世田谷区自殺対策基本方針 和元年10月 世田谷区 は じ め に 区長挨拶  「健康で安心して暮らしていける基盤を確かなものにする」とは、平成25年(2013年)9月に、今後20年間の公共的な指針として策定した「世田谷区基本構想」で掲げるビジョンの一つです。 さらに、この基本構想にもとづき区政運営の向こう10年間の基本指針として策定した「世田谷区基本計画」においては、分野別施策の「健康・福祉」として『だれもが住みなれた地域で健康で安心して暮らし続けられるよう、ライフステージや健康状況に応じた一人ひとりの健康づくりを維持できる環境や予防施策を推進すること、また、支援を必要とする人が身近な地域で相談し、適切な支援が受けられるよう地域包括ケアシステムの構築をめざす』としました。 世田谷区では、他の自治体に先駆け、平成22年(2010年)に学識経験者や保健医療関係者等と共に“こころの健康づくり”としての自殺予防対策を協議する「世田谷区自殺対策協議会」を立ち上げ、区民の総合的な自殺予防対策を推進するための様々な施策に取り組んできました。 区の自殺者数は、平成25年度(2013年度)以降は減少し、現在も、自殺死亡率は国・都よりも低い傾向にあります。その一方で、毎年100人以上の方が自殺によって尊い命を失っている実態が続いています。また、年齢別死因の統計(平成25年〜29年)では、20歳未満から30歳代まででは「自殺」が最も多く、20歳代の女性の自殺死亡率については、全国の水準を上回っています。そのため、若い世代を含めた区民のライフステージごとの自殺予防対策をより一層推進することが区の喫緊の課題です。 国は、平成28年(2016年)4月に自殺対策基本法を改正し、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」をめざし、都道府県や区市町村に「自殺対策計画」の策定を義務付けました。区においても、これまでの取組みに加え区民の総合的な自殺予防対策をより総合的に推進するために、この度「世田谷区自殺対策基本方針」を策定しました。 今後、「子ども・若者世代の自殺死亡率の減少」や「年間の自殺死亡率の30%以上減少」などの目標達成をめざし、若い世代に対するこころの相談窓口の案内にインターネット等を活用するなど、区民のライフステージごとに「生きることの促進要因」を増やすよう取り組みます。また、自殺対策を「生きることの包括的な支援」と位置づけ、区の福祉や保健の分野だけではなく、区民に接するすべての所管課や窓口が気づきの感度を上げ、より一層の支援につながるよう努めます。 さらに、区、区民や地域の関係機関・地域団体等の連携をより深め、「区民の生きる力を高め、気づきの力を育み、声かけつなぐ、支えあいの地域」をめざしていきます。 世田谷区長 保坂 展人  大野会長あいさつ 世田谷区自殺対策基本方針に寄せて  世田谷区の自殺対策協議会の座長に選任していただいて以来、私は、自殺対策の基本は地域に生活する人の孤立を防ぐことにあると考えてお手伝いを続けてきました。 どのような人でも一人になれば心細くなり、ちょっとしたきっかけで心が折れそうになります。そうなると将来に絶望しやすくなりますし、生きる気力がなくなって、ついには自ら命を絶つことになってしまうことになります。自ら命を絶つというのは決して特別なことではなく、誰でもが体験する可能性のあることなので。そうした状態になるのを防ぐためには、住む人たちがお互いに声をかけ、支え合う地域づくりが大切になります。その意味で、自殺対策は住民が孤立しないまちづくりであるとも言えます。そうした地域づくりができれば、その地域に住む人たち誰もが自分らしく生きていけるようになります。自殺対策は、その地域に住んでいる人誰もが健康に、そして自分らしく生きていけるようになるための、住民みんなの活動なのです。 世田谷区ではかねてから、「区民の生きる力を高め、気づきの力を育み、声かけつなぐ、支えあいの地域をめざす」という理念で活動を続けてきています。そのような視点から考えると、自殺対策は新たに何かを始める特別なものではないことがわかります。つまり世田谷区では、これまでの活動をさらに充実させ、お互いの活動が効率的に連携できるような仕組みを作っていくことが自殺対策になるのです。そして、そうした仕組み作りがまた、区民の方々の生活全般を支えることにつながってきます。 そのような考えのもと、自殺対策協議会は、区民を代表する方々を始めとして、警察や消防、交通機関、就労支援、法律、医療など様々な分野の方々に参加していただきながら、世田谷区の行政の方々と一緒に、多様な視点から検討を続けてきました。その成果をまとめたものが「世田谷区自殺対策基本方針」です。 世田谷区は今後、本基本方針に基づいてライフステージに応じた自殺死亡率の減少の目標達成をめざして「生きることの包括的な支援」を展開していくと聞いています。基本方針の策定をきっかけとして、区民の皆さまが行政や関係機関が一体となって、誰一人孤立することのない温かいまちづくりを目指していっていただくことを願っています。          世田谷区自殺対策協議会 会長 大野 裕  第1章 自殺対策基本方針の策定にあたって 1 世田谷区を取り巻く状況 (1)国の動向 わが国の自殺者数は、平成10年に急増しその後14年間連続して3万人を超えていました。国は、平成17年に「自殺予防に向けての政府の総合的な対策について」を取りまとめ、平成18年には「自殺対策基本法」を施行しました。また、翌19年には自殺対策基本法に基づき政府が推進すべき自殺対策の指針として、「自殺総合対策大綱」を定めました。その後、平成24年以降には自殺者数は3万人を下回りましたが、依然として先進諸国より高い水準にあります。 このような状況の中、国は、自殺対策を更に強化するため、平成28年に自殺対策基本法の一部を改正し、都道府県や区市町村にも自殺対策計画の策定を義務付けました。また、平成29年には、わが国の自殺の実態を踏まえて抜本的に見直した「自殺総合対策大綱」を閣議決定しました。その中では、当面の重点施策に「地域レベルの実践的な取組みへの支援を強化する」「子ども若者の自殺対策をさらに強化する」などを新たに加え、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現をめざしています。また、当面の目標として、先進諸国の現在の水準までに減少させることをめざして、令和8年までに、自殺死亡率を平成27年と比べて30%以上減少させることを数値目標に定めました。 (2)区のこれまでの自殺対策の取組み状況 世田谷区(以下、「区」という。)では、他自治体に先駆け平成22年に、区の自殺予防施策等を協議することを目的として、学識経験者、保健医療関係者及び地域保健について関係を有する区民、団体等を構成員とする「世田谷区自殺対策協議会」(以下、「自殺対協」という。)を設置しました。 また、区の総合保健計画「健康せたがやプラン(第二次)」の重点施策である「こころの健康づくり」において、区、区民、事業者が一体となって取り組む「総合的な自殺予防対策の推進」を掲げ、自殺対協等により自殺予防対策推進のためのネットワークを構築し、協議会メンバーとの協働や、自殺未遂者支援のための救急医療機関との連携により、自殺予防に係わる普及・啓発や人材の育成等、様々な施策、事業に取り組んできました。 2 区における自殺の特徴 (1)区における自殺の現状 「世田谷区自殺対策基本方針」(以下、「基本方針」という。)の策定にあたっては、いくつかの統計データから区の自殺の現状を多角的に検証するとともに、基本方針策定の基礎資料とするために実施した区民意識調査等のデータを活用し、区における自殺の現状や特徴を把握しました。 (2)統計データからみる現状 ○“人口動態統計”と“自殺統計”について 区における自殺の現状を把握するために、全国の自殺者に関する統計として厚生労働省がとりまとめる「人口動態統計」と警察庁がとりまとめる「自殺統計」の2種類の統計データを活用しながら、多角的に区の自殺の現状を把握しました。 ただし、それぞれ自殺者数のカウント方法や取り扱う情報については、若干の相違点があります。 「世田谷区自殺対策基本方針」での「自殺統計」は、計上地点は「住んでいた場所」、時点は「死亡時点」の統計データを活用した。 ○統計データの留意点 「自殺死亡率」とは、人口10万人当たりの自殺者数です。 単年度では母数が少ないため分析にばらつきが出る統計は5年間の合計で分析しています。 【「人口動態統計」からみる現状】 ○自殺者数の推移 区の自殺者数は平成22年までは平均150人ほどで推移していましたが、平成25年以降は減少傾向にあり、平成29年には109人と、過去20年の中で2番目に少なくなっています。しかし、男女別でみると、女性の自殺者数が年平均50人ほどと、横ばいで推移していることがわかります。 ○自殺死亡率の推移 区の自殺死亡率は平成10年の22.1をピークに減少傾向にあり、平成29年で12.2となっています。また、本区の自殺死亡率は国や都と比べて低い水準で推移しています。 ○年齢別死因の状況 年齢別の死因の状況をみると、「自殺」は20歳未満から30歳代の死因で最も多く、また40・50歳代でも2番目に多い死因となっています。 【「自殺統計」からみる現状】 ○男女・年齢別の自殺者数 区の平成25年から29年にかけての男性の自殺死亡者数は、20歳代から60歳代までが50人以上、自殺死亡率では20歳代と40歳代以降で20人以上となっていますが、全国の自殺死亡率よりは低い水準です。女性の自殺死亡者数は、20歳代から60歳代にかけて30人以上となっており、20歳代、50歳代と60歳代の自殺死亡率は全国の自殺死亡率よりも高い水準となっています。また、20歳未満の死亡者数のうち、高校生以下の死亡者は10人未満となっています。 ○自殺者の男女別年齢構成 区の平成25年から29年にかけての男性の自殺死亡者年齢構成をみると、都や国に比べて20歳代及び40・50歳代の割合が高くなっています。女性の自殺死亡者の年齢構成をみると、男性と同様に20歳代の割合が高くなっているほか、50歳代の割合が高くなっています。 ○自殺の原因・動機 自殺の原因・動機については、「健康問題」が322人で最も多く、次いで「経済・生活問題」が113人、「家庭問題」が100人、「勤務問題」が63人となっています(不詳を除く)。 ※遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機を3つまで計上可能としているため、自殺者の合計とは一致しません。 ※15歳以下では原因・動機が特定された数は非常に少ない傾向にあります。 ○自殺未遂歴の有無 自殺者のうち、自殺未遂歴があるのは全体の22%となっています。男女で比べると、男性が14%であるのに対して、女性は35%となっています。 ○職業の状況 自殺者の職業の状況では、男性は約半数が有職者であり、「被雇用人・勤め人」が4割程度となっています。女性の有職者は約2割となる一方で、「主婦」と「その他の無職者」で半数を占めています。 ○職業及び同居者の有無別自殺死亡率の状況 区の職業及び同居者の有無別の自殺死亡率をみると、男性では60歳以上の有職・独居を除いては、ほとんどが国の水準を下回っており、男女ともに、有職より無職、同居より独居での自殺死亡率が高い傾向がみられます。 女性では、20〜39歳の無職・独居の自殺死亡率が全国の水準を大きく上回っており、ほかに20〜39歳の有職・同居、60歳以上の有職・独居で国の水準を上回っています。 ○自殺の多い性・年代等の特性について 自殺総合対策推進センター が、区の自殺の実態を分析した「地域自殺実態プロファイル 」による5年間(平成25〜29年)の自殺者の多い集団の特徴が以下の表です。最も自殺者数が多かったのが40〜59歳の有職男性でした。2位と3位はいずれも60歳以上の無職の男女となっています。また、4位と5位でも無職の属性が続いています。 この結果から、同プロファイルでは、「勤務・経営」、「高齢者」、「生活困窮者」を、区の重点的に取り組む属性の目安として示しています。 なお、区で実施すべき具体的な施策については、相対的な自殺死亡率の状況、その他のデータ等を勘案して定めます。 推奨される重点パッケージ 勤務・経営 高齢者 生活困窮者 (3)アンケート結果からみる現状 ○区民意識調査の実施概要 基本方針の策定にあたり、区民の日頃の悩みやこころの健康の実態、関係機関の取組み状況や意見等を把握し、方針策定の基礎資料とするために区民意識調査や若者世代向けウェブ調査を実施しました。 ○区民意識調査の結果概要 @こころや体の休養取得状況 休養の取得状況の男女・年齢別では、年齢が高いほど「十分とれている」と「まあとれている」をあわせた「とれている人」の割合が高くなる傾向がみられる一方、年齢が若いほど「あまりとれていない」と「いつもとれていない」をあわせた「とれていない人」の割合が高く、男性の20歳代から40歳代にかけてと女性の20歳代・40歳代で3割台となっています。 Aこれまでに1度でも死にたいと思った経験の有無 これまでに1度でも死にたいと思ったことがあるとの回答は全体の29.8%でした。 男女別では、女性のほうが男性よりも高い傾向がみられ、性別・年代別の「思ったことがある」が高い順では、30歳代女性(48.3%)、20歳代女性(48.2%)40歳代女性(37.8%)、40歳代男性(36.9%)20歳代男性(34.8%)となっています。一方、参考値ですが、若者ウェブ調査では全体の63.1%が、1度でも死にたいと思ったことがあると回答しています。 B死にたいと思った理由・原因(「思ったことがある」と回答した方) 死にたいと思った理由・原因については、「家庭の問題」が41.2%で最も高く、次いで「仕事上の問題」が28.5%、「健康の問題」が26.4%となっています。 また、男女・年齢別の結果から、世代や性別によって以下のとおり問題・原因に特徴がみられます。 【男女・年齢別、世代や性別の問題・原因等の特徴】 ●20歳代女性は、「学校の問題」と「健康の問題」が高くなっている。 ●30〜70歳代女性は、「家庭の問題」が50%前後と高くなっている。 ●80歳以上は男女とも、「健康の問題」が55%となっている。 ●50歳代男性は、「仕事上の問題」が60%となっている。 ●20歳代男性と40歳代男性では、「経済的な問題」が4割弱となっている。 ●20〜30歳代男性は、「家庭の問題」と「学校の問題」が30%以上となっている。 家庭の問題の詳細については、「家族関係の不和」が52.5%で最も高く、次いで「子育て」が22.1%、「家族の介護・看病」が9.9%となっています。 健康の問題の詳細については、「こころの悩み」が55.2%で最も高く、次いで「自分の病気の悩み」が32.8%、「身体の悩み」が23.3%となっています。 経済的な問題の詳細については、「生活困窮」が47.8%で最も高く、次いで「借金」が25.0%、「失業」が18.5%となっています。 仕事上の問題の詳細については、「職場の人間関係」が52.8%で最も高く、次いで「仕事の不振」が31.2%、「長時間労働」が27.2%となっています。 C今後必要になると思う自殺対策 自殺対策で必要な取組みについては、「様々な悩みに対応した相談窓口の設置」が55.1%で最も高く、次いで「児童・学生に対する自殺対策教育の推進」が53.6%、「職場におけるメンタルヘルス」が45.5%となっています。 なお、「職場におけるメンタルヘルス」と回答した最も高い年齢は、男性と女性とも30歳代で、いずれも全体の6割を占める回答となっています。 D悩みやストレスを感じたときに助けを求めたり、誰かに相談したいと思うこと 悩みやストレスを感じたときに「助けを求めたり、誰かに相談したい」と思うかについて、「ややそう思う」が24.6%で最も高く、次いで「そう思う」が22.4%となっています。 男女・年齢別では、女性に比べて男性において「思わない」の割合が高い傾向がみられ、男性の20歳代では5割強、60歳代以上で4割台となっています。その一方で、女性の20歳代から60歳代にかけては「思う」の割合が5割以上となっています。 ○関係機関実態調査の実施概要 本方針の策定にあたり、精神科医療機関及び区の相談機関に自殺対応の実態や課題等を把握し、方針策定の基礎資料とするために関係機関実態調査を実施しました。 対象機関:区内精神科医療機関は東京都中部総合精神保健福祉センター が発行する「精神科・精神神経科・心療内科医療機関名簿(平成30年3月)」に掲載している区の医療機関(54か所) 相談機関は区内全てのあんしんすこやかセンター(27か所)・地域障害者相談支援センター(5か所) 調査方法:郵送配布・郵送回収 調査期間:平成30年10月30日〜11月9日 回収結果:発送数86通、回収数48通、回収率55.8% ○関係機関実態調査の結果概要 @自殺に関する相談や対応を行う際に困ったこと・難しかったことの有無 自殺に関する相談・対応で困ったこと、難しかったことの有無については、「ある」が医療機関で86.4%、相談機関で94.7%となっており、「ない」が医療機関で4.5%あるのみとなっています。 A今後連携を希望する関係機関 今後連携を希望する関係機関について、医療機関では「医療機関」が45.5%で最も高く、次いで「東京都立中部総合精神保健福祉センター」が36.4%、「警察」、「救急・消防関係」、「世田谷区総合支所保健福祉センター(健康づくり課)」が31.8%となっています。 相談機関では、「医療機関」と「世田谷区総合支所保健福祉センター(健康づくり課)」が68.4%で最も高く、次いで「世田谷区総合支所保健福祉センター(保健福祉課)」が57.9%、「東京都立中部総合精神保健福祉センター」が52.6%となっています。 B区の自殺対策において重要と考えられる対策 ●学校・職場等における対策について 学校・職場等において重要と考える対策については、医療機関では「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」が65.2%で最も高く、相談機関においても、「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」が64.0%で最も高くなっています。 ●周知・啓発、支援等について 周知・啓発、支援等で重要と考える対策については、医療機関では「家族や知人等を含めた支援者への支援」が60.9%で最も高く、相談機関では、「家族や知人等を含めた支援者への支援」と「地域における心の健康づくりの推進」が52.0%で最も高くなっています。 ●体制整備、人材確保・養成について 体制整備、人材確保・養成で重要と考える対策については、医療機関では「適切な精神保健医療が受けられる体制づくり」が73.9%で最も高く、相談機関でも「適切な精神保健医療が受けられる体制づくり」が88.0%で最も高くなっています。 (4)統計等からみえる区の課題 ○子ども・若い世代へのサポート 自殺者の年齢構成をみると、20歳未満、20歳代の割合では区は都や国に比べて高い傾向があります。また、区の人口動態統計からの年齢別死因の状況(平成25〜29年)では、20歳未満から30歳代にかけては「自殺」が最も多く、自殺死亡率では、20歳代の女性が全国水準を上回っています。 区民意識調査では、20・30歳代では女性の約半数が「これまでに1度でも死にたいと思ったことがある」と回答しています。さらに、若者ウェブ調査では、回答者全体の6割強が「これまでに1度でも死にたいと思った経験がある」と答えています。 その一方で、悩みやストレスを感じた時に、「助けを求めようと思わない」「あまり思わない」と20歳代男性の半数以上が回答しています。なお、助けを求める相手としては、「親」や「友人」といった身近な存在に相談するという回答が高くなっていることが判りました。 また、今後必要な若者への自殺対策として、「様々な悩みに対応した相談窓口の設置」(55.1%)が最も高く、次いで「児童・学生に対する自殺対策教育の推進」が5割以上と高くなっているほか、関係機関実態調査においても、学校・職場等で重要と考える対策については、「児童・生徒に対するSOSの出し方に関する教育の推進」との回答が上位に入っています。 今後は、若者がこころとからだを大切にして、人の助けを求めたり、相談することができるよう、子どものころから自殺予防対策につながる予防教育や、健康に関する普及・啓発、またそれらを支える環境等の整備に力を入れることが求められています。 ○勤労世代へのサポート 区の自殺者数の男女内訳をみると、女性に比べて男性が多い状況です。男性の自殺者数では、20歳代から50歳代の勤労世代が7割を占めています。男性の自殺者の職業をみると、「被雇用人・勤め人」「自営業・家族従事者」など、就労者は約5割にのぼります。 さらに、地域自殺実態プロファイルにおいても、有職の40・50歳代の男性の自殺者数が最も多いと報告されています。 一方、区民意識調査では、20歳代から50歳代の勤労世代の多くが、「こころや体の休養が十分に取れていない」「ぐっすりと眠った感じが得られない」と答えています。さらに、男性20歳代から40歳代の3割以上が、「死にたいと思った経験がある」と答え、その多かった理由のひとつは「仕事上の問題」でした。反面、男性の約4割が、悩みを感じたときに助けを求めたり相談することについて、「思わない」「あまりそう思わない」と回答しています。 このことから、周囲の人が異変に気づき速やかにサポートにつなげられるような仕組みづくりが必要です。また、区の場合は区内事業者の9割が中小企業である状況を踏まえたサポートが必要です。 ○生活困窮(無職等)者層へのサポート 国の自殺統計によると、自殺の原因・動機で最も多いのは「健康問題」ですが、2番目が「経済・生活問題」です。また、自殺者の属性としては、有職者に比べて無職者の自殺死亡率が高くなる傾向がみられます。 地域自殺実態プロファイルの主な自殺の特徴は、自殺者数の2位から5位まで「無職」で占めています。また、「死にたいと思った理由・原因」では、「家庭の問題」、「仕事の問題」、「健康の問題」に次いで「経済的な問題」が多くなっており、その内訳として「生活困窮」が多くなっています。さらに、国の自殺統計においても、「経済・生活問題」を原因として自殺した男性は2割強、女性では1割強となっています。 加えて、区民意識調査で「これまでに死にたいと思ったことがある」と答えた4人に1人の等価世帯の所得(世帯の所得を世帯人員に割り振った金額)は200万円以下となっています。 そのことから、無職等の生活困窮を抱える区民に対し、多面的かつ包括的な支援体制を整え、効果的にアプローチがすることが必要です。 ○高齢者へのサポート 平成25年から29年の自殺者の男女別年齢構成の割合において、60歳以上の男性は28.6%、60歳以上の女性は33.6%を占めている状況です。また、地域自殺実態プロファイルの主な自殺の特徴における順位では、60歳以上の無職・同居者ありの男性が2位、女性が3位となっています。 一方、今回の区民意識調査では、死にたいと思った理由・原因については男女ともに年齢があがるほど「健康の問題」の割合が高くなるほか、女性では「家庭の問題」が60・70歳代で約5割と高くなっています。さらに、「悩みやストレスを感じたときに助けを求めたり、誰かに相談したい」の問いに、70歳代、80歳代と年代が上昇するほど「そう思わない」という回答する割合が高くなっています。 今後、さらなる高齢社会が進展し、一層高齢者数が増加することが見込まれることから、将来を見据えた包括的な自殺予防対策を整える必要があります。 3 自殺対策基本方針の基本的な考え方 (1)基本方針策定の趣旨 区民の誰もが自殺に追い込まれることのない社会を実現するためには、区がこれまで取り組んできた総合的な自殺予防対策をより深化させる必要があります。 そのことから、区は関係機関・地域団体及び区民との連携をさらに深め、区民一人ひとりの生きる力を高め、気づきの力を育む「生きる支援施策の総合的な推進」をめざし、基本方針を策定しました。 (2)基本方針の理念 基本方針では、区の総合保健計画「健康せたがやプラン(第二次)」が掲げる基本理念の考え方「性別や国籍の違い、病気や障害などの有無にかかわらず全ての区民が生涯にわたり、身体の健康だけでなく、生きがいや自分の役割を認識し自分らしさを発揮しながら、区、区民、地域団体事業者などがそれぞれの役割を果たしつつ、協働により健康づくりを推進する、こころ豊かに暮らすことができる地域社会の実現」を継承します。 また、施策の実施にあたっては、「自助(個人の主体的な取組み)」「共助(個人をひとや地域が支える取組み)」「公助(個人の健康を支える環境づくり)」の3つの視点を踏まえた『基本理念』に基づき推進します。 【基 本 理 念】 ○区民の誰もが、自らの健康の保持・増進に向け、予防や改善に関心を持って取り組むことができる。また、多様な問題やストレス状況に置かれても、それぞれの環境に合わせてしなやかに対応できる生きる力を高めることができる。 ○地域社会の中では、人と人がつながりや絆で結ばれ、区民一人ひとりが生きがいや自分の役割を認識し自分らしさを発揮しながら、全ての区民がかけがえのない個人として尊重されるとともに、互いに支え合うことができる。 ○区は、区民が生きる力を育むためのこころの健康づくりを推進するとともに、自殺を単に個人の問題ではなく社会全体の課題と捉え、精神疾患や自殺等について偏見や誤解のない地域づくりや生きることの包括的な支援を促進するための環境整備を推進する。さらに、保健、医療、福祉にとどまらず、教育、労働ならびにその他の関連施策などとも、幅広くかつ有機的な連携を図り、生きる支援施策を総合的に推進する。 (3)基本方針のめざす姿 区は基本理念を踏まえ、関係機関・地域団体及び区民との連携をさらに深め、それぞれの役割を果たしつつ、一体となり生きる支援施策を総合的に推進し、基本方針の「めざす姿」の実現に向け取り組みます。 【め ざ す 姿】 「区民の生きる力を高め、気づきの力を育み、声かけつなぐ、支えあいの地域をめざして」 (4)基本方針の位置づけ 区は、自殺対策基法の改正や国の定める自殺総合対策大綱の趣旨を踏まえ、これまでの区の総合的な自殺予防施策の実績等に鑑み、区の自殺対策をより総合的に推進するため、今後の施策の方向性等をまとめ、基本方針とします。 なお、令和4年度以降を新たな計画期間とする「健康せたがやプラン(第三次)」の策定においては、基本方針に基づく施策をプランに反映させるなど、整合性を図ります。 (5)基本方針の期間 令和元年10月から令和9年3月までとします。 (6)基本方針の数値目標 国は、「自殺総合対策大綱」において、令和8年までに、自殺死亡率を平成27年と比べて30%以上減少させることを、政府の進める自殺対策の目標としています。また、自殺対策基本法では、自殺対策を通して最終的にめざすものは、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現と定めています。 区においては、自殺死亡率は国や東京都に比べ低く、自殺者数も減少しているものの、毎年100名を超える方が自殺によって命を落としています。 そのため、当面は、自殺者数を100名未満にすることと、将来の区民の自殺リスクを低減するために、子どもの頃から自殺の背景にあると考えられる様々な問題への対処方法や支援等に関する知識を身に付けることを働きかけ、子ども・若者世代の自殺死亡率が減少することをめざし、令和8年までに、国の方針を踏まえ、年間の自殺死亡率を平成27年と比較して、30%以上減少させることを目標とします。 ※自殺死亡率:(人口10万人当たりの自殺者数) 第2章 いのちを支える自殺対策における取組み 1 施策の体系 基本方針の「基本施策」は、全国の自治体で実施されるべき施策として「自殺総合対策大綱」において国が示している5項目に対し、区のこれまでの自殺対策の取組み等を照らし合わせ区分整理した施策です。 また、「重点施策」は、「自殺対策に関する調査(区民意識調査、関係機関実態調査、若者世代向けウェブ調査)」並びに国の「地域自殺実態プロファイル」や「自殺統計(警察庁)」等の統計データなどを踏まえ、今後、世代や自殺のリスク要因などに焦点を当てて、重点的に取り組む必要があると判断した施策です。そのため、保健、医療、福祉の分野にとどまらず、教育、労働並びにその他の関連施策などを、新たに自殺対策の取組みとして位置づけ、幅広くかつ有機的な連携を図りながら、「生きる支援施策」として総合的に推進します。 さらに、区の窓口など行政機関は地域住民の要請に応えて必要な福祉サービス等を提供する役割を常に担います。そのため、区民の自殺予防の一つとして、区の職員が区民が抱える問題等への「気づき」の力を高め、それぞれの業務を通じ適正な支援につなぐことなどを視点として、全庁的に現在の業務の中で取り組める内容等を整理したのが「生きる支援関連施策」です。 2 基本施策 (1)地域におけるネットワークの強化 ○今後の方向性 区民の自殺予防を区全体の課題と捉え、区は区民及び関係機関・地域団体との連携・協力していく仕組みづくりを深めるなど、ネットワークの強化を図り、それぞれの役割を果たしつつ、一体となり誰もが自殺に追い込まれることのない社会の実現をめざします。 (2)自殺対策を支える人材の育成 ○今後の方向性 自殺を予防するためには、身近な家族や仲間などが、本人からの「死にたい」という訴えや悩みを抱えているサインなどに気づき、早期に専門の相談窓口等につなぐことが重要です。 そのため、多くの区民が身近な人のちょっとした変化に気づけるよう、「気づき」の力を高め、声をかけ、寄り添い、必要な相談につなげることができるよう、ゲートキーパー講座等の人材育成に取り組みます。 ○施策と主な取組み (3)区民への啓発と周知 ○今後の方向性 自殺は深刻な社会問題であり、自殺に追い込まれることは誰にでも起こりうるこころの危機です。本人からの「死にたい」という訴えや悩みを抱えているサインを受け取った身近な方が、相談窓口につなげられることが大切です。 そのため、区の自殺対策の取組みや相談機関・相談窓口等の支援機関について、様々なイベント等の機会を活用して周知・啓発活動を実施します。 (4)生きることの促進要因への支援 ○今後の方向性 自殺の予防には、多様な問題やストレスなどの「生きることの阻害要因」を減らすだけでなく、区民が生涯にわたり生きがいや自分の役割を認識し自分らしさを発揮するなど、「生きることの促進要因」を増やすことが重要です。 そのため、悩みや困りごとを抱える区民が気軽に相談できる窓口の整備や居場所づくりを推進するとともに、自殺等で家族等大切な方を失い遺された人への支援などにも取り組みます。 (5)児童生徒のSOSの出し方に関する教育 ○今後の方向性 子どもの頃から自殺の背景にあると考えられる様々な問題への対処方法や支援等に関する知識を身に付けることを働きかけ、子ども・若者世代の自殺死亡率の減少をめざします。 そのため、困難やストレスに直面した児童・生徒が、親や先生、友達などに助けを求めることができ必要な支援につながるよう、区内の学校や教育の場において、児童・生徒を対象とした自殺予防等の啓発活動を実施します。 3 重点施策 (1)子ども・若者に対する支援の強化 ○現状と課題 区では都や国に比べて20歳代以下の自殺者の年齢構成割合が高い傾向があります。また、40歳未満の死因では「自殺」が最も多くなっています。さらに、20歳代の女性の自殺死亡率は全国水準を上回っています。 「区民意識調査」や「関係機関調査」では、若い世代ほど「(死にたいと)思ったことがある」と回答する割合が高く、また、悩みやストレスを感じた時の相談相手としては、「親」や「友人」といった身近な存在でした。さらに、今後必要な若者への自殺対策として、「相談窓口の設置」や「自殺予防につながる健康教育の推進」が重要とされています。 一方、若者ウェブ調査で、6割強が死にたいと思った経験があると答えていますが、その反面、悩みやストレスを感じたときに助けを求めたり、誰かに相談することについては消極的です。 児童相談所の開設にあたり、子ども・若者が人に助けを求めたり相談することをためらわずにできるように、自殺予防につながる健康教育の推進やこころの健康に関する普及・啓発、またそれらを支える地域づくりや、見守る環境等の整備に力を入れることが必要です。 ○今後の方向性 妊娠期からの切れ目のない支援をはじめとして、妊婦や子育て家庭の親や子どもたちが、迷わず助けを求めたり、気軽に相談できる地域づくりに取り組みます。 また、若い世代に対しては、自分の役割を認識し自分らしさを発揮できる機会を提供するなど、「生きることの促進要因」を増やします。  子どもや若者及びその家族が、相談や支援にアクセスしやすい環境づくりと、必要な支援が適切に届くよう支援機関の連携を図ります。 (2)勤労者・経営者に対する支援の推進 ○現状と課題 区の自殺者は男性が多くなっています。特に勤労世代の自殺者数が多い傾向にあり、男性の自殺者の約5割が就労者となっています。さらに、地域自殺実態プロファイルにおいても、同様の傾向がみられます。 一方、区民意識調査では、20歳代から50歳代の勤労世代の多くが、休養を十分に取れておらず、さらに、死にたいと思った経験で多かった理由のひとつは「仕事上の問題」でした。 このことから、勤労世代に対するメンタルヘルスをより推進することが重要です。 ○今後の方向性 仕事などの悩みを抱えた区民の変化に、家族や職場の仲間が、「気づく」力を高めるとともに、気軽に相談でき必要な支援が受けられるよう、地域の働く勤労世代へのメンタルヘルスの機能をより一層充実します。 (3)生活困窮者に対する支援の充実 ○現状と課題 自殺の原因・動機では「経済・生活問題」が、「健康問題」についで、多くなっています。また、職業についていない人のほうが、自殺死亡率が高くなる傾向がみられます。また、「地域自殺実態プロファイル」では、自殺者の2位から5位までの順位の属性は共通して「無職」が続いているという特徴があります。 さらに、「区民意識調査」による「死にたいと思った理由・原因」では、「経済的な問題」も高い位置にあり、その内訳としては「生活困窮」が多くなっています。加えて、区民意識調査で「これまでに死にたいと思ったことがある」と答えた4人に1人の等価世帯所得(世帯の所得を世帯人員に割り振った金額)は、200万円以下となっています。 そのことから、無職等の生活困窮を抱える区民に対し、多面的かつ包括的な支援を達成できる体制を整え、効果的にアプローチすることが必要です。 ○今後の方向性 生活困窮等の「経済的な問題」を抱える区民が、多面的かつ包括的な支援を効果的に受けられるように、様々な相談窓口等での「気づき」の力を高めるとともに、相談できる機会を提供します。また、生活支援や職業的自立支援の機会を通じ、自立した生活を送れるよう働きかけます。 (4)高齢者に対する支援の充実 ○現状と課題 自殺死亡者の男女別年齢構成をみると、60歳以上の男性は28.6%、60歳以上の女性は33.6%を占めている状況です。また、主な自殺の特徴における順位では、60歳以上の無職・同居者ありの男性が2位、女性が3位となっています。さらに、高齢者では死にたいと思った理由・原因については「健康の問題」の割合が高くなるほか、女性では「家庭の問題」も高くなっています。 一方、今回の区民意識調査の結果では、高齢になるほど、悩みやストレスを感じたときに自力でどうにかしようとする傾向がうかがえます。また、相談相手については、高齢になるほど身近に相談できる機会が少なくなっていることも、垣間見られます。 今後、一層高齢者人口が増加し高齢社会が進展することから、高齢者に対する自殺対策はより重要になってくるため、地域で相談できる仕組み、支えあう仕組みを整える必要があります。 ○今後の方向性 高齢者とその家族が、地域の中で社会的に孤立することなく、生きがいや自分の役割を認識し、自分らしく暮らせる地域づくりに取り組みます。また、将来の高齢社会の進展を見据え、高齢者を支援する関係機関相互の連携を強化し包括的な支援体制づくりを推進します。 4 生きる支援関連施策 区の自殺対策は、福祉や保健の分野だけでなく、区民に接するすべての所管や窓口が、区民が抱える問題やその背景となる要因にいち早く気づき、適正な支援につなぐなど、庁内が一丸となって取り組む必要があります。 そのため、庁内すべての事業から自殺の予防やこころの相談につなげられる“生きることの包括的な支援”の状況等を幅広く把握するため、全庁を対象とした自殺対策関連事業の調査を実施し、回答のあった施策・事業等を整理したうえで、基本方針に関連施策として位置づけます。 また、位置づけられた事業については、既存の「職員向け・世田谷区自殺予防の手引き 相談窓口一覧」等に反映させ、相談窓口一覧の更新の機会を活用して継続的な生きるための支援につなげていきます。 (1)相談支援の充実 (2)区民への情報発信と啓発の充実 (3)自殺対策を担う人材の育成 (4)地域の見守りや支援体制の構築 第3章 自殺対策の推進体制 1 世田谷区の自殺対策の推進体制 ○世田谷区自殺対策協議会 学識経験者、医療機関、関係行政機関、相談機関、商工会議所、交通事業者等、多種多様な委員から構成される「自殺対協」において「自殺対策推進本部」の機能を担い、基本方針の進行管理を行うとともに、自殺対策の関係者ネットワークの機能も同時に担い、区の自殺予防施策の協議・推進を図ります。 また、協議会の傘下に「自殺対策計画推進部会」「自殺未遂者支援部会」を設置し、区の自殺対策に関する取組みについて検討していきます。 ○世田谷区自殺対策連絡会 庁内関係所管管理職で構成し、区の自殺対策の取組みや協議会等の議論について検討及び情報提供を行います。 第4章 おわりに(今後の方針と新たな課題)  自殺は、その多くが追い込まれた末の死といわれています。人を自殺に追い込む背景には、こころの問題だけでなく、病気や生活習慣などの健康問題や失業等による経済的な問題から仕事、家庭の問題に至るまで、様々な社会的要因があることが知られています。区の自殺対策を効果的に進めるためには、自殺企図の個々の要因のみに着目するだけではなく、広く地域の自殺の現状を正確に把握する必要があります。 基本方針の策定にあたっては、各種統計データから区の自殺の状況を分析するとともに、「世田谷こころの健康に関するアンケート調査」として、区民4,000人を対象にした「区民意識調査」や若者世代向けの「ウェブ調査」、区内精神科医療機関・相談機関の86機関を対象とした「関係機関実態調査」を実施いたしました。 また、調査結果に基づき、区の自殺予防施策等を協議することを目的として設置した「自殺対協」において、これまでの区の総合的な自殺予防施策の実績等に鑑み、区の自殺対策をより総合的に推進するための議論を進めるとともに、世田谷区議会のご意見なども伺いつつ、基本方針の策定を進めてまいりました。  その結果、「子ども・若者に対する支援の強化」「勤労者・経営者に対する支援の推進」「生活困窮者に対する支援の充実」「高齢者に対する支援の充実」の取組みを重点施策と位置づけ、区が全庁をあげて自殺対策に取り組むとともに関係機関・地域団体及び区民がより連携を図り、生きる支援施策を総合的に推進することで、基本方針のめざす姿である「区民の生きる力を高め、気づきの力を育み、声かけつなぐ、支えあいの地域をめざして」の実現に向け取り組むことが重要であるという結論に至りました。今後、この基本方針に沿い、その実現に取り組んでまいります。  また、今回の議論では、性的マイノリティの悩みや苦しみ、生き辛さを抱えた若者、引きこもりの問題など、新たな課題についても数多く議論されました。基本方針では、これら新たな課題に対しては、まず庁内での横のつながりを広げ、課題を共有しつつ、「基本施策」や「生きる支援関連施策」として対応することとしました。さらに、今後、すべての人に支援が行き届くようにするための手法等について、引き続き関係機関・地域団体及び区民との連携のもとに検討してまいります。  策定にあたり、調査にご協力いただいた区民、関係機関の皆様、真摯にご議論いただきました、区議会並びに「自殺対協」の委員の皆様に厚くお礼申し上げます。 世田谷区自殺対策基本方針 令和元年10月発行 発行 世田谷区 編集 世田谷保健所健康づくり課 〒 154-8504 東京都世田谷区世田谷4−22−35 TEL 03(5432)2947 FAX 03(5432)3022 (広報印刷物登録番号 No.1774)