せたがやホッと子どもサポート 平成26年度活動報告書 はじめに 『子どもの幸せな笑顔を求めて』 子どもサポート委員 いちば よりこ  「せたホッと」の事業がはじまってから2年ちかくが過ぎました。これまで、子どもからさまざまな相談があり、たくさんの学校に行き、いろいろな機関と連携しながら、子どもの相談について問題の解決を図ってきました。 そんな経験を踏まえて、「せたホッと」は、今年度、はじめて、意見を表明しました。 たくさんの学校を訪問したこと、子どもたちはもちろん、保護者、校長先生や副校長先生、担任の先生とお話をする機会を得たこと、そのような経験や具体的なご相談や調査を基に作成して、区長と教育委員会宛に提出した、通常学級における特別支援教育についての意見表明です。意見の全文を報告書に載せていますのでどうぞご覧下さい。  学校を通じて配布した「せたホッと」のキャラクター「なちゅ」が『おはなしきかせてね』と語りかけるパンフレットやカードを見て、電話してくれる子どもたちがたくさん増えました。少しずつ「せたホッと」が子どもの身近な存在になりつつあるのかとうれしく思っています。子どもたちからの相談の中で一番多いのは対人関係の悩みです。 子どもは、成長発達の過程に生きています。おとなとは違った時間を生き、おとなとは違う世界に生きています。学童期には、学校に通い、友達とともに学び、遊び、その中でさまざまな経験をしながら成長していきます。そのような中で、人間関係に悩み相談をしてくるのだと思います。いじめは、人間関係の不全ともいえるので、人間関係で悩みをかかえ、どうしたらいいだろうと電話をしてくる子どもたちの相談相手になることで、それ以上のいじめなどの深刻な事態に至ることを防ぐことができる場合もあります。一緒に考え、しばらく相談相手になることで、子どもが自分自身で解決していくことができるようになる場合もあります。私たちは、いつでも、どんな相談においても、まず、子どもの声に真摯に耳を傾けるということを心がけています。子どもの声に真摯に向き合うことだけで問題解決に至る場合もあります。申し立てを受けて、受理し、調査するという役割も重要ですが、その前に子どもの相談相手になり、必要であればいろいろな機関と連携し、人間関係を改善しながら解決する調整活動を行うことも重要な役割だと思っています。  子どもは、上手に話ができない時も、自分の考えをまとめることが難しい時もあります。それでも、一人ひとり自分があり、それぞれ権利の主体です。小さな子でも一生懸命話してくれる時もあります。苦しいのに苦しいと言えない時も、おとなの声の影響を強く受けてしまい、子どもの切実な声が隠れてしまう時もあります。実は子どもの声に耳を傾けることは大変難しいことであるとも言えます。私たちは、子どもの声に耳を傾けながら、子どもが幸せな笑顔でいられるようお手伝いしたいと思っています。 T 世田谷区子どもの人権擁護委員「せたがやホッと子どもサポート」の制度 (世田谷区子ども条例 第15条?第24条関連) 1 子どもの人権擁護委員(以下、子どもサポート委員)の設置目的、職務 (1)設置目的 子どもの人権を擁護し、権利を侵害された子どものすみやかな救済を図るため。 (2)位置づけ 地方自治法第138条の4第3項に基づく区長及び教育委員会の附属機関(*)とする。 (3)職務内容 @子どもの権利侵害に関する相談に応じ、必要な助言及び支援をすること。 A子どもの権利侵害に関する救済の申立て又は自己の発意に基づき、調査、調整をすること。また必要に応じて是正等の措置の要請、制度改善のための意見を表明すること。 B要請、意見などの内容を公表すること。 C救済の対応が終了した子どもについて、見守りなどの支援をすること。 D活動状況を報告し、その内容を公表すること。 E子どもの人権擁護に関する普及啓発をすること。 2 委員への協力 ・区の機関は、委員の設置の目的を踏まえ、その職務に協力しなければならない。 ・区民や区以外の機関は、その職務に協力するよう努めなければならない。 3 対象 18歳未満の子どもの権利侵害にかかる事案で、18歳未満の子どもや、その子どもの保護者。関係者(特例として18歳又は19歳で高等学校等に在学等している場合も対象) 4 体制 (1)子どもサポート委員 3名 平成27年3月現在 いちば よりこ 弁護士(東京弁護士会) つきだ みづえ 昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授子ども家庭福祉、社会福祉 はんだ かつひさ 日本体育大学体育学部准教授(教育制度学、教育法学、情報科学、子ども支援学) 原則として子どもサポート委員の独任制とする。ただし、要請、意見表明及び公表する際には、より慎重を期すために、子どもの人権擁護委員の協議により対応する。 *子どもの権利侵害の事案には、区立学校で発生したものや、保育所、児童館など学校以外の区の機関で起こったもの、 あるいは私立学校、職場、家庭で起こったものなど、多岐にわたることが想定される。こうした事案に対して、区長部局と教育委員会が一体となって区全体で子どもの権利侵害に関する救済等に取り組んでいくことを明確にするため、両執行機関の附属機関として共同設置した。 (2)相談・調査専門員 4名 子どもサポート委員を補佐し、相談対応や関係機関との連絡、調整等を行う。 社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士など。 (3)事務局   子どもサポート委員の活動支援、区組織との連携・調整等を行う。 子ども・若者部子ども家庭課 5 相談方法等(1)相談方法 ○電 話:0120−8ホッと10− 2 にきゅうさい9 3 〔フリーダイヤル〕 ○メール:区ホームページ 子どもなやみそうだん → せたがやホッと子どもサポート より、 メール入力用フォームに相談内容を記入し、送信 ○面 接 :相談時間内であれば、特に事前予約の必要なし ○FAX:03−3439−6777 ○その他:手紙、はがきによる相談も可 (2)相談時間 月曜日〜金曜日:午後1時〜午後8時 土曜日:午前10時〜午後6時 (日曜日・祝日・年末年始はお休み) (3)窓口所在地 世田谷区宮坂3−15−15 子ども・子育て総合センター3階 (小田急線 経堂駅北口より徒歩7分) 6 これまでの経過 平成14年 4月子ども条例施行 平成17年 3月子ども計画策定、教育ビジョン策定 平成23年12月区立校の小学5年生及び中学2年生約2,600人を対象に「子どもの生活と人権意 識」に関する調査を実施 平成24年 5月子どもの人権擁護の仕組み検討アドバイザー会議を設置、新たな制度の具体的検討に着手 平成24年10月同会議にて「子どもの人権擁護の仕組み検討まとめ報告」とりまとめ 平成24年12月子ども条例を改正し、第三者機関として子どもの人権擁護委員を位置づけ 平成25年 2月子どもの人権の擁護と救済を考えるシンポジウム「新たな第三者機関の設置に向けて」開催(成城ホール) 平成25年 4月改正子ども条例を施行、せたがやホッと子どもサポート(せたホッと)設置 平成25年 7月せたがやホッと子どもサポート(せたホッと)の活動開始  〜 26年3月まで(9か月間)に132件の相談を受付 平成26年 6月「平成25年度活動報告書」を発行 平成26年 7月平成25年度の活動報告会を開催(成城ホール) 8 擁護委員会議  世田谷区子ども条例施行規則第15条では、「擁護委員の職務執行の一般方針その他の必要な事項を決定するため、擁護委員全員で構成する擁護委員会議を設置する」(1項)とされ、擁護委員の互選のもと代表擁護委員を置き(2項)、代表擁護委員が招集し(3項)、非公開とする(4項)と規定されています。  月に1回から2回程度開催しており、機関運営に関すること、個別ケースへの対応方針、広報・啓発等について検討します。  案件対応に関しましては、独任制を基本としますが、それぞれの専門分野から子どもの最善の利益実現のためにどのようにしていけばよいのか検討していきます。申立て案件や発意案件に関しては擁護委員の合議で方針を決めていきます。今年度は19回開催しました。 U 相談活動状況 1 相談の状況 平成26年度新規件数 219件、平成25年度からの継続件数 33件、平成26年度総件数    252件、平成26年度終了件数 187件、(うち平成26年度新規分の終了は160件)、平成27年度への継続件数 65件 (2)平成26年度の新規件数 平成26年度の新規件数は219件でした。 (3)平成26年度の延べ相談対応数、活動回数  新規件数219件に前年度からの継続33件を加えた252件について、延べ相談回数は979回(初回から終了までの間に相談者から寄せられた電話やメールなどの相談回数)、相談者への活動回数は341回(「せたホッと」から相談者に対して連絡をした回数)関係機関との活動回数は406回(学校や区の他部署等の関係機関とやり取りを行った回数)、そのすべてを合わせた総活動回数は1,726回となりました。なお活動回数の中には終了後の見守り対応も含んでいます。 ☆次ページより、平成26年度の集計表及び、平成26年度と平成25年度の比較グラフを掲載しています。平成25年度の相談活動期間は9 ヶ月間であり、平成26年度の相談活動期間は12 ヶ月と活動期間が異なるため、平成25年度のグラフについては相談の割合(%)を掲載しています。 相談の内容  平成26年度の新規の相談内容で最も多かったのは、「対人関係」(50件、22.8%)でした。続いて、「いじめ」(44件、20.1%)、「家庭・家族の悩み」(26件、11.9%)、「学校・教職員等の対応」(19件、8.7%)、「心身の悩み」(18件、8.2%)となりました。昨年度同様、「いじめ」が全体の2割を占める傾向は変わりませんでしたが、最も多く寄せられたものが「対人関係」になったのは、子どもからの相談内容が多いのと、表C「初回の相談者が子どもの場合の相談内容」に起因すると思われます。 初回の相談者  昨年度は、子どもからの相談件数とおとなからの相談件数がほぼ同数でしたが、今年度は、子ども本人からの相談件数が全体の約6割(131件、59.8%)を占めました。続いて、母親(68件、31.1%)、父親、きょうだい(4件、1.8%)となりました。  また、関係機関(3件、1.4%)、その他(6件、2.7%)からの相談もありました。関係機関の内訳としては「児童福祉施設」「区機関」「学校」から相談が寄せられました。その他の内訳としては、「近隣住民(おとな)」や「弁護士」などがありました。 初回の相談方法  初回の相談方法としては、電話が全体の9割弱(188件、85.8%)を占めており、続いて、メール(24件、11.0%)、面接(4件、1.8%)、手紙(3件、1.4%)となりました。昨年度と比較すると、子どもでは、メール、電話による相談の割合が増加し、おとなでは電話による相談の割合が増加しています。 初回の相談者が子どもの場合の相談内容  初回の相談者が子ども(本人131件、友だち4件)の場合、相談の内容は「対人関係」(42件、31.1%)が最も多くなり、続いて「いじめ」(24件、17.8%)、「家庭・家族の悩み」(17件、12.6%)と、昨年度と同様の傾向が見受けられました。 相談対象となる子どもの所属  最も多かったのは小学校に在学している子どもに関する相談で、全体の6割弱(129件、58.9%)となりました。次に中学校(50件、22.8%)、高校(26件、11.9%)となり、昨年度より高校生に関する相談が多くなりました。 初回の相談者が子どもの場合の性別  新規相談件数219件のうち子ども(本人131件、友だち4件)からの相談の男女の内訳としては、女子からの相談が約7割の96件になり、割合としては昨年度に比べるとやや減り、男子が1割程度増加して38件になりました。  相談者からの相談方法で最も多いのは、子どももおとなも電話で、子どもが327件、おとなが364件でした。続いて、子どもはメールが135件と多く、おとなの5倍以上となっています。また、手紙は子どもからのみであり、FAXはおとなからのみでした 相談者との相談方法  「せたホッと」から相談者への電話連絡では、おとなへの連絡が圧倒的に多いです。それは、子どもが自分の携帯電話を持っていることが少ないため、本人に直接電話ができないという背景もあります。 また面接では、「せたホッと」での所内面接が多いですが、訪問して面接することもあります 委員・専門員の総活動回数(方法別)   「せたホッと」の活動は6割強が電話(1,134回、65.7%)で、次にメール(346回、20.0%)、面接(235回、13.6%)となりました。 委員・専門員の総活動回数(対応先別)  委員や専門員の相談対応は、子どもが4割以上(721回、41.8%)となり、次におとな(599回、34.7%)、関係機関(406回、23.5%)となりました。 新規件数と総活動回数の月別推移 2 権利の侵害を取り除くための申立て等  平成26年度は、世田谷区子ども条例第19条に基づく権利侵害を取り除くための申立てを1件受理しました。また、この申立てを受け、同第20条1項に基づく調査を行いました。 3 相談内容の分析  平成26年度はリーフレットやカードを世田谷区内の私立を含めた小学・中学・高等学校に配布した9月以降に新規の相談が集中しました。昨年度から引き継いだケースが33件あったため、カードやリーフレットを配る前から、学校などの関係機関とのやり取りは月に100回近くありました。平成26年度に受けた新規の相談件数は219件で、委員と専門員の総活動回数は1,726回になりました。昨年と比べると、新規相談件数は月平均4件の割合で増えています。カードを配布したときはもちろんですが、新学期が始まって、少し経過した5月から相談が増え、学校が長期で休みになる夏休みや冬休みは新規の相談が少なくなる傾向があるようです。  小学生に関わる相談が本年度も一番多く、半数を超え、ついで中学生の順となりますが、26年度はメール相談の件数が増えたこともあり、高校生からの相談の割合が増えてきています。新規の相談方法は、子どもからもおとなからも「電話」が一番多く、合わせると85%を超えています。しかし、子どもに関しては、昨年度に比べ、メールでの相談の割合が増えています。メールなどの相談しやすい方法を利用してもらい、「直接話すのはちょっと難しい」「ゆっくりと話す時間が取れない」といった理由で電話では相談のしづらい子どもたちと今後もつながっていけるよう、電話以外の相談方法があることを広報していきます。  相談の内容は、「対人関係に関する悩み」が最も多く、続いて「いじめ」となっています。今年度は「心身の悩み」について子ども本人から相談が来るケースが多く見られました。自分に対しての自信の無さや、自分ではコントロールができない症状についての不安などが語られています。初回の相談者は、子ども本人やその友達など子どもから来るケースが多く、60%を超えています。 続いて母親からの相談が多く、31%です。また、平成26年度は、行政職員や学校といった関係機関や、弁護士からの相談も来ています。  子どもからの直接の相談が6割を超えていることは、まさに「せたホッと」が、子どもたちがホッとできる場所になりつつあるということなのかもしれません。子どもの問題は、おとなの問題とは異なり、迅速に、かつ、教育的に解決していかなければなりません。調査は、むしろ解決のための方策を考える手段となります。いろいろな情報がなければ、どう解決していったらいいかわからないからです。権利侵害に関わる相談の内容は様々なものがあります。虐待とまではいえなくても家庭や家族に悩みを抱えている場合、学校の先生の指導方法について悩みを抱えている場合、クラスが荒れてしまい、どうした らいいか悩んでいる場合などがありました。  事例紹介のページでは、個人を特定できないように、いくつかみられる特徴的な事例を加工したり、まとめたりしていますが、子ども達の悩みをじっくりと聴き、一緒に解決方法を探して子どもに寄り添っていく「せたホッと」の活動を説明しています。 V 相談対応、調査・調整活動状況 1 事例紹介 ※プライバシー保護のため、内容等は加工してあります。 事例@ 本人から、高校生、心身の悩み、メールで相談 【相談内容】  子ども本人からメールで「自分に自信が持てない。他人の顔色ばかり伺ってしまう。ネガティブなことを考え、家でも学校でも辛く、学校の友だちといても楽しくない。」というような相談が寄せられました。「せたホッと」とメールをやり取りしていくうちに、様々な問題行動があり、「自分でもやめたいのにやめられない」ということがわかってきました。 【せたホッとから】  「せたホッと」は子どものやめたいのにやめられない気持ちに寄り添い、何ができるかを共に考え、メールのやり取りを続けました。そうした中で、少しずつですがだんだん心が落ち着いてきたとのことでしたので、いつでも困ったときにはメールをしてもらいたいと伝え、相談を終えました。 事例A 本人から、高校生、家庭家族の悩み、電話で相談 【相談内容】  「進学先について自分の希望と母の希望が一致しないため、家庭内で毎晩のように言い争いになってしまい、どのように折り合いをつければいいかわかりません」という電話相談がありました。このままでは受験勉強のモチベーションも上がらず、高校も休みがちになってしまっているので、きちんと母と話し合いをしたいということでした。 【せたホッとから】  母ときちんと話し合いたいという気持ちを支持し、母との話し合いに向けてどのような言い方ができたら、自分の想いが伝わっていくかなど、本人の気持ちを整理しながら一緒に考えていきました。 事例B 本人から、中学生、その他に分類される悩み、電話で相談 【相談内容】  「携帯電話でツイッターをいじっていたら変なサイトに入ってしまって、登録したつもりはないけれど、高額な料金請求のメールがたくさん届くようになってしまった」という電話相談がありました。そのメールに返信をしてしまったことで、自宅まで請求に来るのではないかという不安が高くなり、混乱している様子でした。 【せたホッとから】  個人情報を登録し、契約していなければ、そのメールは迷惑メールととらえていい、返信をしないで無視してかまわない、万が一何かあったときには警察に連絡して欲しいことなどを伝えました。少し安心した様子で、ほかのこともいろいろ話してくれた後、電話を終えました。 事例C 母親と本人から、小学生、学校・教職員等の対応に関する悩み、電話と面接で相談 【相談内容】  担任がいつも同じ子どもばかりを怒っているため、子どもたちの中でも仲間はずれが起きてしまっているようで心配ですという電話相談がありました。担任の怒り方に子どもが怖がっており、学校へ行きたくないと言っているとのことでした。 【せたホッとの対応】  委員と専門員で子ども本人に会いました。子どもから担任の怒り方やそのときの気持ちを具体的に聞くことができました。学校へ訪問し、状況の確認や指導方針について話し合いを行い、子どもの受け止め方を伝え、学校における対応をお願いしました。「せたホッと」としても、子ども本人が安心できるまで継続して見守ることとしました。 事例D母親と本人から、小学生、いじめに関する悩み、電話と面接で相談 【相談内容】  「子どもが身に覚えのない行為について友だちに責められたことをきっかけに、友だちの輪から仲間はずれにされてしまっています。どうしたらいいのでしょうか」という電話相談がありました。 【せたホッとから】  学校と連絡を取り、状況の確認を行っていく中で、子ども同士がお互いに嫌なことを言い合ったり、仲間はずれにし合っているような状況が見えてきました。学校には子どもたちの見守りをお願いすると共に、“いじめ予防授業”の提案を行いました。また、子ども本人ともよく話し合いながら、友だち関係について一緒に考え、本人が自信を回復できるように支援しました。 事例E 父親と母親と本人から相談、中学生、いじめ、電話と面接 【相談内容】「先輩から悪口を言われていることを学校に相談していましたが、子どもが朝学校へ行こうとするとお腹が痛くなって行けなくなる日が増えてしまいました。先が見えないので、転校も考えています」という電話相談がありました。 【せたホッとから】委員と専門員が本人の気持ちを面接で確認したところ、勉強の遅れにも繋がってしまうので早く学校へ行きたいとのことでした。「せたホッと」からは、まずは何より本人の体調が心配であるため、無理をせず過ごして欲しいことを伝えました。本人と学校と今後の対応について話し合いを重ね、先生に、悪口を言う先輩への指導と、勉強が遅れないようフォローをしていただくことになりました。様々な方向性をともに考えた結果、ご家族の意向で学年が上がると同時に転校することとなりました。 事例F 母親、小学生、学校・教職員等の対応、電話と面接で相談 【相談内容】「子どもが帰ってきて、授業中に複数の児童から叩かれたり、嫌なことをされていると聞きました。学級全体が騒がしく、授業中でも歩き回っていたり、悪口が飛び交っているため子どもを学校へ行かせることが心配で、安心して学校へ通わせることができません」という電話相談がありました。 【せたホッとから】委員と専門員で早急に学校へ訪問し、校長・副校長や担任の先生と学校の体制や学級運営等について話し合いました。同時に相談者からも近況を聞かせていただきながら、定期的に学校へ訪問し、担任と協力しながら個々の子どもへの対応を慎重に検討し、クラスの様子を見守っていきました。 事例G 本人から、中学生、虐待に関する悩み、電話で相談 【相談内容】「母からたたかれて辛いです」と泣きながら相談電話がかかってきました。お姉ちゃんが帰宅するまで母と接したくないので、部屋から電話をかけているとのことでした。 【せたホッとから】本人の辛い気持ちに寄り添いながら、詳しくお話しを聞かせてもらうと、子ども家庭支援センターの職員とも会ったことがあるとのことでした。何かあったらいつでも電話をかけてきて欲しいことを本人に伝え、姉が帰宅したとのことで一度電話を終えました。  その後、色々やりとりをする中で子ども家庭支援センターとも連携することができ、「せたホッと」は子どもの困り事について本人の話を受け止めることとなりました。その後も家庭の悩みだけに留まらず、学校や習い事等での悩みについても頻繁に電話をかけてきてくれるようになりました。 事例H 本人から、中学生、対人関係に関する悩み、手紙とメールで相談 【相談内容】「今まで仲の良かった友だちから『もう一緒にはいられない』と言われてしまいました。その子はずっと私の恋愛相談にのってくれていたのですが、私がいつまでたっても告白したりしないためにイライラしてしまったのではないかと思います。今の私は別の男子のことが気になっています。でも、そのことを友だちに言うとあきれられてしまいそうな気がしています。できることなら、友だちとも以前のように仲良くしたいし、気になっている男子とも仲良くなりたいと思っているのですが、どうしたらいいでしょうか」という内容の手紙が届きました。 【せたホッとから】「せたホッと」は、子どもから送ってほしいと手紙に書いてあったメールアドレスにメールを送りました。その後、数回のやりとりを通して自分の気持ちを大切にして欲しいことを伝えるとともに、相手の気持ちも尊重して欲しいこと、人にはそれぞれに違った気持ちや考え方があることなどについて、話し合いました。 事例I 本人から、小学生、対人関係の悩み、電話で相談 【相談内容】「小さい頃から仲良しの5人組のうちの1人が最近がちょっと仲間外れにされている感じがして、このまま悪化するといじめになってしまうのではないかと心配です」という電話相談がありました。昔から5人でやっているお手紙交換をその子だけ仲間に入れずに進めてみたり、その子にだけ嘘をついたりする子がいるとのことでした。 【せたホッとから】本人の話を丁寧に聴きながら、仲良しグループの中で起きている人間関係の変化に気づき、相談してくれてありがとうと伝えました。本人としては、また仲良しの5人に戻りたいという想いが強かったので、どうしたらその想いを伝えられそうかを一緒に考えました。本人から、「言えそうなときがあるかもしれないので伝えてみます。また連絡します」と返答をもらい、電話を終えました。後日、「みんなで話し合って、今は前のように仲良く過ごせています」との電話がありました。 2 関係機関との連携  「せたホッと」へ寄せられる相談の中には、相談者と委員・専門員とのやり取りの中で、「話を聞いてもらえて良かった」「不安が解消された」等、解決に向かっていくものもありますが、学校や家庭のことなど相談の内容によっては、世田谷区内・外の子どもに関わる関係機関に働きかけを行い、子どもの最善の利益のために、連携しながら活動するものもあります。  例えば、子どもへの虐待が疑われる相談については、「児童虐待防止法」に基づき、世田谷区の子ども家庭支援センター*へ通告を行うとともに、児童相談所や子ども家庭支援センター等と連携し、子どもへの対応について見守る関係機関のひとつとして役割を担っています。平成26年度は、世田谷区内5地域にある子ども家庭支援センターのうち、4 ヶ所と連携し、子どもの虐待に関わる対応を行ってきました。  いじめなど学校における子どもの相談については、世田谷区の「子ども条例」に基づき、在籍学校へ対応を依頼することがあります。また、私立の学校へも、世田谷区の「子ども条例」へのご理解をいただきながら、子どもの最善の利益のために協力を依頼することもあります。平成26年度は、区立小学校12 ヶ所、区立中学校5ヶ所、私立学校2ヶ所に子どものことについて相談があったことをお伝えし、お話を伺いながら今後のことについて検討し、対応していただきました。他には学校、児童福祉施設、区機関といった関係機関から直接「せたホッと」に相談が入り、連携しながら活動を行うこともありました。相談の内容はさまざまですが、今後も区内の連携の中で、このようなケースが増えていくことが予想されます。  また、いじめ防止対策推進法が平成25年9月28日に施行され、世田谷区においても、いじめ防止基本方針を平成26年3月に定めました。基本方針では、「せたホッと」も学校や教育委員会、その他の関係機関と連携し、「未然防止」「早期発見」「早期対応」「家庭・地域との連携」といった、いじめの問題に取り組んでいくことが期待されています。  平成26年度は「いじめ」の相談に関わって、学校や教育委員会および、その他の子どもに関わる関係者等への活動を計213回行っています。法律の制定を受け、今後もこのような活動が増えていくことが予想されます。「せたホッと」では、「いじめ予防授業」など、子どもの権利の普及・啓発を通したいじめ予防の取り組みを行うとともに、相談を受けた場合には、子どもを解決の主体として捉え、その子自身が本来持つ力を取り戻していけるよう、子どもの話を丁寧に聴き取り、その気持ちを代弁していくことを通して、子どもを中心とした問題解決を行っていきます。 3 意見表明  「せたホッと」は、区の特別支援教育のあり方について、世田谷区子ども条例第21条2項の規定に基づき、意見を提出しました。 提 出 先  世田谷区長、世田谷区教育委員会 提 出 日  平成27年3月30日 意見表明通知書 26世家庭子人権第7号 平成27年3月30日 世田谷区子どもの人権擁護委員 いちば よりこ、つきだ みづえ、はんだ かつひさ  世田谷区内の区立学校における通常の学級の特別支援教育について、世田谷区子ども条例第 21条第2項の規定に基づき、以下の意見を表明するので通知します。 意見  すべての子どもの教育を受ける権利は、障がいのあるなしにかかわらず保障されなけれ ばなりません。障がいのある子ども本人や保護者が通常の学級で学習することを希望する ときその希望に応えられるように、また、障がいがあることが周囲から認識されていない ものの学習上または生活上の困難のある子ども1)が必要に応じた教育的支援を受けられる ように、体制を整備することは、喫緊の課題となっています。  世田谷区子どもの人権擁護委員は、区立学校に通うすべての子どもの教育を受ける権利 がこれまで以上に保障されるよう、次の意見を表明します。 一、通常の学級に配置される特別支援教育に関する人的支援として、学校包括支援員(学 校支援員)、支援要員、区費講師、ボランティアなどの抜本的増員を図ること。 一、特別支援教育の推進に関わる人的支援制度については、体制を整備し、支援を必要と する子どもの教育にあたるすべての学校が利用しやすくすること。 一、子ども本人や保護者、教職員など特別支援教育の推進に関わる方々が、「子どもの最 善の利益の実現」の観点からパートナーシップを組み、教育的支援に取り組めるよう 仕組みを整備すること。 意見の理由 1 特別支援教育の実状  現在、世田谷区が実施している特別支援教育における交流及び共同学習は、障がいのない子 を通常の学級に、障がいのある子を特別支援学級(固定学級)に在籍させた上で、交流学級に おいて、双方の交流の機会を確保する取り組みです。この取り組みそのものは文部科学省の指 針に沿ったものです。この取り組みに基づき、世田谷区内の学校は、平成26年には、ほぼ半 数の区立小・中学校に特別支援学級を設置しています。特別支援学級においては、障がいのあ る子ども一人ひとりの個別的ニーズにあわせた個別指導計画に基づき教育活動を実施していま 1)中央教育審議会 初等中等教育分科会 特別支援教育の在り方に関する特別委員会「共生社会の形成に向けたインク ルーシヴ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」平成24年7月23日 22 す。そのうえで、通常の学級と特別支援学級の交流活動も取り組まれています。  交流及び共同学習における教育についての問題点は以下のようなことが考えられます。例え ば、週1回の昼食時の交流学級を行うような場合、ふれあいの機会を増やす意義はありますが、 いつもは教室内にはない椅子を他の場所からもってきて、一緒に食べる形式では、特別支援学 級の子どもたちは、時折来るお客様のようになってしまいます。また、入学式や卒業式、運動 会などの行事において、特別支援学級の子どもたちは、あくまで、通常の学級とは別の学級と して区別されて、共生意識をはぐくみにくい場合もあります。  このような教育は、子どもの障がいを際立たせてしまうおそれがあります。実際、登下校で 出会った子どもが特別支援学級の子どもの口調をまねてからかったり、挨拶をしに近寄るとあ からさまに避けたりしたという体験を語る保護者もいらっしゃいました。そういった体験を本 人や保護者が苦痛に感じることがあります。  また、就学に際して、障がいのある子どもと保護者が、通常の学級へ通うことを希望すると き、保護者の付き添いが求められることがあり、保護者の就労や経済的事情などの理由で付き 添いができない場合は、通常の学級へ通うことを事実上拒否される結果となります。通常の学 級を希望しても特別支援学級に通学するしかないということになれば、障がいのあることを理 由に子どものニーズに合わない教育を受けることになり、子どもの権利条約第3条に反し、子 どもの最善の利益を実現できないことになります。  また、障がいがあることが周囲から認識されていないものの学習上または生活上の困難のあ る子どもは、通常の学級に在籍していますが、学習障がいや、注意欠陥多動性障がい、自閉症 などの発達に課題を有しているなどの理由で個別的な学習指導や対人関係を中心とする特別な 支援が必要な場合も少なくありません。集団適応に問題を抱えているため、クラスで問題行動 を起こしたり、クラスの子どもからいじめにあったり、逆にいじめたりすることがあります。 ひとりの学級担任では、このような問題に十分対応できず、学級の運営が困難になり、特別な 支援が必要になる場合もありますが、これらに対応するだけの体制が整えられていないのが実 状です。  平成26年1月に、障害者の権利に関する条約が批准されました。また、障がいを理由とする 差別の解消の推進に向けて、平成25年6月に制定された「障害を理由とする差別の解消の推進 に関する法律」が平成28年4月1日に施行される予定です。地方公共団体としては、法律の趣 旨にのっとり、障がいを理由とする差別の解消の推進のために必要な施策を策定し、実施しな ければならないとされており(同法第3条)、世田谷区としても積極的に取り組む必要があり ます。  また、区の教育委員会では、9年ぶりに特別支援教育について本格的に検討し「世田谷区に おける特別支援教育の今後の推進のあり方」としてとりまとめましたが、今後、本意見表明通 知書の内容を加味し、一層の取組みが望まれます。   インクルーシブ教育システム推進の意義  「さまざまな困難を抱える人たちを排除しないで受け入れていく社会をつくりだすには、そ の社会の一部である学校がインクルーシヴなものでなければならない」2)といわれます。  サラマンカ宣言の基本原則の第7項は、「インクルーシヴな学校の基本原則は、すべての子 どもがそれぞれ持っている困難さや違いにもかかわらず、出来る限り一緒に学ぶべきであると する点にあります。インクルーシヴな学校は子どもの多様なニーズを承認しそれに応えなけれ ばならない」としています3) 。  日本の中央教育審議会も、インクルーシブ教育システムにおいては、「同じ場で、共に学ぶ ことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童・生徒に対して、自立と社会参 加を見据えて、その時点で、教育的ニーズに最も的確に答える指導を提供できる、多様で柔軟 な仕組みを整備することが重要である」と述べています。すべての子どもは地域の学校に行く権利をもっています。   すべての子どもの教育を受ける権利は、障がいのあるなしにかかわらず保障されなければな りません。同じ時代を生き、さまざまな問題について、考えて、共に解決する仲間がいること は、一人ひとりの生徒を大きく成長させます。自分のことを知り、他の人との違いを知ることは、 集団の中で、自分ができることや、やるべきことは何かを考え、行動することにつながります。 だれもが喜びや人の痛みを共有し、共感できる集団の中にいることが大事です。そのような教 育の場は、一人ひとりがありのままで受け止められるような集団です。その意味から、希望す るすべての子どもは、まずは、分離されることなく、同じ集団に所属することが大切です。そ のうえで、障がいなどの特性に応じて、個別のカリキュラムが組まれることが望ましいといえ ます。 3 インクルーシブ教育システム実現に向けたこれからの課題 (1)世田谷区の区立学校における特別な支援を必要とする子ども  平成26年5月1日現在の世田谷区の区立小学校は64校、中学校は29校、学級数は通常の学級 は小学校が1,036学級、中学校が302学級で合計1,338学級、生徒数は小学校32,287人、中学 校10,403人であり、合計42,690人となります。  平成26年度の特別支援学級の児童・生徒数は、情緒障がいの子どもなどを含めて小・中学 校をあわせて1,067人です。  障がいがあることが周囲から認識されていないものの学習上または生活上の困難のある子ど もは、通常の学級に通う児童・生徒の全体の6.5%であるとの報告(平成24年度文部科学省調査) があります5)。これによれば、世田谷区では、42,690人の6.5%の約2,774人の子どもが、通 常の学級に在籍しているけれども学習面と行動面で著しい困難を示しているということになり ます。同調査によると校内委員会において特別な教育的支援が必要と判断されている推定値は、  この中の18.4%ということが報告されているので、世田谷区内においては、2,774人の18.4% すなわち約510人が特別な支援を必要とすると推定されることになります。 (2)教員に求められること  学習の内容の高度化や柔軟な教育プログラムの実施、障がいや子どもの家庭環境などの多様 化に伴い、エキスパートとしての教員に求められることは、どんどん高度化しています。 たとえば、発達障がいのある子どもの特性を本人や他の子どもに理解してもらい、子どもどう しの自発的な協力関係が醸成されたとしても、個々に異なるすべての子どもの学習目標を達成 するのは、力量ある教員でも、容易なことではありません。少しの感情のすれ違いでパニック を起こして動き回ったり、外に飛び出す児童・生徒、家庭の事情を抱えている児童・生徒、親 から受験に合格することを厳しく求められストレスを抱えている児童・生徒など、一人ひとり のニーズをくみ取りながらひとりの教員が授業や学級運営を円滑に進めることは大変なことで す。特に、障がいのある子どもと保護者が、通常の学級で一緒に学習することを希望するとき、 または、通常の学級の中に、発達に課題を抱えた子どもがいるときに、教員ひとりでは対応で きなくなり、ひいては、いわゆる「学級崩壊」ともいえる状況に陥ることがあります。現に、「せ たがやホッと子どもサポート」が受けた相談の中で、保護者がボランティアでサポートに入っ ている学級もありました。そのような中でいじめられているとの訴えを受けることもありまし た。    (3)これからの課題  以上のような実情の中で、インクルーシブ教育システム等を実現し、学校教育を充実するた めには、以下の問題を改善する必要があると考えます。 @ 障がいのある子どもや障がいがあることが周囲から認識されていないものの学習上また は生活上の困難のある子どもの特別支援のために、通常の学級に配置される学校包括支援 員等の抜本的増員が必要です。現状の人員では特別な支援を必要とする子どものニーズに 対応できず、人数の絶対的な不足があります。障がいがあるなど特別な配慮が必要とされ る生徒が通常の学級で共に生活し学習するという共生教育を実現するためには、子どもの 学習支援、生活支援、教員の学級運営の支援のための日常的な特別な支援が必要となりま す。世田谷区でも、子どもたちの特性や学習の習熟状況などについて、学校包括支援員(学 校支援員)が日々細かな観察記録をつけて、担任と情報交換するなど、学校の個別の努力 によって日常的な対応が可能な体制をとることができ、成果を上げている学校もあります。  とはいえ、基本的には、学校包括支援員(学校支援員)は週に1日の形で配置されるだ けです。各学校で学校長がボランティアを依頼したりしてその不足を補っています。日常 的な特別支援をするとすれば、さらに多くの学校包括支援員が必要になります。  現実には、平成26年度の学校包括支援員(学校支援員)の数は26人でした。平成27年 度は42人に増員される予定です。さらに、平成29年までには78人に増やす予定とのこと です。そのような増員ではまだ十分とはいえず、抜本的な増員が必要です。  現在でも、地域のボランティアや大学(大学院)生のボランティアが支援を担ってくれ ていますが、就学前に受けていた支援が小・中学校において切れ目なく引き継がれるため には、このような学校包括支援員等の質的向上のみならず、量的拡充も図られなければな りません。 A そのような中で子どもや保護者のニーズに対応するため、学校長の要請などで通常の学 級に配置されているのは、学校包括支援員(学校支援員)、支援要員、区費講師、ボラン ティアなどがありますが、手続きがそれぞれ異なるのでわかりにくいのが現状です。これ を、どの学校でも同じように利用しやすくしていく体制の整備が求められています。  特別な支援の内容としては、日常生活の介助や学習活動上のサポートなど担任による指 導の補助が主なものであり、車いすでの教室移動の補助やLDの児童・生徒に対する学習 支援、ADHDの児童・生徒等に対する安全確保等の支援を行っています)。  元教員や大学(大学院)生などさまざまな人材を活用し、そのような支援人材を登録、 派遣、サポートするなどの仕組みを構築することができたら、世田谷区内のどの地域で暮 らしても同じような充実した教育を受けられるようになります。 B 教育にあたる通常の学級の担当教員と特別支援学級の担当教員は、児童・生徒の発達上 の課題を共有します。ケース検討や教材・教具の工夫や授業の進め方などの情報の共有や 研修活動は、どのような児童・生徒の教育にも役立つものになるのではないでしょうか。 学級を超えて、先生方が教育の専門家として相互に交流できる環境が大事です。  また、学校長を始めとする教員や地域の人々が、インクルーシブな学校風土や学級づく りを推進できるようにしなければなりません。他機関とのネットワークづくりを含め、学 校長や通常の学級や特別支援学級の教員など、すべての教職員が、障がいなどに対する理 解と知見を深め、地域社会で率先してインクルーシブ教育システムを推進する先進的なモ デル自治体となることが期待されます。  そのためには、子ども本人や保護者、教職員など特別支援教育の推進に関わる方々が、「子 どもの最善の利益の実現」といった観点からパートナーシップを組み、教育的支援に取り 組めるよう仕組みを整備することが求められます。 4 おわりに  国は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を制定し、地方自治体に差別の解 消を義務づけています。この差別の解消のためにも、以上の課題の実現、とりわけ、学校包括 支援員、支援要員、講師、ボランティア等の抜本的増員が必要であり、さらには、どの学校も 同じように支援を受けられるようにするためには、より効果的な制度の構築が望まれます。そ して、インクルーシブな教育が推進できるような環境を整備するとともに、「子どもの最善の 利益の実現」に向けた教育的支援の仕組みの整備が求められます。 W 広報・啓発活動 1 広報・啓発  機関を身近に感じてもらえるよう「安心して相談できる機関」、「顔の見える相談機関」をモットーに広報・啓発活動に取り組んでいます。 配布・掲示 ポスターの配布、掲示 リーフレットの配布、相談カードの配布、メモ帳配布、クリアファイルの配布 機関紙「せたホッとレター」の発行2回 せたがやふるさと区民まつりに出展 アンケート協力・ゲーム参加者にメモ帳配布、リーフレット、相談カード配布 世田谷246ハーフマラソンに出展 関係機関等との連携として児童館事業参加 (池尻・弦巻・代田・松沢・等々力・深沢・上用賀・喜多見・成城さくら・山野・祖師谷・烏山・上北沢 各 児童館) 対象 随時児童館のイベントに来場した児童、保護者 内容 リーフレット、相談カード、メモ帳、クリアファイル配布 その他の活動 ホームページ せたホッとの最新情報、活動等を随時更新  いじめ予防授業 ※共催6月・7月区立の小学生対象に弁護士とせたホッと委員によるいじめを予 防するための授業を共催 小学校2校にて 月1から2回開催する擁護委員会議で広報啓発活動の方針及び内容の検討19回 テレビ新聞等取材 NHK、東京新聞  ※「いじめ予防授業」とはいじめ被害をなくすための最善の策は、いじめの被害がひどくなる前に予防をすることと考え、弁護士会の弁護士が学校に出向き、いじめは人権侵害として絶対に許されないことを理解してもらうことを目的として、いじめについて子どもたちと一緒に考える授業です。  どんな相談ができる機関なのかをアピールするために、子どもや区民と直接触れ合うさまざまなイベントに参加し、広報・啓発に取り組みました。昭和女子大学で毎年行われる三茶子育てフェスタでは、マスコットキャラクターのなちゅのお面に塗り絵をしてもらいました。世田谷区のマラソンイベント「世田谷246ハーフマラソン」では、バルーンアートや“せたホッと”のクリアファイルを配りました。毎年夏に行われる恒例の「せたがやふるさと区民まつり」。専門員考案のさか“なちゅ”りゲームは大盛況でした。烏山児童館の年末お楽しみ会でせたホッとを紹介するゲームをしてきました。 3 研修会への講師派遣  関係機関、子どもにかかわる団体等の研修会に講師として参加しています。講演の内容は「子どもの人権擁護の新たな仕組みと活動状況」「人権全般についての講義、子どもの人権についての事例演習、ディスカッション」「子どもの人権を理解しよう」「児童虐待について」「いじめにあった時の対応」「子どもとのコミュニケーション?おとなにしてもらって嬉しかったこと・嫌だったこと?」です。 家庭教育学級(弦巻小)、学校教育相談研修(中級)、生活指導主任研修委員、青少年委員第1ブロック研修会委員・専門員、学び舎研修(優郷の学び舎、弦巻中、松丘小、弦巻小) 烏山地区青少年地区委員研修会(芦花小・中学校) 1 子どもサポート委員のことば 『相談活動を通じて子どもの思いや意見を尊重する文化をつくる』 子どもサポート委員 つきだ  みづえ  進路などの選択の時に、自分の考えを親に尊重してもらえないという悩みを多く聞きます。先進諸国も長く家父長制をとり、女性や子どもは家族内で庇護される立場でした。とくに日本では、家と家父長制が結びつき個人より、家のあり方が重視されてきました。私の周りでも、親や親族が娘の意思ではなく、家のために結婚相手を選ぶこともありました。これは、ある仲の良いご夫婦の話です。自分の結婚相手を探すのに、よい家庭教育をされているご家庭が近所にあると知り、訪ね、ご両親に“お宅のお嬢さんをお嫁にいただけませんか。一番目は嫁ぎました。二番目も。と順番にお願いし、未婚だった三女の方(今の奥様)と結婚されたそうです。個人より家族のあり方が重視されることはかつて一般的なことでした。うまくいく場合もありますが、戦前のこのような家族のあり方は、現在の家族にも影を落としています。代表的なものは躾の名のもとの体罰、虐待ですが、その他にも、子どもが親とは別の人格を持つことが十分意識されないまま、親の思いを託される。子どもの意思を充分に確認せずに決めてしまうなどが挙げられます。  近年は、世界的にもこのような大人と子どもの関係に疑問が持たれるようになり、変化をしました。いろいろな意見や行政の指針にも、明示されるようになりました。たとえば、イギリス人のブランネンとモスは、『長い間、子どもたちは、大人によって保護され、大人に従って行動する“つくられつつある大人”とみなされてきました。何事にも不十分で、物事をわかっていない、愛情を必要としていて、弱く、依存的で、保護と管理・支配が必要で、経済的に独立していないことから、子ども自身で決定することができるにもかかわらず、それを妨げ、大人が代理機能を行使するという不完全な地位を与えてきました。子どもたちを活躍する可能性を持った市民、大人と相互に依存し合い、利益をもたらしあう一員として見直すべきである』といっています。また、デンマークのダオチルブッド(幼児保育関係施設の総称)の“学びのプラン”(ソーシャルサービス法8条)の主目標には、“子どもはそれぞれ特殊な条件を背負ったユニークな個人として認められ ています。保育士は、子どものそのままの姿を受け入れ、保育には子どもが要求し必要とするものや子どもの持つ長所が配慮されています。子どもの成長や学びは、子ども自身が積極的な役割を果たしています。保育士は子どもと同等な位置に立って話し、子どもの意見が受け入れられる場を与え、子どもが自分自身の興味や関心のあるものや、やりたいことを追求できるように配慮しています。”とあります。 そのうえで、“子どもの思いをしっかり大人が聞くことによって、大人が自分を大切に思ってくれていることを感じるのです。そうした大人の行為が、子ども自身の自尊感情を育て自信ある子どもをつくっていきます。幼児期からの毎日の積み上げが、主張でき、受け入れることができ、折り合いをつけることができる社会人をつくっていきます。”と述べられています。せたホッとは、子どもが大人と完全で対等なパートナー(リヤド・ガイドライン)という見方に立って、相談・救済活動を続けていきたいと思います。 2 相談・調査専門員のことば 『大切なあなたの心に寄り添って』 子どもから 「もう嫌なんです」「ダメだと思うんです」「助けて」「どうにかしてほしい」と数名の笑い声と共に寄せられた電話が何回かありました。「はて?どうしてほしいんだろう?「せたホッと」は何て言ってくれるかな?というのが知りたかったのかな?」などと電話を切り終えた後、その子どもたちが電話をした意味に思い馳せることがありました。  一方、このような電話のほかに、本当にそういう思いをやっと吐露することができたという電話やメールも寄せられています。お友達との関係や学校の先生からの指導や親からの強い思いなど、子どもがおとなになるにはさまざまなことを乗り越えなければなりません。すべてが一度に押し寄せると、これまでの楽しかった日々は、色を変えていってしまい「この先、もう二度と楽しい日々が来ないのではないか」などの不安に押しつぶされてしまうのではないでしょうか。  あるいは「誰も自分のことをわかってくれない」「こんな自分は自分で耐えられない」というのが思春期の思春期であるが故の思いだと思います。そのつらさを、お友達にも、先生にも、親にも言えない・・・となったら、子どもなら誰でも困り果ててしまうのではないでしょうか。そのつらさをやっとの思いで「せたホッと」に相談してくれたのかと思うと、本当に話してくれた勇気に敬意を払いながら、お話を聴いています。自分のことを「自分で」乗り越えていかなければならないというのは、おとなも子どももわかってい るのですが、乗り越え方は「一人きりで」ではないと思うのです。誰かの力を借りながらでも、「自分が自分でいていい」と思えることが大切です。さらに、子どものときに「自分がしてきたことは間違いではなかった」と自信を持てることが、おとなになってから長い人生を生きていく上で必要な力につながると思います。  自分を押しつぶそうと侵害してくるもう一人の自分を、自分でコントロールできれば、思春期は解決できます。しかし、そうではなかったときに「せたホッと」は一緒に考えたいのです。子どもの権利をまもる「せたホッと」は、自分の権利を自分で追いつめていく侵害からもまもりたいと思います。「せたホッと」のポスターに書かれている「ひとりでがんばらなくていいんだよ。お話聞かせてね。」というメッセージにはそういう意味もこめられていると思っています。  「せたホッと」は大切なあなたの心に寄り添って、これからもお話を聴かせていただきます。そして、一緒に考えて「もう大丈夫」と思えるまで見守ります。 相談・調査専門員 こいで まゆみ 『子どもの心を支える支援』  26年度の「子ども・若者白書」で日本は、諸外国に比べて自分自身を肯定的に捉えている子どもの割合が低く、自分には長所があると感じている子どもの割合も低いとされています。また、この1週間の心の状態についての質問では、この1週間の間に「つまらない、やる気が出ない」と感じた子どもの割合も、「悲しい」「ゆううつだ」と感じた子どもの割合も、諸外国の子ども達に比べて高く、特に13歳から15歳の子どもたちに関しては、「悲しい」「ゆううつだ」と感じた子どもの割合が、諸外国と比べて突出して高くなっています。自分はこのままで「必要な存在である」「大切な存在である」という風に自分のことを肯定的に捉えることは、その人が主体的、前向きに自分の人生を生きていく上でとても大切なことです。人や社会にとって自分が必要な存在だと思えていなければ、色々なことに意欲的に取り組む気が起きずに、「つまらない・やる気が出ない」と感じたり、様々なことに傷ついて「悲しい」「ゆううつだ」と感じる機会も増えてしまいます。  子どもたちの自己肯定感が下がってしまう背景には、日本の教育や社会の在り方も含め、様々な要因があると思われます。実際の相談の中でも、いじめや虐待のように、周りのおとなやその子の置かれている状況が要因となって「自分はダメなやつだから、生きている価値がない」と感じてしまったり、親に余裕が無いなどの理由から、本当はその子のことを愛しているし、大切な存在なのに、そのことがメッセージとしてうまく伝えられていないため、勉強ができるとか、聞き分けのいい子であるとか、そういった条件付きでなければ、見捨てられてしまうと、必死に背伸びをして頑張ってしまう場合などがありま す。また、こういった子たちの中には、上手く言語化できない悩みや葛藤を頭痛や腹痛、発熱という形で身体化したり、家や学校で乱暴に振る舞うといった形で行動化している子どもたちもいます。  結婚式の決まり文句のように、「いい時も悪い時も、受け入れてもらえる、愛してもらえるんだ」といった安心感は人が生きていく上でとても大切なものです。いろいろな状況の子どもたちがいますが、(たとえパッと見そう見えなかったとしても)本当にみんなまじめで頑張り屋で、周りのおとなに気を使って生きています。おとなは、早く芽を出せ大きくなれとじゃぶじゃぶとお水をあげて、見えやすい人並みの成長に一喜一憂してしまいがちですが、少し時間がかかったり遠回りしているように見えても、子どもたちが将来誰のためでもない自分自身の人生をしっかり歩んでいくことができるように、無理をしすぎ てその子たちの心がどこかでポキっと折れてしまわないよう、根っこが静かに地中に伸び、土をしっかりつかんでいくのを微笑ましく見守り、支えていくことが重要なのではないかと思います。そして、子どもたちがしなやかで強かに成長していけるよう、少しでもお手伝いができればいいなと思っています。 相談・調査専門員 たけうち あさこ 3 相談者のことば  私は小学4年生の2学期からずっといじめられていました。 〈4年生〉? 学校では先生に相談しましたが、だめでした。いじめはエスカレートする 一方で、先生や保護者の力ではどうにもなりませんでした。 〈5年生〉? いじめは止まらず、授業中も騒がしかったり、最悪な状態でした。 〈6年生〉? 状況は5年生と変わらず、受験勉強をしていましたが、いじめのせいで受験 に落ちたら、中学校でまたいじめられたり、授業中も騒がしかったりして、高校受験にも 受からず、そして自殺ということも考えていました。(本音)  そんなとき、「せたホッと」に相談しました。私は、最後まで同じ学校にいることは常 識で、親の転勤などがない限りは、ずっと同じ学校で生活することは義務だと思ってい ました。しかし、「せたホッと」の人に、自分がひどいいじめを受けていることや、いじ めのせいで行きたい中学校に合格することができず、中学生になってもいじめられ続け、 自殺という行為までもしてしまうかもしれない状況にあることなどを相談すると、一緒に 対応策を考えたり、学校と話をしてくれたりしました。  結局転校することになり、最初の2、3日は少し緊張しましたが、すぐに慣れてきました。 すぐに友達ができ、毎日の学校生活が楽しかったです。この学校の第一印象は、”いじめ のない平和な学校だ”ということでした。「せたホッと」の人と、一番いい方法を一緒に考え、この学校に通うことができるようになってよかったなと思いました。また、受験勉強も順調に進み、希望していた学校に合格することができました。そして、明るい気持ちで卒業式を迎えることができました。 〈中学1年生〉? 中学校に入学し、楽しく学校生活を送れています。今思うと、「せたホッ と」に相談しなかったら人生がすごく暗いものになっていたなと思いました。私は「せた ホッと」の人に改めて感謝しました。 〈いじめへの対応について〉  いじめというものはとても卑劣な行為だと思います。 ですから、これからは世田谷区や日本で、いじめを起こした本人が、相手や周囲の人たち を傷つけたことをしっかり反省する、教師はいじめの被害者を早期発見し、子どもをまも るなどの条例、法律をつくり、学校での道徳の時間にいじめのことについて深く考える時 間をつくったりしたほうがいいでしょう。近年では、いじめなど問題行動を繰り返す人に 厳しい措置が行えるようになりましたが、そんなことも気にせずに人をいじめている人が いるので、世田谷区全体の問題として考えた方がいいと思います。そもそも公民で習うよ うに、日本国憲法第26条の「小学校、中学校の教育を受ける権利」は誰にでもあるはず なのに、いじめられたり学級崩壊に遭ったりした人は、基本的人権を侵害されていること になります。これはとても重い問題なのではないでしょうか。 「せたホッと」について  「せたホッと」は、平成25年7月に開かれ、その後数々の人々をいじめなどの問題から救っていった組織ですが、その中には私のように、「せたホッと」を通じて人生そのものが変わった人、中には命が救われた人もいるはずなので、「せたホッと」は非常に良い組織だと思いました。しかし、“いじめ”などの問題は、世田谷区だけの問題ではないのです。東京都、さらに日本の、大きな社会問題となりつつあるのです。だからこそ、「せたホッと」という制度を隣の区や、東京都全体に広めていって欲しいのです。これから、私を含め2000 〜 3000人程度の区民が助かっていくと思いますが、将来もしかしたら「せたホッと」のおかげで「いじめ」そのものがなくなるかもしれないと思っています。  また、将来の社会を担う子どもたちのためには、今のレベルよりもさらにアップグレー ドするべきです。そうすると日本の未来が明るくなります。  「せたホッと」の皆さん、本当にありがとうございます。 おわりに 『平成26年度の活動をふり返って』 子どもサポート委員  はんだ  かつひさ  平成25年度の活動報告書の「おわりに」において、今後取り組んでいきたい課題を5点挙げました。 それらに沿って、平成26年度の活動について成果を中心にふり返ってみたいと思います。 (1)子どもにもおとなにも幅広く知ってもらうための広報・啓発  平成25年度に続き、区内の全小・中・高等学校等にキャラクター「なちゅ」を目立つよう配置したポスターを掲示いただくよう配布するとともに、相談から解決に向けての流れを明記したリーフレットや相談カードを区内の学校等を通じて在籍しているすべての子どもに行き渡るよう配布しました。また、区民の身近に「せたホッと」を感じていただけるよう昭和女子大学の「三茶子育てファミリーフェスタ」や「せたがやふるさと区民まつり」等のイベントに参加したり、児童館に出掛けていき、「年末お楽しみ会」「クリスマスクッキング」等の各種イベントを子どもたちと一緒に楽しむ中で、来場者に「なちゅ」のメモ帳や新規作成したクリアファイルを手渡しで配布しました。児童館は子どもと話しができる貴重な居場所ですので、特に力を入れ専門員が中心となり、15回参加しました。さらには、家庭教育学級や青少年地区委員研修会、いじめ予防出張授業の講師も担当させていただきました。今後は、具体事例に沿い、解決に向けてどのように「せたホッと」を活用いただけばよいのかイメージしやすいような広報・啓発活動に努めて参りたいと思います。 (2)関係機関との連携・協力関係を構築していくための協議や研究会への参加  虐待を含む福祉領域では、@世田谷区DV防止ネットワーク代表者会議、世田谷区要保護児童支援全区協議会への委員としての参加、A要保護児童支援北沢地域協議会における「子どもたちを地域でどう支えていくか」といったテーマでのグループワーク、B子ども家庭支援センター、児童相談所、病院等におけるケース会議等への参加、C世田谷区子ども・若者部開催の「母子生活支援施設情報交換会」やひとり親家庭支援者研修へ参加させていただく中で、それぞれの機関等の機能や役割を確認し、「せたホッと」として何ができるかについて検討いたしました。  教育領域では、@小・中合同校長会での「せたホッと」の説明、A教育委員との意見交換、B教育委員会や学校との個別案件における協議等を行う中で、学校や教育委員会との連携・協力関係のあり方について検討いたしました。また、C学び舎研修での情報提供、D学校教育相談研修、生活指導主任研修での講師を担当させていただく中で、具体事例から子どもの声の聴き方、対応の仕方、解決に向けての動き方について先生方とともに考察いたしました。  その他、区議会議員他が「せたホッと」に視察に来ていただいた折には、制度や運営状況について説明させていただきました。  今後は、保健師やソーシャルワーカー、民生委員・児童委員、人権擁護委員、青少年地区委員ほか、地域において子どもや家庭を直接支える方々との連携・協力体制の構築を視野に入れた活動も展開していきたいと考えています。 (3)個別案件から見えてきた問題点を踏まえた意見表明  平成25・26年度を通じて、区立学校における通常学級の特別支援教育のあり方を考えさせられる案件が複数ありました。そこで、まずは、国および先進自治体、国際的なインクルーシブ教育、特別支援教育の動向について研究しました。そのうえで、世田谷区の現状について、資料を収集・分析し、区長部局や教育委員会、学校、さらには当事者への聴き取りを実施しました。それらを通じて浮かび上がった課題を整理し、世田谷区として子どもの最善の利益を実現できるよう今後検討を深めていくべき課題について、世田谷区子ども条例第21条第2項の規定に基づき、区長及び教育委員会に対して意見表明を行いました。  今後は、意見表明の内容に基づき、世田谷区がどのような施策を展開していくかについても、引き続き協議を深めていきたいと考えています。 (4)いじめ防止対策推進法に基づく案件対応ができる組織体制  国では、いじめ防止対策推進法が平成25年9月28日に施行され、世田谷区においても、いじめ防止基本方針を平成26年3月に定めました。そこにおいては、「せたホッと」の役割として、@未然防止=児童・生徒や保護者への周知、A早期発見= 「せたホッと」の運営、B早期対応=学校に対する指導・助言及び実施、C家庭・地域等との連携=教育委員会や関係機関等との連携等が期待されています。  このいじめ防止基本方針に基づき、世田谷区の関係機関等で構成される「世田谷区いじめ防止等対策連絡協議会」に参加し、区内の現状を把握しつつ、役割を果たすために何ができるかを検討してきました。「せたホッと」に寄せられる相談からは、「いじめ」がささいな対人関係の悩みから始まっている様子もうかがえます。そこで、「せたホッと レター」第3号(平成27年3月発行)では、いじめ防止等について特集を組み、関係機関等に配信いたしました。「いじめ」を主訴とする相談は、ケース会議で検討し、対応方法について慎重に議論してきました。申立て案件では、調査に膨大な時間を要します。重大案件の調査を複数実施する場合等、組織体制をどのように整備していくかは、今後の検討課題にあげられます。 (5)子どもの人権擁護機関としての研修機会の充実  6月には、大阪で開催された「子どもの相談・救済にとりくむ自治体関係者交流会」において、関西地区で子どもの相談・救済にとりくむ自治体関係者の皆さまと、いじめ防止対策推進法への対応をめぐる課題などについて意見交換ができました。同日開催された「子ども支援学研究会」においては、「附属機関」における子どもの人権救済の機能と役割について議論することができました。  10月には、青森で開催された「子どもの相談・救済に関する関係者会議」(非公開)において、全国の自治体が設置している子どもオンブズパーソンや子どもの権利擁護委員会における事案および実践的課題について検討することができました。続いて「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウムでは、「子どもの相談・救済分科会」において、北海道北広島市、岐阜県多治見市とともに報告させていただく機会をいただき、制度運営や事案等について、議論を深めることができました。  全国の子どもの相談・救済機関等に関わる実務者(オンブズパーソン、権利擁護委員、相談員・調査員、事務局担当者など)やこれから同様の制度を構築しようとしている自治体の関係者とともに、制度構築の背景や実際の活動、課題等について検討できることは、当該制度についての理解を深め、関連情報を収集できる貴重な機会であるとともに、世田谷区の実践をふり返ることができるため、今後もこうした研修に積極的に参加していきたいと思います。 おわり