概要版 平成30年1月24日 世田谷区認知症施策評価委員会 平成29年度世田谷区認知症施策評価委員会 会議録 ■日時 平成30年1月24日(水)19:00〜21:00 ■場所 世田谷区役所第3庁舎3階 ブライトホール ■出席者 ■事務局 高齢福祉部介護予防・地域支援課 ■会議の公開 公開 ■次第 1 開 会 2 世田谷区高齢福祉部長挨拶 3 資料の確認 4 議事 (1)(都)認知症の人の地域生活を支援するケアプログラム推進事業について (2)世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想の進捗状況について ・世田谷区の認知症施策について (3)「世田谷区認知症在宅生活サポートセンター運営業務委託」に係るプロポーザルの選定結果について (4)その他 午後7時開会 ○橋(裕)委員 世田谷区認知症施策評価委員会を開催します。 高齢福祉部長の瓜生より御挨拶を申し上げます。 ○瓜生委員 皆様には、夕刻のお忙しい中、また、大変寒い中お集まりいただき御礼申し上げます。世田谷区では、本年1月、総人口が90万人を超え90万107人となりました。 世田谷区より人口の少ない県が7県ほどあります。65歳以上の高齢者の方は、18万人を超えており、高齢化率も20%を超えています。要介護認定を受けている方は約3万8000人で、こちらも高齢者人口の20%を超えている状況です。 要介護認定率は、国と東京都が約17%なのに対し、世田谷区は約20%となっています。世田谷区は後期高齢者が多いということもありますが、サービスが充実していることや、ひとり暮らし高齢者の割合が高いことなども要因の1つと思っています。 認定されている方のうち、何らかの認知症の症状がある方が約2万1700人であり、これからの認知症の総合的な支援、対策というものが大変重要と考えています。 歳をとっても、認知症になっても、誰もが住みなれた地域で住み続けられるまちづくりを目指し、現在、第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定作業を行っており、2月中旬には案をお示しできるところまできています。 本日は、平成24年から25年にかけて委員の皆様に御協力いただき策定した世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想の進捗状況と、平成32年4月、梅ヶ丘病院の跡地に開設する、認知症在宅生活サポートセンターの運営事業者の選定結果等を御報告させていただきたいと考えています。 委員の皆様には、日頃の研究活動や地域での活動に基づく見地から、さまざまな御意見を賜り、認知症の方やその御家族の方々が住みなれた地域で住み続けられるよう取り組んでまいりたいと思います。 ○橋(裕)委員 委員の皆様には今回、施策評価委員会の委員をお引き受けいただき感謝申し上げます。 この施策評価委員会は、一昨年度、臨時で1回開催し、平成28年度から本格実施をしています。また、委員の任期は1年で、再任を妨げません。 なお、新たに委嘱された委員の委嘱状については、略式で机上に配付させていただいていることをご了承願います。 ここで、新たに委嘱された5人の委員及び今回オブザーバーで出席いただいている方1人を御紹介させていただきます。 また本日は、欠席の委員が1名です。 (委員の紹介) それでは、ここから議事に入るため、大熊委員長に議事の進行をお願いします。 ○大熊委員長 では、事務局から資料の確認をお願いします。 (資料確認) ○大熊委員長 配布資料の「認知症あんしんガイドブック」は音声で読み取ることができますので、目の不自由な方も読めるようになっています。 では、次に西田委員から御説明をいただきます。 ○西田委員 東京都医学総合研究所の西田と申します。本日は、私どもが昨年度から進めてきた認知症の人の在宅生活を継続可能とする新たなケアプログラムの開発及びその成果について、御報告をさせていただきます。この2年間にわたる試行と実証については、世田谷区に大変な御協力をいただき、この場をおかりして御礼申し上げます。 オレンジプランの策定の折には、やはり初期の対応、診断後に絶望ではない状況をつくるための初期支援の充実がありました。もう1つ、やはり身近なところで行動心理症状を、できれば地域で、在宅で解決できる仕組みを実現するべきではないかという話がありましたが、そのときは政策化が難しかったということがあり、当時、上野先生が在宅で診療をされて、行動心理症状のかなり強い方を支えきることができるという実証をされていました。 ただ、最後に残った最も重要な課題は、ケアの現場においてこの行動心理症状に対して正しい対応ができるようにサポートしていくことでした。ケアの最前線にいる方々の、この行動心理症状の理解と対応を改善できないかということをずっと考えていました。今回、東京都の事業として、この2年間集中的に取り組ませていただきました。 副題で「行動心理症状の正しい理解と対応の普及」というテーマをつけていますので、まず、行動心理症状についての最近の考え方について、少し説明をしてから本題に入ります。 認知症のケアの分岐点となるものは何かというと、今申し上げている認知症の人の行動心理症状をどう捉えるかであると思います。物を盗まれたと確信されたり、ほかの人に見えないものが見えたり、不安で仕事中の御家族に頻繁に電話をするとか、大声を出したり、人をたたくとか、いろいろな行動が状況によって出てきます。 こういった行動心理症状を不可解な問題行動と捉えるのか、非常に重要な意味のある行動、メッセージと捉えるのか、この分岐によってその後の対応が変わってくることになります。 これまでは問題行動と捉えて、それに焦点化した対応を私どもはとってきました。具体的には抗精神病薬を使ったり、拘束、または入院、入所という居所移動、リロケーションで対応したわけですが、そういった対応は国際的に、非常に認知症の方の機能や気力を奪い、そして死亡率を有意に高めることが明らかになり、各国ではこういうアプローチや対応をやめようという方向に進んできました。 一方で、最近は行動心理症状というのは、行動を介して認知症の人が我々に自身のニーズを伝えようとしている大事なメッセージなんだ、意味ある行動でありコミュニケーションなんだという考え方がヨーロッパを中心に普及しています。行動そのものではなくて、行動の背景にある認知症の方のニーズへの対応が重視されています。 その人のニーズに合ったケアが提供されることによってケアが満たされて、行動心理症状による表現が不必要になるということです。ですから、出てきている行動そのものをたたくのではなくて、その根底にあるニーズは何か、それに合ったケアを提供しよう、ということが国際誌、医学誌においても一流のジャーナルで堂々と言われるようになってきました。 今申し上げた、意味ある行動としての理解と対応、ということが非常に重要なわけですが、認知症は御存知のとおり、認知機能が低下する疾患であり、記銘力の障害によって、例えば体験の全体を忘れてしまったり、見当識の障害として自分がどこにいるのかわからなくなったり、言語機能の障害として気持ちを言葉でうまく整理できなくなったり、困り事を言葉でうまく伝えられなくなるという言語の障害も伴います。 わかりやすく言えば、見ず知らずの国や地域に突然我々が投げ込まれてパニックになっている。言葉がわからないからうまく助けも求められない。そうなったときには、やはり我々も大声を出して叫んで助けを求めたりするでしょう。 そういう状況に置かれれば、誰しも極度の焦りや不安、恐怖、痛み、不快な思いを持つわけであり、結果として必然な反応としての行動、叫ぶ、頻回に電話するとか、いろいろなことが出てきます。我々は今まで目に見えている行動を抑える対応をしていたわけですけれども、本当は、根底にあるニーズに対する丁寧なケアが本質であります。 今申し上げたような行動心理症状に対する効果的なアプローチを開発するということは、世界で共通の喫緊課題です。東京都で特にこういったプログラムを開発する重要性は、認知症の高齢者の方々が2025年には都全体では60万人にも達します。 そして、東京都の現状としては、介護が必要な方の居住系施設サービスというものが27%と最下位の状況、土地の単価も高く、そんなに施設を増やすということが現実的ではないです。認知症の人がQOLを維持し、さらに高めながら在宅で生活できる仕組みを実現することが喫緊の課題です。 2年間にわたり東京都の事業として世田谷区、足立区、武蔵野市に実施フィールドとして御協力いただき、この行動心理症状に対する、薬に頼らないアプローチ、心理社会的なアプローチの開発を進めてきました。 これまでの行動心理症状に関する対応は、目に見えている行動を抑えようという対応をしてきましたが、それは抑えるだけで沈むだけです。ですから、根底にあるニーズというものをきちんと発見し、適切に応えていくケアが重要です。EUの緩和ケア学会が、がんだけではなくて認知症の緩和ケアについて積極的な提言を2013年に出し、WHOも大臣級の会合でこれを引用して、こういった方針でいくことを出しています。 今申し上げたように、この行動心理症状に対する心理社会的アプローチとして、御本人のニーズを分析して、それに対するアプローチをするのがニーズ分析的アプローチと呼ばれており、実は、世界で10本以上のランダマイズド・コントロールド・トライアル(RCT)が行われています。コクラン・レビューというメタ分析をまとめている雑誌にも、この結果が出ており、10本、RCTがいろんな国で行われましたが、ことごとく失敗しています。 こういうニーズ分析的アプローチというのが、考え方としては大事だということは共有されてきましたけれども、エビデンスとして証明がまだされていません。RCTで効果が実証されたものがないという問題を抱えていました。 我々はこれを始める前に、先行研究の失敗の原因が何なのかをよくよく考えました。1つは、在宅でのプログラムといった瞬間に、どこの国もやはり家族介護者をまず変えていこうというスタンスに入ってしまい、家族を対象として訓練するとか、研修するとか、何とか教育をする、そういう形になってしまいます。 最近の国際学会では、やはり家族を主な対象にしないことが主流になってきており、御家族は既に一生懸命いろんなやり方で頑張っておられて、それ以上頑張れというやり方は、うまくいかない1つの要因として、家族を主な研修対象から外す考えになっています。 また、在宅の介護というのは、施設介護に比べていろいろな人がばらばらに関わるので、統一したケアがしにくいことになります。ですから、こういったニーズ分析的アプローチで仮説を立てて、それに基づいたケアを提供することになっても、みんながばらばらの仮説を持ち寄って、ばらばらにやるという問題が発生していると考えられました。 3つ目の問題点は、仮説の検証がPDCAサイクルでなされていない、ということです。何となく仮説を立て、何となくケアをして、何となく経過を見ていく、という状況になっていました。 東京都で本当に効果のあるプログラムをつくる際に、この3点をクリアする必要があると当初から考えていました。 我々は2012年から7カ国ぐらい回り、この行動心理症状に対する有効なケアプログラムはないか、現地調査をたくさん積み重ね、結果として、この3点の条件をクリアできるものがスウェーデンに唯一ありました。家族介護者を訓練の対象とせず、ケアマネや訪問看護師やヘルパーを対象にする。 それから、介護者間で対応を一致させる、チームアプローチをしっかり組み込むということと、仮説を検証するPDCAサイクルを構造化している、この3点が踏まえられていました。 これは2010年ぐらいに南部の都市で始まった取り組みでしたが、2016年までにほぼ全土に普及したプログラムであり、普及性にも富んでいます。いろいろな国で見ましたが、介護の質をよくしようというと、研修会のテキストが分厚くなっていて、何回も続編シリーズで参加しないと終わらない、現場を持つ介護者の方々からすれば、そんな研修に毎回スタッフを出せず、事実上、やはり普及しないという悪循環がありました。 このスウェーデンのプログラムの良いところは簡単であるということと、研修は1日か2日で終わるというところであり、実際は、オンラインのシステムを使って、目の前にいる利用者さんの状況を踏まえながら、ケアをオン・ザ・ジョブで改善していく仕組みになっています。 このケアは、ヨーロッパの認知症政策会議で優良実践として評価されていました。既にデンマークやオランダ、そして最近は中国も関心を持ってこれを導入しています。 私どもは、このスウェーデンのプログラムをプロトタイプとして、日本版の開発をこの2年間で集中的に取り組んできました。 今回、人材養成研修は2日間という形でやらせていただきましたが、これは現状、1日に圧縮することができて 、1日受けていただければ、その後、このオンラインのシステムを使えばずっとできるというものになっています。非常に入り口が入りやすいプログラムになっています。研修では主に視点の転換をする、問題行動という今までの我々の見方をやめて、満たされていないニーズは何なのかというサインとして、しっかり受けとめる研修を行います。 それから、認知症の人の行動心理症状の背景にある身体的、社会的なさまざまな後方要因についても学び、オンラインシステムの使い方などのトレーニングを受けて、皆さんが現場に戻られて、これを使いながら利用者さんの状態の改善に努めていくことになります。 オンラインシステムを使いながら4つのステップを回していきます。1つ目は、この行動心理症状をまずみんなでしっかり評価するということです。在宅でかかわる関係者の方々に集まってもらって、ここで御本人の行動心理症状に関する情報を持ち寄り、NPIと呼ばれる構造化面接法でチェックをしていきます。これによって、すぐ視覚化されグラフになっていきます。 例えば、このNPIの非常にいいところは、大声を出すとか、興奮している等、目立つものだけではなく、鬱やアパシーといった症状もきちんと拾えるようになっています。 我々は、おとなしいと問題がないかのように見てしまいがちですが、そういったこともNPIは組み込まれています。 この評価をした後、高い得点のところにはどういうニーズがあるのかを検討していきます。検討の際に必要な最低限のチェック項目があり、体のことや、社会的な孤立状況とかをチェックします。チェックがあると、まずそれについて対応しようという形になります。便秘や睡眠なども、ここでチェックしていきます。 背景要因の分析をして、次にケア計画を立てます。ケア計画は、長く書いてはいけないというルールがあり、1行か2行の短いものにします。チーム全員が行えるような簡単な文章で短く書くというルールがあります。薬も多剤併用が問題になるのと同じで、ケア計画が複数あると何が効いたのかわからないので、1つか2つに絞り、みんなで徹底してそのケアをやってみようということになります。私1人がやるのではなく、関わる人全員でやりましょうということになります。 大体1カ月か2カ月ぐらい経ったところで再度評価をして、NPIが下がるかどうかをみます。順調に行っていれば、行動心理症状のスコアが下がることになります。 実際の事例を御紹介させていただきます。この方はかなり長いことお風呂に入れないというアルツハイマーの方で、ようやくデイサービスに通えるようになったのですが、お風呂の誘導をするとすごく激昂されて怒られます。ただ、余りに臭いがすごいので、皆さんがいらっしゃるところになかなか誘導しにくく、スタッフも困惑していました。お風呂どうですか、という話をすると、もうそこからずっと怒りっぽくなってしまい、行動心理症状がたくさん認められる状況になってしまう、ということでした。 スタッフがNPI評価をしたところ、25点のスコアでしたが、いろいろな背景要因のチェックをした後に、この方に、リラックスした状態で介護誘導しようという議論がなされました。そのときに、リラックスしていただくにはどうするのか、という話し合いをしたときに、その方のかばんに氷川きよしのキーホルダーがついていたので、その方は氷川きよしがお好きなのではないか、という仮説をチームで立て、お風呂へ誘導をするときに、氷川さんの曲をかけたり、お話をして、和やかな状態のまま介護誘導をするという仮説を立てて行いました。 これを3週間ぐらい、スタッフみんなで頑張って協力してやりましたが、見事に行動心理症状は上がり、氷川きよしが好きではなかったということが判明しました。 その後は、情報をもう少し集めよう、ということになり、訪問看護師がその方のお家に五木ひろしのカセットがあるのを見て、五木ひろしでトライしてみました。すると、本当に、見事にリラックスされて、お風呂にもゆっくり入れて、気持ちよく、皆さんの輪の中に入ってお話ができるようになっていきました。 音楽療法が効くとか何々療法が効くというのは、やはりだめで、その人にとって何がいいのかということが大事です。音楽も、その人にとってどういう音楽がいいのか、というのは極めて個人的な問題であるので、要するに、ケアをパーソナライズしていくということが、こういうプロセスを経て実現していくということです。我々が、行動心理症状を問題だと見ているときは、うまくできなかったわけですが、この人のメッセージだと、メッセージとコミュニケーションしながら、この人のパーソナライズした適正なケアというものを見つけ出すんだという、我々の大事なヒントとして行動心理症状が位置づけられていくのです。 ちなみに、この五木ひろしは亡くなったご主人にそっくりだったそうで、亡くなった主人はいい男なんだという話をスタッフに力説しながら、お風呂に入っていかれているとのことです。 こういった、今までの既存のニーズ分析的アプローチの問題点を改善するものとして開発し、2年間にわたり、このクラスター・ランダマイズド・コントロールド・トライアルという臨床試験を世田谷区と足立区、そして武蔵野市の3自治体の御協力を得て行ってきました。 大体141人、142人のリクルートされた方を、事業所単位で無作為に、2つのグループに分け、NPIのスコアの優位な現象が出るかどうかをトライしてきました。こういったRCTが10遍以上あったわけですが、て国際的には失敗してきたということでありました。 私どものこの研究では6カ月後のアウトカムを見て、行動心理症状が優位に介入群のみで減少した結果が得られました。これはインターナショナル・ジャーナル・ジェネリックサイケアといった国際誌で既にアクセプトされ、国際的にも成果を出した非常に貴重な研究ということで評価をいただいているところです。 6カ月で7ポイントぐらい下がるということは、実際のイメージで言うと、毎日あった症状が週1日程度に減って、かつ、重度な対応困難なレベルだったものが、対応可能な軽度に改善するというのが7ポイントの減少ということを意味します。そういった意味で、国際的にも在宅で成功した初めての心理社会的アプローチ、ニーズ分析的アプローチということになります。 これは成果として2017年、昨年の12月17日の読売新聞で取り上げていただき、世田谷区でこれに参加していただいた、すずらんの事業所にも取材に行っていただいて、現場の実践者の方々の感想なども紹介していただきました。そして、国際老年精神医学会の元会長のアリスター・バーンズ先生からも、非常に貴重な研究の成果だという評価をいただいたところです。 現場の方々からは、問題行動をどうするかではなくて、ニーズは何かを探るという視点を持つようになって、人に関心を持てるようになったと聞いています。それから、グラフ化された行動心理症状が工夫したケアによって実際に下がっていくのを見ると、チームのみんなが自信を持ち、確信を持てるようになったという話もよく聞きます。 チームでこのようなシステムを共有することで、ばらばらだったケアが統一できるようになってきたことや、支援者がこうした取り組みを連携して行うことについて、御家族もケアの目標を理解してくださって、心強く感じている様子です。 御家族には、まず、スタッフがいいケアをやってみせます。状態が改善していくので、御家族が関心を持たれるので、そのときに、こうするとうまくいくようです、というお話をします。今までは家族さえ変わればというような在宅プログラムでしたが、それをやめたことは非常に正解だったと思います。 今後、デイサービスや小規模多機能などに適用を拡大していく方向です。東京都としては、例えば特養など、在宅で成功するものが施設で成功しないものはほとんどなく、これを施設でも使えるようにしていくことを、東京都が検討しています。 私どもは、この成果を踏まえて、今年4月に発表される東京都の第7期高齢者保健福祉計画に、このプログラムの全都的な普及をきちんと位置づけて、市区町村と連携、協力して拡大していく予定です。 世田谷区も含めて、今、複数の自治体が来年度も参加していただけるような調整を進めているところで、3年ぐらいのスパンで軌道に乗せていく展開を想定しています。 また、12月に、東京都で超高齢社会における東京のあり方懇談会が立ち上がり、その視察団がこのプログラムに関心を持ち、医学研究所までヒアリングに来てくださいました。そこで、この成果を報告したところ、非常に注目すべきだという認識を持ってくださり、今後、懇談会としてもこれを見守っていくというお話をいただきました。 このBPSDケアプログラムのワーキングチームに、世田谷区の関係者の方々が参加いただきました。そして、インストラクターとして今後、世田谷区で活躍できる状況にスタンバイされています。すばらしいヒューマンリソースを抱える世田谷区において、このプログラムを活用して、認知症の方の在宅生活を支えることに期待しています。 最後に、認知症の人の地域生活を支えようとか、地域包括ケアということを口にしますが、『行動心理症状が増悪しない限りはね』というただし書きが小さく書いていますが、そういうただし書きを外す時期にきています。このプログラムがその一役を担ってくれると期待しています。世界的に貴重なプログラムができたので、ぜひこれをまず世田谷区で御活用いただければと思います。 御協力いただいております先生方、皆様、この場をおかりして感謝申し上げまして、私の発表は以上とさせていただきます。 (拍手) ○大熊委員長 皆さん、うなずきながら聞いておられました。現場を持っていらっしゃる遠矢純一郎先生から、簡単にコメントをお願いします。 ○遠矢オブザーバー ありがとうございます。 うちではケアプログラムのメンバーに、訪問看護師、作業療法士の2人がインストラクターとして地域のケアマネジャーさんたちを中心に御指導、御支援してきました。実際には、このシステムを使って在宅でのケアに当たられる介護士の方々に、このシステムを使っていただきました。 一言で申し上げますと、やはり数値化されるということの衝撃がかなり大きく、自分たちのケアが見える、わかるというところが、今までにない体験としてケアの方々には受けとめられました。当初はシステムの使い方など、少し難しいところもありましたが、やってみるとそんなに複雑なものではなくて、NPIというスコアでBPSDの症状を数値化し、グラフ化していきます。それによって、この人には今、こういうことが起こっているんだ、こういう状況にあるんだということが見えたことから、それに対してどうしようかとケアを考えます。 ケアは本当にシンプルな、最初聞いたときには、これが果たして効果が出るのかと思いました。例えば、朝きちんとおはようを言いましょうとか、そんなレベルのことを、きちっとみんなで統一してやっていくことで、だんだん本人が変わってくるのです。実際それがスコアとして下がってきます。 自分たちが考えたケアで、効果が出ている、ということが数値として見える、評価されるということが、多分今まで介護士の方々に余りなかった経験だと思います。 私も西田先生と一緒に、スウェーデンで実際に使っている施設の方々にお伺いしたが、最初はどれぐらい効果があるんだろうと疑問もありましたが、実際はケアプログラムが継続していて、もうこのケアなしには認知症のケアは考えられないとまでおっしゃっていました。本当に実行力のあるプログラムだと実感しています。 また、家族に対しては、このシステムを使っていただき、その結果について共有していただきました。一番近くで日々の介護に当たられることが多い御家族だから、共有して、一緒に理解していただいていました。 ○大熊委員長 ありがとうございました。 NPIというのは、どのようにはかるのですか。 ○西田委員 映像を御覧いただきます。 〔映像〕 ○西田委員 構造化された面接で、例えば妄想、幻聴と、興奮とか不安とか、11ぐらいの領域の項目に従って確認し、スコアをつけていきます。この一言一句、きちんとやりとりする、というルールになっています。 我々も使ってみましたが、慣れてくると読み飛ばすが、読み飛ばすと大体スコアが低く出てしまいます。複数人で確認しないと、見落としがおきてスコアが低くつきます。きちんとやり始めると、一時期は、評価の視点が備わってくるので点数が上がるように見えますが、それはきちんと発見できているということで、しばらくきちんとした対応によって下がっていくことになります。 ○大熊委員長 11項目をチェックするにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか。 ○西田委員 11の領域について、大体主質問が2つぐらいあります。最初から最後のケア計画まで1時間ぐらいかかりますが、慣れてくると、20分から30分以内で終わるようになってきます。 ○大熊委員長 スコアのつけ方はプラスマイナスですか。それとも、2、3、4、5のような感じですか。 ○西田委員 症状の頻度と重症度をそれぞれ評価して、それを掛け合わせた値です。スコア値は、パソコンでグラフになって出てきます。点数が高いほうが問題が大きいということになります。 ○大熊委員長 オンラインで行うイメージでしょうか。 〔映像〕 ○西田委員 非常にシンプルなもので、背景要因として最低限チェックする項目、ケア計画を短く入力していくことになります。入力した値、グラフ、ケア内容等を印刷し、スタッフ間で共有し、一致したケアを協力してやっていくことになります。 ○大熊委員長 スタッフのみんなが端末を持っていて、やりとりするのでしょうか。 ○西田委員 端末があればそれを見ながらやったほうが、目の前でビジュアル化されるので非常にいいという意見があります。しかし、会議をしている場所にパソコンがなければ、紙にメモをし、担当者がパソコン入力を行う事もあります。 ○大熊委員長 どなたか、ご質問はありませんか。 ○新里委員 私のところは、対応が上手であれば入院しなくてもいい人が結構多いですが、実際は、対応がまずい方が多いです。そういう方は、割と家族の対応がまずいです。この仕組みだと、ケアする人がいない場合はどうするのでしょうか。それがまず1つです。 先ほどの氷川きよしの話もありましたが、その人にとっての固有というのは結構あり、アイデアをいろいろ出してやっている心ある施設もあると思います。この仕組みが、画一的に広がるということは、恐らく全体的な水準を上げることになると思いますが、逆に、いろんな特色があってやっている介護施設にとっては負担になることはないかと思いましたが、その辺はいかがでしょうか。 ○西田委員 ありがとうございます。 後のほうの御指摘について、日本には職人的な介護のプロみたいなものが出てくるわけですが、職人を養成するとなると、研修に時間がかかり、広がらないという問題があります。 認知症については職人芸をきわめていくよりも、現場でその人の行動心理症状とコミュニケーションしながらケアを多くの場所で改善し、裾野を広げるというアプローチが必要ですので、そういう意味でこれはすごく有効であろうと考えています。 最初の御指摘を確認したいです。 ○新里委員 いわゆる介護サービスを利用していなくて、御家族の対応がまずい場合ではどうするのでしょうか。そういう方は割と多いと思いますが。 ○西田委員 家族の方にも協力していただいたほうが、一緒にやってみたほうが、もちろん効果は上がります。基本前提として、これまでの日本の研究では、家族を変えるという基本スタンスが鮮明に出ていて、家族が変わってくれれば状況はよくなりますが、そういう家族は拒否することが多いです。 ですから、そうならないように、まずは家族以外の支援を責任を持ってやってみる。それでうまくいって御家族にも協力していただけそうだったら、その後にお願いする、この順番はものすごく大事になってきています。僕らも国際学会で発表すると、家族をどう位置づけているか質問を受けます。言い方を間違えると、また失敗するという見方をされます。家族が変われば効果はもちろん上がりますが、家族の位置づけは非常に重要な分かれ目になります。 ○大熊委員長 例えばスウェーデンでは、そういう人の周りには支援するプロがいるけれども、日本は支援者がおらず、家族がぽつんといるような、難しいケースのほうが多いのではという御質問だったと思いますが。 ○新里委員 入院されて、結局、破綻する例はそういう例が多いように思います。このプログラムの前提として、多人数で検証して、パソコンが使えるというものがあります。そういうサポーターが周りにいる御家族、患者さんがどのくらいなのかというところです。 ○西田委員 このアプローチで全てを改善できるということではないので、独居で、なかなか難しいシチュエーションの方については、またほかの施策やアプローチと連携していくことで、さらにその可能性が出てくると思います。 日本は特別だということは余り感じません。スウェーデンはいろいろ公的なサービスが整っていますが、ほかの国はほかの国で多くの問題を抱えています。日本のアドバンテージというのも非常に感じるところであり、あまり日本の状況を悲観し過ぎないで、できるところからしっかりとやっていくことが非常に重要であろうと思います。 ○村中委員 貴重な発表を聞かせていただいて感謝申し上げます。とても勉強になりました。 今後の方針として、これを普及していく上でのお考えを聞かせていただきたく思います。 今のお話は、ニーズは何かを探るというお話であり、非常に人材育成に資するものだと思います。結局のところ、観察をして、それを共有し、共有を通して介護する人たちが平たい関係になります。同じ立場になって展開できるので、それまで黙っていた介護者の人も発言できるようになります。 そうすると、高齢者の人の声にならない声との対話もするし、同じチームの仲間との対話もします。その上でアセスメントをして、ケアをして、数字として出て、スタッフがこれはいけそうだという感じになります。 非常に人材育成になると思いますし、やる気がすごく向上すると思います。一方で、対話の分の時間がかかってくると思います。効率化を重視しているところですと、やりたいと思っているスタッフの方がいても、なかなか普及しないということになります。このプログラムを導入することによってメリットがあるわけですから、その分、導入したところには優遇するというものがないと、普及しづらいと思います。今後、普及に向けて何か分析していることはありますか。例えば時間で分析するなど。 ○西田委員 非常に重要な御指摘をいただき感謝申し上げます。 在宅の場合、スタッフが複数の事業所に散らばっている場合が往々にしてありますので、集まるという時間コストが非常に大きいです。これを減らすことが、すごく重要になります。来年度以降、東京都も在宅の関係者会議に参加する事業所に、例えばiPadを無料で配付して、スカイプのようなものを使えば、合同の会議がICTを使ってできるようになります。 移動コストを極力減らせるような方策を展開すれば、委員がおっしゃったような時間コストの計算も進められます。効率化のための費用対効果もきちんと分析していくということも予定しています。 また、いいケアと、悪いケアの差はどうするのか、というインセンティブの御指摘で、これは政策の問題です。本来は介護報酬なども絡んできます。国がどう受け取るのかが重要なポイントではないでしょうか。 昨年の骨太方針の中には、介護保険も成果指標に基づいて支払うということが閣議決定されています。 インセンティブについては、例えば、ここのデイサービスはこのプログラムを取り入れているとか、検討できたらと思っています。 ○大熊委員長 実際にスカイプ等を使って、うまくいった例はありますか。 ○西田委員 本格的なものは来年度以降に行う予定です。効果と時間、コストを勘案して、どれぐらい効果を維持しながら節約できるかを引き続きの課題として取り組んでいく予定です。 ○佐藤(恭)委員 非常に勉強になりました。ありがとうございます。 私どもあんしんすこやかセンターが、御家族や御本人様と関わっている中で、ケアについて感じるのは、ケアスタッフはもちろん、かかりつけ医の存在が大きいと思っています。先生のほうで、ケアについてのお話を御家族、御本人様にしていただけるのが大きいと思っています。 このプログラムについて今後、医師にはどのような形で知っていっていただいくのか、教えていただきたいです。 ○西田委員 ありがとうございます。 精神科の薬だけでなく、いろいろな薬によって、行動心理症状が増悪している可能性もあります。かかりつけ医の先生にも連携、御相談をしながらこれを展開していくことが重要になってくると思います。 しかし、ミーティングの場にかかりつけ医の先生方に毎回参加していただくのは現実的ではないため、スタッフの皆さんで議論したものを、かかりつけ医の先生にご相談していくことで情報共有を定期的に行い、活用していただけるといいと思っています。 医療との連携はもちろん大事ですが、ケアの部分でまずやれるところがないのかを探し、このシステムを使いながら整理を行っていきたいと思います。 ○大熊委員長 モデル事業のときに、たとえば、薬が悪影響を与えていて、医師にそのことを指摘するという場面はありましたか。 ○西田委員 研修のフォローアップの際に、皆さんに聞くと、どうやってかかりつけ医の先生に伝えたらいいのかが話題になりました。 スウェーデンでも、行政の補助期間よりも補助終了後に広がりました。これは効果があるという噂が自治体に広まって、取り入れられていった経過があります。そういう意味で、効果を実感する中で、ドクターにも周知が広がり、できるだけコミットしてみようという先生方も出てきてくださるのではないかと期待しています。 ○坪井委員 私は世田谷区にグループホームを1つと、認知症対応型のデイサービスを2つ持っています。認知症の人は症状がそれぞれ異なるため、10人いれば10人症状は違います。認知症の人が、家庭の中で家族と一緒に安心して暮らせていけるようにケアを行っているので、数値でその人の症状を評価することが、素晴らしいことかどうかわかりません。 実際の現場の中で、例えばAさんに対してどのようにしていくか、というのを、職員3〜4人で一緒にやったときに、時間が非常にかかると思います。初めは1時間でも何回かすれば20分ぐらいでできるのかもしれませんが。 私たちはケアについてOJTでミーティングをしていますが、このプログラムの数値が出たときに、現場で職員がどのようなケアをしているのか、このプログラムの実際の状況を見てみたいです。非常に興味があって、それが本当に有効ならば使ってみたいなと思っています。 また、現場で、人と人というのはもちろん必要ですが、このように、機械を使った介護に慣れていくワンステップにもなるのかなとも思います。 いろいろまた情報を教えていただければと思います。 ○太田委員 同じ質問になるかもしれませんが、確認のために教えていただきたいです。このプログラムについて、サポートチームの構成を考えた場合、基本は医師というよりは、ケアに当たる人たちがそのチームの構成を主体をなすという考えでよろしいでしょうか。 ○西田委員 そのとおりです。 ○太田委員 そうした場合に、医師はそこにどのように携わっていくのでしょうか。私たちはまさに開業医の団体、かかりつけ医の団体になるので、かかりつけ医の団体としては、このプログラムに関してどのように理解していくのがよいのでしょうか。 逆に、かかりつけ医の中でも認知症に関しては、東京都のサポート医、かかりつけ医という、認知症の養成講座を受けた人たちがいるけれども、チームのリーダー的に地域の自治体の中で携わっていくべきなのかどうなのか。私たち開業医にとってどういうふうにこれを考えて受け入れていけばいいかを、参考までに教えていただきたく思います。 ○西田委員 まず、ケアのスタッフの方々で一致した対応を試みて、どのように改善するのかを、まずやっていきます。何をやっているのかを、かかりつけ医の先生とも情報共有しながら、連携して進めているのが今の現状です。 今後、お薬のことなども関わってくるので、どのようにかかりつけ医の先生に御相談していくかという点は、大きなテーマになってくると思います。ただ、ドクターがいつも関わらなければできないという仕組みでは広がらないので、連携しながら、ケアを行っていくスタンスになっています。 ドクターの関与がどうあるべきか、もし御助言があれば。 ○上野委員 私は、このプログラムのサポートに関わらせていただきましたが、認知症になる原因は、医学的な疾患なので、医療の関与は欠かせないと思います。また、認知症の方々は、やはり生活上の支障があるので、そのサポートがメインになると思います。私自身はさまざまな地域の診療をさせていただいて、私の役割としては、質のいいケアを実現するために、できる限りのサポートをするという立場で関わらせていただいています。 ○大熊委員長 五木ひろしの例のような推理力はだんだんできてくるものなのでしょうか。 ○西田委員 このプログラムのいいところは、最初はどんな簡単なことでもいいからやりましょうということです。やってみて駄目だったら、それは違ったという大事な答えです。有効じゃなかった方法を1つ1つ整理していけるので、スタートは思いつくことでいいのです。 何が良いのかを考えることで関心が出てきて、みんなが情報をもっと集めようという気持ちになってきます。五木ひろしのカセットの話もそうですが、チーム全体でもっともっと本人を知ろうという気持ちになってくる、ということをよく伺いました。 情報が集まってきて、それによって仮説がさらに更新され、サイクルが回るから、入り口のアイデアはプアでもよいのです。御本人の行動心理症状とのコミュニケーションの中で改善し、続けていけば良くなっていく非常にいいアプローチです。 ○大熊委員長 協力チームのほとんどが、そういうところまで到達していますか。 ○西田委員 もちろんそれぞれのベースラインの技能や知識は違いますが、それぞれに改善が認められました。今データの二次解析をしていますが、大事なのは、一致してやるというエフェクトが大きいことです。 在宅はケアがばらばらになりがちなので、同じことをみんなでやる、一致してやることの効果量が非常に大きかったです。そういう意味で、共通の考え方をチームで共有していく仕組みがすごく大事です。 ○大熊委員長 多分そのチーム力はほかのところでもとても役に立つだろうと思います。 それでは、きょうのもう1つの大事な議題について、ご説明ください。 ○橋(裕)委員 では、次の議題の世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想の進捗状況についての御報告をさせていただきます。 資料4を参照願います。 世田谷区認知症在宅生活サポートセンターについては、平成24年6月より検討委員会を設置し、認知症になっても安心して生活できる地域社会の実現に向けて、早期対応体制の確立や在宅支援施策について検討をしていただき、平成25年11月に認知症在宅生活サポートセンター構想として策定しました。この構想については現在も区のホームページで公表中です。 次のUについて、区における現状と課題として、国の推計などでは65歳以上人口の15%に認知症の方がいらっしゃるという数値が現状出ています。新オレンジプランでも2025年には約700万人、65歳以上の方の5人に1人が認知症であるというような大変な推計も出てきている状況です。 一方、区では、先ほど部長が冒頭の御挨拶で申し述べたとおり、介護認定を受けられている方、約3万8000人のうち、認知症の症状があり介護や支援を必要とする方が約2万1700人、年間1000人弱ぐらいの推移で人数がふえてきています。 区の施策のこれまでの評価と課題としては、地域の理解が十分得られないために、認知症の方や御家族が孤立していたり、あるいは、効果的で適切な在宅支援のための認知症ケアなどが十分実施されていない現状なども指摘されているところです。 今後は早期対応、早期支援の充実や認知症そのものの予防、あるいは進行の遅延化、並びに御家族の介護負担軽減を図ることにより、住みなれた地域で生活を続けていただくことが世田谷区の目指す姿であり、重要な課題にもなっています。 センターの主な機能については、5つ機能を設定しています。(資料4) 1つが訪問サービスによる在宅支援のサポート機能であり、初期集中支援チームを初めとしてアウトリーチのサービスを実施することです。 2番目が、家族支援のサポート機能として、家族介護者のための勉強会や家族会の運営支援など、交流会などの開催なども想定をしています。 3番目が、普及啓発・情報発信機能で、在宅支援に関する実態把握や介護人材の育成などへの活用、情報発信の場でもある認知症カフェの運営の支援、さまざまな情報発信をしていくことを想定しています。 4番目が、技術支援・連携強化機能で、関係機関、ケアマネジャー、あんしんすこやかセンター職員の後方支援ができる機能を持つことで、スーパービジョンの機能を想定しています。また、関係機関、あんしんすこやかセンターなどを中心として、地域の連携会議なども今後開催をしていく、あるいは、地域で開催するものに協力をしていくことを想定しています。 5番目が、人材育成機能で、世田谷区は福祉人材育成・研修センターを持っていますが、認知症に関する専門研修の企画立案の協力、あるいは、専門講師の派遣等、区民人材の育成や活動支援として、あんしんすこやかセンターや介護事業所にも御協力いただいていますが、認知症サポーターの養成、サポーターステップアップ講座などを実施する予定です。 W、開設準備スケジュールは、平成29年12月現在で記載をしています。5つの機能については、センター構想を策定した後、順次事業化を進めることで、この間進めてきました。認知症在宅生活サポートセンターの施設そのものは、平成32年4月に梅ヶ丘病院跡地に開設する予定です。現在、梅ヶ丘駅北側の旧梅ヶ丘病院の跡地に、民間施設棟が先に着工していますが、区の複合棟にセンターが入る予定であり、複合棟も広範囲に掘削が進んでいる状況です。 「開設準備体制」については、認知症在宅生活サポートセンターの運営を委託する事業所の選定を今年度行いました。来年度、4月から一部委託を開始し、2年間かけて準備し、平成32年4月に梅ヶ丘で開設する予定です。 開設準備の経過として、個々の事業をもう少し詳細に記載をさせていただきました。 機能1から機能5までの平成25年度以前より実施している主な事業を、平成26年、27年、28年、29年度までの実施状況について記載をしています。 初期集中支援チーム事業など訪問サービスによるサポート機能については、平成27年度から本格実施をし、現在3法人に委託して運営をしています。平成30年度からは今般決まった委託事業所、1法人の委託体制になりますが、5地域で展開させていただく予定であり、その準備に取り組んでいます。 機能2の家族支援サポート機能については、医師会の先生方にも御協力いただき、もの忘れチェック相談会や委託の法人で御協力いただいているストレスケア講座などを実施してきました。 機能3の普及啓発・情報発信機能については、平成27年度から認知症カフェの開設支援事業を開始し、区の補助を使っていない団体もありますが、現在、区内24地区36カ所の認知症カフェが開設しています。今後は未整備の3地区を中心にさらに整備に取り組んでいく予定です。 また、認知症ケアパスを作成し、あんしんすこやかセンターなどの窓口で相談の際に御説明しながら配付しているほか、今年度増刷し、必要な機関等への配付を継続的していきたいと考えています。 機能4の技術支援・連携強化機能については、あんしんすこやかセンターの認知症専門相談員の連絡会や、医師による専門相談事業などを実施してきました。平成28年度からの新規事業として、東京都の補助事業を活用して、認知症当事者のための社会参加型プログラム事業を実施しています。 世田谷ボランティア協会にプロポーザルで委託をしており、区内の認知症デイサービス事業所、坪井委員の事業所でも御協力をいただいていますが、主に若年性認知症の方や、65歳以上の方でも比較的まだ軽度で、身体自立度などが比較的高い方を主な対象として、通常のデイサービスの活動プランに合わせて、地域に出ていくボランティアの活動や、軽作業など、御本人のそれまでの生活史の中で得意だったこと、あるいは、御本人がお好きな活動を取り入れていただき、地域の方たちと交流をしながら、御本人が達成感や満足感が得られるようなプログラムに参加していただきながら過ごしいただくというような趣旨のものです。 一例として、ボランティア協会の活動の手伝いで、バザーの品の値札付けなど。今年度は、農家の方に御協力をいただき、畑に苗を植える軽作業などを実施しています。 これまでの職歴から、パソコンで書類をつくることが得意な方などもいらして、デイサービスの場にパソコンを持ち込んで、簡易な、来月のプログラムの入力作業などの実施を継続しているデイサービスもあります。御本人も役割意識が持てて、続けたいといったような御感想などもいただいているところです。 次に、機能5の人材育成機能としては、認知症サポーター養成講座等の取り組みや、先ほど西田委員からも御説明がありました、東京都の事業に平成28年度から協力をさせていただき、区の介護事業所等の職員の人材育成の場として、このプログラムを活用する方策を、今検討しているところです。 開設準備体制としては、認知症在宅生活サポート室という事務組織を構え、この間準備を進めて、今年度は、運営事業者の公募選定を行いました。 施策評価委員会の中で、その進捗状況について、定期的に御報告させていただき、御意見をいただいてきたところです。 今後の課題については、1つは、センター機能に係る事業は計画どおり進んでいますが、今後増加する認知症の方や御家族のニーズに対応できる、専門人材の確保、あるいは育成、サービス等支援体制の整備をさらに進めていく必要があります。 2つめは、認知症サポーター養成講座の受講者は現在約2万6000人、下は小学生から、上は80代、90代に至るまで受講いただいていますが、さらに、地域でいろいろ活躍されている方の人材活用なども是非させていただきたく思います。 例えば、認知症カフェにまず御参加、見学いただいて運営ボランティアをしていただく、あるいは、あんしんすこやかセンターで見守り活動をするときのボランティアについても、サポーターのステップアップ講座の受講を勧めて、推薦をいただくなど、人材活用をさらに進めていくことと、認知症カフェの未整備地区を中心とした開設支援の取り組み、地域づくりをさらに進めていくことを挙げています。 3つめとして、区の第7期の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の中で認知症の在宅支援の取り組みをさらに充実し、認知症施策の総合的な推進に取り組むことで、先ほど部長も申し上げたとおり、現在、第7期の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定作業中であり、年度末の時点で公表させていただくことになりますが、大きく7つの目標を立てるうちの1つに、認知症の施策を挙げさせていただく予定になっています。 また、その情報等については、最後に御報告をさせていただき、皆様にも御覧いただける機会をつくってまいりたいと考えています。 資料4についての御説明は以上です。 では、続けて資料5を御覧いただきます。 認知症在宅生活サポートセンターの運営事業者の選定結果についての資料です。これは議会等で説明した資料の引用になっています。 主旨について、プロポーザル方式による公募を行い、平成30年度から委託する事業者を選定しましたので、御報告するものです。 選定事業者は、医療法人社団プラタナス桜新町アーバンクリニックです。 選定経過については、6月に選定委員会を設置し、7月に公募開始、8月に提案書を締め切り、10月に第2回選定委員会を開催し選定を行いました。 今回の契約期間は、平成30年4月から平成35年3月までの5年間の予定です。 選定方法等については、委員会を設置して、提案書の書類審査、ヒアリング審査等を行うとともに、財務審査を行い、総合的に評価をしたところです。 選定委員会の構成については、一覧のとおりですが、当委員会からも村中委員、加畑委員、行政側では高齢福祉部長と保健福祉課長の4名に御協力をいただきました。御協力いただいた委員の皆様に感謝申し上げます。 裏面に総合評価の結果等について記載がありますが、これまでのさまざまな取り組みの経験、あるいは実績等から勘案して、専門的な拠点として質の高い事業運営が期待できるとされました。また、採用計画など職員体制等についても支障がないと判断され、提案を採択する評価をいただきました。 今後のスケジュールについては、今年度中に選定事業者と契約締結に向けた各種の調整を行い、本年4月から契約を締結し、事業所への業務委託を開始します。平成30年度から平成32年度までの2年間については、この区役所から10分ほど歩いた西側のほうにある旧厚生会館の一室に事業所の専用室を構えて、区の担当所管とスペースは分けますが、業務を行っていただく予定です。平成32年4月には業務の引き継ぎを完了し、新たに梅ヶ丘拠点区複合棟内にて業務を開始する予定です。 資料5についての御説明は以上です。 ○大熊委員長 今の説明について、積極的なご意見をお願いします。西田委員の話に関連しても結構です。 ○太田委員 認知症に関する啓発についてですが、地域住民の中で学生など若い方々への啓発というのは、区として何か取り組みはされているのですか。 ○橋(裕)委員 現在、あんしんすこやかセンターに認知症サポーター養成講座の依頼をいただくと、出前で講座を開催しています。講座の実績報告では、大学、あるいは小・中学校、高校からも講座の開催依頼をいただき、実際に受講いただいています。 国が新オレンジプランを公表する際に、新オレンジプランは厚生労働省だけでなく、12省庁合同で策定をされており、文科省もその中に入っていました。文科省からは、教育機関に、是非、サポーター養成講座を学校で実施をしてください、実施に当たっては自治体の担当に相談をしてくださいと通知しています。 区としては、まずは区立小・中学校の校長会等に私どもが出向いて説明に入らせていただきました。学校は、お願いに行ったその年は、すでに計画ができているので、導入していただくのは翌年度以降になります。翌年、翌々年ぐらいには講座の依頼が増えて、あんしんすこやかセンターにも対応をお願いしてきました。校長先生も異動があるので、定期的に説明にいかなければと考えています。 委員御指摘の若い世代というのは、区でも非常に重要という認識をしておりますが、多くの高校生、大学生を対象とした講座は、なかなか実態として難しいところはあります。 ○太田委員 ありがとうございました。 今、製薬のメーカーなど、いろいろな企業から認知症に関する若い学生向けのシステムが出ているので、そういうものをうまく使えるとよいです。 2025年を迎えるときに、今の高校生はまさにその担い手になるわけです。中学生も、担い手に将来なる時代がやってくるという面では、若い世代を今から教育することが、将来の育成につながるという意味では重要だと思いますので、是非進めていただきたいです。 ○佐藤(恭)委員 認知症の事業で専門の事業がいろいろあり、要支援1、2の方の総合事業の中に地域デイサービス事業がスタートしていて、区内でも専門職ではない住民によるデイサービスが幾つか立ち上がっています。 この事業に関しては、要支援1、2あるいは事業対象者と呼ばれる方が介護予防のために通う施設で、その人たちが参加することで区から補助を出すという事業になっていますが、現状、要支援1、2だった方が要介護になるということもあります。 今お話ししているのは認知症の方の話だが、認知症でも初期の方というのは要支援1、2だったり、あるいは、認知症だがサービスにつながらないという方もいらっしゃいます。私は認知症ではないと言う方もいらっしゃいますので、そういったときに、あんしんすこやかセンターとして地域デイサービスにお願いしたりすることもあります。 そこで、力のあるスタッフの方々がいると、ご本人もすごく気に入って通いはじめます。運営側からすると、要支援じゃないと地域デイサービスに通えないので、ジレンマを抱えています。私どもも、認定申請して、要介護になったからあなたは通えないとは言えないのが、困っている部分です。 なるべく地域の中で生活をしていく、その人が通って楽しいと思えるところに通い続けられるという環境ができるといいと思っています。 認知症の施策で言うと、もう少し柔軟な考え方やサポートを考えていただけたらと思っています。 ○大熊委員長 ありがとうございます。 とてもうなずいていらしたけれども、松井委員何かつけ加えることはありますか。 ○松井委員 今のお話で、地域デイだけではなく、要支援と要介護のはざまで、あんしんすこやかセンターから、要介護になってケアマネがかわると、また余計に混乱したりする方に直面します。縦割りというか、どうしても乗り越えられない壁があると思いながら御利用者様に対応しています。 もう1つ、先ほどの西田委員のお話の中で、行政の補助サービスが終わってから実は地域に広がったというお話があったと思いますが、今回、世田谷区でもこの研究に参加した事業所が幾つかあると思いますが、この研究が終わった後についてはどうでしょうか。 ○西田委員 このプログラムは臨床試験のために、まずセットしたものですので、今、来年度からいろいろな自治体でさらに使いやすくするためのシステム改定をしています。来年4月から新しいシステムの参加を世田谷区と相談しながら進めていきたいと思っています。 ○松井委員 ありがとうございます。 ○大熊委員長 少し数を増やすことになりますか。 ○西田委員 世田谷区と御相談してですが、このプログラム自体は、研修に参加し、パソコンがオンラインにつながる環境があればよいので、必要な投資はそれほど多くないと思っています。我々としては広く普及し、使っていただきたいです。 ○橋(裕)委員 地域デイサービスについては、平成27年度からの国の法改正に沿って、要支援の方の通所と訪問のサービスが介護保険の給付のサービスから市町村が実施する地域支援事業に移行されたことによって、新たに始まったものです。 要支援の方と、従来の介護予防事業の対象になっていた方や、二次予防対象と判定をされた方が対象となる事業です。 運営者である地域住民の方たちはプロではなく、研修を受けて場づくりをしていただくという趣旨のものなので、運営としては区民同士の支え合い、助け合いという、比較的緩やかな運営形態をとるものでありつつ、いわゆる法に基づくサービスとして提供される、特に要支援の方と事業対象の方を対象にすることで、そこに少し現実的なギャップや難しさがあると考えます。 法に基づくサービスとして実施する意味では、国の指針、基準などもあり、それをクリアしないと認められないので、実際に要支援と要介護の壁を取り払うことがなかなか難しいのは正直あります。要支援の方たちが通わないと、逆に地域デイサービスとしてみなせないというジレンマもあります。 要支援から要介護になった方は、要支援じゃない、それ以外の参加者という考え方ができなくもないですが、参加者が要介護になり、その人しかいないということになると、地域デイとしては成立していませんとみなされるジレンマがあります。 地域デイサービスが、地域で使いやすいということがある一方で、認知症の方にフィットする事業とか、認知症の方の特性をうまく踏まえた事業かというと、やはり問題があると佐藤委員の御指摘のとおりと思っています。 区は、事業を新たに考えるときに、あんしんすこやかセンターやいろいろな方たちの御意見、御要望をいただくなど、みんなで事業をつくりあげるということを大事にしてきています。 皆さんのご相談やアイデアもいただきながら、認知症の方に合ういい事業はどういうものなのかを、今後も検討していきます。 ○大熊委員長 議事録の公表について説明を橋委員からお願いします。 ○橋(裕)委員 議事録の公表について皆様にお諮りをさせていただきます。 昨年度と同様に、本委員会の透明性や区民への情報公開の担保のため、本委員会の議事録及び資料については、会議後に概要版の議事録として、個人情報等の非公開部分を除き、公開することを考えています。議事録の公開に当っては、委員の御氏名については無記名とさせていただき、委員長及び区職員については役職名の記載とする予定です。 このことについて委員の皆様の御意見を頂戴したく思います。皆様、いかがでしょうか。 ○大熊委員長 委員の皆さんは責任を持って発言しておられるので、名前を入れていただきたいと思いますがいかがでしょうか。 ○橋(裕)委員 では、議事録については、案ができた段階で委員の皆様のほうにお送りをして御確認いただくので、その折に、改めて内容もごらんいただいた上で、もう一度確認もとらせていただければと思います。 ○大熊委員長 よろしくお願いします。ほかに何か事務局からはありませんか。 ○橋(裕)委員 では、その他の資料等について御報告をさせていただきます。 まず、1点目、「認知症あんしんガイドブック」です。昨年度作成し、今年度増刷をしています。もし各委員のほうで関係先に配付したい、あるいは、幾つかまとめて欲しいとなどの御用命がありましたら、事務局にお申し出いただきたく思います。 次に、認知症の施策を大きな柱の1つに掲げている第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定作業を今進めており、来月の2月15日号の「区のおしらせ」で、案ができましたというお知らせを掲載する予定です。 あわせて、昨年の秋頃に素案の段階でいただいたパブリックコメントの代表的なものについても「区のお知らせ」に掲載させていただきます。 また、区のホームページ等にも案を掲載しますが、図書館等、閲覧いただける箇所も含めて2月15日号の「区のおしらせ」で周知しますので、是非ごらんいただきたく思います。 ○大熊委員長 では、進行を事務局にお返しします。 ○橋(裕)委員 本日の全ての議事が終了しました。御協力に感謝申し上げます。 次回の日程について御案内します。次回、平成30年度については、年2回、夏頃と31年の1月頃の開催を予定しています。また、来年度からは委託業務が始まることを踏まえて、当委員会を認知症在宅生活サポートセンターの運営協議会の意味合いも含めた会議とさせていただきたいと思います。 改めて、事務局より日程調整の連絡を各委員にとらせていただくので、よろしくお願いいたします。 以上で本日の議事を全て終了します。皆様、遅くまでありがとうございました。 午後9時2分閉会