障害者施設整備等に係る基本方針 概要版 基本方針策定の経緯・目的  第5期世田谷区障害福祉計画(平成30(2018)〜平成32(2020)年度)では、特別支援学校卒業生の進路希望や東京リハビリテーションセンター世田谷・障害者支援施設梅ヶ丘(民間施設棟)からの地域移行等を踏まえた施設需要に対応するため、通所施設(生活介護・就労継続支援B型)とグループホームの整備を重点課題として取り組むこととしている。  しかし、施設整備は中長期にわたる取組みが必要となることから、今後の障害者の増加を踏まえながら、障害者施設の需要、施設整備の方策、障害者の高齢化・重度化等への対応の考え方を整理し、施設需要への的確な対応を図っていく必要がある。  こうしたことから、学識経験者や施設運営事業者等で構成する「世田谷区障害者施設整備等に係る基本方針検討委員会」で取りまとめた検討素材をもとに、令和元年11月に地域保健福祉審議会へ「障害者施設整備等に係る基本方針策定にあたっての考え方について」を諮問し、令和2年7月に答申を受けた。  本方針はこの答申等を踏まえた第5期障害福祉計画における施設整備の着実な進行と、将来にわたる障害者施設整備等のための基本方針とし、今後の障害福祉計画等に反映させ、障害者施設等の整備を行っていく。 施設整備に係るこれまでの取組み状況 (1)取り組み状況  ・昭和57年:「福祉総合計画」策定、昭和58年「世田谷区障害者施策行動10ヵ年計画」策定   →平成4年度までの計画期間に総合福祉センターを含め14施設を設置  ・平成4年度:「世田谷区通所施設利用調整会議設置要綱」設置   →通所施設利用希望者の公正かつ円滑な受入の調整、以後区立障害者通所施設整備に取り組む ・近年:公有地(区有地・都有地)を活用した社会福祉法人等による民設施設の公募選定事業者による整備誘導 (2)過去5年の施設整備状況  平成30年:ニコニコみやさか(民間物件活用)生活介護         コイノニアかみきた(都有地活用)生活介護・就労継続支援B型・グループホーム 平成31年:東京リハビリテーションセンター世田谷・障害者支援施設梅ヶ丘(区有地活用) 地域生活支援型入所施設・生活介護・短期入所・自立訓練他 令和 元年:さわやかはーとあーす世田谷(民有地活用)就労継続支援B型・就労移行支援・グループホーム   令和 2年:区立世田谷福祉作業所移転改築 生活介護の追加実施  ●施設所要量想定(単位:人) 生活介護         平成30年4月(2018年)平成31年4月(2019年)令和4年4月(2022年)令和5年4月(2023年) 令和12年4月(2030年) 利用者数(見込み)    622         636   731         761         975 定 員 数        516         626         641         641         641 不 足 数       △106         △10  △90 △120  △334 就労継続支援B型 平成30年4月(2018年)平成31年4月(2019年)令和4年4月(2022年)令和5年4月(2023年) 令和12年4月(2030年) 利用者数(見込み)    620 605         687         712         897 定 員 数        602         641         681         681         681 不 足 数        △18 36   △6 △31  △216 重点的に取り組む課題  @施設所要量の確保   今後の通所施設の利用希望に対応するため、中長期的な需要見込みと施設所要量を精査し、その確保を図ることが必要である。    A医療的ケアを含む重度障害者への対応   今後、多くの医療的ケア等への対応が必要な施設利用希望者が見込まれるが、対応可能な通所施設は限定されているため、その拡充を図る必要がある。    Bグループホーム整備等   東京リハビリテーションセンター世田谷・障害者支援施設梅ヶ丘からの地域移行先や本人が望む自立した地域生活を送る居住の場所、いわゆる親亡き後を見据え、個々の状況に応じたグループホームの整備が必要である。    C障害特性に応じた日中活動の場の整理   障害特性に応じた日中活動の場の整備の必要性について、実態を把握し整理するとともに、日中活動の場の展開を行う必要がある。 基本方針対象期間 中長期的な方針として、令和12(2030)年度までの10年間の施設需要に対応するための方針とする。 ※今後の障害者数の推移や制度改正等社会情勢の変化等を見極めながら必要に応じて見直しを行う。 今後の整備について  所要量想定や方策を踏まえ、第6期〜第8期の障害福祉計画や公共施設等総合管理計画等と整合を図りながら、整備目標やスケジュール、整備する施設の個別計画等を明らかにしていく。  具体策  @通所施設、Bグループホーム(※共通)  ・都営住宅等跡地活用による新規施設整備  ・他施設の見直し時期に合わせた活用転用等(区内公有地の有効活用)  ・運営事業者の負担軽減策の導入  ・既存施設の定員増員、既存事業からの事業転換(@通所施設のみ)    A医療的ケアを含む重度障害者対応施設 ・新たに1か所程度の医療的ケアを含む重度障害者対応施設整備(都営住宅等跡地活用) ・運営事業者の負担軽減策の導入  ・既存医療的ケア受け入れ施設からのノウハウの蓄積・発信  ・人材の確保・育成の推進    C障害特性に応じた日中活動の場  ・通所施設の機能転換や機能付加等  ・それぞれのライフスタイルに応じた日中活動の展開   重点的に取り組む課題 T.施設所要量の確保   基 本 的 方 向 性      ■地域ごとに必要な施設所要量の確保   【令和12(2030)年度までに必要な所要量想定】   生 活 介 護 =340人分程度   就労継続支援B型=220人分程度     1 小規模・分散化による施設整備       住み慣れた「地域」において通所施設が利用できるよう、利用者の障害特性や希望を尊重し、各地域の障害者数や施設数を勘案しながら、小規模・分散化の視点で施設整備を図る。    2 施設利用者の移行支援     就労継続支援B型施設に関しては、就労移行支援や就労定着支援の充実を図る一方、生活介護施設を含むいずれの施設利用者も希望により介護保険事業所に移行できるよう、障害者施設と介護保険事業所との相互理解、連携・交流を進める。     具 体 的 方 策      1 小規模・分散化による新規施設整備の促進と既存施設の有効活用 ・区内5地域の需給バランスを勘案した施設整備を図る。 ・利用者の障害特性や希望する活動・支援を尊重した多様な施設整備・運営を図る。 ・既存物件の有効活用による機能転換や新規施設整備を行うとともに、利用者が自ら希望に合った施設利用が可能となるように施設の特徴や魅力を発信していく。 (1)既存施設の有効活用 ・区立施設では、施設所要量の確保に当たり、地域における需給バランスの調整や、医療的ケアを含む重度障害者への対応、利用者ニーズに合わせた支援プログラムへの取組みなどのモデル的役割を担う。 ・民立施設では、通所施設運営事業者の意向を伺いながら有効活用について検討する。有効活用が可能な場合、事業者の職員の定着や重度障害者の受け入れ等のための補助制度や区から事業者への新たな人材支援・運営支援策の必要性や手法を検討する。 (2)新規施設整備 ・一定程度の規模が期待できる公有地活用については、利用者の状況に応じたサービス間移行や多世代の利用等を含め多様な選択肢を提供するため複数機能を持った多機能型施設とし、併せて、重度障害者対応のグループホーム併設を検討する。 2 施設利用者の移行等の支援 ・就労促進にあたっては、令和2年度から開始した週20時間以上の就労以外の多様な働く場を作り、働きたい方をつないで働き続けられるように支援するせたJOB応援プロジェクトも活用していく。 ・介護保険事業への移行としては、利用者に対し、日頃から介護保険事業の支援内容等を情報提供するとともに、利用者の意向を確認しておく事が重要である。併せて障害者施設、介護保険事業所との連携・交流を図り、介護保険事業所を利用する際の不安感払拭の実現のため、ケアマネジャーへの障害理解促進を図る。 U.医療的ケアを含む重度障害者への対応  基 本 的 方 向 性 ■身近な地域における受け入れのための環境整備 【令和12(2030)年度までに必要な医療的ケアを必要する利用者所要量想定】 区内特別支援学校の卒業生=60人分程度 既存施設利用者=100人分程度(最大) 1 医療的ケア等の対応へのノウハウの蓄積などを図るため、当面は三宿つくしんぼホーム等の現在の受け入れ施設や、東京リハビリテーションセンター世田谷・障害者支援施設梅ヶ丘での受け入れを行う。 2 医療的ケアは医療行為であり、高度な専門的な知識・技術、実施にあたっての判断力等が求められるため、利用者の受け入れに必要な施設への財政面や環境整備などの支援策、医療的ケア等の対応ができる人材の確保・育成を図る。 具 体 的 方 策  1 増加が見込まれる医療的ケアを含む重度障害者の施設整備 把握した所要量から、現状の医療的ケア受け入れ施設だけでは、今後増加する特別支援学校の卒業生と既存施設利用者の需要への対応が困難となる見込みであるため、新たに1か所程度の医療的ケアを含む重度障害者対応施設を整備する。なお、整備にあたっては、公有地活用による財政負担軽減を行うとともに、医療的ケアの受け入れには、必要な設備支援、運営にあたっての看護師確保や職員研修のための補助制度等が必要となることから、事業者負担軽減策の手法について整理検討し、実施する。また、既存施設についても、同様に事業者負担軽減策の手法について整理検討し、実施する。 2 拠点となる施設から地域の施設へのノウハウの継承 区立の医療的ケア受け入れ施設や東京リハビリテーションセンター世田谷・障害者支援施設梅ヶ丘を中心にノウハウを蓄積し、地域の施設へ発信していく。ただし、身近な地域の施設において医療的ケア受け入れを進めるため、ノウハウの蓄積・継承に留まらず、ハード面(機器・設備の整備、支援スペース等)や受け入れ体制(支援者の配置や研修等)などの環境整備を進める。 3 医療的ケア等が必要な方の支援に携わる人材の確保・育成 世田谷区福祉人材育成・研修センターの活用や成育医療研究センター等との連携により、支援する人材の確保・育成を推進する。 V.グループホーム整備等 基 本 的 方 向 性 ■障害特性や地域資源に配慮した整備 【令和12(2030)年度までに必要なグループホーム所要量想定】 中軽度障害者対象=200人分程度(最大) 重度障害者対象=300人分程度(最大) 1 通所施設や医療機関等の地域資源と連携した運営を視野に地区を意識しながら整備する。 2 中軽度障害者対象のグループホームの整備については、不動産事業者等との連携による民間事業者の整備促進を図る。 3 重度障害者対象のグループホームの整備については、「日中サービス支援型グループホーム」整備を含めた促進策を講じ、整備促進を図る。 具 体 的 方 策  1 地域資源と連携した整備・運営 ・居住の場であるグループホームについては、地区を意識しながら通所施設や医療機関等の利用可能な地域資源の状況を勘案し整備する。 ・居住支援協議会と連携し、要配慮者の居住支援策の検討や情報共有を図る。 ※精神障害者などの区外施設入所者の地域移行希望については、区内の施設整備状況等多様な選択肢を丁寧に提供しながら、意向確認を継続的に行っていく。 2 中軽度障害者対象のグループホームの整備促進 ・空き家の活用も視野に担当所管や不動産団体等との連携強化を図るとともに、新規グループホーム運営希望法人等と活用可能物件とのマッチングを更に進める。 3 重度障害者対象のグループホームの整備促進 (日中活動への参加が可能な重度障害者:230人、日中活動への参加が困難な重度障害者:70人) ・公有地活用により財政負担の軽減を図り整備する。また、重度障害者対象のグループホームは、国で示す報酬や職員配置では運営が難しいことから、必要な職員配置等を含む、新たな補助制度の事業者負担軽減策を整理・検討する。 W.障害特性に応じた日中活動の場の整理 基 本 的 方 向 性 ■障害特性に応じた日中活動の場の必要性の整理 定期的通所が困難な精神障害者等、障害特性に応じた日中活動の場の必要性について整理し、日中活動の場の展開を行う。 具 体 的 方 策  1 通所施設の機能転換や機能付加等 ・既存の通所施設がそれぞれの特色を活かしながら、個々の特性や状況、ニーズに沿った柔軟な受け入れ、通所施設の機能転換や機能付加等について、通所施設運営事業者の意向を伺いながら検討を進める。 2 日中活動の場等の整備 ・従来の通所施設とは異なる日中活動の場の整備や、地域施設の活用、地域の社会福祉協議会と連携した居場所(カフェ等)の展開など、それぞれのライフスタイルに応じた日中活動の展開に取り組む。