せたがや自治政策研究所 Newsletter 2025年9月号 No. 55 SETAKEN NEWS ▲せた研ゼミ(「自治体職員の文章術?「調べる」「考える」職員の育成」の様子) これまでのせた研ゼミの詳細は次ページ せた研ゼミ(自治体職員の調べ方入門?「探す・読み取る・聞き取る・分析する技術」 )の様子・・表紙   せた研ゼミの報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 社会調査マスターへの道《質的調査 編》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 地域・地区の基本情報ダッシュボード他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 せたがや版データアカデミー開催予告他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 せた研ゼミのご紹介 〜一緒に互学互修しませんか?〜 主任研究員 堀江博昭 私は「学ぶ」という営みを「先生から知識を教えてもらうこと」とイメージしてしまう世代ですが、今の小・中学校では「主体的・対話的で深い学び」を目標として授業が組み立てられているとのことです。 ちなみに、これは「現代の新しい学び方」ではありません。実際に、西郷隆盛や大久保利通を輩出した薩摩藩では、年齢にかかわらず集団で学び、互いに教え合い、議論するという「郷中教育」が行われていました。 当研究所が毎年実施している講座「せた研ゼミ」でも、互いに学び互いに修める「互学互修」を基本としています。 「せた研ゼミ」は新任研究員向けの講座ではありますが、これからの自治体職員に必要な知識・スキルを取り扱っておりますので、一般職員の方々の参加もお待ちしております。 興味を持たれた皆様に、今年度、実施済みのせた研ゼミについて簡単にご紹介します。 ?●自治体職員の文章術?「調べる」「考え る」職員の育成  【概要】 文章作成に必要なスキルなどを講義の受講や受講生間のディスカッションを通じて考察し、職務上の課題や関心のあるテーマについて小論文を作成することを目標とした講座です。 【第一回】※レジュメはコチラ 動画はコチラ 自分の持つ「課題・関心」を「テーマ」に育てるためのアプローチについて、昨年度の調査における「地域活動に参加意欲はあるけど参加していない層」をケーススタディとし、SWOT分析とクロスSWOT分析を実施しました。 以下が調査結果ですが、なぜ、参加意欲があっても参加していないと思いますか? 【第二回】※レジュメはコチラ 動画はコチラ 受講者の課題や関心のテーマについて発表し、テーマの選定基準について対話しました。 私は「先行研究無くしてテーマたりえず」という、先行研究リサーチの重要性に深く感銘を受けました。 職務上の課題や関心ごとがありましたら、書籍を読むだけでなく、先行研究に触れてみてはいかがでしょうか。 ※参考までに、論文発表サイトはコチラ ●自治体職員の調べ方入門?「探す・読み取る・聞き取る・分析する技術」 ※概要は次ページ参照 【第一回】※レジュメはコチラ 動画はコチラ 「データ」をイメージすると、数値化された「量的データ」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は感想や直感、更にはそれを持つ「自分自身」も含め、五感で感じる全てが「質的」データで、分析対象です。 単なる「ペン」という単語も「贈られた思い出」や「ブランド品で高価な」といった情報(データ)によって印象が変わりますよね。 質的データの調査・分析方法を学べば、人や物を深く理解できるのではないでしょうか。 ●終わりに 私は異動の際に毎度後悔することがあります。 「もっと学べばよかったな…」と。 これは、忙しさをかまけて、自分の知識や経験だけで物事を進めた結果、「もっと良い方法があったのではないか…」と後になって煩悶した経験が、棘のように刺さっているからだと思います。 今からでも後悔しない自分になれます。 せた研で共に学んでみませんか? ※リモート参加も可能です! 社会調査マスターへの道《質的調査 編》特別研究員 鈴木颯太 第1回「数字にできないデータとは?」 「質的データ」とは一体どのような特徴を持つものなのでしょうか。 もう一歩踏み込んで、考えてみたいと思います。そこで改めて「質的データ」を、「数値で表現されないあらゆるデータ」と、端的に表現しておきたいと思います。 前回も少し紹介したように、文章が書かれた書類全般をはじめ、写真や映像、音声に至るまで、その本質を数値で表すことができないデータが、これに該当します。 しかしそう考えると、私たちの日常生活をとりまく、あらゆることがらが「質的データ」になりうることになります。 視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚、いわゆる五感で感知できるものすべてが、いわば「質的データ」の原料となりうるのです。 つまり、みなさんが日頃の業務で目にした光景や、耳にした区民の語りなど、とりとめもないことも、普段の業務を通して何らかの媒体に記録されることで、調査研究に有用な「質的データ」に姿を変えるかもしれません。 「質的データ」とは、そんな多様な可能性に開かれた「データ」なわけです。 ところで、こんなことを言うと、「そんなものまで『データ』として使っていいの?」「そういったものは主観的なものであり、価値がないのでは?」という意見も出てきそうです。果たして、こうしたデータを取り扱う「質的調査」は、価値の低い取り組みなのでしょうか? ここで「理論」と呼ばれるものについて考えることで、「質的調査」の理解が深まることでしょう。社会や文化に関する「理論」が正しいのかどうか。これを客観的に検証するという作業が、学術的な探求の主要な一面としてあります。ここにおいて、統計的に意味のある値を提示することができる「量的調査」が、その力を大いに発揮するのは言うまでもありません。 それでは、こうした「理論」はどこからやってくるのでしょうか。まず思いつくのが、高名な学者が、すでにある「理論」を批判したり、洗練させたりすることで生み出される「理論」です。しかし、実際の現実世界を生き、そして見聞きすることで立ち現れてくる、「これってこういうことなんじゃないの?」という素朴な仮説だって立派な「理論」になりうるのです。 この観点に立つと、私たちが生活する世界のあらゆる場所に散らばる「質的データ」、そして、それらをくみ上げる「質的調査」が、こうした「理論」の構築に、大きな力を授けてくれそうではありませんか? つまり、「質的調査」の強みは、このような「理論」の練り上げにこそあるのです。 「理論」の検証が得意な「量的調査」、「理論」の生成が得意な「質的調査」。いわば両者は相互を補い合う関係にあるのです。もっとも、ここで「得意」という表現を用いた通り、「量的調査」による「理論」の生成が、「質的調査」による「理論」の検証が、それぞれできないという意味ではありません。時と場合に応じて、両者を使い分け、場合によっては併用していくことが、重要なのです。 地域・地区の基本情報ダッシュボード 主任研究員 小薗井良太 当研究所では、人口や世帯の状況などをわかりやすく可視化した「地域・地区の基本情報ダッシュボード」を公開しています。このダッシュボードでは、住民基本台帳や国勢調査のデータをもとに、地域・地区の基本情報をグラフや表で確認することができます。 地域・地区の現状を把握しする際の参考資料として、ぜひご活用ください。  ▼コチラ(ホームページ)からご確認いただけます。 人流データ分析システム操作説明会報告 研究員 内海大輔 政策研究・調査課では、携帯電話のGPS位置情報ビッグデータを活用した人流分析システムの利用サービス(KDDI Location Analyzer)の締結をしております。 本システムは利用を希望する所管に対して、アカウントの貸出等を行っており、庁内の職員であれば誰でも利用できるシステムとなります。 ただ、システムの活用方法が分からなかったり、そもそも貸出している認知度の低いこと等が現状にありましたので、この度ベンダーの講師をお招きし、システムの操作説明会を実施いたしました。 当日の様子はコチラからご確認いただけますので、興味がある方は是非ともご覧ください。 当日の説明会では、システムを初めて触る方に向けた基礎説明、分析ツールの活用事例、ケーススタディ(イベント来場調査、通学路の検討、高齢者施設利用者分析)の流れで講義を行いました。 活用事例では、都市開発、安全対策、観光施策の観点からの紹介がありました。都市開発では歩行者の通行量調査から複合施設の開発やイベント実施の周辺状況の把握に役立てており、世田谷区においても活用できる事業があるのではないかと思います。 例えば、「〇〇通りの交差点は人通りが多いから警備スタッフを多めに配置しよう」といった感じで直感的に物事を判断していたものに対して、本システムを活用し具体的な通行人数を明らかにすることができます。 システムを利用したい方は、庁内公開サイトから申込用紙を作成のうえ政策研究・調査課までお送りください。 せた研 イベントのお知らせ せたアカを開催します! データを利活用した政策形成手法の習得を目的とした人材育成プログラム「せたがや版データアカデミー」を開催いたします! 日頃の業務に課題を感じている方やデータの利活用に興味のある方は是非ともご参加ください! 期 間 令和7年9月22日〜令和8年1月30日 (全5回) 第1回講義概要 基調講演 「データを通してコミュニティの実態を見ることはなぜ求められるのか」 講演者 大杉 覚(せたがや自治政策研究所所長/東京都立大学法学部教授) Coming soon... せた研に新たなコンテンツ登場・・・!? 近日公開! ??読者アンケートにご協力をお願いいたします。 本号から庁外の皆様にもご回答いただけます!