はじめに 「せたホッと」平成25年度の活動報告を受けて 世田谷区の子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」が平成25年7月 に実際の活動を始めてからおよそ1年が経ちました。 いじめや暴力などによる悲しい事件が全国で後を絶たない中、世田谷区として、子ども たちの声を受け止め、寄り添いながら、子ども自身が本来持っている力を十分発揮でき るようサポートするには何ができるのか考えてまいりました。そして検討を重ね、平成25 年4 月に子ども条例を改正して組織をたちあげ、7 月から相談等の業務を開始したもの です。 日々、子どもに寄り添い、問題解決に全力で取り組んでいただいている子どもサポート 委員、相談・調査専門員の皆さんに、心から感謝いたします。 この組織の特色の1つは、区長部局と教育委員会が共同設置する第三者機関であるということです。区長部局と教育委員会の垣根を設けることなく、連携して子どもの救済 等に取り組んでいくという姿勢を示すもので、全国的にも先駆的な組織となっています。 また、活動の実効性を担保するために、「せたホッと」の活動に対しては、区立学校や幼稚園、保育園、児童館等は調査や調整協力する義務を負わせ、私立学校や他の民間施設においても、協力の努力義務もうたっています。 「せたホッと」の活動はまだ始まったばかりですが、子どもの立場から最善の利益を実現するために活動し、子どもをいじめや暴力等をめぐる悲劇から守る防波堤の役割を果たし続けてくれることを期待しています。また、子どもの声から浮かびあがる解決可能な課題についてご助言いただくことも、期待しています。 平成26年6月 世田谷区長 ほさか のぶと 「せたホッと子どもサポート」の活動報告に寄せて 世田谷区の子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」の平成25年度 の活動報告を受けて、ご挨拶申し上げます。 いじめや不登校、虐待など、子どもに関わる問題が深刻化、複雑化する中で、子どもの人権を第一に考え、適切かつ迅速に対応するためには、学校や教育委員会だけではなく、家庭や地域、関係機関が連携して取り組むことが重要です。 世田谷区では、子どもの人権を擁護し、子どもの権利の侵害を取り除くことを目的として、区長及び教育委員会の附属機関として「せたがやホッと子どもサポート(せたホッと)」を平成25年4月に設置し、7月より相談等を開始いたしました。 「せたホッと」は開設以来、子どもや保護者から学校生活にかかわる相談等を受けた場合には、教職員などの学校関係者に事情を確認するなどして、問題解決に努めてきたところです。また、いじめを未然に防ぐための取り組みとして、教員・スクールカウンセラー研修での講演や小学校におけるいじめ防止授業の実施などにも取り組んでまいりました。 教育委員会では、国の「いじめ防止対策推進法」を踏まえ、「せたホッと」の子どもサ ポート委員にも参画をいただいて「いじめ防止基本方針」を本年3月に策定いたしまし た。 この基本方針に基づき、学校、家庭、地域が相互に連携し、学校におけるいじめ問 題を克服し、児童・生徒の尊厳を守るための対策を総合的かつ効果的に推進してまい ります。 今後、「せたホッと」が学校と十分な連携を保ちつつ、子どもにとって最善の利益を もたらすよう様々な活動に取り組んでまいります。 平成26年6月 世田谷区教育委員会委員長 いわや つとむ 子どもたちがホッとできる場所、それが「せたホッと」です。              代表子どもサポート委員  いちば よりこ 世田谷区子どもの人権擁護機関(略称「せたホッと」) の事業は平成25 年4 月に準備が開始されてから1年がすぎました。幸い、公募で選ばれたキャラクター「なちゅ」と「せたホッと」の名称が子どももおとなも含めたみんなの心をとらえて、少しずつ浸透してきているように思います。世田谷区子ども条例前文の「子どもは、未来への『希望』です。将来へ向けて社会を築いていく役割を持っています。子どもは、それぞれ一人の人間として、いかなる差別もなくその尊厳と権利が尊重されます。」という理念をいかに具体的に実現していくかが、私たち、「せたホッと」に課せられた役目だと自覚しつつ、ではどのように実現していけばいいのかを考えながらきた1年でした。 この1年間の活動の中で、第一に心がけてきたのは、子どもの権利侵害に関する相談を 受けたとき、子どもたちの本当の声にきちんと耳を傾けることでした。そして、子どもに寄り添い、子どもの声を代弁し、子どもの権利の視点に立った問題の解決を目指しながら、一方で、「公正・中立で独立性と専門性のある第三者」であることを忘れないようにしてきました。相談を受けて子どもに寄り添いながら、助言や支援を行い、関係機関との連携や協力のもと、調査、調整等を行い、中立の第三者機関として問題の解決を図ることは、それほど簡単ではないことを自戒しつつ努力しています。 また、子どもはおとなと違う時間を生きています。子どもの問題は、裁判のように長期化 しては、解決できたときにはすでに問題解決の必要性がなくなっていたというようなことになりかねません。すばやい解決が必要となりますが、その意味では、「せたホッと」は、条例に基づいて設置されているので、迅速に動くことが可能です。 いじめ防止対策推進法が施行されて、世田谷区もいじめ防止基本方針を策定しました。 「せたホッと」が、公正・中立の第三者機関として、いじめについて調査を求められることもあるでしょうが、「せたホッと」がその役割を果たしていくためには、私たちがきちんと課せられた課題に向きあっていくこと、その努力の積み重ねが大事であり、その結果として皆様の信頼を得ていくことが、子どもの権利の実現にとって必要なことなのだと思います。また、いじめの予防についても、いじめ予防授業等の取り組みを行っています。 この1年近くいろいろな相談がありました。相談の背景に、現在の子どもたち、家庭、学 校のかかえる問題が、少しずつ見えてきたような気もします。子どもの問題を、子どもがおかれた学校という集団の人間関係の中で解決していくのですから、ある程度の時間フォローアップしていかなければ、あらたな人間関係の摩擦がおきてしまう場合もあります。そういう場合はケース会議を開きながらじっくりと解決していきます。背景に家庭の問題が浮き彫りにされてきた場合は、家庭の問題の解決を子ども家庭支援センターと協力しながら行うこともあります。「せたホッと」が子どもをエンパワーメントする役目を果たし、居場所のない子どもたちの居場所となったこともあります。 子どもがホッとできる場所になりたいということが「せたホッと」のみんなの思いです。 子どものSOS を敏感につかむ体制づくりをめざして             子どもサポート委員 つきだみづえ 宮本つねいちが昭和初期の郷里、山口県すおうおおしまの農村の子どもたちの生活の様子を記しています。(『忘れられた日本人』より要約)。 ある日母が「いくら言っても言うことを聞かぬような子は家の子ではない」と叱ると、子どもはだまって外へ出て夕飯時分になっても帰ってこない。祖母と母が心あたりをさがしたが、どこにも来ていないという。「もしものことがあってはならぬとて警防団の人に出てもらうことにして、家の近所のお宮の森へ何十人というほどの人がはいりこんでさがしてくれた。そのほかのところへもみなさがしにいってもらったが、どうしてもわからない。」 子どもは心配させようと表の間の戸袋の隅にかくれていたのだが、さわぎが大きくなったので困っていた。帰ってきた父の声を聞きつけて出てきた。子どもがいたとわかると探しに行ってくれた人々がもどってきて喜びの挨拶をしていく。その人たちの言葉をきいておどろいた。指揮者がいて、手分けしたわけでもないのに、後で気が付いてみると、子どもが行きそうなところに、実に計画的に捜索がされていた。 かつては、地域社会がこのように他家の子どもを見守り、支えていました。でも、現代で は、みんな多忙で、なかなかこのようなことを期待することができません。 「せたホッと」で、子どもたちの相談にのって、9 ヶ月になります。学校でいじめられている、家で虐待を受けているなどさまざまな課題を抱えて相談に来られます。話を聞いていると、保護者や周りの期待と自分の意向があわないのに、本心を心の中で押し殺して、期待に添うようにふるまっていたり、過度な期待にプレッシャーを感じている子どもたちが多いです。少子化で、一身に期待を背負っている子どもの辛さが伝わってきます。そのうえ、心を許して、本音をつぶやいても受け止めてもらえる他人のおとなが周りにいません。担任の先生やスクールカウンセラーに相談して解決する場合も多いけれど、いじめにあってもなかなか学校や家庭で言わず、明るく快活な姿しか見せたくないプライドも感じます。勇気をだして、言ったにもかかわらず、なかなか理解してもらえなかったこともありました。相談に来る子どもたちは想像以上に自分の意思や考えを話してくれます。けれども、問題が非常に複雑で、過去にもいろいろなところで相談したものの解決策が見通せなかった場合が多かったです。 相談内容について、「せたホッと」が関係機関と連絡を取って確認すると誤解や行き違 いがあり、間にはいって調整をしながら解決策を探る場合もありました。子どもの訴えと保護者あるいは学校の認識との間にずれがある場合、それぞれの立場で話される内容をよく聞いて、どのような方向に進めればよいのか。子どもの最善の利益は何か。公正・中立な解決とは。考えてことにあたっていますが、解決は容易ではありません。日頃良い関係であるにもかかわらず、家庭内や学校内で、保護者と子ども、友達同士、教師と生徒など、 ひとたび食い違いが生じると当事者間で、ストレートに対立点をぶつけ合うことは、難しい時代なのかもしれません。 ミヒャエル・エンデが言うように、子どもも多忙で、おとなも忙しい。他家の子どもの まで見守るゆとりがないのが現代社会でしょう。 私たち「せたホッと」が多く子どもの声を聴き、子ども自身の解決力を支え、SOS を敏 感にとらえて見守りのできるおとなの体制づくりに一役買うことができればと願っています。 議 2 子どもの人権擁護委員(せたがやホッと子どもサポート)の制度 1 設立の経緯 いじめや体罰を背景とした子どもの尊い命が絶たれる例が全国で発生している状況の中で、世田谷区として、いじめや不登校、体罰などで権利侵害を受けている子ども自身の声を受けとめ、相談や救済を図る公正、中立で独立性と専門性のある第三者機関の設置の必要性を強く認識しました。そして「子どもの人権擁護の仕組み検討アドバイザー会議」による検討を経て、平成24 年12 月に子ども条例を改正し、平成25 年4 月、子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」(せたホッと)を設置、7月から相談等の活動を開始しました。 平成14 年4 月子ども条例施行 平成17 年3 月子ども計画策定、教育ビジョン策定 平成23 年12 月区立校の小学5 年生および中学2 年生約2600 人を対象に「子どもの生活と人権意識」に関するアンケート調査を実施 結果・・・「自分の命が大切にされている」小学生約87% 中学生 約80%     「自分の意見を聞いてもらえる」小学生約76% 中学生 約70% 「自分自身が好き」小学生 約52% 中学生 約32% 「他の人から必要とされている」小学生 約41% 中学生 約31% 平成24 年5 月 ・子どもの権利救済に携わる弁護士および区内で子ども支援に携わる民間関係機関等で構成する「子どもの人権擁護の仕組み検討アドバイザー会議」を設置し、新たな制度の具体的検討に着手(会議は同年10 月まで計5 回開催) 平成24 年10 月 ・アドバイザー会議にて「子どもの人権擁護の仕組み検討まとめ報告」をとりまとめ 平成24 年12 月 ・子ども条例を改正し、第三者機関「子どもの人権擁護委員」の具体的役割や機能を位置づけ 平成25 年2 月 ・子どもの人権の擁護と救済を考えるシンポジウム「新たな第三者機関の設置に向けて」を開 催(成城ホール) 平成25 年4 月 ・改正子ども条例を施行し、「せたがやホッと子どもサポート」を設置 平成25 年7 月 ・「せたがやホッと子どもサポート」が相談等を開始 ○子どもに寄り添い、子どもの立場に立った問題の解決をめざす、公正・中立で独立性と専門性 のある第三者からなる子どもの人権擁護機関を設置する。 ○子ども自身の権利侵害に関する相談を受け、助言や支援を行い、個別救済のための申立て等により、関係機関との連携・協力のもと、調査、調整等を行い、問題の解決を図る。 2 せたがやホッと子どもサポート委員(以下、子どもサポート委員)の設置と職務 (1)設置目的 子どもの人権を擁護し、権利を侵害された子どもを速やかに救済し、子どもの最善の利益の保障を図る。 (2)設置根拠 地方自治法第138 条の4 第3 項に基づく、区長及び教育委員会の附属機関(*)とする。 (3)職務内容 @子どもの権利侵害に関する相談に応じ、必要な助言及び支援をすること。 A子どもの権利侵害に関する救済の申立て又は自己の発意に基づき、調査、調整をすること。また必要に応じて是正等の措置の要請、制度改善のための意見を表明すること。   *子どもの権利侵害の事案には、区立学校で発生したものや、保育所、児童館など学校以外の区の機関で起こったもの、あるいは私立学校、職場、家庭で起こったものなど、多岐にわたることが想定される。こうした事案に対して、区長部局と教育委員会が一体となって区全体で子どもの権利侵害に関する救済等に取り組んでいくことを明確にするため、両執行機関の附属機関として共同設置した。 (3)職務内容 @子どもの権利侵害に関する相談に応じ、必要な助言及び支援をすること。 A子どもの権利侵害に関する救済の申立て又は自己の発意に基づき、調査、調整をすること。 また必要に応じて是正等の措置の要請、制度改善のための意見を表明すること。     *子どもの権利侵害の事案には、区立学校で発生したものや、保育所、児童館など学校以外の区の機関で起こったもの、あるいは私立学校、職場、家庭で起こったものなど、多岐にわたることが想定される。こうした事案に対して、区長部局と教育委員会が一体となって区全体で子どもの権利侵害に関する救済等に取り組んでいくことを明確にするため、両執行機関の附属機関として共同設置した。 − 7 − B要請、意見などの内容を公表すること。 C救済の対応が終了した子どもについて、見守りなどの支援(*)をすること。 D活動状況を報告し、その内容を公表すること。 E子どもの人権擁護に関する普及啓発をすること。 3 委員への協力 ・ 区の機関は、委員の設置の目的を踏まえ、その職務に協力しなければならない。 ・ 区民や区以外の機関は、その職務に協力するよう努めなければならない。 4 対象・体制等 (1)対象 18歳未満の子どもの権利侵害にかかる事案で、18歳未満の子どもやその子どもの保護者・関係者 (特例として、18歳未満の子ども以外に、18歳又は19歳で高等学校等に在学等している場合も対象) (2)体制等 @子どもの権利侵害にかかる事案に対しては、その救済に迅速かつ適切に対応する必要があるため、原則として子どもサポート委員の独任制とする。 ただし、要請、意見表明及び公表する際には、より慎重を期すために、子どもサポート委員の協議により対応する。 A [子どもサポート委員]3人以内 区長及び教育委員会が委嘱、任期は3年 いちばよりこ委員 (弁護士)【東京弁護士会所属】 つきだみづえ 委員 (昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授)【子ども家庭福祉、社会福祉】 はんだかつひさ委員 (日本体育大学体育学部准教授)教育制度学、教育法学、情報科学、子ども支援学 − 8 − [相談・調査専門員] 子どもサポート委員を補佐し、相談・調査対応等を行う。 【教育・福祉分野又は心理、精神保健分野の専門的有資格者】4名 [事務局職員] 子どもサポート委員の活動支援、区組織との連携・調整等を行う。 【世田谷区子ども・若者部子ども家庭課の職員】 B開設時間等 [相談時間] 月曜日〜金曜日:午後1時〜午後8時 土曜日:午前10時〜午後6時 ( 日曜日・祝日はお休み) [相談方法] ○電 話:0120−810−293 ホッとにきゅうさい 〔フリーダイヤル〕 ○メール:区のホームページから「せたがやホッと子どもサポート」のホームページを開いて、メール相談、フォームに相談内容等を入力し 送信 ○面 接:相談時間内であれば、特に事前予約の必要なし ○FAX:03−3439−6777 ○その他:手紙、はがきによる相談も可 C所在地 世田谷区宮坂3−15−15 子ども・子育て総合センター3階 (小田急線 経堂駅北口より徒歩7分) せたがやホッと子どもサポート (子ども・子育て総合センター3階) 相談の状況は、(a)実件数(初回の相談から終結するまでを「1件」とした主訴別の相談ケース数)、(b)延べ回数(初回から終結までの間に相談者から電話やメールなどで来た相談回数)、(c)相談者への活動回数(「せたホッと」から相談者に対し連絡をした回数)、(d)関係機関との活動回数(学校や子ども家庭支援センターなどの関係機関とやり取りをおこなった回数)でとらえています。その総計を(e)総活動回数としています。 相談件数は(a)実件数132 件、(b)延べ回数781 回でした。「せたホッと」から相談者に対し連絡をした(c)相談者への活動回数は207 回、(d)関係機関との活動回数は329 回で、(e)総活動回数が1,317 回となります。 なお、無言電話(31 件)、行政サービスや子育て関連情報に関するお問い合わせ(26 件)、いたずらや間違い電話、18 歳未満の子どものことではない相談等(25 件)については、本統計では相談件数に含んでいません。(それらもすべて含めると1,399 回になります。) 詳細の内訳については、以下の通りです。 * 以下、グラフ作成時に使用している数字を(a,b,c,d,e)のアルファベットで示します。 * 平成26 年2 月に公表した平成25 年7 月から10 月の実績(実件数91 件、延べ回数339 回)について、あらためて精査し、重複、対象外等を除外し修正しました。 相談は、電話・メール・面接・手紙など様々な方法で行っていますが、初回の相談方法としては、電話が全体の8 割(108 件、81.8%)を占めており、次いでメール(13 件、9.8%)、面接(7 件、5.3%)、手紙(4 件、3.1%)となっています。 「せたホッと」は子どもからの相談も多く、初回の相談者の内訳はおとな(67 件、50.8%)、子ども(65 件、49.2%)とほぼ同じような割合となっています。 初回相談の相談者は、子ども本人(64 件、48.5%)からが一番多く、次いで母親(52 件、39.4%)、父親(6件、4.5%)、祖父母(4 件、3.0%)となっています。友達や周囲にいるおとなが心配して相談してきてくれる場合もあります。 小学生に関する相談が全体の半数(66 件、50.0%)を占めています。次いで中学生(36 件、27.3%)、未就学(11 件、8.3%)、高校生(6 件、4.5%)です。不明に関しては、相談時に所属を確認できなかった件数です。 子どもの権利侵害に関する相談だけではなく、子どもに関わる様々な相談に対応しています。実際の相談内容としては、「いじめ」28件(21.2%)、「学校・教職員等の対応」21件(15.9%)、「不登校」(7件、5.3%)、など学校に関わることが半数近くを占め、「対人関係」21件(15.9%)といった学校や地域における子ども同士の人間関係に関わるもの、「虐待」13件(9.8%)、「子育ての悩み」7件(5.3%)など家庭に関する相談も多くありました。「セクハラ」「学校事故」「制の悩み」を主訴とする相談は今年度ありませんでした。「差別」については、カウントされているケースはありませんが、いじめなどの相談ケースの中に要素として「差別」につながるものもあります。 初回の相談者が子どもの場合の相談の内容は、対人関係に関わるものが多く(18件、27.7%)、次いで、いじめ(11件、16.9%)、家庭・家族の悩み(9件、13.8%)です。いじめや教職員の対応などについては、おとなが子どものことを心配して「せたホッと」に相談していることが多いです。 初回の相談が子どもの場合の性別 子どもからの相談の男女の内訳としては、女子からの相談が80%を占めています。 延べ回数と相談方法 (b) 様々な方法で相談を受け付けていますが、相談者から相談がある場合は、電話相談がもっとも多く、子ども(285 回、36.5%)、おとな(255 回、32.7%)となっています。次いで、子どもはメール(67 回、8.6%)、所内面接(55 回、7.0%)、おとなは所内面接(80 回、10.2%)、メール(33 回、4.2%)となっています。 相談者との相談方法 (b+c) 前出の(b)のデータと比べると、相談者からの電話はおとな(255 回、51.8%)よりも子ども(285 回、57.5%)の回数が多いのに比べ、「せたホッと」からかける電話は子ども(14 回、2.8%)への回数がおとな(91 回、18.5%)と比べて格段に少くなっています。一方、「せたホッと」から送ったメールに関してはおとな(27回、5.5%)よりも子ども(63 回、12.7%)とのやり取りが多くなっています。ここから、子どもの相談者に対し電話で連絡を取ることの難しさや、メールでやりとりをすることの利便性が伺われます。 委員・専門員の総活動回数 :方法別 (e) 「せたホッと」の活動は7割近くが電話(891回、67.7%)で行われています。次いで、メール203回(15.4%)と面接202回(15..3%)がそれぞれ約15%となっています。面接の内訳には、来所相談のほか、学校や関係機関のやり取りや調査等が含まれます。 委員・専門員の総活動回数:対応先別(e) 委員や専門員が、相談対応をした対象別は子ども(496回、37.7%)とおとな(492回、37.3%)がほぼ同じような割合ですが、子ども本人とのやり取りが多いのが特徴です。次いで関係機関329回(25%)となっています。 相談の分析 2 相談の分析 平成25 年7 月から相談を開始し、当初は電話が鳴らない日は無いというほど、相 談がありました。実件数として数えている新規の相談は徐々に落ち着いていきました が、一方で長く関わる必要のある相談が増えていきました。相談の延べ回数は781 回 であり、「せたホッと」が活動した回数は、委員・専門員の総活動回数として表され ているとおり、7 月から3 月までの9 ヶ月で総計1,317 回にもなります。実件数のう ち、小学生の子どもについての相談が一番多く、次に中学生の子どもについての相談 となっていますが、高校生の相談が少ないので、今後は広報についても工夫が必要で す。これまで、権利の侵害を取り除くための申立ては4件ありました。委員と専門員 が相談者から話を聴きながら、関係機関の調査調整等を行い、年度内にいずれも終え ています。その総活動回数は約300 回に上りました。 相談は、電話・メール・面接・手紙など様々な方法でできるようになっていますが、 電話が一番多く、「せたホッと」の事務所に直接相談に来られる時もあります。地域 に存在する相談場所、避難場所としての「せたホッと」であることを実感する時でも あります。延べ回数をみると、子どももおとなも、電話による相談がメールによる相 談の4倍以上ですが、子どもがメールという手段を使う場合がおとなの約2 倍という 点も、今の子どもたちの現実をよく示しています。また、「せたホッと」から連絡を とるときも子どもの場合はおとなと比べるとメールの利便性が高いともいえます。 相談の内容は、「いじめ」が一番多く、21.2%になります。次に多いのが対人関係の 悩みですが、その15.9%の数字の中には、いじめの前段階といえるものがふくまれて いることもあります。また、学校や先生との関係についての相談も対人関係の悩みと 同じ割合であり、子どもたちが学校や先生との関係でも悩みを抱えていることがわか ります。 一方で、虐待についての相談と家庭・家族に関する相談をあわせると約20%とな り、いじめに匹敵する割合となります。子どもたちが、家庭や家族についての悩みを 抱えていることがよくわかります。虐待とわかればもちろん子ども家庭支援センター に通告し、必要があれば、子ども家庭支援センターと協力しながら子どもと家族を見 守っていくこともあります。 子どもからの相談に限ると、対人関係に関わるものが一番多く、次にいじめとなり ます。いじめや学校の対応についての悩みは、6 割以上が、おとなに相談してからお となを通じて、「せたホッと」につながっていることがわかります。 最初に相談をしてこられる相談者はおとなと子どもがほぼ同数ですが、延べ回数を みると子どもが52.5%であり、子どもとのやりとりが多かったことが数字であらわれ ています。初回相談者の内訳をみても、子ども本人からが48.5%と一番多く、これら をみると、「せたホッと」が、子どもがホッとする場所という役目を果たしているこ とがわかります。 W 相談対応・調整活動状況 1 事例紹介 ※プライバシー保護のため、内容等は加工してあります。 相談者 子どもの所属 相談の内容 主な相談方法 相談および調整の概要 〈事例1〉本人 中学校 教職員の対応 手紙・面接 学校の先生が本人たちにとって嫌なことをしてくるが、どうしたら良いかという相談 が手紙により届きました。「せたホッと」からは手紙の返信をするとともに、「せたホッ と」へ来てお話を聞かせて欲しい旨もお伝えしました。するとその後、本人が友だちと 一緒に「せたホッと」へお話をしに来てくれました。「せたホッと」が本人たちの話を傾 聴し、クラスや学年の状況を確認する中で、担任の不適切な行動が次々に語られました。 話が進む中で、「せたホッと」へ相談に行くことを決めてから、本人たち自ら「やめてく ださい」と担任に対して言えるようになったこと、その後は嫌な思いをしていないとの ことなどのお話もしてくれました。また帰り際には、「全てを話せてすっきりした」と気 持ちの整理も出来た様子でした。今後の対応については本人たちと具体的に話し合いな がら、本人たちの希望をじっくりと聴き、見守りを続けることとなりました。 〈事例2〉母親 小学校 いじめ 電話・面接 母親から、夏休み明けに転校をしたばかりであるという娘についての電話相談があり ました。本人は小3の女子であり、クラス内でほぼ毎日のように悪口やからかいなどの いじめがあるということでした。2 学期中盤に入ってもいじめはやむことなくエスカレー トし、本人は学校へ行きたくないと言っている様子でした。「せたホッと」はまず本人と 面接を行い、本人のつらい気持ちをじっくりと聴きました。その後、本人の学校を訪問 し、学校での本人の様子を伺いました。そして、本人が面接で語ったつらい気持ちも学 校に伝えました。その後は担任が中心となり、いじめのクラス指導をしてくださいまし た。すぐに指導の効果がみられ、一時的にはいじめが減少しましたが、今度は「チクっ た」と言われるようになってしまったとのことでした。再度、その後の状況について学 校と情報交換し、学校でも体制を作ってくださることになりました。しばらくはいじめ がなくなり、本人も友達と遊んでいる様子がみられたようでしたが、1 ヶ月ほどして、本 人の教科書がなくなり、廊下で見つかるということがありました。「せたホッと」は再度 学校を訪問し、その間の状況をお伺いしました。保護者や学校と話し合いを行う中で、 保護者と学校との間に連絡不足があったことなどがわかってきました。今後の連絡方法 を一緒に確認し、学校としては保護者への連絡を密に行うということでまとまりました。 保護者も学校との関係が以前に比べて改善されてきたと思うとのことでした。今後も「せ たホッと」では見守りを継続することとなりました。 〈事例3〉 父親、本人 中学校 いじめ 面接 本人が父親と一緒に「せたホッと」へ面接相談に来てくれました。本人は中学2年に なってから仲の良かった友だちとのトラブルがきっかけで、いじめにあっているとのこ とでした。以前から友だち関係の中で仲間はずれやからかいが交互にあり、被害者にな ったり加害者になったりしているとのことでした。本人としては、いじめをする友だち だけでなくクラス全体の雰囲気が気になりクラスに入れないとのことで、学校にはスク ールカウンセラーのいるときだけ相談室に登校していました。定期テストも別室で受け ており、本人は勉強の遅れを気にしている様子でした。また、新学年になる際のクラス 替えでは、トラブルのある友だちと同じクラスになりたくない気持ちが強く、不安を抱 相談および調整の概要えているようでした。「せたホッと」より、新年度少しでも登校しやすい環境を整えるために保護者、本人が学校の先生と面談するのがよいのではないかとアドバイスしました。 その後、中学3年の新しいクラスでは登校できるようになったとのご報告をいただきま した。 〈事例4〉クラス保護者から 小学校教職員の対応について 電話で相談 クラスの保護者から娘の級友に関する電話相談がありました。本人には発達障がいの 診断があるにもかかわらず、担任の理解が不十分で配慮に欠けるところがあると思うと のことで心配されていました。また、クラス内で問題行動の多い男児をはじめ、周りの 児童が本人に対していじめのような対応をとっている様子についても心配されていまし た。このままでは本人にとっても、周りの児童にとっても良くないと思うので何とかし て欲しいという思いが伝わってきました。「せたホッと」は学校を訪問し、本人の状況な ど伺いながら、相談者の思いを先生方にお伝えしました。先生方も、本人への対応の難 しさについて、苦慮されている様子も見受けられました。話し合いを進める中で、学校 は発達障がいおよび本人への理解を深め、対応に配慮していきたいとのことで、今年度 は他の先生の応援をお願いし、来年度は補助教員をつけるよう配慮したいとのことでし た。 〈事例5〉 母親から 小学校 いじめ 電話と面接で相談 毎日のように悪口や侮蔑などの言葉によるいじめがあり、いじめがエスカレートし、本人は学校へ行きたくないと言っていました。保護者が担任や校長に対応を依頼したも のの、結局いじめがおさまらず、学級崩壊もし、改善がなされませんでした。どうした らいいでしょうかという相談がありました。 「せたホッと」は本人と面接を行い、心情の吐露や学校での対応について希望を聴きま した。それを受け、学校へ訪問時、学校での本人の様子を伺いました。面接での本人の 心情や保護者の訴えを「せたホッと」から学校へ伝えつつ、本人が希望する対応を依頼 し、学校へ見守りと指導を依頼しました。その後、学校の対応により、本人への対応が 変わり、クラスの雰囲気は改善され、本人も学校へ通えました。保護者としては、学校 と保護者のみの話し合いでは、関係が悪化する可能性もあり、「せたホッと」が間に入っ てくれてよかったとお話をいただきました。 〈事例6〉相談者不明 小学校 いじめについて 手紙・電話で相談 学校名・学級・本人名などが書かれ、いじめがあるという内容の手紙が「せたホッと」 に届きました。 その後、送り主から匿名の電話で詳細な内容を確認することができ、発達に課題のある 本人への担任の対応が、理解・配慮に欠けているとなどのお話を伺いました。委員は学 校へ訪問し、匿名のため限られた情報ではありましたが、手紙や電話の内容について確 認しました。そこで、学校での対応の充実、家庭のフォローなどをお願いし、「せたホッ と」としてはしばらく見守りをおこなうことにしました。 〈事例7〉 本人から 中学校 虐待について 電話と面接で相談 本人から、体調不良があるが、病院に行かせてもらえないことや日頃から父親に色々 と強い言葉遣いで怒られるため、つらい、どうしたらいいでしょうかという電話相談が ありました。これまで誰にも相談したことがなく、「せたホッと」がはじめての相談との ことでした。本人の様子が心配だったので、直接会って話すことを提案し、相談してい くことにしました。「せたホッと」での来所面接で、本人は父親から人格を否定されるよ うなことや、小さな失敗を大きく捉えられて厳しく責め立てられることなどが多く、暴 力などの身体的虐待はないことがわかってきました。専門員は、今後の対応を委員と共 に検討し、児童虐待の対応機関である子ども家庭支援センターへ虐待通告をしました。 〈事例8〉本人から 高校 対人関係について 電話で相談 本人より、アルバイト先の上司から自分だけに風当たりが強く、気を利かせて仕事をし ていることをよく思われないことが多いため、今後どうしたらいいか困っているという 電話相談がありました。「せたホッと」から、本人が仕事上で上司の言うとおりに過ごし ても変化が見られなかったら、一人で抱え込まずに相談してもらいたいことと、場合に よっては、「せたホッと」が話を聴く中で、本人とアルバイト先との関係の中で、どのよ うな改善方法が考えられるか、一緒に考えていくことも説明しました。本人からは、自 分の話を聴いてもらう中で、自分が悪くないと分かって良かったし、また困ったら相談 したいと話して、電話を終えました。 〈事例9〉本人から 家庭・家族の悩み 小学校 電話と面接で相談 本人から友だちの嫌がることをしてしまったり、時には暴力を振るってしまう、どう したらやめられるのか、という友人関係に関わる相談がありました。どんな時にそうし てしまうのかを一緒に考えているうちに、勉強のことで両親から強く怒られていること、 そのストレスから、悪いことをしてしまったり、ついつい友だちの嫌がることをしてし まうという話になりました。話の内容から、連休中で家にいる時間が長いこともあり、親子ともに相当ストレスの高い状況にあることが窺われたため、面接を行いました。 「せたホッと」との面接は親子別々に行い、本人の気持ちを聞き取り、母に伝えると ともに、母の子ども時代の話や子育てにおける戸惑い・葛藤など傾聴しました。後日電話にて母から、今はもう勉強などは、本人自身の問題であると考え、ガミガミと怒らないようにしていること、本人がよく話すようになり、子どもらしさが戻ってきたようで嬉しいというご報告をいただき、また何かあればご相談くださいと伝え、終了しました。 〈事例10〉 本人から 学校・教職員等の対応について 小学校 電話・面接と相談 小学校3 年生の女の子から、先生の言葉遣いがこわい、また、嫌なことを言われるの で学校に行きたくない、という電話相談がありました。本人の学校へ行きたくないとい う気持ちが強かったこと、そのことについて本人から先生に伝えるのが難しそうだった ことから、面接を行い、保護者とも相談した上で、「せたホッと」から学校に伝えること になりました。 「せたホッと」は学校を訪問し、クラスの状況をうかがうともに、本人の気持ちを伝 え、ご配慮いただけるようお願いをし、先生からも了解を得ました。 その後の面接で、本人からは、担任の先生から嫌なことを言われることがなくなり、 楽しく学校に通えているとの報告を受け、また学校からも、本人がよく話してくれるよ うになったこと、クラスの中で自分なりに意見を言ったり、行事などにも手を上げて積 極的に参加するようになってきたというご報告をいただき、終了としました。 〈事例11〉本人から その他のことについて 中学校 電話で相談 中学生の男の子から、SNS で知り合った人に誘われて、ブログにアクセスをしたら、出会い系サイトにつながってしまった、メールアドレスを交換してしまったので個人情報が相手に漏れてしまうのではないかが心配という電話相談がありました。投稿の内容やアップした写真などの内容によっては、個人が特定されてしまう可能性があることなどを説明し注意を促すとともに、メールアドレスをもとに電話会社が他人に個人情報を開示することはないこと等アドバイスをしました。本人がすでに保護者に相談をしていたため、それを支持し、今後、架空請求など何らかの連絡が来た場合には自分で返信などはせずに、保護者に相談して対応すること、また何かあったら相談をしてくれるよう伝え、終了としました。 2 関係機関との連携 「せたホッと」への相談には、専門員が電話や会ってお話を聴いて「話を聞いてもらえて良かった」と安心してもらえることもありますが、場合によっては学校や家庭のことなど様々な相談を受ける中で、「せたホッと」だけでは解決できない相談も寄せられています。 その場合、専門員だけではなく必ず委員が独任制で担当し、子どもにとって最善の利益を共に考えてもらうよう、様々な関係機関に働きかけをしています。初年度は全体の相談の約4割を委員が対応してきました。関係機関との活動回数を見ると、7 月は少なかったですが、次第に増加していることがわかります(下記グラフ参照) 例えば、子どもへの虐待が疑われる案件においては、「せたホッと」も「児童虐待防止法」に基づき、世田谷区の担当地区の子ども家庭支援センターへ通告を行ったり、場合によっては世田谷児童相談所へ連絡し、協力をしてきました。初年度は、5地域ある「子ども家庭支援センター」*のうち、3ヶ所の子ども家庭支援センターと連携し、子どもの虐待対応をしてきました。「児童虐待防止法」に基づく「個別ケース検討会議」へ委員が参加し、子どもへの対応について見守る関係機関のひとつとして役割を担っています。 また、いじめなど学校における子どもの相談については、世田谷区の「子ども条例」に基づき、在籍学校へ対応を依頼することがあります。また、私立の学校へも、世田谷区の「子ども条例」への理解をいただきながら、子どもの最善の利益のために協力を依頼することもあります。初年度は、区立小学校が6ヶ所、区立中学校が7ヶ所、私立学校が3ヶ所、子どものことについて相談があったことをお伝えし、今後のことについて検討し、対応していただきました。特に世田谷区に住んでいる子どもについて、「せたホッと」をご存知 のない区外の学校にも対応を依頼したこともありました。初年度は、どの相談も比較的、学齢期が多かった傾向はありますが、「せたホッと」は未就学児も中学卒業後に就労している18歳未満の子どもも対象です。近隣には、「せたホッと」と同様の子どもの権利擁護機関のある自治体もあります。場合によっては、その自治体の当該機関とともに活動することもあるかもしれません。今後もさまざまな機関と協力しながら、「子ども条例」にもある「子どもがすこやかに育つことのできるまちをつくること」に「せたホッと」も一役を担ってまいります。 W 広報・啓発活動 1 広報・啓発 世田谷区では、新たな制度の相談等を開始するに当たり、子どもからの相談のしやすさを第一に考え、親しみやすさを感じてもらえるよう、平成24 年度に愛称(通称)とキャラクターの公募を行いました。178 件(小・中学生165 件、おとな13 件)の応募があり、愛称(通称)は「ホッとできる場所をイメージした」という中学2 年生応募作品「せたがやホッと子どもサポート」(略称:「せたホッと」)、キャラクターは「ナチュラルという言葉が好きで、そこから連想した」という小学6 年生応募作品「なちゅ」に決定しました。また、機関を身近に感じてもらえるよう「安心して相談できる機関」、「顔の見える相談機関」をモットーに、広報・啓発活動に取り組んでいます。 2 研修会への講師派遣 関係機関、子どもにかかわる団体等の研修会に講師として参加しています。講演の 内容は「子どもの人権擁護の新たな仕組みと活動状況」「人権全般についての講義、 子どもの人権についての事例演習、ディスカッション」「子どもの人権を理解しよう」等 です。 7 月5 日 青少年地区委員合同研修会 8 月26 日 区立幼・小・中学校教員研修会 8 月28 日 スクールカウンセラー研修会 10 月22 日 教育相談室 相談員研修会 11 月15 日 青少年委員会6ブロック地域合同研修会 3 視察受入れや他自治体との交流 区議会議員、他自治体の議員、行政機関職員、民間相談機関などから9件の視察 がありました。内容としては、子ども条例改正の経緯、内容、子どもに係わる関係機関 との連携状況、事務局の運営状況等を説明しました。 9 月5 日 世田谷区議会(福祉保健常任委員会) 9 月7 日 宝塚市(職員、検討委員) 10 月24 日 世田谷区議会(公明党世田谷区議団) 11 月7 日 大阪府豊中市議会(市民クラブ) 11 月18 日 函館市(職員、検討委員) 1 月10 日 新潟市議会(少子化対策、男女共同参画推進議員連盟) 1 月21 日 長野市議会(子育ち・子育て対策特別委員会) 2 月26 日 相模原市(職員) 3 月11 日 せたがやチャイルドライン(運営委員、支え手、事務局) また、10 月には松本市で開催された「『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジ ウム2013」に参加し、他自治体と情報、意見交換を行いました。 日 程 対象等 10 月18 日 子どもの相談・救済に関する関係者会議に参加(松本市) 10 月19、20 日 『地方自治と子ども施策』全国自治体シンポジウムに参加・報告 (松本市) 4 関係機関との意見交換 子どもとかかわる職員と連携し、相談してきた子どもの見守り支援をするため、関係 機関と積極的に意見交換をしました。 4 月30 日 子ども家庭支援センター職員と意見交換 専門員 5 月14 日 教育相談員と意見交換 委員、専門員 5 月15、22 日 スクールカウンセラー(区)と意見交換 専門員 5 月31 日 スクールカウンセラー(都)と意見交換 専門員 7 月9 日、10 月2 日、12 月2 日 母子生活支援施設情報交換会 専門員 6 相談・調査専門員のことば 『9ヶ月を振り返って』 突然ですが、みなさんは「バームクーヘン」というお菓子を知っていますか。年輪を一層 一層重ねたようなこのお菓子は、ドイツ語の「バウム=木」、「クーヘン=お菓子」を組み合わせて名づけられ、ドイツではお菓子の王様とも言われているそうです。わたしは以前、子どもたちと一緒に竹を使って「バームクーヘン」を作ったことがあります。生地をゆっくりとかける人、端と端をもって竹を回す人、協力しないと作ることができません。焦って竹を早く回したり、焼き色がつかないうちに次の生地を垂らしてしまうと年輪の層は できあがりません。時間をかけてゆっくりと竹を回し、一層一層の変化を“待つ”ことが、きれいな年輪の層を作るコツだそうです。コツを掴んだ子どもたちは大人たちよりも年輪の大きい立派な「バームクーヘン」を作り上げていました。「せたホッと」でさまざまな相談を受けているなかで、ふと「バームクーヘン」のことを思い出すことがあります。それは、子どもが自分の言葉を探し出し、探し出した言葉をなんとか語り、そして、子ども自身の力で解決に向かおうとする変化の過程を“待つ”こととどこか似ているように感じるからです。こころの変化は「バームクーヘン」のように目に見えるものではありません。そのため、子どもの力を信じて“待つ”ということは、そう簡単なことではないの かもしれません。しかし、子どもの身長が伸びていくのと同じように、子どものこころも変化しています。少しずつのその変化をそっと見守るということ、じっくりと“待つ”ということも大切なときがあるように思います。「せたホッと」が相談等を開始してからもうすぐ9ヶ月が経過します。子どもの“最善の利益”とは、個別のケースにおいて普遍的な答えなどなく、十人十色の子どもたちに寄り添う中でみえてくる具体的で、個別的なものと日々感じています。どんなときも、子どもの本当の想いをとりこぼしてはいないだろうか?おとなの都合に基づく判断になってはいないだろうか?など、自身や周囲に問いかけながら、“その子にとって”という視点を軸として、子どもの語りを大切にしていきたいと思います。 パンフレット、マスコットキャラクターの「なちゅ」、「せたがやホッと子どもサポート」という通称等々、子どもの意見を取り入れながら、1つ1つ作り上げられてきた「せたホッと」です。「せたホッと」の年輪模様が、この先も一層一層、子どもたちの力(子どもたちの言葉)で作り上げられていくことを願っています。 相談・調査専門員 伊藤 明奈 『「せたホッと」の相談』 なぞなぞで『はじめ4 本足。つぎは2 本足。さいごは3 本足になる生き物は、な〜に?』 というのがあります。正解は人間です。大人もおじいさんもおばあさんも最初はみんな赤ちゃんで、子どもでした。私は、子どものころ、おじいちゃんもおばあちゃんも赤ちゃんだったと聞いて驚いたことがあります。でも、子どもだったからといって、子どものことが全部わかるかというと、そうでもありません。ですから、子どもからお話を聴くことはとても大切です。 「せたホッと」の相談は、ロシア民話の『おおきなかぶ』に似ていると思います。 専門員は、まず、子どものお話や気持ちをしっかり聴きます。そして「う〜ん」と一緒に考えます。子どもが「いいよ」といえば、お父さんやお母さんからもお話を伺って一緒に考えます。社会にあるいろいろな情報も集めます。それでも、まだまだ困ったことがあるときは、子どもサポート委員も一緒に考えます。子どもサポート委員は、学識経験者で、いろいろなことをたくさん知っています。それでも、まだ困ったことがあるときは、子どもが「いいよ」といえば、たとえば学校のことだったら、校長先生や副校長先生、担任の先生も一緒に考えます。みんなで「うんとこしょ、どっこいしょ」と力を合わせて「困ったこと」を引き抜きます。そのとき大切なのは「子どものことば」です。 『裸の王様』のお話でも「王様は裸だよ」といった子どのもの一言はみんなに真実を見る 力をくれました。「せたホッと」はみんなで力を合わせて、子どもにとって一番良い方法を考えます。 相談・調査専門員 上西 さよ子 相談者の声 ぼくは、学校でつらい事があって、誰にどう相談したらいいかわからなくて悲しか った。でも、お母さんに、「せたホッと」という相談場所があるよと言ってもらった。 そして行ってみた。最初はすごくきん張したけど、「せたホッと」の先生がやさしく て、きん張がほぐれた。ぼくのつらい気持ち、いやだった事、どうしていいかわから ない事も、うなずいてくれたり、つらかったねと言ってくれたりして聞いてくれた。 ぼくはうれしかった。自分のつらい気持ちを人に聞いてもらって、こんなにうれしい 気持ちになれるとは思わなかった。そして解決する方法を一緒に考えてくれた。 自分の力だけでは、どうしようもできない事を「せたホッと」の人たちが、学校の先 生と協力して応援してくれた。 ぼくはつらくて行けなかった学校に久しぶりに行くことができた。これからもつらい 事があったら安心して「せたホッと」に相談しに行こうと思った。 「せたホッと」から 〜子どもからの声を受けて〜 「相談してうれしかった」と思ってもらえたことが何よりも良かったです。つらさを一人で抱え込まないで伝えてもらえたこと、一緒に考えられたこと、すべてがご本人とご家族の力であり、「せたホッと」はその力に救われた思いもありました。相談してくださった方にそう思ってもらえる相談機関でありたいと思っています。 おわりに 1年間の活動を通じてみえてきた「せたホッと」の役割・意義と今後の取り組み 子どもサポート委員 はんだかつひさ 「せたホッと」開設から1年が経ち、子どもの人権擁護機関の役割や意義をあらためて感じ ています。第1に子ども自身が安心して相談できる機関として機能してきたことです。メールをくれて、何度も何度もやり取りをするなかで、実際に来所につながったこともあります。最初は友だちのことを相談していて、回数を重ねるうちに自分のことを話してくれる子どももいます。自分の話に耳を傾けてくれ、共感してくれ、いっしょに問題に向き合ってくれ、秘密を守ってくれるんだと感じとってはじめて子どもは安心して話をしてくれます。第2に子どもの人権を守るワンストップサービスとしての役割を果たしているところです。いじめ問題をはじめとし、保育士・教師の納得できない対応、発達の遅れや障がいに起因する問題、ハラスメント、虐待、養育困難家庭支援といったケースまで、「せたホッと」に相談すれば対応してくれ、適切な機関につないでくれるといった認識が少しずつですが広がっているように思われます。第3に子ども支援のための関係機関等のネットワークを形成できることです。独立した公的第三者機関であるからこそ、学校、教育委員会、担当部署、不登校の子どもの居場所、発達支援センター、児童福祉施設、子ども家庭支援センター、児童相談所、児童館など関係機関等とのネットワーク形成や橋渡しをすることができるのであると実感しています。第4に問題解決に向けた迅速な対応につながることです。調査権限を持ち、是正等の措置の要請をすることができる「せたホッと」が関わることにより、周りの人たちの当該問題への対応を促し、問題解決の糸口を探るとともに、必要な手だてを講ずることにつながるからです。 「せたホッと」は、子どもの最善の利益のみに関心を持ち活動します。持ち込まれる案件で は保護者の思いと子どもの現状に大きな差ができているといったケースもしばしばあります。保護者と学校の関係が断絶し、子どもが間に挟まれ学校に行きにくくなっているといったケースもあります。区内に専門機関があるにもかかわらず、つながることができておらず、適切な支援が受けられていないケースもあります。どういったケースにおいても、当該子どもの最善の利益実現のために何ができるのか、何をすべきなのかに立ち返って検討していきます。 そのために、できうるかぎり子どもの声に耳を傾け、その気持ちに寄り添い、問題解決の糸口を探りながら、一歩ずつ、ときには後退したり足踏みをしたりしながら、子どもや保護者とともに問題に向き合ってきました。そのことは、これまでの委員・専門員の活動回数が物語ってくれています。 「せたホッと」の活動の基本は子ども本人の気持ちに寄り添いながら、子どもとともに問題 解決に向けての方策を考えていくことにあります。そうした活動を通して子ども自身が問題を乗り越えていく主体としてエンパワーされていく姿は、はじめて相談に来た時から見違えるほど力強く、成長を感じます。案件によっては、子ども本人から声や気持ちを聴けないこともあります。保護者が過剰に反応し子どもを囲い込んでしまうケースや、保護者や周りのおとなが目指す解決策を押し付けてしまう場合もあり、一筋縄ではいかないことも少なくはありません。相談の対応として学校に入るときは、当該子どもが置かれている状況を説明し、先生方が本件についてどのように捉えているかを聴き取ります。そのうえで、本人がどのように感じているか、保護者がどのように考えているかを代弁しつつ、問題解消や状況を好転させるために周囲のおとなや子どもは何ができるのか、この問題にどう向き合うのかについて、先生方やスクールカウンセラーとともに考えていきます。問題の所在のとらえ方にズレがあることもあり、協議を通じて、どこに問題やすれ違いがあるのか共有していきます。また、匿名での投書やクラスメイトの親からの相談には、直接子どもと接触せず、問題の解消と支援体制の構築を働きかけるといった対応をすることもあります。一定期間経過後、子どもの現況と支援体制を確認し、見守り支援を行っていきます。おわりに一年間の活動を通じてみえてきたことから、今後取り組んでいきたい課題をあげてみたいと思います。まずは、「せたホッと」を子どもにもおとなにも幅広く知ってもらうための広報・啓発について、児童館など子どもの居場所に出かけていったり、家庭教育学級における講座やいじめ予防授業などを行っていくよう準備を始めています。第2に関係機関とのネットワークを形成するなかで、それぞれの役割やできることを確認しつつ、連携・協力関係を構築していくための協議や研修会に積極的に参加していきます。第3に条例上「子どもの権利の侵害を防ぐための意見を述べる」役割を担っていることを意識して協議をしていきます。個別案件からみえてきた問題点を踏まえ、意見を述べることにより、区の制度を改善していくことにつなげていくことも「せたホッと」の重要な役割です。第4にいじめ防止対策推進法に基づく案件対応ができる組織体制をつくっていきます。そのときの視点はこれまで培ってきた子どもの立場に立ち子どもの気持ちや考えに寄り添い問題解決にあたることです。おとなが判断し解決をあてがうのではなく、子どもとともに最善の利益を追求し、行動の選択肢を子ども自身が豊かに持てるようにするという姿勢は変わりません。第5に全国の自治体が設置している子どもオンブズパーソンや子どもの権利擁護委員会における事案および制度について検討するための会議や、ネットワークを構築していくための会合に参加するなど子どもの人権擁護機関としての研修機会を増やしていきます。子どもの人権擁護の取り組みは、周囲の理解があってはじめて成り立つものです。引き続き真摯な姿勢で取り組んでいきたいと思いますので、ご協力くださいますようお願いいたします。 おわり