表面 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 05  気持ちが落ち着く 烏山寺町 表面の写真1 お寺の門、塀、みどりが見える景色 烏山寺町 豆知識 烏山寺町には、様々な宗派の26もの寺院が集中しています。その落ち着いた風情とたたずまいは、地域ぐるみの取組みによって育まれ、守られてきました。 烏山寺町の成り立ち 江戸時代には浅草、築地などの寺町をはじめ、数多くの寺院がありました。大正12年(1923年)の関東大震災では、多くの寺院が被害を受け、伽藍(がらん)が焼失した寺院も多くありました。震災後の復興計画では、寺院の再建が規制され、新たな都市計画が策定されたことで、多くの寺院が東京郊外への移転を余儀なくされました。当時の烏山は、畑地と雑木林が広がる農村で、地価が低廉(ていれん)で広大な土地を容易に取得することができたこと、甲州街道から近く都心部からの交通が便利だったことから、多くの寺院が移転してきました。震災の翌年から徐々に寺院の移転が行われ、昭和10年代には、現在のような"寺町"が形成されました。 表面の地図1 昭和14年 古地図 烏山寺町データ 総寺院数26 表面の表1 宗派別と旧地別の数 宗派別 浄土真宗本願寺派 8寺院 真宗大谷派 5寺院 浄土宗 4寺院 日蓮宗 4寺院 法華宗 2寺院 真言宗豊山(しんごんしゅう ぶざん)派 1寺院 顕本法華宗(けんぽんほっけしゅう) 1寺院 臨済宗大徳寺派 1寺院 旧地別 浅草 9寺院 築地 5寺院 本所 2寺院 その他 10寺院 烏山弁天池(からすやまべんてんいけ) 烏山寺町の最北端には、「烏山弁天池(からすやまべんてんいけ)」があり、区の特別保護区に指定されています。別名「鴨池」の名で親しまれ、せたがや百景にも選定されています。 STUDY学ぶ、深める 寺町のシンポル「宙水(ちゅうすい)」 「烏山弁天池(からすやまべんてんいけ)」は、「宙水(ちゅうすい)」と呼ばれる浅い地層に帯水する地下水です。「宙水(ちゅうすい)」はローム層の下部に難透水層が分布する場合にローム層内に点在する、武蔵野台地において特徴的な地下水です。寺町付近にも分布しており、地表から2m足らずの深度で水を汲み上げることができます。寺町の多くの寺院で見かける井戸も、宙水(ちゅうすい)を利用しています。 表面のイラスト1 ローム層の中の難透水層がある場合、浅い地層に「宙水(ちゅうすい)」が滞水することを示した断面図 みどりの保全 烏山寺町の街並みを彩る様々な「みどり」は、寺町への移転以降に植えられ、育てられてきました。境内(けいだい)の樹木の多くは、区の保存樹木や保存樹林地に指定されています。境内の植栽や生垣は、各寺院の個性を彩るとともに、寺町全体として潤いのある風景の形成につながっています。 表面の表2 みどり保全制度名称と数量 特別緑地保全地区 1箇所 特別保護区 1箇所 保存樹林地 9箇所 保存樹木 16本 烏山寺町環境協定 寺町の環境を後世に継承していくため、住民自らが主体となって昭和50年(1975年)に「烏山寺町の環境を守る会」を組織し、「烏山寺町環境協定」を締結しました。協定では、地下水の保護、みどりの育成、町なみの維持整備などについて、寺院及び居住者の責務として遵守していくこととしています。こうした取組みが、寺町のたたずまいを今日まで育んできました。 ご報告 いろまちあるき ご参加ありがとうございました 10月28日にいろまちあるきを実施しました。当日は、色彩の専門家である田邊学氏(株式会社カラープランニングセンター代表取締役)を講師にお招きし、成城学園前駅から国分寺崖線のエリアを中心に、街の色に着目しながらまち歩きを行いました。たくさんの方にご参加いただきありがとうございました。 表面の写真2 まち歩きの様子 表面の地図2 いろまちあるきルート 中面 烏山寺町 烏山寺町に行くと、なぜ気持ちが落ち着くのか。 京王線千歳烏山駅から北に向かって15分ほど歩いたところに、26ものお寺が集まった「烏山寺町」があります。交通量の多い甲州街道が近いにもかかわらず、とても静かで気持ちが落ち着く場所です。 この落ち着いた雰囲気は、どこからきているのでしょうか。 今回は、寺町の風景をつくりだしている風景要素を集めてみました。 中面のイラスト1 道を歩きながら見える、門構え、屋根、塀、みどりの風景要素を示したスケッチ 中面の地図1 26寺院の名称と歩く順番、風景資源が示された寺町の地図(所要時間約2時間) 注意 寺院は宗教施設です。見学される際は、葬儀や墓参などのご迷惑にならないよう、ご配慮をお願いします。 地図内に、せたがや百景、地域風景資産をマークで掲載。 烏山寺町(せたがや百景、地域風景資産) 烏山の鴨池(地域風景資産) 釜六の天水桶(地域風景資産) 地図内に歩く順番を掲載。 スタートは高源院(こうげんいん)、ゴールは玄照寺。 高源院(こうげんいん)へは、千歳烏山駅発、久我山病院行(バス 烏01)に乗り、寺院通5番で下車、そこから徒歩1分。 01から26まで一筆書きでまわれます。 寺院の番号と名称 01 高源院(こうげんいん) 02 永願寺(えいがんじ) 03 専光寺 04 妙寿寺(みょうじゅじ) 05 浄因寺 06 善行寺(ぜんぎょうじ) 07 萬福寺 08 妙善寺 09 幸龍寺(こうりゅうじ) 10 称往院 11 宗福寺 12 永隆寺(えいりゅうじ) 13 妙祐寺(みょうゆうじ) 14 存妙寺(そんめいじ) 15 源正寺(げんしょうじ) 16 常栄寺 17 入楽寺 18 乗満寺(じょうまんじ) 19 多聞院 20 妙高寺 21 順正寺(じゅんしょうじ) 22 西蓮寺 23 常福寺(じょうふくじ) 24 妙揚寺(みょうようじ) 25 源良寺(げんりょういん) 26 玄照寺 風景要素ごとに、特徴的な寺院の写真を掲載しています。 門構え お寺の門を山門と呼びます。山である寺院の入口にふさわしい風格で、訪れる人を迎えてくれます。 中面の写真1 以下の6寺院の門構えの写真を掲載 04 妙寿寺(みょうじゅじ) 09 幸龍寺(こうりゅうじ) 11 宗福寺 12 永隆寺(えいりゅうじ) 16 常栄寺 22 西蓮寺 24 妙揚寺(みょうようじ) 屋根 一見してお寺とわかる特徴的な建築様式ですが、よく見るとアーティスティックな個性にあふれています。 中面の写真2 以下の6寺院の屋根の写真を掲載 02 永願寺(えいがんじ) 13 妙祐寺(みょうゆうじ) 16 常栄寺 19 多聞院 20 妙高寺 21 順正寺(じゅんしょうじ) 塀 寺町の塀や生垣は多種多様。いずれも静かな威厳を感じるのは、境内と俗世間を隔てる境界であるからでしょうか。 中面の写真3 以下の7寺院の塀の写真を掲載 05 浄因寺 06 善行寺(ぜんぎょうじ) 08 妙善寺 13 妙祐寺(みょうゆうじ) 18 乗満寺(じょうまんじ) 20 妙高寺 22 西蓮寺 みどり 手入れされた庭木や高く育った樹木は、烏山寺町が重ねた時間を超えた歴史を感じさせます。 中面の写真4 以下の7寺院のみどりの写真を掲載 01 高源院(こうげんいん) 04 妙寿寺(みょうじゅじ) 07 萬福寺 09 幸龍寺(こうりゅうじ) 14 存妙寺(そんめいじ) 20 妙高寺 26 玄照寺 歴史(古いもの) 烏山に移転する以前の歴史を物語る様々な遺産が、さりげなく風景の中に織り込まれています。 中面の写真5 以下の5寺院の歴史(古いもの)の写真を掲載 03 専光寺の、喜多川歌麿墓石(きたがわうたまろぼせき) 04 妙寿寺(みょうじゅじ)の、山門、梵鐘 10 称往院の、蕎麦禁止石碑 11 宗福寺の、の墓石 15 源正寺(げんしょうじ)の天水桶 番外編 中面の写真6 以下の2寺院の特徴あるものの写真を掲載 23 常福寺(じょうふくじ)にある、たぬきの置物 25 源良寺(げんりょういん)で見かけた、花まつりの時にまちを練り歩く白い象 発行 世田谷区都市整備政策部都市デザイン課 〒154-8504 世田谷区世田谷4-21-27 電話 03-5432-2039 ファクシミリ 03-5432-3084 ホームページ風景プレス 検索 時間を旅する風景街歩きシリーズ 風景PRESS 05 平成31(2019)年3月(第60号)