メルクマールせたがや10年目シンポジウム ひとりぼっちにならない社会へ 〜つながり続ける支援を目指して〜                      【日時】令和5年8月8日(火)18:30〜                      【会場】成城ホール ○司会(村田) 皆様、大変お待たせしました。ただいまより「メルクマールせたがや10年目シンポジウム ひとりぼっちにならない社会へ〜つながり続ける支援を目指して〜」を開催いたします。  本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。私は、メルクマールせたがやで支援サービス統括責任者をしております村田風友と申します。本日は、司会進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)  本日の報告会は、不登校やひきこもりなど、生きづらさを抱えた方の支援を目的に開設された世田谷若者総合支援センターメルクマールせたがやが開設から10年目を迎えたことから、これまでの成果や課題を報告させていただくとともに、これまでの活動状況を踏まえながら、つながり続ける支援の大切さについてディスカッションしていければと思っております。  まず初めに、開会に先立ちまして、世田谷区長の保坂展人様よりご挨拶をちょうだいします。保坂区長、よろしくお願いします。 ○保坂区長 皆さん、こんばんは。メルクマールせたがやが10年。10年といったら短くない、大変歴史を刻むことになりました。思い返せば、私が区長になってちょうどこの前の選挙で4期目に入ったところなので、10年以上前ですか、11年前ぐらいに当時世田谷区役所に、区民利用の集会室がありまして、大体250人ぐらい入る部屋だったんです。そこに斎藤環さんをお呼びして講演会を開催したところ、満席になったんです。満席になって、すごい関心がある方が多いなと思っていたところ、質疑応答の時間になって、もうどんどん手が挙がって、うちの娘がちょうど中学生なんだけれども、あるいは30代なんだけれどもと、いろんな実例を皆さんが出しながら、斎藤さんにどう考えたらいいのか、今の接し方でいいのか、そんなやり取りがありました。その姿を見ていて、これは本格的なひきこもりの状態にある人たちの支援センターが必要なんじゃないかというふうに考えて、メルクマールせたがやの開設につながっていったわけでございます。斎藤環さんにも設立当初からご指導いただいて、現在に至っているということであります。  若者支援に力を入れるという中で、世田谷区としては2つの軸、割と元気でいろいろ表現したいという若者たちには、音楽スタジオをつくったり、ダンスの練習ができる場所をつくったりという若者交流センターみたいなところを広げていこう、もう一つは生きづらさを抱える若者の支援という軸を立てて、そちらのほうの代表的な事業としてメルクマールがスタートしました。同じ建物の中に、若者サポートステーションがありました。発達障害に悩んでいる若い人たちとのお互いの交流とか居場所づくりなども始まりました。  そういった中で、ご家族、そして当事者の方の居場所などをやってきたわけですが、課題がやっぱり出てきたんですね。というのは、若者支援って、当時40歳に至るまでの事業ですよということなので、43歳の方とか、51歳の方とかが来られた場合に、若者支援の対象から外れるということになりまして、この後、斎藤先生のお話とか、山登先生のお話があると思いますが、実は40代以上のひきこもり状態にある方は結構多くいらっしゃって、ぷらっとホーム世田谷というところで、その支援をやってきました。  法律によって、39歳か41歳かによって行くところが違うというのも、ちょっとこれはおかしいですよねということで、「リンク」という窓口を三軒茶屋に、ちょうど昨年の4月から発足をさせたところです。今、非常に多くのご相談があって、ちょっとスペースが狭くなっているそうですが、厚生労働省と掛け合って、お互いつながるテーマということで、若い世代20代、30代、他方で50代、60代、これは重層的支援整備事業といって、お互い重なるところがある事業については、一括してできるようにしようという制度を使って運営をさせていただいています。そういう制度も世田谷区でリクエストして、法律の中に入れてもらいました。  今日は、前半は施設長の廣岡さんにこの間の状況報告、活動報告をしていただき、パネルディスカッションで斎藤さん、山登さんに専門的見地からお話を伺いながら、私も入りまして、これからのメルクマールせたがやの活動を展望していきたいと思います。  長時間になりますけれども、参加いただいた皆さんに感謝を申し上げてご挨拶にいたします。ありがとうございました。(拍手) ○司会 保坂区長、ありがとうございました。  これより活動報告のための準備を行いますので、お待ちください。  これより前半のメルクマールせたがやの活動報告を始めます。なお、質問のお時間はパネルディスカッション終了後に設けさせていただいております。質問等がある方は、質疑応答の際に挙手していただければ、係員がマイクをお持ちします。Zoomでご参加いただいている方の質問に関しては、チャット機能を使い、随時受け付けいたします。チャット欄に質問を記入いただき、質問を受付事務局宛てにお送りください。質問多数の場合は、時間内に全ての質問にお答えできませんことをご了承ください。お答えできなかったZoomでの質問に関しては、後日、区のホームページにて回答予定です。  報告者は、メルクマールせたがや施設長、廣岡武明です。それでは、廣岡施設長、よろしくお願いします。 ○廣岡施設長 皆さん、こんばんは。メルクマールせたがや施設長の廣岡と申します。本日は平日の夜遅い時間にもかかわらず、多くの方にお越しいただきましてありがとうございます。また、本日はオンラインでもご参加いただいているということで本当に感謝申し上げます。  実は5周年もこの成城ホールで報告会をさせていただいておりまして、またこの場に立たせていただけることを本当に光栄に思います。  では、早速、活動報告を進めていきたいと思います。  本日の内容はこちらの5点になります。  初めに、事業概要をお話しさせていただきます。メルクマールせたがやは、令和4年4月に三軒茶屋のキャロットタワーのすぐ隣にあるSTKハイツに移転をしまして、その5階で活動しております。開室日は、月曜日から土曜日までの週6日でして、開室時間は10時から18時までとなっております。開設した当時は、池尻にありました世田谷ものづくり学校で活動しておりました。運営は、開所当初から公益社団法人青少年健康センターが世田谷区より運営業務委託を受託して関わらせていただいております。  こちらが世田谷区の若者支援ですけれども、生きづらさを抱えた若者の支援をメルクマールせたがやが中心になって取り組ませていただいております。この世田谷若者総合支援センターがメルクマールの開設と併せて設置されておりますけれども、メルクマールせたがやが個別の相談や居場所活動といった、まずは家から一歩踏み出す、そういった支援を中心に行っております。そしてすぐ隣にせたがや若者サポートステーションという厚労省事業の若者の就労をサポートする機関がございましたので、この2機関が一体となって、家から一歩踏み出すところから就労までを支援として取り組んでいたところになります。  もちろんその就労というのは大変大事なところではあるんですけれども、就学、就労に限らず、一人一人の社会参加を応援するという、そういったスタンスでこれまで活動してまいりました。  こちらがメルクマールせたがやの主な活動内容ですが、個別の相談、居場所活動、家族会、そして訪問活動や関係機関連携といったアウトリーチを行っております。利用対象者ですけれども、開設当初は、不登校、ひきこもり等生きづらさを抱えた区内在住の中高生世代から39歳までの方及びそのご家族となっておりましたが、令和4年4月から40歳以上のひきこもり当事者及びそのご家族も利用対象となって拡充されております。40歳以上の方につきましては、メルクマールに直接ではなくて、ひきこもり相談窓口「リンク」にまずは初回のお申込みをいただいています。やはり年齢が高齢化してきますと、生活面であったりですとか、経済面ですとか、そういった困り事も関係してくることがございますので、まずは「リンク」を経て、メルクマールのほうに登録いただくということで行っております。  こちらは個別相談ですけれども、特徴としましては、有資格者による担当制です。心理士が多いんですが、公認心理師や臨床心理士、あとは精神保健福祉士、社会福祉士といったスタッフ全員が有資格者で構成されております。また、写真にありますように、プライバシーの保たれる空間の中で、しっかりと時間を取ってお話を伺わせていただいております。  また、こちらは居場所活動ですけれども、いろいろなきっかけづくりであったり、ご自身の土台づくりの場として活用いただいております。こちらの写真なんですけれども、「いばでこ」というのを居場所のプログラムの中で取り組みました。スタッフだけではなくて、実際に利用いただいている利用者さんとこの空間をどうやったら過ごしやすいかなとか、どんなふうにしたらみんなが気持ちよく過ごせるかなというようなことで、一緒にこの空間をつくっていった、その写真になります。  こちらが居場所のスケジュールですけれども、毎月スタッフが作成をしておりまして、フリータイムという自由に過ごせる時間と、あとはプログラムというみんなで一緒に共同体験をするような、そんな時間の2パターンがメインになります。  メルクマールの居場所は利用登録制ということで、守られた空間の中での対人交流の場となっているんですけれども、その登録前にオープンプログラムという体験参加できるものがあります。体を使ったものですとか、座学スタイルのものですとか、そういったものを多く取りそろえておりまして、その中で実際に利用者さんが興味、関心のあるものから参加できるような、そんなことを工夫として取り組んでおります。  こちらは、メルサポと言いまして、若者総合支援センターで一緒に活動しておりますサポートステーションとメルクマールとで合同で行っている居場所のプログラムになります。先ほどメルクマールの居場所は登録制というお話をさせていただいたんですが、こちらのメルサポにつきましては、利用登録がなくても手続が必要なく参加できる、ふらっと立ち寄れる居場所となっております。実際に若者の中には、相談ということや、支援というところに抵抗のある方も一定数いらっしゃるかと思いますので、ふらっと居場所からつながれる場所があったらいいのではないかということで、こちらも平成30年度から新たな取組みとして始めております。こちらはメルクマールとサポートステーションとが一緒に合同で開催している居場所になりますので、メルクマールとサポートステーションの利用者とスタッフの交流の場としても大変機能しているところになります。  こちらが居場所の特徴ですけれども、必ず2名はスタッフを配置しているというところと、様々な社会体験の場にもなっているというところがあります。なお、体験やグループ決め、それから利用開始となっておりますけれども、グループも少人数制のグループから、あとは週2回以上活動日のあるグループがありまして、どのグループにしようかなというところから、利用者の方に決めていただく、自分で選択していただく、そういったところからスタートしていきます。  これは、実際の居場所の活動の様子をお伝えできたらと思って用意をしたものになります。主に外出のものです。「おさんぽくらぶ」というもので、近隣に出かけたりですとか、あとはコロナの行動制限がだいぶ緩和されましたので、電車や公共交通機関を使っての遠出も始めております。真ん中の東京タワーの写真は、階段で展望台まで上ろうと、みんなで一緒にやったときの写真になっています。  こちらは中での活動の様子です。メルクマールでの活動自体がコミュニケーションです。フリータイムでは、雑談をしたり、ボードゲームで交流をしたりというようなことが多いんですけれども、やはりそこのコミュニケーションの場に入るのもちょっとハードルが高く感じられる方もいらっしゃいます。これはクラフトですが、実際に何か作業しながら場を共有するというところからの取組みとして新たに始めているところになります。こちら写真のほうは利用者の方が作成されたものの紹介になります。  もう1個、これは今年度から新たに始めたものです。居場所の企画会議、プログラムの企画会議というもので、これまではアンケートで利用者の方から意見をいただいて、それをスタッフがプログラムの中に取り入れたりということをやっていましたが、これは実際に利用者の方からどんなことができると楽しいかというようないろんな意見をいただいて、そこからそれを実際にどうやったら実現できるだろうかということを利用者と一緒に組み立てていく新しい取組みになっております。いろんな意見が出た中で、真ん中のは、太子堂のふれあい広場のところに行ってやったものです。名称をど忘れしちゃいましたけれども、木の棒を投げて木を倒すゲームです。すみません。  こちらが家族会の案内になります。月に1回家族会を行っておりまして、こちらはご家族の方にとって利用の入り口の機能もございます。セミナー形式のものが中心になっておりますので、相談もちょっとハードルが高いかな、敷居が高いかなという方にとっては、まずはセミナーで話を聞いて、そこから相談につながるという方もいらっしゃいます。  こちらは出張セミナーです。世田谷区は5地域に分かれているとても広い自治体になりますので、世田谷地域以外の4地域にそれぞれ年に1回ずつ出張するような形でメルクマールとサポートステーションの事業紹介や、あとは外部から講師の先生をお招きして、若者支援やひきこもり支援の普及啓発に取り組んでおります。  こちらは出張相談会です。アウトリーチ活動の一環で始めたところになります。先ほど世田谷の5地域とお話ししましたけれども、その5つの地域にある総合支所の区民相談室をお借りしまして、月に1回メルクマールのスタッフが出張しまして、区民の方の身近な場所で相談できる機会というのを設けております。また、この5支所以外にも希望丘青少年交流センター「アップス」というところにも、月に1回出張相談を行っております。  これは実際メルクマールがどういったところを取り組んでいるかの紹介として、ひきこもり支援の諸段階の図を持ってきたんですけれども、下のほうから家族支援、個人支援、それから集団というふうに進んでいくモデルになっております。メルクマールは楕円で囲んだところです。実際にご家族の方の相談から始まるというケースも多いですし、そこからご本人が登場されて居場所のほうにつながっていく、そういったことも行っております。一方で、階段式にどんどん上がっていくというだけではなくて、行きつ戻りつしながら一歩一歩歩みを進めていく、そういったところもありますので、その点もお伝えしたくてお話ししたところです。  ホームページも開設しましたので、よかったらご覧いただけたらと思います。  ここからが、これまでの実績報告ですが、だいぶはしょりながらお話しさせていただきます。これは新規の相談登録家庭数というところですけれども、令和4年度は、年間で122家庭が新規の相談としてつながっておりまして、これは開所から最も多い家庭数になっております。  こちらは年齢分布ですけれども、下のところから10代、20代、30代というふうになっています。若者支援というところに取り組んでいるところもありまして、10代の相談の割合が後半になるにつれて上がってきており、あとは20代の割合も増えてきて、30代の方の割合が減っているという動きでございます。  これが全体の年齢の分布と、あと男女比の表記になります。  ひきこもりの割合ですけれども、相談いただいた方の約6割の方がひきこもり有りの状況になっています。右側のひきこもりの期間につきましては、3年未満の割合が5割以上というところで、比較的早期の段階で相談をご利用いただいているというところが特徴かなと思います。  こちらがひきこもりの背景要因ですけれども、真ん中の青いところがいわゆる心理的なことをまとめたものになります。やっぱり全般的に心理のところが割合として高いのと、あと社会的なところでは、対人関係であったり、家族関係が背景として見られるということがございます。  不登校経験のところなども、資料を後ほどご覧いただけたらと思います。  来談経路は、これは開所当初から変わらないのですが、関係機関の方からご紹介いただいてつながっていく方が最も多いというところになります。  居住地域も全般的につながってきているというところになります。  また、年間の延べ相談件数も年々増加傾向にあります。あとは居場所の利用者数は、少し波はありますが、実際には利用者の方の層が変わっていったり、入れ替わりもあったりというところで推移していくところがございます。  ここからは重点事業のところを少しお話しできたらと思っております。ティーンズサポート事業という早期支援のところと、あとアウトリーチの取組みです。  ティーンズサポート事業は、10代の若者への切れ目のない支援ということで、メルクマールが受皿になれればというところで取り組んできたものになります。  10代ケースに関する実績ということで、スライドを準備させていただきましたので、ご覧いただけたらと思います。  10代の延べ相談件数も、令和2年は、いわゆるコロナ禍が影響していたかなというところですが、そこからどんどん飛躍的に伸びているというところがございます。  訪問相談件数も、これはアウトリーチですけれども、令和4年度に関しては年間で265件と、これはひきこもり相談窓口「リンク」ができたということも大きく影響しているところになります。  こちらは出張相談も含めたものになります。  開設からの歩みを1枚のスライドにまとめたものですけれども、これまで平成26年9月に開設してから、ティーンズサポート事業の取組みであったり、出張相談であったり、そういった取組みがどんどん拡充してきました。また令和4年4月の移転を機に、STKハイツで、ぷらっとホーム世田谷とせたがや若者サポートステーションと複合施設化したということが大きな変化としてございます。  では、ここからはひきこもり相談窓口「リンク」の報告をさせていただきますが、ここは「リンク」の活動を中心に担っている副施設長の足立から報告させていただきます。少々お待ちください。 ○足立副施設長 それでは、引き続き足立から「リンク」の説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  世田谷区では、令和3年3月に世田谷区のひきこもり支援に係る基本方針というものを打ち出しております。ひきこもり支援に対する基本目標として、ひきこもりの状態を含む社会との接点が希薄な方や社会との接点が持ちづらい状況にある方を対象にしておりまして、ひきこもりに加えて、いわゆる孤独や孤立の状態の方も対象にしていることが特徴になっております。具体的な取組みとして、相談窓口の明確化ということが挙げられており、「リンク」が昨年の令和4年4月からスタートしたというような状況がございます。  次のスライドですけれども、「リンク」は、全年齢対応のひきこもりの相談窓口になります。この窓口を開設するに当たり、各年代毎にどのような困り事が想定されるだろうかということを、こういった図にしながら整理を図ってみました。そういう中で、年代で特徴的な課題というのもあるんですけれども、年代にかかわらず、経済的な問題はどの年代にも起きる困り事であったりというようなこともございます。図のグリーンの文字で表しているところは、もともとメルクマールが特に強みとして対応しているようなことにはなりますし、ぷらっとホーム世田谷が主に対応してきているところがオレンジの字で表しているところということになるんですが、どちらかの機関だけで相談を扱うということではなく、2つの機関がよりその強みを生かしながら、全年齢の対応に当たっていくということがとても重要なのではないかという流れになっております。  「リンク」がサポートできることですけれども、ぷらっとホーム世田谷(生活困窮者自立相談支援センター)とメルクマールせたがやの2機関が協力し合いながら、この「リンク」を運営する形になっております。新しい窓口をつくるときに、一から新しく立ち上げるという形もあるかと思うんですけれども、世田谷区では、もともとある機関がそれぞれの持っている強みを生かし合う形で、合同で運営する形を取りました。ぷらっとホーム世田谷は、もともと生活全般の困り事に対応しておりますので、例えば家計相談ではファイナンシャルプランナーの協力を得て相談に当たることができたり、または弁護士の方の専門相談も活用することができましたり、様々なもともと持っている強みを「リンク」としても相談に生かすことができます。メルクマールせたがやは、先ほども廣岡のほうから話がありましたけれども、これまでも相談であったり、居場所であったり、家族会、アウトリーチの活動を行ってきておりますが、そういったものを「リンク」の中でも活かし合いながらやっていくというスタイルになっております。  メルクマールせたがや、せたがや若者サポートステーション、そしてぷらっとホームの3機関がこちらの建物に入っている形になっておりますが、サポートステーションとの連携というところでは、世田谷若者総合支援センターの機能はそのまま残っておりますので、そういったものも活用しつつ、そして「リンク」としてぷらっとホーム世田谷とも連動しながら柔軟にいろんな物事に対応しているというような状況にございます。  そして、「リンク」ですけれども、幅広い年齢層に対応していく上で、本当に非常に様々な相談が入ってきます。ひきこもりというキーワードに当たりましても、若者の相談から入ってくることもあれば、高齢者の介護の方から、実際に介護でお伺いしてみたところ、実はおうちに40代、50代の息子さん、娘さんがいて、そこでひきこもりの状況があって、家庭全体としてどういうふうに支えていったらいいんだろうというような話が入ってきたりします。そうしますと、ここに挙げているような、いろんな機関との連携の中で物事を解決していく必要があるということが分かってきます。  窓口につながった相談者の属性と年齢ということですが、まだ1年しかたっていないというところではありますけれども、幅広い年齢の方からの相談があるということであったり、区外のご兄弟からの相談、親戚からの相談というものもございます。そして「リンク」の支援がご家族から始まることはとても多いのですけれども、その中でもご家族の相談を続けていく中で、当事者につながったケースというのが、このように右側の円のグラフのようにございます。こちらに関しては、困り事へのアプローチが非常に鍵になっているというようなところがあります。ひきこもりへの直接的なアプローチだけでつながれるわけではなくて、ひきこもられている方が親亡き後の課題として、経済面に非常に不安を強く持っているという場合、そこの経済面からの相談、ぷらっとホーム世田谷の相談の切り口からまず出会うことができて、そこからひきこもりである今の状況についても何かしらいろんな生活を改善していきたいという課題の解決に、次につながっていくというようなこともございます。  次に、把握した当事者の属性と年齢ということで、こちらを見ていただきますと、性別では男性が女性の2倍ということにはなっておりますが、問合せのみで来所できていない女性の当事者もいらっしゃいますので、具体的に相談につなげていけるような工夫を今後もしていきたいというふうに思っております。  私からは以上で、引き続き廣岡からこれまでの取組みからお話をさせていただきます。ありがとうございます。 ○廣岡施設長 では、先ほどの木の棒を投げるゲームはモルックでした。失礼いたしました。  では、お時間も進んでいるところなので、これまでの取組みは皆さんお時間があるときにご覧いただきたいと思います。今後の取組みについて、この後のパネルディスカッションにも関係するところですので、少しだけお時間をいただけたらと思います。  今後の取組みですけれども、若者支援・ひきこもり支援の充実、質の向上についてのいろんな取組みは、もう既に始めていますので、複合施設の利点を生かしたワンストップ型総合相談窓口、そして継続的な相談支援ですとか、家族支援、早期支援、あとは伴走型支援、そういった取組みをより強化していきたいと考えております。  本日のテーマにもありますけれども、つながり続ける伴走型支援ということが、対人支援において今後求められるアプローチというふうに考えております。厚労省の地域共生社会の会議の中でも取り上げられていますが、伴走型支援というのは、支援者と本人が継続的につながり、関わりあいながら、本人と周囲との関係を広げていくことを目指すものということです。いわゆる課題解決ではない、つながり続けることが目的になっているというものでございます。ですので、そういったところにつきましては、私どもメルクマールの強みである心理士や福祉の専門職で構成されているというところが生かされていくのではないかというふうに考えております。  では、時間も押してしまいましたので、私からの活動報告は以上になります。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○司会 廣岡施設長、足立副施設長、ありがとうございました。  これよりパネルディスカッションの準備のため、ステージの配置替えを行います。いましばらくお待ちください。  お待たせいたしました。それでは、パネルディスカッションに移りたいと思います。  まず初めに、パネリストの方々をご紹介します。  初めに、斎藤環様です。斎藤様は、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授でおられ、精神科医、批評家として社会的ひきこもりの支援、啓発活動でご活躍されています。近年では、日本におけるオープンダイアローグの普及を目指し、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンの共同代表を務められています。主な著書に「社会的ひきこもり」、「開かれた対話と未来」などがございます。斎藤様、ご登場ください。  続いて、山登敬之様です。山登様は、明治大学子どものこころクリニック院長と共に、明治大学心理社会学科特任教授を務めておられ、児童青年期の精神保健を専門としておられます。主な著書に「子どものミカタ」や、斎藤様との共著「世界一やさしい精神科の本」などがございます。山登様、ご登場ください。  最後に、世田谷区長の保坂展人様です。保坂区長、ご登場ください。  パネリストの皆様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。  ここからの進行は、コーディネーターを廣岡施設長、足立副施設長が務めます。それでは、コーディネーターのお2人、よろしくお願いいたします。 ○廣岡施設長 それでは、コーディネーターを務めさせていただきたいと思います。改めてよろしくお願いいたします。  これからパネルディスカッションに入るんですけれども、今回は登壇者の先生方にご教示いただくということではなくて、あくまでフラットな形で、皆さんと一緒にこれからの若者支援のこと、ひきこもり支援のことを考えていきたいという趣旨で、いわゆる「さん」づけで皆さん呼び合って、和気あいあいとお話ししていけたらと考えております。  では、早速、お時間もありますので、これまでのメルクマールの活動の報告もさせていただいたところですが、メルクマールせたがやとしましても、ひきこもりの早期支援、早期対応というところを重点事業として取り組んでまいりました。そこで、やはりポイントとして、教育と福祉の連携ということがございます。近年、不登校も増加傾向にありますけれども、不登校もひきこもりと同じで、あくまで状態像を指す言葉でありまして、その背景に、学業不振であったり、発達特性、または家庭環境であったり、人間関係など様々な要因が絡みあっているというふうに認識しております。また、不登校支援は、目標がいわゆる学校復帰に限らずに、社会的自立を目指すという在り方に変わってきているところがございます。地域との連携が進むことで、子どもの選択肢を増やすことができるというところもあるのではないでしょうか。  そこで、山登さんには、ぜひ医療機関のお立場から、医療につながってくる子ども、若者の現状ですとか、あとは教育と福祉、そして医療との連携において、地域に望まれる資源のところなどをぜひコメントいただけたらと思います。  では、山登さん、どうぞよろしくお願いいたします。 ○山登氏 山登です。よろしくお願いします。  僕は今、子どもばっかりが来る精神科のクリニックで仕事をしているんですけれども、斎藤さんたちのつくったひきこもりの定義というのは年齢制限がないんですよね。 ○斎藤氏 ないです。 ○山登氏 だから、小学生でも中学生でも高校生でも、学校へ行かなくなっちゃって、友達との付き合いも全然なくなっちゃって、家族とだけしか話さないみたいな生活を半年以上続けていれば、社会的ひきこもりな訳ですよね。だけれども、学籍のあるうちは子どもたちは不登校と呼ばれて、病院に連れて来られたり、連れて来られなくても学校だったらスクールカウンセラーとか、教育相談センターとか、そういうところで相談を続けていると。でも、最近はやっぱり病気じゃないか、学校に行けなくなっちゃってということで、これは精神科の敷居が低くなったということもあると思うんですけれども、子どもたちは親に連れられて、僕たちのようなところ、児童精神科のクリニックにやってくると。僕は斎藤さんと仲良く仕事をして、もう30年以上になります。  そうだ、メルクマールは今年10周年ですね。おめでとうございます。僕がちょうど精神科医になって今年で40周年です。大学を卒業して精神科の仕事をするようになって、その頃はもう中学生や高校生の不登校の子ばっかり相手にしていたんですね。今はもうちょっと年齢が低い、小学校へ上がる前からの子たちを見ているんですけれども、それこそ30年以上前、まだ不登校が登校拒否症なんて病気のように扱われていた頃の不登校の形というのは、病気というのだから神経症の一種、神経症という言葉もあまり使われなくなっているんですが、神経症の一種として病院で治療の対象にされていた、そういうタイプの不登校を見ていた訳ですね。  神経症というのは、大ざっぱに言うと、心の葛藤が心身の症状、体の症状、心の症状に表現される、そういうスタイルの精神障害として言われているわけです。だから、思春期になって、自意識がバンと膨らんだときに、自分が気になる、他人が気になる、あるいは異性が気になる、そういうところで、どうしても神経症の診断に反りが合わなくなっちゃうような子どもたちというのは出てくるわけです。それで学校に行けなくなっちゃう。早く学校に戻らなきゃということで親も圧力をかけますし、子どもの方も行かなくちゃいけない、でも、行けないというところで、今度は登校についての葛藤がすごく大きくなって身動きが取れなくなっちゃうと。親がさらに圧力をかけると、子どもによっては大暴れして、家庭内暴力につながると。そんな状態が長く続く家もあれば、これは困ったということで、ちょっとそっとしておこうと親が態度を変えると、だんだん落ち着いてきて、その代わり家から出なくなっちゃってひきこもりの状態が長く続く。そういう1つのタイプが不登校の中心を占めていた訳です。  いろいろ時を経て、親も今は昔ほど学校に期待していないというか、学校に行けなくなっても行きなさいとプレッシャーをかけないし、斎藤さんの活躍によってだいぶ不登校やひきこもりの対応というのが世の中に浸透したせいか、無駄な登校刺激を親がかけなくなって、学校も子どもを引きずってでも学校へ連れて来いみたいなことを言わなくなった。そういう意味で、以前ほどこじれたケースというか、非常に陰湿な親に対する暴力とか、それが長く続いたりとか、ひきこもりの初期に体のあちこちが具合が悪くて、あちこち病院に連れていかれても、原因が分からないみたいな状態が長く続くとか、そういうケースが減ったんですよね。その代わり、やっぱりひきこもりが長くなっちゃうみたいな、その辺が時代の変遷。  もう一つ大きいのはいわゆる発達障害ですよね。発達障害が言われるようになったのは日本で90年代ぐらいだと思うんですけれども、むしろ今は昔の神経症型の不登校よりも発達障害型の不登校といいますか、今の僕の働いているクリニックでは、ほぼ7割ぐらいが発達障害じゃないかしら、発達障害と言われたんだけれどもという心配を持った親御さんが子どもを連れてくるというケースが多いわけです。その中に、もちろん学校に行けなくなってくる子どももいる。発達障害の子たちの代表格は自閉症のグループですよね、自閉症スペクトラム。そういう子たちは、もともと社会性の発達が遅れていると言われているわけですね。コミュニケーションも難しい、お友達づくりや集団になじむのが大変。だから、やっぱりちょっとしたことで不登校につながりやすいわけです。  そういう子たちと、神経症型の不登校とはやっぱり対応が当然違ってきて、神経症型の不登校はゆっくり悩んで大人になってもらえば、自分の力で歩き出して、また学校に戻るなり、学校を卒業した後に上の学校に進んで学校に行くようになったり、あるいはアルバイトをしばらくしてから社会に出たりということが可能になっていたわけです。けれども、発達障害で行き先が見つからないままそのうちにひきこもっちゃうと、やっぱりガイドが必要ですよね。ゆっくり待っていてあげればいいというものじゃなくて、やっぱりそこは丁寧に分からないことは教えてあげて、その人に合うやり方で社会に出ていってもらう、そういった道筋をつくっていってあげるという、そこに手をかけていく必要があると思います。  発達障害というのは、社会的にいうとマイノリティーの人なわけで、この世の中というのはマジョリティー仕様にできているわけですよね。学校もそうですよね。学校は大部分の子どもが、同じ年齢の子を大勢集めて一斉授業で勉強を教えていくというスタイルがずっと延々と続いていて、やっぱりそういうマイノリティーの人たちがそこに馴染めなくなっていくというのは当然だと思うんですよね。だから、やっぱりそこで学校も変わっていかないといけないし、不登校がどんどんどんどん右肩上がりに増えていって、もう小中学生合わせて25万人に近づいているわけです。不登校の子は、学校が先に変わっていってくれれば、きっとこんな右肩上がりに増えなかったと思うんです。今また発達障害の子たちが不登校の割合を結構占めてきていると思うんですよね。やっぱり構造的な問題で、まず学校が何とかなってくれないかな、今までは不登校のことで僕はそういうふうに願ってきたんですけれども、今はここに発達障害の子どもたちがまた学校に行けなくなって、それだけじゃなくて、やっぱり学校の中で苦労しているというのを見ると、やっぱり学校が何とかなってくれないかなと思うんですよね。  全然廣岡さんの話を拾っていないんだけれども、もう一つ言っておくと、何だかんだ言って学校につながりのある年齢は、良くも悪しくも社会的なリソース(資源)があるわけです。学校に行けていなくても、例えば教育相談とか、お稽古事に通うとか、スポーツをやるとか、学校つながりでいろいろリソースがあるんだけれども、学齢期を過ぎちゃうと、高校生ぐらいになって義務教育期間を過ぎると、そういうリソースが急に減っちゃうわけですよね。幸いなことに、高校というのは今はいろんなスタイルの学校ができているので、そこで中学まで学校へ行けていなかった子どもも、行き先を選ぶと、割と学校につながって、神経症型の不登校だろうと発達障害などの不登校であろうと、そういう形で流れに乗っていって、社会に出るところまでつながると、そういう子たちはいると思うんです。そこでさらに通信制の高校なり、定時制の高校なり、単位制の高校なりに籍を置いてみたけれどもやっぱり行けなかった、そういう子に対して、じゃあどうするかと、その辺がちょっと課題でもあり、心配なところではあるかなと。  思いつくままに話してしまって、まとまりのないところで、すみません。 ○廣岡施設長 ありがとうございます。聞きながら、私も報告のところでお伝えできていなかったんですけれども、メルクマールの10代の相談の中でも、24%が所属がなくなってから相談につながってきているというところがあるんです。その一方で、今、山登さんのお話にあったように、高校の選択肢というところでは、全日制の高校だけではなくて、通信制の高校に在籍がある利用者の方も一定数割合が増えてきているというところがあるので、確かにリソースを持っている中で、どこかまた別の場所でやったりとか、つながりをつくっていけるというところが大事なんだなと聞いていて思いました。ありがとうございます。  足立さん、今の山登さんのお話もありましたけれども、いかがですか。早期支援のところであったりとか、メルクマールとしても、こういうところをちょっと聞いてみたいなとかあったりされますか。 ○足立副施設長 メルクマールのほうでも、やはり山登さんがおっしゃられたような、高校であったりとか、学籍がなくなった後、義務教育が過ぎてしまった後に、そこでつながり先を失ったままひきこもってしまって、相談に再浮上するのがかなり年齢が高くなってからというようなご相談もお受けしたりする中で、義務教育であったり、高校で不登校になっていたり、その先が心配な生徒を、メルクマールとしても事前につながっておくための支援を、少し力を入れて今やっているところです。やはり、つながり続けられる支援体制というのがとても大事なんだなということを、山登先生のご心配もお聞きしながら感じていたところではあります。どうでしょう。斎藤さんも、学齢期以降の支援といったところで、これまでいろんな関わりをしている中で、何か手がかりになるような取組みをされている情報であったりとか、斎藤さんがお感じになっていらっしゃるようなことを、お聞きできるとうれしいですが。 ○斎藤氏 ありがとうございます。さっき山登さんもおっしゃっていましたように、不登校人口が増え続けているという状況があって、中高だけで24万人という史上最多です。ただ、これはコロナ禍の影響で激増した面も確かにあるんですけれども、意外と忘れられているのは、その前の年、その前の数年間も実は毎年2万人ずつ増えるという異常事態がここ数年続いていたわけです。少子化の傾向にあらがうように、ひたすら不登校が増え続けるというこの異常事態。これに対して文科省の反応は非常に鈍い。私は文科省の不登校対策委員をやっていますので、この事態に対して何か特別な対応があるのかと思いきや、全然無風状態が続いておりまして、これはどうしたことだろうなという感じなんです。何が言いたいかというと、要するに、文科省の統計を取ると、大体原因の6割は子どもの無気力とか書いてあるんです。全くナンセンス、意味がないそのデータは。ニートの原因は働かないことみたいな感じで、非常に無意味なデータなんです。何でこういうデータなのかというと、アンケートの選択肢に入っているからなんですよ。学校に問い合わせるアンケートの中に子どもの無気力が原因だと思いますかと書いちゃったら、学校は学校のせいと思いたくないから、無気力ですと書いちゃいますよね。これは全然現場の実態にそぐわないデータ。  当事者にアンケートを取ると、我々の実感に合ったデータが出てくるわけで、そこで理由として多いのは、生徒間のいじめを含む人間関係、教師のハラスメント、それから家庭内の葛藤ですよね。3大要因がはっきり出てくるのに、学校のデータでは全然見えてこないということがあって、はっきりとこれは教育システムの制度疲労ということを認めざるを得ない状況にあると思います。つまり子どもの個人的な要因を幾ら深掘りしてももう何も出てこない。むしろ取り巻く環境のほうの問題を考えるべき状況に来ているということです。病気といいますか、不適合状態の捉え方として、熊谷晋一郎さんがよく言っているのは、個人の要因はインペアメントといいます。個人の中にある発達障害なら発達障害という障害があって、それは個人の中にあると考えればインペアメント。だけれども、個人の特性と社会のシステムのギャップによって起こってくる問題、これはディスアビリティーというわけです。つまり車椅子がなければ移動できない人にとっては、バリアフリーじゃない環境はディスアビリティーの原因になるわけです。ところが、バリアフリーの環境があれば、そのディスアビリティーは消えちゃうわけです。インペアメントがあっても問題にならない。  このモデルを考えると、子どもの中にインペアメントがあるという発想はもう捨てたほうがいいと思うんです。ほとんどはディスアビリティーの問題です。子どもの個性と社会のシステムがコンフリクト(衝突)を起こしている。そこで起こってくるディスアビリティーが、不登校であり、ひきこもりであるという現象として現れてくると考えるんだったら、これはどちらかというと、環境とか、システムとか、そちらの要因を何とかしなきゃならないというように考えるのは自然な考え方。ただ、医療も対人支援の現場も、ずっと長年、個人病理という発想に縛られてきましたので、問題があれば、まずこの人の認知特性だとか、そういう個人の中にある内在する要因で片づけようとする癖がついていると。私の考えでは、ひきこもりの問題というのは、家族と本人の関係性に対する名前と言うべき問題であって、個人の中に問題があるとしても、その問題の名前では最早ないということはもうはっきり言えると思うんですよね。なので、環境と個人の相互作用の部分に対してどう介入するかという話になってくると思うんですけれども、そこで今、メルクマールせたがやが積み上げてきた活動、重層的な支援の価値って非常に大きいと私は思っています。  これに関して言いたいことは、これは誤解なきようにするのはなかなか難しいんですけれども、不登校、ひきこもりのような類いの問題に関して関わる際には、ものすごく高度な専門性は要らないということです。つまり医師としての勉強を6年間やって、国家試験を受けて、研修を何年かやって、10年ぐらいかかって医者ができるわけですけれども、そういう手間暇のかかる専門性は要らないと私は申し上げたい。これはイギリスなんかではセミプロフェッショナルという言い方があります。半専門家ですよね。もっと短期間の経験と研修でなれるタイプのセミプロフェッショナル、こういう人がたくさん出てきたほうがはるかに意味があるということです。私は、だからメルクマールせたがやというのは、そういう支援の現場で、たくさんの家族とたくさんの当事者が救われてきた面がすごく大きいと思います。  もう1個大きい要素として、このセミプロフェッショナルを醸成するという空間としても、すごくポジティブな意味があるんじゃないかと思っているんですね。そこで得られた経験というものは、むしろなまじな専門医とかよりも、場合によっては有効かもしれないと思うところがありますし、何でそう思うかというと、専門医の医者というのは基本的に個人病理は得意ですけれども、ソーシャルワークとか、ケースワークとかは、あまり得意じゃない人が実は結構多いんですよ。もう家族が同席するのを嫌がっちゃったりとか、そういう人がまだ多い業界です。もうそういうことにどんどん飛び込んでいって、場合によっては訪問をバンバンやって、積み上げてきた経験というのはすごく貴重なもので、これをぜひ継承していってほしい。10年という蓄積は本当にすばらしいと思いますし、そこで得られたものはどんどん継承していってほしいと思うんですけれども、それは逆に言えば、通常の意味での専門性では得られないようなプロフェッショナリズムとして貴重なものと思いますし、このモデルは世田谷に限らず、ほかの区でもどんどん広げていってほしいモデルだと私は思っているんです。  ちょっと分からないのは、自治体の実践というのはなかなか共有されにくいというか、いろんな区がいろんな独自の実践をしていて、じゃ、真似すればいいのにと思うんだけれども、沽券に関わるのかも知りませんけれども、なかなかそういう真似をしたりとか、共有しようとする発想がちょっと乏しい気がしています。自治体ごとに自由にやるというものは、いろんなアイデアがすぐ実行できるという意味では、すごくいい面もあると思うんですけれども、せっかく出てきたよい実践が広がらないとか、あるいは共有されにくいとか、そういった点では、自治体の壁って結構厚いのかなと門外漢としては思うんです。これはもっともっと広げていってほしい実践かなというふうに感じております。  まとまりませんが、一応ここで切ります。 ○廣岡施設長 ありがとうございます。メルクマールも、コロナ前とか、コロナが落ち着いてからも、いろんな自治体から視察が来ているところです。実際運営している立場からしても、やっぱり1つの機関で個別の相談から居場所と、あとは家族会とアウトリーチと、全部多様なメニューを持ち合わせているというところは、本当に世田谷の強みとしても言えるところなんじゃないかなとは思っているところです。  ちなみに今の斎藤さんのお話を伺って、保坂さんにもちょっとお聞きしてみたいなと思ったんですけれども、自治体のそれぞれの取組みについて、何か共有する場など、そういうものはあったりするですか。それとも保坂さんのところに、いろんな方たちからいろんな問合せであったりですとか、取組みのことで何か問合せとかってありますでしょうか。 ○保坂区長 メルクマールには、多分自治体の視察とか、「リンク」というふうにしてから、もう結構、自治体単位、例えば議員団という形とか、政党という形で視察があると思います。「リンク」ができる前にも、自民党のちょっと大がかりな視察団が来たりもしました。ただ、そういう場があるのかというと、ないと言ったほうが正確なのかなと思います。そもそも若者支援とかは最近ですよね。少子化対策で若者支援という概念について10年経ってようやく入り口に立っている人たちが多いんです。若者ってわざわざ支援するものなのかという議論がずっと根強いわけで、そんなことに税を使うべきではないと。でも、それは間違っていて、例えば生きづらさを抱える若者たちが放置されている。学校につながっているときには不登校というふうなことで、一応分かっている。それで学校を離れた時、高校でも行けばまだ分かりますけれども、そういったところでもすぐやめてしまったりとか、行こうと思ったけれども、結局行けなかったという時には、15歳以降というのは行政から見ると不明になるんですね。しかもそれが長期化し、10年、20年、25年経っているよといっても分からないわけですね、表に出てきませんから。そういう意味で、やっぱり社会的にかなり多くの方が家族という密室の中で、表に出たくない、出られないなというところで悩んでいる。しかもそれがかなり苦しかったりとか、つらかったり、あるいは自分で自分を責め立てるような、これは家族と本人の関係も含めてあるということは、多分メルクマールに寄せられる相談とか、それぞれのケースであるかと思います。  ですから、10年にわたってこの若者支援を続けてきた。では、なぜやっているのかと聞かれますと、多分、私の場合は、自分自身がまず学校とそんなにうまくやってこなかったということが原点にはあります。それから、校内暴力というのは、80年代に起きた頃、当時のマスコミでは、人工甘味料ですか、そういったジュースとか、そういうのを飲んでいるから子どもが暴れるようになったと言う評論家とかが、平気でめちゃくちゃなことをテレビで言っていたんです。要するに突然暴れるんだと、突然ガラスを割るんだと。実際取材してみると、そこに学校の先生の体罰があった。あるいは自分たちは差別されているんだ。一応順番に当てられていって、俺のことを飛ばすんだよみたいなことです。当時はまだ子どもたちは元気があったから突っ張っていたんです。明らかに俺は問題児という格好をしていたわけです。いわゆる暴走族文化みたいなのがあった。でも、その後、80年代の半ばに入って、私の経歴で特異なのは、80年代の20代の後半から約10年間、子どもとしか話していないということなんですよ。特に悩んでいる子、特にいじめとか不登校で悩んでいる子が、一斉にたくさんの手紙を送ってくる。そして、子どもだけが読んでいる「明星」とか「Seventeen」という雑誌で、その問題をずっと取り上げていくという循環があった。このすぐ近くの、ここから歩いて2、3分のところに事務所があったんですが、振り返ると、悩んでいるお子さんと、時には親とずっと会い続けて、語り続けてきた20代、30代だったなということが原点にあります。  ですから、いかに深い問題なのかというのは分かっていて、行政に何かが、そういった窓口があるなんていう発想も、自分たちで取り組んでいなかったんです。しかしヨーロッパに行ったときに、若者支援というのはもうかなり定着していて、ユースセンターがあり、驚いたのは若者たちを支援する寮というか、例えば薬物の中毒になって、もう1回社会へ出ようという若者を見ているようなおうちです。生活の場であり、仕事に出かけていく場に、3人ぐらいのスタッフが2人の若者を見ているみたいな、そのレベルの若者支援をやっていて、日本というのは本当に全くやっていないなということを痛感して帰ってきました。  それから、自分自身の中でも、やはり不登校やいじめやいろんなことで悩んだ子たちが、場合によっては友達の横の関係の中で新しい時間や空間を獲得して、自分の道を探し出すみたいなケースも見てきたので、やっぱり若者支援というのをやっていこうと強い決意があって、必ずつくるんだといって、先ほど開会のときに言ったように、斎藤環さんの講演会でもびっしり満席になって、やっぱり親たちがどんどん質問する、その質問の内容は極めて具体的で、もうそれだけどんな状況でもやはり子のことを聞いて帰りたいという思いがすごくひたひたと伝わってきたので、やっぱり250人の背後には10倍以上の人たちがいるんじゃないかというふうに感じてスタートしたということになります。  山登さんが言ってくれたように、明らかに学校のほうに早く変わってほしかったということがありましたよね。今、世田谷区でも不登校のお子さんが、私が区長になったとき400人台、コロナに突入していくあたりで1000人を超え、1200人になったと聞いて、最近だとやっぱり1500人に近づいていって、もうずっと伸びているわけです。小学校1年とかに多いです。もう数日行っただけでそうなったという子も多い。  そういうことで、この間の文部科学省の変化の中で1つ大きいのは、教育機会確保法という法律ができて、学校外でも学ぶ、あるいは子どもが休むひとときもあり得るというように見解が変わったので、そこで世田谷区も「せたホっと」(※動画では「せたホっと」と紹介しておりますが、正しくは「ほっとスクール」です)という場をつくったり、そこを民間に委託して運営するようになったり、子どもたちが学校以外で学ぶというようなシチュエーションをつくったりということをやりました。若い人たちが壁にぶつかってそのシステムと合わなくなっている時ときに、個別の相談が出来るメルクマールという場を作りました。学校の在り方そのものをどう変えるか、行きたくなる学校にどういうふうにチェンジしていったらいいのかということを、今区でも取り組んでいるところです。 ○廣岡施設長 学校も変わっていくとことで、もう今は取組みが少しずつ始まっているんだなと感じました。そこは私もすごく楽しみにしていきたいなと思っておりますし、実際教育との連携というところで、メルクマールも引き続き、地域の資源の一つとしてつながっていきたいなと考えているところです。お話ありがとうございます。  足立さんとも、今いろんな話題が出てきて、本当にあれもこれも聞きたいな、今どんなところで聞いていけたらいいかなと思っています。今、区の取組みの中で、若者支援のお話も保坂さんからお話をいただいて、そこへの思いなどもいろいろ聞いてきたのですけれども、実際世田谷区の中では、ひきこもり支援というところでの重層的支援の取組みが広がっているのかなというふうに感じております。メルクマールでも、これまでの若者支援の取組みから、ひきこもり相談窓口「リンク」が開設して、本当に多種多様な相談を日々お聞きしているところです。  世田谷区の中で重層的支援整備の取組みをひきこもり支援を軸に始められたというところでの、保坂さんの中でのお考えであったりですとか、そのあたりも併せてお聞きできますでしょうか。 ○保坂区長 要するに縦割りから横つなぎということなんですけれども、とにかくこれは、若者の問題に限らず、例えばうちのおじいちゃんがベッドから落ちて腰を打って立てなくなった。初めての介護で、今まで元気だったんだけれども、介護保険てどうするのというときに、私が区長になった時は、区のホームページを見ても、今はあまり使わないふんどし状の、ずっとたらたらたらっと長いロールの情報が満載のページがあって、どこを選んだらいいんだと。組織名を見ても、地域福祉部、保健福祉部、どっちなのか分からないですよね。とにかく非常に分かりにくかったんですね。それはそのはずなんですよ。役所が自分たちの仕事に勝手に名前をつけているので、要するに区民というか、住民の中から見て分かりやすいという発想がちょっと少なかったんです。そこで、まちづくりセンターというところに高齢者を中心とした福祉の話なら、もうここに行けば全部解決できますよというのをつくって、地域包括支援センターもそこに入れて、社会福祉協議会も入れて、ワンストップ窓口をつくって動き出したことで、いろいろ出来てきたことが多かった訳です。  そういった経験の中で、厚生労働省も度々世田谷区へ見に来て、さっきのひきこもりの話は、明らかに矛盾だよねと。同じシチュエーションなのに年齢で分けて、はい、終わりと、40歳で卒業というのは、その後どうするのよみたいな話で、ぷらっとホームというところが意欲的にやってくれていたから、どこもないという訳ではなかったんだけれども、この若者支援法と生活困窮者自立支援法と、そこの2つの法律で人間を切り分けること自体がおかしいよねと。その人が持っているバックグラウンド、そして社会的な解決の仕方とか家族の関係の再構築とかいうのは共通因子が多いですよねということを厚労省に働きかけて、何回も議論しました。これをやるために重層的支援体制整備という概念をつくって、制度をつくってもらったんです。となれば、世田谷区でまずそれを使うしかないよねということで、「リンク」の場が出来上がった。もう少し広ければもっと良かったんですけれども、三軒茶屋はとっても便利なところなんですけれども、とっても狭いんだよね。そこがちょっと難点ではあるんですが、やっぱり足の便がいいところなので、来訪者が増えてきてくれている。先ほど自治体がつながれないのかという話がありますけれども、結局本当に真面目に若者支援とか、今の若い世代が置かれている過度な競争とレッテル貼り、自分は駄目であるみたいなことを早めに追い詰めるような、そういう社会に変わっているというところを直視すると、世田谷区でやっているような受け止めが、もっと普遍的に行われるべきだというふうに思います。最近だと斎藤さんのお話で、東京都は、最初若者の担当というのは青少年治安対策本部がやっていたんです。これはあまりにもだねという話で、5、6年前に変わって、今東京都も意欲的にひきこもり支援の体制を築き始めたというふうに聞いています。  そういう意味で、世田谷区の中で1つメルクマールでいいなと思ったのは、やっぱりこういう場所って、いっぱいは作れないわけですよね。人口から見れば3か所ぐらい必要だという意見もあるけれども、これはなかなか難しい。そこでアウトリーチで、例えば希望丘にある青少年交流センターで相談会をやってもらう、あるいはちょっと三軒茶屋から遠い玉川の地域の施設で相談会をやってもらうと。様子を見ると、参加者というか相談が結構来ている。相談を受ける側が動くってなるほどなというふうに思っていて、そういう方法も大分編み出せてきたというのはすごいなと。やはり苦節10年という感じがいたします。 ○足立副施設長 ありがとうございます。今、保坂さんのほうからもお話があったように、実際「リンク」が動き始めている中で、メルクマールもぷらっとホームとの協力の中で、1つの世帯の中にひきこもりの問題もあれば、介護の問題もあれば、障害のあるご御家族がいたりして、いろんな課題がある中、支援者同士がみんなと顔を合わせながら話をしないと、世帯に対して本当に何が必要なのかという話がそもそもできないところが、重層のシステムを使うと、本当にみんなでつながりながら、知恵をひねりながら、物事が動いていく可能性を感じられるようになってきたというのは、すごく手応えを感じているところでもあるんです。  今、保坂さんの話の中でアウトリーチのお話も出たところで、他のお2人のお話にもちょっとつなげていきたいかなというふうに思います。実際複合した生活上の困難さを抱えている方たちというのは、そもそもご自身たちでSOSを発信しづらい、誰かに相談するというそもそもの発想自体が浮かんでいないような状況に至っているということが結構あって、支援の必要性が高いにもかかわらず、支援に結びつけないということが本当に起きるなというふうに実感しているところなんです。実際、待ちの姿勢ではなく、そこに出向ける可能性とか、ここを丁寧に探っていくこともすごく重要だなと思うんですが、アウトリーチの意味合いであったりとか、一方で配慮すべきことというのも同時にあるかと思うんですけれども、そのあたりを斎藤さんのほうから少し教えていただいてもよろしいでしょうか。 ○斎藤氏 ひきこもりの8050に代表されるような高齢化が進むにつれて、アウトリーチの重要性はますます高まってきていると考えております。特に8050は、80歳代の親御さんが50歳代のひきこもり当事者の面倒を見ているという家庭が珍しくないという状況を示す言葉ですけれども、これは10年たったらどうなるかという話です。10年後、9060かというと、恐らくそうならないですよね。平均寿命からいったら、もう大半はやっぱり親亡き後の問題になってくるということを考えていて、今、私も自治体の訪問支援事業に関わっていますけれども、一番難渋しているのは、やっぱり孤立してしまって、いかなる支援でアプローチしようとしてもはねつけられてしまうと、断られてしまう。そういう方が複数事例もう既に存在しているということで、こういう人にどうやって支援を届けるのかということについてはまだ全然「解」がない状態だと思います。唯一考えられることは、まだ親御さんが少しでも健在のうちから関わりを持って、連続性を維持していくということぐらいしかまともな対策がないという状況だということが、まずあります。  それから、ひきこもっている人のニーズということを考えた場合に、全員が何とかしてほしいと思っているかというと、そんなことは全然なくて、当事者はむしろ放っておいてほしいと思っている人が圧倒的多数です、経験的には。そういう方にどうアプローチするかということを、アウトリーチの方はぜひ考えていただく必要があって、ここで注意していただきたいのは、支援におけるその陥穽(かんせい)といいますか、当事者にはニーズがあるはずだという錯覚があるんですよ。当事者はみんな何かニーズを持っているから、それに応えておけばいいだろうみたいな、そういう発想が落とし穴になりやすいということです。私が知る限り、ニーズを分かっていない方、ニーズを持っていない方、理解していない方、うまく表出できない当事者が大半です。そういう人たちへどうアプローチするかと。周囲はやっぱりひきこもっているから困っているだろうと、抜け出したいに決まっているだろうと、働きたいに決まっているだろうという先入観でアプローチをすると、大体その鼻をくじかれてしまうということが起こります。実は本人は何とかしてほしいと全然思っていない、来てほしいとも思っていない、助けてほしいなんて全然頼んでいませんみたいになっちゃうことがあるわけですよね。  またもう1個、別の陥穽がある、別の落とし穴があります。この人は来てくれるなと言っているから来なくていいんだと思ってしまう落とし穴です。ひきこもりに限りません。不登校もそうですけれども、本人の訴えをあまりストレートに鵜呑みにし過ぎると、大体、変な方に行ってしまうということがあり得るわけです。うがった言い方かもしれませんけれども、ニーズが無いと主張している人にはひょっとしたらニーズがあるかもしれないという疑いを常に持っていてほしいですし、それからもう一つは、当事者はいつも明確に自分のニーズを意識しているとは限らない。これは当事者に限らず、私たちみんなそうだと思いますよ。皆さん、ご自分のニーズを今ぱっと言えますかね。私は言えませんね、自分にどんなニーズがあるのか。何かしらあると思うんですけれども、言えません。自分のニーズなんてそうそう分かるものじゃないし、自分の欲望にしてもそうですけれどもね。  では、どうやって把握するかといったら、やっぱりこれは関係性をつくる中で、だんだんと見えてくるものがニーズであると。これをニーズの掘り起こしと言っていますけれども、これは最近哲学者の國分功一郎さんがうまいこと言っていましたね。欲望形成支援だと言っていますね。支援とは欲望形成支援なんだと。つまり、何をしてほしいか、どうしたいか分からない当事者と関係性をつくる中で、欲望を一緒につくり出していきましょうというのが支援であるということで、これは非常に本質的な指摘と言っていいと思います。関わりができてくると、もちろん多くのひきこもりの人は、実はしんどい、苦しい、何とかしてほしいというニーズが出てくることが多いと思います。なので、それが出てきたら、次にどういうふうに対応するのかと。  厚労省のガイドラインで支援の4段階の図があって、あまり評判はよくないんですけれども、1点だけいいことがあるとすると、それは、段階的支援というものの前提は、当事者のニーズも段階的に変化していくということを、きちんと打ち出しているところです。これは体の病気だったら、早く治してくれというニーズが大体終始一貫するわけですけれども、精神のニーズってなかなか複雑でありまして、メンタルな病を抱えている人がみんながみんな治りたいと思っているとは限らない、治してほしいと思っているとも限らない、あるいは治りたいんだけれども、治してほしくないと思っているかもしれない、治してほしいんだけれども、医者はごめんと思っているかもしれない。ニーズはいろいろな形を取ります。その辺も含めて、先入観があり過ぎるとそのニーズを捉え損なう、あるいは過剰に捉えてしまう、そういった問題が起こりやすいということがあります。どういうニーズを持っているかは、繰り返しますけれども、関わって、対話をしてみて、関係性を構築しないと分からない。信頼関係です。信頼関係を構築しない限りは分からないんですよね。だから、予断を持って向き合うことは非常に危険であるということがまず第1点目。  それから、ニーズが無いと言われても、いや、あるかもしれないと思う、人の悪さも大事ということなのかもしれません。  それと、関わる場合って、やっぱり親御さんのニーズに最初は応える感じにならざるを得ないと思うんですよ。何しろ本人が関わってほしくないと言っているわけですから。でも家族は何とかしてほしいと言っているわけですから。当面は家族の客として訪問しながら、チャンスがあれば、ちょっと声をかけるとか、そういう感じで関係性をつくれる可能性があるわけですよね。そういう感じで関わりを持っていって、まずは親御さんとの関係を良くしていく。何のためかというと、家族との関係が良好になってきて、その時の1つのテーマは、どうしたら当事者と家族の関係性を修復するかということになる訳です。その関係性が修復されてくると、さっきも言ったニーズの変化が起こってくるということが期待できる訳です。という訳で、家族のニーズに応えながら、本人との関係修復が起こってくると、本人はその家族の変化が、ひょっとしたらこの支援者の関わりの力かもしれないというふうに思い立って、そこで支援者を信頼してみようと思えるかもしれないと。うまくいけばですけれども、そういう感じで効果が生まれてくるという可能性があります。何段階かありますけれども、アウトリーチというのはそういったまさに家族との関わり、本人との関わり、このベクトルの違った2つの関わりをうまく統合しながらやっていく工夫が大事であるということ。  それから、家族というのは、私の考えでは、第1の支援者なんですよ。当事者の第1の支援者は家族なんですよね。だから、アウトリーチというものは、どちらかというと支援者支援という意味があるということです。支援者を支援する。どうしたら家族が燃え尽きずに済むかとか、どうしたら家族のセルフケアが出来るかどうかとか、そういうところも配慮しながらやっていくと、有効な支援者支援になるだろうと思います。そういったアウトリーチの複合的な要素に配慮しながら、アプローチを粘り強く続けていただいてほしいなと思います。 ○足立副施設長 ありがとうございます。今、斎藤さんのほうからも家族が第1の支援者とのお話もあったところなんですけれども、ここら辺は考え方としては、年代によって家族が果たす役割とか、例えば8050とかになってきますと、なかなか家族自体がもう相談の主体として動くこと自体の難しさが生まれ、その中で生活自体の困難さのレベルもまた変わってきたりするのかなというふうには思うんです。その中で、高齢の親御さんのご家庭でご本人のニーズでよく出てくるなというのが、親亡き後。やはり経済的な部分とか、今まで親御さんがいろんなものの日常生活の面倒を見ていたものが、それが断たれる状況になったときに、生活していく力をどういうふうに見ていくといいんだろう、自分でそれができるんだろうかという不安が動き始めて、そこがいわゆるニーズとして浮上するようなことも結構あるかなというふうに思うんです。そこら辺の年代による親に支援者として期待できる難しさと、ニーズの掘り起こしみたいなところで、何かお感じになっているところとかがありましたら、お願いいたします。 ○斎藤氏 あまり細かい年代区分は私は要らないと思うんですけれども、ただ、親御さんがもう70代、80代で余力があまりないとか、あるいはこれからひょっとしたらもう親御さんの介護問題が浮上してくるかもしれないと思うときには、やっぱりこれはもう第1に考えていただきたいのは、「親亡き後」ということになってくるだろうと思います。これは要するにサバイバルプランですよね。つまり親亡き後を見据えた上で、今の経済状況を把握して、どうやってそれをうまく運用していくというか、本人にある程度お金が残ったりとか、経済的にすぐ困窮しないような生活設計ができるかどうかということについて相談していくということは、私はすごく大事な支援の一部となり得ると思います。これは、治療でもないし、通常の支援とも違うんですけれども、ただ、お金の相談というのが割とニュートラルなんです。つまり、ひきこもりと銘打った支援は受けたくないけれども、お金の話はしたいという当事者は結構いたりする訳で、ひきこもり当事者ほどあからさまにひきこもりの支援でございという支援を受けたくないという、そういうねじれがあったりするところがあって、何でかというと、これはひきこもりという言葉にスティグマ性があるからなんですね。ひきこもっている自分は恥ずかしいというセルフスティグマを持っている人にとっては、ひきこもりと銘打った支援は受けたくないというふうなねじれた心情がありますので、そういった人に対してもこの経済的な方向からのアプローチというのは、結構受け入れられやすい。結果的には、それはひきこもり支援につながるんですけれども、表面上は経済的な相談ですから、初めの意識はあまり感じなくても、相談を受けられやすいというところでのメリットはあるだろうと思います。  親亡き後を想定した場合に一番盲点になりやすいところとして、親の介護問題というものはぜひ考えておいていただきたい。つまり、もし万が一年老いた親御さんが認知症を発症したり、要介護になった場合に、誰が介護をするのかという話が意外と抜けやすいんですよね。なぜかというと、親御さんはよもや自分が認知症になると思っていないので、そういうことを想定しないで先を考えますし、もちろん本人はそれは考えたくないから考えないということがあるわけですけれども、実際いざそうなった場合には、介護負担はとても背負い切れないというシビアな現実があるわけです。  実際これは2021年に福岡市で介護殺人として、そういう60歳の当事者がご両親を手にかけるという非常に悲惨な事件がありましたけれども、これはやっぱり起こるべくして起こることだと思うんですよ。つまり一遍に2人の両親の介護負担がかかってきた時に、とても対応し切れないと絶望するのは当然なんですよね。なので、あまり想定していないことかもしれませんけれども、要介護になったらどうするかとぜひ考えておいていただきたいし、本人が介護し続けるのはやっぱり無理がありますから、どの時点で世帯分離をして親御さんは施設に入るとか、そういうことも含めて想定する。そちらにかかる費用というのをやっぱり考えなきゃいけないですよね。それを取り置いて、いかにどれだけ本人にお金を残せるかという想定をしっかりと、そういうシビアな想定をしておいていただきたいと思うんです。なぜかというと安心のためです。安心のためというのは、つまりいざ親が要介護になっても、あるいは資産が尽きても、本人が何とかなると思えることが、次のステップへつながる可能性がまだ残るという意味なんですよね。安心という足場をつくらないで、ひたすら不安をかき立てるような対応だけしていくと、本人はどんどんフリーズしていってしまいますので、そうじゃなくて、ある程度安心して先を考えられるということ、場合によってはもう福祉の利用も想定した上で、先のことを考えるという状況をつくることが支援において大事だと思います。ご質問に戻りますと、年代別で一番大きいのは、ご両親が高齢になった場合の介護の想定と、それからライフプランということをぜひ考えていただきたいです。これは支援者の方がその専門家にならなくてもいいですけれども、その専門家につなぐようなことはぜひ考えていただきたいかなというふうに思っております。 ○廣岡施設長 今、斎藤さんのお話を伺っていて、本当に大事なところだなと思いながら聞かせていただいておりました。実際、「リンク」で一緒に協働しているぷらっとホーム世田谷では、ファイナンシャルプランナーの方も取り入れての専門相談も実際やっていらっしゃるので、そういうところで、これまでのぷらっとホームの取組みもやっぱり生きてくるんだなというふうに思ったところです。  そういった経済的な話をするのに、やっぱりキーワードとして出てきた関係性をどう作っていくかというところで、ぜひ私は山登さんにもお聞きしたいなと思ったところです。やはり関係性をつくっていく時に児童、子どもであったりですと、言葉でうまく説明できない部分があったりします。いろんな思いがある中で子どもとの関係をつくっていくって、やっぱり何かコツがあるのかななんて思ったりするんですけれども。その関係性をつくっていく、信頼関係をつくっていく何かコツみたいなところがあったら、ぜひお聞きしたいなと思ったんですけれども、山登さんからぜひお話しいただけませんか。 ○山登氏 それはよく聞かれる質問なんですけれども、やっぱりその子どもに関心を寄せるということだと思うんですね。だから、何か困ったことはあるかとか聞くのはすごい野暮だと思うんですよ。だから、親が困って連れてきているんだけれども、子どもはあまり困っていない。親が言うからついてきたというぐらいのもので、特に小さい子なんかは、あんな診察室で知らないおじさんと話をしたくないわけですよね。だから、そういう時は、まず子どもに何が好きか、君は何が好きなのかなみたいな話をします。漫画の話だったら、それはどういうお話なのとか。最近はゲームばっかりだから、僕はゲームをやらないから全然分からないんですけれども、こっちに若い心理士がいるので、聞いたことあるかとかこっちと話をしながら、その子どもの関心を持っていることに、まずそういうふうな言葉のやり取りをする。話せる子はです。話せなくても、何かこの辺にフィギュアの一つでも置いておくと、子どものほうから寄ってきますから、これは何だみたいな話が出来ますよね。  だから、さっきの斎藤さんが言っていたニーズの話ですけれども、その子どものニーズって、不登校の子にしろ、発達障害って言われている子にしろ、ないんですよね。親にある。だから、さっき言ったみたいに、親御さんの困っているところにまず最初コミットしないといけないんだけれども、やっぱり子ども自身は、何をしに来ているのかな、だけれども、ここに来ていると。だから、うちは心理士が、子どもとちょっと言葉を交わした後は一緒に遊んでくれますから、子どもはお兄さんが、お姉さんが遊んでくれる場所として来ているのかもしれないですよね。こっちはこっちで遊んでいる時に、お母さんやお父さんとお話をして、これは前に斎藤さんのほうからも出ていた、今日じゃないですけれども、子どもは元気になれば学校に行く。それまでに要するに親御さんとの関係を良くしていくと。うちは学校に行っていないけれども、これはいつものうちの子という状態を作ってくださいよと。そうでないと大事な話もできないでしょうというお話をしますかね。  ついでにちょっと言っておきたいんですけれども、さっきのアウトリーチの話もありましたけれども、あれも、学校の先生が来ちゃうと、来た時はやっぱり学校の先生もいつかは学校に来られるようになったら来てねみたいな、学校に戻す前提で来るわけですよね。それは子どもにとっては、学校が向こうからやってくるみたいなイメージですから、やっぱりそれには怖がったり反発したり、ちょっと前の子だったら、絶対に先生なんかに会わない、電話にも出なかったんだけれども、最近の子は従順だから、先生に会って、嫌々ながらか、嫌々ながらとも感じていないのかもしれないけれども、会うものだと思って会っちゃうのかもしれないけれども。先生にも、それこそ遊んで帰ってもらいたいと思うんですね。だからそういうアウトリーチのかけ方は、やっぱりちょっと学校に戻って当然という、教師の仕事として戻してあげないといけないとかって、そういうのはまだ残っているんじゃないかと思うんですけれども。そこはもう学校に戻すということ、さっきの教育機会確保法ですけれども、おうちで勉強していればいいと、勉強はまだやらなくてもいいかもしれないし、それはやっぱり子どもの今のありのままというのをちゃんと見てあげてほしいなというか、あげられたらなと思いますけれどもね。 ○廣岡施設課長 ありがとうございます。やっぱりそうですね。関心を寄せていくというところで、聞くのは野暮なんだなというのをすごく思いました。ありがとうございます。聞いて、なるほどと思いました。  では、いろんなお話をお伺いしてきた中で、もう既に出ている部分もあるかもしれないのですが、やはりメルクマールとしては今後のつながり続けていくという支援と、あとはいわゆるひきこもりの中でも孤独・孤立というところは、やっぱりキーワードとしても上がってきているかなというところがあります。なので、なかなかつながり切れない場合の、つながるための工夫も必要な部分というところがあります。今日お話しいただいた中で、ご本人につながっていくために、まずはご家族の支援、ご家族のニーズに沿ってということも1個お話をしていただいたところですけれども、その他につながるための何か工夫であったりですとか、出来ること、地域の資源としてメルクマールがこういうことを取り組めたらいいんじゃないかというところがあれば、ぜひパネリストのどなたかからでも、何かご意見があればお聞きしたいのですけれども、いかがでしょうか。 ○保坂区長 実は世田谷区ではメルクマールが発足したと同時に、子ども・若者支援協議会というのをつくっていて、60近い機関の団体が集まり、テーマごとに会議を設けたり、あるいはケースの中でいろんな複合的な、ひきこもりの問題もあるし、同時に介護のことも出てきたとかいうと、個別ケース検討会議というのを持ったりしています。10年という節目で、しかも重層的支援体制整備事業ということから、今、ひきこもりで年齢の壁を取り払ったというところで説明しました。実は区でこれから取り組もうとしていることで、精神科に長期入院をしている患者さんが本当にその状態でいいんだろうか。早く地域社会に復帰したいということであれば、その声を受け止めようということも、これから始めていくわけです。  実は今の社会って細分化されていまして、行政だけじゃなくて、企業とか、社会自体が縦割り社会になっていて、斎藤さんがおっしゃった10年かけた専門的なプロフェッショナルな教育を受けた支援者よりも、集中的研修を受けたりするセミプロの方が多くいるということがいいんだということにちょっと共感したんです。皆さん、結構専門分野というか、そこは深いんだけれども、例えば発達障害については非常に深いけれども、精神障害については全く分からないとか、ひきこもりのことについてずっとやっているんだけれども、もちろん介護のこととかについてはさっぱり方向感覚がないなどです。でも、実は私たちがつくっている社会って、あらゆる要素が組み合わさって、しかも区役所とかには、やっぱり困ったときに連絡があるというのが普通なんですね。順調に問題なくやっているよという連絡なんかするわけもないので、そういう意味では、それぞれの困り事に対しての配置はしているんですが、区役所内部でもそれをトータルに把握して、ここだねというふうにつぼを突いたコミュニティーソーシャルワークみたいなことをする人をとっても必要としています。それから、先ほど言ったまちづくりセンターなどにも地域にもそういう人が欲しいし、多分「リンク」とか、そこで出てくるような様々なテーマに対して、全く違う他の場だとか、資源、例えばまちづくり系でも空き家活用事業とかというのは、こういう問題にすごく親和性が高いんです。あるいは農業を何とか継続しようということで、農福連携を今始めていますけれども、農地を実験的にグループでやってみませんかということについても、すごい取組みが始まっていたりします。  まず、どのテーマも共通して、要するに区役所が全部抱えますよ、サービスしますというのはもう駄目だと思っています、出来る訳もないし。ただ、区役所には場があったり、人がいたり、あるいは国や東京都も含めた制度があります。それを使い倒すような知恵やたくましさというか、したたかさというのを、ぜひメルクマールには次の11年目から持っていただいて、ミッションをしっかりやっていただいていると思いますけれども、もっと突き破ってほしいなというふうに望んでいます。それはメルクマールだけに望むんじゃなくて、お互いがその壁を破り合っていくべき時期なのかなと思います。 ○廣岡施設長 ありがとうございます。何とコメントしたらいいかというところでしたけれども、なるほどと思いながら聞かせていただいておりました。確かにメルクマールも心理士が職員の中では多数を占めているところではあるんですけれども、メルクマール内でも精神保健福祉士であったり、社会福祉士であったり、本当に多職種になりつつあります。コミュニティーのソーシャルワーク的な視点というのは、やっぱり心理士にとっても、とても学びにもなるし、そういうふうにいろんなところの見聞を広げていきながら、力をつけていきたいと思っているところです。どうもありがとうございました。  では、まだまだたくさんお話を伺いたいところではあるんですけれども、パネルディスカッションの終了の時間を迎えました。皆様、本当にご清聴ありがとうございました。  では、ここからは質疑の時間に移りたいと思います。もしフロアの皆様のほうからぜひここは質問したい、聞いてみたいというようなところがありましたら、挙手いただければ、マイクがそちらの方に届きますので、ぜひ挙手いただけたらと思います。また、オンラインで参加されていらっしゃる皆様は、事務局のほうにチャットで質問をお寄せいただきましたら、そちらで対応させていただきたいと思いますので、どうぞチャットのほうにお寄せください。 ○質問1 お話を聞かせていただいてありがとうございます。相談支援の事業所で働いている者なんですけれども、先ほど斎藤先生が支援における感性が重要になるというふうにお話しされていて、ニーズがあるはずだというのが先入観であったり、あるいは逆に、ニーズが無いと言っている人にもあるかもという人の悪さも必要だというようなことに感銘を受けたんです。支援における感性というところが、私たちのような事業所の中で、この専門家としてどのように磨いていったらいいのかという、感性というのはそれぞれ違うものではあると思うんですけれども、磨くことで精度が上がっていくものだと思うんですけれども、そこがすごく悩んでいるところでもあって、どうしても相談事業だと、あまり密な関わりを相談者さんとする機会がなかったりすると、どうしてもトライ・アンド・エラーを恐れてしまうような傾向が自分たちの中にあって、なかなかその感性を磨くという視点を持ち切れなくなるときがあるんですけれども、そういったことについて何かアドバイスのようなものをいただけるとありがたいと思いました。よろしくお願いします。 ○斎藤氏 ありがとうございます。カンセイと申しましたのは落とし穴の陥穽なんですよ。センスじゃなくて、落とし穴というか、そこに落とし穴がある。でも、今のお話は大事だと思いますので、私の考えるところを述べさせていただこうと思います。  やっぱり失敗経験が大事だと思いますね。成功事例って意外とワンパターンな感じがあって、正直私はあまり学ぶところはなかったりするんですけれども、失敗経験は非常に貴重なものでありまして、失敗から学ぶ姿勢ということを維持していくと、本当はニーズがあるはずなのに無いと言っているみたいなところが、だんだんと見えてくるのかなと個人的には思ったりしますので、その辺を参考にしていただければと思います。 ○廣岡施設長 ありがとうございます。では、そのほか、フロアのほうはよろしいですか。  では、オンラインのほうから幾つか質問をいただいていますので、先にそちらのほうからお答えしていきたいと思います。  では、1点です。地域のところのお話ですけれども、不登校やひきこもりについては、地域というものが本人にとって動けない場所であることが多いと思いますが、他地域との連携のようなことは行っておりますかというご質問をいただいております。 実際メルクマールは、世田谷区の若者支援機関としてスタートしているところがございまして、あくまで区民の方が支援対象となっております。ですので、他の自治体との連携というところでは、他区在住の方から問合せのご連絡をいただいた時に、その地域の相談窓口の情報提供をさせていただいたりですとか、あとは他区に転居される場合、世田谷区から転居で終結になる方も一定数いらっしゃるので、そういった際には、利用者の方とお話、相談した上で、転居先の自治体にある支援機関の方と連携させていただいて、その上で支援を終了するというようなことを行っております。  他に2つほど質問いただいているんですけれども、時間が来ているところですけれども、もう1個だけちょっとだけ触れたいと思います。いわゆるひきこもりに関する大規模調査というのが、江戸川区でニュースになっていたというのがありますけれども、世田谷区ではそのような調査は行われていないのでしょうかということと、また福祉の申請主義の問題についてどのようにお考えでしょうか、というご質問をいただいています。福祉の申請主義はご本人のほうから申請しないとなかなかその利用につながれない、つながらないといったところのご質問かと思いますけれども、このあたりはいかがでしょうか。 ○保坂区長 大規模調査の必要性は感じているんですが、江戸川区のような調査というのはまだやっていません。その調査ということの前に、「リンク」だとか、重層的支援とか、そちらの方をやって来たということで、今後の課題だと思います。  それから、今日のテーマで申請主義、先ほどいろんな連携会議をやっているとか、例えば中学校で進学先がなく卒業していく子について、しっかり「リンク」のほうにつなぐとか、メルクマールのほうにつなぐとか、そういうことは行っていますが、この辺もやはりどんどんずかずか入っていくという訳にもいかず、でも、やはりどこかで欲した時に、連絡できるよという情報を節目、節目で、例えば18歳からには、子ども年齢から大人になる時とか、そういう時に目につくように提供していくということは、心がけていきたいなと思っています。  多分いわゆるネット社会なので、ネットとかLINEにおけるこんな場があるよ、こんな相談もできるんだよ、みたいな情報発信もちょっとまだ足りないかなと思っていて、それを強化していきたいなと思っています。 ○廣岡施設長 ありがとうございます。もう1個質問をいただいていたところなんですけれども、こちらはまた後日、回答させていただくような形で対応させていただきたいと思います。申し訳ございません。 ○司会 様々なお話が聞けて、大変学びになった時間だったんですけれども、では最後に、これまでのディスカッションや皆様のご意見、ご質問を踏まえて、廣岡施設長に全体のまとめをお願いしたいと思います。廣岡施設長、お願いいたします。 ○廣岡施設長 では、まずは本当にパネリストの皆様、ありがとうございました。また、フロアの皆様も活動報告からご参加いただきましてありがとうございました。  私のまとめというところなんですけれども、メルクマールが10年目を迎えるというところで、これまで取り組んできたことが一定の成果といいますか、評価をいただいているところで、これを引き続き継続していきたいなというふうに思っているというところです。やはりご家族の方への支援もこれまで取り組んでいたところですが、ご家族の方のニーズと、ご本人のニーズというところを混同せずに、それぞれのニーズに沿いながら、引き続き丁寧な支援、息の長い支援に取り組んでいきたいというふうに考えております。  また、コミュニティーソーシャルワークというような宿題といいますか、課題といいますか、今後の展望もいただいたので、そこも本当に地域の様々な支援機関の方のお力添えもいただきながら、今後取り組んでいきたいと思います。  では、私からのまとめというのは以上になります。 ○司会 廣岡施設長、ありがとうございました。  世田谷区での不登校やひきこもり等の生きづらさを抱えた方への支援がより充実した取組になりますよう、今後とも努めてまいりたいと思います。  それでは、パネリストの皆様、ありがとうございました。パネリストの方々にいま一度盛大な拍手をお願いいたします。(拍手)  以上をもちましてパネルディスカッションを終了させていただきます。  それでは最後に、世田谷区保健福祉政策部長、田中耕太様よりご挨拶を頂戴します。よろしくお願いします。 ○田中保健福祉政策部長 区役所の保健福祉政策部長の田中です。今日はお忙しいところ、暑い中、こちらまでお越しいただいてありがとうございます。Zoomで接続の皆さんも、今日はどうもありがとうございます。  廣岡施設長のいつも落ち着いた感じの説明で、私も廣岡さんの話を聞くとなぜかほっとするという、とてもそういった形で支援していただいて、大変ありがたいなと思っています。  区としても、「リンク」という形でぷらっとホーム、メルクマールとやっております。今後とも、つながり続ける支援というのをきちんと皆さんにお届けしていきたいなと思っています。今日は支援機関の皆様も多くいらっしゃっているかと思います。いろんな支援機関の皆様ともつながり続けながら、重層的支援ということで区民を支えていければなというふうに考えております。  今日はどうもありがとうございました。(拍手) ○司会 田中部長、ありがとうございました。  本日は、皆様お忙しいところ、メルクマールせたがや10年目シンポジウムにご来場いただき、誠にありがとうございました。これにて全てのプログラムを終了いたします。  最後に、アンケートの記入にご協力いただき、お帰りの際にロビーの回収箱にお入れください。なお、アンケート用紙に記載のQRコードよりオンラインでの回答も可能です。Zoomでご参加いただいている方は、現在画面に映し出しておりますQRコードもしくは世田谷区ホームページよりアンケートフォームにアクセスできますので、入力いただけますと幸いです。  お帰りの際は、お忘れ物などございませんよう、お手回り品には十分御注意ください。  それでは皆様、お気をつけてお帰りください。本日は誠にありがとうございました。(拍手) 30