談所46人 児童福祉司20人、児童心理司8人、警察官OB2人、弁護士1人、医師1人、その他14人 「東京都児童相談所事業概要」(令和元年)より作成 (3)児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数 区児童相談所における児童福祉司一人当たりの児童虐待相談の対応件数は、37.6件となっている。 算出方法 (令和元年度虐待相談受理件数わる児童福祉司)イコール一人当たりの相談件数 区児童相談所は令和2年4月に開設したため、都世田谷児童相談所における令和元年度の虐待相談受理件数(狛江市含む)1,352件を用いた。 参考 都児童相談所における児童福祉司一人当たりの相談件数の推移 都児童相談所における児童福祉司一人当たりが受理する虐待相談は、年々増加しており、平成30年度は一人60件を超える状況となっている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (4)区の一時保護の状況 令和2年4月から9月末までにおける区の一時保護は、72人となっている。 令和2年4月から9月の間の新規保護児童(区の児童)の実人数の内訳を計上している(保護時点における保護の方法・理由について計上している)。 参考 都の一時保護 都全体の一時保護所での保護と、一時保護委託の合計児童数(出典:東京都児童相談所事業概要より。) 都世田谷児童相談所の令和元年度の一時保護 一時保護所102 人 一時保護委託79 人 合計181 人 (5)一時保護委託の児童数 令和2年4月から9月末までにおける一時保護委託児童数は27人となっている。 うち令和2年4月の区児童相談所の開設にあたり、都から引き継いだ一時保護児童は11人おり、引き続き同じ場所で保護を継続した。 参考 都児童相談所における一時保護委託児童数の推移 都全体における一時保護委託件数も増加傾向にあり、乳幼児は毎年増加を続けている。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 (6)一時保護所入所率、平均保護日数 区一時保護所における平均入所率は56.0%となっている。 (令和2年4月から令和2年9月の平均入所率) 区一時保護所における一人当たりの平均保護日数は、35.1日となっている。 (令和2年4月1日以降に区の一時保護所に入所し、令和2年9月までに退所した児童の一時保護所に入所していた期間の平均日数を指す(他自治体の児童を含む)。) 令和2年4月1日以降に区の一時保護所に入所し、令和2年9月までに退所した児童(41人)のうち、約17%が10日以内、約37%が30日以内、約32%が60日以内の退所となっている。 参考 都全体における一時保護所入所率、平均保護日数の推移 都全体を通じて、緊急での一時保護が必要なケースも多く、一時保護所における年間平均入所率は100%超が常態化している。 また、一人当たりの平均保護日数は、40日を超える状況となっている。 (全国平均29.6 日 平成29年度) 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 コラム2 子育て支援の現場から見た区の児童虐待予防・早期発見の取り組み 子育て支援の現場から見た区の児童虐待予防・早期発見の取り組み 世田谷区民生委員児童委員協議会 主任児童委員部会長 明石 眞弓 (世田谷区児童福祉審議会委員) 私が「地域に根差した子育て支援」に関心を持ったのは、1990 年代にはいり、子どもの虐待の存在が社会問題化してメディアなどに取り上げられるようになってきた頃です。 子育て中の私の周りでも、夫婦ともにキャリアを積み、知り合いもいないまま世田谷区に引っ越しをして、小さな子どもと接する機会もなく相談する人もないまま子育てを始める人が多くいました。子育ては、身近な知人やご近所、地域の理解や協力が必要と言われていますが、核家族化や地域コミュニティの希薄化などにより、孤独な子育てをしている家庭が増えているように感じていました。 そこで、平成12年に有志と子育て支援ボランティア団体で活動を始めました。ボランティア団体は解散しましたが、その後、民生・児童委員(主任児童委員)として、地域の子どもたちやご家庭の見守りを続けています。 少子高齢化に伴い、行政でも様々な施策が行われ、平成27 年「子ども・子育て支援新制度」によって、子育て支援の仕組みの整備が進み、子育て支援のサービスが充実していきました。 そして、世田谷の子育て支援事業を請け負っていくNPO や事業者が増えて、「子育て支援」の事業化が進みました。 その一方で、地域のボランティアの人たちは、サービスが増えたため子育て支援から離れていき、「子育て支援の市場化」が進んでいったと感じています。 地域の人の役割は終わったのでしょうか? 行政の子育てサービスが増えた中でも地域での役割はあると思います。 世田谷区では、虐待予防や早期発見の取り組みを地域の子ども家庭支援センターが関係機関と連携を取りながらきめ細かく行っています。 しかし、生活の場での発生予防や早期発見となると時間外、休日や夜間などすき間がどうしてもでき、限界もあると感じています。 そうした時、地域コミュニティの中では、普段から関りのある人が声掛けなどを行うことが予防につながることもあります。 地域の一人ひとりがコミュニティの中で、子育て家庭の生活を見守るといった「ちょっとしたボランティア的子育て支援」を行うことがすべての予防の段階で大きな役割を果たすのではないかと思います。 虐待防止の観点からも公的な「子育て支援」と共に「社会全体で子どもを育む地域活動」の支援や仕組みを作ることの必要性を感じています。 また、「子育ての社会化」を促進していますが、現状は「子育てをしている家庭のニーズに応じて子育てサービスを利用する」という個別完結の状態であるのではないかと感じます。 世田谷には子育てサービスを利用する家庭を消費者にせず、自分たちの暮らしを自分たちで守ることのできるまちを担う一員になれるような、「循環型の子育て支援」の取り組みができるまちづくりにも力を入れて頂きたいと願っています。 今後も区民が関係機関と力を合わせて、虐待の発生予防や早期発見の取り組みに関わって行ければと思います。 第3章 世田谷区における具体的な取り組み 1 計画の進捗管理と見直し 区は、本計画に掲載した児童数の推計結果や、数値目標・評価のための指標、事業の進捗状況について、毎年度取りまとめるものとし、これを「世田谷区児童福祉審議会」に報告するとともに、区ホームページ等で公表するものとする。 「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」の終期である令和6年度を目安として、必要に応じて計画の見直しを行い、取り組みの促進を図るものとする。 2 子どもの最善の利益の実現に向けた率先した取り組み 区は、引き続き当事者の意見を聞く機会の確保に努め、子どもの最善の利益の視点から、これらの意見を踏まえた適切な基準の制定・運用に努める。 国の定める基準や、都・特別区で統一を図っている基準・運営等についても、必要に応じて関係機関へ積極的に見直しを提案するとともに、見直しの実現に向けて率先して取り組むものとする(里親委託における親担当・子担当の児童相談所の役割分担、里親認定基準、里親への養育委託にあたっての児童情報の伝達、出自を知る権利の保障の観点からの児童票の保存年限や養育記録の開示のあり方など)。 3 予防型の児童相談行政の構築 (1)現況 1 これまでの経緯 区は、令和2年4月に、特別区で初めてとなる区立の児童相談所を開設した。 区は、児童相談所の開設に際し、現行法令基準を上回る職員数の配置を行うとともに、多角的な視点から適切できめ細やかな業務対応をするために、保健師や医師及び弁護士等専門職員の配置を行っている。 地域における子どもに関するあらゆる相談の一義的な窓口である子ども家庭支援センターと、強力な法的権限の行使や高度な専門性を有する児童相談所の「一元的な運用」により、両機関の職員がチームとなり、日常から担当区域の情報共有を行い、必要に応じて双方が持つ機能を組み合わせた支援や問題の解決まで協働で関わる「のりしろ型支援」を着実に推進することで、虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応が徹底され、子どもの安全と生命を確実に守る予防型の児童相談行政の展開に取り組んでいる。 2 具体の取り組み内容 児童相談所設置に向けたこの間の議論において、都の児童相談所と区の子ども家庭支援センターの二元的な児童相談体制の下で生じる様々な問題が指摘されてきた。 区は、一貫した初動対応や、アセスメントの共有など、両機関の一元的運用により適切な援助活動を行っている。 日常から、子ども家庭支援センターと児童相談所は、合同会議等で支援方針等を共有するとともに、リスク判断にあたって共通のアセスメントシートを用いるなどにより、リスクに対する視点の統一を図っている。 これにより、子ども家庭支援センターが支援しているケースについても、必要に応じて早期の一時保護を行い、その後の支援に速やかにつなげるなど、一元的運用のメリットを発揮した相談援助活動が展開されている。 参考事例 子ども家庭支援センターが従来から支援にあたっている児童について、学校から新たな虐待の兆候があるとの連絡があった際などに、児童相談所は、学校訪問に速やかに同行し、必要に 応じて即時に児童の一時保護を行う等の対応を行っている。 児童相談所は、虐待が深刻化・重篤化する前の早期の段階で一時保護を実施し、児童の心理・行動診断などを迅速に行うとともに、これらを踏まえた家族との話し合いや指導を重ねるなど、児童の安全が保障された在宅生活のための環境整備に努めている。 こうした児童相談所の援助方針や、在宅生活を見守るうえで必要な情報は、子ども家庭支援センターとも適宜共有し、 児童が在宅生活に復帰する際には、両機関の協議により、適切な子育て支援のメニューを選択して家庭に提供するなど、その後の支援につなげている。 区の一時保護の平均日数は、令和2年9月末現在35.1日となっている。 そのうち、約17%が10日以内、約37%が30日以内、約32%が60日以内の退所となっている。 令和2年4月1日以降に区の一時保護所に入所し、令和2年9月までに退所した児童の一時保護所に入所していた期間の平均日数を指す(他自治体の児童を含む)。 ア チームとしての顔の見える職員体制 子ども家庭支援センターと児童相談所の双方が、「住所地域担当制」を実施し、年間を通して同一住所地域を同一の担当者が担当することで、一つのチームとして顔の見える職員体制の構築を図っている。 子ども家庭支援センターが月1回開催する要保護児童支援協議会進行管理部会に児童相談所の地域担当SVや児童福祉司が出席し、ケースの進行管理や意見交換を行うことで、双方の地区担当の顔の見える関係づくりを行っている。 イ 一貫した初動対応 世田谷区児童虐待通告ダイヤル(0120-52-8343)、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)を通じての児童虐待相談や、警察からの通告は、区の児童相談所で一括して受理し、初動対応の一次的方針の判断を行う体制としている。 児童虐待通告のうち、一時保護の必要が予見され、専門性・法的権限を要することが見込まれるケースについては、児童相談所が児童の安全確認等を行い、その後の調査及び必要な援助等を実施している。一方、いわゆる「泣き声通告」など、子ども家庭支援センターの支援が望ましいと判断された事案については、子ども家庭センターが迅速に児童の安全確認を行い、必要に応じて早期の支援につなげている。 (令和2年4月〜9月の児童相談所による安全確認は589件、子ども家庭支援センターによる安全確認は386件となっている。) 子ども家庭支援センターが児童の安全確認を行ったケースについても、児童相談所と情報を共有し、その後の調査や支援の際、必要に応じて児童相談所も訪問に同行する等の連携を図っている。 ウ アセスメントの共有 子ども家庭支援センターと児童相談所は、相談ケースのリスク評価を行うにあたり、共通アセスメントシートを用いることで、リスクに対する視点の共有化を図っている。 また、チームとしての顔の見える職員体制の下、共同して対応するケースのアセスメントの共有や、援助方針の検討など、日々の業務の中できめ細やかな連携を図っている。 これに加え、毎月「合同会議」を行い、共同して対応するケースのアセスメントの共有や、援助方針の検討とともに、それぞれが担当するケースの情報共有等を行っている。 (2)今後の取り組み 1 求められる能力・資質を備えた人材の効果的な確保・育成 児童福祉に関する相談業務に携わる職員には、子どもの健全育成、子どもの権利擁護をその役割とし、児童やその保護者などの援助に必要な専門的態度、知識技術をもって対応し、一定の効果を挙げることが期待されており、そのためには、職員は自らの職責の重大性を常に意識するとともに、専門性の獲得に努めなければならない。 こうしたことを踏まえ、児童相談所開設以降も、長期的な視点に立ち、求められる能力・資質を備えた人材の効果的な確保・育成に向け、計画的な採用、配置等を行う。 また、家庭と子どもの問題に対する理解や、その解決に向けた援助技能の向上を継続して図るなど、自治体としてのスキルアップ効果に資するため、児童相談所や子ども家庭支援センターと、その他の庁内の各所管との人事交流を促進する。 2 児童相談所と教育等の関係機関との連携の強化 個々の子どもの置かれている状況を関係機関が共有し、その背景や特性を理解し、協力して見守ることにより、子どもの成長にとって好ましい影響を及ぼし、学校生活でのトラブルを防止できるなど、子どもが安心して生活できる環境を整えることにつながる。 子どもが一日のうちの大半を過ごす学校など、子どもにかかわる機関の職員と課題を共有し、理解を深めていくことは大変重要であり、児童相談所は、これらを踏まえ、子ども・若者部をはじめ、教育機関など様々な関係機関と連携しながら、課題を抱える子どもの背景の共有や、代替養育の下で育つ子どもへの理解を深めるよう支援に携わる視点から発信し、共有する機会を設けるとともに、職員の人事交流なども視野に入れた関係機関との連携強化に取り組むものとする。 要保護児童支援協議会は、発達障害を持つ児童など、ケアニーズの高い児童も支援の対象であることを再認識するとともに、協議会に参画する関係機関は協力し、学校・教員への積極的な支援に取り組むものとする。 また、ケアニーズの高い児童を施設・里親へ措置するにあたっては、児童相談所は、学校に情報提供を行い、支援に必要な情報の共有と支援方針の確認を行うなど、きめ細やかな連携に努めるものとする。 3 児童相談所業務の第三者評価の導入 令和元年6月の児童福祉法改正により、「都道府県知事は、児童相談所が行う業務の質の評価を行うことその他必要な措置を講ずることにより、当該業務の質の向上に努めなければならないこと」とされた。 また、閣僚会議おいて決定された「児童虐待防止対策の抜本的強化について」の中においても「第三者評価など児童相談所の業務に対する評価を実施するよう努めるものとする」とされており、児童相談所の質を評価する仕組みとして、第三者評価の実施が求められている。 「児童相談所における第三者評価ガイドライン(案)」では、児童相談所の第三者評価は、「子どもの権利擁護機関としての児童相談所が機能しているかを確認」するために行い、第三者評価を通じて「機能しているところ」や「改善すべきところ」を確認し、児童相談所の質の確保・向上を図ることを目的として行うもので、児童相談所の関わりを必要とする子どもの安全確保並びに子どもの権利擁護を図るための仕組みの1 つと示されている。 これらのことを踏まえ、児童相談所の業務改善や児童相談所職員の資質の向上に資することを目指し、児童相談所における支援内容や支援方法について、第三者による専門的見地から評価するための仕組みづくりや、評価者の確保・育成に向けた検討を進める。 4 AI(人工知能)を活用した児童相談行政の専門性の維持・向上 児童相談行政の専門性の維持・向上が継続的な課題であることを踏まえ、国や先行してAIの導入を行った自治体の動向を注視し、区においても、職員の業務をサポートし、質の高い相談援助活動を維持するため、導入の可能性について検討を進めるものとする。 5 母子生活支援施設の多機能化と予防型の児童相談行政の実現に向けた一層の活用 区は、母子生活支援施設について、社会的養護の機能を担う施設として、その多機能化の検討を進めるとともに、施設に入所せず地域の中で子育てをしているひとり親家庭への支援等のための開かれた施設として、予防型の児童相談行政の推進に向けた一層の活用を図るものとする。 4 家族再統合に向けた取り組み (1)現況 区は、あらゆる子どもには家庭を与えられるべきという視点に立ち、子どもが家庭で健やかに養育されるよう保護者支援を重点的に行うことによって、対処療法でない、児童虐待予防に重点を置いた施策を展開することとしている。 また、区の児童相談所では、代替養育の下で生活する子どものうち、家庭復帰に適している児童については、家族再統合に向けた支援を進め、子どもの安全を確実なものとしたうえで家庭復帰を果たし、さらにその後の適切な在宅支援につなげていくことを目指している。 この家族再統合を担う専任の「親子支援チーム」を設け、親子再統合計画の作成や保護者を含めた話し合いのファシリテータ役を担うなど、再統合に取り組んでいる。 (2)今後の取り組み 1 基本的な考え方 子どもは家庭の中で愛されて健やかに成長する権利を持つとともに、援助方針の決定にあたっては、子どもの意思が尊重されなければならない。 このことを踏まえ、子どもが家庭復帰を望む場合、その希望に沿い家庭生活を送れるよう、継続して家庭の問題の根本解決に取り組むとともに、この取り組みの一層の推進を図るため、養育者支援等の支援手法のさらなる充実・強化等に努めるものとする。 児童相談所、フォスタリング機関、里親、児童養護施設等は、パーマネンシー保障の観点が最優先されることを共通認識とし、協力して子どもの家庭復帰に取り組むよう努めるものとする。 2 養育者支援 児童虐待問題の根本の解決に取り組むとともに、虐待の再発生予防を目指すためには、虐待を行う親が抱える問題にもアプローチする必要がある。 区は、この視点から、家庭内で児童虐待や夫婦間暴力(DV)を行った養育者で、かつ特別なケアを必要としている者に対するアプローチとして、養育者支援に取り組むこととし、国の調査研究や他の自治体の動向に注視しつつ、支援体制構築に向けた検討を進める。 心理医学的なケアにあたっては、外部専門機関及び関係部署との連携・協働が不可 欠であり、こうしたケアを可能とする体制構築を目指す。 また、児童虐待や夫婦間暴力の発生予防や家族再統合後の家庭支援の観点から、子ども家庭支援センターによる在宅での支援メニューの提供等、当該家庭と地域資源とのつながりの構築を目指す。 5 特別養子縁組の促進に向けた取り組み (1)現況 区は、パーマネンシー保障の観点から、愛着関係の基礎を作る大切な時期である乳幼児期の子どもが、安心でき、温かく安定した家庭での生活に早期につなげるため、実親による養育が困難な事例については、特別養子縁組の可能性を探り、実親による養育の意思を確認のうえ、出産後できるだけ早期の特別養子縁組につなげることを基本方針としている。 ネウボラ・チームによる「妊娠期面接」等による特別養子縁組を必要とする事例の把握に努め、都と連携した早期の特別養子縁組成立に取り組んでいる。 参考 都による新生児委託推進事業の概要(平成29年度より実施) 家庭で適切な養育を受けられない新生児を対象として、養子縁組が最善と判断した場合 には、できるだけ早期に里親子を結び付けられるよう、養子縁組里親の養育力向上のため の研修や新生児と養子縁組里親の交流支援を行うことにより、新生児委託を推進する (子どもの乳児院入所と同時期から里親との交流の開始など)。 ・養子縁組里親の認定登録を受け、養子縁組候補児童とのマッチングが始まるまでの 間、養育家庭としての役割を担うことができるよう、養子縁組里親と養育家庭の重複 認定を可とし、その促進を図っている。【令和2年度新規】 (2)今後の取り組み 1 制度周知 区は、引き続き不妊治療を希望する区民の支援に取り組むとともに、妊娠を望む家族の気持ちに寄り添いながら、家庭を必要とする子どもたちとの幸せな出会いにつながるよう、様々な工夫と配慮のうえ、一層の制度周知に努めるものとする。 2 民間事業者の活用と制度改正によるメリットの最大限の活用 区は、実親のアセスメントや縁組家庭とのマッチング業務等への民間事業者の活用を視野に、新たな特別養子縁組の推進体制の構築に取り組む。 また、この新たな制度構築にあたっては、妊娠期面接等による特別養子縁組を必要とする事例の把握から養子縁組までの速やかな連携を目指すものとする。 新たな特別養子縁組の推進体制構築にあたっては、令和元年6月の民法等の一部を改正する法律の成立(令和2年4月施行)により、1 養子候補者の上限年齢が原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げられるとともに、2 特別養子縁組の成立の手続の見直しが行われ、特別養子縁組の成立要件の緩和等による制度の利用促進が図られていること、また、「特別養子適格の確認の審判」については、児童相談所長による申立て等が可能となったことなどを十分に踏まえ、これらの制度改正によるメリットの最大限の活用を図るものとする。 6 家庭と同様の環境における代替養育の推進 (1)現況 区は、平成28年の児童福祉法改正の理念の実現に向け、子どもが家庭において健やかに養育されるよう、母子生活支援施設、保育園、児童館などの区の地域資源と連携し、親子の在宅生活を支え、虐待の発生予防と養育困難家庭への支援などを行うとともに、家庭養育を優先した社会的養護の受け皿の拡充と支援に取り組んでいる。 ア、里親のリクルート・研修業務等の一元的な外部委託 (令和2年度新規) 啓発・リクルートについては、民間事業者へ委託を行い、民間事業者ならではの手法(対象を絞った戦略的な情報発信やリクルート経験のある人材の起用など)により、新たな里親家庭の開拓に取り組んでいる。 (社会福祉法人東京育成園。世田谷区内で児童養護施設・保育園を運営している。令和元年 12月にプロポーザルにより選定。) 里親のリクルート業務と併せ、研修・トレーニング業務を一元的に民間事業者に委託することで、リクルートやアセスメントを通して把握した里親希望者の特性や状況に応じた研修を行うなど、里親の養育力向上に取り組んでいる。 イ、児童相談所への相談専用窓口の設置(令和2年度新規) 児童相談所に里親登録の相談専用窓口を設置し、啓発・リクルート業務の委託事業者の職員が常時1名在席し、里親希望者の問い合わせや来所相談に対応している。 ウ、新たな手法による啓発活動等の実施 令和2年8月31日より区の里親登録の案内等を掲載した専用HPを開設。 里親制度についての説明の他、里親インタビュー記事などを掲載している。 ツイッターやラインを活用した情報発信により、里親制度の認知向上を図っている(令和2年度新規) 養育家庭体験発表会と児童虐待防止講演会を合同で実施している。 令和元年度、サヘル・ローズ氏による講演、里親及び里子経験者による体験談の発表、パネルディスカッションを実施(参加者171名)。 区内飲食店などを利用した「里親カフェ」を開催し、里親登録を考えている区民が、里親や里子経験者、施設職員と直接話をし、交流を図ることができる機会としている。(令和2年度新規) エ、里親家庭と児童のマッチング 児童相談所に里親担当児童福祉司(1名)と里親対応専門員(1名・非常勤職員)を配置し、マッチング等の業務を専任で実施している。 マッチングは、児童にとって最善の里親家庭を探すため、都区による広域調整の一環として、都区全域で情報共有を行い、マッチング業務を実施している。 オ、チーム養育体制による里親養育支援 児童相談所、委託事業者、施設・乳児院(里親支援専門相談員)、里親会、子ども家庭支援センター、地域関係機関(保育園、学校、医療機関等)等により構成する「チーム養育体制」を組み、里親家庭が地域で孤立することなく児童を養育していけるよう、児童相談所の進行管理・調整のもと、関係機関がチームの一員として日々里親・里子に寄り添い、様々なアドバイスを行いながら支援に取り組んでいる。 里子の社会的自立の促進・安定を図るため、里親支援機関に自立支援相談員を配置し、自立を目指す里子(措置解除後も含む)や里親の相談援助を実施している。 (里親支援機関。区では東京公認心理師協会に委託。里親カウンセリングや自立支援など、養育委託後の相談・支援を主に担っている。) カ、専門養育家庭の育成 (令和2年度新規) 里親と児童の多様なマッチングを可能とするため、養育が難しい児童を養育できる専門性の高い里親や、一時保護委託や短期養育委託が可能な里親の育成に向け、専門養育家庭研修に必要なテキストの購入及び考査を受けるために必要な経費の補助を行っている。 キ、医療相談 (令和2年度新規】) 区児童相談所では、医学的判断を要する事例などに医師が日常的に児童相談所の意思決定に関与することができるよう、児童相談所に小児科医等を配置している。 この医師に対し、里親も相談できることとしており、養育中の子どもに係る医学的な相談や困りごとなどを医療面からもサポートできる体制としている。 ク、養子縁組里親と養育家庭の重複認定(登録)(令和2年度新規)(再掲) 養子縁組里親の認定登録を受け、養子縁組候補児童とのマッチングが始まるまでの間、養育家庭としての役割を担うことができるよう、養子縁組里親と養育家庭の重複認定を可とし、その促進を図っている。 (2)今後の取り組み 1 里親等委託率の目標設定 区は、家庭養育の推進を目指し、里親等委託率の向上に取り組むにあたっては、「新しい社会的養育ビジョン」で示された里親等委託率の数値目標(就学前の子どもについては75%以上、学童期以降は50%以上)の達成を目指す。 ただし、目標達成のために機械的に里親等委託を進めるものではなく、個々の子どもに対する具体的な措置は、児童相談所における「家庭養育優先原則」を十分踏まえたアセスメントの結果に基づいて子どもの最善の利益の観点から行うものとし、子どもにとって最適な環境での養育を最優先に考えることを前提とする。 (第4章「里親等委託・施設養育の推計と目標」を参照) 2 里親の認知度の向上に向けた取り組み 里親の認知度の向上に向けては、昨今の地域の人間関係の希薄化や、ライフスタイルの多様化、SNSの普及など、社会情勢の変化に合わせた効果的な周知・啓発が重要である。 また、多様な家族の形があることを人権教育の中で学び、多様性への理解と、将来どのような家庭を築くかを考えるにあたり、里親もそのひとつとして考えられるよう選択肢を広げることが、子どもの最善の利益が保障された地域社会を作るうえで重要となる。 このことを踏まえ、周知・啓発から人権教育を通じ、区民に制度理解が行き渡るよう、様々な手法により、工夫を凝らしながら、関係機関と連携して取り組むものとする。 周知・啓発にあたっては、里親の認定基準など里親制度についての正確な情報が広く周知されるよう努めるとともに、保育園、幼稚園、小・中学校等は、里親の支援者として位置づけられることから、教員等に対する支援者としての視点からの研修や、里親家庭への関わり方などの理解を深める研修の充実等に取り組む。 身近な地域で子育ての相互援助を行うファミリー・サポート・センター事業の援助会員の拡充に協力して取り組むとともに、同会員に対して里親制度の周知を図るなど、関係機関・関連事業と連携しながら、制度の認知度の向上や、里親登録に至る前の基盤づくり等に取り組むものとする。 短期の里親制度等を活用し、短期間の子どもの預かりからはじめ、やがて長期の里親にステップアップしていく方法について、より一層のアピールに努め、多様な受け皿の拡充の促進を図る。 (保護者の入院中などの理由による短期(2か月程度)の子どもの里親養育委託や、養育委託中の里親が1週間以内の休息をとる間に代わって子どもを養育する里親の制度、週末や長期休みの間、児童養護施設や乳児院などの子どもを預かるフレンドホーム制度がある。) 区内には多くの大学があり、様々な事業において大学等との連携に取り組んでいる。 こうした関係を活用し、若い世代に対し、多様な家族の形があることへの理解や、社会的養護の意義、また、自らの将来の選択肢のひとつとして里親制度があることなどを知ってもらう機会とするため、出前講座の実施などの啓発活動を行うとともに、大学の授業や研究等に積極的に協力するものとする。 区は、引き続き不妊治療を希望する区民の支援に取り組むとともに、妊娠を望む家族の気持ちに寄り添いながら、家庭を必要とする子どもたちとの幸せな出会いにつながるよう、様々な工夫と配慮のうえ、一層の制度周知に努めるものとする(再掲)。 3 地域資源を活用した支援の展開 民生委員・児童委員や地域子育て支援コーディネーター等の地域で活動する区民に対し、里親制度の理解促進を図るとともに、区民が支援者として多様な方法で里親家庭を支援できる仕組み作りに取り組む。 同時に、里親の地域ネットワークへの参加を促進するなど、里親は社会的養護を担う地域機関の一員であることを踏まえた地域の子育て支援との連携に取り組む。 また、里親制度に対する地域・行政の理解促進に努め、里親家庭が安心して地域とのつながりが持てる環境の実現を目指す。 当事者である里親家庭の意見を踏まえながら、通常の家庭と同様に、在宅サービスや母子保健事業を利用しやすくする工夫に努め、これらの地域資源による支援の利用促進を図る。 4 里親支援体制の一層の充実 国が示す「フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)及びその業務に関するガイドライン」では、一連のフォスタリング業務は、里親の強みと課題を理解し、里親や子どもとの間の信頼関係を築く観点から、一貫した体制の下に継続的に提供されることが望ましく、一連の業務を包括的に委託することが望ましいとされている。 これを踏まえ、令和3年度において、改めて里親支援体制の充実に向けた検討を行うものとし、令和4年度を目途に、それまでの取り組みの成果を踏まえた、フォスタリング業務の業務委託をはじめとする支援体制の強化や見直し等を行うものとする。 里親制度の促進に向け、制度設計の見直しや支援の充実について、あらゆる機会を通じて国・都へ働きかけるとともに、その実現に率先して取り組むものとする 里親同士が支援しあう自主活動の強化に向け、区の支援の充実を図るものとする。 5 里親の育成 里親認定前研修や、フォローアップの研修の実施にあたっては、理念教育の講義やグループワークを充実させることで、里親自身がしっかりとした理念と使命を持って、子どもを養育し、子どもから揺るぎない信頼を得られる大人となりうるよう里親の育成に取り組む。 6 個々の児童の状況に合わせたきめ細やかな養育支援 児童養護施設や里親家庭、養子縁組里親家庭において、親子のコミュニケーションがうまく取れないなどの愛着障害のある児童の養育を支援するため、愛着形成のための心理療法等の積極的な活用に取り組む。 施設・里親に委託された児童のうち、学習に課題を抱える児童に対する支援として、学習ボランティアの積極的な活用を図るものとし、効果やニーズ量の動向を踏まえて充実を図るものとする。 7 当事者である子どもの権利擁護(意見聴取・アドボカシー)の取り組み 里親(養育家庭)委託や施設入所措置など、親子分離を伴う代替養育を行う措置は、子どもの安全を確保する上で必要な対応である一方、代替養育の場が子どもにとって必要かつ適切なものであるかについて、子どもは意見を聴取されるべきであるとの考えの下、当事者である子どもからの意見聴取や意見を酌み取る方策ついて、実情を踏まえながら、さらに充実と改善に取り組む。 里親(養育家庭)や児童養護施設等で措置されている子どもの第三者によるさらなる意見表明権支援制度の構築に向け、里親、施設関係者との協議を進め、当該制度の早期実現を目指す。 (62ページ「10 子どもの権利擁護」参照。) 8 ケアニーズが高い児童に対する専門的なケアの充実 障害児や被虐待児、非行等の問題を有する子どもなど、一定の専門的ケアを必要とする子どもを養育するための専門養育家庭のさらなる育成促進に向け、リクルートやステップアップに資するよう研修内容の見直し等に継続して取り組む。 障害児施設に入所中の児童についても、より望ましい養育環境を選択でき、かつそのひとつとして里親養育を選択できるよう、専門性の高い里親の養成と、その支援体制の整備に努める。 9 配慮を必要とする児童の支援に向けた相談・専門支援機関との連携体制の構築 発達障害などにより配慮を要する児童の代替養育のニーズが増加していることを踏まえ、これらの児童の日常の養育にあたり、適切な支援を受けられるよう、身近な相談機関や専門支援機関との連携体制の整備に取り組む。 7 施設におけるできる限り良好な家庭的環境の整備 (1)現況 区の児童養護施設における小規模化の状況は、令和2年10月1日現在において100%となっている。 26ページ「(2)児童養護施設の小規模化の状況」参照。 また、区は、さらなる小規模かつ地域分散化の推進に向け、施設整備を行う際には、国庫補助金等を活用した財政支援等を行うなど、できる限り良好な家庭環境が確保された質の高い個別ケアの実現の促進を図っている。 (2)今後の取り組み 1 施設で養育が必要な子ども数の見込みに基づく施設整備の促進 計画策定要領では、施設で養育が必要な子ども数の見込みを推計することとされており、区はこれを踏まえ、同要領に示す算出方法に従い、施設で養育が必要な子ども数の見込みを算出した。 76ページ「5 施設養育の必要量の推計」参照。 区は、この必要量の見込みに基づき、施設整備の促進を図るものとし、整備にあたっては国庫補助金等を活用した財政支援等を行うなど、できる限り良好な家庭環境が確保された質の高い個別ケアの実現の促進を図るものとする。 2 ケアニーズが高い児童に対する専門的なケアの充実 児童養護施設へのアウトリーチ支援の充実に取り組むなど、障害のある児童に対し、最適な養育環境を提供できるようバックアップ機能のさらなる充実を図るものとする。 3 施設の多機能化・小規模化への支援 区は、施設がこれまで培ってきた豊富な経験とノウハウを活かした多機能化に取り組むにあたり、必要となる環境整備を支援するとともに、国庫補助金等を活用した財政支援等を行うなど、多様なニーズに対する、より専門性の高い受け皿として、機能拡充の促進を図るものとする。 区は、国の示す小規模かつ地域分散化の推進に沿い、施設がグループホームの定員6人を5〜4人に引き下げるなど、少人数化に向けた体制整備を進めるにあたっては、国庫補助金等を活用した財政支援等を行うなど、より家庭的な環境の促進を図るものとする。 参考 「都道府県社会的養育推進計画策定要領」における施設養育の整備の考え方 「都道府県社会的養育推進計画策定要領」においては、代替養育全体の在り方に関する計画を立て、それに基づいて施設の高機能化及び多機能化・機能転換、小規模かつ地域 分散化に向けた計画を策定することとされている。 また、計画策定要領では、児童福祉法第3条の2の規定に則り、「できる限り良好な家庭的環境」を確保すべきであり、質の高い個別的なケアを実現するとともに、小規模かつ 地域分散化された施設環境を確保することが重要であるとの考え方のもとで、今後計画される施設の新築や改築、増築の際には、小規模かつ地域分散化された施設の設置を優先して進めていくことが示されている。 4 愛着形成のための心理療法プログラムの活用(再掲) 児童養護施設や里親家庭、養子縁組里親家庭において、親子のコミュニケーションがうまく取れないなどの愛着障害のある児童の養育を支援するため、愛着形成のための心理療法プログラムの積極的な活用に取り組む。 5 当事者である子どもの権利擁護(意見聴取・アドボカシー)の取り組み(再掲) 里親(養育家庭)委託や施設入所措置など、親子分離を伴う代替養育を行う措置は、子どもの安全を確保する上で必要な対応である一方、代替養育の場が子どもにとって必要かつ適切なものであるかについて、子どもは意見を聴取されるべきであるとの考えの下、当事者である子どもからの意見聴取や意見を酌み取る方策ついて、実情を踏まえながら、さらに充実と改善に取り組む。 里親(養育家庭)や児童養護施設等で措置されている子どもの第三者による更なる意見表明権支援制度の構築に向け、里親、施設関係者との協議を進め、当該制度の早期実現を目指す。 62ページ「10 子どもの権利擁護」参照。 6 地域資源の活用と連携 施設と地域のかかわりを促進し、ひいては地域による施設への支援と、施設による地域貢献の双方の充実を図るものとする。 個々の児童の状況にあわせた最善の養育環境を提供するため、施設に入所中の児童についても、地域の中で展開される各種の子育て支援サービス等を柔軟に利用できるよう、それぞれのサービス等が定める利用条件や運用等の見直しに向けて取り組む。 8 代替養育のもとで育つ子どもたちの自立支援 (1)現況 区は、児童養護施設退所者等(以下、「退所者等」という。)への支援として、せたがや若者フェアスタート事業※の継続実施に取り組んでいる。 また、家庭復帰の子どもを含め、メルクマールせたがや、青少年交流センターなどの若者支援機関、児童館、不登校・ひきこもりに関わる教育委員会等の関係機関と連携した情報共有や効果的な関わりなど、切れ目のない支援に取り組んでいる。 平成28年4月から事業を開始した、せたがや若者フェアスタート事業の一環である奨学金の給付制度については、社会情勢の変化等を踏まえながら、学習意欲のある子どもへの進学支援の充実を図るとともに、制度を知らずに進学を断念することがないよう周知の徹底を図り、里親・施設等による情報格差が生じないよう工夫に努めている。 参考 世田谷区の「フェアスタート事業」の概要 区は、児童養護施設等を巣立った若者が、学業と生活を両立しながら社会的自立に向けて安定した生活を継続することは困難な実態があることから、区は、すべての若者が同じスタートラインに立ち、未来を切り開くための仕組みとして、児童養護施設退所者等を対象に、住宅や居場所の支援、奨学金の給付を行っている。 住宅支援 高齢者向け借上げ区営住宅の空室を活用し、退所後の居住地として月1万円の入居負担金で提供している。 大学等進学者は、入学時より所定の修学年限の最終年度末まで居住可能。 就職者については最長2 年間まで居住可能。 居場所・地域交流支援 地域の中で仲間や大人たち等との関係を築き交流できる居場所として、区内2か所において、月に一度、交流の機会を提供している。 給付型奨学金事業 学業と生活を両立しながら社会的自立を図っていく過程を支援することを目的に、退所者等が、大学等(大学・短期大学・高等専門学校、専門学校)に進学・通学する学費の一部を、年額36万円を上限に給付し、進学に伴う経済的負担の軽減を図っている。 給付型奨学金事業は、社会全体で支える仕組みとするために「世田谷区児童養護施設退所者等奨学基金」を創設し、基金への寄附を原資に運用している。 なお、令和2年10月より、新型コロナウィルス感染症が収束するまでの当面の間、大学等に進学した退所者等について、アルバイト等の収入の減少や、親族からの援助が受けられなくなるなど、さらなる経済的支援を要する事態が生じているため、奨学金の給付対象経費の拡大と給付額の上限額の撤廃、年度途中における給付の申請(再申請含む)を可能にするなど、進学した者が継続して在籍できるよう、制度の見直しを行っている。 寄附の実績と給付の実績の表 (2)今後の取り組み 1 基本的な考え方 家庭での生活が困難な子どもにとって、信頼できる大人と出会い、学びの機会に触れることは、愛着形成や自己肯定感を得るとともに、自らの人生を考え、切り開いていく契機となるなど大変重要なものとなる。こうしたことを踏まえ、区と施設、里親、地域、関係機関は、入所期間中の支援から自立後の見守りまで協力・連携して取り組み、児童虐待の連鎖を断ち切る社会を実現することを目標に、一連の取り組みを進めるものとする。 区は、児童相談所による一貫したアセスメントに基づき、入所中からの支援に取り組むとともに、児童が社会に出るにあたり、個々にあわせた自立支援が展開できるよう、家庭での生活を経験する機会の設定や、支援や見守りに携わる地域の人材確保・育成など、多様な支援メニューの整備に引き続き取り組む。 2 自立に向けた多様な経験の機会の提供 施設養育されている児童には、虐待による傷ついた経験や養育者との安定した関係が築けないことによる様々な課題を抱えている場合があり、一般的な家庭の中での親子の生活の経験を持たない児童もいる。 施設の中で信頼できる大人と安定した関係を築くことに加え、家庭的なあたたかい雰囲気を経験することは、児童の学びを豊かにし、社会に適応していく上で不可欠となる。 こうしたことを踏まえ、施設で暮らす子どもが週末や夏休みを利用して、あらかじめ登録された家庭で宿泊体験を行うフレンドホーム制度の一層の活用を図るなど、家庭の雰囲気を知り、施設では得にくい家庭での生活を疑似体験するなどの取り組みを進める。 これらの取り組みを進めるとともに、児童相談所は、個々の子どもの希望に沿って里親委託へ切り替えるなど、子どもの意見を尊重しながら積極的に援助方針の見直しを図るものとする。 また、区は、地域資源を活用するなどにより、施設入所中の児童が家庭を知る機会の創出に取り組むものとする。 3 地域の中で見守られ、育つための環境の整備 特別な事情がある場合を除き、学校や友人関係、地域での慣れ親しんだ生活を維持し、自立後も自分が育った街として愛着を持てるよう、区内の施設・里親へ優先して措置することを原則とする。 区は、区内の施設・里親とこれらの方針を共有し、地域の中で見守られ、育つために地域と一体となった養育環境の整備に協力して取り組むものとする。 4 せたがや若者フェアスタート事業の充実 区は、社会情勢の急激な変化により、退所者等の自立がさらに困難さを増す中、給付型奨学基金に寄せられた寄附を最大限活用し、区民等の厚志が着実に退所者等の社会的自立に活かされるよう、速やかにせたがや若者フェアスタート事業の見直しに取り組む。 ア、検討にあたっての視点 自立に向けた準備段階である中学生から退所後の30 歳代まで、施設・里親のもとで生活する時点から退所後までの一貫した支援が求められていること。 就学・就職・就業訓練等の退所後の進路の選択にかかわらず、個々の退所者等が社会生活を送るうえで抱えている課題の克服に資する支援が求められていること(退所後も相談できる窓口の設置や、生活相談、就職活動・就業訓練・住居探し等にあたっての助言・付き添い、弁護士等の紹介等のソーシャルワークによる支援など)。 多様な進路選択に向け、受験勉強や資格取得、就業訓練、就職準備などに自由に取り組むことができるよう、現行の国・都の支弁に加えての自由度の高い経済的な支援が求められていること。 住宅支援の見直しにあたっては、単身入居や手厚い生活援助など、退所者等には多様なニーズがあることを踏まえる必要があること。 居場所・地域交流支援の見直しにあたっては、施設・里親のもとで生活するうちから、退所後を見据えての児童同士の交流や、居場所・地域とのつながりを作る機会を設けるなどの工夫が求められていること。 イ、見直しに取り組むにあたり考慮すべき事項 給付型奨学基金に寄せられた区民等の厚意に沿い、寄附が最大限活かされた制度設計に努めると同時に、支援の持続可能性や、類似事業の重複による不合理を避ける視点から、国・都による自立支援事業を基本に、区独自の上乗せ支援として設計するなどの工夫に努めるものとする。 住宅支援の見直しにあたっては、ニーズ量の動向等を見極め、優先度の高いニーズから新たな支援を展開するなど、速やかな実施に向けた工夫に努めるものとする。 居場所・地域交流支援の見直しにあたっては、よりきめ細やかな自立準備のためのプロセスづくりを含めての検討を行うなど、事業効果の向上に向けた工夫に努めるものとする。 見直しに向け、上記の視点に立った検討を行うにあたっては、あわせて平成28年の事業開始以降の評価・検証や、当事者、有識者、支援団体等との意見交換を行うことで、より効果的な支援制度の確立を目指すものとする。 9 一時保護児童への支援体制の強化 (1)現況 1 適切な保護の実施 区は、一時保護にあたっては、以下の事項を基本方針とし、適切な保護の実施に努めている。 ア、虐待の予防から一時保護、里親(養育家庭)委託や施設への入所措置、その先の家庭復帰や養子縁組など、一連の業務を通じた子どもの最善の利益を最優先とする一貫した方針の下で、保護する子どもの年齢や性別、状況等に応じた適切な生活環境を提供することを基本とする。 イ、一時保護は子どもの行動を制限するため、その期間は一時保護の目的を達成するために要する必要最小限の期間とする。 ウ、一時保護が必要な子どもについては、その年齢も乳幼児から思春期まで、また一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害など様々であり、一時保護に際しては、こうした一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な援助を確保する。 前項の基本的な考え方に沿うとともに、家庭的な環境の下での一時保護を原則とし、里親(養育家庭)・ファミリーホーム・自立援助ホームへの保護委託を優先して行うとともに、さらに一時保護委託の委託可能数を増やす取り組みを進めている。 また、同時に、専門性・秘匿性を必要とする児童の保護については、里親(養育家庭)・ファミリーホーム・自立援助ホームでの保護に代え、次のとおり保護を行うことで、子どもの状況等に応じた適切な生活環境と援助の提供に努めている。 ア、2歳未満の乳児の保護:乳児院への保護委託 イ、2歳以上の児童の保護:区の整備する一時保護所における保護 一時保護にあたっては、保護期間中における通学、友人関係、また児童相談所による支援等を考慮し、区内での保護を原則としている。 ただし、区外での一時保護が望ましいケースにおいては、都及び児童相談所設置区は、広域調整の一環として、一時保護の相互委託を行うこととしており、この相互委託を活用することで、適切な生活環境と援助の提供に努めている。 2 家庭的な環境の一時保護所の整備 区は、一時保護所の開設に際し、子どもたちのプライバシーが守られ、安心して過ごすことができるよう、家庭的な雰囲気のもと日常的な支援を行うための環境整備を行っている。 ア、学齢男子(個室8人)、学齢女子(個室6人)、幼児(相部屋6人)の合計20人の入所施設とし、学齢児の居室については、プライバシーの確保、精神的な安定の確保、また、様々な事情を抱えた児童が、他人と同室で過ごすことで発生するトラブル等の未然防止のため個室としている。 個室間の間仕切りを移動させて相部屋化することで最大26人の入所が可能な設計としている。 イ、児童が落ち着いた共同生活を送ることのできるよう少人数グループの生活環境としている。 また、居住スペースには、職員と子どもが食事を一緒に作ることができる基本的な機能を備えた簡易キッチンを設置するとともに、歓談・食事ができる空間(ホール)を整備している。 ウ、学習室や自由に過ごせるラウンジ、砂遊びやボール遊びができる庭等を設け、子どもの日中の活動の場とすることで、閉鎖空間であっても生活面のメリハリや自由度が広げられる設計とする。併せて、ソフト面でも日々の支援を通じて、安心度を高める日課を提供している。 3 一時保護所における権利擁護の取り組み 弁護士等を一時保護所第三者委員として設置し、委員は定期的に一時保護所へ訪問し、子ども達の様子を確認するとともに、必要に応じて面談し、日頃の不満などの意見を聞き取る取り組みを行っている。 聞き取った内容は適切に児童相談所等へ伝達し、適宜子どもの意見を運営に反映するなどの改善に努めている。 外部評価機関により、一時保護所において子どもの権利が守られている体制であるかを含めた評価を定期的に実施する(3年に1回の実施を想定。令和2年度に第1回目の評価を実施)。 入所者等からの苦情や要望の適切な解決を図り、入所者等の権利擁護、一時保護所が提供するサービスの質の向上及び運営の信頼性を確保する体制として、児童相談所一時保護課長等による苦情解決責任者の位置づけを明確にしている。 子どもが一時保護所に入所する際は、子どもの権利や一時保護所において生活する際のルールが分かりやすく記載された「一時保護所のしおり」を配付するとともに、一時保護所内での相談方法や不満や意見、改善要望などがあった場合の意見表明等を子どもに丁寧に説明している。 一時保護所内の子どもが誰にも見られずに、自身の意見の記載や、第三者委員、人権擁護機関へ相談をすることができる意見箱を設置しており、また、投函する紙面には子どもの意向に応じた宛先(第三者委員、せたがやホッと子どもサポート(せたホッと)等)を予め記載し、関係者のみが内容を確認できるような工夫を講じている。 一時保護所内の基本的なルールなどについて、定期的に子ども達のみで話し合い、決めていくこととしており、これにより一時保護所内の子どもの権利保障に努めている。 子ども達が一時保護所内で生活する中での不満や意見を定期的に一時保護所職員が聞く機会を設け、子ども達が思っていることを職員に気軽に伝えられる関係性の構築に努めている。 (2)今後の取り組み 1 一時保護所の適切な運営のための継続した取り組み 一時保護所という施設の特性も踏まえ、子どもとの関係性構築のあり方や、聞き取った意見への早期対応などの事例、外部評価の結果などを踏まえながら、常に一時保護所の適正な運営が図られていることを確認するとともに、必要に応じて適切な運営改善に努めるものとする。 また、第三者委員等の意見も踏まえ、権利擁護の仕組みが適切に機能しているかについても検証を行い、必要な改善に取り組むものとする。 2 一時保護にあたっての里親の積極的な活用 児童の一時保護にあたっては、引き続き、養育委託と同様に家庭養育優先の考えに基づき里親への一時保護委託を優先するものとする。 特に、乳幼児の一時保護においては、区内に乳児院がないことを踏まえ、より積極的に里親への一時保護委託を活用するものとし、今後の需要量の動向なども踏まえながら、ニーズに応えられるよう経験豊かな里親の育成に努めるものとする。 3 一時保護の多様な受け皿の確保 一時保護件数の動向や、早期の予防的な相談援助活動の展開を見据え、引き続き一時保護の需要量を安定して確保できるよう、一時保護所での保護や、施設・里親、都内自治体と連携した保護に加え、民間や地域を活用しての一時保護の受け皿の拡充に取り組むものとする。 10 子どもの権利擁護 (1)現況 1 一時保護された子どもにかかる権利擁護の取り組み 前項「9 一時保護児童への支援体制の強化」参照 2 措置等にあたっての子どもの意見聴取の取り組み 一時保護所や児童養護施設等への入所、里親(養育家庭)委託などを実施する場合において、子どもの意見が尊重され、権利が守られた適切な養育環境を提供することを基本的な考え方としている。 この方針に基づき、区の児童相談所は、措置をはじめとする子どもの援助にあたっては、子どもに対し十分な説明を行い、聴取した意見を援助方針決定に反映させるよう努めている。 3 措置された子どもにかかる権利擁護の取り組み 措置された子どもに対して、施設や里親(養育家庭)のもとで生活する際の権利が分かりやすく記載された「子どもの権利ノート」を配布している。 また、この権利ノートには施設外部の相談窓口の連絡先や、せたホッと宛のはがきを同封することにより、子どもが権利侵害を感じた際に適切に相談できる仕組みを設けている。 (せたホッと。一時保護、措置された子どもが、児童相談所が行った措置に対する不服・不満がある場合や、施設入所者同士の人権侵害、入所施設等の処遇不満、改善要望などがあった場合は、児童相談所や当該施設等において対応することを基本とするほか、せたホッとへ相談等できるよう、「一時保護所のしおり」や「子どもの権利ノート」を用いて、せたホッとの制度や連絡方法を周知している。 相談等を受けたせたホッとは、関係機関との連携・協力のもと、助言や支援を行い、個別救済のための申立等があった場合は、関係機関に対し調査、調整等を行うことで問題の解決を図る。 ) 参考 せたホッとの基本的な対応方法 被措置児童がせたホッとへの相談を希望した場合については、従来の電話相談、メール相談等で行うことを基本としている。 一時保護された子どもについては、意見用紙に手紙でのやり取りを希望することや直接会っての面談を希望するなど、子どもの希望に応じた連絡方法を選択できるよう工夫を講じるとともに、面談にかかる日程調整などを必要最低限の職員等で調整するなど、可能な限り相談事実の秘匿性を担保している。 4 被措置児童等虐待対応について 児童福祉法第33条の14の規定により、被措置児童等虐待に係る通告、届出がされた場合、速やかに、当該被措置児童等の状況の把握、虐待事実の確認等を行うこととされており、区はこれらの確認業務を、施設等の検査・指導担当所管において実施する。 また、同法第33条の16の規定に基づき、毎年度、被措置児童等虐待の状況、被措置児童等虐待があった場合に講じた措置等を公表する。 (「被措置児童等虐待」について(児童福祉法(抄)) 第三十三条の十 この法律で、被措置児童等虐待とは、小規模住居型児童養育事業に従事する者、里親若しくはその同居人、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設の長、その職員その他の従業者、指定発達支援医療機関の管理者その他の従業者、第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設を設けている児童相談所の所長、当該施設の職員その他の従業者又は第三十三条第一項若しくは第二項の委託を受けて児童の一時保護を行う業務に従事する者(以下「施設職員等」と総称する。)が、委託された児童、入所する児童又は一時保護が行われた児童(以下「被措置児童等」という。)について行う次に掲げる行為をいう。 一 被措置児童等の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。 二 被措置児童等にわいせつな行為をすること又は被措置児童等をしてわいせつな行為をさせること。 三 被措置児童等の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、同居人若しくは生活を共にする他の児童による前二号又は次号に掲げる行為の放置その他の施設職員等としての養育又は業務を著しく怠ること。 四 被措置児童等に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の被措置児童等に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。) 5 子どもに対する子どもの権利の周知について 区は、子どもが自ら持っている権利を分かりやすく説明する周知チラシ等の配布などを行っている。 これに併せて、人権侵害があった場合の相談・連絡方法や、子ども自身で直接相談できることの周知を行っている。 (2)今後の取り組み 1 被措置児童の意見表明支援のための第三者委員制度の構築 一時保護された子どもの意見表明支援のための第三者委員制度に加え、令和2年6月に公表された国の「アドボカシーに関するガイドライン(案)」に基づき、里親(養育家庭)や児童養護施設等で措置されている子どもや、自立に向けて準備をしている子どもなど、児童相談所が関わる支援のあらゆる場面に直面する子どもに対する「子ども意見表明支援員」の設置も含めた、第三者による意見表明支援のための仕組みづくりに取り組む。 なお、この仕組みづくりにあたっては、新たに設置する「子ども意見表明支援員」等は、子どもの意見表明支援をアウトリーチする機能を有するものとし、施設等において子どもの権利を制限するようなルールが設けられること等を防ぐために日常生活を見守る。 また、改善を勧告した場合に適切に改善が図られるよう、その機能の保障も含めて制度構築を進めるものとする。 2 一時保護児童・被措置児童等虐待防止に向けた取り組み 本来、子どもが安心して過ごせる場である一時保護所や施設等において、職員による性的虐待等の発生が後を絶たないことを踏まえ、施設等における職員の勤務実態等の把握を行うとともに、虐待発生防止に向けた、組織体制のあり方等の具体的な方策の策定と実施に取り組む。 また、子どもの性的指向等、多様性を認め、職員が適切な対応を行い、子どもの権利や人権を侵害することがないよう、一時保護所や施設等職員に対する一貫した人権教育の実施と徹底した意識改革に取り組む。 3 人権教育との連携 人権教育と併せ、子ども自身が生きる権利、育つ権利、守られる権利などの子どもの権利を学ぶとともに、さらに意見表明の必要性や意義、仕組みを理解し、自らの考えでこれらを利用できるよう、関係機関等と連携した制度周知に取り組む。 これらの取り組みの一環として、子どもの人権擁護機関「せたホッと」や、児童相談所の通告ダイヤルの存在や利用方法について、子どもたちに一人ずつ行き渡るよう、学校を通じての周知・啓発に引き続き取り組む。 地域全体がアドボカシー機能を果たし、連携して子どもの権利擁護を担う地域社会の実現に向け、地域に対する人権教育や子どもの権利の周知啓発などを行い、その気運醸成に努めるとともに、取り組みの基盤づくりとして、家庭の中における、人権や多様性を認め合うことの大切さを学び、考える機会の創出に取り組む。 4 社会情勢の変化にあわせた相談ツールの開発 児童は、児童本人の意向により相談先を主体的に選択できる権利を有することを踏まえ、年齢や環境にあわせたきめ細やかな相談先の情報発信とともに、SNSなどの情報・連絡ツールを活用した相談方法の開発などに取り組む。 5 権利擁護の取り組み状況の把握 児童養護施設や里親家庭における権利ノートの活用状況について、児童相談所の担当の児童福祉司が児童面接の際などにチェックを行い、必要に応じて適切な子どもへの説明が行われるよう改善を図るものとする。 6 関係機関や子どもとの意見交換の実施 子どもの権利擁護にかかる関係各機関や、子ども自身との意見交換を定期的に行うなどしながら、子どもが利用しやすい、適切な意見表明支援としてそれぞれの制度が機能するよう、常に見直しを図るものとする。 11 その他 (1)要保護児童等に関する全国情報共有システムへの参加 近年に発生した児童虐待の事案において、転居した際の自治体間における引継ぎや、児童相談所と区市町村の情報共有が不十分であったことが課題として挙げられている。 こうした状況を踏まえ、「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(平成31年3月19日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)において、転居ケース等における引継ぎを含め、児童相談所・区市町村の情報共有をより効率的・効果的に行うため、システム整備を進めることとしており、国において、各自治体が使用する全国統一のシステムの開発を行うこととした。 現在、国は、令和3年4月を始期としたシステム構築を進めており、区としても早期に当該システムへ参加するものとし、その準備を進める。 コラム3 子どもの権利擁護の視点から見た一時保護の現状と課題 弁護士 池田 清貴 (世田谷区児童福祉審議会委員) 児童相談所には、親から虐待を受けている子ども、虐待を受けている疑いがあり、しっかりとした調査が必要な子どもなどを、一時的に家庭から離し、保護する機能があります。 これを「一時保護」といいます。 一時保護は、その名のとおり保護することですから、子どもにとっては利益になるはずのものです。 しかし、たとえば、子ども自身は家にいたいと思っていて、保護されることに納得していない場合もあります。 そうでなくとも、子どもはそれまでの環境から突然切り離されるという辛さを感じるでしょう。 また、子どもを奪い返しにくる親もいることから、外部との通信や登校などが制限され、子どもは窮屈な生活を送ることとなります。 たしかに、子どもがそうした負担を感じるとしても、安全を守るという観点からは仕方のない部分もあります。 しかし、子どもの安全のためには秩序維持が必要だ、という発想から、行き過ぎた管理が行われてしまうこともあります。 たとえば、私語一般の禁止、過剰な男女の接触禁止、染髪の黒染め強制、ルール違反へのペナルティなどの問題が指摘されることがあります。 この点、世田谷区では、新しく一時保護所を作るという利点を生かして、少人数のユニット制をとり、管理的ではない家庭的な雰囲気が大切にされています。 また、居室は原則として個室で、プライバシーが確保されています。 共通のスペースではテレビやゲームなどが自由に使用でき、イベントなども企画され、子ども同士がおしゃべりをしながら楽しく過ごせるように配慮されています。 さらに、一時保護所内の生活だけではなく、安全を確保しつつ、近隣の公園や体育館に出掛けてのびのびと遊ぶ機会も設けられています。 しかし、一時保護所のケア全体の質の向上をはかることだけでは、子どもの権利擁護をまっとうすることはできません。 個々の子どもの権利を救済する仕組みも必要です。たとえば、特定の職員による子どもへの虐待や、子どもの意思を尊重しないケースワークがなされてしまうことも起こりうるからです。 この点、国においては、権利擁護システムのガイドラインを策定し、子どもが自分で、あるいは「子どもアドボケイト」という意見表明を支援する者を介して、児童福祉審議会に不服を申し立てられるという制度の提案をしています。 世田谷区では、意見箱の設置、第三者委員による定期訪問、子どもの自治活動としての子ども会議、管理職により一人ひとりの意見を聞く会の開催などの取組みをしています。 これらは、子どもが意見を表明しやすくすることにより権利救済につなげようという試みです。 また、外部の第三者評価の導入のほか、独立専門機関である「せたホッと」が児童福祉の分野でも子どもの権利救済機関として活動することとされています。 これからも、過酷な環境を生き抜いてきた子どもたちが、一時保護所で、安全に、安心して、そして伸びやかに羽休めができるように、関係機関は不断の努力を続けていく必要があるでしょう。 コラム4 児童相談行政の現場から 世田谷区児童相談所 所長 土橋 俊彦 世田谷区児童相談所は、関係機関や地域の皆様のご支援のおかげをもちまして、令和2年4月の開設以降滞りなく相談援助活動を進めているところであり、あらためてこの場をお借りし、皆様に心より感謝申し上げます。 さて、日々の児童相談所での業務を通じ、学校や保育所、地域での見守りなどの支援の重要性について改めて痛感しているところであり、以下、こうした所感について述べさせていただきます。 児童相談所の役割は、専門性を活かした児童、保護者の親子関係の再構築支援とともに、最後のセーフティネットとして機能することにあります。 こうした児童相談所の役割は非常に重要なものではありますが、しかしながら、それは支援の一部を担うものに過ぎず、児童が日常暮らす学校や保育所、地域の力なくしては児童と家庭全体を支えることはできません。 地域の支援の拠点である子ども家庭支援センターを中心とした支援のネットワークと、児童相談所が連携することが不可欠であり、世田谷区がめざす児童相談支援の形です。 また、DV問題との複合した課題にも、児童相談所と子ども家庭支援センターが細やかに連携しながら対応することで、効果的な支援が実現できます。 実際に、DV被害に悩む母子を、児童相談所と子ども家庭支援センターが連携して支援することで、安心できる生活を実現できたケースもありました。 振り返りますと、児童相談所の開設に向けて、有識者や施設・里親、地域の方々と議論してきたことが、こうした現在の運営の土台となっており、世田谷区の児童相談支援を基本から見直し、体制を構築するうえで重要な礎になっております。 児童相談所をはじめとする児童相談行政の現場で行われる相談援助活動は、いわば、児童の願いと保護者の願いを共通の目標として、児童・保護者がお互いに安心し、安全に生活できる環境を一緒に作っていく共同作業です。 このような考えの下、私たちは、家族への支援に取り組んでまいります。 児童虐待をはじめとする家庭の問題の早期発見・早期対応の重要性は言うまでもなく、さらには、個々の児童の状況に合わせた一時保護や代替養育の提供、その後の自立のサポートなど、一層の支援の充実が求められています。 特に里親家庭については、さまざまな児童のニーズに対応できるよう里親登録家庭の拡充や委託促進、そして丁寧な支援等が重要であると考えております。 児童を取り巻く環境や、社会情勢の変化に合わせ、これまで以上にスピード感をもって児童相談体制の強化や職員のスキルの向上、地域の理解促進に取り組むなど、不断の努力が求められています。 こうした中、児童福祉審議会の委員の皆様や、当事者からのご意見・ご提言が多く盛り込まれた本計画において、今後の児童相談行政の方向性が示された意義は大変大きいものと考えております。 児童相談行政の最前線を預かる者として、職員の先頭に立ち、関係機関の皆様と一丸となり、計画に示された目標の達成に向けて全力で取り組んでまいりますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。 第4章 里親等委託・施設養育の推計と目標 1 目標設定にあたっての基本的な考え方 区は、数値目標を定め、その達成に向けて取り組むにあたっては、機械的に措置を決定するのではなく、個々の子どもに対する具体的な措置は児童相談所における「家庭養育優先原則」を十分踏まえたアセスメントの結果に基づき、子どもの最善の利益の観点から行い、子どもにとって最適な環境での養育を最優先に考えるものとする。 2 推計にあたっての前提条件 (1)推計の方法 「都道府県社会的養育推進計画の策定要領」において、代替養育を必要とする子ども数の見込みの算出方法は以下のとおりとされている。 (代替養育を必要とする子ども数の見込みの算出方法) 子どもの人口(推計・各歳ごと) かける 代替養育が必要となる割合(潜在的需要を含む。) イコール代替養育を必要とする子ども数 (国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(高位推計)又は各都道府県での実態に即した人口推計) (「代替養育が必要となる割合」を算出する際に有用と考えられるデータ) (ア)現在、代替養育が必要な子ども数の算出に有用と考えられるデータ a.現に入所措置又は里親等委託されている子ども数(以下「入所措置等子ども数」という。) の子どもの人口に占める割合(福祉行政報告例、社会福祉施設等調査) (イ)潜在的需要の算出に有用と考えられるデータ b.「新規入所措置等子ども数」の過去○年間の状況及び伸び率(福祉行政報告例) c.「児童相談所における養護相談対応件数」の過去○年間の状況及び伸び率(福祉行政報告例) d.一時保護子ども数(一時保護所・委託一時保護)の過去○年間の状況及び伸び率(福祉行政報告例) e.市区町村の要保護児童対策地域協議会で管理しているケース数の過去○年間の状況及び伸び率 f.子ども・子育て支援法に基づき、各市区町村が策定した「市町村子ども・子育て支援事業計画」の社会的養育に関係する事業の量等のデータ g.児童相談所で受理した相談等のうち、種々の理由により入所措置又は里親委託を行っていないが、入所措置又は里親委託を必要とする可能性がある件数(子ども数)の過去○年間の状況及び伸び率 h.親子再統合や養子縁組推進に向けた取組の推進によって代替養育から解除されるケース数の過去◯年間の状況及び伸び率 〇については、現在の状況や近年の動向、市町村の取組みなどを踏まえ、各自治体で定めることとされている。 しかしながら、国で示す策定要領のうち、潜在的需要の算出に係る数値、割合の算出については、過去の状況を踏まえる必要があるため、令和2年4月1日に児童相談所を開設した当区においては、これを独自で算出することは困難である。 ついては、本計画においては、都全体の児童人口に占める代替養育を必要とする児童数の割合、区の18歳未満人口の割合を基に、代替養育を必要とする児童数を推計するものとする。 (2)計画数値の補正 今後、代替養育を必要とする児童の増加が見込まれる一方、家族再統合・家庭復帰の促進や、特別養子縁組の促進などによる代替養育を必要とする児童数の減少などにより、年次ごとの目標数値と、実績に基づく将来推計に差異が生じるものと見込まれる。 ついては、年次ごとに目標達成状況の検証を行うとともに、あわせて必要に応じて、推計値の再算定と目標数値の見直し等を行うものとする。 なお、一連の取り組みにあたっては、家庭養育優先の考えの下、家族再統合・家庭復帰に向けた支援や、特別養子縁組の一層の推進に取り組むことを前提とする。 目標数値の見直しにあたっては、代替養育のニーズ量の動向とともに、これらの取り組みの成果等も見通したうえで修正を加えるものとする。 (3)広域調整による里親(養育家庭)・施設等の相互利用と区の目標について 都及び児童相談所設置区は、広域調整の一環として、里親(養育家庭)・施設等への養育委託・入所措置の相互利用を行うこととしており、この相互利用により、子どもの状況に合わせ、広く最善の生活環境等をマッチングできることとしている。 しかしながら、実際には、子どもがそれまで生まれ育った地域とのつながりや、通学、友人関係、また児童相談所による家庭復帰に向けたプログラムの実施等を考慮すると、区内における代替養育の提供が望まれるケースがほとんどであり、他自治体所在の里親(養育家庭)・施設等への養育委託・入所措置を必須とするケースは僅少である。 参考 他自治体所在の里親(養育家庭)・施設等への養育委託・入所措置を必須とするケースの現況 区児童相談所に対し、他自治体所在の里親(養育家庭)・施設等への養育委託・入所措置を行っているケースのうち、他自治体での代替養育が必須のケースの有無について調査を行った (令和2年7月1日時点調査)。 結果、他自治体所在の里親(養育家庭)・施設等への養育委託・入所措置を必須とするケースは 100件中5件にとどまっている。 ついては、本計画においては、広域調整による里親(養育家庭)・施設等の相互利用を念頭に置いた目標数値の下方修正等は行わず、引き続き子どもの最善の利益の立場から、区内における養育委託・入所措置を前提とした代替養育の実施に取り組むとともに、区内におけるこれらのニーズを満たすべく受け皿の拡充に取り組むものとする。 3 代替養育を必要とする児童数の推計 (1)算出手順 1 代替養育を必要とする児童数の算出式 代替養育を必要とする児童数の推計イコール現在の措置児童数たす(新規措置児童数ひく退所児童数)たす(潜在需要の推計1たす2) 算出過程については巻末80ページ〜84ページ参照 2 算出式で用いる係数の推計 ア、新規措置児童数(新たに代替養育が必要となる児童数)の推計 都における新たに代替養育を必要とする児童数の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における新たに代替養育を必要とする児童数を推計する。 イ、退所児童数(自立等により代替養育が不要となる児童数)の推計 都における措置児童数に対する退所児童数(自立や家庭復帰、養子縁組成立等により、代替養育の必要がなくなる児童数)の比率を用いて、「ア」に基づく区の年次別の措置児童数の推計に乗じることで、区における退所児童数を推計する。 ウ、潜在需要の推計1 a:在宅指導中の児童の推計 都における在宅指導中児童数の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における在宅指導中の児童数を推計する。 b:在宅指導中児童のうち施設等の利用が可能であったが、利用できなかった児童 都における在宅指導中の児童のうち「施設等の利用が可能であったが、利用できなかった児童」の比率を用いて、「a」に基づく区の在宅指導中の児童数の推計に乗じることで、区における代替養育の潜在需要1を推計する。 エ、潜在需要の推計2 c:潜在的な児童虐待事案の推計 都は、平成31年度において、児童虐待が疑われる事案にかかる緊急点検を実施した。 都における児童人口に対する調査で把握された虐待の恐れのある事案の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における潜在的な児童虐待事案の潜在量を推計する。 d:潜在的な児童虐待事案のうち入所措置等を必要とする可能性のある児童 「ア」の新規措置児童数の比率を用いて、「c」により推計した潜在的な児童虐待事案の推計に乗じることで、区における代替養育の潜在需要2を推計する。 (2)区における代替養育を必要とする児童数の算出結果 参考 都全体における代替養育を必要とする児童数の算出結果 (代替養育を必要とする児童数推計) 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 4 里親等委託の目標 (1)里親等委託率の目標値 「代替養育を必要とする児童数の推計」に基づき、令和6年度に「新しい社会的養育ビジョン」で示された里親等委託率の数値目標(就学前の子どもについては75%以上、学童期以降は50%以上)を達成するとした場合、目指すべき里親委託数は次のとおりとなる。 (2)里親等登録数の目標整備量 1 目標整備量 都における平成30年度末時点の全里親等登録家庭のうち、委託中の家庭は約67%であったことを踏まえると、里親委託等すべき児童数の約1.49倍の登録家庭が必要になると見込まれる。 これに基づき、各年度における里親等委託数の目標数に対し、必要となる登録家庭数の係数(1.49倍)を乗じると、各年度における登録家庭数の必要見込み量は下表のとおりと見込まれ、この見込み量をもって区の里親等登録数の目標整備量として定めるものとする。 2 令和6年度までの各年次別整備目標量 令和6年度に向け、各年度に均等に整備目標を課すものとし、次の数値を各年度の達成目標として、里親家庭の登録数の拡充等に取り組むものとする。 (3)取り組みの評価・検証 1 評価・検証の基本的な考え方 「1 目標設定にあたっての基本的な考え方」に基づき措置を行った場合、実績と目標数値が乖離することが予想されるとともに、里親等委託率だけでは区の取り組みの適切な評価にはならないと考えられる。 ついては、各年次における評価・検証にあたっては、里親委託率に加え、子どもの最善の利益の観点から、十分なアセスメントが行われていること、また、里親委託が適している児童が適切に里親等委託されていることについてもあわせて評価・検証を行うものとする。 2 評価・検証手法の開発 養育委託等の決定の適正の評価にあたっては、児童相談所の第三者評価の項目に加えるなど、当区独自の工夫を検討する。 また、里親委託に適した児童の定義などについても検討を行うものとし、評価方法と合わせ、令和6年度の計画の中間見直しまでの間にこれらの手法の確立に取り組む。 3 当面の間における評価・検証 評価・検証手法の開発・確率に取り組みつつ、当面の間において、区は、次の手順 により、各年次において状況を把握のうえ、評価・検証を行うものとする。 1)十分なアセスメントの実施の確認 区は、児童相談所において、児童相談所運営指針第1章第5節「4.援助指針(援助方針)の実行及び再検討」に基づく十分なアセスメントが行われているかについて、援助方針会議等の記録に基づき確認を行うものとする。 (児童相談所運営指針第1章第5節「4.援助指針(援助方針)の実行及び再検討」 ) (1) 里親等への委託又は児童福祉施設等への措置をする場合、児童相談所は、援助指針(援助方針)に基づき、事前に里親等又は児童福祉施設等と協議を行った上で、援助指針(援助方針)を策定すること。 (2) その後の援助により、子どもや家庭の有する問題等が軽減され、又は新たな方向に問題が展開する等、子どもや家庭の問題は変化する。 この変化に対応するため、援助指針(援助方針)については、里親等又は児童福祉施設等の意見も踏まえながら、一定の期間(3〜4か月に1回程度)をおいて再検討を加えることとし、その際、施設入所中の子どもについては、個々の状況に応じて、里親委託や養子縁組を検討するなど家庭養護への移行に向けた最大限の努力を行うこと。 特に、乳幼児は、安定した家族の関係の中で愛着関係の基礎を作る時期であることから、数か月以内には家庭養護へ移行できるよう検討すること。 また、援助指針(援助方針)の見直しに当たっては、子ども及びその保護者の意向を聴取するなど、これらの者の参加を得て再検討を加えていくことが望ましい。 2)潜在的な里親等委託児童の把握 区は、1)の確認とともに、施設に入所している児童の里親等委託の可能性等について調査を行うものとする。 そのうえで、里親等委託が適していたが委託できていなかった児童及び家庭復帰(計画含む。)に向けて施設による交流等支援中の児童※1を潜在的な里親等委託児童数として把握する※2ものとする。 ※1 家庭復帰(計画含む。)に向けて施設による交流等支援中の児童。 現在は施設に入所 措置されているものの、家庭復帰に向けて、児童相談所の支援の下で家族と交流を行っている児童。 家庭での生活が可能な状況にある児童であり、本来は里親等への養育委託の 可能性が考えられることから、潜在的な里親等委託児童として抽出を行う。 ※2 現状を把握するため、令和2年7月1日時点で施設に入所している児童について、里親等委託の可能性等について調査を行った。 その結果、里親等委託が適していたが委託できていなかった児童12人、家庭復帰(計画含む。)に向けて施設による交流等支援中の児童13人の合わせて25人が潜在的な里親等委託児童数として把握されたところである。 ※3 その他(里親等委託が適していない児童)の例…調査の際、里親等委託が適していないと判断された理由としては、「専門的な対応を要する」、「児童本人が施設への継続入所希望」、「児童本人が里親等への委託拒否」、「保護者の状況から里親等委託が困難」などが挙げられる。 ※4 小数第2位を四捨五入して算出しているため、合計が100.0%にならない。 3)評価 本来は、里親等への養育委託が適しているすべての児童について、里親等へ養育委託が達成される必要があることから、潜在的な里親等委託児童が生じないことが望まれる。 このことを踏まえ、区は、次のことを公表するとともに、里親等への養育委託が適している児童のすべてを里親等へ養育委託ができるよう、里親登録数の一層の拡充や、その他必要な改善措置を講じるものとする。 公表事項 里親等委託数、里親等登録数、里親等委託率 潜在的な里親等委託児童数の発生状況(子どもの最善の利益の観点からの里親委託等の実施状況) 5 施設養育の必要量の推計 (1)施設で養育が必要な児童数 「代替養育を必要とする児童数の推計」結果から、「里親等への委託児童数の推計」結果を差し引き、「施設で養育が必要な児童数」を推計すると、次のとおりとなる。 (2)「必要な施設定員数」の推計 1 推計方法 都における施設の入所率は、次のとおりとなっている。 3歳未満 約80%(乳児院の入所率) 3歳以上就学前と学童期以降 約95% この入所率は、児童の特性と施設の状況が必ずしも一致せず、余裕を持った定員設定が求められている実情が実績に反映されたものと考えられる。 こうしたことを踏まえ、(1)により算出した「施設で養育が必要な児童数」の需要に応えるため、必要な施設定員数を推計するにあたっては、次の係数を用いるものとする。 3歳未満 施設で養育が必要な児童数かける125% 3歳以上就学前と学童期以降 施設で養育が必要な児童数かける105% 2 必要な施設定員数 「施設で養育が必要な児童数」に1の係数を乗じ、必要な施設定員数を推計すると次のとおりとなり、区はこの推計値をもって必要な施設定員数の整備目標とする。 3 令和6年度までの各年次別整備目標量 令和6年度に向け、各年度に均等に整備目標を課すものとし、次の数値を各年度の達成目標として、施設定員数の整備に取り組むものとする。 (3)整備方針 1 3歳以上就学前、学童期以降の児童の施設養育(再掲) 区は、この必要量の見込みに基づき、施設整備の促進を図るものとし、整備にあたっては、小規模かつ地域分散化のための国庫補助金を活用した財政支援等を行うなど、できる限り良好な家庭環境が確保された質の高い個別ケアの実現の促進を図るものとする。 53ページ「7 施設におけるできる限り良好な家庭的環境の整備」参照。 2 3歳未満の施設養育 現在、区内には乳児院が存在していない。 よって、乳児院への措置が必要な場合は、区外の乳児院へ入所措置を行っている。 引き続き、区外の乳児院との連携を図りながら、必要量の確保に努めるものとする。 これと同時に、これまでは施設養育が適するとされていた児童であっても、これを養育できる専門性の高い里親(専門養育家庭)の育成に努めるものとする。 コラム5 里親制度拡充に向けた区民からの提言 齋藤 幸代 (世田谷区児童福祉審議会委員(区民委員)) 私は、世田谷区で子どもの食に課題のある家庭の支援ボランティアとして活動しています。 子どもの育つ環境について関心を持ち、世田谷区児童福祉審議会の区民委員として会議に出席させて頂いています。 東京都の管轄であった児童相談所が、令和2年4月に世田谷区に開設されました。 新しい社会的養育ビジョンで、里親委託推進として里親制度の委託率の目標も掲げられています。 世田谷区独自の特性を活かした社会的養育を推進して頂きたいと区民としては望みます。 会議に出席して、世田谷区の社会的養護について、様々な情報を得る事ができ、専門分野の委員の方々の考えや意見を伺い知ることで、認識が深まりました。 それまで自分自身が里親制度についての知識が曖昧で、自分が関わるにはハードルが高いように感じていましたが、今後何らかの形で関わりたいと思うようになりました。 里親制度とは、様々な事情で家族と離れて暮らす子どもを、自分の家庭に迎え入れ温かい愛情と正しい理解を持って養育する制度です。 里親という言葉は、世間で認知されていると思いますが、里親制度について、区民はどれくらい認知しているのでしょうか。 私は、図書館や区民センター等の公共施設は比較的よく利用します。 掲示ポスターや配置されているリーフレット、区報も目を通すようにしています。 しかし私の知る限りでは、里親についての情報発信は、まだあまりされていないと感じました。 区の取り組みや里親制度を知り、社会全体に広めていくには、区民への広報・啓発活動や里親の待遇・支援の充実が不可欠であると感じます。 学校や教育現場における制度の周知などもできるとよいです。 今後、広報や活動も広げていただきたいです。 活動中のボランティアの運営を担っているNPO法人からの発信で、「里親を支える」援助者の募集があり説明会に参加しました。 里親を増やすことと同時に里親を支える事も必要です。 養育家庭等が地域で孤立することがないように、地域の子育て支援との連携を図る事もとても大切だと感じています。 地域で里親家庭を支えること、すべての親子を社会で支えるため、私も1歩行動を始めてみます。 川島 優子(世田谷区児童福祉審議会委員(区民委員)) 今年度、世田谷区児童福祉審議会に区民委員という立場で参加させていただく機会を得て、初めて世田谷区の区独自の里親制度拡充について知り、里親制度に関心をもち、考える機会を得ました。 私自身、小学生の子どもを育てる親として、児童虐待等の痛ましいニュースを耳にするたびに、心を痛め、未来ある全ての子どもたちが前を向いて明るく生きていける境遇にあることを願わざるを得ません。 苦しんでいる子どもたちが幸せになるための一つの制度が里親制度であると理解し、その制度を拡充することにはとても賛成です。 行政の制度拡充や改革もとても重要だけれど、それと同時に私たち個人個人の里親制度に関する理解度を広げることが大切なのではないかと思います。 苦しんでいる子どもたちがいるのであれば、自分のできる範囲であれば、支援・応援したいという気持ちを持っている人は多いと思う。 ただ、実際に里親になろうと決心する人を増やすことはとても難しいと感じています。 里親制度に関心があったとしても実際に里親になろうという一歩を踏み出すにはハードルがかなり高く感じるからです。 そのハードルを少しでも低くするためには、時間はかかるけれども、継続的な教育と、色々な場面での情報提供が必要だと考えています。 例えば、小学校で、出張授業等の形で行政や施設等から、「家族には色々な形があり、里親という制度があるということ」や、「里親としての経験や里親のもとで育てられた経験」を、知る機会があるといいと思う。 小学校での話が印象的であれば、それを家族で話し、その親も関心を持つことがあるかもしれない。 また、中学・高校・大学へと年齢が上がるにつれて、継続して定期的により充実した内容を周知すること、繰り返し情報に触れることで、知識が積み重なり、少しずつ身近に感じられるようになるのではないでしょうか。 里親にとっても預けられる子どもにとっても、一生を左右する重大なことなので、まずは制度を知り、時間かけて知識や情報を積み重ねていくことが欠かせないのではないでしょうか。 コラム6 施設における子どもの日常と自立支援 児童養護施設 東京家庭学校校長 松田 雄年 (世田谷区児童福祉審議会委員) 児童養護施設はどんな所かというと、施設によって微妙にルールでの差異はあるものの、おそらく自宅で許されている行動の殆どは、施設生活でも認められることでしょう。 そして、児童養護施設といっても様々な形態があります。 乳児院と一緒になっている施設もあれば、幼児から小学低学年だけの施設、男児限定や女児と幼児のみといった施設、また職員が住み込こんでいる施設もあります。 殆どの施設は、幼児から高校生までの男女が一緒に生活しています。 また高校卒業後も、大学生や専門学校生として残って生活しているケースもあります(原則18歳未満)。 大きな建物の中に、大食堂等があって全員で一緒に生活する「大舎制」、小さな集団に区切って生活する「中舎制」、建物自体が独立し10人前後で生活する「小舎制」、地域社会の家屋を利用し6人前後の小集団で職員と一緒に生活する「グループホーム」「地域小規模児童養護施設」があります。 しかし、家庭と施設とは決定的な違いがあります。 どんな小さな規模になっても、それは集団生活です。 そこには、生活ルールと集団ならではの特性があります。 時には早い者勝ちだったり、強い者勝ちだったりします。 自己主張が上手く、人並み以上の声が大きい者が獲得するものが多かったりします。 そんな子どもたちが、本体施設からグループホーム等の地域で生活する場所に異動すると、必ず指摘されることがあります。 「そんな大きい声で喋らなくて聞こえるから!」生活するに連れて、声のトーンが徐々に下がって人並みに成っていきます。 またホームには玄関があるので、靴を並べる習慣を教えなければなりません。 お客様に対しても、持てなしや応対を余儀なくされます。ドアフォンや電話対応もしなければなりません。 お友だちをホームに呼ぶときには、「家(うち)に来ない?」と誘います。 「施設に来ない?」とは大きな違いがあります。 本体施設から異動した子どもたちは、本体施設に戻りたいとは決して言いません。 住めば都かもしれませんが、集団としてのルールが緩いのか、施設としての求心力が低下するのか、いずれにしても居心地が良いようです。 そして、更に良い環境が、養育家庭(里親)と言えるかもしれません。 愛恵会乳児院 専門職リーダー(主任) 小林 由香里 (世田谷区児童福祉審議会委員) 乳児院というと、大きな部屋にベビーベッドがたくさんあって、まるで産科の病院のようなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。 たしかに以前は大きな部屋で十数人の子どもを養育することが一般的でした。 しかし、現在は4〜6名の子どもを1つの単位として養育をする形が主流となっています。 年子の幼子がきょうだいでいるようなイメージです。その中で、特定の大人に見守られながら、食事をしたり、遊んだり、お風呂に入ったり、眠ったりと家庭を疑似体験します。 保育現場ではよく幼児の自立として、基本的生活習慣の獲得ということが言われます。 しかし、乳児院にいる乳幼児は、乳児院に来るまで十分な養育や大人の十分な関わりを受けられずに過ごしてくる場合が多いです。 そのような乳幼児が在院中に獲得してほしいと願うことが一つあります。 それは、安心できる、安心して眠れる、安心してミルクが飲める、安心して食事ができる、安心して遊べる、そしてそれを支えてくれる安心できる大人がいる感覚の獲得です。 在院中にすべての乳幼児がそれを獲得できるように、職員が子どもとの愛着関係を構築して生活の支援をしています。 極々当たり前のことですが、今後子どもたちが社会に大きく羽ばたいていく上で土台となる最も重要なことです。 そしてそれを次の大人に丁寧にバトンタッチすることが乳児院の自立支援だと思います。 第5章 参考資料 1 代替養育を必要とする児童数の推計資料 (1)新たに代替養育が必要となる児童数(新規措置児童数)の推計 1 推計方法 都における新たに代替養育を必要とする児童数の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における新たに代替養育を必要とする児童数を推計する。 2 都の推計 児童人口推計をもとに、児童相談所における養護相談対応件数を推計(相談件数推計)する。 都において、相談件数推計に、平成30年度における新規措置児童数(728人) を養護相談対応件数(25,226件)で割った比率(新規措置比率)の平成28 年度から30年度までの3か年平均は、3.52%となる。 なお、都全体を通して算出される推計値は次のとおりとなる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 3 区の推計 都の新規措置比率の平成28年度から30年度までの3か年平均3.52%を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じ、区における新たに代替養育を必要とする児童数を推計すると、次のとおりとなる。 (2)自立等により代替養育が不要となる児童数(退所児童数)の推計 1 推計方法 都における措置児童数に対する退所児童数(自立や家庭復帰、養子縁組成立等により、代替養育の必要がなくなる児童数)の比率を用いて、区の年次別の措置児童数の推計に乗じることで、区における退所児童数を推計する。 2 都の推計 措置児童数に対する退所児童数の比率(退所児童数比率)の平成28年度から30年度までの3か年平均は、19.33%となる。 なお、都全体を通して算出される推計値は次のとおりとなる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 3 区の推計 都の比率を用いて、区の年次別の措置児童数の推計に乗じることで、区における退所児童数を推計すると、次のとおりとなる。 (3)潜在需要の推計1(在宅指導中児童のうち施設等の利用が可能であった児童の推計) 1 児童人口に対する在宅指導中児童数の推計 ア、推計方法 都における在宅指導中児童数の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における在宅指導中の児童数を推計する。 イ、都の推計 都における児童人口に対する在宅指導中児童数の比率は0.15%(平成30年5月1日及び令和元年5月1日時点の2か年の平均)となる。 なお、都全体を通して算出される推計値は次のとおりとなる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 ウ、区の推計 都の比率を用いて、各年度における児童人口推計に乗じることで、区における児童相談所による在宅指導中の児童数を推計すると、次のとおりとなる。 2 在宅指導中児童のうち施設等の利用が可能であったが、利用できなかった児童の推計 ア、推計方法 都における在宅指導中の児童のうち「施設等の利用が可能であったが、利用できなかった児童」の比率を用いて、区の在宅指導中の児童数の推計に乗じることで、区における代替養育の潜在需要を推計する。 イ、都の推計 都において、在宅指導中の児童数に施設等の利用が可能であったが、利用できなかった児童の割合は、施設3.00%、里親(養育家庭)0.69%(平成30年度及び令和元年度児童相談所調査結果の2か年平均)となる。 なお、都全体を通して算出される推計値は次のとおりとなる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 ウ、区の推計 都の比率を用いて、区の在宅指導中の児童数の推計に乗じることで、区における代替養育の潜在需要を推計すると、次のとおりとなる。 (4)潜在需要の推計2(潜在的な児童虐待事案のうち入所措置等を必要とする可能性のある児童の推計) 1 推計方法 都は、平成31年度において、児童虐待が疑われる事案にかかる緊急点検を実施した。 都における児童人口に対する調査で把握された虐待の恐れのある事案の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における潜在的な児童虐待事案の潜在量を推計する。 さらに、これに新規措置児童数の比率を乗じることで、区における代替養育の潜在需要を推計する。 2 都の推計 都において、「虐待が疑われるケースに係る学校・教育委員会等における緊急点検」(内閣府・厚生労働省・文部科学省通知に基づく平成31年4月等調査)で、132人が「虐待の恐れあり」との結果をもとに、令和11年度までの虐待の恐れがある児童を推計した。 この推計に、新規措置比率3.52%を乗じて、施設への入所等を必要とする児童を推計した。 なお、都全体を通して算出される推計値は次のとおりとなる。 「東京都社会的養育推進計画」より抜粋 3 区の推計 都の比率を用いて、令和11年度までの区の年次別の児童人口に乗じることで、区における潜在的な児童虐待事案の潜在量を推計し、さらに、これに新規措置児童数の比率を乗じて区における代替養育の潜在需要を推計すると、次のとおりとなる。