表紙 (おじいさん) 障害があってもなくても すべての人が ともに生きるまち 空高く、鳥のおながが、飛んでいます。 車いすに乗ったおじいさんと、その車いすを押す女の子、一緒に歩いている男の子の3人は、これから町を見にいきます。 3人の近くには、町の方向が書かれた看板があります。看板の横で、猫も手を伸ばして町の方向を教えてくれています。 本文 (おじいさん) 1ページ、まちには、いろいろな障害がある人が暮らしています。 町には障害のある人が困る、壁という意味のバリアもたくさんあるので、お手伝いや工夫が必要だね。どんなことがあるか確認してみよう。 このページでは、視覚障害(見えない、見えづらい)、肢体不自由(手、足などの体の障害)のかたが、困りやすい内容や、ヘルプを求めていることを紹介しています。 このページの下の方には、まちが描かれています。 信号のある道路、カフェなどがあります。 ページの上の方には、それぞれの場所で起こりやすい困りごとが、イラストで説明されています。 1、横断歩道はドキドキハラハラ 目が見えない人、見えづらい人は、信号が青になったことや、わたる方向がわからなくなることがあります。 案内するときは、「お手伝いしましょうか。」、「一緒にわたりましょうか。」と声をかけて、肩か、腕につかまってもらい、少し前を歩きます。「あちらに」「そこに」と説明するのではなく、「右側に花壇があります」などと具体的に知らせます。 2、車いすは、低い段差でも通れない 車いすで通るためにはスロープが必要です。 イラストでは車椅子に乗った人が、入口に段差のあるカフェのまえで、こまっている様子が描かれています。 3、盲導犬はお仕事中 盲導犬は、進む方向や危険を知らせる大切なお仕事中です。触ったり、じっと見たりしてはいけません。 (おじいさん) 2ページ、このページでは知的障害(学習などの発達がゆっくり)、視覚障害、聴覚障害(聞こえない、聞こえづらい)のあるかたが困りやすい内容を紹介しています。 左のページからまちの絵がつながっています。 八百屋や、バス停などがあります。 困りやすいこと 4、お買い物で困ってしまう 会話や計算が苦手な人にはお手伝いが必要です。 店員が商品を持って「何が欲しいですか。」と聞くことや、絵を準備して、指さして伝えてもらうこともできます。 イラストでは八百屋のレジで手のひらにお金をのせてこまっている人がかかれています。 店員さんが一緒に数えるお手伝いをして、次のように言っています。 「400円です。1、2、3、あと100円玉がもうひとつです。」 5、メニューが見えない 目が見えない人は、壁に貼ってあるメニューやタブレットは読めないので、声で読み上げたり、点字メニューを用意したりします。 次に、下のイラストでは、白杖を持った人が、点字ブロックの上に置かれた三輪車につまづいています。青信号を渡ろうとしている、耳の聞こえない人が、それに気を取られて、近づいてくる救急車に気づいていません。 6、車の走る音が聞こえない 耳の障害があって後ろから来る車の音や、緊急車両のサイレンが聞こえず、危険な場合があります。危ない時は周りの人が知らせなければいけません。 このまちにはいろいろな設備の工夫があります 音響装置つき信号機、音が鳴って、信号が変わったタイミングやわたる方向を知らせます。 自動ドア、手を使わずにドアを開けられます。すべての人が使いやすい工夫です。 点字ブロック、でこぼこで、目の見えない人に進む方向や建物の入口、バスや電車の乗り場などを知らせています。上に物を置いてはいけません。でこぼこが線のようになっているものは進行方向を知らせます。でこぼこが小さな丸になっているものは、いったんとまるなどの注意を表します。 電光掲示板や音声案内のあるバス停、見えない人や聞こえない人が、バスの行き先や到着時刻などを知ることができます。 (おじいさん) 3ページ、このページでは聴覚障害、内部障害、視覚障害のあるかたが困りやすい内容を紹介しています。 このページにもまちの絵が続いています。 駅に電車がとまっています。 電車が発車しないので不安そうな人、立っているのがつらそうな人が乗っています。 7、放送が聞こえない 駅や電車の中の放送が聞こえない人は、電車の遅れや止まっている理由がわかりません。 スマートフォンに文字を入力して見せたり、紙に文字を書いて伝えたり、できる方法で知らせよう。 聴覚障害がある人には、補聴器 という、周りの音を大きくして、聞こえやすくする器機をつけていることがあります。つけていても全ての音がきこえるわけではありません。聴覚障害があっても、つけていない人もいます。 8、見た目ではわかりにくい障害 内部障害の人は、障害があることに気づいてもらえないことがあります。内臓、たとえば心臓、呼吸器、腎臓などのいろいろな病気が理由で、つかれやすく立っているのがつらい時があります。電車などでは席をゆずりましょう。内部障害の中には、オストメイトという、おなかにある人工肛門に排泄物をためる袋をつけている人もいます。 内部障害がある人には、ヘルプマークを持っている人がいます。ヘルプマークについては、7ページで確認してね。 9、駅にも危険な場所があります 目が見えない人は、ホームから落ちるなどの危険が多い場所です。 危ない時は体に触って止めます。安全を守るホームドアが増えています。 町の設備の工夫について 手すり、スロープ、階段を使えない人のために大切な設備です。 電車の中の優先スペース、車いすやベビーカーのための場所です。スペースをあけてね。 (おじいさん) 4ページ、このページでは肢体不自由のあるかたが困りやすい内容を紹介しています。 まちにはエレベーターのある二階建ての本屋さんがあります。 かぜが強くて、歩道に看板がたおれています。 10、車いすはエレベーターでないとほかのかいに行けません いつも満員だとなかなか乗れないことがあります。車いすが乗るためには、数人分の場所をあけなければいけません。譲れる人は、何人かまとまって譲りましょう。 エレベーターの中には、車いすに乗った人が後ろ向きにおりやすいよう、かがみがついています。 車いすマークのボタンを押すと、ドアがゆっくり動いたり、開いている時間が長くなったりします。 11、高いところ、とどかない 車いすに乗っている人は、高いところのものを取れません。お手伝いが必要です。 イラストでは車いすに乗っている人が、高いところにある本を買いたいので、店員さんが代わりに取っています。 12、いろいろな車いすがあることを知ろう 車いすは、せまい場所を通れません。 通路や歩道に物が置かれていると困ります。 車いすには、ストレッチャータイプの車いすや子ども用の車いすなどもあります。 子ども用の車いすは、歩行が難しい子どものための車いすです。ベビーカーではありません。 イラストでは、たおれた看板が道をふさいでいるので、車いすに乗っている人が通れません。近くにいた人が看板をもどしています。 町の設備の工夫について バリアフリートイレ、車いすで、はいれる広さがあり、手すり、背もたれなどが便器に設置されています。オストメイトの人が袋の中身を流したり、洗ったりする設備や、大人でもおむつ交換ができる大きさのユニバーサルシートなどがあります。必要な人がいつでも使えるようにしておかなくてはいけません。 (おじいさん) 5ページ、このページでは精神障害、発達障害、聴覚障害、視覚障害のあるかた、医療的ケアが必要なかたが困りやすい内容を紹介しています。 このページにもまちの絵が続いています。 病院で診察を受けている人、家で療養している人などが描かれています。 学校で子どもたちが学んでいます。 はくじょうをもった人が道にまよっています。 防災放送が台風の接近を知らせています。 13、ゆっくり心を休めよう 精神障害は心の病気と言われています。心のパワーが落ちて何もできなかったり、気持ちをコントロールできなくなったりします。 14、二十四時間、命を守るケア 障害や病気があるために、さまざまな医療的ケアの必要な人がいます。 人工呼吸器などを使っている人は電気がないと命に関わるので、バッテリーなど備えが必要です。のどが詰まらないようにこまめに吸引する人や、口からごはんを食べられないときは、管からとる人がいます。 15、得意も苦手もいろいろあります 発達障害の人は生まれつきの脳の特徴で、音や光に敏感だったり、会話が苦手だったりします。育ち方や性格のせいではありません。お話をするときに、目が合わないこともありますが、いじわるをしているわけではありません。音に敏感な人は、聞こえる音を減らすヘッドホンをつける場合もあります。記憶力が優れている人もいます。 16、災害のとき 災害のとき、耳が聞こえない人には、防災放送やラジオの情報を紙に書くなど、情報を知らせます。 17、白杖エスオーエス 白杖を頭の上、50センチメートルぐらいに掲げる動きは、視覚障害者が助けてほしいときのサインです。 (おじいさん) 6ページ、このページでは聴覚障害、知的障害、発達障害のあるかたとのコミュニケーションの取り方を紹介しています。 町には病院、学校、区役所、会社があります。 区役所には手話通訳をしている人がいます。 聞こえない人が病院で診察をうけています。 みちでは、前を歩いている人が財布を落としたので、後ろからよびかけている人がいます。 18、19、20、聞こえない人とのコミュニケーションはさまざま 18、手話は大切なことばです。 表情と手の動きで言葉だけではなく、気持ちも伝わります。 19、唇の動きを読むこうわ、文字で伝える筆談などがあります。 こうわは、口をはっきりあけてゆっくり話します。声も出します。 20、後ろから呼んでも気づけないので、そっとかたをたたきます。 21、お話が苦手でも言っていることはわかります ルールなどが難しい時は、ゆっくりわかりやすい言葉で伝えます。周りの人の気持ち、態度は伝わります。やさしさが伝わるとうれしいです。 イラストでは、学校で、バドミントンのルールを友達に説明している生徒がいます。 22、具体的に伝わるとわかりやすい 会社で二人の女性が働いている様子がかかれています。 ひとりの人がもうひとりに、書類をかたづけるよう指示を出しています。 発達障害のある方に、「かたづけておいてね。」と言うような、あいまいな言葉だと困ってしまうかもしれません。 「ファイルを棚に戻してください。」というような、何をどうするのかを具体的につたえてください。 町の設備について 音声コード、パンフレットの左右下にある二次元コードは、専用のアプリで読み込むと、文を読み上げてくれます。目の見えない人にとって大切な情報です。 点字案内板、さわってわかる建物の案内図と点字を組み合わせたもの。わかりやすく書かれていて、見える人にも便利です。 手話通訳者、聞こえない人と、聞こえる人のコミュニケーションを手話でお手伝いします。 (おじいさん) 7ページ、ヘルプマークってなんだろう (おじいさん) 男の子と女の子は、2人で町を歩いています。 男の子は、町の中で、赤色の下地に、白色のプラス記号と、ハートが描かれたマークを、身に着けている人がいることに、気が付きました。そこで、女の子に聞いてみることにしました。 (男の子) 「あのマークってなんだろう。」 (女の子) 「ヘルプマークだよ。外から見てわからない障害のある人に、まわりの人が気づけるようにつけるんだよ。」 (男の子) 「へぇー。」 (女の子) 「うちのおじいさんは、車いすに乗っているからわかりやすいけど。」 (おじいさん) 二人で話をしているところに、女の子のおじいさんがやって来ました。 おじいさんは、二人の話を聞いて、ヘルプマークについて詳しく説明してくれました。 (おじいさん) 内部障害や病気、義足をつけた人は、疲れやすかったり、立っているのが辛いのに、周りの人にわかってもらえないことが多いんだ。 見た目でわかりにくいから、優先席に座りづらく感じてしまうことがある。ヘルプマークは、見えない障害がある人にとって、助けを求めたり、困っていることをわかってもらうために大切なものなんだ。ヘルプマークをつけていなくても、おなかに赤ちゃんがいる人や、けがしてる人や、お年寄りもいるし、みんなで助け合えるまちにしたいね。 (おじいさん) おじいさんが飼っている猫がさらに説明をしてくれました。 (女の子) こまっていることや障害、病気のことを詳しく書いて持ち歩けるヘルプカードもあるにゃー。 (おじいさん) ヘルプマーク、ヘルプカードは、まちづくりセンター、図書館、区役所でもらえます。 問い合わせ先は、裏表紙にあります。 (おじいさん) 8ページ、話し合って工夫しよう (おじいさん) 車いすに乗っているおじいさんが、孫の発表を見るために、フェスティバル会場にやってきました。 受付のスタッフに尋ねました。 「孫のダンスの発表を見たいのですが。」 (男の子) スタッフは、おじいさんが見られる場所を考えました。 「人が多いし、ぶつかって車いすが倒れてしまったら大変、心配だな。」 (おじいさん) スタッフは、おじいさんに提案しました。 (男の子) 「となりの公民館のモニターで、ダンスの様子を映すので、安全のためそちらでご覧になりますか。」 (おじいさん) 「ステージからおじいさんを探すと、孫が言っていたので、できれば会場で見てあげたいです。」 (男の子) 「では、簡単ですけど、ポールを使って車いすコーナーを作りますね。」 (おじいさん) スタッフが会場にポールを立てて、車いすスペースを作り、おじいさんを案内します。 (男の子) 「そちらまでスタッフが付き添います。」「車いすの方が通りまーす。」 (おじいさん) アナウンスが入ります。次は、小学校4年生のダンス発表です。 (女の子) あ、おじいさんが見に来てくれてる。 (おじいさん) ステージに走り出た孫は、おじいさんに気が付きました。まごはとてもうれしそうです。見ているおじいさんもうれしそうです。 (おじいさん) スタッフは、車いすに乗っているおじいさんが、人が多い会場に入ることが、危なくないか心配しています。会場でダンスを見たいという、おじいさんの希望をかなえるため、話し合い(建設的対話)をしました。その結果、ポールで車いすコーナーを作ってスタッフがつきそってくれることになりました(合理的配慮)。 障害のある人がしたいことをできるよう、話し合って考えて、工夫することが大切です。 (おじいさん) 9ページ、心のバリアについて考えよう (おじいさん) おじいさんは、女の子と男の子に町に行った感想をきいています。 「一緒にまちを見に行ってどうだった。」 (男の子) 「ほくは町を見る目が変わったよ。いろんなバリアがあることに気が付いたよ。」 (おじいさん) 「わたしたちの心の中にもバリアがあるんだよ。バリアというのはもともとかべという意味なんだ。」 障害について、例えば、わたしたちは関係ない、障害のことはよくわからない、なまけている、あまえている、変な人たち、かわいそうな人たち、のように無関心や思い込みで、軽べつしたり遠ざけたりすることが、心のバリアです。 それはとても悲しいことです。つらいことです。家族も悲しみます。 例えば、車いすに乗っている人を追い越して、エレベーターに乗りこむ人々、障害者用駐車スペースの真ん中に置かれているバイクなど、障害について無関心でいると、知らないうちに障害のある人を困らせたり、障害者用の設備が使えなくなってしまいます。 (おじいさん) 10ページに続きます。 (おじいさん) 10ページ、心のバリアについて考えよう、9ページの続きです。 (おじいさん) おじいさんは、男の子と女の子に尋ねました。 「もし、君たちが困っているときに、無視されたり、気づいてもらえなかったりしたらどうかな。」 (男の子) 「それは悲しい。」 (おじいさん) 悲しい思いをする人がいないようにちょっと意識して、お手伝いが必要な人がいたら、気づいてほしい。たくさん話して、できる工夫をして、みんなで暮らしていけたらいいね。 障害があってもなくても同じ大切な命。同じまちで一緒に力を合わせてくらしていこう。 そして、すべての子どもたちが愛され、守られるべき存在なんだ。 おじいさんが飼っている猫も、ひとりひとり大切な命、という言葉に頷いています。 男の子と女の子は、暖かい気持ちになりました。 裏表紙 (おじいさん) 世田谷区障害理解の促進と地域共生社会の実現をめざす条例 おじいさんと猫がタイトルを指さしています タイトル、大切にしたい思い ・障害があってもなくても、人の命の大切さは同じだから  みんなが大切な命にふさわしい  生きがいのある生活ができるようにしよう ・障害があることなど  どんな理由でもだれかをいじめたり  軽べつしたりしてはいけない(差別の解消) ・障害があるためにその人がしたいことができないのは、よくないから  さまざまな工夫をして障害のない人と同じようにくらせるようにしよう  (合理的配慮・差別の解消) ・いろんな人が同じ町でくらしているから  個性を認め合おう(多様性・インクルーシブ) ・「障害」は障害者ではなく  バリアのある社会のほうにあるんだ(障害の社会モデル) ・その人が自分でしたいことを決め  自分らしい生活を送ることができるように  必要な手助けをしよう(自己決定権の尊重) 全ての人が楽しくともに生きる町を、みんなで作っていきましょう 企画制作、世田谷区障害福祉部障害施策推進課施策推進担当 〒154−8504、世田谷区世田谷 4−21−27 電話番号 03−5432−2385 ファックス番号 03−5432−3021 ヘルプマークの問い合わせ先もこちらです。ねこのイラストが指差しています。 広報印刷物登録番号 No.2224 第1版、令和6年3月発行 デザイン、ひいらぎ舎