令和7年11月21日 世田谷区長 保坂 展人様 世田谷区特別職報酬等審議会 会長 沼尾波子 特別職報酬額等及び政務活動費の額について(答申) 令和7年7月30日付7世総第273号により諮問のあった標記の件について、別紙のとおり答申します。 世田谷区特別職報酬等審議会委員 会長 沼尾 波子 会長職務代理 外山 公美 委員 朝倉 宏美 委員 浅見 正人 委員 小島 和子 委員 小原 靖夫 委員 鈴木 竹夫  委員 楯 香津美 委員 中村 重美 答申 1 はじめに 世田谷区特別職報酬等審議会(以下「審議会」という。)は、令和7年7月30日、世田谷区特別職報酬等審議会条例第2条の規定に基づき、区長から、区議会議員の議員報酬の額、区長、副区長、教育長及び監査委員の給料の額(以下「特別職報酬等」という。)並びに政務活動費の額についての諮問を受けた。 審議会は、第三者機関としての自覚と責任のもと、国及び他自治体における特別職報酬等の額や一般職の給与改定状況、政務活動費の交付状況に加えて社会経済情勢等の多面的な要素を考慮し、第三者機関として客観的かつ公正な立場から審議を行った。 2 区長、副区長、教育長、監査委員、区議会議員の職責について 区政の最高責任者である区長は、区の現在のみならず未来を見据えるとともに、複雑多様化する区民要望を的確に捉え、区政の目指すべき将来像を実現していくために、高度な先見性や決断力、指導力が必要とされ、その職責は極めて重大である。   副区長は、円滑な区政運営のために区長を補佐する立場にあり、区長の意向を踏まえた、領域や部を越えた全庁的な視野での政策判断や、国や東京都、近隣自治体等の関係機関との調整の役割を担っていることから、その職責は非常に重要である。   教育長は、教育委員会会議の主宰者であり、委員会の活性化等を図る立場にある。また、具体的な事務執行の責任者、事務局の指揮・監督者として教育行政を進めていくことが求められており、重要な職責を担っている。 監査委員は、区が執行する事務等の監査を通じ、行政の適法性及び妥当性を確保するとともに、地方自治行政の透明化を図ることを目的に設置されていることから、各委員が担う社会的責任は極めて重い。 区議会議員は、区民の代表として区議会を構成し、その活動を通じて区民要望の実現に向けて尽力するほか、執行機関の行財政運営が適正かつ公平、効率的になされているかをチェックする機能を果たすことが求められている。また、区の総人口がこれまでのような右肩上がりの増加を見込めない状況のなか、所得格差の拡大や地域社会の分断の広がりへの懸念、災害対応など、地域を取り巻く行政課題の多様化・複雑化に伴い、自治体に求められる役割は大きくなっている。それに伴い、区の意思決定や行政のチェック、区民要望への対応を行う機関の一員として、区議会議員が担う役割と職責についても、その重要性を増している。 3 特別職報酬等の額について (1)基本的考え方及び区の現状 特別職報酬等は、その職務と職責に相応するとともに、他自治体の特別職報酬等の額や一般職の給与改定の状況、その他社会経済情勢及び区の財政状況等を勘案し、区民の理解を得られる適正な額であることが望ましい。 世田谷区における現在の特別職報酬等の月額及び、月額に地域手当及び期末手当を加えた報酬等の年額と他自治体(東京23区)との比較は、下表のとおりである(令和7年6月1日現在)。 区分 月額(円) 東京23区における順位 報酬等の年額(円) 東京23区における順位 区  長 1,061,600 21位 22,642,866 10位 副 区 長 817,100 23位 17,427,925 22位 教 育 長 71,600 19位 16,457,456 11位 常勤代表監査委員(*) 667,300 6位 14,232,841 2位 常勤監査委員(*) 647,200 10位 13,804,128 2位 区議会議員 議長 937,000 7位 16,814,465 6位 副議長 793,300 15位 14,235,768 8位 委員長 670,800 7位 12,037,506 5位 副委員長 638,500 11位 11,457,882 6位 議員 621,400 8位 11,151,023 6位 注:「東京23区における順位」は金額の多い順とする。  (*)東京23区において、常勤代表監査委員を選任しているのは9区、常勤監査委員を設置しているのは17区である。(令和7年6月1日現在) なお、世田谷区の場合、特別給(期末手当)の支給月数はすべての区分において、年間4.10月である。 (2)一般職の給与改定の状況 特別区人事委員会は、一般職の給与水準について、特別区内の民間従業員の給与水準と均衡させることを基本とし、毎年、給与に関する報告及び勧告を行っている。その基礎となる「職種別民間給与実態調査」の結果によると、本年は、月例給においては一般職の給与が民間従業員の給与を3.80%下回っており、この公民較差を是正するため、初任給及び若年層に重点を置きつつ、全ての級及び号給について引上げとする勧告を行った。 また、特別給については、一般職の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数が民間の特別給(賞与)を0.07月分下回っていることから、0.05月の引上げ勧告を行った。   4 政務活動費の額について 政務活動費は、区議会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経 費の一部として、条例に基づき区議会における会派又は議員個人に対し、交付される費用である。 世田谷区の政務活動費の額は、「世田谷区政務活動費の交付に関する条例」が施行された平成13年度以降、月額240,000円で据え置きが続いている。 5 社会経済情勢及び区の財政状況について 政府は日本経済の状況について、月例経済報告(令和7年10月)で「景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している。」としている。また、先行きについては「雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される」としている。一方で、「米国の通商政策の影響による下振れリスクには留意が必要である」ことや、「物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども我が国の景気を下押しするリスクとなっている」こと、さらには「金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある」ことを指摘している。 他方、区の財政状況は、令和6年度決算によると、実質収支が129億8,100万円の黒字であり、健全化判断比率からも財政状況は健全であると言える。 また、特別区債の残高は、平成10年度の1,468億7,200万円をピークとし、令和6年度には418億3,200万円まで減少した。 しかしながら、区の財政見通しにおいても、特別区税等について一定の増収を見込むものの、社会保障関連経費や長期化する物価・人件費の高騰による歳出の増大や、今後の本庁舎等整備や学校改築、公園の用地買収等による特別区債残高の増加が見込まれる。 6 結論 (1)改定の適否等について 政務活動費の額、及び特別職報酬等の額、特別給について、区政を取り巻く社会経済情勢の動向や特別区人事委員会による勧告(以下「勧告」という。)の経緯に加え、これまでの改定経過等を十分に考慮したうえで審議し、下記のとおり結論に至った。 @政務活動費の額については、物価高騰による影響はあるものの、賃金上昇のペースが物価上昇を上回っていない状況もあり、このような区内の経済状況や区民感情を鑑みると、増額とする積極的な意義は認め難いとの意見が出された。 一方で、近年の賃金の上昇を踏まえ、相当額を増額するべきとの意見や、政務活動費の執行状況等から、減額を望む意見も出されたが、他自治体との比較や過去の推移を踏まえ、現行の額に据え置くことが適当であるとの結論に至った。 なお、政務活動費の使途の情報公開にあたっては、公開性と透明性を確保し、区民にとってより分かりやすい公開方法とするため、経年比較が可能となる仕組みや帳簿類に検索機能を追加する等、公開方法の工夫を求める意見が出された。 A区長、副区長、教育長、監査委員の給料月額及び議員報酬月額については、 勧告が初任給及び若年層に重点を置きつつ、全ての級及び号給について引き上げるとしたことに鑑み、特別職においても引上げを行うことが妥当であるとの結論に至った。 B特別給については、勧告が公民較差是正のための引上げであることを尊重し、一般職の給与改定と同程度引き上げることが適当であるとの結論に達した。 (2)改定額について @特別職報酬等の額 区長、副区長、教育長、監査委員の給料月額及び区議会議員報酬月額の引上げ率については、「部長級職員の最高号給引上げ率である3.30%が妥当」とする意見と「公民較差である3.80%が妥当」とする意見に分かれ、「3.30%が妥当」とする意見が多かったが、統一した結論に至らなかった。そのため、審議会の意見として両論を併記することとする。  なお、地域手当や職務加算、監督者手当のあり方等については、他自治体との比較も踏まえ、特別職の職責に見合ったものであるか検討する必要があるとの意見が出された。 <引上げ率ごとの影響額> 表1 3.30%引上げ(100円未満切捨て) 区分 現行額(円) 改定額(円) 引上げ額(円) 区長 1,061,600 1,096,600 35,000 副区長 817,100 844,000 26,900 教育長 771,600 797,000 25,400 常勤代表監査委員 667,300 689,300 22,000 常勤監査委員 647,200 668,500 21,300 区議会議員 議長 937,000 967,900 30,900 副議長 793,300 819,400 26,100 委員長 670,800 692,900 22,100 副委員長 638,500 659,500 21,000 議員 621,400 641,900 20,500 表2 3.80%引上げ(100円未満切捨て) 区分 現行額(円) 改定額(円) 引上げ額(円) 区長 1,061,600 1,101,900 40,300 副区長 817,100 848,100 31,000 教育長 771,600 800,900 29,300 常勤代表監査委員 667,300 692,600 25,300 常勤監査委員 647,200 671,700 24,500 区議会議員 議長 937,000 972,600 35,600 副議長 793,300 823,400 30,100 委員長 670,800 696,200 25,400 副委員長 638,500 662,700 24,200 議員 621,400 645,000 23,600 <引上げ率に対する主な意見> ・米国による関税措置等、海外情勢が不安定な中で、米価の高止まりをはじめとする物価の高騰が区内経済や区民の暮らしの実態に大きな影響を与えている。そこに由来する区民感情を考慮すると、3.80%ではなく、3.30%が妥当と考える。 ・人口に対して職員数が不足していると感じる。一般職員の負担が大きいことを踏まえて、そこを手厚くという考え方を基準に、一般職より抑えた3.30%が妥当と考える。 ・引き上げることで、民間事業者においても、引上げの期待感を持つことができるかもしれない。しかしながら、区民感情や生活実態を考慮すると3.30%の引上げが妥当と考える。 ・任期が4年であるため、ある程度の給料・報酬は保障するべきであることから、管理職並みである3.30%が妥当であると考える。 ・区民感情がどのようなものかわからない中で、それを根拠として一般職と比べて減額することには疑問を感じる。また、物価上昇を理由として増額するのであれば、一般職と区別する必要は無いため3.80%が妥当と考える。 A期末手当 区長、副区長、教育長、監査委員及び区議会議員の期末手当について、0.05月引き上げることが妥当との結論に至った。 (3)改定の実施時期について 一般職と同時期の改定が望ましい。 7 おわりに 本審議会は、区長の諮問に対し、以上のとおり答申する。 なお、特別職各位におかれては、昨今の社会情勢下など将来の見通しが極めて難しい時代の中でも、区民の信頼と負託に応え、住民福祉の向上のため、一層尽力されることを願うものである。