第5 障害特性に応じた対応 障害者と接するときには、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。以下に、いくつかの代表的な障害について、その概要をまとめました。 改定にあたり「障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン」(厚生労働省)東京都心身障害者福祉センターリーフレット「障害理解のために」及び「東京都障害者差別解消ハンドブック」等の掲載事例を参考に、区内障害者団体のご協力をいただきました。 対応事例については、区職員・区の窓口・区の事業で生じたものについて、区の実情にあわせて記載しました。 2、 聴覚障害  生活の中には、多くの音声情報が溢れています。聴覚障害者は、「聞こえない」「聞こえづらい」など、耳からの情報を得にくいために、会話のほか、様々な不便・不自由の中で生活しています。また、外見上は分かりにくいため、誤解されたり、適切な配慮を得られない事があります。   [よくある誤解] 難聴の人は皆、補聴器をつければ会話ができる 聞こえにくい人には声を大きくすれば聞こえる 聴覚障害者は皆、手話ができる 手続きの説明書を一式送ったので、説明はいらない 説明に「分かりました」と言ったので、内容は伝わった 本人のプライバシーにかかわる事は、手話通訳を介さないほうが良い (正解は以下を参照)                                       【コミュニケーションの特徴とポイント】 全く聞こえない方(ろう者)もいれば、聞こえづらい方(難聴者)もおり、「聞こえづらさ」も様々です。また、それぞれの「聞こえ方」やこれまでの生活によって、コミュニケーション手段も様々です。 手話、筆談、読話(相手の口の形から言葉を推測する)のほかスマホ、タブレットなどを、相手や場面に応じて併用したり使い分けています。聴覚障害者は手話ができると思われがちですが、手話を学ぶ機会がなかった人(中途障害など)は手話が使えません。 また、補聴器や人工内耳などを使ったり、様々な用具(音声を光や振動で知らせる 等)やIT機器の活用などによって、情報を得ています。 手話通訳者や介助者を同伴している場合も、通訳者や介助者とではなく、必ず本人と話します。 〔コラム10 聴覚障害の種類 〕 聴覚障害には、「伝音性難聴」(音そのものが聞こえにくい)、「感音性難聴」(言葉や音がゆがんで聞こえ、言葉を聞き分けにくい)、その両方を併せ持つ「混合性難聴」の、3つの種類があります。 伝音性難聴は、大きな声で聞き取りやすくなる場合があります。感音性難聴では、大きな声は「音のゆがみ」が大きくなり、より分かりにくくなります。いずれも環境(静かかどうか)や話し方で、聞こえ方は変わります。老人性難聴は感音性難聴です。 〔コラム11 補聴器〕 補聴器は、基本的に音を大きくする器械です。人の声だけでなく、周囲の雑音も大きく聞こえます。なるべく静かな場所での対応を心がけましょう。 また感音性難聴があると、補聴器で音を大きくしても、会話がきちんと聞き取れるとはかぎりません。補聴器を使用している方にも、話し方の工夫が必要です。 最新の補聴器は、調整の良し悪しで聞こえが左右されます。聞き取りにくいときは、調整しなおすことが有効です。 (1)こんなことに困っています 会話 人から道を聞かれましたが、内容が分からずに困りました。 声を大きくすれば分かるだろうと大声を出されて、かえって聞き取れませんでした。 手話が使えないのに、いきなり手話で話しかけられて困りました。 後ろから声をかけられても気づかず、「無視した」など誤解されることがあります。 街中や交通機関で 電車が止まったとき、車内アナウンスが聞き取れず、困りました。 スーパーマーケットで、タイムセールのアナウンスが分からず、特売品を買えませんでした。 後ろから来た自転車のベルや、車やバイクのクラクションが分からず、危ない思いをしました。 家で ノックやインターホンの声が聞き取れず、宅配便を受け取れませんでした。 (2)こんな配慮が必要です 困っている様子があったら 後ろからの声かけは聞こえない場合があります。正面から顔を見せ、口をはっきり開けて「お困りですか?」「お手伝いしましょうか?」と声をかけます。 マスクはなるべく外します(声がくぐもり、口の形がわかりません。) コミュニケーションでは どのような方法がよいかを、本人にたずねてください。 筆談、読話、手話いずれの場合も、声を出して行います。相手の顔を見て、普通の大きさの声でゆっくり、はっきり口を動かし、文節で区切って話します。(マスクはなるべく外します。)身振り、手ぶりで会話を補うことも有効です。 なるべく騒音のない場所で対応しましょう。会議室などでは、窓を閉め、雑音を防ぎます。テレビなどは消します。(換気に留意しましょう。) 聴覚障害の人は、音だけではなく、口の形や前後の話の内容から推測して聞いています。聞こえなかったことを、無意識に推測で補完していることがあります。「わかった」と言っている場合も、大事なことはメモや文章でわたすなど、きちんと伝わったかどうかを確認しましょう @ 補聴器を使っている人への対応:上記と同様です。 A 筆談 要点をまとめて文章は短く区切ります。専門用語を避け平易な言葉づかいにします。会話調で書く必要はなく、単語レベルで十分です。 質問は、なるべく「ハイ」「イイエ」で答えられる聞き方で。 手順などの説明は、図や写真、現物などの活用が有効です。 (詳しくはP40筆談マニュアル抜粋参照) B 読話への配慮 同音異議語など、同じ口の形や似た口の形の言葉があります。 (例:一時(いちじ)と二時(にじ)は口の形が同じ) 誤解が生じないように、日にちや時間など大事な事は、メモに書くなどで確認しましょう。 C 手話 本人が見やすい位置に、手話通訳者の場所を確保します。 手話通訳通訳者にではなく、必ず本人に向かって話します。 「遠隔手話通訳」の利用を希望する場合は、対応します。 *手話通訳者の待機・遠隔手話通訳⇒P22参照 (3)これだけはチェック! 講演会・研修会・イベント @ 手話通訳や要約筆記配置の検討  補聴器ですべて聞き取ることができるか、手話通訳または要約筆記が必要かなど、参加者に合ったコミュニケーション手段を個別に確認し、可能な範囲で対応します。(P19参照。) A 座席の工夫 スピーカーの種類によって、聞こえ方が変わる場合があります。必要に応じて、席の工夫(話者の前等)を検討しましょう。 B 窓口の筆談ボードの場所を確認しましたか? 〔コラム12 手話〕 1、 手話は言語  手話は、日本語とは異なる文法や手法による言語です。先天的に聴覚障害があるなど、手話を母語とする人たちにとっては、日本語はいわば外国語です。耳から覚えることが難しいため、日本語の語彙や言い回しなどを身に着けるには限界があります。相談の際や連絡などでは、筆談やFAXなどはなるべく分かりやすい、平易な言葉を使いましょう。 2、 手話通訳者  手話通訳資格には、「手話通訳士」(厚生労働大臣認可)、「世田谷区登録手話通訳者」「東京手話通訳派遣センター登録者」などがあります。いずれも、守秘義務が課せられていて、通訳上知りえた秘密を他に漏らすことは禁じられています。 (参考)筆談のポイント 簡易筆談機器で正確に伝えるための方法は 筆談といってもただ書くだけではなく、相手の顔を見ながら簡単な口話や手話または身振りを交えることが大切です。そして、理解したかどうかを確認しながら進めると、より良いコミュニケーションが図れます。 《お客様に書いて伝えるときのポイント》 @ 読みやすい文字で書きましょう。 A 短い文で書きましょう。   長い文は前後の関係などが複雑になり、理解しにくくなります。 B 5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように)など、内容のポイントをはっきり伝えましょう。 C ひらがなだけの文章ではなく、日常使う漢字を用いる方が理解しやすいです。漢字は意味の理解に役立ちます。かな文字が多すぎると、ことばのまとまりがはっきりせず、意味がわかりにくくなります。 D イラストや図などを使い、わかりやすく書きましょう。 ×悪い例  手当のしんせいは15日からはじまりますが、しんせいほうほうについては5日にゆうそうします。 〇良い例  手当申請書類 6月5日に郵送 手当申請受付 7月15日開始 E 二重否定は避けましょう ×悪い例 本人でなければ申請できないというわけではありません。 〇良い例 委任状があれば、代理人でも申請できます。 ×悪い例  知らない人は一人もいない。 〇良い例  皆、知っている。 F 開催日時や会場および地図など聞かれたら、簡易筆談機器ではなく、メモに書いて渡しましょう。  個人情報に配慮して、渡してもよい内容はできるだけメモに書いて渡してください。 《お客様が書いたものを読むときのポイント》 @ 表現に不十分な点があっても、書かれた内容を読み取るように心がけてください。 幼少期から重度の障害者の中には、ことばの習得に支障があり、読み書きが苦手な人がいます。独特の話し方をされる方もいます。しかし、用件を伝えるために筆談をしていますので、ことばづかいの誤りにとらわれないでください。 A 書かれた意味が理解できない場合は、本人に具体的に質問してください。 意味を確認しないままでいると、誤解が生じるもとになります。 好事例(東京都差別解消法ハンドブックより抜粋) 聴覚障害者のAさんは、ある研修会に参加することになりました。事務局から研修担当者には、Aさんは聴覚障害があるので配慮するよう伝えていましたが、研修担当は、Aさんは補聴器をつけていたので問題ないと思い、特段の配慮もなく研修が進められ第1日が終わってしまいました。 Aさんは、補聴器をつけていても、全てが聞き取れる訳ではないことを事務局に相談したところ、次回以降、手話通訳者か要約筆記者(ノートテイク)で対応してくれることになりました。 (参考)盲ろう(視覚と聴覚の重複障害〕 視覚と聴覚の両方に障害がある状態を「盲ろう」と呼んでいます。発症の時期や、経緯も様々です。また、見え方と聞こえ方の組み合わせによって、4つのタイプがあります。 @ 「全盲ろう」(全く見えず聞こえない) A 「弱視ろう」(見えにくく聞こえない) B 「盲難聴」(全く見えず聞こえにくい) C 「弱視難聴」(見えにくく聞こえにくい)                 「盲ろう者」は、情報入手・コミュニケーション・移動等の様々な場面で困難な状況に置かれています。社会参加のためには、それぞれについて支援や介助等が不可欠です。   コミュニケーションの場面では 障害の状態や、盲ろうになるまでに習得した技法により、使用するコミュニケーション方法は異なります。まず、触れ合うことから始めましょう。 触覚を使用 「手書き文字」(相手の手の平に指先等で直接文字を書く) 「指点字」(指を点字タイプライターに見立ててタッチする) 「触手話」「指文字」(話者の手話等の形や位置を盲ろう者が手で直接読み取る) 視覚を使用:少し見える人には大きな文字で筆談する 聴覚を使用:少し聞こえる人には、耳元ではっきりゆっくり話す(大きな声はかえって聞きにくい場合がある) 情報伝達・説明の場面では 言葉の通訳に加えて、周囲の状況を伝えることも大切です。視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝えましょう。 その場の状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)なども伝えましょう。 移動の際は安全確保に特に注意しましょう。 都の好事例(東京都差別解消法ハンドブック H30/10より抜粋) 盲ろう者であるBさんは、通訳・介助者を伴って、パソコンの訓練施設に相談に行きましたが、盲ろう者との特殊なコミュニケーション方法である「手書き文字」「点字筆記」「触手話」「指点字」ができる職員がいないとの理由で受入れを断られました。 後日、Bさんは盲ろう者関係機関に相談したところ、「Bさんは点字ができること、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設側に伝えたらよいのではないか」との助言を受け、そのことを改めて施設に説明した結果、施設側の理解を得られ、前向きに受け入れる方向で話が進展しました。 第6 関連する相談窓口 障害者差別に関する相談 世田谷区障害施策推進課 TEL 03-5432-2424 (P16:相談・問い合わせへの対応を参照) 東京都障害者権利擁護センター TEL  03-5320-4223 障害者就労差別に関する相談 住所地のハローワーク(渋谷) TEL03‐3476‐8609 障害者就労支援センターしごとねっと TEL 03-3418-1432 (同) すきっぷ就労相談室 TEL 03-3302-7972 (同) ゆに(UNI) TEL 03-5707-2343 東京都労働局 TEL 03-3512-1664    渋谷総合労働相談コーナー(渋谷労働基準監督所内) TEL 03-6849-1167 障害者への虐待に関する相談窓口     世田谷総合支所保健福祉課障害支援 TEL 03-5432-2865 北沢総合支所保健福祉課障害支援 TEL 03-6804-8727 玉川総合支所保健福祉課障害支援 TEL 03-3702-2092 砧 総合支所保健福祉課障害支援 TEL 03-3482-819 8 烏山総合支所保健福祉課障害支援  TEL 03-3326-6115 世田谷区障害者夜間・休日虐待通報ダイヤル TEL 03-5432-1033   その他 法テラス東京 TEL 050-3383-5300 世田谷区消費生活センター(相談専用) TEL 03-3410-6522 人権擁護相談(問い合わせ先:人権・男女共同参画担当課) TEL 03-5432-2259 世田谷区DV相談専用電話(※相談日のみ) TEL 0570-074-740 【第一面記載方法】 おわりに  障害者差別解消法の理念を実現していくには、国民一人ひとりの障害に対する理解と適切な配慮が不可欠であり、差別と解される事例についても、お互いの意思疎通不足や理解の不足が起因していると思われることも見受けられます。法に定められたからということで身構えるのではなく、区民・事業者・区が歩み寄り理解を深めていくことが、差別解消の第一歩につながると考えられます。  職員のみなさんの本法に関する理解と、障害者差別解消に向けた取組みを積極的に進めて頂きますようお願いします。  【ガイドブック作成等にあたり、ご協力いただいた団体等】    <世田谷区障害者福祉団体連絡協議会加盟団体>     公益社団法人日本オストミー協会東京支部世田谷交流会     世田谷区肢体不自由児(者)父母の会     世田谷区身体障害者福祉協会     世田谷区重症心身障害児(者)を守る会     世田谷区手をつなぐ親の会     世田谷区パーキンソン病友の会     世田谷生活と健康を守る会しょうがい部会     特定非営利活動法人自立の家     特定非営利活動法人せたがや移動ケア     特定非営利活動法人世田谷区視力障害者福祉協会     特定非営利活動法人世田谷区聴覚障害者協会     特定非営利活動法人世田谷さくら会     特定非営利活動法人世田谷ミニキャブ区民の会   特定非営利活動法人ヒューマンハーバー世田谷     ふたばの会                     (50音順)  <世田谷区自立支援協議会 虐待防止・差別解消・権利擁護部会>