障害者に関するマーク等 国際シンボルマーク 障害のある人々が利用しやすい建築物や公共輸送機関であることを示す世界共通のマークです。車椅子を利用する方だけでなく、障害のあるすべての方のためのマークです。注1) 盲人のための国際シンボルマーク 視覚に障害のある方の安全やバリアフリーに考慮された建物、設備、機器などに付けられている世界共通のマークです。 身体障害者マーク(四つ葉マーク)*自動車用 肢体不自由であることを理由に運転免許証に条件を付されている方が車に表示するマークです。やむを得ない場合を除き、このマークをつけた車に幅寄せや割り込みを行った場合、道路交通法違反になります。 聴覚障害者標識*自動車用 聴覚障害であることを理由に運転免許証に条件を付されている方が車に表示するマークです。危険防止のためやむを得ない場合を除き、このマークを付けた車に幅寄せや割り込みを行った場合は、道路交通法違反となります。 白杖SOSシグナル 視覚に障害のある方が白杖を頭上50cm程度に掲げていたら、SOSのシグナルです。進んで声をかけ、困っていることなどを聞き、サポートをしてください。 耳マーク 聞こえが不自由なことを表す、国内で使用されているマークです。コミュニケーション方法に配慮を求める場合などに使用されます。また、自治体、病院、銀行などが聴覚に障害のある方に援助をすることを示すマークとしても使用されています。 手話マーク ろう者等が手話での対応を求めるときに提示したり、窓口等で手話対応ができることを知らせるために作成されたマークです。 筆談マーク ろう者等が筆談での対応を求めるときに提示したり、窓口等で筆談対応ができることを知らせるために作成されたマークです。 ほじょ犬マーク 身体障害者補助犬法で定められた補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)同伴の啓発のためのマークです。「身体障害者補助犬法」の施行後、公共施設や交通機関はもちろん、デパートやレストランにも補助犬が同伴できるようになりました。(P33参照) オストメイトマーク 人工肛門・人工膀胱を造設している人(オストメイト)のための設備があることを表しています。オストメイト対応のトイレの入口・案内誘導プレートに表示されています。(P56参照) ハート・プラスマーク 「体の内部に障害のある方」を表すマークです。心臓や呼吸機能など内部障害は、外見からはわかりにくいため、さまざまな誤解を受けることがあります。そのような方の存在を視覚的に示し、理解と協力を広げるために作られたマークです。 介護マーク 介護をする方が、介護中であることを周囲に理解していただくためのマークです。区内28ヶ所のあんしんすこやかセンター及び各総合支所保健福祉課にてお渡ししています。 ヘルプマーク 援助や配慮を必要としていることが外見からはわからない方々(義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など)が、配慮を必要としていることを、周囲に知らせるために作成されました。世田谷区をはじめ、都内自治体が作成している「ヘルプカード」にも使用しています。 イエローリボン 日本では障害のある人の権利を守るシンボルマークとして活用されています。障害のある人びとの、その人らしい自立と社会参加をめざします。 ユニバーサルデザイン普及啓発キャラクター「せたっち」 年齢、性別、国籍、能力等にかかわらず、できるだけ多くの人が利用しやすい生活環境にする「ユニバーサルデザイン」の考え方を広めるため、平成20年に区民参加のワークショップで誕生しました。 ユニバーサルデザイン推進条例 遵守基準適合証 ユニバーサルデザイン推進条例に基づく届出の際、遵守基準に適合させることができた建物等に掲示をお願いしているマークです。 ユニバーサルデザインのまちづくりが進む中、その整備状況をより見える化する試みです。 マスクつけられませんマーク 感覚過敏などがあり、マスクがつけられない人のために考案されたマークです。このマークは、「感覚過敏研究所」のものですが、これ以外にも、様々なマークが考案されています。 注1)●優先駐車場の対象範囲について 優先駐車場には、青地に白い色の国際シンボルマーク(1P「障害者に関するマーク等」を参照)が表示されています。よく、「車いす専用駐車スペース」と思われる事がありますが、優先駐車場を必要としているのは、車いす利用者だけではありません。難病や内部障害などの様々な障害のある人に加えて、妊婦やけが人など、移動に困難のある方を含めて利用できます。       はじめに  平成28年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、「障害者差別解消法」という)が施行されました。  この法律は、障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。  この「ガイドブック」は、区職員が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。  障害者差別のない社会を目指すための取組として、日々の業務の参考にしていただくようお願いします。    第3版作成にあたって(令和3年4月)  区は、法施行(平成28年4月)以降、障害者差別に関する様々な相談を受けて、きました。今回はこれまでの相談を踏まえ、区が対応を求められたときや、環境整備をするうえでのポイントを整理して「実践につながるマニュアル」として作成しました。  「事例・資料編」とあわせて、ぜひご活用ください。   ●ガイドブックは、庁内公開サイト>障害施策推進課>7-03 区の基本方針・職員対応要領 に掲載しています。必要に応じてごらんください。 目次 第1 趣旨 1 障害者差別解消法制定の経緯・・・・・・・・・・・・  8 2 社会モデルと障害者の範囲・・・・・・・・・・・・・  8 3 心のバリアフリー ・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第2 何が「障害者差別」にあたるか・・・・・・・・・・・・・・ 11    1 不当な差別的取扱いの禁止・・・・・・・・・・・・・ 11    2 合理的配慮の提供 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 12    3 環境の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 第3 世田谷区の取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 1 相談・問い合わせへの対応所属・対応方法・・・・・  16  「障害者差別 相談解決の流れ」 2 障害者の情報アクセシビリティ向上に向けた取り組み・ 19 3 障害者差別解消法についての仕様書特記事項・・・・・ 21 4 障害者差別解消支援地域協議会・・・・・・・・・・・ 23    第4 相談対応の基本と合理的配慮・・・・・・・・・・・・・・・ 24 1 対応の基本と考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・ 24 2 案内・誘導の場面では・・・・・・・・・・・・・・・ 24 3 受付・相談時の配慮・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 4 手続き(書類の記入)の場面では・・・・・・・・・・・ 26 5 イベントや会議の開催・・・・・・・・・・・・・・・ 27 6 緊急時の対応を想定する・・・・・・・・・・・・・・ 28 第5 障害特性に応じた対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 1 視覚障害(視力障害・視野障害)・・・・・・・・・・・ 29 2 聴覚障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 (参考)盲ろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 3 肢体不自由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 4 高次脳機能障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 5 音声・言語・構音機能障害・・・・・・・・・・・・・ 50 6 内部障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 7 重症心身障害・医療ケアが必要な人・・・・・・・・・ 56 8 知的障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 9 発達障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61    10 精神障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67    11 難病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71     第6 関連する相談窓口・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 第7 報告書様式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75   おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79    ●コラム一覧 1 『社会モデル』と『個人モデル(医学モデル)』  P 9 2 駅のエレベーター P15 3 商店等における共生社会促進事業 P17 4 東京都の音声コード付き文書送付の取組み P21 5 記名と署名 P26 6 エレベーターのない建物での講演会 P27 7 白杖には3つの役割があります P30 8 色覚多様性について                P31 9 身体障害者補助犬について  P33 10 聴覚障害の種類   P35 11 補聴器     P35 12 手話     P38 13 エスカレーターに止まって乗りたい      P43 14 車いすの幅と入り口の幅            P44 15 エレベーターの順番              P45 16 発達障害と子どもの高次脳機能障害 P50 17 失語症者向け意思疎通支援者派遣事業     P52 18 医療的ケア・医療的ケア児について P58 19 意思決定支援               P61 20 広汎性発達障害の名称について       P63 21 障害児について              P72 22 複合差別                 P73    (別冊)         事例・資料編   【事例】 〇 事例概要 〇 詳細事例集   【法律・国基本方針】 〇 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 〇 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針   【世田谷区基本方針・職員対応要領】 〇 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行に当たっての世田谷区の基本方針  〇 世田谷区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領   【権利条約の主な内容】   【東京都条例】 〇 東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例  第1 趣旨 1、障害者差別解消法制定の経緯  平成18(2006)年、国連において、障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択されました。  我が国は、平成19(2007)年に権利条約に署名しました。その後、国内法の整備(「障害者基本法」の改正、「障害者虐待防止法」の施行、「障害者差別解消法」の制定等)などの取組を進め、平成26(2014)年1月に権利条約を批准しました。  平成28(2016)年4月、障害者差別解消法が施行されました。この法律の目的は、障害のあるなしで分け隔てられることのない「共生社会」の実現です。(法第1条) 【障害者差別解消法関係の経緯】 平成16年 6月 障害者基本法 改正      ※施策の基本的理念として差別の禁止を規定     平成18年 12月 国連総会 障害者権利条約を採択     平成19年 9月  日本国 障害者権利条約に署名     平成23年 8月 障害者基本法 改正     ※障害者権利条約の考え方を踏まえ、「合理的配慮」の概念を規定     平成24年 10月 障害者虐待防止法 施行     平成25年 6月 障害者差別解消法 制定     平成26年 1月 日本国 障害者権利条約を批准     平成27年 2月 障害者差別解消法「基本方針」閣議決定     平成28年 4月  障害者差別解消法 施行 2、社会モデルと障害者の範囲  「障害者差別解消法」は、「障害者権利条約」による「障害の社会モデル」(以下「社会モデル」)を前提としています。「社会モデル」は従来の「障害」の考え方を大きく変えるものでした。   (1)「障害」の考え方 【ポイント1-1】「障害」とは、①心身の機能の障害がある人が ②社会のバリアに接して受ける様々な制限のことを言う。  「社会モデル」では、「障害」とは、「心身の機能の障害」そのものではなく、その人が様々なバリア(社会的障壁)と相対することにより生じる制約(困りごと)のことだと考えます。  バリア(社会的障壁)は、物理的なものだけでなく、社会のルールや制度、文化・情報、考え方などを含みます。(法第2条2) 【図1】障害がある 例えば階段しかないと車いすは2階に上がれません 【図2】障害がない しかしエレベーターが設置されれば車いすでも2階にあがれます。社会モデルでは障害が解消された。            ●図1では、「下肢障害」という身体機能障害が、階段というバリアに接して、    「2階に上がれない」という制約(障害)が生じました。    ●図2では、エレベーターの設置によりバリアが除去され、「2階に上がれない」と    いう制約(障害)は解消されました。(身体機能の障害は変わっていません。)        (2)「障害者」の考え方 【ポイント1-2】「障害者」とは、①心身の機能の障害があって、②日常生活や社会生活に制限(困りごと)がある人のことで、手帳*の有無は問わない。 *身体障害者手帳・療育手帳(東京都では愛の手帳)・精神障害者保健福祉手帳 (1)の「障害の考え方」を踏まえ、障害者・障害児とは、「心身の機能障害があるものであって、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」(法第2条1)とされました。 (上記障害者手帳等*の所持者に限りません。また、高次脳機能障害(P47参照)や、障害者総合支援法において「障害者」に規定される難病患者を含みます。)  「社会モデル」では、誰でも場面に応じて「障害」が生じ、「障害者」になる、という考え方をとります。「障害」が生じない場面では、その人は「障害者」にはなりません。      〔コラム1 障害のとらえ方 『社会モデル』と『個人モデル(医学モデル)』〕   上記の図1で、「下肢の機能障害」そのものを「障害」とする考え方を「個人モデル(医学モデル)」と言います。「個人モデル(医学モデル)」では、障害は個人に属することで、障害者自身が努力して克服することに価値がおかれました。  「社会モデル」では、「下肢機能の障害」と環境のバリア(階段しかない)との関係で生じる「生活の制限」を「障害」と考えます。「障害」は社会全体で軽減・緩和すべきもので、「ありのまま」「共生」を追求することを、社会的な価値と考えます。 (3)障害者の権利と、行政機関等・事業者の義務 【ポイント1-3】障害者には「バリアの解消」を申し出る権利があり、行政・事業者には応じる義務がある。   解消の方法や程度は、相互の「建設的対話」により、個別的に決めていく。     障害者差別解消法は、行政機関等・事業者を対象としています。  「社会モデル」による「障害」「障害者」の考え方から、「障害」(心身機能に障害がある人が経験する生活上の制限)は、社会がバリア(社会的障壁)を解消することにより、軽減していくものとなります。  従って、「バリア解消の申し出」は障害者の権利です。障害者から申し出があった場合、行政機関等・事業者は「過重な負担」がない限り、バリアの解消や緩和のために、必要かつ合理的な配慮をしなければなりません。 ●事業者の範囲 法が対象とする「事業者」は、一般的には店舗や各種サービスの提供者(個人・法人を問わず)を言います。また非営利であっても「同種の行為を反復継続する意思をもって行う団体・個人」(自治会・商店会・ボランティアグループなど)も含まれます。(国基本方針第2-1-2) 3、心のバリアフリー  障害者差別解消法は、個人を対象とはしていません。しかし差別解消には、一人ひとりの心の中の差別や偏見の解消が欠かせません。  内閣府は、「2020パラリンピック」を共生社会実現の契機ととらえ、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を策定しました(2017年2月閣議決定)。共生社会の実現にむけた二つの柱として、「心のバリアフリー分野」(国民の意識や個人の行動に向けて働きかける取組み)と、「街づくり分野」(ユニバーサルデザインの街づくりを推進する取組み)を検討、推進しています。  「心のバリアフリー」とは、様々な心身の特性を持つ全ての人が、お互いに理解し合うために、話をしたり、支えあうことです。 ●「心のバリアフリー」理解のポイント(ユニバーサルデザイン2020行動計画) ① 「障害の社会モデル」を理解する ② 障害者(及びその家族)への差別を行わないよう徹底すること ③ 異なる状況にある人とコミュニケーションする力をつけ、全ての人の困りごとや痛みを想像し、共感する力をつけること 第2 何が「障害者差別」にあたるか  障害者差別解消法は、障害者差別を、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の不提供」の2種類としています。「不当な差別的取扱い」は「してはならない」、「合理的配慮」は、行政機関は「義務」、民間事業者は「努力義務」となっています。  平成30年10月に東京都は条例により、令和3年5月には法改正が成立し、民間事業者についても「合理的配慮」が「義務」となりました。  1、不当な差別的取扱いの禁止(国基本方針第2-2)   (1)基本的考え方   【ポイント2-1】差別にあたるかどうかは、障害のない者と比較して「機会の平等」が損なわれているかどうかで判断する。    「不当な差別」とは、障害者に対して、①正当な理由なく、②障害を理由として、③サービス等の提供を拒否する又は制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付するなどにより、障害者の権利利益を侵害することです。  「権利や利益が損なわれているかどうか」は、「画一的、形式的平等」(手続き等が同じ対応等)ではなく「実質的に同じ機会になっているかどうか」で判断します。個々の事情に応じた配慮のもとで「実質的平等」となっているかどうかです。  例えば、イベント等の参加募集にあたり、「抽選・電話受付のみ」とすると、電話を利用できない人(聴覚障害者など)は、抽選のスタートラインに立てません。抽選は、誰にでも平等な方法に見えますが(対応の形式的平等)、電話が使えない人は最初から申し込めません(機会の不平等)。これは「不当な差別的取り扱い」となります。  事業実施にあたっては、「機会の平等」が確保されているかどうかを、今一度確認してください。    ●差別に当たる例-1 「障害を理由としてサービスを提供しない・コミュニケーションをとらない」  ●差別にあたる例―2 障害のない人に無い条件をつける、障害に配慮しないで、障害のない人と同じ条件をつける   (2)正当な理由とは?(国対応要領第2-2-(2))  「障害のない人と異なる対応」に「正当な理由」があれば、差別とはなりません。「正当な理由」とは、「客観的に見て、正当な目的があり、やむを得ない」と言える場合です。(①安全の確保 ②財産の保全 ③事業の維持 ④損害の防止など)  「正当な理由」にあたるかどうかは、個別の事案ごとに、総合的・客観的に判断します。また、判断した場合は障害者にその理由を説明して、理解を得るよう努める事が重要です。  なお、障害者の機会の平等を確保するための優遇措置等は、障害者差別にはあたりません。     ●「障害がない人と異なる対応」だが、差別に当たらない例  ・障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い     例)交通機関などの割引、飛行機等の優先入場     ・プライバシーに配慮しつつ、必要な範囲で障害の状況等を確認する 例)安全な誘導のために、どの程度歩行できるかを聞く 2、合理的配慮の提供(国基本方針第2-3)   (1)基本的考え方 「合理的配慮の提供」とは、①障害のある人などから、②バリア(社会的障壁)の除去を求められた場合に、③負担になり過ぎない範囲で、バリアの除去や引き下げを行なうことです。  理由(過重な負担等)がないのに、「合理的配慮を提供しない事」は差別にあたります。    【ポイント2-2】話し合いで柔軟な対応を(建設的対話)  「申し出の内容(要望)」は、そのままでは難しい場合もある。しかし多くの場合、丁寧に話合うことで、「今どういう方法が取れるか」(合理的な配慮方法)が見えてくる。     このプロセスを「建設的対話」と言い、差別解消の重要なキーワードです。    ●合理的配慮の例  (例1:意思疎通の配慮)書類の代筆や代読を行う  (例2:ルールの柔軟な変更) スクリーンや手話通訳などがよく見える場所に座席を配置する  (例3:物理的環境への配慮) 段差がある場合、移動の補助をしたり、スロープを一時的につける    (2)意思の表明  法では、「障害者から‥‥意思の表明があった場合」(法第7条・8条)に合理的配慮を義務(民間事業者は努力義務*)づけています。行政機関等・事業所は、障害者の意思表明を受け止め、適切に対応しなければなりません。 *東京都は、条例により、民間事業者の合理的配慮も義務とした。(平成30年10月)    【ポイント2-3】「差別解消の要望」(意志の表明)を受け止める  差別解消の要望は、他の相談や苦情と混在しているなど、分かりにくい場合もある。相談者の気持ちを受け止め、「何に困っているか」、「どうなったら良いと考えているか」等を丁寧に聞き取り、相談者の意思を確認して向き合うことが、「建設的対話」の第一歩となる。   ① 「意思の表明」の手段  障害によっては、言語(手話を含む)によるコミュニケーションが困難な場合もあります。意思は、障害に応じた様々な手段(点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など)により伝えられます。 コミュニケーションの方法が分かりにくい場合    は、本人にどのような方法が良いかを確認して下さい。  (⇒第4 相談対応の基本と合理的配慮 P24~28参照)   ② 「意思の表明」が困難な場合  「意思の表明」には、障害者の家族、介助者・支援者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行う表明も含まれます。  また、「意思の表明」がなくても、バリア(社会的障壁)の除去を必要としていることが明白であるとき*には、適切と思われる配慮に努めることが望まれます。(*言語ではなく、行動などで意思を表現する等)   (3)過重な負担を伴う場合  要望された「合理的配慮」が「過重な負担」を伴う場合は、要望どおりの配慮を行わなくても、差別とはなりません。  「過重な負担」にあたるかどうかは、個別の事案ごとに事務・事業への影響の程度等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。  「過重な負担」の基準は、個々の事業者により異なります。 (国は「基本方針」で、判断の要素として、①事務事業への影響の程度 ②実現可能性の程度 ③費用負担の程度 ④事務事業規模 ⑤財政・財務状況 などをあげています。)  過重な負担に当たると判断した場合には、障害者にその理由を説明し「今できる範囲での配慮」を提案するなど、対話を重ねて理解を得るように努めることが重要です。      (参考)内閣府「合理的配慮の提供事例 H29.11」より 合理的配慮の提供における留意点             (対話の際に避けるべき言葉)                 「先例がありません」  ⇒ 障害者差別解消法が施行されており、先例がないことは断る理由になりません。 「特別扱いできません」  ⇒ 特別扱いではなく、障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的です。 「もし何かあったら」  ⇒ 漠然としたリスクでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。 「その障害ならば」  ⇒ 同じ障害種別でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、 一括りにしないで検討する必要があります。(盲/弱視、ろう/難聴、全身/半身 など) 〇障害者からの配慮の申し出について、合理的ではないものや過重な負担があるものについては、その提供をお断りすることができます。 (例)         ・膨大な分量の資料の全文読み上げを求められた ・筆談で十分対応できる簡潔なやり取りに手話通訳の派遣を求められた ・必要性がないのに買物中は常に店員が同行することを求められた ・個人的な外出予定に沿うよう公共交通機関の時間変更を求められた ・否定されるとストレスで症状が悪化してしまうからと、強く求められた 3、環境の整備(国基本方針第5-1)  合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や、障害者との関係が長期にわたる場合には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、「環境の整備」によるバリアフリー化が効果的です。環境の整備は、「社会モデル」による「障害」を緩和軽減するとともに、中長期的なコストの削減や効率化にもつながります。   【ポイント2-4】環境整備を視野に  合理的配慮の要望を受けたときは、①その時にできる合理的配慮の提供を考える一方で、②必要とする人の多さや期間を考え、③「将来的な環境の整備の必要性」を検討する。  環境の整備には、①ハード面の整備、②情報アクセシビリティ(情報の利用のしやすさ)向上のための施策 ③ソフト面(サービスの充実、支援者への研修等)の整備・充実があります。区は、次のような整備を行ってきました。 ① ハード面   ・施設内の段差解消、スロープ設置、障害者用トイレの整備   ・床をすべりにくくする加工、ローカウンターの設置    ・磁気ループ(*)等の補聴装置の設置、音声誘導装置の設置 等       *磁界を発生させて補聴器を補助する放送設備 ② 情報アクセシビリティー   ・ホームページ音声読み上げ対応 刊行物の音声コード付置    ・一般文書に加えて「わかりやすい版」の作成 等 ③ ソフト面   ・障害福祉体験や、窓口対応についての研修の実施   ・窓口での手話通訳や、遠隔手話通訳体制の整備     ●【合理的配慮に関する環境の整備】(区基本方針第4)  区は、世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」(平成19年3月)を制定し、「ユニバーサルデザイン」の考え方に基づき、生活環境の整備に取り組み、社会的障壁の除去や職員の研修を進めてきたところであり、「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な環境の整備」については、引き続き、取り組んでいく。        〔コラム2 駅のエレベーター〕  今でこそ駅のエレベーターは、あって当たり前です。しかし階段しか無い時代には、車いすの人がホームに上がるには、その都度駅員や周りの人に頼み、抱え上げてもらわなければなりませんでした。環境整備(エレベーターの設置)によって、「ホームに上がれないという障害」そのものが無くなり、その結果「中長期的なコストの削減がはかられた」例です。 第3 世田谷区の取組み  世田谷区は、平成28年3月25日「障害者差別解消法の施行にあたっての世田谷区基本方針」を策定し、「世田谷区における障害を理由とする差別の解消に関する職員対応要領」を制定しました。  また、障害施策推進課に専門調査員を配置し、各部署への相談対応への支援と民間事業者等への対応を行うこととしました。 1、 相談・問い合わせへの対応  (1)内容を聞き取り、対応所属を確認する  障害を理由とする差別について相談を受けたら、まず内容と要望を聞き取ります。対応所属(次表)を確認し、他の所属が対応すべき場合は、内容を引き継ぎます。    【相談の対応所属】 ① 区が実施する事業について 各担当課 ② 区の担当課のある民間事業等(例:私立認可保育園) 各担当課 ③ 区の担当課のない民間事業等(例:レストラン) 障害施策推進課   (障害施策推進課は、①②の各担当課の対応について、支援を行うとともに、区の担当課のない民間事業所について対応します。)  国や都、民間の事業に関すること、障害者差別解消法にかかる全般的な内容については、以下を案内して下さい。  (案内先)障害施策推進課(電話:03-5432-2424 FAX:03-5432-3021) (2)相談の進め方 ① 区が実施する事業 1. 相談内容が障害者差別にあたるかどうかを判断します(P11 第2「何が障害者差別にあたるか」参照)。その際「表明された要望」のみで判断せず、具体的な「困りごと」や要望に至った経過を丁寧に聞き取り、相談者の置かれている状況を勘案することが重要です。   P24(第4「相談対応の基本と合理的配慮」)を参考としてください。 2. 「不当な差別的取扱い」にあたる場合  相談内容が「不当な差別的取扱い」にあたる場合は、「正当な理由」があるかどうかを検討します。「正当な理由」がない場合はただちに改めます。また「正当な理由」がある場合は、申出者にその理由を説明し、理解を求めます。  「不当な差別的取扱い」の背景に「合理的配慮の不提供」がある場合もあります。 3. 「合理的配慮の不提供」にあたる場合  要望内容が「過重な負担」にあたるかどうかを検討します。「過重な負担」にあたる場合は、相談者にその理由を説明し理解を求め、代替え手段の検討を含め、解決に向けた話し合いを行います。 4. 差別にあたらない場合 (ア) 環境整備の要望  障害者差別は、障害の特性や、具体的場面・状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。環境整備(設備の大幅な改修、一斉研修など)の不備は、障害者差別にはあたりません。しかし環境整備 の要望は長期的な課題として真摯に受け止めるべきものです。  上記1と同様に要望を聞き取り、可能な範囲で区の方向性を説明するなど、相談者に寄り添った対応が必要です。 (イ) その他(サービスへの苦情や要望)は個別に対応します。 ② 区の担当課のある民間事業者等  事業者に連絡し、対応を依頼するとともに、対応状況の報告を求めます。必要に応じて解決への支援を行います。 (3)「障害者差別に関する相談報告書」の作成   対応完了後報告書を作成し、所属長の確認後、障害施策推進課に送付します。 (参考)不当な差別・合理的配慮・環境整備の関係  【不当な差別】入口に段差があり、車いすの入店を断られた  【合理的配慮の要望】入店時に段差介助をしてほしい 【店の事情】店員が高齢で段差介助ができない ≪建設的対話≫ 【今できる合理的配慮】簡易スロープの設置 【環境整備】(長期的課題)改修して段差を解消  〔コラム3 商店等における共生社会促進事業〕  区では、区内の商店や事業所に対して、合理的配慮を提供するための   物品の購入・作成経費を助成しています。  〇助成対象/段差解消用簡易スロープ(右写真)、点字メニュー、筆談ボード(筆記によるコミュニケーション用具)など ●【こんな時は、ご相談下さい】 ・不当な差別だと言われたけど、差別にあたるの? ・要望内容の実現は難しいけれど、他にどんな方法があるの?     ・過重な負担にあたると思うけど、やらなければならないのか? ・報告書の書き方が分からない    等々‥ 障害施策推進課 計画担当 専門調査員   内線2424 2、障害者の情報アクセシビリティ向上に向けた取組み   世田谷区では、視覚や聴覚に障害がある人の窓口での利便性の向上、各種事業等への参  加の促進を図るため、次のような取組みを行っています。障害のある人が必要な行政情  報を容易に利用できるよう、適切な対応を心がけてください。 (1) 聴覚障害者を対象とするもの   ① 区事業等への手話通訳者の派遣  区がイベント等を開催(主催若しくは後援)する事業については、世田谷区が手話通訳者を配置します。依頼先は障害施策推進課です(経費は担当課負担となります)。なお、手話の内容をビデオ等に収録する場合は、必ず事前にご連絡ください。  ●庁内公開公開サイト 障害施策推進課2-08参照     ② 区事業等への要約筆記者等の派遣  手話ができない聴覚障害者等に配慮し、区がイベント等を開催する際に要約筆記者を配置します。各団体へ直接依頼してください。  ●庁内公開公開サイト 障害施策推進課2-09参照 ア、要約筆記者  要約筆記とは、話の内容を手書き又はパソコン等で要約して記述し、ノートやスクリーン等を通じて、聴覚障害者に伝えるコミュニケーション方法です。 イ、パソコン文字通訳者  パソコン文字通訳とは、話の全内容をパソコンで記述し、聴覚障害者等に伝えるコミュニケーション方法です。インターネットを利用し、別の場所にいる文字通訳者が遠隔で実施する場合もあります。 ※実施団体の情報提供を行っております。P21[お問い合わせ先]に連絡ください。  ③ 手話通訳者の待機  区役所第2庁舎1階のロビーに、平日(閉庁日除く)の午前9時から正午まで、手話通訳者が待機しています。各庁舎の用件のある窓口へ同行して手話通訳を行うほか、電話の代行も行います。  また、世田谷以外の総合支所へ来庁された聴覚障害者が保健福祉課に申し出ることで、タブレット端末を使って区役所の手話通訳者とつなぐ遠隔手話通訳を行うことが可能です(手話通訳者が応対中の場合は、利用いただけない場合があります)。 (2)視覚障害者を対象とするもの   ① ホームページへのテキストデータの掲載  視覚障害者は、読み上げソフトを使用して、ホームページ上のテキストファイルの内容を音声で聞くことができます。(PDFファイルを掲載する場合は、読み上げソフトに対応する形式で作成しておく必要があります。)   ② 印刷物・封筒への音声コードの印刷  音声コード(表紙右下のQRコード)は、対応する携帯端末や専用アプリを入れたスマートフォン等を利用して、内容を音声で聞くことができます。 ◎音声コードを導入する際の詳細については、庁内公開サイトの障害施策推進課のページから、「4-23音声コード」を参照してください。 ③ 音声コード読み上げ用携帯端末の設置  区が寄贈を受けた読み上げ用携帯端末を、次の窓口に設置しています。作成した音声コードの確認や、読み上げを希望する区民への対応等に使用することができます。 各総合支所保健福祉課、保健福祉政策課、障害施策推進課、障害者地域生活課、介護保険課、介護予防・地域支援課、子ども育成推進課、 世田谷保健所健康企画課、健康推進課、 世田谷総合支所地域振興課、北沢総合支所地域振興課、広報広聴課、災害対策課、課税課、文化・芸術振興課、スポーツ推進課、都市デザイン課、 教育相談・特別支援教育課、中央図書館、選挙管理委員会事務局 ④ 印刷物の点字版・音声版等の作成  印刷物は、必要に応じて点字版や、音声版(内容を読み上げ、CD等に記録したもの)、デイジー版(音声データを独自の形式で圧縮し、章や節ごとに「見出し」をつけることで、読みたい節の頭だしができるディスク。最大で一枚60時間程度収録できる。)、大活字版を作成しています。   ●平成28年9月、庁内にむけて、障害者への配慮の推進に向けた情報保障について、具体的な取組みを依頼しました。(以下、通知内容の抜粋要約)    1 印刷物への音声対応について(視覚障害者への配慮)     広く区民向けに発行・配布する印刷物については、印刷枚数等に関わらず、原則として以下の音声対応をお願いいたします。 チラシ・リーフレット、特定の印刷物を郵送するための専用の封筒などには、音声コードを印刷してください。 ページ数が多い報告書等の冊子は、表紙に音声コードを印刷し、内容については区のホームページへ誘導する、音声版を作成するなどの方法を取ってください。    2 講演会等への手話通訳者配置について(聴覚障害者への配慮)  区が主催する講演会等の事業に際しては、原則として手話通訳者の配置等をお願いいたします。      (聴覚障害者が来場しないことが明らかな場合を除きます。)      難聴や中途障害の方には、手話を使わない方も多いため、事業内容や参       加者の状況により、要約筆記等の併用をご検討ください。    3 個別の対応について  対象者が特定されていて、音声版や点字資料の提供など個別の対応が可能な場合や、カード形式の配布物など音声コードの付与スペースが確保できないような印刷物等は、上記の方法によらず、状況に応じた適切な対応を行ってください。    4 経費負担      各担当課負担でお願いいたします。     [問い合わせ先] 聴覚障害者対象:障害施策推進課 事業担当 内線2414   視覚障害者対象:障害施策推進課 管理係  内線2385   〔コラム4 東京都の音声コード付き文書送付の取組み〕 〇主税局 ① すべての通知書送付用封筒に音声コードを付け、「音声コード付き文書」の申し込み方法と連絡先電話番号を案内します。 ② 希望者に、税額や納期等の情報を音声コード化した説明文書と納税通知書を送付します。     〇水道局:希望者に音声コード付き文書を送付しています。 ① 様々な媒体を活用し、「音声コード付き文書」の申込方法等を案内しています。 ② 希望者には音声コード付き文書(使用料・金額・支払い期限等)と請求書を定期的に送付します。 3、障害者差別解消法についての仕様書特記事項(平成29年4月1日~)  区が締結する以下の契約全件について、仕様書に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する特記事項」を追加することとしました。    (1) 対象となる契約 ① 区民対応等の対人型のサービス提供業務が含まれる全ての委託契約(担当課契約を含む) (例:施設の管理運営業務、受付・警備業務、講座・イベント等の実施業務、コールセンター業務、車両運行・旅行業務、その他の対人サービス提供型の業務等)  ② 区の公共施設の管理運営を指定管理者に行わせているもの    (2) 特記事項の添付等の開始日      平成29年4月1日以降に締結するもの    (3) 具体的な取組み ①事業者への周知 ②特記事項の添付 ③基本協定書への文言追加(指定管理施設のみ該当)④報告書の提出 ⑤事業者との対応協議、対応指導、履行確認  (4)障害を理由とする差別の解消の推進に関する特記事項(ひな形) ① 区民対応等の対人型サービス提供業務が含まれる全ての委託契約の場合  乙は、本業務の実施にあたり「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)を遵守するとともに、甲が定めた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行に当たっての世田谷区の基本方針」及び「世田谷区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領」に準じた取扱いをすること。   ② 指定管理者との協定締結や、委託契約締結にあたっての考え方  世田谷区がその事務又は事業の一環として実施する事務を、指定管理者と協定を締結し、または事業者へ委託する場合には、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、事業者に法の内容を周知するとともに、仕様書において特記事項を追加することとしました。  乙は、本業務の実施にあたり「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)を遵守するとともに、甲が定めた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の施行に当たっての世田谷区の基本方針」及び「世田谷区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する職員対応要領」に即した取扱いをすること。 なお、当該基本方針及び要領については、世田谷区ホームページ(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/105/144/1840/d00137262.html)を参照のこと。 4、障害者差別解消支援地域協議会  区は、障害者差別解消法第17条第1項に規定する障害者差別解消支援地域協議会(以下、地域協議会)について、「世田谷区自立支援協議会」を「地域協議会」として位置づけました。  ア 地域協議会の概要  地域における様々な関係機関が、相談事例等の情報の共有や協議を通じて、各自の役割に応じた事案解決や類似事案の発生防止のための取組みなど、地域の実情に応じた差別の解消のための取組みを主体的に行うネットワーク  イ 地域協議会の取組み内容 ① 複数の機関等によって紛争の防止や解決を図る事案や、関係機関が対応した事案の共有 ② 障害者差別に関する相談体制の整備、障害者差別の解消に資する取組みの共有・分析  ウ 具体的な取組み内容 ① 世田谷区自立支援協議会 虐待防止・差別解消・権利擁護部会において、イ①②についての報告・情報共有・意見交換を行う ② 世田谷区自立支援協議会(本会)において、イ①②についての報告・情報共有を行う 第4 相談対応の基本と合理的配慮 1、対応の基本と考え方  相談者は、「障害がある人」ではなく、「障害と社会のバリアにより、日常生活や社会生活で制限を受けている人」です。困り事の内容や程度は一人ひとり違います。     (1)ていねいに聴いて、要望を確認する  相談の第一歩は、ていねいに聴くことです。相談者の立場に立ち、困っている気持ちに寄り添った、丁寧な対応を心がけてください。「この人はきちんと聴いてくれる人だ」と信頼を得ることが、「建設的対話」につながります。  また、障害は一人ひとり違います。「この障害にはこれが良い」といった一律の対応ではなく、相談者の状況に応じた、柔軟な対応を心がけてください。困りごとや要望はこちらで判断せず、相談者に聞きます。    (2)「説得」でなく「対話」を  相談内容が区のルールやサービスにそぐわない場合も、すぐに否定や説得をするのではなく、対話により困りごとへの対応策を探しましょう。    (3)機会の平等を目指す  「障害のある人もない人も同じように出来る状況」について、相談者とともに考えることが大事です。 また、対応方法は一つではありません。「過剰な負担」等で要望どおりの対応が難しい場合もあります。今出来る工夫を考えて、お互いに歩み寄りながら解決策を見つけて行くことが「建設的対話」です。「出来るか出来ないか」の二者択一ではなく、少しでもできることを探していく姿勢が大切です。  (4)一人で抱えこまない  障害は個別的で、外見では判断がつかないことが沢山あります。困ったら周囲と相談しましょう。 2、案内・誘導の場面では (1)入口付近や廊下で困っていそうな方を見かけたら  「何かお手伝いすることはありますか」と積極的に声をかけましょう。視覚障害者などから誘導を頼まれて、誘導方法が分からないときは、思い込みで動かず、必ず本人に方法を確認しましょう。 (2)受付の手順等について    障害の特性と必要性に応じ、これまでの慣行にとらわれず、柔軟に対応します。 (3)「筆談できます」の表示  窓口等の分かりやすい場所に掲示します。筆談ボードを分かりやすい場所に設置し、係員でその場所を確認しておきます。 3、受付・相談時の配慮 【ポイント3-1】本人と話す・本人に聞く  介助者や手話通訳者等が同行している場合も、相談者本人に直接話しかけましょう。会話が難しい場合は、他のコミュニケーション方法を工夫してください。意思の主体は本人です。    (1)会話が難しいとき  言葉が不明瞭で聞き取りにくい、障害のためにこちらの話が通じにくい場合も、敬遠したり、分かったふりをせず、「ゆっくり」「丁寧に」「繰り返し聞き返す」など相手の意思を確認します。それが信頼感につながります。  また、必要に応じて絵、図、写真等も使って説明します。相手の表情や仕草などから要件を想像して「〇〇ですか?」と聞くことも有効です。    (2)思い込みや押しつけにならないように 障害が同じでも、困り事や要望は一人ひとり違います。「障害があっても、できることは自分でしたい」との思いが強い人もいます。何に困っているのか、どのような配慮が必要と考えているのか、本人から確認します。  (3)年齢相応の言葉遣いを  子ども扱いした言葉や馴れ馴れしい態度は、相手を目下に見ることになります。年齢相応の敬意をこめた、わかりやすい言葉で話しましょう。 例 (×)「Aちゃん、~ね。」  (○)「Aさん、~ですね。」  (4)わかりやすい説明を  専門的な用語を避け、ポイントを明確に、文章は短く、一般的な分かりやすい言葉で説明します。  なお、事前に来所が分かっている場合は、障害特性に応じた方法で説明できるよう、あらかじめ説明資料等の準備をしておきます。 【ポイント3-2】プライバシーへの配慮  障害の原因や内容については、「今困っていること」の解決に必要な範囲で、本人の同意を得て確認しましょう。    (5)障害の原因や経過について  相談者から話す場合を除き、必要がないのに詳しく聞いたりしてはいけません。また、関係機関に連絡を取る場合は、必ず相談者の了解を取ります。 【ポイント3-3】相談の場所や位置への配慮  相談者の状況に応じて、場所や高さを配慮します。  (6)「上から目線」にならないように  椅子や車いすに座っている方に対しては、少しかがんだり、椅子に掛けるなどして、同じ目線で話すようにします。立ったままで話すと、当事者は上から見下ろされることになり、身体的・心理的に負担になります。     (7)同行者等(手話通訳者、ガイドヘルパー、盲導犬など)がいる場合  相談スペースの場所や位置に配慮します。どのようにするかは、相談者に確認してください、 【ポイント3-4】「見守り」も窓口の支援      (8)必要に応じて、いつでもサポートできるよう、声やサインが読み取れるよ    うに待機して見守ることも大切です。  4、手続き(書類の記入)の場面では  記入方法は、記入例とともに、文書で大きくわかりやすく表示します。記入で困っている方には、「お手伝いしましょうか」と声をかけます。 (1) 代筆  障害の状況から自筆が困難な場合には、本人の意思を確認して、可能な限り代筆を行います。     〔コラム5 記名と署名〕  記名とは、署名以外の方法(代筆、ゴム印等)で氏名等を記載するもので、署名とは、本人が自筆で手書きするものを言います。  一般論として「記名+印」は、本人の利益になるものなので、代筆可です。一方「署名+印」は本人に義務を負わせるもの(例:連帯保証人等)で自筆が必須(代筆は不可)です。実際には必ずしもこの通りではないので、事務の内容に応じて、可否を確認してください。     (2) サインガイド  視覚障害など、記載欄の位置や大きさがわかりにくい場合や、記載欄にまっすぐ記入することが難しい場合に、使用します。プラスチックなどの板で、記名欄だけを切り取り、書類に重ねて使用します。クリアファイルなどで作成出来るので、必要に応じて作成・活用してください。           5、イベントや会議の開催  区民を対象としたイベントや会議には、障害のある人の応募・参加があります。申し込みを受けてから配慮を考えるのではなく、イベント等の企画段階で、必要な合理的配慮を想定しておきましょう。  開催通知や申込書に「配慮希望の有無等」の欄を作っておくと、事前準備がしやすくなります。            〔コラム6 エレベーターのない建物での講演会〕  エレベーターが無く、階段を使わなければ移動できないフロアー(2階以上や地下等)で講演会等を実施する場合は、車いすや杖を使用した方の申し込みを想定しておきましょう。階段の昇降介助は、原則として主催者が対応します。介助のしかたや希望を当事者に確認し、必要な体制を準備しておくことが重要です。 6、緊急時の対応を想定する (1)障害の特性に合わせたコミュニケーション方法により、情報を的確に伝達し、迅速に避難誘導します。 (2)日常的な避難訓練において、障害のある方を交えたうえで、車いすやアイマスクを用いた疑似体験を実施し、安全な避難方法を確認するなど、自力での移動が困難な方の補助体制を確保できるように努めます。