タイトル 令和7年度公金運用計画 (計画期間 令和7年6月から令和8年5月まで) 令和7年6月策定 作成所属 世田谷区会計室 目次 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 2.歳計現金等 (1)資金収支の見通し (2)歳計現金等の管理・運用 3.積立基金 (1)積立基金残高 (2)積立基金の管理・運用 (3)積立基金運用実績 内容 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 令和7年6月に発表された月例経済報告では、我が国の経済の基調判断を、「景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる」としている。 先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっている。 加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。 また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要があるとしている。 金融情勢をみると、令和7年6月の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合では、「各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押し されるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。 その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる」。 また、「消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価 上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想」されるなど、「各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はき わめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある」としている。 今後も、国内外の経済や金融情勢について、より一層注視していく必要がある。 財務省出典の資料を参考に、平成26年4月から令和7年6月までの金利状況(各月初日の数値)を折れ線グラフに表わしている。 一方、区の財政状況は、令和7年度予算において、歳入の根幹となる特別区税や特別区交付金について増収を見込んでいるものの、ふるさと納税による流出見込額は123 億円となり、さらに、歳出面では、国の制度改正や現下の物価・人件費高に伴い扶助費や委託料などの経常経費が大幅に増加している。 加えて、今後の財政見通しでは、大規模自然災害への備えをはじめ、社会保障関連経費や道路・公園等の都市基盤整備、本庁舎等整備や区立小中学校など公共施設の改築・ 改修等、膨大な行政需要が見込まれている。このため、今後の区の財政状況は決して楽観視できる状況にはない。 また、国内外の経済・金融環境の変化等、先行きが不透明な中、健全で安定的な行財政運営を確保していくことが求められている。 財政当局とも連携を図りながら、中期財政見通しを踏まえ、適切なリスク管理を行いながら、運用収益の確保もじゅうにぶんに考慮した、より効率的な公金運用を目指していく。 2.歳計現金等 歳計現金等とは、一般会計、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計、学校給食費会計、保管金等歳入歳出外現金、高額療養費等資金貸付基金、 美術品、文学資料等取得基金、用地取得基金、以上の総額をいう。 (1)資金収支の見通し 令和7年度の資金収支の状況は、例年同様、特別区民税や国民健康保険料を収納する時期の関係から、年度当初から6月にかけて一時的に支払準備資金に余裕がない状況 が見込まれる。 その後は、令和7年度賦課分の納期がはじまることから、基本的には収入超の状況が続き、年度を通して収入が支出を上回る見通しである。 (2)歳計現金等の管理・運用 基本的方針 支払準備資金を指定金融機関の普通預金で管理することを基本とする。 支払準備資金が比較的、安定して確保されている期間に、定期性預金での運用を行う。 支払準備資金が不足する場合は、金額と期間を踏まえた上で、くりかえ運用を行う。 繰替運用とは、資金不足に対応するために、基金に属する現金を歳計現金等へ一時的に繰り替えて使用することをいう。 歳計現金等は、地方自治法第235 条の4 で、「最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない」と定められている。 各所属からの毎月ごとの大口収支計画の報告等をもとに、支払いに支障をきたすことのないように継続的な注意を払った上で、日々の支払いに備えるための支払準備資金は、 指定金融機関の普通預金で管理することを基本とする。 また、支払準備資金が比較的、安定して確保されている期間には、効率性の確保の観点から、安全性が確認できる金融機関への定期性預金での運用を行う。 歳計現金等全体で支払準備資金が不足することが見込まれる場合は、金額と期間を踏まえた上で、積立基金からの繰替運用を行う。 3.積立基金 (1)積立基金残高 令和7年度末における積立基金残高は、約1,310 億円と見込んでいる。 ひょう1 積立基金の残高推移については、次のとおりである。     財政調整基金の令和7年度末見込みの残高は418億6千8百万円、令和6年度末見込みの残高は417億4千万円、5年度末現在高は419億1千2百万円、4年度末現在高は418億3千百万円である。 減債基金の令和7年度末見込みの残高は41億2千4百万円、令和6年度末見込みの残高は52億3百万円、令和5年度末現在高は64億9千百万円、4年度末現在高は64億7千7百万円である。 義務教育施設整備基金の令和7年度末見込みの残高は346億7千4百万円、令和6年度末見込みの残高は353億9千万円、令和5年度末現在高は317億3千2百万円、4年度末現在高は316億8千7百万円である。 庁舎等建設等基金の令和7年度末見込みの残高は230億6千6百万円、令和6年度末見込みの残高は272億円、令和5年度末現在高は301億1千百万円、4年度末現在高は372億2千3百万円である。 都市整備基金の令和7年度末見込みの残高は60億4千4百万円、令和6年度末見込みの残高は87億6千7百万円、令和5年度末現在高は124億8千6百万円、令和4年度末現在高は123億4千8百万円である。 地域保健福祉等推進基金の令和7年度末見込みの残高は7億9千5百万円、令和6年度末見込みの残高は9億5千8百万円、令和5年度末現在高は9億4千6百万円、令和4年度末現在高は8億7千百万円である。 みどりのトラスト基金の7年度末見込みの残高は100億3千3百万円、令和6年度末見込みの残高は111億2千6百万円、令和5年度末現在高は122億3千9百万円、令和4年度末現在高は122億千6百万円である。 国際平和交流基金の7年度末見込みの残高は3億5千6百万円、令和6年度末見込みの残高は3億5千6百万円、令和5年度末現在高は3億5千6百万円、令和4年度末現在高は3億5千5百万円である。 住宅基金の7年度末見込みの残高は7億3千百万円、令和6年度末見込みの残高は13億千百万円、令和5年度末現在高は15億7百万円、令和4年度末現在高は16億1千6百万円である。 文化振興基金の7年度末見込みの残高は7千8百万円、令和6年度末見込みの残高は7千2百万円、令和5年度末現在高は4千4百万円、令和4年度末現在高は3千9百万円である。 子ども・若者基金の7年度末見込みの残高は3億6千9百万円、令和6年度末見込みの残高は3億3百万円、令和5年度末現在高は2億2千3百万円、令和4年度末現在高は1億7千百万円である。 災害対策基金の7年度末見込みの残高は23億8千8百万円、令和6年度末見込みの残高は28億3千3百万円、令和5年度末現在高は26億2千4百万円、令和4年度末現在高は25億9千7百万円である。 児童養護施設退所者等奨学・自立支援基金の7年度末見込みの残高は3億5千万円、令和6年度末見込みの残高は3億千百万円、令和5年度末現在高は2億7千4百万円、令和4年度末現在高は2億4千7百万円である。 スポーツ推進基金の7年度末見込みの残高は54億千6百万円、令和6年度末見込みの残高は54億2千百万円、令和5年度末現在高は52億2千8百万円、令和4年度末現在高は50億8千7百万円である。 世田谷遊びと学びの教育基金の7年度末見込みの残高は2千9百万円、令和6年度末見込みの残高は2千6百万円、令和5年度末現在高は2千2百万円、令和4年度末現在高は2千2百万円である。 医療てきケア児の笑顔を支える基金の7年度末見込みの残高は1億1千百万円、令和6年度末見込みの残高は9千万円、令和5年度末現在高は4千2百万円、令和4年度末現在高は2千百万円である。 気候危機対策基金の7年度末見込みの残高は7億千7百万円、令和6年度末見込みの残高は7億4千万円、令和5年度末現在高は8億円、令和4年度末現在高は4億1千7百万円である。 犯罪被害者等支援等基金の7年度末見込みの残高は3千万円である。 なお、計数については、百万円未満を四捨五入しているため、合計等と一致しない場合がある。 (2)積立基金の管理・運用 基本的方針 世田谷区中期財政見通し(令和7〜11年度)を踏まえ、基金の目的に沿った計画的かつ効果的な活用を行う。 急激な経済変動や大規模災害に備えるために必要とされる資金を除き、債券による一括した運用を基本とする。 地方自治法及び同せこう令の規定により、「最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない」とされていることを踏まえ、元本保証がない株券による運用は行わない。 1これまでの基金運用の経過 区の積立基金の運用は、平成20年のリーマンショック以降、急激な経済変動に機動的に対応できるよう、流動性が確保できる預金の比率を段階的に高め、債券30%程度、 預金70%程度を目安としてきた。 令和6年度からは、財政調整基金と災害対策基金の全額を、流動性の高い預金管理としたうえで、その他の基金については、原則として世田谷区中期財政見通しの期間 (5年)内での債券運用を基本とした。 その結果、令和7年3月末時点での財政調整基金及び特定積立基金の合計(令和6年度末見込み)に対する債券運用の割合は58.3%となっている。 2令和7年度の取組み  上記の基本的方針に加え、令和7年度の取組みを次のとおりとする。 債券償還額の年度間の平準化を図り、流動性の高い資金を毎年度安定的に確保することにより、財政調整基金の一部を債券による運用とし、基金の効率性・収益性をより高める。 @債券償還額の年度間の平準化 今後の債券償還額は、令和7年度・8年度に各90億円、9年度に66億円、10年度に219億円、11年度に100億円となっている一方、12年度は2億円、13年度は償還がないなど、 ばらつきが生じる見込みである。 今後、流動性の高い資金を毎年度安定的に確保するため、令和7年度から9年度までの間に償還される債券を、さらに5年の債券で運用することにより、12年度以降の償還額の 平準化を図る。 ひょう2は償還状況の平準化のイメージを表している。 A財政調整基金の一部債券運用 区は、平成20年のリーマンショックの際に、単年度で100億円を超える税収減に直面した経験を踏まえ、以降、同規模の税収減が3年間継続しても、区民サービスの水準を維持 できるよう、一般会計の1割相当額を目安に財政調整基金として積立てることとし、流動性の高い預金により管理している。 本基金は、3年間にわたって活用する想定であることに加えて、上記@の債券償還額の平準化により流動性の高い資金を毎年度安定的に確保できることから、財政調整基金の 一部を債券による運用とし、基金の効率性・収益性をより高める。 なお、 本運用は、毎年度の公金運用計画策定時に検証し、債券運用のがくを含めて必要な見直しを行う。 B災害対策基金の運用 災害対策基金については、発災後の復旧に加え、災害対策への備えにも使途を拡充していることから、引続き、流動性の高い預金による保管とする。 よん ESG債(環境改善や社会貢献等を資金使途とする債券)による運用 現在区が運用している政府保証債や地方債、財投機関債のほとんどは、ESG債である。引き続き、効率性・収益性を考慮しながら、ESG債による運用を図っていく。 D令和7年度の具体的な運用計画 令和7年度に満期により償還される債券90億円を、改めて5年の債券で運用する。 これまで預金で管理してきた財政調整基金の一部30億円を3年の債券で運用する。 ひょう3 運用可能額の試算について、令和7年度末の基金総額見込みは1311億7千9百万円(A)である。 流動性が高く、預金で保管する額は452億5千6百万円(B)である。 これは財政調整基金と災害対策基金と一時的なくりかえ運用等の残高見込みである。 令和6年度末の債券運用額は857億千6百万円(C)である。 令和7年度に債券で満期を迎え、償還される見込み額は、90億円(D)である。 (B)のうち債券運用を行う財政調整基金額は、30億円(E)である。 令和7年度債券運用が可能ながくは、AからBとCを引いてDとEを足した122億7百万円である。 この運用計画による年間の基金利子収入額は約1億1千5百万円と試算している。 令和7年度においては、半期分の約5千7百万円の増収分を含め基金利子収入額の目標をひょう4とする。 ひょう4 積立基金利子収入について、7年度目標額は8億6千万円である。なお、6年度実績額は4億6千4百万円、5年度実績額は2億8千9百万円である。 (3)積立基金運用実績 令和6年度の利子収入額は、運用資金が増加したことに加え、政策金利の利上げ等に伴い債券の運用利率がこれまでと比べ高いものとなったことなどにより、 預金運用の利子収入額、債券運用の利子収入額はともに増加し、ひょう5のとおり令和5年度を大幅に上回る4億6千4百万円台を確保した。 ひょう5 積立基金の運用実績 基金運用全体の6年度の平均利回りは0.29%で、5年度の0.18%と比べると、0.11ポイント増加した。 基金運用全体の6年度の利子収入額は464,401,940円で、5年度の288,573,389円と比べると、175,828,551円増加した。 内訳として、債券運用の6年度の平均運用割合は48.58%で、5年度の29.26%と比べると、19.32ポイント増加、 6年度の平均利回りは0.50%で、5年度の0.55%と、比べるとマイナス0.05ポイント減少した。 債券運用の6年度の利子収入は384,215,737円で、5年度の257,500,752円と比べると、126,714,985円増加した。 預金運用の6年度の平均運用割合は51.42%で、5年度の70.74%と比べるとマイナス19.32ポイント減少、 6年度の平均利回りは0.10%で、5年度の0.03%と比べると0.07ポイント増加。 預金運用の6年度の利子収入は80,186,203円で、5年度の31,072,637円と比べると、49,113,566円増加した。 くりかえ運用の6年度の利子収入は0円で、くりかえ運用の実施が令和5年度はなかったことにより増減なしだった。 参考 積立基金運用実績(過去6年分) 令和6年度の利子収入額は464,401,940円、平均利回りは0.29%である。 令和5年度の利子収入額は288,573,389円、平均利回りは0.18%である。 令和4年度の利子収入額は252,460,008円、平均利回りは0.19%である。 令和3年度の利子収入額は244,147,276円、平均利回りは0.20%である。 令和2年度の利子収入額は241,187,995円、平均利回りは0.21%である。 令和元年度の利子収入額は233,226,027円、平均利回りは0.23%である。 参考 積立基金金融機関種別預金内訳(令和7年3月末日現在) 都市銀行の預金額は、150億4千2百万円、預金額全体に占める割合は20.9%である。 信用金庫の預金額は、150億円、預金額全体に占める割合は20.8%である。 農協系金融機関の預金額は、70億円、預金額全体に占める割合は9.7%である。 信託銀行の預金額は60億円、預金額全体に占める割合は8.3%である。 地方銀行等の預金額は290億円、預金額全体に占める割合は40.3%である。