5ページ 『知ろう』、ステップ1の1。 『認知症とともに生きていく日々は。認知症の本人に聴こう、声から学ぼう。』というタイトルです。 本人は、まだ認知症になっていない人たちに、「認知症になってから、どんなことが起きるか」、「よりよく暮らすためには何が必要か」を具体的に教えてくれる大切な先輩です。 まずは、ひとりひとりの声に、耳を澄ましてみましょう。 4人の認知症の本人の声を紹介します。 1人目は、長谷部やすじさん、です。長谷部さんは、 「人生の中でいろんな経験をした。診断後、 間もないころは自分も家族も混乱した。つき合い方がわかり、 いまはとても安定している。自分ができることをしながらひとり暮らしをしていきたい。老人として自立した生活を送ることがモットー」と語っています。 長谷部さんは、退職後、73歳で認知症の症状が現れました。当初は周囲に怒りをぶつける日々でしたが、生活が安定したことで、条例検討委員会でも発言しています。趣味は自宅カラオケで、100点をめざして演歌400曲を熱唱しています。 2人目は、ぬきた、ただよし、さん、です。ぬきたさんは、 「決めつけないでほしい。いちばん大事なのは、 みんなと話し合うこと。家にこもっててはだめ、 どんどん外に出よう。オープンにしよう。この町で楽しく暮らし続けたい」と語っています。 ぬきたさんは、テレビ東京で、多くの番組を制作していました。70歳の頃に「ソファーの後ろからゴリラが見えた」などの幻視が現れ、レビーしょうたいがた認知症と診断されました。講演会での動画出演がきっかけで、認知症施策評価委員会でも積極的に発言しています。 6ページ 3人目は、さわだ、さきこさん、です。さわださんは、 「美術の教師をしていた。定年近くで認知症になったが、なんとか勤めあげた。子どもたちができないことをどうしたら伸ばせるか、ずっと取り組んできた。 周囲はできないと思いこんでいても、できることを支援すると伸びる、自分も同じ。できるだけふつうに暮らしていきたい」と語っています。 さわださんは、小中学校、高校、特別支援学級で30年以上、美術を教えていました。60歳過ぎから授業に困難を感じ、認知症を自覚しました。条例検討委員会では“サポーター”ではなく“パートナー”にと提言しました。 4人目は、はやし、のぶゆきさん、です。はやしさんは、 「複雑なことができなくなる80歳まで、仕事を続けた。その後に、絵をかく楽しさに出会った。夢中でかいている時間が、しあわせなひととき。もの忘れは年々進んでいるが、絵を毎日かいていることが生きるチカラになっている。妻とは仲良く、おたがい笑顔でいたい。」と語っています。 はやしさんは、80歳を過ぎて、ペースメーカーを入れたころから認知症の症状が出始めました。デイケアで臨床美術と出会い、絵をかくことの面白さに目覚め、それが日々の楽しみになっています。 認知症の本人の気持ちを理解するためのポイントとしての、本人の声を紹介します。 私たちにはそれぞれ、自分なりの暮らし方や思いがあります。認知症になってからも、同じです。この4人だけではなく、チャンスがあれば、誰だって、自分なりの体験と、思いを伝えることができます。無理と決めつけたり、本人抜きで進めずに、 どんなときでも「本人の声を聴くこと」、「本人が自分なりの思いを伝えること」を、世田谷のあたりまえにしていきましょう。 7ページ 『知ろう』、ステップ1の2。 『認知症の特徴ってなに?「自分ごと」として、生活や地域の大切さを知ろう。』というタイトルです。 認知症とは、脳の病気やさまざまな原因によって脳の働きが低下し、 日常生活や社会生活を送るうえで支障がでてくる状態、つまり、暮らしの障害のことです。 としをとれば、 誰でも認知症になる可能性があります。 また、認知症の原因となる病気は、70種類以上もあります。種類によっては、治癒が可能なものもあります。 決めつけたり、悩まず、「今までと違う」と感じたらできるだけ早く、 話し合える、かかりつけ医や地域の関係者と、よりよい暮らし方について相談してみることが大切です。 詳しくは、23ページ目をご参照ください。 世田谷区の状況について説明します。 2024年時点、世田谷区の人口は約92万人です。 世田谷区における65歳以上の認知症の人は、2024年現在、 2万6千人です。2040年には、推計値3万6千人と年々増加する見込みです。将来、あなたもそのひとりになるかもしれません。 なお、65歳未満で認知症を発症する人もいます。 8ページ 『知ろう』、ステップ1の2、の続きです。 認知症を捉えるポイントは、認知症の症状は周りの環境で大きく左右される、ということです。 認知症の症状を大きく2つに分けると、中核症状と、行動・心理症状(BPSD)があります。 中核症状では、判断力の低下、記憶障害、場所や時間がわからなくなる見当識障害、仕事や家事を順序立ててできにくくなる実行機能障害、話を理解したり、話すことが難しくなるといった症状があります。 ストレスの多い環境で暮らしていると、ストレスに耐えきれず、大声を出したり、うつ状態になる、意欲がなくなる、おこりやすい、落ち着きなく歩き回る、暴力的な言動、いらだつといった、環境の影響から生じる症状につながります。これらの症状を行動・心理症状(BPSD)と呼びます。 一方、本人が暮らしやすい環境だと、これらの症状は現れにくくなります。 病気や症状だけを見ないで、本人がよりよく生きていけるように、暮らしやすい環境を一緒につくりましょう。 認知症について考える際、5つのポイントがあります。 1つ目、元気なときも、なってからも、みんなでそなえましょう。 2つ目、認知症は誰にでも起こりえますが、リスクを減らすいくつかのポイントがあります。詳しくは、16ページ目をご参照ください。 3つ目、少しずつ始まり、長い経過をたどっていきます。 4つ目、生活をする上で、支障が増えていくけれど、自分はいつまでも自分。その誇りと安心が、心身の安定につながります。 5つ目、できないと決めつけない。本当はたくさんのチカラがあります。 9ページ 『知ろう』、ステップ1の3。 『認知症の新しいイメージを。古いイメージからチェンジできると、おたがいの可能性が広がる。』というタイトルです。 ここでは、ページ見開きにわたり、認知症の古いイメージ、オールドカルチャーから、新しいイメージ、ニューカルチャーへチェンジしていこうというメッセージが記載されています。 認知症の「古いイメージ」とは、 1、他人ごと。自分には関わりがない。目をそらす。 2、本人はわからない。できない。何も話せない。本人の声を聴かない。 3、おかしな言動で周囲が困る。医療がなんとかしてくれる。 4、本人が決めるのは、無理。まわりが決めてあげるのが当然。 5、地域で暮らすのは無理。恥ずかしい、隠す、遠ざける。 6、支援してあげる。本人は支援される一方。 7、暗い、萎縮、あきらめ、絶望的。 認知症の「古いイメージ」は、 悪循環におちいり、お互いが暮らしにくくなってしまいます。 10ページ 『知ろう』、ステップ1の3、の続きです。 認知症の「新しいイメージ」とは、 1、自分ごと。自分にも関わりがある。そなえる。 2、本人なりにわかる。できることがある。配慮があれば話せる。声を出せる。本人の声を聴く。 3、言動のワケがある。一番困っているのは本人。医療まかせにせず、みんなで一緒に暮らしを楽に。 4、本人が人生の主人公。本人なりの思いがある。自分で決められる。 5、地域で暮らし続けられる。自分は自分。堂々とオープンにして地域でともに。 6、本人が自分のチカラを活かして活躍する、支え合う。 7、楽しく、のびのびと。あきらめず、希望をもって。 認知症の「新しいイメージ」は、 良循環が生まれ、おたがいが暮らしやすくなります。 認知症基本法にある「新しい認知症観」とはなんでしょうか? 認知症になったら何もできなくなるのではなく、できること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方です。認知症の方も含めた「共生社会の実現」を進めるチカラになります。 11ページ ページ見開きにわたり、『暮らしていく経過(人生の旅)』を説明します。 自分らしく生きてきた途上で、認知症が始まります。人生のゴールまで、長い旅路をたどります。 経過としては、認知症発症後、生活の支障が増える時期、全身状態が低下する時期を経て、人生のゴールを迎えます。20年以上の経過をたどる場合も少なくありません。 認知症についての新しいイメージを、暮らしている地域で多くの人が持っているかどうかで、認知症になってからの経過(人生の旅路)が大きく変わってきます。 『本人の状態』も、認知症の新しいイメージをみんなが持てる地域で暮らしている場合と、認知症の古いイメージのままの地域で暮らしている場合では、大きく変わります。 認知症の新しいイメージをみんなが持てる地域で暮らしている場合、認知症の進行は、人生のゴールまで緩やかなカーブを描いていくことができます。一方、認知症の古いイメージのままの地域で暮らしている場合、認知症を発症し始めた頃から状態低下のカーブを描くことがあります。 どの段階でもあきらめず、より良い状態で暮らせるようにしましょう。 次に、『これからの暮らし方』を4つの時期に分けて、説明します。 1つ目、「自分らしい暮らし」ができている時は、元気なころから出会い、知り合い仲間を増やしましょう。 2つ目、「認知症発症、生活の支障が増えてきた」ときは、変化や生活のしづらさに早く気づき、地域で支えあいましょう。 3つ目、「全身状態が低下してきた」ときは、地域で暮らし続けることを専門職や仲間と一緒に支えあいましょう。 4つ目、「人生のゴール」では、さいごまで自分らしく生ききる、日々を専門職や仲間と一緒に支えあいましょう。 12ページ 11ページに続き、『暮らしていく経過』について説明します。 認知症になってからも、 よい経過をたどれるようになるには、 区内で暮らし、働く、さまざまな立場や世代の人たち、そして区内にいるさまざまな専門職のチカラが必要です。 地域で出会い、 つながり、 語り合いながら、新しいイメージをいっしょに積み上げていきましょう。 『地域とのつながり』としては、 家族、親戚、職場、友人、地域の人々、子どもたち、商店、町内会、民生委員、ボランティア、企業、交通機関、金融機関等、大切な地域生活の仲間、パートナーとして、一緒に、楽しく、つながりつづける。 また、認知症カフェ、本人交流会、家族会、各地区のアクションチーム等で、出会い、つながり、語りあい、一緒に活動する場や機会を設ける。 そのほか、行政やあんしんすこやかセンターなどの福祉の相談窓口、医療機関関係者、介護事業所関係者、権利擁護関係者、成年後見センター等とも早い段階から関わり合い、認知症の新しいイメージを共有しましょう。 このページの右側には、世田谷区の様々なサービスについて紹介している「認知症あんしんガイドブック(認知症ケアパス付き)」をご覧になれる二次元コードがあります。 13ページ 『知ろう』、ステップ1の4。 『認知症とともに生きる、支えあう。新しいイメージを大切にしながら、自然体で自分らしく。』というタイトルです。 実際に認知症になってからも良い経過をたどりながら生活している認知症の本人と、地域の人たちの声を掲載しています。 1つ目、『元気なころからいっしょに、そなえる』の項目では、 地域の集まりで、 認知症の新しいイメージを知り、 みんなで話し合っています。 自分らしく暮らしていくために大事に続けたいことや、 望みを一人ひとりが書きとめています。 地域の人たちは、 「『認知症になりたくない』ではなく、 なっても安心して暮らせる地域にしよう。」と話します。 また、 「おたがい、 認知症になってもよろしくね。」と話す人もいます。 2つ目、『変化がみられたらオープンに、つながりを豊かに』の項目では、 「なにか変、いままでと違う」と感じ、受診をしたら認知症と診断されたので、話し合っていた地域の仲間にオープンにしました。 地域の人たちは、 「伝えてくれてありがとう。」や、 「これまでどおり、楽しくやっていこうよ!」と話します。 本人は、 「うれしい。私なりにできることを続けていきたい。」と話します。 これまでどおりのつき合いや趣味を続け、地域に出かけていく中で、介護や医療の専門職の人との出会いもあり、つながりが広がっていきます。 14ページ 『知ろう』、ステップ1の4、の続きです。 『医療や介護を利用しながら、地域で活躍、楽しい日々を』の項目では、 少しずつできないことが増え、家族を解放したいという思いもあり、自分で選んで介護サービスを利用し始めました。サービス利用日以外は今までどおり、地域の仲間と楽しく過ごしています。 地域の人たちは、 「地域のカフェの大事なひとり。教わることの方が多い。」と話します。 本人は、 「仲間がいて、いっしょに働けて、楽しい。」と話します。 また、自分の体験や思いを住民やこどもたち、若者に伝えています。 本人は、 「認知症になったけど、私は私。楽しいこともいっぱいある。」と話します。 『人生の実りのステージ、地域でともに、 自分らしく』の項目です。 言葉が少し出にくくなったけど、地域のなじみの人が会いにきてくれると、とてもイキイキしています。ゆっくり、ゆたかな言葉が出て、その日は食事も進み、ぐっすり眠れるようです。 地域の大好きな場所に、出かけ続けています。地域の仲間や介護の職員と、お互い気持ちよく、しあわせなひとときを過ごします。 ステップ1の4のポイントは、次のとおりです。 こんな生き方・支えあい方ができる時代になっています。ひとりでも多くの人が、元気なころから地域でつながり、自分らしく暮らし続けられるアクションをいっしょに取り組みましょう。 15ページ 『知ろう』、ステップ1の5。 『地域の中で広がる可能性。つながりあって、楽しく、いっしょに、ともに自分らしく。』というタイトルです。 「いっしょにいる」という場面では、お買い物やおしゃべり、公園を散歩、ちょっと立ち話があります。 「役に立ちたい」という場面では、登下校のあいさつ運動、地域食堂、学校や保育園等の木工品づくりといった大工仕事があります。 「楽しむ」という場面では、絵画、読書、カラオケ、スポーツ、ハイキングがあります。 これらの場面を参考に、元気な時から、楽しい活動や誰かとつながる習慣を、住み慣れた地域で作りませんか。認知症になってからも、いろんな出会いがあると、自分のチカラがよみがえったり、新たなチカラが伸びていきます。 16ページ 『知ろう』、ステップ1の5、の続きです。 自分らしく暮らしていくためのポイントとして、次の4つのリスクを避けましょう。 1つ目、社会的孤立、うつ。 2つ目、難聴や視力低下など周囲の情報が入りにくい状況。 3つ目、高血圧や糖尿病、高コレステロール、肥満など。 4つ目、喫煙や過度な飲酒。 以上の4つのリスクは、医学雑誌「ランセット」常設委員会の2024年報告書から引用しています。 1人で抱え込まず、早めに相談をしましょう。