タイトル 令和6年度公金運用計画 (計画期間 令和6年7月から令和7年6月まで) 令和6年7月策定 作成所属 世田谷区会計室 目次 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 2.歳計現金等 (1)資金収支の見通し (2)歳計現金等の管理・運用 3.積立基金 (1)積立基金残高 (2)積立基金の管理・運用 (3)積立基金運用実績 内容 1.区を取り巻く経済・金融動向と公金運用計画の考え方 令和6年6月に発表された月例経済報告では、我が国の経済の基調判断を「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」としている。 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、欧米における高い金利水準 の継続に伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、 金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要があるとしている。 金融情勢をみると、令和6年3月の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合では、「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる 状況に至ったと判断する」とともに「これまでの『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の枠組みおよびマイナス金利政策は、その役割を果たした」としている。 このため、「短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する」とし、マイナス金利政策を解除した。 また、令和6年6月の政策委員会・金融政策決定会合では、「金融市場において長期金利がより自由な形で形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を 決定した」としている。今後も、経済状況や金利の動向について、より一層注視していく必要がある。 財務省出典の資料を参考に、平成25年4月から令和6年6月までの金利状況(各月初日の数値)を折れ線グラフに表わしている。 一方、区の財政状況は、歳入の根幹となる特別区税は、賃金上昇に伴う増収を見込む一方で、ふるさと納税による影響や国の定額減税に伴う減収を見込むなど、予断 を許さない状況が継続している。こうした状況下においても、大規模自然災害への備えをはじめ、社会保障関連経費や道路・公園等の都市基盤整備、本庁舎等整備や 区立小中学校など公共施設の改築・改修等、増加する行政需要に対し将来を見据えながら確実に対応していくとともに、令和6年度を初年度とする基本計画に掲げる 重点政策を着実に進め、時代に即した新たな行政経営への移行を推進していく必要がある。 区を取り巻く経済・金融状況等の変化について注視しつつ、今後の状況等も見据えながら、世田谷区公金管理方針に基づき、安全性(元本の保全)を重視して、流動性 (現金化の容易度)に万全の注意を払いながら、新たな行政経営への実現に向けたプランに掲げている効率性(税外収入の確保)を目指していく。 2.歳計現金等 歳計現金等とは、一般会計、国民健康保険事業会計、後期高齢者医療会計、介護保険事業会計、学校給食費会計、保管金等歳入歳出外現金、高額療養費等資金貸付基金、 美術品、文学資料等取得基金、以上の総額をいう。 (1)資金収支の見通し 令和6年度の資金収支の状況は、例年同様、特別区税や国民健康保険料を収納する時期の関係から、年度当初から6月にかけて一時的に支払準備資金に余裕がない状況が 予想される。これに加え、特別区民税などの定額減税の実施に伴い、さらに7月にも支払準備資金に余裕がない状況が生じることが予想される。 その後は、6年度賦課分の納期がはじまることから、基本的には収入超の状況が続き、年度を通じて収入が支出を上回ると予想される。 (2)歳計現金等の管理・運用 支払準備資金を指定金融機関の普通預金で管理することを基本とする。 支払準備資金が不足する場合は、金額と期間を踏まえた上で、くりかえ運用を行う。 繰替運用とは、資金不足に対応するために、基金に属する現金を歳計現金等へ一時的に繰り替えて使用することをいう。 歳計現金等は、地方自治法第235 条の4 で、「最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない」と定められている。 各所属からの毎月ごとの大口収支計画の報告等をもとに、支払いに支障をきたすことのないように継続的な注意を払った上で、日々の支払いに備えるための支払準備資金は、 指定金融機関の普通預金で管理することを基本とする。 歳計現金等全体で支払準備資金が不足することが見込まれる場合は、金額と期間を踏まえた上で、積立基金からの繰替運用を行う。 3.積立基金 (1)積立基金残高 令和6年度末における積立基金残高は、約1,280 億円と見込んでいる。 表1 積立基金の残高推移については、次のとおりである。     財政調整基金の令和6年度末見込みの残高は397億6千5百万円、5年度末見込みは399億9千4百万円、4年度末現在高は418億3千百万円、3年度末現在高は388億3千8百万円である。 減債基金の令和6年度末見込みの残高は51億9千5百万円、令和5年度末見込みの残高は64億9千百万円、4年度末現在高は64億7千7百万円、3年度末現在高は64億6千6百万円である。 義務教育施設整備基金の令和6年度末見込みの残高246億9千4百万円、令和5年度末見込みの残高は306億4千百万円、4年度末現在高は316億8千7百万円、3年度末現在高は186億4千5百万円である。 庁舎等建設等基金の令和6年度末見込みの残高272億9百万円、令和5年度末見込みの残高は281億3千4百万円、4年度末現在高は372億2千3百万円、3年度末現在高は351億3千9百万円である。 都市整備基金の令和6年度末見込みの残高87億6百万円、令和5年度末見込みの残高は124億8千6百万円、令和4年度末現在高は123億4千8百万円、3年度末現在高は102億6千9百万円である。 地域保健福祉等推進基金の令和6年度末見込みの残高9億5千百万円、令和5年度末見込みの残高9億3千9百万円、令和4年度末現在高は8億7千百万円、3年度末現在高は8億7千万円である。 みどりのトラスト基金の令和6年度末見込みの残高106億1千万円、令和5年度末見込みの残高117億3千8百万円、令和4年度末現在高は122億千6百万円、3年度末現在高は101億6千2百万円である。 国際平和交流基金の令和6年度末見込みの残高3億5千3百万円、令和5年度末見込みの残高3億5千3百万円、令和4年度末現在高は3億5千5百万円、3年度末現在高は3億6千百万円である。 住宅基金の令和6年度末見込みの残高13億5千2百万円、令和5年度末見込みの残高15億5千万円、令和4年度末現在高は16億1千6百万円、3年度末現在高は13億円である。 文化振興基金の令和6年度末見込みの残高7千百万円、令和5年度末見込みの残高4千3百万円、令和4年度末現在高は3千9百万円、3年度末現在高は3千5百万円である。 子ども基金の令和6年度末見込みの残高2億9千3百万円、令和5年度末見込みの残高2億2千万円、令和4年度末現在高は1億7千百万円、3年度末現在高は1億6千7百万円である。 災害対策基金の令和6年度末見込みの残高23億2千万円、令和5年度末見込みの残高26億2千4百万円、令和4年度末現在高は25億9千7百万円、3年度末現在高は25億8千8百万円である。 児童養護施設退所者等奨学基金の令和6年度末見込みの残高2億9千2百万円、令和5年度末見込みの残高2億6千7百万円、令和4年度末現在高は2億4千7百万円、3年度末現在高は2億3千百万円である。 スポーツ推進基金の令和6年度末見込みの残高53億9千9百万円、令和5年度末見込みの残高52億2千6百万円、令和4年度末現在高は50億8千7百万円、3年度末現在高は29億円である。 世田谷遊びと学びの教育基金の令和6年度末見込みの残高2千7百万円、令和5年度末見込みの残高2千3百万円、令和4年度末現在高は2千2百万円、3年度末現在高は2千2百万円である。 医療てきケア児の笑顔を支える基金の令和6年度末見込みの残高9千万円、令和5年度末見込みの残高4千3百万円、令和4年度末現在高は2千百万円、3年度末現在高は2千百万円である。 気候危機対策基金の令和6年度末見込みの残高7億7千百万円、令和5年度末見込みの残高7億9千4百万円、令和4年度末現在高は4億1千7百万円である。 なお、計数については、百万円未満を四捨五入しているため、合計等と一致しない場合がある。 (2)積立基金の管理・運用 積立基金は、基金全体で一括して運用する。 資金の流動性を確保した「短期的な運用」と、安全性を重視しつつ比較的高い利回りを確保できる「長期的な運用」を組み合わせた資金配分を行う。 世田谷区中期財政見通し(令和6〜10年度)による基金の繰入や取り崩しの見通しを踏まえ、効率性・収益性を高める運用を目指す。 1 これまでの基金運用の経過 かつて、区の積立基金の運用は、世田谷区中期財政見通しの期間内(5年未満)を満期とする債券を基本に、基金全体の五十%から七十%程度を債券運用に充ててきた。 その後、平成20 年のリーマンショックの際に、区税収入の複数年にわたる大幅減とそれを補うための基金の大幅な取り崩しが想定されたことを契機に、 段階的に債券による運用を流動性に優れる預金にシフトさせてきた。 債券については、低金利の中でも比較的高い利回りが確保できる10年債や20年債の比率を高めるとともに(令和4年度:20 年債が債券全体の半分以上を占める)、流動性を両立する観点から、 債券30%程度、預金70%程度を目安として運用を行うに至っていた。 令和5年度より、従来の運用に加え、基金の性格等を踏まえた3〜5年程度の債券による運用を新たに開始した(令和5年度末:債券46%、預金54%程度) 2 令和6年度の考え方 (1)基金の運用にあたっては、世田谷区公金管理方針及び世田谷区公金管理方針実施要領に基づき、効率性等の観点から、基金全体で一括運用していく。 (2)運用方法としては、資金の流動性(現金化の容易度)を確保した普通預金や定期性預金などの短期的な運用 (1年以内)と、安全性を重視しつつ、マイナス金利政策の解除に伴い、 今後の金利動向を見極めながら、国債、政府保証債、地方債、財投機関債など比較的高い利回りを確保できる長期的な運用(1年超)を組み合わせた資金配分を行う。 なお、地方自治体の基金は、地方自治法及び同施行令の規定により、「最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない」とされていることを踏まえ、元本保証がない株券による運用は行わない。 (3)具体的な資金配分にあたっては、世田谷区中期財政見通し(令和6〜10年度)による基金の繰入や取崩しの見通しを踏まえ流動性の確保の上で、各基金の設置目的に応じ、 効率性・収益性を高める運用を目指す。 @ 財政調整基金は有事に備えた基金であること、また、災害対策基金については、発災後の復旧に加えて、災害対策への備えにも使途を拡充したことから債券運用の対象とはせず、 流動性の高い預金による保管とする。 A財政調整基金と災害対策基金を除いたその他の基金については、これまで定期性預金で保管していたものについて債券による運用を行う。債券の運用にあたっては、3年程度または5年程度の運用とする。 以上を踏まえ、ひょう2のとおり、今年度新たに運用可能な額を約160億円と算出し、債券運用を行う。また、環境改善や社会貢献等を資金使途とする債券(いわゆるESG債)についても、 安全性・流動性・効率性を考慮した上で基金の性質に応じ、購入を図っていくものとする。 表2 運用可能額の試算について、令和6年度末の基金総額見込みは1280億9千8百万円(A)である。 流動性の高い預金で保管する額は423億8千万円(B)である。 これは令和10年度末の財政調整基金と災害対策基金の残高見込みである。 令和5年度末の債券運用額は697億円(C)である。 新たな債券運用が可能な額はAからBとCを引いた160億1千8百万円である。 この債券運用の追加により、年間の基金利子収入額は約7,800 万円の増収と試算している。令和6年度においては、下半期の約3,900 万円の増収分を含め、基金利子収入額の目標等を、表3のとおりとする。 表3 積立基金利子収入について、6年度目標額は4億5千万円である。なお、5年度実績額は2億8千9百万円、4年度実績額は2億5千2百万円である。 (3)積立基金運用実績 令和5年度の利子収入額は、基金残高の増加に伴い運用資金が増加したこと、定期性預金の金利の低下が微減だったことなどにより、預金運用の利子収入額、債券運用の利子収入額はともに増加し、 ひょう4のとおり令和4年度を上回る2億8800万円台を確保した。 表4 積立基金の運用実績 基金運用全体の5年度の平均利回りは0.18%で、4年度の0.19%と比べると、0.01ポイント減少した。 基金運用全体の5年度の利子収入額は288,573,389円で、4年度の252,460,008円と比べると、36,113,381円増加した。 内訳として、債券運用の5年度の平均運用割合は29.26%で、4年度の24.73%と比べると4.53ポイント増加、5年度の平均利回りは0.55%で、4年度の0.69%と比べると0.14ポイント減少した。 債券運用の5年度の利子収入は257,500,752円で、4年度の229,868,424円と比べると、27,632,328円増加した。 預金運用の5年度の平均運用割合は70.74%で、4年度の75.27%と比べると4.53ポイント減少、 5年度の平均利回りは0.03%で、4年度の0.02%と比べると0.01ポイント増加。 預金運用の5年度の利子収入は31,072,637円で、4年度の22,591,584円と比べると、8,481,053円増加した。 くりかえ運用の5年度の利子収入は0円で、くりかえ運用の実施が令和4年度はなかったことにより増減なしだった。