詳細事例集  目 次 【視覚障害】   3ページ 101 申請書類の案内について(当事者より) 102 デイジー図書貸出申込書の書式について(区職員より) 103 盲導犬の入店拒否(当事者より) 104 店舗改修後、ATMの音声ガイドがなくなった(当事者より) 105 鉄道駅の案内・誘導について(当事者より)    【聴覚障害】   5ページ 201 粗大ごみのFax申し込みができない(当事者より) 202 投票所の筆談対応について(当事者より) 203 転居に伴うITプロバイダーの対応(当事者より) 204 民営バスにおける障害者割引の手帳提示(当事者より) 205 大学の講義(スクーリング)での情報保障(ノートテイク)(当事者より) 212 演劇鑑賞での聴覚障害者への配慮(当事者より) 215 無人改札での聴覚障害者への配慮(当事者より) 216 選挙の投票会場における聴覚障害者への配慮について(当事者より)      217 賃貸住宅にかかる対応(当事者より)        【肢体不自由】   10ページ 301 ホールの舞台に車いすで登壇したい (施設担当者より) 302 区役所内の段差のためレストラン・トイレが利用できない(区民の声より) 303 車いす利用者の講習会参加について(当事者より) 304 車いす利用者の講演会参加について(区職員より) 305 投票所の段差等への対応 について(当事者より) 306 駐輪場の自転車の出し入れ(当事者より) 307 大型自転車の駐輪について(家族より) 308 区民施設駐車場の案内について(家族より) 309 まち歩きイベントにおける合理的配慮とは(区職員より) 310 「新成人の集い」への出席(本人・家族より:区民の声)  311 電動車いすの入店介助の拒否(当事者より) 312 電動車いすでの入店を拒否された (当事者より) 313 飲食店の固定された椅子とテーブル等について(当事者より) 314 スーパーマーケットのセミセルフレジについて(当事者より) 315 スーパーマーケットにおけるシニアカーの利用(店舗従業員より) 316 福祉タクシー券の利用拒否について(当事者より) 317 タクシー料金の支払いについて(当事者より) 318 降車駅名を伝えたのに駅員が配置されなかった (当事者より) 319 混雑を理由に乗車を拒否された(当事者より) 320 ストレッチャー型電動車いす利用者の新幹線乗車 (当事者より) 321 車いす利用者への銀行の対応(当事者より) 322 駐車場の場所について(当事者より) 363 フィットネスクラブの対応(当事者より)           367 学童クラブのルール変更(保護者より)             【言語障害】    23ページ 401 言語障害者への対応(当事者より:区民の声) 【内部障害】     23ページ 601 プール入場時の障害者の確認方法について(当事者より:区民の声)   【知的障害】     24ページ 801 知的障害者への声かけについて(区民より) 802 健康診断における合理的配慮について(区職員より)  803 子供向け事業への保護者同伴について(家族より)       【発達障害】     26ページ 901 交通事故被害児童の受診拒否(民間事業所より) 902 テスト用紙の拡大コピーについて(家族より)    【精神障害】    27ページ 1001 ヘルプマークへの理解を求めたら図書館から退去させられた(当事者より) 1006 同性職員の担当変更の依頼(当事者より) 3ページ 視覚障害 101 申請書類の案内について(当事者より)  合理的配慮 【相談内容】 窓口で職員に申請書の場所を尋ねたところ、「ピンク(色)の書類」と案内された。色の判別が難しい(*)ために、並んでいた書類を全て手にとって判断した。その様子を見た職員が、「文字が読みづらい」と誤解したのか、書き方等について不要な説明を受け、大変不快な思いをした。 【対応経過】 窓口の所管課は、申請書を入れるケースに番号を振り、今後は色と番号で案内することとした。また、職員に色弱のある方への対応について伝えた 所管課は相談者に今回の案内と対応について謝罪し、今後の対応予定を説明した。 【考察】 色覚は多様で、人とは異なる色覚を持っていても、外からみるとわからない。 色弱の特性がある人は、男性の20人に一人、女性の500人に一人と言われている。これを想定した案内が求められる。 本件のように「色と番号」など、二種類の呼び方で案内するなどの工夫が必要である。 102 デイジー図書貸出申込書の書式について(職員より) 事前的環境整備 【相談内容】 広報広聴課で作成した「せたがや便利帳」のデイジー版*を区立図書館やまちづくりセンターで貸し出すこととなった。貸出申請書について、視覚障害者が利用するうえで、どのような配慮が必要か? (*)デジタル録音図書。パソコンや専用の機器で音声を再生する。 頭出しや再生スピードの調整が可能で、自分にあった読み方ができる  【対応経過】 障害施策推進課から、以下の助言を行った。 貸出申請書のフォントを上げ、ゴシック書体にする(ロービジョンの方むけ) 職員の代筆を想定して、その際の説明内容等を用意しておく 【考察】 視覚障害には様々な状態がある。あらかじめ利用者の状態を想定し、事前に書式等を整備することで、実際の貸出がスムーズに行われるようになる。 ◎本件のように、事業実施前に「どのような配慮が必要か」という職員からの相談も増えている。遠慮なく、問い合わせていただきたい。 103 盲導犬の入店拒否(当事者より) 不当な差別的取扱い 【相談内容】 盲導犬を連れて、友人と一緒にレストラン(民間)に行ったが、「区の条例により盲導犬はお断りしています」と言われ、やむなくあきらめた。そのような区の条例があるのか知りたい。  【対応経過】 調査員は担当課に連絡し、「食品衛生法施行規則により、『作業場に動物等を入れてはいけない』との規定はあるが、『客席』にはない。」ことを確認し、相談者にその旨を伝えた。 「身体障害者補助犬の同伴を拒否すること」は不当な差別的取扱いの具体例の一つだが、相談者は、「友人の行きつけの店であり、この件で友人に迷惑がかかっては。」との気兼ねから、店名を明かさなかった。 【考察】 盲導犬拒否の背景には、「盲導犬とペットとの違い」に関する店側の誤解があると推測され、理解・啓発を図る取り組みの必要性を新たに感じた。 104 店舗改修後ATMの音声ガイドが無くなった(当事者より) 合理的配慮 【相談内容】 日頃から、コンビニのATMを使っている。いつも利用するコンビニの改装があり、その後ATMに行くと、音声ガイドの機能が無くなっていた。目が不自由で、音声ガイドがないとお金の出し入れができず、困っている。 【対応経過】 調査員は、当該店舗を訪問し、ATMを確認した。相談者の言う音声ガイダンス用受話器は、左腰付近に設置されていた。 相談者に連絡したところ、相談者はその後コンビニに問い合わせて、音声ガイダンス用受話器の場所を確認していた。ATM装置の入れ替えに伴い、受話器の位置が以前より低くなっていたとのことだった。 【考察】 視覚障害者にとって、「いつもの場所に無い」ものを探すのは容易ではない。その場でコンビニ店員に確認すれば分かる事だったが、お金の出し入れ操作を知らない人に聞くのは危険が伴い、ためらわれる。 音声ガイダンス用受話器の位置を変更するなら、その旨を点字シール等でわかりやすい場所に貼付するなどの配慮が必要であった。 このように、設備はあるのに障害当事者が使えない、使いにくいことがある。実際の場面を想像して、どうすれば初めての人でも使えるのか、工夫と配慮が必要である。 105 鉄道駅の案内・誘導について(当事者より) 合理的配慮 【相談内容】 鉄道駅で、ホームへの誘導依頼のために案内ボタンを押して行き先を告げたが、乗車ホームの番線を案内されたのみで放置された。何とか一人で電車に乗ったが、降車駅でも改札口が分からず困った。ホームまでの誘導や駅間での引き継ぎをしてほしい。 【対応経過】 調査員は、相談内容について、事業所(鉄道会社)に確認した。 事業所からは、以下の回答があった。 当社では視覚障害者も、車椅子の方と同様、乗客の求めに応じて、必要な方に乗降の手伝いをすることを基本としている。ただし、乗客等の混雑状況、職員の手配状況等によって出来ない時もある 今回は、相談者の依頼の際に、「ホームまで誘導してほしい」という意図が駅員に伝わっていないことも考えられた。例えば、「目が不自由なため、14番線ホームまで誘導してほしい」などと具体的に申し出てもらえれば、口頭でのホームのご案内だけでなく、ホームまでの誘導も対応している。 相談者に上記回答を伝えたところ、「そういえば目が不自由なことについて詳しく伝えていなかった」と思い起し、了解を得た。 【考察】 「〇〇まで行きたい」と言われて、駅員はホームの番線を案内したのみで、当事者が誘導を必要としていることに思い至らなかった。 言葉の背景にある障害当事者の困りごとや不便を具体的に把握し理解することが大切であり、また当事者側も要望を具体的に伝えるという、コミュニケーションの大事さを、改めて考えさせられた。 5ページ 聴覚障害 201 粗大ごみのFax申込みが出来ない(当事者より) その他 【相談内容】 「粗大ごみの申込みはFaxでも可能か」と、友人に電話で問い合わせて貰ったところ、粗大ごみ受付センターから「Faxでは受け付けていない」と言われた。聴覚障害のために電話はかけられず、メールも使えない。FAXでも受け付けてほしい。 【対応経過】 調査員が担当課に確認したところ、Fax申し込みが可能であることが分かり、その旨を相談者に伝えた。 担当課は改めて委託事業者に本件を伝え、周知徹底を促した。 【考察】 申請申し込み方法の情報等は、担当者間で定期的な確認が必要である、 障害がある人の申し込み手段は、複数の方法があることが望ましい。(今回の場合では、メールとFAX) 202 投票所の筆談対応について(当事者より) 合理的配慮 【相談内容】 「選挙の期日前投票に行った際、宣誓書の不備を指摘された。投票所には「筆談できます」との表示があったので、身振り等で筆談を依頼したが、筆談用紙を備えておらず、 事務所まで取りに行った。また、区役所で筆談を依頼しても、ペンと用紙を持ちながら音声による説明を続ける人が多い。区として職員にどのような研修や啓発をしているのか教えてほしい。 【対応経過】 所管課は、今回新たに「筆談できます」の表示を期日前投票所に掲示したが、用紙を備え置くことを周知していなかったことが原因だった事を確認した。 所管課は相談者に、次回以降、従事職員への周知、徹底に努める旨を、回答した。また、区における研修や啓発の状況について説明した。 【考察】 投票事務などでは、職員は多くの人に対応するが、利用者にはその時一回の対応である。様々な職員が担当する場面では、必要物品の場所や対応の確認が欠かせない。 203 転居に伴うITプロバイダーの対応について(当事者より)  合理的配慮 【相談内容】 区内で転居した。電話の住所変更は、加入先の会社から求められて本人が電話に出たことで本人確認が出来た。インターネット回線の(ADSL)登録の変更手続きと、インターネットの接続方法を「サポートデスク」に相談したところ、『個人情報を含む内容のため、手話通訳者を介した電話では応じられない。契約者本人あるいは二親等以内の親族(成年後見人を含む)の確認が必要。』と言われた。 相談者は、通院の予約、手話通訳の派遣依頼手続き、転居後の自宅に関する管理会社との連絡など、日常的にインターネットを利用しているため、すぐに使えないと生活に支障が出るので困っている。 【対応経過】 調査員からプロバイダーに、障害者差別解消法では「手話は言語である」とされていること、今後の対応を改善して欲しいと要望していること、対応に1ヶ月以上の時間を要したことを伝えた。 プロバイダーからは、加入者本人か二親等以内の親族からの電話申込みが原則で、代理人以外の第三者(手話通訳者を含む)では対応できない」との方針が変えられない、との回答があった。 相談者はやむを得ず、別居の親族を代理人として申請したが、代理人多忙のため手続きが進まなかった。そのため、電話口で自ら大声で怒鳴って用件を伝えたことで相手方に用件が伝わったが、相談者は精神的にショックを受けた。 調査員から上記についてプロバイダーに伝えたところ、「意見として拝聴する、改めて配慮ある対応をするよう上司に伝える」と、回答があった。 【考察】 聴覚障害者にとって、インターネットや携帯電話の普及、FAXの整備は、日常生活を送るうえで欠かせないインフラとなっている。 本件では、「本人確認を手話通訳者の電話で代行できるか」が焦点となっていたが、代行できないのであれば、「音声を発せない人」の代替え手段を講じる必要がある。その必要性が、うまく相手方に伝わらなかった事例であった。 204 民営バスにおける障害者割引のための手帳提示(当事者より)  合理的配慮 【相談内容】 通勤でバスを使用している。割引を受けるため、乗車のたびに手帳を提示するが、一部の運転手が不機嫌な表情をしたり、面倒くさそうに対応するのが嫌で、乗車をためらってしまう。都営地下鉄のように、運転手の切り替え操作を必要としない障害者専用パスがあるといいのだが。 (都営交通では、PASMOなどのICカードに「都営交通無料乗車券」の情報を付加できるので、障害のある方は改札での手続きをすることなく利用が可能になっている。) 【対応経過】 調査員は、バス事業者に連絡し、相談者の意見、要望を伝えるとともに、都営交通における状況について情報提供した。 事業者からは、「都営交通のICカードの仕組みについては知らなかった。運転者の態度については、これまでも同様の苦情をいただいたことがある。全事業所に伝えて改善を図るとともに、(本事案の)路線や時間帯が特定できればより具体的に指導を行う。」とのことだった。 上記の内容を相談者に伝え、あわせて、バス会社の連絡先を案内した。 【考察】 民営バスやタクシーで障害者割引を受けるためには、乗車のたびに手帳を提示し、運転手が切り替え操作をすることは「当然」と思われている。 しかしそこには、利用側の「ためらい」や提供側の「ひと手間」があり、一種のバリアとなっている。 すぐには実現しないが、ICカード化はそのバリアを解消できる、実現可能な応報となる。「当然」を見直していく視点が大事だと感じた。 205 大学の講義(スクーリング)での情報保障(ノートテイク)(当事者より) 合理的配慮 【相談内容】 他県在住で、世田谷区内の大学で通信教育を受講している。スクーリングを受けるにあたり、ノートテイカー(講義の内容を聞いてノートをとる人)が必要。これまでは民間団体や、居住市の制度を一部利用し、不足分を自費で確保してきたが、負担が大きい。 本来は大学側で用意すべきと考え、大学と交渉したが応じてもらえず困っている。 【対応経過】 調査員が大学を訪問し、相談者の要望や、ノートテイカーを派遣した場合の国の補助制度などについて説明した。大学側は「学校としては、相談者が自分で手配したノートテイカーに資料を提供し、同席を認めている、それ以上は過剰な負担にあたる」として、相談者の要望には応じなかった。 相談者に上記を説明した。また区ではこれ以上の対応は難しいため、指導権限がある官庁(文部科学省)への相談を案内した。相談者が同省への相談を希望したため、同省の相談窓口に情報提供のうえ、相談者に伝えた。 【考察】 相談者は他県在住だが、相手方が区内事業所なので、当区で対応した。 学内でボランティアを養成している大学もあり、その例を紹介した。現状で出来る事を、学生と一緒に考えていって欲しいと思った事例である。 212 演劇祭での聴覚障害者への配慮(当事者より)    合理的配慮の提供    【相談内容】 聴覚に障害のある人が演劇祭での鑑賞サポートを要望したところ、所管課より「できな い」との回答があった。合理的配慮の提供を求めたが、その根拠の説明もなく他の劇場 では可能なサービスの提供を受けられないことについて、再度検討を求める。 【対応経過】 所管課は聴覚障害者のための観劇サポートの希望があった際に、会場である劇場と相談した結果、舞台を見ながら読める字幕を表示することはできないということで、そのように回答した。 所管課および劇場に、障害者に対する「合理的配慮の提供義務」についての認識がなく、劇場側の都合のみを理由とした断りの返事をしたと思われる。専門調査員からは、早急に劇場と調整しつつどのようなサポートが提供できるか当事者との「建設的対話」を重ねて、再度検討することを勧めた。調整の結果、文化庁の「鑑賞サポート相談窓口」に相談し、台本内容を反映したタブレットを貸し出すこととなり、その旨相談者に回答することとなった。 【考察】 障害者からの「合理的配慮の提供」の要望(意思表示)があった場合に、事業者は過剰な負担がない限り応える義務がある。過剰な負担については、障害当事者と事業者の間には、認識判断の乖離は往々にしてあるため、誠実な対応が必要となる。「建設的対話」を尽くして、双方の合意を得るプロセスが重要となる。障害は様々でありその「解」も柔軟に考えて導き出すことが必要となる。 215 無人改札での聴覚障害者への配慮(当事者より)          合理的配慮 【相談内容】 鉄道の無人改札駅にカメラ付きインターホンが設置されていない。  鉄道従事者の聴覚障害者への配慮が不十分である。 【対応経過】 聴覚障害者が無人改札口で駅員へ連絡しようとしたところ、音声によるインターホンしか設置されておらず対応に時間がかかった。相談者はカメラ付きインターホンの設置を要望したい。 事業者へは要望を伝えた。当面の対応として、インターホンが押され、反応がなければ上部カメラを確認のうえ、筆談ボードを持って改札に向かうといった基本を改めて周知する旨回答があった。 【考察】 相談者の要望により区内の無人改札について調査したところ、カメラ付きインターホンを設置している私鉄がある。 交通機関全体として、職員の障害理解の不足による問題も依然として見受け られる。 216 選挙の投票会場における聴覚障害者への配慮について     合理的配慮の提供 【相談内容】 投票所の名簿対照係で投票券と本人確認した際、担当者がPCから目を上げずに声で確認しようとした。聴覚障害のある相談者は、「聴こえない」ということを伝えるために机を「コンコン」と叩いて注意喚起せざるを得なかった。双方ともにあまり気分がよくないので、カードを示す等さりげなく伝えることができるように対処を検討してほしい。 【対応経過】 選挙管理委員会事務局内で、改善にむけての検討が始まっていることを確認した。 【考察】 当事者からの「区民の声」による気づきに、所管課が前向きに取り組んでいる。 区民の声による提言の好事例である。 217 賃貸住宅にかかる対応(当事者より)       不当な差別 【相談内容】 区内在住の聴覚障害者が、区内賃貸物件の申し込みを仲介業者経由で行おうとしたが、管理会社から聴覚障害があるため内見を断られた。申し込みを受付しないのは障害者差別に該当するので、今後のために事業者に指導してほしい。 【対応経過】 管理会社の担当者からの回答は、「受付を断った事実はない、今後は通常通りの審査になる」という内容であった。仲介業者からは、本人から受付ができないか再度確認して欲しいと申し出があったので、管理会社に連絡して内見ができた。契約の可否は管理会社の審査待ちの状況である。 本人に再確認すると、内見はできたが審査が通過しても障害があるため大家がNGかもしれないと管理会社は話していた。契約は難しいと判断し、当該物件は自分から断った。別の仲介業者を通じて、新たな別件を探す意向である。 【考察】 聴覚障害者であることを理由として、賃貸住宅の申込を不動産管理会社が一律に断るのは、明らかな障害者差別である。本事例では一度は断ったが、再度の申し入れで申し込みを受け付けたようである。 賃貸事業を営む賃貸人に対しても管理会社から、障害者への不当な差別の禁止と合理的配慮について情報提供し理解を求めておくことが望まれる。 10ページ 肢体不自由 301 ホールの舞台に車いすで登壇したい(施設担当者より)  合理的配慮 【相談内容】 区民ホールの利用者団体から、「主催者挨拶のために、車いすで舞台に登壇したい。スロープの設置ができないか?」と相談された。舞台を床面まで下げることが可能だが、通常の舞台の高さでの登壇には、階段しかない。どのように対応すればよいか? 【経過】 調査員は、他事業の事例や、他施設における車いす利用者の舞台への移動方法などを情報提供した。担当課は、利用者団体と相談・調整を重ねた。当日は団体が所有するスロープを持参して設置し、職員は舞台への登壇を一部手伝った。 【考察】 舞台を床面まで下げることも提案したが、利用団体は通常の舞台の高さで使用を希望していた。その希望を踏まえて、双方の建設的対話によって解決に至った事例である。 302 区役所内の段差のためレストラン・トイレが利用できない (区民の声) 合理的配慮+環境整備 【相談内容】 シルバーカー(手押しの歩行器)を利用しているが、区民会館のレストランへの段差を降りることができなかった。また、地下食堂はセルフ方式で、手助けを頼むことができず、トイレはフロアの途中にあるために利用できずに困った。 【対応経過】 調査員は担当課と対応を協議し、車いすの方に加えて杖歩行などの方にとっても援助が受けやすいよう、次のように改めた 区民会館レストランへの段差に設置されている階段昇降機の案内表示は、車いすの方向けとなっていたため、必要な方は誰でも利用できるような表示に改める。 食堂入口には「手助けや配慮が必要な方はお声かけください」との案内表示をわかりやすく掲示する。 調査員は、階段昇降機を設置している他の区施設にも、利用状況や職員の対応について、確認・検討を依頼した。 【考察】 従来の第1庁舎、区民会館には、現在の視点から見ると、様々な物理的なバリアーがあった。本件はその一例である。 「忙しそう」「迷惑をかける」などの理由で「手助けを頼む」ことをためらう当事者は多い。「言われればやる」ではなく、「表示などを工夫して頼みやすくすること」「頼まれたら笑顔で応じること」「困った様子があればこちらから声を掛けること」が、合理的配慮の基本である。 303 車いす利用者の講習会参加について(当事者より)  合理的配慮 【相談内容】 地域の祭りで開催される「俳句講習会」の参加を申し込んだ。(会場は公園内の茶室)だった。車いすでの参加希望を告げると、担当者より「茶室の土間から和室に上がるために可能であれば介助者を同行してほしい」と言われた。 【対応経過】 相談者が担当課に、俳句講師の意向の確認を求めた。 講師より「自分達も手伝うので、是非参加してほしい」とのコメントがあった。 当日は担当課職員と講習会スタッフの介助で、土間で車いすを降りて和室に上がり、他の参加者と一緒に講習を受けた。 【考察】 人により、場所により、介助の方法も必要性も異なる。 一律に介助者同行求めず、当事者に聞きながら、主催者側でどこまで対応できるかを相談していくことが重要である。 304 車椅子利用者の講演会参加について(区職員より) 合理的配慮 【相談内容】 地下フロアーで実施する「健康教室」に、電動車いす利用者から参加申し込みがあった。施設にエレベーターは無く、地下には車いす対応トイレはない。また、地下への階段が直線でなく、介助で安全に降ろせるかどうか、不安がある。どのように対応すれば良いか? 【対応経過】 調査員は、当事者から車いすの種類を聞き、施設の現状を伝え、方法等について当事者と相談していくようにとアドバイスした。 相談者は当事者に現場確認のための事前来所を依頼したが、来所は困難だった。そこで階段の写真を送付して、当事者としての判断を依頼したが、当事者は自分が判断することに困惑していた。 相談者は、「申し込みを受け入れたい。介助のための人員は確保するが、安全に降ろせるかどうかに不安がある」とのことだった。調査員からは、まず「出来る限り配慮したい」ことを当事者に伝え、方法を話し合うことを勧めた。 相談者は当事者宅を訪問し、「受け入れたい」ことを伝えて話し合った。電動車いすのままの階段昇降介助は危険だが、普通型車いすなら可能と判断し、「普通型車いすに移乗して、介助で階段を下りる」方法を提案し、同意を得た。 【考察】 この事例では、「出来る限りの配慮をしたい」ことを相手に伝えて「どうすれば出来るか」を話し合って解決した。国はこのような解決プロセスを「建設的対話」と言い、合理的配慮提供のためのキーワードとしている。 305 投票所の段差への対応について (当事者より)    合理的配慮 【相談内容】 杖歩行で投票所に行った。入口には手すりのあるスロープがあったが、出口には無かった。今後も選挙はあるので、出口にもスロープを付けてほしい。 【対応経過】 調査員は担当課に連絡し、「当該投票所の出口側はスロープや手すりの設置が物理的に不可能なため、必要な方には職員が介助し、段差のない入口からの退出を案内している。この取り扱いは、同様の事情がある他の投票所でも同じである」ことを確認した。調査員は上記を相談者に説明し、了解を得た。 【考察】 要望どおりの対応が困難なため、その事情(本件では物理的な制約)を説明し、出来る対応(その都度の職員による介助)を提示して納得を得た。このプロセスが差別解消相談の基本である。 なお投票所では、紙を押さえる文鎮やイラスト入りのわかりやすい表示物、意思疎通を補助する「コミュニケーションボードなども設置し、誰もが投票しやすい環境整備に努めている。 306 駐輪場の自転車の出し入れ(当事者より)  合理的配慮+環境整備 【相談内容】 上肢に障害があるため、駐輪場の駐輪ラックへの出し入れがつらい。駐輪場の管理人が手伝ってくれるが、毎回お願いするのも気が引ける。ラックに出し入れしないで済む「専用駐輪スペース」が欲しい。 【対応経過】 管理人が「自転車にヘルプマークを付けたらどうか」と本人に勧めたことから、当課にヘルプマークの問合せがあり、上記相談となった。 調査員は担当課に連絡し、高齢者や大型自転車のため、全体の20%を平置きスペースに改修中であることを確認した。改修後はそのスペースが使えること、当面は管理人に声をかけて手伝いを依頼してほしいと本人に伝え、了解を得た。 【考察】 駐輪ラックへの出し入れが困難な人に対して、その都度手伝うのは「合理的配慮」であり、全体の20%を平置きスペースに改修するのは「環境整備」にあたる。長期的なコストは軽減されるが、限られたスペース内でのラックと平置きの配分に工夫を要する。本件では、相談者より管理人の対応に感謝のコメントがあった。 307 大型自転車の駐輪について(家族より)  合理的配慮 【相談内容】 当事者は、下肢に障害のある高校生。足の機能を守るために歩行を控えるようにと言われ、大型自転車(三輪車)を購入した。しかし、駅近くの駐輪場は満車で、遠くの駐輪場では、駅までの歩行距離が長く、このままでは、駅近くの路上に放置するしかない。何とか駐輪場所を提供して欲しい。 【対応経過】   所管課は、駅周辺の駐輪場の状況を調査した。 大型自転車用スペースがある駐輪場は全て満車だったが、比較的駅に近い駐輪場の原動機付き自転車スペースに空きがあり、その場所なら提供できることを連絡した。 相談者の希望する駐輪場ではなかったが、駅まで歩行可能な場所だったので、当該場所を利用契約することとなった。 【考察】 相談者の要望どおりではなかったが、担当課が相談者の個別事情を受け止め、個別的で柔軟な代替案を提示したことで、相談者の了解を得られた。 合理的配慮の申し出は、100%叶えられるとは限らない。対話しながら、過重な負担にならない範囲で現実的な代替案を考えていく過程が重要である。 308 区民施設駐車場の案内について(家族より)  合理的配慮 【相談内容】 家族が車いすを使っている。初めて利用する区民施設について、駐車場の状況をホームページで調べたが、駐車台数が不明だった。電話で施設に問い合わせたところ、職員から「ホームページの通りです」などと、畳みかけるような口調で説明された。また、道路境のポールを撤去しないと駐車できない構造になっていた。 ホームページの記載内容、施設職員の対応、駐車場のポールの撤去や入口の段差等について改善してほしい。 【対応経過】 当該駐車場は本来駐輪場で、空いている場合に車椅子利用者が駐車できるよう配慮しているものであり、利用できないこともある。そのため事前連絡をお願いしている。担当課は相談者に上記を説明し、ホームページの表記をわかりやすく改めることとともに、障害者への配慮について職員の指導を徹底し、駐車場ポール解除への対応や段差の介助について、事前連絡により職員が対応するよう改善する旨を回答した。 【考察】 当該施設にはもともと駐車場がなかったが、障害者について「駐輪場が空いているときに限り」駐車場を確保していた。しかしホームページからは分かりにくく、今回の要望となった。 職員が分かっていることを、区民に分かりやすく説明するには、相手の立場に立った配慮が必要であることを改めて感じた。また、障害のある区民を含めた利用しやすい施設環境の整備が必要である。 309 まち歩きイベントにおける合理的配慮とは(区職員より)  合理的配慮 【相談内容】 「まち歩きイベント」の開催を予定した。通常公開されていないお寺の二階客間に入れることが、企画の目玉になっている。しかしお寺の敷地は砂利敷きで段差が多く、二階客間への階段も狭い。また職員の人数も限られている。 そこで、車いすを利用する方の場合は、同伴者と参加いただくように依頼してもいいだろうか?また、車いす利用者にはどのように接すればよいか? 【対応経過】 調査員より、「この企画自体が障害者を差別していることにはならないが、一律に障害がある方の参加を断るのではなく、主催者の負担になりすぎない範囲で合理的配慮の提供をお願いしたい」ことを伝えた。 配慮の例としては、「移動を補助する職員数を増やす」「車いすのまま見学できる『短縮コース』を設ける」「募集時に『配慮が必要な場合は申し出てほしい』と表示する」などをあげ、対応できない内容については十分説明を行うことが必要であると説明した。 【考察】 事業企画の段階での、障害者対応の懸念についての事前相談である。 事前に対応のポイントを整理しておくことで、個別対応の不安が軽減される。障害施策推進課では事業実施前の相談も受けているので、活用してほしい。 310 「新成人のつどい」への出席(本人・家族 (2組)「区民の声」) 合理的配慮 【相談内容】 身体障害と知的障害があり、車いすを利用している。世田谷区の「成人のつどい」に出席したが、「車いすの介助など、とてもよく対応してくれた」「一般の新成人と同じ場で祝うことができて、とても嬉しかった」「区長と一緒に写真が撮れて嬉しかった。」などの感想が寄せられた。 家族の一人から、「出席しても大丈夫か不安だったので、開催の前日に担当課に問い合わせたところ、「ぜひいらしてください」と言ってもらえた。参加することができ、暖かく迎えられたので嬉しかった。」とも話があった。 【考察】 「配慮が得られずに、大変な思いをしたくない」「配慮を申し出て、迷惑をかけたくない」という思いを、当事者・家族は持つことが多い。 本件での、前日問い合わせに対する担当課の対応は、家族の不安を解消して、背中を押すこととなった。 こうした事例の積み重ねが「地域共生社会の実現」につながっていく、ということを実感した。 311 電動車いすの入店介助の拒否(当事者より)   不当な差別的取扱い 【相談内容】 電動車いす利用者。入口に段差のあるレストラン(民間)で、ある日は介助を拒否され、また別の日には入店時に介助をしてもらえた。いつも同じように介助してほしい。 【対応経過】 調査員は本社に行き、経営者と面会した。障害者差別解消の趣旨を説明し、今後の対応や従業員への周知を依頼した。またUD(ユニバーサルデザイン)のパンフレット「みんなが嬉しくなるお店」を渡した。経営者からは、「法の趣旨は理解できるが、従業員が店長以外はアルバイトであり、研修の機会もない等の事情もあり、常に入店介助を行うことは難しい」との返答があった。 後日、某TV番組で、そのレストランが車いす利用者の入店介助の配慮をしているとの報道があったことが確認できた。 【考察】 差別解消の働きかけは、その場での効果はない場合も、後に相手方の対応に変化が起きることもある。地道な働きかけが大事であることを感じた事例である。 312 電動車いすでの入店を拒否された(当事者より)  不当な差別的取扱い 【相談内容】 介助者とともに昼食をとろうと、飲食店で『電動車いすだが入れないか。』と聞いたところ、「前例がないので」と断られた。この店の対応は障害者差別ではないか。 【対応経過】 調査員がその店を訪問し事情を確認した。店主からは「電動車いすの対応が初めてであり、入口の段差や間口やトイレも狭いため利用が困難と考えた。」との説明があった。調査員から障害者差別解消法の趣旨や目的を説明のうえ、入口や間口は電動車いすの出入りに支障がない幅であること、トイレは同伴の介助者が行うので心配ないと説明した。店主からは、「今後は前向きに対応する。」との話があった。 【考察】 店主と話す中で、店側の不安の内容が明らかになっていった。その一つ一つを具体的に解きほぐしていくことで、最後には今後の協力を得られることとなった。 障害者差別の解消のためには、なお一層の周知・啓発が必要であり、一つひとつの事例を通して、当事者と相手方双方の不安を解消していくことが必要であると感じた。 313 飲食店の固定された椅子とテーブル等について (当事者より)  環境整備 【相談内容】 近くの商店街に中華料理店が開店した。道路から入口へのスロープがあり、店内も広そうなので入店したところ、椅子(背もたれのない丸椅子)とテーブルが床に固定されていて、車いすでテーブルにつくことが出来ない。様子を見た店員が車いすから店の椅子に移る介助を申出てくれたが、相談者は丸椅子では安定して座ることが難しく、断って店を出た。一部の椅子を動かせるようにして、車いすで入店出来るようにして欲しい。 【対応経過】 調査員は店長に連絡して、事実を確認し相談者の要望を伝えた。 店長からは、要望の趣旨はわかったので、本店上司に伝えるとの回答だった。本店の連絡先を尋ねたが、「わからない」とのことで、確認できなかった。 【考察】 椅子とテーブルが床に固定されている飲食店を利用するには、「椅子に自分で座れて体を支えられる」ことが条件となる。 相談者の要望である「入口近くの椅子を可動式にする」は「事前的環境整備」にあたり、経費負担もあまりかからず、一度整備すれば車椅子利用者のバリアーそのものが無くなる。整備にむけて検討して欲しいと思った例であった。 314 スーパーマーケットのセミセルフレジについて(当事者より)合理的配慮 【相談内容】 最寄りのスーパーマーケットにセミセルフレジ(支払いのみ客が自ら行うもの)が導入された。車いす利用のため、レジの画面に手が届かず、自分では支払いが出来なかった。その際、レジ担当者が大声でサポート店員を呼び、店員が来るまでレジが滞り、恥ずかしい思いをして、今後の利用をためらってしまった。「導入は時間短縮のためと聞いているが、車いす利用者等にとっては新たなバリアとなっていることや、従来のレジを残すなどの要望を店に伝えたい。 【対応経過】 調査員はスーパーマーケット本社に連絡し、相談者の意見を伝えた。本社の担当者からは「従来のレジを残すことは難しいが、対応について改善したい」との回答があった。 調査員は当該店舗を訪問し、店長に対応の確認をした。店長からは「サポートが必要な客の店舗内での見守りや、レジサポートが迅速な対応をするよう改善したい」との話があった。相談者に伝え、了解を得た。 【考察】 技術の進歩により身の回りの様々な場面で「便利な仕組み」が次々と導入されているが、障害者にとっての新たなバリアとなる場合がある。 導入に当たっては、障害者の利用を想定する必要がある。 315 スーパーマーケットにおけるシニアカーの利用(店舗従業員より)合理的配慮 【相談内容】 いつもは介助者が付き添っている来店者が、一人でシニアカーに乗ったまま入店して買い物をした。他の来店者から「シニアカーに乗ったまま入店するのは違法なのではないか」との声が寄せられたが、どう考えたらよいか? 【対応経過】 調査員は障害者差別解消法の趣旨を説明し、狭い通路や他の人とすれ違う際に近くで見守る、高い場所にある商品を取って渡すなどの合理的配慮を提供してほしいとお願いした。 多忙期や人手不足等で対応できない場合は、当事者や他のお客様に事情をよく説明し、理解を得ていただくよう助言した。 【考察】 相談内容からは、シニアカー利用者が障害者に該当するかどうかの確認は難しかった。歩行が困難で、移動に関する社会的障壁があると判断されることから、障害者差別解消法に則して案内し、対応を依頼した。なお道路交通法において、シニアカーは車両ではなく、歩行者扱い(車いすと同様)とされている。 316 福祉タクシー券の利用拒否について(当事者より)   合理的配慮の提供 【相談内容】 肢体不自由で杖を使用しており、話し方がやや不明瞭。駅から自宅までタクシーを利用した。乗車後、運転手に「身体障害者手帳を持っている」と告げると、舌打ちをされ、降車時には「福祉タクシー券」の利用を拒否された。怖くなり、全額現金で支払ったが、納得できない。 【対応経過】 車体の色等から、所属するタクシー組合を特定できたため、調査員は当該組合に連絡して状況を説明し、相談者の気持ちを伝えた。組合の担当者は、「大変申し訳なかった。運転手が特定できれば直接指導する」とのことだったが、相談者は「また出会うかもしれないので、そこまでは希望しない」とのことだった。 組合の担当者は、組合に加入しているタクシー運転手に、改めて丁寧な対応を呼びかけることを約束した。 【考察】 相手方への連絡や、その時の担当者への連絡を希望しない場合も、一定数ある。希望しない理由は「誰かに迷惑がかかる」「また会うかもしれないので…」ということが多い。そのような場合には、じっくりと話しを聞き、辛かった気持ちに共感していくことに努めている。 317 タクシー料金の支払いについて(当事者より)   合理的配慮 【相談内容】 車いすを利用する女性が、通院のため家族とタクシーを利用した。到着後、本人が料金を支払い、つり銭を受け取るために後部座席で待ち、家族は先に降りて、車いすをセットしていた。しかし運転手はわざわざタクシーから降りて、釣銭を家族に渡した。女性は、支払った本人に渡すべきではないかとの思いや、自分がないがしろにされたと悲しい気持ちになった。(相談者は、事業者に対しては匿名を希望) 【対応経過】 調査員はタクシー会社に連絡し、相談者の気持ちを伝えた。 会社の担当者は、相談者に申し訳ない対応だったと認め、事業者内での共有と、当該運転手への指導を約束した。 相談者に事業者への連絡状況・内容を伝え、了解を得た。 【考察】 上記のような、当事者の意に沿わない「配慮」が、当事者にとっては「差別」と感じられた事例が寄せられている。代表的なものが、「本人ではなく介助者と話す」「やり方を本人に聞かないで一方的に誘導する」などがある。 「合理的配慮」の基本は、「忖度」とは異なり、「本人中心」「まず本人に聞く」ことで、障害の内容は様々で、必要な配慮も個別的となる。配慮が必要と思われる方と接するときは、介助者が同行していても「何かお手伝いしますか?」「どのようにお手伝いしますか?」と、まず当事者に聞きましょう。 318 降車駅名を伝えたのに駅員が配置されなかった(当事者より)  合理的配慮 【相談内容】 電動車いすを利用。降車駅名を駅員に伝えてから乗車したのに、降車駅に介助する駅員が配置されなかった、ということが2回続いた。 1件目は降車希望駅の隣駅に、駅員配置の連絡が入っていた。相談者は希望駅で下車できず、隣駅で下車して一駅戻った。 2件目は、降車駅が終点駅だった。他の乗客が降りた後も下車できずにいる相談者に他の駅員が気づき、スロープを持って来て、ようやく下車することが出来た。 【対応経過】 調査員は、1件目の乗車駅を管轄する駅と2件目の降車駅を訪問し、経緯を調査した。1件目は、相談者と駅員とのコミュニケーションの行き違い、2件目では駅員の手配ミスであることがわかった。 障害者の乗降介助については、電鉄会社のマニュアルや受付票などを整備し、手順に沿った対応が日々行われているが、その中で起きたヒューマンエラーであった。両駅とも、相談者に謝罪するとともに、今後同様なミスを起こさないよう手順の再確認や再検討を行った。 【考察】 エレベーター設置や乗降介助の充実などにより、障害者の鉄道利用は以前と比較して便利になっている。しかし、降車駅への連絡や乗降介助員の手配のために、乗車まで一定程度の待機時間が必要である。 本件では、降車駅への連絡上の手違いが原因であった。障害者が安心して鉄道を利用できるよう、より確実なサービス提供を目指していってほしい。 319 混雑を理由に乗車を拒否された(当事者より)     不当な差別的取扱い 【相談内容】 相談者は、杖や車いすで日常的に電車を利用している。医療機関予約日と、沿線で開催されるイベントが重なり、かなりの混雑が予想される。駅職員に「その日は車いすで大丈夫か。」と聞いたところ、「混雑するため、杖や車いすでは電車に乗れない」と言われた。 【対応経過】 調査員が管轄の駅を訪問し、対応状況の確認したところ、駅職員の発言の有無は確認できなかった。 「障害者への配慮として、車内には車いすスペースが確保されており、混雑時には他の乗客の協力も求めるなど、柔軟に対応している。混雑を理由に断ることは一切ない。」との回答を得た。 相談者には「引き続き、障害者への配慮ある対応を心がけていくので安心して乗車してほしい。」と駅のコメントを伝え、了解を得た。 【考察】 駅には、多くの人が様々な事情で利用するが、混雑することが分かっていても、外出が必要な事情のある人もいることを理解のうえ、柔軟で配慮ある対応をしてほしいと感じた。 本件は、車いすや杖利用者に限らず、内部疾患や妊婦などについても言える内容である。ヘルプマークの普及と合わせて、一般利用者への啓発が重要である。 320 ストレッチャー型電動車いす利用者の新幹線乗車(当事者より)     不当な差別的取扱い 【相談内容】 新幹線の個室を電話予約した際に、『一定の大きさを超える車いすでは乗車できない。身体を固定するベルトを利用してほしい。』と言われた。障害のない人と同じように乗車できるよう改善してほしい。また、職員によって異なる対応とならないように、障害者差別解消法を理解して、適切な対応をしてほしい。 【対応経過】 調査員は鉄道会社に連絡し、以下を確認した。 安全のため規定を超えた車いすを新幹線に乗せることはできない。ベルト着用は安全のために必要であるため、個別に判断したい。 障害者差別解消法については、社員や乗務員を対象にマニュアルを作成して配布している。要望に応えられない場合は、その理由を説明するよう教育している。 相談者に上記を説明した。 【考察】 鉄道会社は、長さ120cm以上の手荷物は持ち込めないとの規定があり、今回の対応となった。 相談者はストレッチャー型車いすを使用しているが、元気な青年である。体形や体格は人様々。車いすが規定を超える大きさであっても、安心して利用できるよう、物理的環境に改善が望まれる。 321 車いす利用者への銀行の対応(当事者より)    合理的配慮 【相談内容】 相談者は日常的に車いすを利用し、手にも障害がある。家族とともにいつも利用する銀行に立ち寄った。いつも窓口で手続きしていたが、その日は職員からATMの行列に誘導され、困惑した。一人ではATM操作できず、介助者の操作を前提とされ、一人前扱いされていないと感じた。以下を要望したい。 本人の意向(「窓口で手続きしたい」を聞いてから案内してほしい。 車いすでも書きやすいような高さにしてほしい。 手が不自由なため、書くのに手間取っていると、「もうここは書かなくてもよい」と取り上げられたり、金種を聞かれたりという「余計なおせっかい」を受けた。自分で記入しようとしていた客にたいして、基本的な配慮がないと感じた利用者のできること、困りごとを理解し、「過不足のない」適切な配慮をしてほしい。 【対応経過】 調査員は相手方に事実確認を依頼し、次の回答があった 当日は年金支給日で店内は大変混雑していたが、お客様の希望をよく伺って案内すればよかった。記載台は、車いすで利用する場合、椅子をどかすよう周知徹底する。記載台は高低の2種の他に簡易応接台があるが、柱の陰で使いづらかったかもしれない。 今後は、お客様のご希望に沿うよう案内の仕方を工夫して、いっそう丁寧に対応する。 相談者に上記を伝え、了解を得た。 【考察】 障害者の困りごとは、当事者は直接、相手に言いにくく、相手も気づかないことが時々ある。相手に正しく伝わらないと「余計なおせっかい」になったり、ときには迷惑にもなり得る。 困りごとに「過不足なく」対応するためには、相手の気持ちを推し量る想像力と当事者の人権への配慮が必要で、それは「何かお手伝いすることがありますか」などの一言から始まる。 本件では、事業所より「相談者からの申し出に対して、どのように対応すれば良いのか困っていたところ、区からの連絡で具体的にわかって助かりました」との謝意があった。 322 駐車場の場所について(当事者より)    合理的配慮 【相談内容】 外出時に車いすを使用し、妻が自家用車で送迎している。現在の駐車場所は段差を避けるために裏側出入口のスロープを利用して駐車場所までマンションを半周しなければならない。周辺道路は交通量も多く、介助する妻の負担が増えている。「スロープ近くの駐車場所を利用したい」とマンション管理組合に相談したが、現在その場所に駐車している人の同意が得られない。区からも働きかけてほしい。 【対応経過】 調査員は、自宅を訪問して現場を確認した。 マンション管理組合に連絡。駐車場は管理組合が管理している。理事会の開催はかなり先で、理事長は同マンションには居住していない。実際には管理組合が駐車場利用について調整していることが分かった。 マンション管理会社担当者に会って経過を確認した。以前より相談者の要望を受けて、調整しているが、同意を得られなかったとのことだった。検討の継続を要望した。 担当者は、相談者と連絡をとり、代替案などの提示・検討を行うことを約束したが、相談者の病状が悪化し、妻も体調を崩して、二人とも入院となった。 【考察】 本件の相手方はマンション管理組合だが、理事長と連絡がとれず、管理会社を通じての交渉となった。 管理組合は民間事業所のため、合理的配慮の提供は努力義務となっている。指導の権限を持たない区がどこまで関与できるのか、考えさせられた。 363 フィットネスクラブの対応(当事者より)          合理的配慮 【相談内容】 相談者がフィットネスクラブのレッスン中に転倒し、レッスンが中断した。その後、職員から「ほかのメンバーに迷惑をかけた。」「今後このようなことがあったら辞めてもらう」と発言があった。 店長は「みんなが心配している」「次にこんなことがあったらあなたも困るでしょう」とあいまいに圧力をかけてくる。 相談者は、障害を理由にプログラムへの参加をしないようにと言っていると感じている。しかし、長年参加しているので、これからも参加したい。 【対応経過】 事業所の店長から事情を聴取した。相談者は、このエアロビクスのプログラム(有料)に10年以上参加している。会場にいるだけで参加しているとは言えない。転倒した日は、普段はやらない転回するステップを踏み転倒した。 相談者と話したが、辞めろといったことはない。ただ、無理をすることは本人にもほかの利用者にもよくないという認識はあるので、それは伝えた。 当職からは、プログラムへの参加について危険であり断るのならば、きちんと理由を相談者と話し合うべきであり、暗に辞めるように誘導することは、差別の可能性がある。 長年容認している以上、今回の転倒を理由に断ることは無理があるし、相談者は到底納得しない。当事者の参加意欲を受け止め、教室のインストラクターを含めて相談者が参加できる新たなルールについて話し合うことを勧めた。 【考察】 どのような危険があるか、漠然とではなく具体的に伝えることが必要である。そのうえで、危険を避けるための方法について相談者と話し合い、参加の可能性をお互いに前向きに対話していく必要がある。 367 学童クラブのルール変更(保護者)           合理的配慮 【相談内容】 子どもは支援学級のあるA小学校に通学してその学童クラブを利用し、送迎車両で帰宅 しているが、夏休み期間中はその送迎車両が利用できないことを知った。 このため、夏休み期間のみ自力で通える最寄りのB学童クラブを利用したいと担当課に 希望したが、不可との回答であった。 父母は共働きのため送迎は難しく、児童の障害の状況から移動支援により公共交通機関 を利用して通うことも負担が大きい。 【対応経過】 担当課と保護者でどのように解決できるか案を提案し協議した。 担当課:夏休みだけの変更はできないが、通年で同じ学童クラブに在籍するのであれば変更を可能とする。送迎車両事業者との調整は保護者で行ってほしい。 保護者:送迎車両事業者との調整が整い、送迎に関する懸念が解消されたため、学童クラブを変更することにした。 【考察】 合理的配慮の提供にあたり、双方が建設的対話の目的を理解し、提供できることを協議し、問題が解決の方向に向かった。 23ページ 言語障害 401 言語障害者への対応(当事者より 区民の声)      合理的配慮 【相談内容】 言語障害があり、書くことも苦手。区の講座申し込みや、親族が死亡したときの手続き等で区役所に行くと、話をゆっくり聞いてくれず、筆談ボードを渡されたり、紙に書くように言われる。障害を理解して、ゆっくり聞きとる対応をして欲しい。また、「FAXを送る」ように言われるとこもありますが、書けないためにFAXも出来ない。 【対応経過】 「区民祭り」行政相談によせられたもので、匿名のため、具体的な内容は確認出来なかった。 【考察】 相談者の障害は、この文面だけでは確認できないが、失語症の可能性が高いと思われる。多くの失語症者が、このように「話せないけれど、書けば分かるだろう」と思われて、筆談を求められて困惑する経験をしている。 失語症の方とのコミュニケーションでは、「ゆっくり聞く」が基本。発話がぎこちない、言いよどみが多い、言葉や数字の言い間違い聞き間違いが出ることがある。「ゆっくり、確認しながら」聞き、分からなければ何度でも聞き返して欲しい。 内部障害 601 プール入場時の障害者の確認方法について(当事者より)  不当な差別的取扱 【相談内容】 内部障害がある。これまで障害者手帳を見せる事なく、プールを障害者料金で利用してきた。今回受付で大声で注意されて、障害者手帳を提示するように言われた。周囲に不正に割引を受けているように見られて、いやな思いをした。 障害者手帳を確認するのであれば毎回行うべきで、担当する職員によって対応が違ったりする対応も容認できない。今後もプールを利用したいので、このような不愉快な思いをしないよう改善してほしい。 【対応経過】 所管課より指定管理事業者を経由して、施設職員に状況を確認した。見た目だけでは障害者であるこが分からない方がいるということは理解している。 対応には十分注意していたが、入場券の種類を誤って購入する利用者もいるので、周囲に気を配りながら、注意ではなく確認のために声かけをしたとのことだった。 所管課から利用者に、上記を説明し、了解を得た。 所管課から、指定管理事業者に対して、「障害者差別解消法啓発リーフレット」等を活用して施設職員に対する障害者差別解消法や内部障害の方への理解をさらに進める研修を実施するよう指導した。 入場券の券売機付近に「割引料金で入場券をご購入された方は、年齢や障害者手帳を確認させていただく場合がございます。」との内容の貼紙を掲示した。 【考察】 内部障害など、外見上分かりにくい障害は、周囲の理解や配慮を得にくい。 障害者であることの個別の確認は、必要に応じて周囲に十分配慮して行う必要がある。本件で、職員は「周囲に気を配りながら確認のために声掛けした」つもりだったが、相談者には「大声で注意された」と受け取られていた。双方で、このような食い違いが生じることは多い。相手の状況に配慮した丁寧な対応が求められる。 24ページ 知的障害 801 知的障害者への声かけについて(区民より)    合理的配慮 【相談内容】 区立図書館で、知的障害があると思われる30代ぐらいの男性への職員の対応が、大人が子どもを叱るような上から目線で、不適切である。 【対応経過】 調査員は図書館に行き、状況を調査し、以下の事情を確認した。 ・当事者は乗り物の本が好きで、独り言をつぶやくことがある。声が大きくなると他の利用者から苦情がくることもある。 ・図書館スタッフは身振りで静かにするよう伝えたり、一人になれる部屋に案内する等の工夫をしていたが十分なコミュニケーションがとれなかった。 ・当事者の名前も不明で、家族等への連絡もできず。対応に困っていた。 調査員は自閉症の方とのコミュニケーションについてアドバイスした。 調査員が当事者と面談し氏名が分かり、保健福祉課を経由して家族と連絡がついた。 家族は図書館に来館し、当事者とのコミュニケーション方法やトラブル時の対応について図書館スタッフに説明した。 図書館は、対応への困惑と不安が軽減し、保護者のアドバイスを参考にしながら、いままでどおり来館を受け入れている。 【考察】 相談は「差別的言動」だが、「言い方」のみ改めても解決にはならない内容だった。 コミュニケーションの困難な障害者への対応には、困惑や不安が伴う。図書館は調査員と協力しながら当事者と向き合い、良好なコミュニケーションを模索し、家族との対話にこぎつけた。 それにより職員の困惑や不安は軽減され、当事者がパニックを起こすこともなくなり、利用を継続することが出来ている。 なお氏名等の個人情報の取得については、慎重に行った。 802 健康診断における合理的配慮について(区職員より)      合理的配慮 【相談内容】 職員定期健康診断を受診した「チームすまいる」嘱託員(*)から「健診の流れがわからなくて不安だった」「質問されてもどう答えたらよいかわからない」と職員(当事者)に相談があった。 *障害者地域生活課に所属する、知的障害・精神障害・発達障害のある、障害者チャレンジ雇用嘱託員。「チームすまいる」という愛称で庁内から依頼された作業を担当している。 【対応経過】 障害者地域生活課が職員厚生課と調整して、健診実施機関(事業者)に以下の配慮を依頼することとした。 ・当事者は、健診票を一旦持ち帰り、あらかじめ家人見守りのもとで記入し、受診前に健診実施機関に提出する。質問があればあらかじめ連絡をもらう。 ・受診候補日を連絡し、混雑が少ないと思われる時間に健診実施機関の職員より電話連絡をもらい受診する。 ・受診中は、健診実施機関の職員が必要に応じて付き添う。 これらの配慮により、当事者は、翌年度以降安心して健診を受けることができた。 【考察】 職員の健診における合理的配慮の提供は、「障害者雇用促進法」に基づいて行われている。根拠法は異なるが、「合理的配慮が提供された好事例」として掲載した。 803 子ども向け事業への保護者同伴について(家族より)合理的配慮 【相談内容】 区主催の子ども向け講座に応募した。子どもの単独参加が原則だったが、障害のため一人では参加が難しいので、保護者付添いでの参加を希望した。第1回目には受付で付添いを認められて、保護者も一緒に参加した。しかし第2回目は、前回同様受付で付添いを要望したところ、「単独参加が原則」と断られた。その場で事情を説明して付添いを認められたが、冷たい対応に肩身が狭い辛い思いをした。 【対応経過】 調査員は事業担当課に連絡し、調査と対応を依頼した。 担当課は事業実施施設に当日の状況を確認した。相談者は申込み葉書で、保護者同伴の希望を記載していたが、二日目の受付職員にその情報が共有されていなかった。そのため、一般的な対応をしていたことが分かった。 施設では、ミーティング等で本件を共有し、配慮が必要な参加者への対応について周知し、再発防止に努めることとした。担当課から相談者にお詫びと説明を行い、了承を得た。 【考察】 事業所内で情報共有が不十分だったことにより、参加者は辛く悲しい思いを強いられる結果となった。情報共有の重要性をあらためて感じた事例だった。 講座や講演会等では、開始前の短時間に、受付に参加者が集中する。その中で個別の配慮を適切に提供するには、事前にその内容を把握しておく必要がある。 また、事前申出なくその場で配慮を求められた場合は、「原則」を踏まえた上で、「過重な負担」に該当するかどうかを検討し、配慮の提供を判断しなければならない。そのような場合の対応方法などを事業所内で共有することで、多様な利用者がスムーズに参加できるようになる。 26ページ 発達障害 901 交通事故被害児童の受診拒否(民間事業者より)不当な差別的取扱い 【相談内容】 児童送迎中に送迎車が追突された。利用者に外見上の異常はないが、念のため近くの総合病院の整形外科受診を打診したところ、「障害の詳しい情報がないと診断できない」と断られた。(その後、別の病院で受診でき、無事を確認した。) 【対応経過】 調査員が病院を訪問し、経緯と病院の体制等を確認した。 病院からは、「交通事故等の第三者行為では、初診の診断がその後の保険請求等に大きく影響する。正確な診断のためには障害の情報が必要であり、結果としてお断りした。今後はこのような場合にも、状況に応じて各科で連携して極力受診をお受けしていきたい。」との説明を受けた。 その後、病院で職員対象の障害者差別解消研修が行われた。 【考察】 本件は福祉事業所からの申し出であった。 支援の中で感じた差別を、見過ごさずに相談につなげることによって、事業所が研修を実施し、理解が広がった事例である。 902 テスト用紙の拡大コピーについて(家族より)  合理的配慮 【相談内容】 中学校1年生で発達障害(LD傾向)があり、「ことばと聞こえの学級」に通級している。 細かい文字を追うのが苦手。兄(同校3年生)の持ってくるテスト問題や回答を見ると、小学校に比べて文字が細かく、読み取りの困難が推測される。 入学前に母が学校に行った際、養護教諭に「テストの用紙を拡大コピーしてほしい」と相談すると『うちの学校ではやったことがない』との返事だった。通級の教諭は『うちの学校ではやっている。自分からも言ってみる』とのこと。どのように相談していったら良いのか? 【対応経過】 まず学級担任への相談を勧めた。 スクールカウンセラーへの相談などにより、学校内にご本人を理解する人を増やしていくことを勧めた。また、他事例で「ケア会議」開催時に、保健福祉課の発達支援コーディネーターが同席した例もあることを伝えた。 保護者が希望すれば、当課より教育指導課に相談内容を伝えることも可能と伝えた。 その後、母が担任教諭に相談し、様々な配慮を受けていることを確認した。 【考察】 「どのように相談していったら良いのか?」という主訴であった。一番身近な学級担任に相談することで、配慮を受けられるようになった。 最初の相談場所がどこであっても、相談内容に応じた窓口につながるような相談ネットワークが求められている。 27ページ 精神障害 1001 ヘルプマークへの理解を求めたら図書館から退去させられた(当事者より)       不当な差別的取扱い 【相談内容】 地域に開放されている大学の図書館を利用している。職員に「ヘルプマークの普及が遅れているので取組んでほしい」との趣旨を要望したところ、「ヘルプマークを見せて席を空けろと言いたいのだろう」「受付の人を困らせている」と言われた。話し合い中に職員が増えて、威圧的な態度が怖かったので自ら警察に通報したが、結局、図書館を追い出された。このような差別的対応を改善してほしい。 【対応経過】 調査員が大学を訪問し、経緯を確認した。相談者は「ヘルプマークを鞄につけていても理解が得られない。学生の素行が問題だ」等と主張し、図書館利用について話がかみ合わなかった。「そろそろ引き取って下さいませんか」と伝えたところ、相談者が警察に通報し、パトカーが来て周囲の学生も驚くような騒ぎとなった、とのことだった。 また、図書館はサイレント空間(静かに利用することが前提)であり、それを妨げる行為はしないでほしい。相談者は図書館の利用カードの紛失を繰り返しているが、当日利用できるよう配慮している。なお、ヘルプマークの周知には協力できるとの考えだった。 調査員からは職員に、相談者との円滑なコミュニケーションのため、簡潔でわかりやすい説明をしていただくよう依頼した。後日、相談者と面談して相手方の考えを説明し、了解を得た。 【考察】 相談者、そして大学図書館にもそれぞれ事情があり、双方が相手方の事情を理解することが大切であると感じた。 1006 同性職員の担当変更の依頼         合理的配慮の提供 【相談内容】 相談者は過去の経験から異性に強い拒否感を持っているが、必要としているサービスを受けるには面接や自宅訪問が必要である。地区担当者が異性ということを聞いてパニックになってしまった。地区担当者の変更等をお願いしたい。 【対応経過】 担当課に問い合わせたところ、地区担当者を変えるということは応じられないとのことであったので、相談者の精神障害に対する合理的配慮の可能性について検討をお願いした。その結果、自宅への初回訪問は同性職員と地区担当者が同行し、居室内には同性職員が入り調査し、面談は改めて自宅外で行うという提案があり、その提案で本人の了承を得た。 【考察】 障害を理由として「担当者を変えてほしい」という要望にはこたえられないという担当課のルールについては変更できないが、当事者の障害特性についての理解と配慮を行った。業務上のルールは変えず、どのような合理的配慮が可能かについて組織内で相談し、工夫の余地を見いだせた。 また、これからも当事者に伝える際に、障害特性とそれに与える影響を考慮する必要があると思われる。 相談者も気持ちをきちんと伝えて、配慮を受けることができたことは良い経験になったとのことである。