世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想 概要版   平成25年11月 T 認知症在宅生活サポートセンター構想について 区では、平成24年6月より「(仮称)世田谷区認知症在宅支援センター構想等検討委員会」を設置し、認知症になっても安心して生活できる地域社会の実現に向け、認知症の早期対応体制の確立や、区における認知症在宅支援施策について検討するとともに、認知症在宅支援を推進する専門的かつ中核的な役割を果たす拠点として「(仮称)認知症在宅支援センター」の設置を検討した。 検討を進める中で、あんしんすこやかセンターをはじめとする様々な関係機関等を後方支援することで、認知症の人や家族が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、名称を「(仮称)認知症在宅支援センター」から「認知症在宅生活サポートセンター」(以下「センター」という)とし、センター構想をまとめた。 また、平成25年6月に策定された「梅ヶ丘拠点整備プラン(素案)」では、梅ヶ丘病院跡地に全区的な保健医療福祉の拠点を整備し、区が整備する施設(区複合棟)の施設機能の1つとして、センターの整備を位置づけている。 U 区における認知症の現状と課題 1.認知症に関する統計 平成24年8月に公表された国の推計では、何らかの認知症の症状があり介護を必要とする高齢者は全国で305万人であり、65歳以上人口の9.8%になると推計している。 一方、世田谷区においては、平成25年4月1日現在、介護保険の要支援・要介護認定者約3万4千人のうち、認知症の症状があり介護を必要とする人は約1万8千人であり、その数は平成20年以降、毎年、平均で約1千人ずつ増加している。 2.区の施策の評価と課題 認知症の増加とともに、認知症に関する区民の関心も高まってきているが、地域社会における認知症の人と家族への正確な理解が十分ではないために、多くの認知症の人と家族が、地域社会から孤立し生きづらさを感じている現状がある。 また、家族の介護の困難さとともに、認知症の本人への効果的で適切な在宅支援の認知症ケアが充分実施されていない現状も指摘されている。 区における今後の認知症の在宅支援については、早期のタイムリーで適切な診断にもとづき、本人や家族への適切な早期対応や早期支援を行うことにより、認知症の進行の遅延化や家族の介護負担の軽減を図り、在宅生活の継続を可能とする予防的な取り組みを推進することが重要な課題である。 V これからの区の認知症施策に関する基本的考え方 1.施策の方向性 「認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる世田谷」を引き続き目指すとともに、これまでの認知症施策を検証し、国の制度設計を注視しながら、認知症の人の在宅支援を一層推進する。 2.取り組みの視点 (1)認知症の人がこれまで生活してきた物理的及び人的環境をできるだけ変えることなくその人らしい生活を維持し、認知症である前に、ひとりの人として尊厳が守られ、安心して暮らし続けることができることを目指す。 (2)認知症の人や家族への早期対応・早期支援、あんしんすこやかセンターやケアマネジャー等への支援(バックアップ)、孤立しがちな家族介護者が仲間づくりや認知症に関する情報交換ができるための支援、認知症に関する世田谷区の実態等の情報発信や医療と福祉の連携推進、認知症サポーターの実践的な人材育成等の取り組みをすすめる。 W 認知症在宅生活サポートセンターに求められる役割 区ではこれまで、もの忘れや認知症に関する地域の身近な窓口として、各あんしんすこやかセンターに「もの忘れ相談窓口」を設置するほか、認知症に関する普及啓発や家族への支援、介護保険の地域密着型サービスの積極的な整備誘導など、認知症の人の在宅支援施策を進めてきた。 認知症の人の在宅支援では、早期のタイムリーで適切な診断と、本人や家族への早期対応や早期支援を行うことにより、認知症の進行の遅延化や家族の介護負担の軽減を図り、在宅生活の継続を可能とすることが求められている。 このことからセンターは、認知症の早期対応体制の確立や、医療と福祉の連携推進、医療・介護の専門職の実務的な支援能力の向上、家族支援の充実等、区における認知症ケアモデルの構築を進めていくための専門的かつ中核的な全区の拠点としての役割を担うこととする。 X 認知症在宅生活サポートセンターの機能 (1)訪問サービスによる在宅支援のサポート機能 【新規】 @初期集中支援チームによる早期対応や早期支援の実施 (看護師・医師等からなる認知症支援のための専門チームを設置し、身近な相談窓口であるあんしんすこやかセンターへの専門的な支援(バックアップ)、認知症の人と家族への初期アセスメント、概ね6か月間の継続的なケアの提供、家族への助言等をアウトリーチ(訪問)により実施する機能) (2)家族支援のサポート機能 【拡充】 @家族介護者のための勉強会の企画・実施 A家族会立ち上げ支援および運営支援 B家族会同士の交流会などインフォーマルなネットワークづくりの支援 Cレビー小体型認知症や若年性認知症等の対象別の家族交流会の実施 (全区的な家族向けの講座の実施や家族会の運営支援、家族会同士のインフォーマルなネットワークづくりを推進する機能) (3)普及啓発・情報発信機能 【新規】 @認知症の在宅支援に関する全区的な実態把握や、対応困難事例等の支援に 関するノウハウの蓄積、医療・介護サービスを担う人材育成への活用 A認知症の人が中心となって交流し、家族や地域住民、専門職等の誰もが参加でき集う「認知症カフェ」等の立ち上げ支援と継続支援 B認知症に関する区内の医療や福祉、認知症予防活動、インフォーマルサービス等の情報収集、及び区民やあんしんすこやかセンター等の関係機関、世田谷区福祉人材育成・研修センター等への情報発信 (区内の認知症に関する実態把握、対応困難事例の支援方法等のノウハウの蓄積、区民や関係機関等に対する普及啓発・情報発信の機能) (4)技術支援・連携強化機能  @あんしんすこやかセンターやケアマネジャー等からの相談や事例検討等を通じた在宅支援に関するスーパービジョンの実施【新規】 A認知症地域連携会議(あんしんすこやかセンターの認知症専門相談員を中心に、行政、民生委員、自主グループ、家族会、かかりつけ医や認知症サポート医、病院等の医療機関、NPO、成年後見センター、消費生活センター等の地域の関係団体等が一堂に集まる連携会議)の実施【拡充】 (事例検討や地域の課題の解決、関係者の連携強化等を目的としたカンファレンスでのスーパービジョンの提供、医療や介護の連携推進や地域の関係機関との協力関係づくりのための連絡会議等の開催による技術支援・連携強化の機能) (5)人材育成機能  @世田谷区福祉人材育成・研修センターやあんしんすこやかセンターと連携した、認知症に関する専門研修の企画立案や専門講師派遣【新規】 ・ケアマネジャー等の介護・福祉専門職向け研修 ・あんしんすこやかセンターの認知症対応力の向上や若年性認知症に関する研修 ・認知症に関する多職種研修の実施 A区民人材の育成や活動支援【拡充】 ・認知症サポーター養成講座の実施に関する事務局機能 ・認知症サポーターステップアップ研修の実施 (世田谷区福祉人材育成・研修センターにおける認知症専門研修プログラムに関する企画や講師の選出等に係る連携・協力、認知症サポーターの養成等に関する専門職及び区民ボランティアの人材育成の機能) Y 若年性認知症に関する今後の区の施策及び認知症在宅生活サポートセンターの役割 1.若年性認知症の在宅支援の現状と課題 65歳未満で発症する若年性認知症は、現役世代で発症するため、本人や家族の経済的損失、心理的衝撃が大きいほか、認知症の進行が65歳以上の認知症に比べて早い等の困難を抱えている。 若年性認知症の人は、65歳以上の人に比べると身体機能が保たれている方が多く活動性が高いため、地域で過ごす際に一般的な認知症デイサービスでは就労支援的プログラムがない等、本人にとって内容がもの足りないといった問題があり、若年性認知症の人に適した居場所が不足している現状がある。 また、障害手帳や障害年金の申請受給等により、経済的支援が可能となるため、介護保険制度以外の支援サービスに関する本人や家族への情報提供が不可欠である。 若年性認知症に特化した介護保険サービスとしては、平成22年4月から、社会福祉法人世田谷区社会福祉事業団のデイホーム太子堂1か所において、若年性認知症コース「ともに」を週1回実施しているが、若年性認知症の介護保険認定者数から見て、サービス供給が不足している現状がある。 2.若年性認知症に関する区の施策の方向性 若年性認知症の人の早期支援では、相談窓口や利用できるサービスに関する本人や家族への情報提供、若年性認知症の人が過ごしやすい居場所の確保が必要となる。 相談窓口や利用できるサービスの情報提供については、これまでもあんしんすこやかセンターや総合支所保健福祉課等が対応しているが、家族会等からは、相談窓口や利用できるサービスに関する情報発信をさらに行ってほしいとの要望があるため、情報パンフレット等の作成・配付や区ホームページでの周知等に一層取り組む必要がある。 若年性認知症の人の居場所の確保については、若年性認知症の特性に適したプログラムを有するデイサービス等の設置が望ましいことから、当面、若年性認知症コースの増設及びプログラムの充実を目指す。 Z 整備・運営体制 1.センター機能の実現に向けて 今後は、センターの5つの機能について、区の喫緊の課題として、取り組み可能なものから、順次、事業を開始する。 また、これらの事業は、新たな取り組みや、これまで実施してきた事業のさらなる拡充が必要であることから、平成25年度から個々に事業化を進め、効果的な実施方法の検証等を行いながら、開設に向けて事業手法の確立を目指していくこととする。 2.設置場所 区では、平成25年6月「梅ヶ丘拠点整備プラン(素案)」において、都立梅ヶ丘病院跡地(世田谷区松原6−37)に全区的な保健医療福祉の拠点を整備することとし、区が整備する施設(区複合棟)の機能の1つとしてセンターの整備を位置づけている。 「梅ヶ丘拠点整備プラン(素案)」については、平成25年度中に正案を策定・公表し、平成26年度より拠点整備事業に着手する予定であり、平成31年度の施設開設を目指した準備を進めている。 センターは、平成31年度の開設を待って動き出すのではなく、平成26年度に庁内の準備担当組織を立ち上げ、1つの機能から実施していく。また、平成27年度から平成30年度の間は、庁内に(「認知症在宅生活サポート室」)を設置し、平成31年度のセンター開設までに全ての事業の実施体制を整備する。 3.関連法令 ・介護保険法第5条の2(認知症に関する調査研究の推進等) 「国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症(脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態をいう。)に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じた介護方法に関する調査研究の推進並びにその成果の活用に努めるとともに、認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」 4.運営主体のあり方 センターは、国、都の専門機関や地域の医療機関、あんしんすこやかセンター、総合支所、福祉人材育成・研修センター、成年後見センターや消費生活センター等の相談支援機関等との連携と調整が重要であり、また、センターの運営は、認知症に関する専門的なノウハウが必須のため、区の事業として実施し、運営は、専門性の高い法人に委託するものとする。 [ 開設準備スケジュール ※センター開設に向け、機能ごとに順次、委託による事業運営を行っていく。センター委託開始までの間は区職員の直営による準備を行う。