地域包括ケアの地区展開について〈砧地区モデル事業実施報告書〉【概要版】 ●第1部「世田谷区の地域包括ケアシステム」の取組みについて 地域包括ケアシステムとは ○高齢者が住み慣れた地域で住み続けられるよう@医療、A介護、B予防、C住まい、D生活支援が、日常生活の場で一体に提供されること。 ○各自治体が自主性や主体性を持って、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要。 世田谷区の目指す地域包括ケアシステム ○高齢者だけでなく障害者、子育て家庭など対象を広く捉えて推進し、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる地域社会を目指す。 ○高齢者や障害者が主体的に参加し、力を活かせる地域社会づくりを目指す。 ○元気な高齢者や学生、主婦など幅広い区民参加のもとで地域包括ケアシステムを推進する。 ○公的サービスは高齢、障害、子ども等の個別計画により計画的に推進する。 ○身近な地区で医療と介護、福祉サービス等が一体的に提供できる仕組みづくりを進める。 ○介護、障害、経済的な課題等の複合化した問題を抱える人に総合的な支援ができる仕組みづくりを進める。 ○相談支援の中から課題を発見し、区民や活動団体、事業者、NPO等との協働やマッチングにより新たなサービスを創出する。 ○地域ケア会議により地域の課題を把握・検討し、政策形成に結びつける仕組みづくりを進める。 地域包括ケアの地区展開の取組み ○出張所・まちづくりセンター、あんしんすこやかセンター、社会福祉協議会の三者が連携し、身近な福祉相談に対応するとともに、地域の人材や社会資源の開発・協働に取り組む。 ○モデル事業の実施 平成26年10月より砧地区、27年7月から5地区に拡充し、課題の整理、検証を行いながら3ヵ年で全地区展開を目指す。 地域包括ケアの地区展開の図があります。 ●第2部 砧地区モデル実施に向けての取組み 推進体制の整備 三者の役割 ○まちづくりセンター @相談窓口の充実、A三者の連携・調整、B区民や活動団体、支所や本庁との調整 ○あんしんすこやかセンター @高齢者だけでなく障害者や子育て家庭等への相談対象の拡大 A支援の必要な人の早期発見、解決への結び付け ○社会福祉協議会 @社会福祉協議会の事業に関する相談 A地域の人材や社会資源等の情報収集・整理、地区課題の把握等 体制の整備 ○砧地区モデル事業検討会と砧総合支所保健福祉3課コア会議で事業の検討 ○人員体制の強化 @あんしんすこやかセンター:専門職の常勤職員1名、非常勤職員1名を配置 A社会福祉協議会:地区担当職員1名と非常勤職員を配置 人材育成 ○モデル事業の勉強会を実施 モデル事業のイメージや課題共有、関係機関の役割を確認、意見交換 ○先進自治体への視察 千葉県庁、市川市地区中核地域支援センター(名称:がじゅまる) 平成16年から、対象者を限定しない総合相談事業を先駆的に実施 ○研修の実施 @母子保健、障害者、生活困窮者等の各種制度、事業説明、相談対応 A地域包括ケアシステムに関する学習会(大橋謙策氏:地域保健福祉審議会会長) Bあんしんすこやかセンターと社会福祉協議会の法人内研修 総合支所の取組み ○相談のつなぎ先の検討と明確化 ○相談支援マニュアルの作成 子ども編、障害編、生活困窮編、緊急・虐待対応マニュアルの作成 ○バックアップ体制の整備 あんしんすこやかセンターだけでは解決できない複合的問題ケースは、総合支所保健福祉3課が課題を整理し対応を検討 ●第3部 砧地区モデル事業の実施状況と課題 視点@:身近な福祉相談の充実 ○砧まちづくりセンター ・モデル事業を地域に定着させる取組み(地区内活動団体等への説明、情報共有等) ・三者の一体化とモデル実施により、相談内容が変化(福祉・高齢者の相談が増加) ○あんしんすこやかセンター ・モデル事業相談件数は、実数63件、延数158件 (平成26年10月〜平成27年3月) ・相談の約4割が、高齢者と同居する20〜65歳未満の子の「ひきこもり等の心の相談」や「精神疾患」 〈表〉対象者の属性(実数) 相談件数63、母子12、身体・知的12、精神15、こころの相談10、難病3、生活困窮6、その他5 ○社会福祉協議会 ・あんしんすこやかセンター、まちづくりセンターから紹介・連携する相談内容が増加  視点A:地域の人材や社会資源の開発・協働 ○地域で活動する人材や団体把握のために、下記の事業を実施した。 @メールマガジンによる情報発信 平成26年12月から毎週発行(イベントのお知らせや高齢者交流会の実施) A地域活動団体訪問調査 サロン・ミニデイ、高齢者施設等84件訪問(悩みや要望の聞き取り) Bワークショップの開催「何が必要?福祉の土台づくりinきぬた」 14団体の参加(顔の見えるネットワークづくり)    視点B:三者の連携体制の構築と運営 ○地区アセスメントミーティング、三者連携会議による地区の課題把握と検討 ○三者による連携対応 連携事例:あんしんすこやかセンター⇔社会福祉協議会 ひとり暮らしの身体障害者の女性が、夏の暑さで食事が摂れなく衰弱している状況を区民が通報。あんしんすこやかセンターと社会福祉協議会の職員が訪問し、社会福祉協議会の見守りサービスにつなげた。 連携事例:まちづくりセンター⇒社会福祉協議会 まちづくりセンターに家事の困りごとの相談が入る。すぐに社会福祉協議会職員に引継ぎ、ふれあいサービスの利用につなげた。 砧地区モデル事業の効果 @三者の連携により、身近な福祉相談の充実と区民ニーズへの即時対応が図られた。 A地域の福祉活動団体への調査やワークショップ等により、地域の人材や社会資源の把握が進んだ。 B三者連携会議等により、三者の職員間の情報共有と連携が促進された。 今後の課題 @相談支援を効果的・効率的に進めるための情報提供のあり方 A職員の相談対応のスキル向上とバックアップ体制の強化 Bプライバシー確保と個人情報の共有 C地域の人材・社会資源の開発の充実 Dモデル事業の周知の徹底 等 ●第4部 今後の展開に向けて 全地区展開に向けた基本的考え方 ○平成27年7月から出張所を含む5地区(池尻、松沢、用賀、砧(継続)、上北沢)で実施する。 ○平成28年度の全地区展開を視野においた検証を実施する。 ○全地区展開に向け、立地条件や施設・設備面、利用者数の差異にも留意した試行、検証を実施する。 砧地区モデル事業を踏まえた取組み 砧まちづくりセンターでのモデル事業の中から明らかになった課題や改善点を踏まえて、以下の取組みを行う。 @相談支援を効果的・効率的に進めるための情報提供のあり方 ○あんしんすこやかセンターへの保健福祉総合情報システム導入による基本情報の提供 ○あんしんすこやかセンターの利用者基本台帳の電子化による効率化と情報共有の促進 A職員の相談対応のスキル向上とバックアップ体制の強化、三者の共通理解の促進 ○あんしんすこやかセンター職員への専門研修の実施(具体的な事例をもとにした児童虐待防止、DV、精神症状などの研修等) ○相談対応マニュアルの整備(モデル事業で作成したマニュアルの充実) ○総合支所保健福祉3課のバックアップ体制の強化 ○三者の共通理解の促進(三者の情報共有のための会議、事務概要ガイダンスの実施) Bプライバシー確保と個人情報の共有 ○個人情報の取り扱いに関する研修の実施やマニュアルの整備 ○プライバシーや個人情報に配慮したレイアウト等の検討、実施 ○相談者の意向や相談内容に合わせた相談場所の配慮 C地域の人材・社会資源の開発の充実 ○地域の人材や社会資源の把握、共有(砧地区ではアセスメントミーティングを実施) ○研修等の実施(地域の社会資源を知る研修、福祉のまちづくり等の地域福祉研修) ○地域の活動団体同士の顔の見える関係やネットワークづくりの支援(ワークショップ等の実施) Dモデル事業周知の徹底 ○全区的な広報の充実(区のおしらせやホームページ等) ○地区の広報の充実(PRチラシの回覧や掲示板での活用、イベント・集会での周知等) ○新たな媒体による広報の充実(スマートフォンアプリや社会福祉協議会のメールマガジン等の活用、検討) ○地域で活動する区民や地域団体等との協力による周知 E全庁的な取組み ○三者の一体化整備の計画的な推進 ○地域の課題の政策形成への結び付け(地区、地域及び全区に体系化した地域ケア会議の実施) ○地域包括ケアの地区展開の全庁的な推進体制の構築(総合計画推進委員会や総合支所連絡会等)