1資料2 今後の保育施策の方向性について 1 主旨 令和元年度の入園選考では、自宅から30分未満(半径2キロメートル以内)に空きがありながら入所できていない方や認可外保育施設を含めた既存施設の欠員の増加が明らかとなるとともに、育児休業取得希望者の選考見直しにより申込者の意向の把握が可能となってきた。こうした状況を踏まえ、令和2年5月27日の福祉保健常任委員会で報告した「今後の施設整備の進め方等について」では、今年度の緊急的な取り組みの具体策等を示したところであるが、今般、更なる課題の分析等を進め、今後の保育定員の拡大量および今後の保育施策の取り組みと方向性を取りまとめたので報告する。 2 待機児童解消により見えてきた課題 令和2年4月の待機児童解消や入園申込者の状況等から、以下のような課題が明らかとなってきた。 (1)保育需要の地域偏在 待機児童が解消され、今年の4月時点で既存施設には0歳児から2歳児で700人を超える空きが生じている一方で、依然として1歳児クラスの施設定員が逼迫する地域があり、施設が充足する地域と新規整備が必要な地域がより鮮明となっている。認証保育所や連携施設を持たない地域型保育事業に欠員が生じていることから、空きが生じている地域の状況を分析するとともに、認証保育所などの既存施設の活用や柔軟な定員設定により、保育ニーズとのミスマッチを解消する取り組みが必要である。一方、新規施設整備が必要な地域においては、引き続き施設整備に取り組んでいく必要がある。 (2)短時間勤務者等の保育ニーズ 待機児童数から除外している自宅から半径2キロメートル以内に空きがありながら入園できていない世帯は増加傾向にあり、その世帯の1歳児の申込者のうち6割近くが短時間勤務者や求職活動中であることが明らかになった。今後、保護者の多様な保育ニーズへの対応・対策を加速させる必要がある。 (3)保育施設に求められる役割 待機児童の解消を受け、今後は区立園と私立園がそれぞれの役割を明確にし、保育の質の維持・向上を図りながら特色を生かした運営が求められる。特に、区立保育園が公的な施設としての役割を果たすための具体的な検討が必要である。 3 今後の保育定員拡大量について 今年度よりスタートした第2期子ども・子育て支援事業計画の計画期間5か年の総定員拡大量(2,956 人)については、令和2年度中に育児休業取得希望者や自宅から半径2キロメートル以内に空きがありながら入園できていない世帯等の保育ニーズの分析を行う。現時点で不透明な新型コロナウイルス感染症の与える影響や令和3年4月の入園申込状況等の分析とあわせ、令和3年度中に保育定員に関する各年次の達成目標の見直しと定員拡大量の方向性を示し、令和4年度には法定計画である子ども・子育て支援事業計画(調整計画)との整合を図る。 計画の見直しまでの間の定員拡大量については、引き続き進めるとしている公有地を活用した施設整備や保育ニーズが高く新規の保育施設が必要な地域における整備に特化し、休止している令和5年4月開園に向けた施設整備の提案の受付を令和2年11月より再開する。 〔第2期子ども・子育て支援事業計画見直しの予定〕 令和2年 9月〜 保育ニーズの現状分析等 11月〜 令和5年開園に向けた提案の受付 令和3年度 保育定員に関する各年次の達成目標の見直しと定員拡大量の方向性の提示 令和4年度 第2期子ども・子育て支援事業計画の改定 4 今後の保育施策の取り組みと方向性 (1)今年度の取り組み 1 今後の施設整備 新たに整備を進めるべき候補地を示した上で、公有地を活用した施設整備や保育ニーズが高く新規の保育施設が必要な地域での整備を引き続き進める。 ア 施設の不足する地域・地区の明確化 別紙1 今後の新規施設整備にあたっては、新規整備が必要な地域と充足した地域をより明確にした上で、これまでの施設整備手法に加え、保護者の多様な保育ニーズ等へ対応した施設整備が可能となるよう、以下の視点を新たに加えた(仮称)「保育施設整備候補地区」(別紙)を作成する。今後、新規の認可保育所整備・運営事業者提案型募集の第4 期(11月頃)から適用する。 ・自宅から30分未満(半径2キロメートル以内)に空きがありながら入所できていない世帯の状況 ・育児休業取得世帯の分布 イ 区立下北沢保育園跡地の活用 別紙2 区立守山保育園に移転統合する区立下北沢保育園の跡地を活用し、私立認可保育園を誘致する。 2 保育ニーズとのミスマッチの解消 別紙3 認証保育所における経営支援や保護者の負担軽減補助の見直し等により、多様な保育需要に対応した柔軟な保育施策を推進し、ミスマッチの解消を図る。 ア 認証保育所への支援 ア)在園児の確保 認可保育園や企業主導型保育所の保育料の水準を踏まえ、保育の必要性の認定を考慮したうえで、認証保育所等の利用者に対する保育料の負担軽減補助制度を見直す。 イ)経営の改善 @)運営費の見直し ・0歳児の定員を1歳児に振り替えた際の運営費の減少分の補填(令和2年5月27日福祉保健常任委員会報告済) ・運営費の補助対象利用時間の変更 認証保育所が多様な保育ニーズの受け皿となるよう運営費の補助対象利用時間を変更し、待機児童対策の推進に合わせ、認証保育所の支援を一層推進する。 A)認可化移行の促進 認証保育所の意向等も踏まえ、現在地において移行できない施設が移転して整備を行う場合についても、認可保育所への移行を支援する。 3 保育士等処遇改善助成金の継続 別紙4 保育士の確保が喫緊の課題となっている中、区では保育の質の観点から、国が定める必要保育士数よりも多い独自の配置基準を設けている。今後も保育の質を維持するためには、保育士の確保を図りかつ長期間に渡り継続して働き続けられるよう、区独自の補助事業である保育士等処遇改善助成金事業を、令和3年度以降も継続して実施する。 (2)新たな課題に対する方向性の検討 1 柔軟な定員設定の仕組み 既存園の欠員の増加による地域偏在が生じていることから、新規施設を引き続き整備する地域と整備が充足した地域の明確化とあわせ、柔軟に定員変更が可能となる仕組みづくりを検討する。また、既存園の定員弾力化解消に向けた具体的な手法や手順、地域型保育事業の欠員対策として連携施設設定の支援策等を検討していく。あわせて、自宅から30分未満(半径2 キロメートル以内)に空きがありながら入所できていない方の状況について分析を進め、多様な保育ニーズに対応する施策を検討していく。 2 区立保育園の役割 平成31年2月にとりまとめた「区立保育園の今後のあり方」にもとづき、地域保育ネットの活動強化や乳幼児教育の研究の継続による質の維持・向上に取り組むとともに、待機児童の解消を契機として、まちづくりセンター単位の地区ごとの分析を進め、区立保育園の定員調整や、社会情勢や区民ニーズに照らした「子どもの育ちのセーフティーネット」としての区立園の強化と再整備の促進策について検討する。 なお、上記1、2の施策を検討するため、今後、保育部内に3課横断の検討組織を立ち上げ今年度中に施策の方向性を示す。