第5 障害特性に応じた対応  障害者と接するときには、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。以下に、いくつかの代表的な障害について、その概要をまとめました。  改定にあたり「障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン」(厚生労働省)東京都心身障害者福祉センターリーフレット「障害理解のために」及び「東京都障害者差別解消ハンドブック」等の掲載事例を参考に、区内障害者団体のご協力をいただきました。  対応事例については、区職員・区の窓口・区の事業で生じたものについて、区の実情にあわせて記載しました。 8、知的障害  おおむね18歳頃までの発達期に、知的な能力が年齢相応に発達していないため、日常生活や社会生活の適応に困難がある状態です。原因が特定できない場合が多いですが、ダウン症候群などの染色体異常、または先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患による場合などもあります。  しかし、どんな重度の障害があっても、それぞれの障害特性に合わせた教育や配慮・支援を受けながら、社会経験や学びを積むことにより社会参加しています。  障害の状況は、知的能力の程度により、また「てんかん」や自閉症などとの重複により、大きく異なります。ダウン症候群の場合、筋肉の低緊張や、心臓などの臓器に疾患を伴う場合があります。  周囲の理解や支援によって一歩一歩成長していける可能性をもっています。   [よくある誤解]  ・抽象的なことは理解できないので、支援してあげないと何もできない。  ・「はい」と返事したことは、すべて理解している。  ・知的障害がある人は、一人で外出できない。  ・大人の年齢であっても子供と同じような言葉づかいでよい。  (正解は以下を参照)                                       (1)こんなことに困っています   ○ 読み書きや計算が苦手  そのため、お金の計算も苦手な人もいます。         〇 コミュニケーションの力が弱い   そのため、人に尋ねたり自分の意見を言うことが苦手な方もいます。       〇 状況を判断することが苦手    そのため、仕事の手順をすぐ覚えたり、人とのやり取りに素早く対応す   ることが困難で、時間がかかることがあります。      〇 抽象的な概念や複雑なことは理解しにくい     そのため、周りの状況、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難な    方が多くいます。比喩や例えを言葉どおりに受け取り、誤解を招くことがあり    ます。     〇 経験不足から、金銭管理・会話・買い物・家事などの場面で、その人の状態に応じた支援が必要な場合があります。 〇 てんかん(P68)や、自閉症(P62)を重複する場合もあります。 (2)こんな配慮が必要です   〇 介助者と一緒でも、まず本人と向き合うことが原則です。子ども扱いせず、 その人の年齢に応じた接し方や言葉づかいをしてください。 〇 最初は難しいことも、その人に応じた配慮や、わかりやすい説明、練習など  によって、外出や社会生活上のスキルを身に着けていきます。一人で外出を楽  しむ人も沢山います。   〇 自分で出来ることは自分でやりたい人も多くいます。何でも手伝うのではな  く、場合によっては、見守ることも大切です。    〇 話しかけるとき   穏やかに、短い文章で、「ゆっくり」「ていねいに」「繰返し」説明し、理解さ    れたことを確認しながら応対します。      〇 書類の説明  漢字を少なくしてルビを振るなどの配慮で、理解しやすくなることがありますが、逆に、ひらがなばかりの文章ではわかりにくい人もいます。一人ひとりの障害の特性に合わせて対応します。  絵や図・カード・写真等、実物のイメージがわかるものを使うと、わかりやすくなることがあります。   〇質問の仕方と確認   二者択一など、答えやすいような聞き方を工夫してください。  「はい、分かりました」と返事をしても内容を理解していないことがあります。大切な事柄は質問の仕方を変えて聞きなおし、(「○○が良い?」「○○は嫌?」)、内容を理解できているかの確認を行ったり、理解した内容を本人に話してもらうなどの方法で、確認できる場合もあります。 ○ 望ましくない行動が見られたとき   いきなり強い調子で「ダメ」「やらないで」などの否定する言葉を使うと、恐怖感を与えて、内容が伝わりません。「どうしましたか」等、穏やかな口調で「○○をしてください」と、肯定的、具体的に伝えましょう。 ○ あらかじめ予定を伝える   見通しがもてないと不安になることがあります。その日の予定や今後の手順 などを、わかりやすく伝えておきましょう。    (3)これだけはチェック! 〇 リーフレット等の作成では、必要に応じて「わかりやすい版」(表現を簡単にして、ルビを振る など)を作成する 〇 イベントの際には、必要に応じてクールダウン出来るスペース(周囲の騒音や刺激のない場所)等を用意する 事例  (内容は【事例・資料編】を参照のこと) ●区の事例     ・知的障害者への声かけについて(801)     ・健康診断における合理的配慮について(802)  ・子ども向け事業への保護者同伴について(803)  ・行事案内チラシの配慮(804)  ・プールでの指導者付き利用(805)     ・新BOPの対応について(806)  ・学校の部活動への参加(807)         ●民間事業所等の事例     ・病院の検査拒否(808) 〔コラム19 意思決定支援〕  障害のために、自分の意思を決定することや、表明することが困難な人もいます。  意思決定が困難な場合も、可能な限り本人が自ら意思決定ができるように支援し、本人の意思や選好を確認・推定して、本人の最善の利益を検討する仕組みを、「意思決定支援」といいます。   知的障害者には、意思決定支援としてサポートすることが重要視されています。その際のポイントは、以下のとおりです。    〇 自分で理解できる情報が得られること    〇 自分と似ている状況にある仲間や相談できる相手との経験の共有ができること    〇 選びやすくなるための、選択を体験する機会が十分にあること    〇 身体反応が健常者と異なる場合、身体反応のキャッチ(解読)ができる人           (熊谷晋一郎 「手をつなぐ仲間たち」2019年9月号より一部引用) 9 発達障害  発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」(発達障害者支援法における定義 第二条より)と定義されています。  これらのタイプのうちどれにあたるのか、障害の種類を明確に分けて診断することは大変難しいとされています。障害ごとの特徴がそれぞれ少しずつ重なり合っている場合も多いからです。  大事なことは、その人がどんなことができて、何が苦手なのか、どんな魅力があるのかといった「その人」に目を向けることです。そして、その人その人に合った支援があれば、だれもが自分らしく、生きていけるのです。      脳機能の発達のアンバランスさによって、物事の見方、感じ方、理解の仕方、人との関わり方などに偏りがある障害です。外見からは分かりにくく、説明が難しい障害です。そのため、周囲からは親のしつけや、本人の性格の問題だと誤解されることも多く、本人や家族は「生きにくさ」を感じることがあります。    知的な遅れを伴うこともありますが、伴わない場合もあります。日常生活で困難を抱えていても障害とは気づかれにくく、必要な支援を受けることができずに困っていることがあります。             【広汎性発達障害】    広汎性発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩 壊性障害、特定不能の広汎性発達障害を含む総称です。  〇自閉症とは 次の3つの特徴をもつ障害で、3歳までには何らかの症状がみられます。 ① 対人関係の障害(人と関わることを嫌がる など) ② コミュニケーションの障害(相手の言葉をそのまま反復するなど、ことばのやりとりが難しい など) ③ 限定した情動的な興味、行動及び活動(特定のものや事にこだわる など)      最近では、症状が軽くても自閉症と同質の障害のある場合、自閉症スペクトラム   (連続体)と呼ばれることがあります。     〇アスペルガー症候群とは   対人関係の障害があり、限定した情動的な興味、行動及び活動をするという特徴   は、自閉症と共通した障害です。アスペルガー症候群は、明らかな認知の発達・   言語発達の障害を伴いません。     コラム20:広汎性発達障害の名称について】 発達障害の概念が医学的に明らかになってから、その理解や分類は変化してきました。DSM-Ⅴ(2013)*及びICD-11(2019)**においては、「広汎性発達障害」概念が見直されて、「自閉症スペクトラム」等に改編されています。 このガイドブック作成時点で、日本では「発達障害者支援法」や行政における表記はICD-10(1990)に基づいているため、「広汎性発達障害」のままの表記としました。(2022年までにICD11-の国内での適用作業が行われる予定です。)              *精神障害の診断と統計マニュアル:アメリカ精神医学会 **疾病及び関連保健問題の国際統計分類:WHO世界保健機構 [よくある誤解]  ・保護者のしつけや本人の努力不足など、家庭での教育上の問題である  ・自閉症のこだわりは、自己中心的な性格だから直らない  ・アスペルガーの人が相手の気持ちが分からないのは、「わがまま」だから  ・ADHDの注意力が低いのは、忘れやすい性格のせい  (正解は上記を参照)            (1)こんなことに困っています ・相手の表情や態度などから、相手の状況を読み取ることが難しいため、その場にふさわしい行動をとれないことがあります。 ・先の見通しの立たない状況では不安が強くなります。急な予定変更などに対処できず、パニックを起こすことがあります。 ・聴覚や触覚などの感覚過敏がある場合、大きな音や光などに過度に反応することがあります。 ・想像力の不足から、言葉を字義どおりにしか受け取れないことがあり、コミュ ケーションが上手くいかないことがあります。  ・特定の手順を繰り返したり、特定の物に強い興味を示すことがあります。 (2)こんな配慮が必要です ・肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫を行います。 何かを伝えたり依頼する場合には、必ずその意図や目的を伝えたり、図やイラスト等を使って説明する、など) ・予定の変更は前もって説明しておきましょう。  手順の変更や担当職員の交代、当初の予定の変更などは、事前に説明することで、混乱やパニックを抑えられることがある ・スモールステップによる支援を心がけます。 手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど ・感覚過敏がある場合  音や肌触り、室温など感覚面の調整を行います。 (イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど) ・会話によるコミュニケーションに苦手意識を持つ人に対しては、必要に応じて、ICT機器を利用したり、筆談などの手段を使います。 事例 ●都の好事例(引用:東京都障害者差別解消法ハンドブックより)     「情報を整理し、情報から遮断された場所を準備する」  自閉症、アスペルガー障害などの人は、音・光・掲示物など情報過多な場所だと混乱しやすく、不安・緊張が強くなってしまいます。人ごみや騒々しい場所、雑然とした部屋などでは、会話が聞き取れなかったり、重要な掲示を見逃したり、必要な情報をピックアップすることができない場合があり、パニックを起こしてしまうこともあります。個室で対応する、パーテーションで遮るなど、できるだけ情報の少ない静かな場所で、必要な情報を確実に伝える工夫が有効です。   パニックを起こしてしまった場合は、トイレや個室など、できるだけ情報から遮断された場所(カームダウンスペース)に移動してもらい、落ち着くまで待つなどの対応をします。 【学習障害(LD)】   全般的な知的発達に遅れはないのに、読む・書く・計算するなどの特定の能力を  学んだり、行ったりすることに著しい困難がある状態をいいます。 (1)こんなことに困っています ・相手の話が理解できない、思っている事をうまく伝えられない人もいます。 ・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手な人がいます。 (2)こんな配慮が必要です ・ICT機器を活用する際は、文字を大きくしたり行間を空けるなど、読みやすくなるように工夫します。  ・苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をする。  ・提出書類の代筆を行います。  学習障害のある人の中には、書類などを書くことに不相応な時間がかかったり、正確に書くことができない人がいます。窓口で対応する際に、苦手なことを確認した上で、代筆を行うなどの配慮が有効です。  ・窓口で計算機を利用できるようにします。 【注意欠陥多動性障害(ADHD)】  注意持続の欠如もしくは、その子どもの年齢や発達レベルに見合わない多動性や衝動性、あるいはその両方が特徴です。この3つの症状は通常7歳以前に現れます。注意力や集中力が弱い、落ち着きがなくじっとしていられない(多動性)、突発的な行動(衝動性)などの特徴がみられます。 ① 多動性(おしゃべりが止まらない、待つことが苦手でうろうろしてしまうことがある) ② 注意力散漫(うっかりして同じ間違いを繰り返してしまうことがある)  ③ 衝動性(約束や決まり事を守れないことや、せっかちでいらいらしてしま    うことがよくある)   一般的に多動や不注意といった様子が目立つのは学齢期ですが、思春期以降はこ  ういった症状が目立たなくなるともいわれています。 (1)こんなことに困っています ・興味のあるものをすぐに触ったり、手に取ったりせずにいられない人もいます。 ・目的もなく歩き回ったり、そわそわして休みなく動いている人もいます。  ・優先順位をつけてものごとを処理していくことが苦手だったり、期限や約束を忘   れてしまうことがあります。そのため書類の締め切りを守れなかったり、重要な   約束をすっぽかしてしまうことがあります。 (2)こんな配慮が必要です(国交省コミュニケーションハンドブックより一部引用) 〇 具体的な表現で分かりやすく伝えます。  ・短く、はっきりした言い方で伝える  ・肯定的な対応を心掛ける  ・返答に困っていたら、補助ツール(図、写真など)を使ってみる   〇 手続きの流れや予定などの見通しを伝えます。 ・やるべきことを、優先順位を明確にして伝える  ・期限や約束が守れない人には、締め切りや約束の日を記したメモを渡す、   直前に確認の連絡(メール、電話)を行うなどのサポートが役立ちます 〇 環境に配慮します。 ・気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などを行う ・忘れ物をする、約束を忘れる、遅刻する、場所がわからない、という状況に陥りやすいため、確認の仕方を工夫する 事例 ●区の事例 (内容は【事例・資料編】を参照のこと)     ・(職)テスト用紙の拡大コピーについて(902)  ・学校での合理的配慮(いじめ、座席)(903)     ・学校での合理的配慮(タブレット)(904)     ・学校での合理的配慮(学習)(905)     ・学校での十分な教育を(906)     ・WiFi環境整備等(907)  ・学力調査のITC活用(908)  (職):職員からの相談 ●民間事業所等の事例     ・交通事故被害児童の受診拒否(901)  ・柔道教室への参加(909 他の行政機関)  ● 都の好事例 (東京都差別解消法ハンドブック H30/10より抜粋)     発達障害のIさんは、文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。     そこで、Iさんの相談を受けている職員は、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などを試したところ、書類作成を失敗する回数が少なくなりました。 ●以上、主な発達障害とその症状については、国立障害者リハビリテーションセンター>発達障害情報・支援センター>理解する>発達障害とは  を参考にしました。 10 精神障害  さまざまな精神疾患(統合失調症やうつ病などの)が原因となり起こる、精神機能の障害によって、日常生活や社会参加に困難をきたしている状態のことです。  疾患や環境によって、障害状況や困りごとは様々です。また、時間帯や季節、ライフステージなどによって状態が変わることがあります。外部からは分かりにくく、誤解(努力不足、怠惰、甘えなど)や偏見(働けない、遺伝するなど)をうけやすいこともあり、症状からくる苦痛のほか、日々の生活や仕事、対人関係などの場面で、様々な生活のしづらさを抱えています。  医療だけでなく、福祉・就労・教育・権利擁護等の総合的な支援が望まれます。これらの支援により、就労も含めて、地域の中で安定して生活を送れる人が少なくありません。一方、病気に対する偏見や誤解によって、差別の対象となりやすく、社会資源の少なさもあり、社会参加が妨げられがちです。   [よくある誤解]  ・精神障害は遺伝する  ・精神障害がある人は、就労が困難である  ・働くことができないのは、本人の努力が足らないから  ・仕事をよく休むのは、甘えているからだ     (正解は上記を参照) ●以下は、代表的な疾患の特性です。 【統合失調症】  ・原因はよく分かっていない。100人に1人弱がかかる一般的な病気。 ・「陽性症状」:幻覚や妄想が特徴だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることがある。 ・「陰性症状」:意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていた事に興味を示さなくなる。また疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになる。 ・「認知や行動の障害」:考えがまとまりにくく、自分でも何が言いたいのかわからなくなる。相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない。等     【気分障害】 ・気分の波が主な症状としてあらわれる病気。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ。 ・うつ状態:気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、自殺を考えてしまうこともある。 ・躁状態:気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする。その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなったりする。 【依存症】(アルコール) ・飲酒したいという強い欲求がコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる。 ・体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る。 ・一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまうことがある。 【てんかん】  ・何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきる。 ・発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある。発作による転倒により、打撲や頭部外傷などのケガを負うことがある。 ・内服治療を行い、発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能。 【認知症】 ・認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である。 ・原因となる主な疾患として、 アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)がある。 ・認知機能の障害の他に、行動・心理症状(PTSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)が出現することがある。                                     (1)こんなことに困っています ○日々の生活  ・ストレスに弱く、緊張したり疲れやすかったりします。  ・自信が持てなかったり、自信があってもしばしば失敗することがあります。  ・感情の表現が苦手です。  ・不眠や食欲の変化、身体の不調(頭痛・動悸・嘔吐や下痢、便秘・呼吸困難感 等) ○就労  ・まじめで緊張が強く、疲れやすかったり、周囲の期待に応えようと、がんばりすぎて、体調を崩すことがあります。  ・症状や服薬の影響などで、手順やルールをなど覚えるのに時間がかかることがあります。 ○対人関係 ・病気のことを知られたくないために、引っ込み思案になることがあります。 ・自分に関係ないことでも自分に関係づけて考えるなど、周囲の言動が被害的に感じられ、人と関わるのが怖くなったり、攻撃的になることがあります。 ・対人関係上の「適切な距離」が難しいことがある。など ○住居  ・賃貸の場合、障害をオープンにしての契約が難しいことがあります。  ・病状が悪化した際の状況によっては部屋の管理が行き届かないことがあります。 (2)こんな配慮が必要です ・症状のみに目を向けず、具体的な困りごとについて話し合いましょう。必要に応じて専門機関などに相談します。 ・手続きなどの説明で、分かりにくい様子があれば、見本を使うなどの工夫をしましょう。 ・手続き上「障害の内容」の確認が必要な場合も、必要最低限に留めます。(手帳等級のみで良い場合は、病名までは聞かない、など) 事例  (内容は【事例・資料編】を参照のこと) ●区の事例     ・ヘルプマークの理解を求めたら図書館から退去させられた(1001)  ・自転車駐輪場の障害者スペース(1002)      ●民間事業者等の事例  ・わかりやすい授業を(1003) ●都の好事例(東京都差別解消法ハンドブック H30/10より抜粋)   「薬が効くまでの時間をもらえると」  Jさんは、精神障害者としての経験を生かして、福祉サービス事業所でピアサポーター*として活動しています。しかし、月に一度位は幻聴が出ることがあり、Jさんは活動に支障がでることを心配していました。  ⇒職員に相談すると、「普段はどうしているのですか?」と質問され、Jさんは「頓服薬をのんで一時間位静養すると治まってくる」と説明しました。すると「自分なりの対処方法があるのは良いことですよ」「症状があっても、工夫しながら活動を続けることが大切です」「他の利用者の励みになるのだから気にする必要はありません」と言われ、幻聴が出た時は、頓服が効くまで静養できることになりました。その後、Aさんは、ピアサポーターとして自信を持ちながら、安心して活動しています。 *ピアサポーター:「ピアサポート」(同じ症状や悩みをもち同じような立場にある仲間が、体験を語り合い、回復を目指す取り組み)を行う人のことです。 (参考) 対応のコツ~統合失調症の方の場合を例に~     心配事を相談されたとき ・まず、本人のペースで話に耳をかたむけましょう。 ・大人として、相手を尊重した聞き方。話し方を心がけましょう。     ・ときどき、話を具体的に整理しながら会話をすすめましょう。     ・表情と感情を一致させましょう。(含み笑いは本人が誤解しやすい。)     助言をする場合 ・頭ごなしや命令口調ではなく、「○○してみましょうよ」「○○してくれると助かるんだけど」など、ゆっくり穏やかな口調で話しましょう。     ・具体的かつ手短かに、誤解の余地がないよう伝えましょう。     ・お手本や具体例を示しましょう。     対応がつらくなった場合     ・同意を求められても、違うと思うことや分からないことは率直に伝えましょう。 ・対応できる範囲を明確に伝えましょう。     ・専門機関などと相談しながら対応しましょう (東京都福祉保健局ハートシティ東京「障害を知る」より) 11 難病  難病とは、原因不明で治療方法が確立されておらず、神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由など多彩な障害を生じる、長期の療養を必要とする疾病です。  しばしば、長期にわたって慢性の経過をたどり病態や障害が進行する場合が多く、生活面における制約や、治療等のための経済的な負担や、家族等の身体的、精神的な負担が大きいといわれています。また一方、継続的な医療などで病状が安定して、生活できる場合もあります。  難病のうち、医療の確保の必要性が高く一定の要件を満たすものは、障害福祉サービスの対象となります。その疾病の数は、令和元年7月に348疾病に拡大されました。                                  (1)こんなことに困っています  〇「痛み」「しびれ」「手足に力が入らない」「倦怠感」などに悩まされている場合   も多いのですが、外見上わかりにくいために、「出来るのにやらない」「さぼって   いる」など誤解されることがあります。  〇同じ病気でも、状態や障害に個人差がありますが、「その病気なら〇〇」とひと   くくりにされ、困っていることを分かってもらえないことがあります。  〇一日の中で症状が変化することがありますが、保健福祉サービスで状態に応じた介護や支援を適切に受けることは難しく、家族などの負担が大きくなることがあります。  〇外見に目立つ症状がある疾患などは、うつる病気と誤解されることがあります。 (2)こんな配慮が必要です  〇それぞれの病気による症状やその日の状態により、症状が異なります。外見で判   断せず、本人の様子や、直接本人に聞くなどにより、体調や状態に合わせて対応   しましょう。  〇病状により、痛みや疲労感、出来ること、出来ないことに波があります。その時の体調に合わせた配慮をしましょう。 〇体調がすぐれない様子の時には声をかけて、必要に応じて休憩できる場所へ案内しましょう。窓口職場などでは、柔軟に休憩できる場所を確保しておきましょう。 〇難病は伝染病ではないため、うつりません。外見の症状から来る誤解や偏見を招かないよう、配慮が必要です。  〇プライバシーに配慮し、病名や病状の確認などは、必要最低限   にとどめましょう。  〇ヘルプマークを身に着けている場合もあります。 事例 ●都の好事例(東京都差別解消法ハンドブック H30/10より抜粋)   「色素性乾皮症(XP)児の保育所における対応」 遮光対策が必要である色素性乾皮症患者のKちゃんは、紫外線対策がなされていない保育所に入所することは困難です。 ⇒入所を希望する保育所と話し合った結果、UVカットシートを保育室等の窓ガラスに貼ること、紫外線を遮断するために窓は常時閉鎖してエアコンを取り付けることのほか、保育所側に日光に当たってしまった際の対応策などを十分把握してもらった上で、他の保育児・保護者への説明も十分行い、疾病に対する理解を得ることで、安心して保育所に通うことができるようになりました。 〔 コラム21 障害児について 〕  障害児については、成人の障害者とは異なる支援の必要性があります。子どもは発達段階にあり、個々の子どもの発達の段階に応じて一人ひとりの個性と能力に応じた、ていねいに配慮された支援を行う発達支援が必要です。  また、子どもを養育する家族を含めた、ていねい且つ早い段階からの家族支援が必要です。特に保護者が、子どもの障害を知った時の気持ちを出発点とし、障害を理解して受け入れるまでの過程においては、関係者の十分な配慮が必要です。   ●子ども用車いす  子ども用車いすは、移動が困難な障害があるために、日常生活に必要不可欠な補装具として給付されたものです。ベビーカーと間違われて、段差や乗り物の乗降時に必要な介助を受けられなかったり、スロープを出してもらえない、あるいは電車内で折りたたむよう、要求されることもあります。  ベビーカーとの違いは、   ○ 大人用車いすよりは軽く、ベビーカーよりは重い。   ○ 乗り降りしやすいよう、座面の高さが調整できるタイプや、背もたれの角度が水平     近くまで倒すことができるタイプもあります。   ○ 障害によっては、人工呼吸器や吸引機などの医療用器具を載せるスペースも     確保されていることがあります。   〇 外出先でたたんだり、子供を降ろすことことは困難であることを知ってください。      〔 コラム22 複合差別 〕 ・ 女性である障害者は、障害に加えて性別による固定的役割分担や、それに関連する慣行や暴力など、複合的に困難な状況に置かれている場合があることに留意する必要があります。  ・ 場面や内容等により、女性職員が対応するなどの配慮が必要な場合があります。 ・ 障害のある女性は、障害者であると同時に女性です。そうした同時に複数の立場を生きる個人がこうむる、差別体験を捉える言葉として「複合差別」と言う言葉があります。 ・ 家庭や学校、職場、医療を受けるときなど、日常生活の様々な場面で、障害のある女  性は複合差別を経験する場合があります。 ・ 女性に限らず、子どもや貧困など、困難が複合していることに焦点を当て、取組む視  点も必要です。    第6 関連する相談窓口 ○ 障害者差別に関する相談 ・世田谷区障害施策推進課 TEL 03-5432-2424 (P16:相談・問い合わせへの対応を参照) ・東京都権利擁護センター TEL  03-5320-4223 ○ 障害者就労差別に関する相談 ・障害者就労支援センターしごとねっと TEL 03-3418-1432 ・ (同) すきっぷ就労相談室 TEL 03-3302-7972 ・ (同) ゆに(UNI) TEL 03-5707-2343 ・東京都労働局   TEL 03-3512-1664    ・渋谷総合労働相談コーナー(渋谷労働基準監督所内)                     TEL 03-6849-1167 ○ 障害者への虐待に関する相談窓口        世田谷総合支所保健福祉課障害支援  TEL 03-5432-2865    北沢総合支所保健福祉課障害支援   TEL 03-6804-8727    玉川総合支所保健福祉課障害支援   TEL 03-3702-2092    砧 総合支所保健福祉課障害支援  TEL 03-3482-819 8 烏山総合支所保健福祉課障害支援 TEL 03-3326-6115 世田谷区障害者夜間・休日虐待通報ダイヤル                      TEL 03-5432-1033   ○ その他    法テラス東京            TEL 050-3383-5300    世田谷区消費生活センター(相談専用)TEL 03-3410-6522 ○ 人権擁護相談(問い合わせ先:人権・男女共同参画担当課)                     TEL 03-5432-2259 ○ 世田谷区DV相談専用電話(※相談日のみ)      TEL 0570-074-740 【第一面記載方法】 おわりに  障害者差別解消法の理念を実現していくには、国民一人ひとりの障害に対する理解と適切な配慮が不可欠であり、差別と解される事例についても、お互いの意思疎通不足や理解の不足が起因していると思われることも見受けられます。法に定められたからということで身構えるのではなく、区民・事業者・区が歩み寄り理解を深めていくことが、差別解消の第一歩につながると考えられます。  職員のみなさんの本法に関する理解と、障害者差別解消に向けた取組みを積極的に進めて頂きますようお願いします。  【ガイドブック作成等にあたり、ご協力いただいた団体等】    <世田谷区障害者福祉団体連絡協議会加盟団体>     公益社団法人日本オストミー協会東京支部世田谷交流会     世田谷区肢体不自由児(者)父母の会     世田谷区身体障害者福祉協会     世田谷区重症心身障害児(者)を守る会     世田谷区手をつなぐ親の会     世田谷区パーキンソン病友の会     世田谷生活と健康を守る会しょうがい部会     特定非営利活動法人自立の家     特定非営利活動法人せたがや移動ケア     特定非営利活動法人世田谷区視力障害者福祉協会     特定非営利活動法人世田谷区聴覚障害者協会     特定非営利活動法人世田谷さくら会     特定非営利活動法人世田谷ミニキャブ区民の会   特定非営利活動法人ヒューマンハーバー世田谷     ふたばの会                     (50音順)  <世田谷区自立支援協議会 虐待防止・差別解消・権利擁護部会>                                                                              1 19