世田谷区子ども計画(第2期)後期計画 第6章 子どもの貧困対策計画(概要) 1 子どもの貧困対策計画の策定にあたって 策定の趣旨・計画期間・計画の位置づけ 子どもの貧困対策の推進にあたっては、親の妊娠・出産期や子どもの乳幼児期における早期の課題把握から、子どもの学校教育段階、さらに子どもが卒業、就職して、社会的自立が確立されるまで、切れ目のない支援を行うことが重要です。 また、子どもの貧困の背景には様々な社会的要因があることを踏まえ、子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、関係機関をはじめ地域が一体となり推進する必要があります。 このことから、これまでの取組みをさらに充実・発展させていくことも踏まえ、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づく子どもの貧困対策計画を策定しました。 なお、子どもの貧困対策計画は、「子ども計画(第2期)後期計画」に内包するかたちで位置づけます。 2 世田谷区の子どもを取り巻く現状 親への支援策はあるが子どもへの直接的な支援策が少ない、支援が必要な家庭に情報が十分に届いていない等の課題に対応するために、これまで区は子どもの貧困対策に取り組んできました。 この間の課題認識に基づき、子どもの貧困対策計画の策定にあたり、子どもの生活実態を把握するために、平成30年6月〜9月までの間に、子どもと保護者を対象にしたアンケート調査及び支援者に対するヒアリング調査を実施しました。 また、子ども計画(第2期)後期計画の策定にあたり、0〜9歳の保護者やひとり親家庭等を対象にしたアンケート調査等も実施しました。 〜これまでの取組みや子どもの生活実態調査等から〜 ●1割を超える子どもが生活困難層(※参照)で、その約8割がふたり親世帯 ●生活困難による子どもへの様々な影響 ・食の頻度の低さや孤食、栄養の偏り等、食に課題を抱えている ・学校の授業がわからなかったり、家庭が定期的な教育費の支出ができない ・放課後に一人で過ごしており、居場所がない ・むし歯や抑うつ傾向があり、健康状態が悪い 等 ●生活困難を抱える保護者の状況 ・保護者自身が子ども期に困窮しており、現在も困窮している ・保護者自身は子ども期に困窮しておらず、現在困窮している ・不安定な就労状況や暴力被害にあった経験がある ・支援・サービスへの利用意向はあったが、利用しなかった 等 ●生活困難を抱える子どもや保護者の姿が見えにくく、貧困が潜在化 ※生活困難層とは 生活困難層は「生活困難度」により把握します。貧困を測定する指標である「生活困難度」は、子どもの生活における困難を、@低所得、A家計の逼迫、B子どもの体験や所有物の欠如の3つの要素から捉えています。  @低所得、A家計の逼迫、B子どもの体験や所有物の欠如の3つの要素のうち、2つ以上該当する世帯を「困窮層」1つのみ該当する世帯を「周辺層」どれにも該当しない世帯を「一般層」と分類し、「困窮層」と「周辺層」を合わせた層を「生活困難層」としています。 3 子どもの貧困対策計画の方向性 (1)主な課題 ・ひとり親世帯のみならずふたり親世帯も含む生活困難を抱える家庭への支援の必要性 ・食・学習・居場所等で課題を抱える子どもへの支援の充実の必要性 ・保護者への支援の充実の必要性 ・支援の充実のみならず、支援・サービスの利用につながっていない子ども・保護者を支援につなげる必要性 (2)計画の方向性 子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境に左右されないよう、貧困の連鎖を断ち切ると同時に、新たな貧困の連鎖を生まないように 〜すべての子どもが健やかに育成される環境を整備していくと同時に、ひとり親世帯のみならず、ふたり親世帯も含む生活困難を抱える子どもや保護者に対する支援を全庁的に推進〜 ●支援・サービスの充実 @子どもへの支援(食・学習・居場所等)の量・質の充実 A保護者への支援の充実 ●支援につながる仕組みの強化 @当事者の視点に立った情報提供、相談体制等の推進 A支援者の気づきの感度の向上と連携強化 4 子どもの貧困対策計画の内容 (1)教育の支援 【目標】 ・すべての子どもが等しく学び、夢や希望を持つことができる環境の整備 ・教育と福祉の連携により、学校での気づきを契機に生活困難を抱える子どもを早期に発見し、支援につなげる体制の強化 【施策展開】 ●質の高い乳幼児期の教育・保育を通じた支援 ・早期の対応と継続的な見守り・支援 等 ●学校における学力向上に向けた取組みの推進 ・土曜講習会  ・ICTを活用した学習支援(e−ラーニング) 等  ★地域における学習支援事業等の充実 ・生活保護・生活困窮世帯、ひとり親世帯等の子どもを対象にした学習支援  ・子どもの学び場運営スタートアップ事業 等 ●家庭の教育費の負担軽減のための支援の充実 ・就学援助制度や塾等に対する費用の支援等の周知の強化、利用促進 等 ●学校での気づきを契機とした早期把握・支援につなぐための体制強化 ・スクールソーシャルワーカーをはじめ学校内外の教育相談体制の充実や質の向上 等   (2)生活の安定に資するための支援 【目標】 ・生活困難を抱える子どもや保護者の生活の安定 ・安心して過ごせる居場所や児童養護施設等を巣立った若者への支援の充実 ・親の妊娠・出産期から家庭を支え、生活の安定に向けた支援の充実   【施策展開】 ★子どもの居場所づくりの充実 ・食の提供をはじめとする生活支援や学習支援の機能をもつ居場所の充実 等 ●児童養護施設等を巣立った若者への支援の充実 ・給付型奨学金の提供  ・住宅支援  ・居場所支援・地域交流支援 等 ●住宅支援の推進 ・公的住宅等に関する適切な情報提供  ・ひとり親世帯家賃低廉化補助事業 等 ●妊娠・出産期から生活の安定に向けた支援の充実 ・世田谷版ネウボラ(「せたがや子育て利用券」の拡充等)  ・特定妊婦支援 等 ●食育の推進に関する支援 ・母子健診や食生活相談を通じた支援 等   (3)保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援 【目標】 ・求職時等の子どもの預かりの充実 ・個々の状況に応じた就労支援の充実および保護者が子育てと仕事を両立ができる環境の整備 【施策展開】 ●求職時等の子どもの預かりの充実 ・一時預かり事業の拡充 等 ●個々の状況に応じた就労支援の促進 ・生活の見通しを立て、働き方について考える機会の提供  ・様々な就労支援プログラムの活用 等 ●子育てと仕事の両立ができる環境づくりに向けた事業者への働きかけ (4)経済的負担の軽減のための支援 【目標】 ・家庭の経済状況に関わらず、子どもや保護者が安心して生活を送ることができる環境の整備 【施策展開】 ●子育てにかかる経済的負担の軽減 ・既存の手当等の利用促進 ●養育費の安定的な確保のための支援 ・養育費相談会の充実 等 (5)支援につながる仕組みづくり 【目標】 ・生活困難を抱える子どもや保護者が必要な情報を得て、確実に必要な支援につながるための仕組みづくりの強化 ・気づきの感度を高めるとともに連携を強化し、生活困難を抱える子どもや保護者を必要な支援につなぐことができる人材の育成 【施策展開】 ★当事者の視点に立った支援・サービスの周知や相談体制等の推進 ・当事者がためらわずに利用できる子どもへの食の支援事業  ・子どもにもわかりやすい生活困窮支援・サービス周知用冊子の配布 等 ★支援者の気づきの感度の向上と連携強化 ・早期発見のための気づきのシートの配布 ・子どもにもわかりやすい生活困窮支援サービス周知用冊子の作成・配布  ・子どもの貧困への理解を深め、子どもの貧困対策の活動を活性化するためのフォーラムの実施 等 5 子どもの貧困対策計画の推進 ・子どもの貧困対策推進連絡会を中心に、関係所管が連携・協力し、施策や個別事業の適切な調整を図り、全庁的に推進 ・子どもの主体的な参加のもと、子どもの生活実態調査や個別事業等を通じて、子どもの声を尊重するともに、保護者や地域と協働 ・全体の進捗管理や評価・検証は、「子ども計画(第2期)後期計画」全体の推進体制において実施 【 発行 】   世田谷区子ども・若者部子ども家庭課 TEL 03-5432-2406、FAX 03-5432-3081 令和2年3月